(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤が、組成物の総質量に対して0.5質量%〜1質量%の濃度でメチルセルロースを含む、請求項15に記載の水性医薬組成物。
【背景技術】
【0003】
鼻は、気道及び中枢神経系に接続する複雑な器官である。鼻は、前鼻孔(鼻孔)で顔の方へ開いて、後方に咽頭まで延びる鼻腔を有する。鼻の内面領域は、鼻腔内に垂れ下がる細い涙形を示す断面を有する鼻の内側の側壁上の構造である、複数の鼻甲介の存在によって増加する。鼻甲介は、上鼻甲介、中鼻甲介及び下鼻甲介を含む。また、鼻腔には、嗅覚のための嗅球及び嗅覚神経が含まれている。鼻腔はまた、副鼻腔又は通路に接続し、副鼻腔又は通路と連続している。副鼻腔は概して額及び頬骨の後ろに位置する。主な副鼻腔は、前頭洞、蝶形骨洞、上顎洞及び篩骨洞である。鼻腔及び副鼻腔は、繊毛が並んでいる粘膜で全体的に覆われている。耳道又は耳管の耳への開口部は、鼻腔の後部に位置する。
【0004】
鼻の機能の一部は、吸気の予熱及び加湿並びに肺からの呼気の一部の熱回収及び水分回収を提供することである。更に、粒子を濾過し、空気の匂いをかぎ分けることは、味覚にも寄与する嗅覚をもつ鼻によって行われる。鼻は、発語能力にも寄与する。粘液分泌膜は繊毛と共に、濾過される物質のための濾過機能及び粘膜繊毛輸送系を実行する。24時間で分泌される粘液の量は、最大1リットルであり得る。鼻腔及び副鼻腔の粘膜は、炎症がおこるか又は刺激されると、それらの分泌が2倍を超えることがあり得る。粘液は、粘液内に免疫グロブリンが存在するため、免疫防御の第一線の一つでもある。血液供給、局所的な膜応答、自律神経及び中枢神経系は、粘液分泌及び鼻膜の腫脹の制御レベルに寄与する。更に、鼻腔及び副鼻腔の膜は、極めて血管が多く、膜によって吸収された化合物は、循環系によって鼻腔及び副鼻腔の血管に、次いで身体の残りの部分に容易に輸送され得る。
【0005】
鼻詰まりは、通常、局所血管の血管拡張及び/又は膜の炎症に起因する、鼻の内側を覆う膜の腫脹による鼻腔及び副鼻腔の閉塞と定義することができる。鼻詰まりは、鼻閉塞(nasal blockage)、鼻閉塞(nasal obstruction)、鼻閉(blocked nose)、鼻づまり(stuffy nose)、又は鼻づまり(stuffed up nose)とも呼ばれる。鼻詰まりは、多くの多因子原因を有することがあり得、軽度の不快感から生命を脅かす状態まで多岐にわたり得る。
【0006】
例えば、鼻詰まりは聴力を妨げ、結果的に幼い小児の発語発達を遅らせることがある。小児及び成人では、鼻詰まりは睡眠を妨げ、いびきに寄与することがあり、時に睡眠時無呼吸症と関連することがある。一般に、鼻詰まりは、後鼻漏症、顔面圧及び疼痛、頭痛、慢性又は再発性副鼻腔炎及び副鼻腔感染症の原因となり得ることもあるか、又は関連する。鼻詰まりの他の関連する影響で、一般的に頻度の多いものとしては、喉の下への粘膜分泌物の滴下、味覚異常、上気道の乾燥感、眠気、鼻の刺激、嗅覚の喪失、及び鼻の内部の灼熱感及び鼻血が挙げられる。併存疾患の状態は、見落とされることが多いが、患者の鼻詰まり及びアレルギー性鼻炎(AR)の負荷に有意に寄与し得る。有意な数の患者で報告された併存疾患の状態の例としては、喘息、鼻ポリープ(鼻ポリープ症)及び睡眠時無呼吸症が挙げられる。生後数か月の幼児の鼻詰まりは授乳を妨げることがあり、重篤な症例では生命を脅かす呼吸困難を引き起こすことがある。
【0007】
耳や聴覚の問題、匂いの喪失、顔面疼痛、後鼻漏、頭痛、鼻のかゆみ、目のかゆみ、涙目、鼻水、くしゃみ、及び鼻づまり等の鼻詰まりの症状は、非常に又は中程度の煩わしさを感じると、患者によって一般に報告されている。調査患者の粘膜の浮腫の症例では、症状は29%の症例で「コントロール良好」、41%の症例で「ある程度コントロールされている」、21%の症例で「コントロール不良」と報告されている。例えば、Manning SC.「Medical management of nasosinus infectious and inflammatory disease.」Flint PW、Haughey BH、Lund LJら、編 Cummings Otolaryngology: Head & Neck Surgery. 5th ed. Philadelphia, Pa: Mosby Elsevier、2010: chap 50を参照のこと、その内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0008】
ほとんどの鼻詰まり患者は、鼻の症状が日常生活に重大な悪影響を及ぼしていると報告しているが、問題は、一般に医師や社会によって必ずしも認識されていない。患者は、生産性の低下、集中力の低下、口渇、頭痛、疲れ等の鼻の症状に関連する苦痛の程度が、多少厄介なものから非常に厄介なものまで様々であると報告している。鼻詰まり患者間の他の一貫した知見は、睡眠障害、昼間の疲労及び記憶障害及び仕事生産性の低下がおこる割合が高いことである。
【0009】
鼻詰まりについて報告された粘膜の組織病理学上の変化としては、より多くの杯細胞過形成、上皮肥厚化、基底膜の変化、及び炎症に関連する多様な細胞の存在が挙げられる。化生、基底膜の偽肥厚、及び好酸球、好中球、CD8 Tリンパ球及びマクロファージ等の炎症細胞による粘膜の浸潤を含む、鼻膜炎症の組織病理学のいくつかの記載があった。鼻詰まりを有する患者の上気道における炎症過程の細胞及び分子機構は、ここ数十年にわたってますます研究がなされてきた。しかし、本発明者の知る限り、今日までの研究は処置プロトコルに関して決定的なものではなかった。
【0010】
鼻詰まりは、鼻腔及び副鼻腔粘膜の炎症反応であるアレルギー性鼻炎(AR)の枢要な症状である。粘膜の炎症反応は、IgE抗体に起因する可能性がある。粘膜の炎症反応は、IgE抗体に起因する可能性がある。ARの罹患率は世界的に増加しており、その傾向は、地球規模の気候条件の変化、衛生の改善、食事の変化、及び肥満の増加等の種々の要因に起因している。ARは、アトピー性又は非アトピー性のいずれであれ、喘息発症の危険因子である。鼻詰まり及び鼻水は、ARの過敏性症状の最も多くのものとして特定され、最も頻繁に報告されたARの症状であった。したがって、鼻詰まり及び鼻水の緩和は、多くの場合、AR治療及び管理の第一の目標である。
【0011】
アレルギー性鼻炎症状の現在の管理のため、患者の12〜24%が処方薬のみを使用していると推定されているが、他のAR患者のうち最大50%が市販薬(OTC)を使用していると推定されている。Orban NT、Saleh H、Durham SR、「Allergic and non-allergic rhinitis」Adkinson NF Jr編 Middleton's Allergy: Principles and Practice. 7th ed. Philadelphia, Pa: Mosby Elsevier、2008: Chap 55、その内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0012】
ARを処置するために使用することができる薬物クラスとしては、抗ヒスタミン薬、コルチコステロイド、肥満細胞安定化剤、うっ血除去薬、鼻抗コリン作用薬、及びロイコトリエン受容体アンタゴニストが挙げられる。鼻腔内コルチコステロイドは、典型的には、経口抗ヒスタミン薬よりも、著しく大きな鼻詰まりの軽減をもたらす。しかし、コルチコイドの有害な副作用は、それらの広範な使用を妨げる可能性がある。
【0013】
これらの従来技術の方法、薬物、処置及び/又は療法のいずれも、鼻詰まり、鼻アレルギー、アレルギー性鼻炎及び鼻腔及び副鼻腔粘膜の他の疾患状態の症状又は根本原因の緩和又は処置に完全に満足のいく解決策を提供していない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
様々な刊行物、論文及び特許は、背景技術において、及び明細書を通じて引用又は記載されている。これらの参考文献それぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置、物品等の議論は、本発明の文脈を提供することを目的とするものである。そのような議論は、これらの事項のいずれか又はすべてが、開示又は請求された発明に関する従来技術の一部を形成すると認めるものではない。
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでなければ、本明細書で使用される特定の用語は、明細書に記載された意味を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0026】
特に指示しない限り、本明細書に記載の濃度又は濃度範囲等の任意の数値は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、数値は、典型的に、列挙された値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は、0.9mg/mL〜1.1mg/mLを含む。同様に、1%〜10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)〜11%(w/v)を含む。本明細書で使用するとき、数値範囲の使用は、文脈上他に明示されていない限り、可能なすべての下位範囲、その範囲内の整数及び値の端数を含め、その範囲内のすべての個々の数値を明示的に含む。
【0027】
本発明は、鼻腔及び副鼻腔粘膜の状態を処置又は予防するためのメラノコルチン受容体(MCR)及びニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニストの、ヒト鼻腔及び副鼻腔粘膜への適用に関する。
【0028】
本発明者は、驚くべきことに、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、類似体、前駆体、又は誘導体等の低用量のnAChRアゴニストが、鼻腔及び/又は副鼻腔粘膜に適用することによって、好ましくは局部的に粘膜に直接適用することにより、鼻腔及び/又は副鼻腔粘膜の状態の効果的な予防的処置及び/又は治療的処置を提供することを見出した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、鼻の粘膜への(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン等のnAChRアゴニストの適用は、アルファメラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)の分泌、放出、動員、調節及び/又は利用の増加を刺激し、及び/又は増加を誘導し、このことは、以下に詳述する利益をもたらすと考えられる。更に、本発明者は、太陽光による光曝露又は光線療法によって、鼻腔及び/又は副鼻腔粘膜に適用した(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン等のnAChRアゴニストの有効性が更に改善され、結果としてα-MSHに関連する作用及び利益がともに生じることを見出した。
【0029】
一般的な一態様において、本発明は、対象における鼻腔又は副鼻腔粘膜の又はその症状を処置又は予防する方法を提供する。この方法は、対象の鼻腔又は副鼻腔粘膜に、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト及び少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む、治療有効量の医薬組成物を投与することを含む。
【0030】
本明細書で使用するとき、「対象」とは、本発明の実施形態による医薬組成物がこれから投与されるか又は投与された任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。本明細書で使用する「哺乳動物」という用語は、任意の哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒト等が挙げられるが、これらに限定されず、より好ましい例はヒトである。
【0031】
本明細書で使用する「薬学的に許容される塩」という語句は、哺乳動物における医薬用途に安全かつ有効であり、所望の生物学的活性を有する対象化合物の塩を意味する。薬学的に許容される塩としては、特定化合物中に存在する塩基性基の塩である塩基付加塩、及び特定化合物中に存在する酸性基の塩である酸付加塩が挙げられる。酸性基又は塩基性基は、有機又は無機であり得る。薬学的に許容される塩の総説については、Bergeら、66 J.Pharm PHARM. SCI. 1-19頁(1977)を参照のこと、これは参照として本明細書に組み込まれている。
【0032】
本明細書で使用するとき、「医薬組成物」という用語は、治療有効量の活性医薬成分と、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含む製品又は組成物を包含することを意図する。本発明の実施形態によれば、活性医薬成分は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニストである。本発明における使用に好適なnAChRアゴニストの例としては、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン、(R)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン、若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩、類似体、前駆体若しくはそれらの誘導体並びにアセチルコリンが挙げられるが、これらに限定されない。1-メチル-2-ピロリジニル-ピリジンは、ニコチンとも称される、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンは、(S)-ニコチンとも称される、(R)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンは、(R)-ニコチンとも称される。
【0033】
(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの類似体には、ABT-418(Abbott)等の、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンを構造的に模倣する化合物が含まれる。(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの前駆体には、メチルアミン、グリシン、酢酸、及びグルコース等の、代謝して(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンを生成する化合物が含まれる。
【0034】
(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの誘導体としては、アナバセイン、アナタリン、N-ベンジル-N-メチルプトレシン、ブチルトリアコンタノエート(butyl triacontonoate)、コチニン、コチニンカルボン酸メチルエステル、コチニンペルクロラート(cotinine perchlorate)、3-(4,5-ジヒドロ-1-メチル-1H-ピロール-2-イル)ピリジン、3(-3-ピリドイル)-2-(3H)-フラノン、エチル4-オキソ-4-(-3-ピリジル)ブタノエート、エチルニコチネート-2,4,5,6,-d4、(R,S)-N-エチルノルニコチン、N-ホルミルノルニコチン、グバコリン臭化水素酸塩、イソニコテイン、2-ヒドロキシイミノ-4-メチルニトロソアミノ-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン、5-ヒドロキシイミノ-5-(3-ピリジル)-ペンタン酸エチルエステル、N-(ヒドロキシメチル)ニコチンアミド、イソニコテイン-3,4,5,6-d4、イソニコチンアミド-2,3,5,6-d4、イソニコテイン、イソニコチン酸-d4、イソニコチノイル-d4ヒドラジド、メタニコチン、1-(4-メトキシベンジル)-3-ヒドロキシ-4-エトキシカルボニル-5-(3-ピリジル)-3-ピロリン-2-オン、cis-1-(4-メトキシベンジル)-3-ヒドロキシ-5-(3-ピリジル)-2-ピロリジノン、(S)-1-メチル-d3-ニコチニウムヨージド((S)-1-methyl-d3-nicotinium iodide)、4-(メチル-d3-ニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール、[メチル-d3]メタニコチン、1-メチル-3(ヒドロキシ-(3-ピリジル)メチル)ピロリジン、(R,S)-1-メチル-3-ニコチノイルピロリジン、(R,S)-1-メチル-3-ニコチノイルピロリドン、メチル5-メチルニコチネート、2-メチル-6-(3-ピリジル)テトラヒドロ-1,2-オキサジン、メチル6-メチルニコチネート、2-メチル-6(S)-(3-ピリジル)テトラヒドロ-1,2-オキサジン、5-メチルミオスミン、4-(N-メチル-N-ニトロソアミノ)-4-(3-ピリジル)ブタン-1-オール、4-(N-メチル-N-プロペニルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール、メチルニコチネート-2,4,5,6-d4,5-メチルノルニコチン、4-(メチルアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール、4-(メチルアミノ)-4-(3-ピリジル)酪酸、N-メチルブタン-1,4-ジアミンDiHCl、メチルメタニコチン、(+/-)-2-メチルニコチン、(+/-)-6-メチルニコチン、5-メチルニコチン-d3、(S)-1-メチルニコチニウムヨージド((S)-1-methylnicotinium iodide)、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル-N-オキシド)-1-ブタノール、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル-N-オキシド)-1-ブタノン、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン、5-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ペンタノール、5-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ペンタノン、4-(メチルニトロソアミノ)-4-(3-ピリジル)酪酸、1-メチルピロリジノン-5,5-d2、ミオスミン、o-ミオスミン、ニコテルリン、ニコチン-d3、ニコチンアミド-2,4,5,6-d4、ニコチン-2,4,5,6-d4(ピリジン-d4)、(+/-)-ニコチン-d3(N-メチル-d3)、(+/-)-ニコチン-d7(N-メチル-d3、ピリジン-d4)、o-ニコチン、(+/-)-ニコチン-1,2',3',4',5',6'-13C6、(+/-)-trans-ニコチン-1'-オキシド-メチル-d3、rac-trans-ニコチン-1'-オキシド、rac-trans-ニコチン-1'-オキシド-d3、(+/-)-ニコチン-3'-d3、(S)-ニコチン-5-カルボキシアルデヒド、二酒石酸ニコチン二水和物(Nicotine Di tartrate Dihydrate)、(-)-ニコチンモノ酒石酸塩((-)-nicotine mono tartrate)、ニコチンN-D-グルコシド、ニコチンN-D-グルコシド2,3,4,6-テトラアセテートブロミドHBr、ニコチンサリチレート、3-(ニコチノイル-2,4,5,6-d4)-2-ピロリジノン、ニコチン尿酸-d4、N-ニトロソ-ジ-(n-ブチル-d9)アミン、N-ニトロソ-ジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-ジ-n-ヘキシルアミン、N-ニトロソ-N-エチルアニリン、N-ニトロソ-N-メチル-3-アミノプロピオン酸、N-ニトロソ-N-メチル-3-アミノプロピオン酸メチルエステル、N-ニトロソ-N-メチル-4-アミノ酪酸、N-ニトロソ-N-メチル-4-アミノ酪酸メチルエステル、N-ニトロソ-N-メチルアニリン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、(S)-N-ニトロソアナバシン、(R,S)-N-ニトロソアナバシンD-グルコシドクロライド、(R,S)-N-ニトロソアナタビン、N-ニトロソジ-n-ヘキシルアミン、N-ニトロソグバコリン、ニトロソノルニコチン-2,4,5,6-d4(ピリジン-d4)、rac N'-ニトロソノルニコチン-d4、rac N"-ニトロソノルニコチン-d4、(R,S)-N-ニトロソアナバシンd4及びrac N"-ニトロソノルニコチン-d4混合(1:1)、(R,S)-ノルニコチン酒石酸水素塩、2-[3-オキソ-3-(3-ピリジル)プロピル]-1,3-ジオキソラン、γ-オキソ-3-ピリジン酪酸、γ-オキソ-3-ピリジン酪酸,N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、1-(3-ピリジル)-1,4-ブタンジオール、1-(3-ピリジル)-1-ブタノール-4-カルボン酸、アンモニウム塩、及びソラネソールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
好ましくは、nAChRアゴニストは、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩であり、より好ましくは(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンである。特に好ましい実施形態では、少なくとも98%の純度を有する水性(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンを使用する。水性(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンは、Sigma社等の市販の供給源から購入することができる。しかし、本開示に照らして、当業者に知られている任意の合成nAChRアゴニストを本発明に使用することができる。
【0036】
本明細書で使用するとき、「治療有効量」とは、所望の生物学的効果又は臨床効果を引き出すために必要とされる治療上有効な成分の量を意味する。本発明の1つの実施形態において、「治療有効量」は、鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態を処置するために必要な、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、類似体、前駆体又は誘導体等のnAChRアゴニストの量である。「治療有効量」とはまた、予防的効果を有する、すなわち、疾患、障害又は状態の開始を予防又は遅延させる量を意味する。本発明の別の実施形態では、「治療有効量」は、鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態を予防するために必要な、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、類似体、前駆体又は誘導体等のnAChRアゴニストの量である。本発明の実施形態による活性医薬成分の治療有効量を決定するための方法は、当該技術分野において既知である。更に、当業者には理解されるように、任意の特定の対象の具体的な用量レベルは、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、それと組み合わせて投与される任意のさらなる治療剤、及び処置又は予防される疾患、障害又は状態の重篤度を含む種々の要因に依存し変化する可能性がある。
【0037】
本明細書で使用する「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」及び「処置(treatment)」という用語は、鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態の進行又は発症を軽減、緩和又は緩徐化するために、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、類似体、前駆体又は誘導体等の治療有効量のnAChRアゴニストを投与することを意味する。別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」及び「処置」とは、鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態の1つ又は複数の兆候又は症状の軽減、進行の緩徐化、又は軽快を意味する。本発明の特定の実施形態では、「処置する」、「処置すること」及び「処置」とは、鼻詰まり(慢性又は急性)及び/又は関連する頭痛を軽減又は阻害すること、鼻出血(鼻血)を止めること、及び/又は鼻粘膜を乾燥させることを意味する。
【0038】
本明細書で使用する「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」及び「予防(prevention)」という用語は、鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態が開始する前に、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、類似体、前駆体又は誘導体等の治療有効量のnAChRアゴニストを投与して、これにより鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態を完全に防止し、その発症に関して時間的に遅延するか、又は依然として発症するが、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、類似体、前駆体又は誘導体等のnAChRアゴニストの投与を行わない場合よりも、弱い程度で発症することを意味する。本発明の特定の実施形態では、「予防する」、「予防すること」及び「予防」とは、鼻詰まり(慢性又は急性)及び/又は関連する頭痛の発症又は進行の開始を阻害又は遅延させること、鼻出血(鼻血)を止めること、及び/又は鼻粘膜を乾燥させることを意味する。
【0039】
本明細書で使用する「鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態」という語句は、鼻腔及び副鼻腔の粘膜に影響を及ぼす任意の疾患、障害又は状態を意味する。鼻粘膜(nasal mucosa)、又は粘膜(mucous membrane)は、通常、鼻腔を覆う一種の湿った組織である。副鼻腔は、鼻腔を囲み空気で満たされた空間が4つの対になった群である。副鼻腔粘膜又は粘膜は、副鼻腔を覆う一種の組織である。鼻/副鼻腔粘膜の状態はまた、鼻軟骨及び鋤骨を含むがこれに限定されない、鼻腔の他の部分及び鼻腔及び副鼻腔を取り囲む領域に影響を及ぼす可能性がある。鋤骨は、鼻中隔の下部を形成する頭蓋骨の不対の顔面骨である。したがって、鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態には、鼻軟骨及び鋤骨等の、鼻腔の他の部分並びに鼻腔及び副鼻腔を取り囲む領域に影響を及ぼす疾患及び状態も含まれる。
【0040】
鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態の例としては、鼻詰まり、鼻炎、アレルギー性鼻炎、急性鼻炎、萎縮性鼻炎、血管運動性鼻炎、慢性又は再発性副鼻腔炎、鼻及び周囲組織の構造の炎症、慢性炎症性疾患、又は急性炎症性疾患、出血、軽度の出血、慢性変性疾患、急性変性疾患、粘膜の浮腫、1つ又は複数の鼻甲介の浮腫、鼻甲介肥大(拡大した鼻甲介)、シェーグレン症候群(鼻粘膜の乾燥症候群)、ストレスによって誘発される鼻炎、全身投薬に対する二次反応又は副作用、及び鼻粘膜の前癌性及び癌性変化が挙げられるが、これらに限定されるものではない。鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態の他の例としては、後鼻漏症、顔面圧及び疼痛、頭痛、喉の下への粘膜分泌物の滴下、後鼻漏、鼻孔(nares)(鼻孔)(nostrils)からの鼻水、味覚異常、上気道の乾燥感、眠気、鼻の刺激、嗅覚の喪失、鼻の内部の灼熱感、耳や聴覚の問題、鼻のかゆみ、目のかゆみ、涙目、くしゃみ、鼻づまり、いびき、睡眠時無呼吸症、喘息、鼻ポリープ(鼻ポリープ症)、環境刺激物質又はアレルゲンへの曝露、ストレス、アトピー性疾患、及び関節リウマチが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の実施形態によれば、鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態にはまた、併存疾患及び/又は関連状態が含まれる。鼻腔及び副鼻粘膜に関連する併存疾患及び状態としては、いびき、睡眠時無呼吸症、喘息及び鼻ポリープ(鼻ポリープ症)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法を用いたこれらの併存疾患及び関連状態の処置は、本発明の使用又は適用による鼻の生理学的改善によるものであり得る。以下に詳細に記載するように、α-MSH分泌の刺激が高まると、鼻内の又は鼻に関連する以前の病理学的細胞のエネルギーレベルを有益に改善すると考えられる。
【0042】
前癌性及び癌性細胞の処置に関して、本発明によるα-MSHの刺激放出によって、癌性細胞を殺すのではなく、より正常な状態に戻すか、又は回復させると考えられる。例えば、ヒト癌細胞の実験培養において、5mg/mlの濃度での(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの投与は、増殖を95%阻害する。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態は、慢性鼻詰まり又は鼻出血(「鼻血」)である。例えば、本発明の使用により、鼻出血又は「鼻血」がより迅速に止まるか、又は緩和され得る。
【0044】
本発明の実施形態によれば、本発明の鼻への適用はまた、リウマチ性関節炎及び他の炎症性、変性又は感染性状態の緩和等、鼻に対する異常の有益な治療効果もある。
【0045】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、鼻及び関連粘膜の解剖学的構造、機能及び一般生理学は、本発明の使用により、及び以下に詳述するように、α-MSHに関連して、改善及び回復され得る。更に、本発明の使用により、鼻軟骨及び/又は鋤骨(鼻中隔の鼻骨)の疾患状態を改善又は回復させることもできる。
【0046】
医薬組成物及びその調製
本発明の方法で使用する医薬組成物は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト及び少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む。本開示に照らして、当業者に知られている任意の希釈剤、賦形剤又は担体を使用することができる。好ましくは、希釈剤、賦形剤又は担体は、経鼻投与に好適である。本発明での使用に好適な希釈剤、賦形剤、及び/又は担体の非限定的な例としては、水、増粘剤又は粘度上昇剤、及び防腐剤が挙げられる。例えば、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン等のnAChRアゴニストは、ヒト及び/又は動物における医薬用途に好適な水性(水)ベースのビヒクル又は賦形剤と組み合わせることができる。本明細書に記載の医薬組成物のいずれも、本発明の方法において使用することができる。
【0047】
本発明の実施形態によれば、本発明で使用するための医薬組成物は、経鼻投与に好適である。経鼻投与に好適な組成物の例としては、水溶液、軟膏、及びゲルが挙げられるが、これらに限定されない。経鼻投与に好適な組成物は、局部的に(例えば、軟膏又はゲル)、経鼻スプレーとして、又はエアロゾル送達機構(例えば、吸入器)を使用して、又は点鼻薬(例えば、水溶液)として、投与することができる。当業者であれば、当技術分野における従来技術を用いてそのような組成物を調製する方法を知っているであろう。
【0048】
他の実施形態では、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン等のnAChRアゴニストはまた、水性溶媒中の微細又はコロイド状粒子懸濁液として経鼻薬物送達組成物に好適に調製することができる。更に他の特定の実施形態では、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン等のnAChRアゴニストを、別の賦形剤又はビヒクルと組み合わせて軟膏又はゲルを形成することができる。経鼻薬物送達組成物としての軟膏又はゲルの使用によって、鼻腔又は副鼻腔の特定部分の粘膜への軟膏又はゲルの直接の局部的適用が可能になる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、医薬組成物は水性組成物であり、好ましくは点鼻薬による経鼻投与に好適である。
【0050】
医薬組成物は、約0.1mg/ml〜2.0mg/ml、例えば0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.75mg/ml、1.0mg/ml、1.25mg/ml、1.5mg/ml、1.75mg/ml、又は2.0mg/mlの濃度のnAChRアゴニストを含むことができる。本発明の1つの例示的実施例では、医薬組成物は、約0.1mg/ml〜2.0mg/ml、例えば0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.75mg/ml、1.0mg/ml、1.25mg/ml、1.5mg/ml、1.75mg/ml、又は2.0mg/mlの濃度の(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンを含むことができる。水溶液中の(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの約0.75mg/mlの好ましい濃度も、使用することができる。
或いは、驚くほど低い用量で約0.1mg/ml〜0.5mg/mlの範囲の濃度を使用することができるが、依然として治療効果を有し得る。2mg/mlより高い濃度は、患者に刺激を与え、処置成功のための処方された治療へのコンプライアンスを低下させる可能性があるため、典型的には経鼻適用には望ましくない。例えば、患者は、経鼻適用する禁煙療法を使用する人々によくある鼻のかゆみや他の副作用を経験することがある。より高い濃度の代わりになるものは、より頻繁な投薬の使用である。例えば、初期症状の重篤度又は慢性的性質に起因する応答の欠如があり、かつ以下に更に記載するような状況の場合、投薬の増加が望ましいことがある。投薬については、以下で更に詳細に説明する。
【0051】
特定の実施形態では、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの水溶液等のnAChRアゴニスト溶液の、それを適用する粘膜への定着性又は別様に粘着性を改善するために、増粘剤又は粘度上昇剤を医薬組成物に添加することもできる。粘度上昇剤は、活性成分、例えば(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの十分な治療用量が粘膜に付与されるように、十分な期間、組成物を粘膜部位に局在化したままにし得るのに十分な濃度及び適切な処方で使用される。本発明で使用することができる増粘剤又は粘度上昇剤の例としては、メチルセルロースが挙げられる。別の代替案では、好適に処方されたカカオ脂又はカカオバター化合物を用いて、水溶液の粘度を増加させることができる。非アレルギー性であり、そうでなければ鼻用に好適な他の化合物を使用して、本発明で使用するための医薬組成物の粘度及び鼻粘膜への粘着性を高めることができることは容易に理解されるであろう。
【0052】
好ましい実施形態では、メチルセルロースを使用して、水溶液等の本発明で使用する医薬組成物の粘度を高める。(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン水溶液等の、医薬組成物の粘度を高めるのに十分なメチルセルロースの濃度は、組成物の総質量に対して、約0.5質量%〜1質量%、例えば0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、又は1質量%であり得る。
【0053】
他の実施形態では、防腐剤を医薬組成物に添加することができる。例示的な非限定的な例として、サリチル酸を防腐剤として使用することができる。例えば、本発明における使用のための医薬組成物は、0.1mg/ml〜1.0mg/ml、例えば0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.7mg/ml、0.8mg/ml、0.9mg/ml、又は1.0mg/mlの濃度のサリチル酸を含むことができる。特定の実施形態では、本発明で使用するための医薬組成物は、約0.5mg/mlのサリチル酸を更に含む。
【0054】
鼻への適用
本発明の実施形態によれば、医薬組成物は、対象の鼻腔又は副鼻腔粘膜に投与する。本開示に照らして、当技術分野で知られている任意の方法を、鼻腔又は副鼻腔粘膜への投与に使用することができる。好ましくは、医薬組成物は、例えば点鼻薬、経鼻エアロゾルスプレー、軟膏又はゲル等により、経鼻投与する。
【0055】
特定の実施形態では、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン水溶液は、鼻孔(鼻孔)を介して鼻腔に点鼻薬を適用することによって投与することができる。或いは、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン水溶液を、経鼻スプレー又はエアロゾル送達機構及び装置において使用し、こうして単回又は複数回ショットで、ニコチン水溶液をスプレーすることができる。更に別の実施形態では、ゲル又は軟膏等の医薬組成物は、上鼻甲介、中鼻甲介及び下鼻甲介、嗅球のうちの、鼻腔の1つ若しくは複数の粘膜、並びに/又は前頭洞、蝶形洞、上顎洞及び篩骨洞からなる副鼻腔の1つ若しくは複数の粘膜への局部的適用によって、経鼻投与することができる。
【0056】
例示的かつ非限定的な例として、上に詳述した濃度範囲の(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンを含む水性医薬組成物を経鼻投与する。単回処置のための組成物の1〜2滴(約0.05ml/滴)は、患者が横たわっている間に一方又は両方の鼻孔を介して患者に投与することができる。典型的な実施形態では、1滴を各鼻孔に投与する。鼻に点鼻薬を入れた直後に、患者は、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンに粘膜を十分に曝露するために、できるだけ強制的に、又はその状態に応じて適切に吸入するように指示を受けることができる。通常のドロッパーを使用して鼻孔又は鼻孔内に点鼻薬を適用することができるが、患者によっては、鼻腔内に点鼻薬をより深く入れるために、狭い及び/又は細長いドロッパー又はカテーテルを使用することが望ましい場合がある。(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン経鼻薬の適用中に、患者の頭部を回転及び/又は反転させることが望ましいこともある。例えば、鼻腔内の鼻詰まり領域にアクセスすることが困難であるか、又は副鼻腔への高度の浸透が望ましい患者にとっては、患者の頭部の回転及び/又は反転が好ましい場合がある。(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの点鼻薬の適用後、患者は、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン点鼻薬が、少なくとも鼻腔及び/又は副鼻腔の所望の位置まで部分的に移動したと患者又は臨床医が感じるまで、頭部を左右に回転させるように、及び/又は頭部を前後に傾けるように指示を受ける場合がある。
【0057】
初期の重篤な鼻詰まりの場合の本発明の方法による医薬組成物の適用はまた、一般に既に利用可能であり、鼻詰まりを一時的に緩和するための初期手段を患者に投与することによって、補助することもできる。例えば、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンのその後の投与は、その後より効果的に鼻腔及び副鼻腔に浸透させることができる。しかし、慢性的な鼻詰まりの場合でさえ、本発明において使用される(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンは、所望の粘膜への浸透及び投与が驚くほど速く有効であることが、一般に見出されている。
【0058】
投与頻度及び投薬レジメンは、患者、処置又は予防すべき状態、状態の重篤度等によって変わるであろう。例えば、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの水溶液の投与頻度又は投薬レジメンは、1〜2滴であり得る。点鼻薬は、1日1回又は1日2回〜4回等、1日1回以上投与することができる。典型的には、「滴」は、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、又は0.1ml等の約0.01ml〜0.1mlの体積を有する。例として、約0.01mg〜0.4mgの(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの1日用量のために、0.01mg/ml〜0.1mg/mlの(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンを含有する水溶液1〜2滴を、各滴は約0.05mlの体積で、1日2〜4回患者に投与することができる。このような(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの非常に低い1日用量は、典型的には、禁煙補助剤で使用されるものより少なくとも1桁(x10)少ない。例えば、M. Bendeら、「Evaluation of side effects after nicotine nasal spray in patients with chronic rhinitis」、Rhinology、36、98〜100頁、1998にあり、その内容は参照により本明細書に組み込まれている。非常に低い用量ではまた、驚くことに悪影響を伴わずに、数か月に及ぶ長期の処置期間が可能である。長期間にわたる治療適用によって、本明細書に記載されているα-MSHの分泌増加による鼻内の修復プロセスが起こることが可能になると考えられている。更に、非常に低用量の(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンは、鼻腔及び副鼻腔へ処置を局在化させると、本質的に全身に投薬を必要とする、鼻詰まりのための全身代替医薬品と比較して、驚くほど有益かつ有利である。
【0059】
(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン水溶液の経鼻投与による処置等の処置は、個々の患者の反応及び臨床的監督に従って、無期限に続けるか、又は漸減することができる。概評として、各患者が経験した改善は、多くの場合驚くほど顕著で急速である。改善は一般に1〜2日から1週間以内に観察される。例えば、患者の環境中に鼻詰まりの初期原因が存在しないか、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン水溶液の使用を減少させた患者の場合、数週間後又は数か月後に処置を中止して、鼻詰まりの症状が再び現れる場合は、散発的なフォローアップを行うことがある。環境における原因物質又は他の要因による慢性鼻詰まりを有する患者は、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン水溶液の非常に低い局所的用量での処置を、数か月、数年間又は無期限に続けることを必要とする場合がある。例えば、極度の寒さ、塵又は微粒子、大気汚染、タバコの煙、花粉等の季節性アレルゲン等の環境要因によって誘発されるか又は引き起こされる鼻詰まりを有する患者は、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン水溶液の長期間の使用を必要とすることがある。
【0060】
本発明の適用の成功を決定し、有効な投薬レジメン及び/又は有効な処置レジメンを調整する際に、本発明者は、鼻腔及び副鼻腔における粘膜の正常な分泌及び繊毛機能の回復又は少なくとも有意な改善によって、治療有効用量及び/又は処置レジメンのための最良の指針を提供し得ることを見出した。粘膜の機能の改善は、患者によって、及び/又は患者を処置する臨床医による観察として、報告され得る。
【0061】
鼻腔に位置する(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン経鼻薬の適用及びその結果の粘膜の改善は、鼻腔に挿入するための適切な観察デバイス又は装置によって、上鼻甲介、中鼻甲介及び/又は下鼻甲介である複数の鼻甲介を直接確かめることができる。例えば、内視鏡による鼻鏡検査を用いて、又は鼻孔を拡張して鼻甲介を直接観察することによって、粘膜の改善を評価することができる。更に、鼻腔内の嗅球に関する粘膜も改善することができる。副鼻腔の場合、前頭洞、蝶形洞、上顎洞及び/又は篩骨蜂巣/篩骨洞に位置する粘膜も、ニコチン経鼻薬の適用により利益を得ることができる。
【0062】
粘膜のフォローアップ検査及び生検、例えば鼻細胞診試験を行って、鼻組織の細胞診における改善を評価することができる。しかし、鼻細胞診試験は、例えば、患者及び/又は臨床医が注目する重要な機能的変化に対して感度がないことがあるため、患者及び臨床医の報告では多くの場合十分である。nAChRアゴニスト、特に(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンを含む医薬組成物の適用に最も好都合に応答し得る粘膜細胞としては、杯細胞、扁平上皮細胞、柱状上皮細胞及び繊毛細胞並びに鼻に位置する他の細胞が挙げられる。更に、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン受容体等のnAChRを有し、及び/又はα-MSHを分泌するか、又はα-MSHの分泌に関連する、体内の粘膜内及び他の場所にある他の細胞集団もまた、以下に詳述するように、本発明の方法による処置に応答し得る。
【0063】
上述の処置プロトコルに加えて、患者に適用される有効処置及び有効投薬レジメンはまた、例えば患者の年齢、性別、身長、体重、以前の健康状態、アルコール摂取量に依存することも当業者は容易に理解するであろう。当業者は、本開示に照らして特定の患者に対して所望の治療結果を達成するために、適切な投薬レジメン、投与量等を容易に決定することができるであろう。
【0064】
本発明の特定の実施形態において、対象を、光線療法で更に処置する。本発明での使用に好適な光線療法の例としては、日光への曝露が挙げられるが、これに限定されない。本発明者はまた、患者に太陽光又は他の可視光を用いた光曝露又は光線療法によって、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン経鼻薬で得られた結果が更に改善されるという、驚くべき予想外の結果も見出した。可視光は、380〜780nmのおおよその範囲にあり得る。使用する光は、人によって作られた日光又は人工光源からのものであり得る。
【0065】
或いは、対象は、紫外線又は紫外放射、赤外線又は赤外放射、磁場、可聴音波及び超音波を含む音、電磁放射等の、他のエネルギー源で処置することができる。紫外線又は紫外放射は、紫外線A(UVA)では約315〜400nm、紫外線B(UVB)では約280〜315nm、並びに全体で約380〜280nmの範囲であり得る。赤外線又は赤外放射は、約730nm〜1mmの範囲で使用することができる。光曝露又は光線療法、又は他のエネルギー源による処置で観察される、さらなる改善の提案された機構は、以下に詳細に説明する。
【0066】
個々の患者は、充分な線量の日光を受けると、幸福感が改善されると報告することがあるということが見出されている。太陽光の中で約30分〜2時間歩くことで十分なことが観察されている。他の患者は、時間が同様の期間、日差しの中に座って同じ効果を達成することがある。或いは、患者は、ベランダ、温室、樹木等の陰に座って、間接的な太陽光を受けることができる。特定の患者に対する光曝露のレベルは、人種、皮膚の色素沈着、光に曝露される皮膚の量、光の強度、並びに処置を受ける特定の状態によって変化し得ることは容易に理解されるであろう。患者にα-MSH分泌レベルの診断試験及び/又は鼻粘膜の試験を行って、光の十分な量を決定することが可能なことも理解されるであろう。
【0067】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン等のnAChRアゴニストの投与がその治療効果を発揮する機構は、α-MSH(アルファ-メラノサイト刺激ホルモン)の放出を誘導又は刺激することによるものと考えられており、このことはPCT特許出願公開WO2007129879及び米国特許出願公開US2012270907及びUS2009197921に記載されており、それらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。α-MSHの分泌増加を伴う身体の他の部分で観察される治療効果について提案された同じ又は同様の機構は、本明細書に記載の(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン等のnAChRアゴニストを含む医薬組成物の適用に応答して、鼻腔及び/又は副鼻腔に位置する1つ又は複数の粘膜で観察される治療効果にも当てはまり得る。
【0068】
要約すると、α-MSHは、プロピオメラノコルチン由来のトリデカペプチド内因性ホルモンであり、中枢神経系のいくつかの領域並びに末梢細胞、メラノサイト、食細胞、マクロファージ、軟骨細胞、角膜実質細胞、グリア細胞、ケラチノサイト、皮膚細胞及び毛包等で発現する。更に、鼻腔及び副鼻腔の粘膜細胞はまた、α-MSHを発現又は分泌し得る。α-MSHは、主としてα-腫瘍壊死因子、インターロイキン6(IL-6)及び酸化窒素(NO)を含む炎症誘発性メディエーターの拮抗作用により、抗炎症効果を有する。α-MSHはまた、すべての組織において強力な効果を有し得る。
【0069】
α-MSHの作用機構は広範囲であり、本発明者は、これを、分子状水素及び高エネルギー電子の形態でのメラニンからの化学エネルギーの生成の増加によって説明できると考えている。このプロセスは、炎症の阻害、細胞毒性の阻害、及び腎虚血によって活性化されるアポトーシス経路の阻害等の多くの生理学的効果を有する。また、患者へのニコチンの投与により、下垂体(脳下垂体)の中間葉に位置し、乳腺刺激ホルモン産生細胞に密接に接触するか、又は関連するメラニン細胞刺激ホルモン産生細胞からのα-MSHの分泌を、誘導及び/又は増加させることもできるとも考えられる。α-MSHの放出は、メラニンの合成を増加させることによって、ヒト患者及び/又は動物において「光合成」を引き起こし得る。それによりメラニンは、水から組織への酸素及び水素の放出又は利用可能性を増加させることができ、このことはPCT特許出願公開WO2007129879及び米国特許出願公開US2012270907及びUS2009197921に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。「ヒト光合成」という用語の使用は、クロロフィルの存在下で二酸化炭素、水及び太陽光を組み合わせることによって植物が炭水化物合成を行うプロセスに対する、厳密ではない類推である。本出願におけるメラニンによる酸素及び水素の放出は、真核細胞が、特に鼻腔及び/又は副鼻腔粘膜において利用可能なエネルギーを増加させ、細胞内反応の多くに対し更にエネルギーを供給する。この追加のエネルギー源は、真核細胞のエネルギー要求の実質的な部分を形成し、鼻腔及び副鼻腔粘膜に対する有益な効果という驚くべき予想外の結果を含む、すべての組織において劇的かつ明確な増殖又は修復応答を提供する。
【0070】
メラニンと光との間の相互作用に関するさらなる詳細は、Gjumrakch Alievらの雑誌論文、「Human photosynthesis, the ultimate answer to the long term mystery of Kleiber's law or E = M
3/4: Implication in the context of gerontology and neurodegenerative diseases」Open Journal of Psychiatry、2013、3、408〜421頁に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
鼻腔及び副鼻腔粘膜に関して、例えば、鼻腔及び副鼻腔粘膜への(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの局部的適用によって、鼻腔及び副鼻腔の膜の多くの細胞において、α-MSHの放出及び/又は分泌の増加を誘導し得る。上記のように、多くの真核細胞はニコチン性受容体を有し、α-MSHを合成及び/又は分泌し得る。更に、鼻腔及び副鼻腔粘膜は、高度に血管の血液供給を有し、これにより、鼻腔及び副鼻腔から離れた細胞が、鼻経路を介して循環血漿中に導入された(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンに応答して、容易に刺激されて、α-MSHの放出及び/又は分泌を増加させる可能性がある。すなわち、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンの経鼻投与により、体内のα-MSHレベルを増加させる局所的かつ一般化された応答が生じ得、これにより、本明細書に記載の利益がもたらされる。
【0072】
(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンは、例えば水溶液中で約0.1mg/ml〜2mg/mlの驚くほど非常に低い用量で、本明細書記載のように鼻腔及び/又は副鼻腔に局部的に適用すると、鼻腔及び/又は副鼻腔の膜にいくつかのプロセスを誘発する可能性がある。治療応答の1つは、上記のように、水分子の水素及び酸素への解離が強まることである。酸素及び水素との結果的反応は、鼻腔及び/又は副鼻腔の粘膜の細胞内の水分子のまさに最初の解離反応に大きく依存する。粘膜の細胞内の酸素及び水素との結果的反応は、上記の疾患状態及び症状の治療的及び予防的処置において、それらの細胞に増加したエネルギーを提供し得る。
【0073】
本発明者は、光曝露及び/又は光線療法のための日光の使用に加えて、日光スペクトルの可視光が赤外線及び紫外線光線と同様に特に有益であることを確認した。光曝露は、上記のように、細胞内水からの酸素及び水素のエネルギー放出のために、さらなるα-MSH放出並びにメラニンとの光相互作用を誘導又は刺激することができる。
【実施例】
【0074】
臨床例
(実施例1)
慢性鼻詰まりの患者の処置
過去10年間、慢性鼻詰まりの31歳の女性患者。複数の医師による前処置は、局所及び全身の血管収縮剤及び抗生物質による前処置を含み、不良なアウトカムを有していた。患者の初期検査によると、患者の鼻腔粘膜は中等度の浮腫を示していた。右下鼻甲介はわずかに拡大し、炎症を起こしていた。患者はまた、額領域に頻繁に頭痛を訴えた。
【0075】
患者の処置を開始し、1.00mg/mlの濃度の(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン及び0.5mg/mlの濃度のサリチル酸を含む水溶液を、2滴の用量で各鼻孔に滴下し(約50μL/滴)、その後吸入させた。この用量は、1日3回又は4回繰り返した。1か月後のフォローアップで、患者が正常と考える状態を100%の改善として、患者は、症状が90%改善したと報告した。臨床医は、患者が初期に慢性を呈したことを考慮し、場合により最大1年間のフォローアップで、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン水溶液による継続的な処置を行うことを推奨した。臨床医は、慢性的な鼻詰まりの、可能性がある原因物質は、寒さ、塵、大気汚染、タバコの2次喫煙、及び/又は花粉等の季節性アレルゲン等の外部環境要因であったと感じていた。
【0076】
(実施例2)
鼻出血及び乾燥の病歴を有する患者の処置
患者は68歳の女性で、少量の鼻出血及び鼻や目の乾燥感の病歴があった。患者はまた、関節疼痛の長い病歴を報告したが、他の顕著な病歴はなかった。患者は、検査で、鼻腔粘膜の萎縮を示し、これは最近のものではないと判断された。
【0077】
患者2の処置を開始し、2.0mg/mlの濃度の(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン及び0.5mg/mlの濃度のサリチル酸を含む水溶液を、1〜2滴の用量で滴下し(約50μL/滴)、その後強制吸入させた。この用量は、1日3〜4回繰り返した。1か月後のフォローアップ訪問で、患者は、処置の第1週以降、鼻出血が止まり、鼻及び目の乾燥感が著しく低下したと報告した。臨床医は、初期に鼻腔の萎縮した粘膜を呈したことを考慮して、場合により最大1年間のフォローアップ訪問を伴う、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン水溶液による継続的な処置を行うことを推奨した。初期の改善は、止血及び乾燥感の軽減に関して驚くほど速かった。萎縮した粘膜のさらなる再生又は回復は、おそらく数か月から場合により数年間の処置を必要とするであろう。
【0078】
当業者であれば、本発明の広範な概念から逸脱することなく、上述した実施形態に変更を加えることができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではないが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の精神及び範囲内の改変をカバーすることが意図されていることが理解される。
【0079】
実施形態
実施形態1は、対象における鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態を処置又は予防する方法であって、対象の鼻腔又は副鼻腔粘膜に、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト及び少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む、治療有効量の医薬組成物を投与することを含む方法である。
【0080】
実施形態2は、医薬組成物の鼻腔又は副鼻腔粘膜への投与が、α-MSHの放出を誘導及び/又は刺激する、実施形態1に記載の方法である。
【0081】
実施形態3は、合成又は天然のnAChRアゴニストが、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、類似体、前駆体又は誘導体である、実施形態1に記載の方法である。
【0082】
実施形態4は、状態が、鼻詰まり、鼻炎、アレルギー性鼻炎、急性鼻炎、萎縮性鼻炎、血管運動性鼻炎、慢性又は再発性副鼻腔炎、炎症、慢性炎症性疾患、急性炎症性疾患、出血、軽度の出血、慢性変性疾患、急性変性疾患、粘膜の浮腫、及び1つ又は複数の鼻甲介の浮腫からなる群から選択される実施形態1〜3のいずれか1つに記載の方法である。
【0083】
実施形態5は、状態が、後鼻漏症、顔面圧及び疼痛、頭痛、喉の下への粘膜分泌物の滴下、後鼻漏、鼻孔(nares)又は鼻孔(nostrils)からの鼻水、味覚異常、上気道の乾燥感、眠気、鼻の刺激、嗅覚の喪失、鼻の内部の灼熱感、耳や聴覚の問題、鼻のかゆみ、目のかゆみ、涙目、くしゃみ及び鼻づまり、いびき、睡眠時無呼吸症、喘息及び鼻ポリープ(鼻ポリープ症)、ストレス、アトピー性疾患、環境刺激物質又はアレルゲンへの曝露、並びに関節リウマチからなる群から選択される実施形態1〜3のいずれか1つに記載の方法である。
【0084】
実施形態6は、医薬組成物が約0.5mg/ml〜2.0mg/mlの濃度の(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンを含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の方法である。
【0085】
実施形態7は、医薬組成物が約0.1mg/ml〜0.5mg/mlの濃度の(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンを含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の方法である。
【0086】
実施形態8は、(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジンが水溶液中に存在する、実施形態6又は7に記載の方法である。
【0087】
実施形態9は、希釈剤、賦形剤、又は担体が、nAChRアゴニストを1つ又は複数の粘膜に十分に局在させるための増粘剤又は粘度上昇剤を含む、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の方法である。
【0088】
実施形態10は、希釈剤、賦形剤、又は担体が、組成物の総質量に対して約0.5質量%〜1質量%の濃度のメチルセルロースを含む、実施形態9に記載の方法である。
【0089】
実施形態11は、医薬組成物を経鼻投与する、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の方法である。
【0090】
実施形態12は、医薬組成物を、点鼻薬、経鼻エアロゾルスプレー、軟膏又はゲルの使用によって投与する、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の方法である。
【0091】
実施形態13は、医薬組成物を、
各鼻孔に1滴又は2滴、及び
毎日2〜4回繰り返す
のうちの少なくとも1つに従って投与する、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の方法である。
【0092】
実施形態14は、医薬組成物を、上鼻甲介、中鼻甲介及び下鼻甲介、嗅球のうちの、鼻腔の1つ若しくは複数の粘膜、並びに/又は前頭洞、蝶形洞、上顎洞及び篩骨洞からなる副鼻腔の1つ若しくは複数の粘膜へ局部的に適用する、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の方法である。
【0093】
実施形態15は、α-MSHの誘発及び/又は刺激による放出には、ヒト対象の下垂体の中間葉に位置するメラニン細胞刺激ホルモン産生細胞から放出されるα-MSHが含まれる、実施形態2に記載の方法である。
【0094】
実施形態16は、α-MSHの誘発及び/又は刺激による放出には、鼻粘膜の細胞集団である杯細胞、扁平上皮細胞、柱状上皮細胞及び繊毛細胞のうちの少なくとも1つの細胞集団からのα-MSHが含まれる、実施形態2に記載の方法である。
【0095】
実施形態16は、α-MSHの誘発及び/又は刺激による放出又は分泌には、鼻の細胞集団であるメラノサイト、食細胞、マクロファージ、軟骨細胞(chrondrocyte)、角膜実質細胞、グリア細胞、ケラチノサイト、皮膚細胞、毛包、軟骨細胞(cartilage cell)、骨細胞及び幹細胞のうちの少なくとも1つの細胞集団からのα-MSHが含まれる、実施形態2に記載の方法である。
【0096】
実施形態17は、光線療法による対象の処置を更に含む、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の方法である。
【0097】
実施形態18は、メラニンの分泌を調節することを更に含み、光線療法によって誘発されたメラニン応答が、酸素及び水素の組織中の1つ又は複数の放出を促進する、実施形態17に記載の方法である。
【0098】
実施形態19は、組織中の酸素及び水素の少なくとも1つの放出により、真核細胞へのエネルギーを増加させる、実施形態18に記載の方法である。
【0099】
実施形態20は、それを必要とするヒト対象における鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態を処置する方法であって、対象の鼻腔又は副鼻腔粘膜に、約0.1mg/ml〜2.0mg/mlの(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む、治療有効量の水性医薬組成物を経鼻投与することを含み、この状態は、鼻詰まり及び鼻出血(「鼻血」)からなる群から選択される、方法である。
【0100】
実施形態21は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤が、組成物の総質量に対して0.5質量%〜1質量%の濃度でメチルセルロースを含む、実施形態20に記載の方法である。
【0101】
実施形態22は、医薬組成物を、点鼻薬又は経鼻エアロゾルスプレーによって投与する、実施形態20又は21に記載の方法である。
【0102】
実施形態23は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤が、組成物の総質量に対して0.5質量%〜1質量%の濃度でメチルセルロースを含む、実施形態20〜22のいずれか1つに記載の方法である。
【0103】
実施形態24は、水性医薬組成物を、鼻孔あたり1滴又は2滴の用量で、各滴が約0.01ml〜0.1mlの体積で投与し、この投与を、任意に毎日2〜4回繰り返す、実施形態20〜23のいずれか1つに記載の方法である。
【0104】
実施形態25は、
a.約0.1mg/ml〜2mg/mlの濃度の(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、類似体、前駆体又は誘導体、及び
b.経鼻投与に好適な希釈剤、賦形剤、又は担体
を含む医薬組成物である。
【0105】
実施形態26は、水性医薬組成物である、実施形態25に記載の医薬組成物である。
【0106】
実施形態27は、希釈剤、賦形剤、又は担体が、組成物の総質量に対して0.5質量%〜1質量%の濃度のメチルセルロースを含む、実施形態25又は26に記載の医薬組成物である。
【0107】
実施形態28は、対象における鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態を処置又は予防するための医薬の製造における、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト及び少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む医薬組成物の使用である。
【0108】
実施形態29は、それを必要とするヒト対象における鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態を処置するための医薬の製造における、約0.1mg/ml〜2.0mg/mlの(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む水性医薬組成物の使用であり、この状態は、鼻詰まり及び鼻出血(「鼻血」)からなる群から選択される。
【0109】
実施形態30は、それを必要とする対象における鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態を処置又は予防する方法において使用するための、治療有効量のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)アゴニスト及び少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む医薬組成物である。
【0110】
実施形態31は、それを必要とするヒト対象における鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態を処置又は予防するために使用する、約0.1mg/ml〜2.0mg/mlの(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、類似体、前駆体又は誘導体、並びに少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む水性医薬組成物であり、この状態は、鼻詰まり及び鼻出血(「鼻血」)からなる群から選択される。
【0111】
実施形態31は、それを必要とする対象における鼻腔又は副鼻腔粘膜の状態を処置又は予防する方法であって、対象の鼻腔又は副鼻腔粘膜に、実施形態25〜27の医薬組成物を投与することを含む方法である。
【0112】
実施形態32は、約0.1mg/ml〜2.0mg/mlの(S)-(1-メチル-2-ピロリジニル)-ピリジン又はその薬学的に許容される塩、類似体、前駆体又は誘導体と、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体とを混合して、水性医薬組成物を得ることを含む水性医薬組成物を調製する方法である。
【0113】
実施形態33は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体が防腐剤、好ましくはサリチル酸を含む、実施形態1〜24のいずれか1つに記載の方法である。
【0114】
実施形態34は、防腐剤が約0.5mg/mlの濃度のサリチル酸である、実施形態35に記載の方法である。
【0115】
実施形態35は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体が防腐剤、好ましくはサリチル酸を含む、実施形態25〜27のいずれか1つに記載の医薬組成物である。
【0116】
実施形態36は、防腐剤が約0.5mg/mlの濃度のサリチル酸である、実施形態35に記載の医薬組成物である。