特許第6770112号(P6770112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770112
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   A47J27/00 103P
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-12288(P2019-12288)
(22)【出願日】2019年1月28日
(62)【分割の表示】特願2015-222617(P2015-222617)の分割
【原出願日】2015年11月13日
(65)【公開番号】特開2019-76778(P2019-76778A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】下峰 実
(72)【発明者】
【氏名】加藤 善光
(72)【発明者】
【氏名】三條 累
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋一
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−136056(JP,A)
【文献】 特開2008−206562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に対して開閉自在な蓋体と、
前記蓋体に着脱自在に設けられる内蓋体と、を備え、
前記蓋体には、第1操作体と、第2操作体と、前記本体に対して前記蓋体を閉じた時に前記本体に係合する第1係合手段と、前記内蓋体を前記蓋体に装着した状態で前記内蓋体に係合する第2係合手段が、それぞれ前記蓋体に対して可動して設けられ、
前記蓋体を閉じた状態で前記第1操作体を操作すると、前記第1係合手段が前記本体から外れて前記蓋体が自動的に開き、前記蓋体を開いた状態で前記第2操作体を操作すると、前記第2係合手段が前記内蓋体から外れて、当該内蓋体が前記蓋体より離脱する炊飯器において、
前記第1操作体をその操作方向に抗して付勢する弾性体と、前記第1係合手段を前記本体に係合する方向に付勢する弾性体と、前記第2係合手段を前記内蓋体に係合する方向に付勢する弾性体とを、前記蓋体に組み込まれた共通の付勢部材で構成し
前記蓋体の内部で、前記第1係合手段と前記第2係合手段とを並べて、前記第1係合手段と前記第2係合手段との間に前記付勢部材を配設したことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記第2操作体は前記第2係合手段と連動して設けられ、前記付勢部材は前記第2操作体の操作方向に抗して付勢するように設けられ、
前記内蓋体を前記蓋体より取り出した状態で前記蓋体を閉じようとすると、前記第2操作体に当接して前記第1係合手段が前記本体に係合するのを阻止する規制手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記本体には、前記第1係合手段に係合可能な爪状の受け部が設けられ、
前記規制手段は、前記受け部を囲んで突状に設けられることを特徴とする請求項2記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体の上面開口を蓋体で開閉自在に覆う構成とした炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の炊飯器では、蓋開ボタンの押動操作により、ヒンジバネの弾性力を利用して、ヒンジ軸を中心に蓋体を自動的に開くように構成されており、例えば特許文献1では、蓋体を軸支するヒンジ軸にロータリーダンパーを嵌合させて、そのロータリーダンパーがヒンジ軸ひいては蓋体と共回りしようとする力を、本体の規制壁部で受け止めることで、蓋体の開放速度を低減するものが開示されている。
【0003】
また、別な特許文献2では、蓋体を軸支するヒンジ軸にオイルダンパーを組み付け、蓋体の開成に対してオイルダンパーで制動力を働かせるようにした炊飯器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−195259号公報
【特許文献2】特開2009−285112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2に示すダンパー構造は、いずれも蓋軸部となるヒンジ軸と同軸に、ロータリーダンパーやオイルダンパーを取付けるのに、関連部品を多く使用せざるを得ず、取付けスペースの確保も必要となる。また構造上、蓋体を開ける動作で望ましいブレーキ特性を得るのに、ロータリーダンパーやオイルダンパーとヒンジバネのトルクをマッチングさせることが難しい。
【0006】
また、この種の炊飯器には、蓋体の下側に着脱可能な内蓋体が設けられているが、蓋体を開けた状態では、蓋体から内蓋体を取り外すときに、内蓋体が自重で蓋体から勝手に脱落する虞があり、内蓋体に付着したおねばなどが、炊飯器やその周辺に飛散する懸念を生じていた。
【0007】
さらに、従来の炊飯器では、蓋体を閉じた状態で第1操作体となる蓋開ボタンを操作すると、蓋体に設けた係合手段が本体から外れて蓋体が自動的に開き、蓋体を開いた状態で第2操作体となる内蓋ボタンを操作すると、蓋体に設けた別な係合手段が内蓋体から外れて、この内蓋体が蓋体より離脱する構成となっている。しかし、こうした蓋開ボタンや2つの係合手段には、それぞれ所望の方向に付勢する弾性体が設けられており、蓋体内部の構造が複雑でコスト上昇の要因となっていた。
【0009】
発明の目的は、蓋体内部の構成を簡素化して、コスト上昇を効果的に抑制した炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、本体と、前記本体に対して開閉自在な蓋体と、前記蓋体に着脱自在に設けられる内蓋体と、を備え、前記蓋体には、第1操作体と、第2操作体と、前記本体に対して前記蓋体を閉じた時に前記本体に係合する第1係合手段と、前記内蓋体を前記蓋体に装着した状態で前記内蓋体に係合する第2係合手段が、それぞれ前記蓋体に対して可動して設けられ、前記蓋体を閉じた状態で前記第1操作体を操作すると、前記第1係合手段が前記本体から外れて前記蓋体が自動的に開き、前記蓋体を開いた状態で前記第2操作体を操作すると、前記第2係合手段が前記内蓋体から外れて、当該内蓋体が前記蓋体より離脱する炊飯器において、前記第1操作体をその操作方向に抗して付勢する弾性体と、前記第1係合手段を前記本体に係合する方向に付勢する弾性体と、前記第2係合手段を前記内蓋体に係合する方向に付勢する弾性体とを、前記蓋体に組み込まれた共通の付勢部材で構成し、前記蓋体の内部で、前記第1係合手段と前記第2係合手段とを並べて、前記第1係合手段と前記第2係合手段との間に前記付勢部材を配設したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、第1操作体と第1係合手段と第2係合手段に作用する弾性体を、共通する付勢部材で構成することにより、蓋体内部の構成を簡素化して、コスト上昇を効果的に抑制することが可能になる。
【0013】
請求項2の発明では、内蓋体を蓋体から取り出したときには、第2係合手段と連動する第2操作体に付勢部材の弾性力が作用して、蓋体を閉じようとすると第2操作体が規制手段に当接し、それにより第1係合手段が本体に係合するのを阻止するので、部品点数の増加を招くことなく、内蓋体を蓋体に装着しないまま、蓋体が閉じた状態になるのを防ぐことができる。
【0014】
請求項3の発明では、規制手段が受け部への異物侵入を防止する異物侵入防止部として設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における蓋体を閉じた時の状態を示す炊飯器の全体斜視図である。
図2】同上、蓋体を開けた時の状態を示す炊飯器の全体斜視図である。
図3】同上、蓋体から内蓋組立体を取り出す際の手順を示す説明図である。
図4】同上、蓋体と内蓋組立体との係合を解除したときに、内蓋組立体が蓋体に保持される状態を示す要部の斜視図である。
図5】同上、蓋体に内蓋組立体を装着する際の手順を示す説明図である。
図6】同上、蓋体組立体の底面図である。
図7】同上、蓋体の上蓋ベースと本体の後カバーを外した状態で、蓋体を閉じた状態での炊飯器の平面図である。
図8】同上、蓋体の上蓋ベースと本体の後カバーを外した状態で、蓋体を開けた状態での炊飯器の背面図である。
図9】同上、制動機構を透視した状態で示した斜視図である。
図10】同上、蓋体を開くときのダンパーと受け部との位置関係を示す斜視図である。
図11】同上、内蓋クランプ機構組立体を正面側から見た斜視図である。
図12】同上、内蓋クランプ機構組立体の右側面図である。
図13】同上、蓋体に内蓋組立体を装着した状態で蓋を閉じたときに、各部の位置関係を示す要部斜視図である。
図14】同上、蓋体に内蓋組立体を装着しない状態で蓋を閉じようとしたときに、各部の位置関係を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の炊飯器に係る好ましい一実施形態について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。
【0017】
先ず、炊飯器の全体構成を図1図6に基づいて説明すると、これらの各図において、1は床面に安定載置される有底状の本体、2は本体1の上面開口を開閉自在に覆う蓋体で、これらの本体1と蓋体2とにより、炊飯器の外郭が形成される。本体1は、鍋3を着脱可能に収容するために、上面を開口した鍋収容部4が形成され、蓋体2を開放したときに、鍋収容部4から鍋3を取り出せるようになっている。
【0018】
内釜としての鍋3は、米や水などの被炊飯物を収容するためのもので、有底筒状に形成される釜本体5と、釜本体5の側壁周囲から外方に延出する円環状のフランジ部6とにより構成される。フランジ部6は、鍋収容部4に鍋3を収容したときに本体1の上面に載置懸架され、鍋3と鍋収容部4との間に隙間を形成した状態で、鍋3が鍋収容部4に吊設されるようになっている。
【0019】
図示しないが、本体1の内部には、鍋3を電磁誘導加熱する鍋加熱手段としての加熱コイルや、加熱制御手段などが設けられる。そして、加熱制御手段からの制御信号に基づき、加熱コイルに高周波電流を供給して、そこから交番磁界を発生させると、鍋3の外面に形成した発熱体が発熱し、鍋3ひいては鍋3内の被炊飯物が加熱される。また本体1の後部には、上方に突出したヒンジ部7が設けられ、蓋体2と本体1との係合が解除されたときに、ヒンジ部7に設けられた後述の軸53(図7および図8を参照)を回転中心として、蓋体2が本体1に対して自動的に開く構成となっている。
【0020】
蓋体2は、その上面に操作部8や、表示部9や、蒸気口10が配設される。操作部8は使用者が手動操作可能な複数個の操作キーにより構成され、表示部9は複数個のLEDランプやLCD(液晶表示器)を組み合わせて構成される。また蒸気口10は、鍋3内の被炊飯物の加熱に伴い発生する蒸気を、炊飯器の外部に放出するためのもので、ここでは清掃性を考慮して蓋体2の上面から着脱可能に取付けられる。その他、蓋体2の前方側面には、本体1に対して蓋体2を開けるときに押動操作される蓋開ボタン11が露出状態で配設される。
【0021】
本実施形態の蓋体2は、上蓋ベース14と、下蓋ベース15と、上蓋パネル16と、下蓋カバー17とを組み合わせて構成される。上蓋ベース14および下蓋ベース15は、蓋体2の骨格部材として上下に取り付けられ、上蓋ベース14の上部には、蓋体2の上面外観部材となる略平面状の上蓋パネル16が配設される。また下蓋ベース15の側部には、蓋体2の側面外観部材となる曲面帯状の下蓋カバー17が配設される。蓋体2ひいては下蓋ベース15の下面側には、本体1に対して蓋体2を閉じた時に、フランジ部6より上方の釜本体5上部を覆う凹状の内枠リング18が形成される。この内枠リング18の上面には、金属製の放熱板19が設けられる。放熱板19には、蒸気口10の下部を露出させる蒸気通路20が開口形成される。
【0022】
蓋体2の下側には、蓋体2に対して着脱可能な内蓋組立体21が配設される。炊飯器の内蓋体となる内蓋組立体21は、鍋3の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有する金属材料からなる内蓋22と、鍋3と内蓋22との間をシールするために、当該内蓋22の外周に設けられる弾性部材としての蓋パッキン23と、蓋パッキン23を内蓋22の外側全周に装着するための内蓋リング24と、を備えている。環状に形成された蓋パッキン23は、蓋体2を閉じた時に、鍋3の釜本体5上面に当接して、鍋3と内蓋組立体21との間の隙間を塞ぎ、鍋3から発生する蒸気を密閉する。また、内蓋22には蒸気孔25が開口形成され、蓋体2を閉じた時に、蒸気孔25を通して鍋3の内部と放熱板19から露出する蒸気口10との間が連通することで、鍋3内で発生した蒸気を蒸気口10から外部へ放出する蒸気排出機構が形成される。
【0023】
蓋体組立体21の外周部をなす樹脂製の内蓋リング24には、蓋体組立体21を蓋体2に取り付ける際の位置合わせ部となる差込み部27と、この差込み部27とは反対側に位置して、蓋体組立体21の把持部となる下方に延びたつまみ28と、つまみ28の基端に位置する突片29と、差込み部27やつまみ28とは別な位置で、左右一対に突出して形成された掛止め部30がそれぞれ形成される。
【0024】
一方、蓋体組立体21を受け入れる蓋体2の内枠リング18には、本体1から離れた上方側の後部に案内溝31が形成されると共に、本体1に近い下方側に左右一対の段部32が形成される。また蓋体2には、本体1に対して蓋体2を係合または離脱させるための第1係合レバー34や、蓋体2に対して蓋体組立体21を係合または離脱させるための第2係合レバー35や、第2係合レバー35と連動する手動操作が可能な内蓋押え36が、それぞれ蓋体2に対して可動して設けられる。これらの構成は後程詳しく説明するが、第1係合レバー34には、蓋体2から本体1に向けて延出するクランプ37が設けられており、本体1を構成する鍋収容部4の上面には、蓋体2を閉じた時に第1係合レバー34のクランプ37に係合可能な爪状のクランプ受け部38と、内蓋組立体21を蓋体2に装着しない状態で蓋体2を閉じようとしたときに、途中で内蓋押え36に突き当たって、第1係合レバー34のクランプ37がクランプ受け部38に係合するのを阻止する突状の規制部39が各々形成される。本実施形態の規制部39は、クランプ受け部38への異物侵入を防止する異物侵入防止部として、クランプ受け部38を囲んで突状に設けられている。
【0025】
41は、放熱板19より突出して下蓋ベース15に弾発的に取付けた蓋温度センサである。この蓋温度センサ41は、内蓋組立体21を蓋体2に取り付けたときに、内蓋22の上面に当接して、当該内蓋22の温度を検知するものである。また図示しないが、本体1には鍋3に当接して、その温度を検知する別な鍋温度センサが設けられる。こうした蓋温度検知手段に相当する蓋温度センサ41や、鍋温度検知手段に相当する鍋温度センサからの検知出力に基づき、鍋3への加熱量を加熱制御手段で制御する構成となっている。
【0026】
次に、前述のヒンジ部7とその周辺の構造について、図7および図8を参照しながら詳しく説明する。ヒンジ部7は、正面から見て本体1の左右方向に形成される軸貫通壁41,42と、本体1の前後方向に形成される側壁43,44とにより、ヒンジバネ45のコイル部45Aと、ヒンジバネ46のコイル部46Aを並べて収容するヒンジ空間47が形成される。また、ヒンジ部7の左右両側において、蓋体2の下蓋ベース15には、後方に延びる軸端収容部48,49が各々形成される。軸端収容部48,49には、ヒンジ部7の軸貫通壁41,42の外方で軸貫通壁51,52が各々形成され、これらの軸貫通壁41,42,51,52と、コイル部45A,46Aを貫通する軸53が、本体1のヒンジ部7と蓋体2の軸端収容部48,49に跨って配設される。これにより、本体1に対して蓋体2が、軸53を支点として開閉自在に軸支される。
【0027】
ヒンジバネ45,46は、蓋体2を常時開く方向に付勢する付勢手段として、ねじりコイルばねなどで形成され、ここではコイル部45A,46Aの一端より延設するアーム部(図示せず)が、本体1側のヒンジ空間47の内部で保持され、コイル部45A,46Aの他端より延設する別なアーム部45B,46Bが、蓋体2側の下蓋ベース15に形成したアーム保持片54,55に各々保持される。そして本実施形態では、図1に示すような蓋体2を閉じた状態から蓋開ボタン11を押動操作して、蓋体2側のクランプ37と本体1側のクランプ受け部38との係合を解除すると、ヒンジバネ45,46の弾性力が作用して、図2に示すような本体1に対して蓋体2が自動的に開く構成となっている。
【0028】
61は、炊飯器の内部に搭載され、蓋体2が自動的に開くときの開放速度を低減する制動機構である。本実施形態の制動機構61は、蓋体2に組み込まれたダンパー62と、ヒンジ部7の側壁43を利用して一体的に形成された受け部63とにより構成される。
【0029】
図9には、制動機構61単独の構成を透視して示しているが、ここでのダンパー62は、棒状のアブソーバー軸65と、アブソーバー軸65の基端側で直線方向に弾性を有して可動する直動式のアブソーバー66と、これらのアブソーバー軸65やアブソーバー66を横向きに収納するホルダー67とにより構成される。アブソーバー66は円筒状で、その内部はオイルが封入される。また、アブソーバー軸65の基端にはピストン(図示せず)が連結固定され、このピストンがアブソーバー66の内部に摺動可能に設けられる。
【0030】
ホルダー67は、一端を開口し他端を閉塞した筒部68と、ねじ69などの止着部材を利用して、蓋体2の下蓋ベース15への取付けを可能にするねじ挿通部70を有する。そして、筒部68の他端閉塞面にアブソーバー軸65の先端が突き当たるようにし、且つアブソーバー66の先端が筒部68の一端開口から突出するようにして、アブソーバー軸65の全体とアブソーバー66の一部が筒部68に収納される。
【0031】
ここでアブソーバー軸65とアブソーバー66は、元々アブソーバー軸65に対して負荷を加える単独のオイルダンパーとして使用されるものである。しかし、アブソーバー軸65に負荷を加えたときの偏角度が大きくなると、オイルダンパーとしての性能が保証できない。そこで本実施形態では、細径のアブソーバー軸65に負荷が加わらないように、アブソーバー軸65よりも太径のアブソーバー66を逆向きにして別部材のホルダー67に収納し、そのホルダー67より露出するアブソーバー66の先端面66Aを、負荷となる受け部63の受け面63Aで押し込む構成を採用する。こうすれば、アブソーバー66に加わる偏角度は、アブソーバー66とその外周を囲むホルダー67の筒部68との隙間で規定され、アブソーバー66の偏角度を効果的に抑制できる。しかもホルダー67には、取付け部となるねじ挿通部70も一体的に形成されることから、このねじ挿通部70を利用して、蓋体2の所望の位置にダンパー62を容易に取付け固定できる。
【0032】
図10は、蓋体2を開くときのダンパー62と受け部63との位置関係を示したものである。図中、「蓋開き回転方向」とあるのは、本体1に対し軸53を支点として蓋体2が回転する方向を示している。
【0033】
本実施形態では、蓋体2が閉じた状態から開放するのに伴って、アブソーバー66の先端面66Aが、受け部63の受け面63Aの一側から他側に押し込まれながら移動する。この受け面63Aは、蓋体2が開くにしたがって、アブソーバー66を受け部63で押し込むときの抗力が次第に増加するように、一側から他側にかけてスロープ(傾斜)形状に形成される。ここでのスロープ形状とは、蓋体2の開放速度を滑らかに減速しつつ、アブソーバー66に加わる衝突負荷を低減できるものであればよく、例えば蓋体2が全開となる直前で蓋体2へのブレーキ作用が急激に増加するように、一側から他側にかけて湾曲状に形成させてもよいし、蓋体2へのブレーキ作用が一定に増加するように、一側から他側にかけて直線状に形成させてもよい。
【0034】
また、蓋体2の内部で直線運動するアブソーバー66は、受け部63に押し付けられて横向きに使用されるため、アブソーバー66を軸53とあえて同軸に設ける必要がなく、その分設計の自由度が広がる。そのため、アブソーバー66の収納部材となるホルダー67を利用することで、少ないスペースと関連部品でダンパー62を容易に取付けできる。
【0035】
次に、蓋体2に組み込まれた内蓋クランプ機構組立体71や、その周辺の構成について、図11図14を参照してさらに詳しく説明する。
【0036】
これらの各図において、内蓋クランプ機構組立体71は、前述した第1係合レバー34、第2係合レバー35および内蓋押え36と共に、これの各部材に共通した弾性体となる一つの付勢部材72を組み合わせて構成される。第2係合レバー35と内蓋押え36は、これらの基端に設けた棒状の軸体73が同軸に連結しており、共通の軸体73を中心として第2係合レバー35と内蓋押え36が共に回動して、一つの樹脂部材を構成している。この軸体73は、下蓋ベース15の前側に形成した軸受74に回動可能に支持される。また第2係合レバー35の先端側には、内蓋組立体21の外周形状に対応した凹状の嵌合部75が形成される。嵌合部75は、蓋体2の内枠リング18より露出した位置に設けられる。
【0037】
第1係合レバー34は、C字状の軸受部76を基端部として、前述した本体1側に垂下するクランプ37と、蓋開ボタン11の裏面部に係合可能な形状を有する係合片77とを一体的に形成して構成される。前記軸受部76は、第2係合レバー35と内蓋押え36に共通する軸体73に支持されており、軸体73を中心として第1係合レバー34が回動するようになっている。
【0038】
本実施形態では、蓋開ボタン11の操作方向に抗して当該蓋開ボタン11を付勢する他に、第1係合レバー34を本体1のクランプ受け部38に係合する方向に付勢し、さらには第2係合レバー35を内蓋組立体21に係合する方向に付勢するために、蓋開ボタン11と、第1係合レバー34の係合片77と、第2係合レバー35とを、蓋体2内部の前後方向に並べて、圧縮コイルバネからなる付勢部材72を、第1係合レバー34の係合片77と第2係合レバー35との間に配設している。このとき、内蓋押え36は軸体73を介して第2係合レバー35と連動する構成となっているので、付勢部材72は自ずと内蓋押え36の操作方向に抗して内蓋押え36を常時付勢することになる。クランプ37の後面37Bは、第1係合レバー34の回動規制面として、クランプ37がクランプ受け部38に係合していないときに、付勢部材72の弾性力により下蓋ベース15の第1壁面に突き当たり、付勢部材72の弾性に抗してクランプ37の前面37Aが下蓋ベース15の別な第2壁面に突き当たるまで、第1係合レバー34を回動させることができる。また、内蓋押え36の前面36Aは、第2係合レバー35の回動規制面として、嵌合部75に内蓋組立体21が嵌入していないときに、付勢部材72の弾性力により下蓋ベース15の第3壁面に突き当たり、付勢部材72の弾性に抗して内蓋押え36の後面36Bが下蓋ベース15の別な第4壁面に突き当たるまで、内蓋押え36およびこれに連動する第2係合レバー35を回動させることができる。
【0039】
次に、上記構成についてその作用を説明する。図1に示すように、本体1の鍋収容部4に鍋3を収容し、蓋体2に内蓋組立体21を装着して、蓋2を閉じた状態から、蓋体2を開けるためには、蓋体2の正面に設けた蓋開ボタン11を押動操作する。付勢手段72の弾性に抗して蓋開ボタン11を押し込むと、軸体73を中心として第1係止レバー34が回動し、クランプ37がクランプ受け部38から離れて双方の係合が解除され、蓋2はその自重に抗してヒンジバネ45,46の弾性力が作用し、本体1に対し軸53を回動中心に自動的に開放される。
【0040】
ここで制動機構61は、蓋体2が開いて行く途中で、アブソーバー66の先端面66Aが、受け部63の受け面63Aの一側に当接するようになり、そこから受け面63Aの他側に向けて、アブソーバー66はホルダー67に次第に押し込まれながら移動する(図10を参照)。したがって蓋体2は、アブソーバー66の移動により受け部63に加わる抗力が次第に増加するのに伴い、その開放速度が低減し、図2に示すような略直立した状態で、蓋体2の後面がヒンジ部7の側壁43に突き当たって、蓋体2の回動が停止する。このとき、受け部63の受け面63Aは一側から他側にかけてスロープ形状に形成されるので、アブソーバー66が受け面63Aに沿って移動するときに、蓋体2の開放速度を滑らかに減速することができ、併せてアブソーバー66に加わる衝突負荷も緩和される。また、アブソーバー66が受け面63Aにより押し込まれるときの偏角度も、アブソーバー66を保持するホルダー67との隙間で常に所定の範囲内に規定され、蓋体2の制動機構61としてトルクマッチングに優れた満足な性能を発揮できる。
【0041】
こうして蓋体2を完全に開放した状態から、例えば清掃などで蓋体組立体21を取り出す場合は、蓋体2の下面側前方に設けた蓋体押え36を、付勢手段72の弾性に抗して押し下げる(図3の白抜き矢印を参照)。すると、軸体73を中心として蓋体押え36と共に第2係合レバー35が回動し、第2係合レバー35の嵌合部75が内蓋組立体21の内蓋リング24に形成した突片29から離れて双方の係合が解除される。このときの反動力で、略直立した状態の内蓋組立体21は蓋体2の内枠リング18から離脱しようとするが、内蓋組立体21の下側で蓋体2の案内溝31に差込み部27が差込まれたままとなり、また内蓋組立体21の左右両側で蓋体2の段部32に掛止め部30が係止して、内蓋組立体21はその上部が内枠リング18から飛び出した状態で、開放した蓋体2に前方に傾いて保持される(図4を参照)。そして、ここから内蓋組立体21の上部に位置するつまみ28を掴めば、蓋体2の案内溝31と段部32から内蓋組立体21の差込み部27と掛止め部30がそれぞれ離れる方向に、内蓋組立体21を簡単に取り出せる(図3の白抜き矢印を参照)。そのため本実施形態では、蓋体2を開けた状態で、内蓋組立体21が勝手に蓋体2から脱落するのを回避でき、内蓋組立体21に付着したおねばなどを、炊飯器やその周辺に飛散させることなく清掃することができる。
【0042】
なお、一旦取り外した内蓋組立体21を蓋体2に再び取り付けるには、内蓋組立体21の差込み部27を蓋体2の案内溝31に差込み、そこから第2係合レバー35の嵌合部75に内蓋組立体21の突片29を押し込んで係合させる。それにより、付勢手段72の弾性力が常時作用して、内蓋組立体21を内枠リング18の内部に装着保持することが可能となる。
【0043】
また、図13に示すように、蓋体2に内蓋組立体21を装着した状態では、付勢手段72の弾性力に抗して、内蓋組立体21の突片29が軸体73を中心として第2係合レバー35の嵌合部75を前方に押し込んでいる。そのため、ここから本体1に対して蓋体2を閉じようとすると、第2係合レバー35に連動する内蓋押え36が、予め本体1に設けた規制部39から離れた位置にあるため、第1係止レバー34のクランプ37をクランプ受け部38に支障なく係合させることができ、付勢手段72の付勢力をクランプ37からクランプ受け部38に作用させて、本体1に対し蓋体2を閉じた状態に保持することが可能となる。さらに本実施形態では、蓋体2に内蓋組立体21を装着し、且つ本体1に対し蓋体2を閉じたときに、第1係合レバー34の係合片77と第2係合レバー35との間の距離が最小となり、その間に配置される付勢手段72の付勢力が最も強く作用するので、蓋体2に対する内蓋組立体21の装着と、本体1に対する蓋体2の閉状態とを、同時に確実なものとすることができる。
【0044】
一方、図14に示すように、内蓋組立体21を蓋体2に取り付けていない状態では、第2係合レバー35は嵌合部75に内蓋組立体21が嵌合していない分、付勢手段72の付勢力により嵌合部75が後方に押し出されている。そのため、ここから本体1に対して蓋体2を閉じようとすると、第2係合レバー35に連動する内蓋押え36が、本体1に設けた規制部39に先当りして、そこから蓋体2を本体1側に近付けることが不可能になり、第1係止レバー34のクランプ37はクランプ受け部38と係合しない。これにより、内蓋組立体21を装着せずに、本体1に蓋体2が閉じられてしまう不具合を事前に防ぐことができる。
【0045】
以上のように本実施形態では、本体1に対し蓋体2を常時開ける方向に付勢する付勢手段としてのヒンジバネ45,46と、ヒンジバネ45,46の付勢力を利用して、蓋体2を自動的に開くときの開放速度を低減するための制動機構61と、を備えた炊飯器において、特にここでの制動機構61は、直動式のアブソーバー66を横向きでホルダー67に収納してなるダンパー62と、蓋体2を自動的に開くときに、ホルダー67から露出するアブソーバー66に干渉し、そのアブソーバー66の抗力により蓋体2の開放速度を遅くする受け部63と、を備えている。
【0046】
この場合、本体1に対して蓋体2が自動的に開く際に、蓋体2に固定されたホルダー67に対して可動するアブソーバー66が、本体1側に設けた受け部63に押し込まれるときの抗力を利用して、蓋体2の開放速度を遅くすることができる。このときのアブソーバー66は直線運動で横向きに使用されるため、ヒンジ軸となる軸53と同軸に設ける必要はなく、アブソーバー66の収納部材となるホルダー67を利用することで、少ないスペースと関連部品でダンパー62を容易に取付けできる。
【0047】
また、本実施形態におけるダンパー62は、アブソーバー66の端部となる基端部より出没し、アブソーバー66よりも細径のアブソーバー軸65を備え、アブソーバー軸65に負荷が加わらないように、当該アブソーバー軸65全体をホルダー67に収納して、アブソーバー66の一部をホルダー67から露出させた構成としている。
【0048】
この場合、本来は負荷の加わるアブソーバー軸65をホルダーに収納して、アブソーバー軸65に偏角度が加わらないようにする一方で、アブソーバー軸65よりも太径のアブソーバー66に受け部63からの負荷を加えることで、アブソーバー66とホルダー67との隙間を利用して、アブソーバー66に加わる偏角度を効果的に抑制することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態における受け部63はスロープ形状に形成される。この場合、アブソーバー66が直線運動して横向きに使用されるため、受け部63をスロープ形状とするだけで、蓋体2が開くに従いアブソーバー66が受け部63に押し込まれるときの抗力を次第に増加させることができ、蓋体21の開放速度の抑制を滑らかに行ないつつ、アブソーバー66に加わる衝突負荷を低減する望ましいブレーキ特性を得ることができる。
【0050】
本実施形態は、本体1に対して開閉自在な蓋体2に内蓋体となる内蓋組立体21を着脱自在に設けた炊飯器において、蓋体2に対する内蓋組立体21の係合を解除する解除手段としての内蓋押え36と、蓋体2を開けた状態で、内蓋押え36により内蓋組立体21の係合を解除したときに、内蓋組立体21を蓋体2より取り出し可能に保持する保持手段として、差込み部27や、掛止め部30や、案内溝31や、段部32を備えている。
【0051】
これにより、本体1に対して蓋体2を開けた状態で、内蓋押え36により内蓋組立体21の係合を解除したときに、保持手段となる差込み部27と案内溝31、および掛止め部30と段部32が互いに係止して、内蓋組立体21を蓋体2に保持することで、蓋体2からの脱落を防止する。また、こうした保持手段は、内蓋組立体21を蓋体2から取り出せるように保持するので、蓋体2からの内蓋組立体21の取り出しに支障を生じることなく、内蓋組立体21に付着したおねばなどが、炊飯器やその周辺に飛び散る懸念を払拭できる。
【0052】
本実施形態では、本体1と、本体1に対して開閉自在な蓋体2と、蓋体2に着脱自在に設けられる内蓋組立体21と、を備え、蓋体2には、第1操作体となる蓋開ボタン11と、第2操作体となる内蓋押え36と、本体1に対して蓋体2を閉じた時に本体1に係合する第1係合手段となる第1係合レバー34と、内蓋組立体21を蓋体2に装着した状態で内蓋組立体21に係合する第2係合手段となる第2係合レバー35が、それぞれ蓋体2に対して可動して設けられ、本体1に対して蓋体2を閉じた状態で第1操作体となる蓋開ボタン11を操作すると、蓋体2に設けた第1係合手段となる第1係合レバー34が本体1から外れて蓋体2が自動的に開き、蓋体2を開いた状態で第2操作体となる内蓋押え36を操作すると、蓋体2に設けた第2係合手段となる第2係合レバー35が内蓋組立体21から外れて、その内蓋組立体21が蓋体2より離脱する構成の炊飯器において、蓋開ボタン11をその操作方向に抗して付勢する弾性体と、第1係合レバー34を本体1に係合する方向に付勢する弾性体と、前記第2係合手段を前記内蓋体に係合する方向に付勢する弾性体とを、共通の付勢部材72で構成し、蓋体2の内部で、第1係合レバー34と第2係合レバー35とを並べて、第1係合レバー34と第2係合レバー35との間に付勢部材72を配設している。
【0053】
これにより、蓋開ボタン11と第1係合レバー34と第2係合レバー35に作用する弾性体を、共通する付勢部材72で構成することにより、蓋体2内部の構成を簡素化して、コスト上昇を効果的に抑制することが可能になる。
【0054】
また、本実施形態の内蓋押え36は第2係合レバー35と連動して、例えば一つの部材で設けられ、付勢部材72は内蓋押え36の操作方向に抗して付勢するように設けられ、内蓋組立体21を蓋体2より取り出した状態で蓋体2を閉じようとすると、規制手段となる規制部39が内蓋押え36に当接して、第1係合レバー34が本体1に係合するのを阻止するように構成される。
【0055】
この場合、内蓋組立体21を蓋体2から取り出したときには、第2係合レバー35と連動する内蓋押え36に付勢部材72の弾性力が作用して、蓋体2を閉じようとすると規制部39が内蓋押え36に当接し、それにより第1係合レバー34が本体1に係合するのを阻止するので、部品点数の増加を招くことなく、内蓋組立体21を蓋体2に装着しないまま、蓋体2が閉じた状態になるのを防ぐことができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、本実施形態とは異なり、ダンパー62を本体1側に設け、受け部63を蓋体2側に設ける構成としてもよい。また、内蓋組立体21としての内蓋体は、蓋体2に着脱可能なものであれば、どのようなものであっても構わない。
【符号の説明】
【0057】
1 本体
2 蓋体
11 蓋開ボタン(第1操作体)
21 内蓋
34 第1係合レバー(第1係合手段)
35 第2係合レバー(第2係合手段)
36 内蓋押え(解除手段、第2操作体)
38 クランプ受け部
39 規制部(規制手段)
72 付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
図12
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