(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の引き違い窓では、台風時などで例えば1500Paもの高風圧が窓に作用すると、障子が風圧によって室内側に押し込まれてしまう。この場合には、上框の屋外側のガイド片に設けられて気密材が圧し潰され、その屋外側のガイド片が案内レールに当たるまで屋内側に寄り、屋内側の水密材と案内レールとの間に隙間が生じることになる。そのため、案内レールの屋内側に生じた隙間を通じて強い空気の流れができ、その空気とともに屋内側に水が浸入するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、とくに高風圧時においても屋内への雨水の浸入を防止できる水密性の高い建具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る建具は、枠体と、該枠体の上枠に設けられる案内レールに案内される少なくとも1枚の障子と、を備えた建具であって、前記障子の上框には、前記案内レールの屋内外方向の両側に配置され、少なくとも屋内側に設けられる気密材を介して前記案内レールに係合する一対のガイド片を有し、前記一対のガイド片同士の間には、前記障子の屋内側への移動を規制する移動規制部を有する振止め部材が設けられ、前記移動規制部は、前記一対のガイド片のうち少なくとも屋外側のガイド片に設けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明に係る建具によれば、障子の上框に設けられる一対のガイド片同士の間で、少なくとも屋外側のガイド片に移動規制部を有する振止め部材が設けられているので、障子が例えば台風等で高風圧を屋外から受けたときに、振止め部材の移動規制部が案内レールに当接する。これにより、障子が屋内側へ押し込まれる方向に移動することを規制でき、障子と案内レールとの間の間隔を維持することができる。そのため、強風によって障子が押されて屋内側の気密材と案内レールとの間に隙間が生じることがなくなることから、その隙間を通じて雨水が室内側に浸入することを防止できる。
【0008】
また、本発明に係る建具では、前記移動規制部には、前記案内レールに向けて突出する押圧片が設けられていることが好ましい。
【0009】
この場合には、移動規制部に押圧片を設けておくことで、押圧片と案内レールとの間の間隔を小さくすることができ、強風時における障子の屋内外方向の振れを小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る建具によれば、とくに高風圧時においても屋内への雨水の浸入を防止でき、水密性の高い構造を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態による建具について、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態による引き違い窓100(建具)は、建築物の開口部に設けられ、四角形枠状に形成された枠体1と、枠体1に対して左右方向にスライド可能に設けられた一対の障子2(2A、2B)と、を備えた2枚建ての引き違い窓を構成している。ここで、屋外側に位置する障子を外障子2Aといい、屋内側に位置する障子を内障子2Bという。
【0014】
以下の説明において、屋外側と屋内側とを結ぶ方向(壁部に直交する方向、
図1では紙面に直交する方向)を屋内外方向とし、建築物の開口部が壁部を貫通する方向(壁部に対向する方向)から見た際の左側と右側を結ぶ水平方向を左右方向とする。また、引き違い窓100を構成する各部材や部品などは、前記開口部に設けられている姿勢であるものとして、その姿勢における屋内外方向および左右方向を用いて説明する。
【0015】
枠体1は、左右方向に延在する上枠11及び下枠12と、上枠11の両端部と下枠12の両端部とをそれぞれ連結し上下方向に延在する一対の縦枠13と、を有している。以下の説明では、上枠11、下枠12及び一対の縦枠13等の長尺の部材に対してそれぞれが延びる方向を長さ方向ということがある。
本実施形態では、引き違い窓100はアルミ樹脂複合サッシを対象としている。枠体1は、金属製の縦枠13に対して金属製の上枠11及び下枠12の端部を突き当ててビス等の固定具で固定されている。枠体1は、アルミニウム製の押出成形部材で構成されている。
【0016】
障子2A、2Bは、枠体1の屋外側及び屋内側にそれぞれ設けられている。外障子2A及び内障子2Bは、それぞれ障子2A、2Bを閉じた状態で、枠体1内を閉塞するように配置されている。各障子2は、四方枠状に形成された框体と、框体内に納められた複層ガラス20と、を有している。
【0017】
框体は、左右方向に延在する上框21及び下框22と、上框21の両端部と下框22の両端部とをそれぞれ連結し上下方向に延在する召合せ框23及び戸先框24(なお、上框21、下框22、召合せ框23及び戸先框24のそれぞれを単に「框」と称することがある。)と、を有している。
【0018】
本実施形態では、框体は、アルミニウム製の押出成形部材で構成されており、屋内側面が樹脂で覆われている。上框21、下框22は、召合せ框23及び戸先框24に両端部が突き当てられて枠組みされており、ビス等の固定具で固定されている。下框22には、下枠12に沿って左右方向に走行可能な戸車25(
図2参照)が設けられている。
【0019】
図2に示すように、上枠11は、左右方向に延びる上枠壁部111と、上枠壁部111から下方に延びるととともに左右方向に沿って延在し屋内外方向に間隔をあけて設けられる一対の案内レール112(112A、112B)と、を有している。屋外側の外案内レール112Aには、外障子2Aが左右方向にスライド自在に案内されるようになっている。屋内側の内案内レール112Bには、内障子2Bが左右方向にスライド自在に案内されるようになっている。
【0020】
下枠12は、左右方向に延びる上段部121及び下段部122と、下段部122から上方に延びる外レール案内壁123と、上段部121から上方に延びる内レール案内壁124と、を有している。外レール案内壁123と内レール案内壁124の上部分には、それぞれ外障子2Aと内障子2Bの下端に設けられる戸車25が左右方向に走行自在に案内されるようになっている。
【0021】
図2に示すように、外障子2A及び内障子2Bに設けられる複層ガラス20は、屋外側に配置される外ガラスと屋内側に配置される内ガラスとがスペーサを介して一体に設けられている。
各框21〜24には、それぞれ複層ガラス20の端部を保持するガラス保持溝が形成されている。複層ガラス20の四辺の端部は、ガラス保持溝内に嵌め込まれている。複層ガラス20の周縁部において、屋内側の面は、框に係止された押縁によって押さえられている。
【0022】
次に、各框21〜24について説明するが、外障子2Aと内障子2Bは基本的に同様な構造であるので、内障子2Bについて詳細に説明する。
【0023】
内障子2Bの上框21は、
図4に示すように、左右方向に沿って延びる外框壁211(ガイド片)と内框壁212(ガイド片)とが各面方向を鉛直方向に向けた状態で互いに間隔をあけて対向して配置されている。
外框壁211と内框壁212との間には、中空状に形成され、左右方向に延びる框ホロー部S21が形成されている。框ホロー部S21は、屋外側の外框壁211と屋内側の内框壁212とを連結する上連結壁213と下連結壁214とにより囲まれた空間を形成している。また、外框壁211、内框壁212、上連結壁213及び下連結壁214は、上框21の左右方向の略全長に沿って形成されている。
【0024】
下連結壁214の下側には、外框壁211と内框壁212とによってガラス保持溝215(
図2参照)が形成されている。換言すると、下連結壁214には、下側を向く下面に沿って複層ガラス20の上端を保持するガラス保持溝215が形成されるとともに、上側を向く上面214aに沿って框ホロー部S21が形成されている。
外框壁211及び内框壁212の上端は、案内レール112に対して屋内外方向の両側から止水パッキン217(気密材)を介して係合している。
【0025】
図3及び
図4に示すように、外框壁211と内框壁212との間には、障子2の屋内側への移動を規制するとともに、案内レール112を下方から跨ぐように配置されるU字状の振止め部材3が設けられている。振止め部材3は、少なくとも上框21の長手方向の中央に設けられている。
【0026】
振止め部材3は、
図4及び
図5に示すように、互いに平行に間隔をあけて上框21の左右方向に沿って長く延びる一対の側板31、31と、一対の側板31、31の下端同士を連結する連結板32と、連結板32の長さ方向の両端に設けられ上框21の上端に係止する係止片33と、を備えている。ここで、一対の側板31のうち屋外側に設けられるものを第1側板31A(移動規制部)とし、屋内側に設けられるものを第2側板31Bとする。すなわち、振止め部材3の第1側板31Aは、外框壁211に対して係止して屋内外方向に移動しない状態で固定されている。
【0027】
係止片33は、連結板32の幅方向両端部32a、32aからそれぞれ上方に突出している。一対の係止片33、33は、それぞれの上端部分より互いに離反する方法に向けて突となる凸部34が形成されている。一対の係止片33、33は、各基端部33bを中心に互いに離反する方向に付勢するように弾性変形可能に設けられていて、レール凹溝210内に収納された姿勢で、上框21の外框壁211と内框壁212を押圧した状態で係止されている。このとき振止め部材3は、上框21における止水パッキン217を支持する部分の下方に凸部34が係止して、上下方向の移動が規制された状態で位置決めされている。
【0028】
第1側板31Aの上部には、案内レール112のレール側面を向くように突出する押圧片35が形成されている。一方、屋内側の第2側板31Bには、前記押圧片35が形成されていない。
本実施形態の振止め部材3は、台風時のように屋外からの高風圧(例えば1500Paの風圧)を考慮した仕様の場合に採用することができる。すなわち、案内レール112に対して障子2が屋内側(
図4の矢印E1方向)に押されると、案内レール112に対して屋外側に配置される押圧片35が案内レール112の屋外側の面に当接し、障子2の屋内側への移動を規制できる構成になっている。
【0029】
内障子2Bの下框22は、
図2に示すように、左右方向に沿って延びる外框壁221と内框壁222とが各面方向を鉛直方向に向けた状態で互いに間隔をあけて対向して配置されている。外框壁221と内框壁222との間には、中空状に形成され、左右方向に延びる框ホロー部S22が形成されている。框ホロー部S22は、屋外側の外框壁221と屋内側の内框壁222とを連結する上連結壁223と下連結壁224とにより囲まれた空間を形成している。また、外框壁221、内框壁222、上連結壁223及び下連結壁224は、下框22の左右方向の略全長に沿って形成されている。
【0030】
上連結壁223の上側には、外框壁221と内框壁222とによってガラス保持溝225が形成されている。換言すると、上連結壁223には、上側を向く上面に沿って複層ガラス20の下端を保持するガラス保持溝225が形成されるとともに、下側を向く下面に沿って框ホロー部S22が形成されている。
框ホロー部S22において、上連結壁223の下面223bに戸車25が回転可能に支持されている。内障子2Bの戸車25は、内レール案内壁124に転動可能に載置されている。
【0031】
図1に示すように、内障子2Bの召合せ框23は、外障子2A及び内障子2Bが閉じている状態で一対の縦枠13、13の間の略中央部に配置されている。戸先框24は、外障子2A及び内障子2Bを閉じている状態で一対の縦枠13、13に近接して配置されている。召合せ框23及び戸先框24は、
図1に示すように、それぞれ上框21及び下框22の端面が突き合てられてビス止めされている。
【0032】
次に、本実施形態による引き違い窓100の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図4及び
図6に示すように、本実施形態による引き違い窓100では、障子2の上框21に設けられる一対の外框壁211及び内框壁212同士の間で、屋外側の外框壁211に振止め部材3の第1側板31Aが設けられているので、障子2が
図4に示すように台風等で高風圧を屋外から受けたときに、振止め部材3の第1側板31Aの押圧片35が案内レール112に当接する。これにより、障子2が屋内側へ押し込まれる方向に移動することを規制でき、障子2と案内レール112との間の間隔を維持することができる。そのため、強風によって障子2が押されて屋内側の止水パッキン217と案内レール112との間に隙間が生じることがなくなることから、その隙間を通じて雨水が室内側に浸入することを防止できる。
【0033】
また、本実施形態では、第1側板31Aに押圧片35を設けておくことで、押圧片35と案内レール112との間の間隔を小さくすることができ、強風時における障子2の屋内外方向の振れを小さく抑えることができる。
【0034】
さらに、本実施形態では、強風時に障子2が屋内側に押された際に、隙間が生じやすい上框21における長手方向の中央に振止め部材3が設けられているので、より確実に障子2の屋内外方向の振れを防止することができる。
【0035】
このように本実施の形態では、とくに高風圧時においても屋内への雨水の浸入を防止でき、水密性の高い構造を提供できる。
【0036】
以上、本発明による建具の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0037】
例えば、本実施形態では、2枚建ての引き違い窓の一例を示しているが、2枚建てに限定されることはなく、例えば3枚建てや4枚建ての引き違い窓の上框、あるいは片引き窓の上框に振止め部材を適用することも可能であり、少なくとも1枚の障子を備えた建具に適用できる。
【0038】
また、振止め部材は、少なくとも上框の長手方向の中央に設けられていることが好ましいが、この位置であることに制限されることはない。つまり、障子の左右方向の両端(すなわち、召合せ框側や戸先框側)に屋内外方向に振れにくい機構が備えられているものがあり、その場合には中央に振止め部材を設けることが好適である。上記振れにくい機構が設けられていない場合には、上框の長手方向の両端にも振止め部材を設けるようにしてもよい。さらに、障子2に設ける振止め部材3の数量も適宜設定することができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、振止め部材3の第1側板31(移動規制部)が案内レール112に対して屋外側のみに設けた構成としているが、少なくとも屋外側に設けられていればよく、例えば
図6に示すように、第1側板31Aと第2側板31Bの両方に押圧片35が設けられる構成であってもよい。
また、振止め部材3押圧片35を省略することも可能である。
【0040】
さらにまた、本実施形態では、外框壁211と振止め部材3の第1側板31Aとが別体で設けられているが、一体的に設けられていてもよい。
また、本実施形態では、振止め部材の形状として、案内レール112を下方から跨ぐようなU字状に形成されているが、このような構成に限定されることはない。例えば、案内レール112を挟んで屋内外方向の両側にそれぞれ別体の振止め部材が設けられていてもよいし、屋内側に移動規制部(第2側板31B)を設けない構成であってもよい。
【0041】
さらに振止め部材3の上框21に対する係止手段として、一対の係止片33を設ける形態としているが、これに限定されることはなく、他の係止手段を採用することも可能である。
【0042】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。