(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リーフレットフレームと、前記リーフレットフレームに連結した複数のリーフレットとを備える人工弁であって、前記弁が閉鎖位置にあり、かつ流体圧力下にないとき、各リーフレットは中央領域に平面域を有し、前記平面域は、(1)前記リーフレットフレームに接触していない円の略切頭くさび形、又は(2)前記リーフレットフレームに接触していない等脚台形のいずれかの形状を有している、人工弁。
前記リーフレットフレームの形状が管状であり、前記リーフレットフレームが複数のリーフレット窓の輪郭を定め、前記リーフレット窓のそれぞれが2つのリーフレット窓側部とリーフレット窓基部とを含み、隣接する2つのリーフレット窓側部の終端が交連ポストにあり、各リーフレットの平面域が、隣り合う2つの交連ポストの頂点を結ぶラインの下側且つ外側に位置する、請求項1に記載の人工弁。
前記リーフレットフレームの形状が管状であり、前記リーフレットフレームが複数のリーフレット窓の輪郭を定め、前記リーフレット窓のそれぞれが2つのリーフレット窓側部とリーフレット窓基部とを含み、前記複数のリーフレットのそれぞれが、前記窓基部と連結しているリーフレット基部、及び前記2つの窓側部の1つと連結している2つのリーフレット側部を含む、請求項1に記載の人工弁。
前記リーフレットフレームが、相互に連結した複数のリーフレット窓を画定し、さらに、1つのリーフレット窓のリーフレット窓側部が隣接するリーフレット窓のリーフレット窓側部と相互に連結されている、請求項1に記載の人工弁。
前記リーフレットが、複数の細孔を有する少なくとも1層のフルオロポリマー膜と、前記少なくとも1層のフルオロポリマー膜の細孔のほぼ全てに存在するエラストマーとを有するフィルムを含む、請求項1に記載の人工弁。
【発明を実施するための形態】
【0012】
当業者であれば、本開示の種々の態様が、目的の機能を実行するように構成された多くの方法及び装置によって実現可能であることを容易に理解するであろう。別の言い方をすると、目的の機能を実行するためには他の方法及び装置を本明細書に組み込むことができる。また、本明細書中で参照されている添付図面は必ずしも一定の比率で描かれておらず、本開示の種々の態様を説明するために誇張されている場合もあることに留意されたい。またその点に関して、これら図面は限定的なものと解釈すべきではない。
【0013】
本明細書中の実施形態は様々な原理や考えに関連して記載されているが、記載の実施形態は理論に拘束されるものではない。例えば、各実施形態は、人工弁、より具体的には人工心臓弁に関連して本明細書中において記載されているが、本開示の範囲内にある実施形態は、同様の構造及び/又は機能をもつあらゆる弁や機構に対して適用することができる。さらに、本開示の範囲内にある実施形態は非心臓用途に適用することもできる。
【0014】
本明細書において、人工弁に関する文脈で用いるリーフレットという用語は、差圧の影響を受けて開放位置と閉鎖位置で切り替わるように動作可能な、一方向弁の構成要素である。開放位置においては、リーフレットによって血液が弁を通過することが可能となる。閉鎖位置においては、リーフレットによって弁を逆流することが実質的に妨げられる。複数のリーフレットを備える実施形態においては、各リーフレットが、隣接するリーフレットの少なくとも1つと協同して血液の逆流を妨げる。血液中の差圧は、心室や心房の収縮等によって生じるが、通常は、リーフレットが閉鎖した際にその片側に蓄積する流体圧力が原因となる。弁の流入側にかかる圧力が弁の流出側にかかる圧力を上回ると、リーフレットが開いて血液が通過する。血液が弁を通過して隣接する部屋や血管に流入すると、流入側にかかる圧力と流出側にかかる圧力が均等になる。弁の流出側にかかる圧力が弁の流入側にかかる血圧を上回ると、リーフレットが閉鎖位置に戻るため、血液が弁を逆流することが概ね防がれる。
【0015】
本明細書で用いる膜という用語は、限定するものではないが、延伸フルオロポリマー等の単体組成物を含むシート状材料を指す。
【0016】
本明細書で用いる複合材料という用語は、限定するものではないが、延伸フルオロポリマー等の膜と、限定するものではないが、フルオロエラストマー等のエラストマーとの組合せを指す。エラストマーは、膜の多孔構造の内側に吸収されていてもよいし、膜の片側又は両側にコーティングされていてもよいし、膜にコーティング且つ吸収されていてもよい。
【0017】
本明細書で用いる積層体という用語は、膜、複合材料又はエラストマー等の他の材料、及びこれらの組合せからなる複数の層を指す。
【0018】
本明細書で用いるフィルムという用語は、膜、複合材料、積層体の1種以上を総称して指す。
【0019】
本明細書で用いる生体適合性材料という用語は、フィルム、又は限定するものではないが、ウシ心膜等の生体物質を総称して指す。
【0020】
リーフレット窓という用語は、フレームによって形成される、そこからリーフレットが延びる空間と定義される。リーフレットは、フレーム要素から延びていてもよいし、フレーム要素近傍から延びていてフレーム要素と間隔が空いていてもよい。
【0021】
自然弁開口部及び組織開口部という用語は、人工弁を挿入できる解剖学的構造体を指す。かかる解剖学的構造体としては、限定するものではないが、心臓弁が外科的に除去されていてもされていなくてもよい場所が挙げられる。人工弁を収容し得る他の解剖学的構造体としては、限定するものではないが、静脈、動脈、管、側路等が挙げられる。本明細書中においては自然弁を人工弁に置換することが述べられているが、弁開口部又はインプラント部位は、特定の目的用の弁を収容し得る人工導管又は生体導管中の場所を指すこともあるため、本明細書中に記載の実施形態の範囲は弁置換に限定されるものではないということを理解されたい。
【0022】
本明細書で用いる「連結する」とは、直接的又は間接的、また永続的又は一時的に、接合、連結、接続、付着、接着、添付、又は結合することを意味する。
【0023】
本明細書中の実施形態には、限定するものではないが心臓弁置換等の外科的及び経カテーテル的配置に好適な人工弁のための、種々の装置、システム及び方法が含まれる。かかる弁は、リーフレットが開くと弁開口部への流入が可能となり、閉じると弁開口部が塞がれて流体差圧による流入が防がれる、一方向弁として動作可能である。
【0024】
本明細書中に記載の実施形態では、合成材料は、自然弁の複製物を基にした材料と比べるとかかる応力が最小限である。これは、一部はリーフレット材料の座屈が少ないことによる。
【0025】
本明細書中に記載の実施形態は、制御されたリーフレットの開放について述べている。弁リーフレットの耐久性は、主に開閉サイクル中のリーフレットの屈曲性によって決まるが、半径の小さい屈曲部、折り目、及び特に交差した折り目があるとリーフレットに高応力領域が生じることがあり、高応力領域があると繰り返し荷重がかかった際に穴や裂け目が生じるおそれがある。本明細書中に記載の実施形態には折り目の形成を最小限にするためのリーフレットの形状の特徴が記載されているが、これは、曲がるとセロハン状になりやすい薄くて高弾性のリーフレットにおいて特に重要な特徴である。リーフレットの屈曲が制限されていないと、折り目が生じるだけでなく、折り目の交点によって、開放と閉鎖の両方において屈曲に逆らってリーフレットの運動速度を遅くしてしまう大きな三次元構造が形成されることになる。本明細書中に記載の実施形態では、リーフレットの開放が制御されており、リーフレットに平面域が含まれることによって折り目の形成が最小限になる。
弁
【0026】
図1Aは、ある実施形態における弁100の側面図である。
図1Bは、
図1Aの弁100の斜視図である。
図1C及び1Dは、
図1Aの弁100の、それぞれ開放形態及び閉鎖形態の軸線方向図である。弁100は、リーフレットフレーム130と、リーフレット140の輪郭を定めるフィルム160とを備える。
図2は、
図1Aの弁100のリーフレットフレーム130の側面図であり、概ね管状である弁100の構成要素をよりわかりやすく説明するために、リーフレットフレーム130を長手方向に切断して広げて示している。
図1A、1B及び1D、並びに5及び6では、特徴をよりわかりやすく示すためにリーフレット140をわずかに開いて示しているが、完全に閉鎖された弁100では、リーフレット140の自由縁部142が下流の流体圧力の影響を受けて一体となって接合し、その結果、弁が閉鎖して下流の血液が弁を逆流するのを防いでいることを理解されたい。
フレーム
【0027】
図1A〜1Dを参照すると、リーフレットフレーム130は、ある実施形態においては、開口122の概ね開放されたパターンの輪郭を定める概ね管状の部材である。経カテーテルの実施形態においては、リーフレットフレーム130は、圧縮及び拡張ができて直径を変えられるように動作可能である。リーフレットフレーム130は、フレーム第1端部121aと、フレーム第1端部121aの反対側にあるフレーム第2端部121bとを備える。リーフレットフレーム130は、
図1Aに示すように、リーフレットフレーム外面126aと、リーフレットフレーム外面126aの反対側にあるリーフレットフレーム内面126bとを備える。リーフレットフレーム130により、リーフレット自由縁部142と連結した交連ポスト136の輪郭が定められる。
【0028】
図4は、ある実施形態における弁100のリーフレットフレーム130aの側面図であり、概ね管状であるフレーム130aの構成要素をよりわかりやすく説明するために、リーフレットフレーム130aを長手方向に切断して広げて示している。リーフレットフレーム130aは、血管内配置に必要となる圧縮及び拡張に影響を与えるのに好適な鋭角フレーム要素を備える。点線でリーフレット140を示しており、リーフレット窓側部133とリーフレット窓基部134とによって形成されたリーフレット窓137の内側にリーフレット140があることを表している。
【0029】
リーフレットフレーム130は、当技術分野においてステントとして知られている構造体を備えてもよい。ステントとは、組織内への経皮カテーテルデリバリーに好適な小さな径を有し、組織内に配備されると拡張して径が大きくなり得る管状部材である。様々なデザインや材料特性を有するステントが当技術分野においてよく知られている。
【0030】
リーフレットフレーム130により、幾何学的形状及び/又は直線若しくは曲線状の連続した洞様構造等の、反復可能又は不可能な多くの特徴が定まり得る。幾何学的形状には、円周方向へのほぼ均一な圧縮と拡張が可能なあらゆる形状が含まれ得る。リーフレットフレーム130は、切断されたチューブ、又は特定の目的に好適ないずれかの他の構成要素を備えてもよい。リーフレットフレーム130は、エッチング、切断、レーザー切断又は打ち抜きによって管状に加工してもよいし、シート状の材料に加工した後、略円筒構造体に成形してもよい。或いは、ワイヤー、曲げ可能な細片、又はそれらを一続きにしたもの等の縦長材料を曲げるか又はより合わせて、概ね均一に円周方向に圧縮されて小さくなったり、拡張して大きくなったりできる開骨格を壁面に備える略円筒構造体に成形してもよい。
【0031】
リーフレットフレーム130は、いずれかの金属材料又は高分子生体適合性材料を含み得る。例えば、リーフレットフレーム130は、限定するものではないが、ニチノール、コバルト−ニッケル合金、ステンレス鋼、ポリプロピレン、アセチルホモポリマー、アセチルコポリマー、ePTFE、他の合金やポリマー、又は本明細書に記載の機能を果たすのに充分な物理的性質及び機械的性質を有する他のいずれかの生体適合性材料等の材料を含んでもよい。
【0032】
各実施形態においては、リーフレットフレーム130は、弁100の経カテーテル的配備を示した
図3Aに示すように、インプラント部位と確実にかみ合って弁100をインプラント部位にしっかり固定するように構成されてもよい。ある実施形態においては、リーフレットフレーム130は、組織開口部150に対する並列状態を充分に維持して位置が保たれるように、小さな弾性収縮力を有する充分に剛直なフレームを備え得る。別の実施形態においては、リーフレットフレーム130は、弁100が拡張して組織開口部150の中に入った際にしっかり据え付けられるように、直径が組織開口部150よりも大きくなるまで拡張するように構成されてもよい。別の実施形態においては、リーフレットフレーム130は、組織開口部150等のインプラント部位とかみ合って弁100をインプラント部位に固定するように構成された1つ又は複数の固定材(図示せず)を備えてもよい。
【0033】
弁100をインプラント部位に連結させる他の構成要素や手段が期待されている。例えば、限定するものではないが、機械的手段、接着性手段等の他の手段を用いて、弁100を人工導管や生体導管に連結させてもよい。
【0034】
後述するが、外科的弁100の実施形態は、外科的弁100が一定の径のものであってもよく、圧縮されて再拡張するように動作可能である必要がないため、ジグザグの形態を有しても有しなくてもよい。
【0035】
図2を参照すると、リーフレットフレームは、等脚台形を形成しているリーフレット窓137の輪郭をなす基部要素138によって相互に連結した略二等辺三角形を形成している、間隔が置かれた複数のリーフレットフレーム要素を備える。各リーフレット窓側部133は、ある三角形の一辺と隣接する三角形の一辺により輪郭が定められ、各リーフレット窓基部134は、基部要素138により輪郭が定められる。
【0036】
再び
図1A及び2を参照すると、リーフレットフレーム第1端部121aは、略等脚台形を形成しているリーフレットフレーム要素の尖端から延びているポスト136をさらに備える。ポスト136はリーフレット自由縁部142に影響し、互いに隣接するリーフレット自由縁部142の間に生じる接合領域146がより大きくなったり幅広になったりすることがある。
【0037】
ある実施形態においては、フレーム130は、基部134と基部134から分かれ出る2つの側部133とを有する平面等脚台形を管状のフレーム130に巻き付けることによって少なくとも一部の形状が決まるフレームを備え、
図2に示すように、隣接する等脚台形の側部133がフレーム第1端部121aで結合する。点線でリーフレット140を示しており、リーフレット窓側部133とリーフレット窓基部134とによって形成されたリーフレット窓137の内側にリーフレット143があることを表している。
ソーイングカフ
【0038】
外科的弁100の実施形態においては、弁100は、
図3Bに示すように、ある実施形態におけるリーフレットフレーム130の周りにソーイングカフ170をさらに備える。ソーイングカフ170は、インプラント部位に連結させるために縫合できる構造となるように動作可能である。ソーイングカフ170は、限定するものではないが、ダブルベロアポリエステル等のいずれかの好適な材料を含んでもよい。ソーイングカフ170は、リーフレットフレーム130の基部の外周部を取り囲むように設けてもよい。ソーイングカフは当技術分野においては公知である。
【0039】
人工弁のある実施形態においては、各リーフレット140の形状は、
図2において破線で示すように、2つのリーフレット側部141と、リーフレット基部143と、リーフレット基部143の反対側にある自由縁部142とを有する略等脚台形であり、2つのリーフレット側部141はリーフレット基部143から分かれ出ており、リーフレット基部143は略平坦である。
【0040】
ある実施形態においては、リーフレットフレーム130は、フレーム第1端部と、フレーム第1端部の反対側にあるフレーム第2端部とを備え、リーフレット窓の形状は、少なくとも一部は、基部と基部から分かれ出た2つの側部とを有する平面等脚台形を管状のフレームに巻き付けることによって決まり、隣接する等脚台形の側部がフレーム第2端部で結合する。
【0041】
経カテーテル弁100の実施形態においては、リーフレットフレーム130は、弾性的、且つ/又は塑性的に圧縮されて直径が比較的小さくなり、経皮カテーテルによる装着や送達に適応可能となる。
【0042】
ある実施形態においては、リーフレットフレーム130は、荷重を受けると曲がり、その荷重を取り除くと元の形状を保持するように動作可能な形状記憶材料を含むため、リーフレットフレーム130は圧縮された形状から所定の形状に自己拡張することができる。ある実施形態においては、リーフレットフレーム130は塑性変形可能であり、バルーンにより拡張される。別の実施形態においては、リーフレットフレーム130は弾性変形可能であり、自己拡張する。
フィルム
【0043】
各実施形態においては、フィルム160は概して、生体適合性であり、リーフレットをフレームに連結させるように構成されたいずれかのシート状材料である。なお、「フィルム」という用語は、特定の目的に好適な1種以上の生体適合性材料の総称として用いられる。リーフレット140もフィルム160に含まれている。
【0044】
ある実施形態においては、生体適合性材料は、生体適合性ポリマー等の、生物由来ではないが特定の目的に充分な可撓性及び強度を有するフィルム160である。ある実施形態においては、フィルム160は、複合材料と呼ばれる、エラストマーと複合化した生体適合性ポリマーを含む。
【0045】
各種フィルム160の詳細を以下に述べる。ある実施形態においては、フィルム160は、概ね管状の材料から成形されてリーフレットフレーム130の少なくとも一部を被覆してもよい。フィルム160は、膜、複合材料、積層体の1種以上を含み得る。各種フィルム160の詳細を以下に述べる。
リーフレット
【0046】
各リーフレット窓137には、
図1A及び2に示すように、リーフレット窓側部133の一部と連結したフィルム160等の生体適合性材料が付与されており、フィルム160によってリーフレット140の輪郭が定められる。ある実施形態においては、各リーフレット140によりリーフレット自由縁部142及びリーフレット基部143の輪郭が定められる。後述するが、リーフレット基部143の形態には複数の実施形態があり得る。ある実施形態においては、フィルム160はリーフレット窓側部133の一部とリーフレット窓基部134とに連結しており、このリーフレット窓側部133の一部とリーフレット窓基部134によってリーフレット140の輪郭が定められている。別の実施形態においては、フィルム160はリーフレット窓側部の一部と連結している。
【0047】
リーフレット140が完全開放位置にある場合、弁100には、
図1Cに示すような略円形弁開口部102が現れる。リーフレット140が開放位置にある時は、弁開口部102を流体が通過できる。
【0048】
リーフレット140が開放位置と閉鎖位置の間を循環する際には、リーフレット140は概して、リーフレット基部143やリーフレット窓側部133のリーフレットが連結している部分のあたりで屈曲する。弁100が閉じると、
図1Dに示すように、各リーフレット自由縁部142の概ね約半分が、隣接するリーフレット140のリーフレット自由縁部142の隣接する半分と接触する。
図1Dの実施形態の3枚のリーフレット140は三重点148に集まる。リーフレット140が流体の流れを止める閉鎖位置にある時は、弁開口部102が塞がれる。
【0049】
図1Dを参照すると、ある実施形態においては、各リーフレット140は、中央領域182と、中央領域182の両側にある2つの側領域184とを含む。中央領域182は、2つの中央領域側部183とリーフレット基部143と自由縁部142とによって輪郭が定められた略三角形の形状をしている。2つの中央領域側部183は、リーフレット基部143から自由縁部142に向かって集束している。
【0050】
ある実施形態においては、弁100が閉鎖位置にあって流体圧力を受けていない時、中央領域182は略平面状であり、平面域192を形成している。平面域192は、頂点がリーフレットフレーム130に向かって延びている略二等辺三角形の形状をしている。
図1Dを参照すると、頂点ラインLaが、リーフレット140の頂点147を結ぶように示されている。この頂点ラインLaによって、リーフレット140が、リーフレットフレーム130に隣接する第1の領域149aと、リーフレット自由縁部に隣接する第2の領域149bとに分割される。第1の領域149aは、第2の領域149bよりも含まれる平面域192の割合が大きい。他の実施形態においては、各リーフレット140の平面域192の大部分は、隣り合う2つの交連ポスト136の頂点を結ぶ頂点ラインLaの下側且つ外側に位置する。第1の領域149a側と第2の領域149b側における平面域192の面積がこのような比率であると、第1の領域149a側よりも第2の領域149b側のほうが平面域192の面積が大きい場合よりも、よりよいリーフレット開放動態が得られることがわかっている。
【0051】
リーフレット140は、心室や心房の収縮等によって生じる血液中の差圧によって作動するように構成可能であるが、かかる差圧は、通常は、弁100が閉鎖した際にその片側に蓄積する流体圧力によって生じる。弁100の流入側にかかる圧力が弁100の流出側にかかる圧力を上回ると、リーフレット140が開いて血液が通過する。血液が弁100を通過して隣接する部屋や血管に流入すると、圧力が均等になる。弁100の流出側にかかる圧力が弁100の流入側にかかる血圧を上回ると、リーフレット140が閉鎖位置に戻るため、血液が弁100の流入側に逆流することが概ね防がれる。
【0052】
各実施形態においては、リーフレットフレーム130は、特定の目的に好適な、あらゆる数のリーフレット窓137、ひいてはリーフレット140を備えてもよい。1つ、2つ、3つ又はそれ以上のリーフレット窓137と、それに対応するリーフレット140とを備えるリーフレットフレーム130が考えられる。
【0053】
図5は、ある実施形態における、開放形態の別の弁100の軸線方向図である。弁100が閉鎖位置にあって流体圧力を受けていない時、中央領域182は略平面状であり、平面域192を形成している。平面域192の形状は、円の略切頭くさび形である。
【0054】
図6は、ある実施形態における、開放形態のさらに別の弁100の軸線方向図である。弁100が閉鎖位置にあって流体圧力を受けていない時、中央領域182は略平面状であり、平面域192を形成している。平面域192の形状は、リーフレットフレーム130と接触していない略等脚台形である。なお、平面域192が形成し得る特定の目的に好適な形状は多数存在し得ることを理解されたい。
【0055】
経カテーテル的配置に好適な弁100の実施形態においては、弁100は、圧縮して径の小さい圧潰形態にすることも、拡張して拡張形態にすることもできるため、弁100は、
図3Aに示すように、圧潰形態にてカテーテル経由で送達し、組織開口部150内に配置すると拡張することができる。リーフレットフレーム130は、圧潰形態から拡張形態に移行する際に円周方向へ均一に回復するように動作可能である。
【0056】
弁100は、特定の目的に応じて、デリバリーカテーテルに取り付けることができる。圧潰形態における弁100の径は、一部はフレームの厚さとリーフレットの厚さによって決まる。
リーフレットフィルム
【0057】
リーフレット140を構成する生体適合性材料は、いずれかの生体組織、又は生体適合性ポリマー等の充分な弾力性及び可撓性を有する合成生体適合性材料を含み得る。ある実施形態においては、リーフレット140は、複合材料と呼ばれる、エラストマーと複合化した生体適合性ポリマーを含む。一実施形態における材料としては、微小繊維のマトリックス中に複数の空間を含む延伸フルオロポリマー膜とエラストマー材料とを含む複合材料が挙げられる。なお、本開示の範囲を逸脱しない範囲であれば、複数種のフルオロポリマー膜と複数種のエラストマー材料を組み合わせて積層体を形成してもよいということを理解すべきである。また、本開示の範囲を逸脱しない範囲であれば、エラストマー材料は、複数のエラストマー、無機充填剤等の複数種の非エラストマー成分、治療薬、X線不透過性マーカー及び同種のものを含み得るということも理解すべきである。
【0058】
ある実施形態においては、複合材料は、例えばBacinoによる米国特許第7,306,729号明細書に概要が記載されている、多孔性ePTFE膜からなる延伸フルオロポリマー材料を含む。
【0059】
上記延伸フルオロポリマー材料の形成に用いる延伸性フルオロポリマーは、PTFEホモポリマーを含んでもよい。別の実施形態においては、PTFEの混合物、延伸性変性PTFE及び/又はPTFEの延伸コポリマーを用いてもよい。好適なフルオロポリマー材料の例は、限定するものではないが、例えば、Brancaによる米国特許第5,708,044号明細書、Baillieによる米国特許第6,541,589号明細書、Sabolらによる米国特許第7,531,611号明細書、Fordによる米国特許出願第11/906,877号明細書、Xuらによる米国特許出願第12/410,050号明細書等に記載されている。
【0060】
延伸フルオロポリマー膜は、目的のリーフレット性能を実現するためにいずれかの好適な微細構造を含み得る。ある実施形態においては、延伸フルオロポリマーは、例えばGoreによる米国特許第3,953,566号明細書に記載の、微小繊維によって相互に連結した結節の微細構造を含む。この微小繊維は、結節から複数の方向に向かって放射状に延びており、膜は概ね均質な構造を有している。このような微細構造を有する膜は、2つの直交方向におけるマトリックス引張強度の比が、通常は2未満であり、1.5未満の場合もある。
【0061】
別の実施形態においては、延伸フルオロポリマー膜は、Bacinoによる米国特許第7,306,729号明細書に概要が教示されている、実質的に微小繊維のみの微細構造を有する。実質的に微小繊維のみを有する延伸フルオロポリマー膜は、例えば20m
2/g超、又は25m
2/g超といった広い表面積を有してもよく、いくつかの実施形態においては、2つの直交方向におけるマトリックス引張強度の積が1.5×10
5MPa
2以上であり、且つ/又は2つの直交方向におけるマトリックス引張強度の比が4未満、場合によっては1.5未満である、強度のバランスに優れた材料を提供し得る。
【0062】
延伸フルオロポリマー膜は、目的のリーフレット性能を実現するために、好適な厚さと質量を有するように調整してもよい。例えば、限定するものではないが、リーフレット140は、厚さが約0.1μmの延伸フルオロポリマー膜を備える。この延伸フルオロポリマー膜は、約1.15g/m
2の単位面積質量を有し得る。本発明のある実施形態における膜は、長手方向に約411MPa、横方向に315MPaのマトリックス引張強度を有し得る。
【0063】
リーフレットの目的の特性を向上させるために、細孔内、膜の原料の中、又は膜の層の間にさらなる材料を投入してもよい。本明細書に記載の複合材料は、目的のリーフレット性能を実現するために、好適な厚さと質量を有するように調整してもよい。各実施形態における複合材料は、フルオロポリマー膜を含んでもよく、厚さが約1.9μmで単位面積質量が約4.1g/m
2であってもよい。
【0064】
エラストマーと複合化して複合材料となる延伸フルオロポリマー膜を用いることにより、心臓弁リーフレット等の高サイクル屈曲性インプラント用途での使用に必要とされる性能属性が、様々な形で本開示の構成要素に付与される。例えば、エラストマーを加えることにより、ePTFEのみの材料で見られた硬化が無くなるか又は低減し、リーフレットの耐疲労性能が向上し得る。さらに、性能の低下につながり得るしわや折り目等の永久的な変形が材料に生じにくくなる。一実施形態においては、延伸フルオロポリマー膜の多孔構造内の孔隙のほぼ全てをエラストマーが占めている。別の実施形態においては、少なくとも1つのフルオロポリマー層の細孔のほぼ全てにエラストマーが存在している。エラストマーを孔隙に充填するか、又は細孔のほぼ全てに存在させることによって、望みに反して異物が複合材料に混入する可能性のある空間が減少する。そのような異物の例としては、血液との接触によって膜中に引き込まれ得るカルシウムがある。例えば心臓弁リーフレットに使用されるような複合材料にカルシウムが混入すると、開閉サイクルの間に機械的損傷が発生し、その結果リーフレットに穴が開いて血行動態が悪化するおそれがある。
【0065】
ある実施形態においては、ePTFEと複合化したエラストマーは、例えばChangらによる米国特許第7,462,675号明細書に記載されている、テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の熱可塑性コポリマーである。上述のとおり、エラストマーを延伸フルオロポリマー膜と複合化する際は、エラストマーが延伸フルオロポリマー膜内の空隙や細孔のほぼ全てを占めるようにして複合材料を形成する。このような延伸フルオロポリマー膜の細孔内へのエラストマーの充填は、種々の方法で行うことができる。一実施形態においては、延伸フルオロポリマー膜の細孔の充填方法は、延伸フルオロポリマー膜の細孔内に部分的又は全体的に流入するのに適した粘度と表面張力とを有する溶液を得るのに好適な溶媒にエラストマーを溶解させ、溶媒を蒸発させて充填剤を残す工程を含む。
【0066】
一実施形態においては、複合材料は、ePTFEの外層2層とその間に挟まれたフルオロエラストマーの内層の3層を備える。さらに別のフルオロエラストマーが好適な場合もあり、Changらによる米国特許出願公開第2004/0024448号明細書にそれらについての記載がある。
【0067】
別の実施形態においては、延伸フルオロポリマー膜の細孔の充填方法は、分散液によって充填剤を送達して部分的又は全体的に延伸フルオロポリマー膜の細孔を充填する工程を含む。
【0068】
別の実施形態においては、延伸フルオロポリマー膜の細孔の充填方法は、延伸フルオロポリマー膜の細孔へのエラストマーの流入を可能とするような加熱及び/又は加圧条件下にて、多孔性延伸フルオロポリマー膜をエラストマーのシートに接触させる工程を含む。
【0069】
別の実施形態においては、延伸フルオロポリマー膜の細孔の充填方法は、まずエラストマーのプレポリマーを延伸フルオロポリマー膜の細孔に充填し、次にそのエラストマーを少なくとも部分的に硬化させることによって細孔内でエラストマーを重合させる工程を含む。
【0070】
フルオロポリマー材料又はePTFEから得られたリーフレットは、エラストマーの重量パーセントが最小値に達した後は、エラストマーの割合が増加するにつれて概ね性能が向上し、その結果サイクル寿命が大幅に延びた。一実施形態においては、ePTFEと複合化したエラストマーは、例えばChangらによる米国特許第7,462,675号明細書や当業者には公知と思われる他の文献に記載された、テトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルの熱可塑性コポリマーである。リーフレット140に使用するのに好適であり得る他の生体適合性ポリマーとしては、限定するものではないが、ウレタン、シリコーン(オルガノポリシロキサン)、ケイ素とウレタンのコポリマー、スチレン/イソブチレンコポリマー、ポリイソブチレン、ポリエチレン−コ−ポリ(酢酸ビニル)、ポリエステルコポリマー、ナイロンコポリマー、フッ素化炭化水素ポリマー、及びこれらのコポリマーや混合物のグループが挙げられる。
他の考察事項
【0071】
ある実施形態においては、弁100は、大動脈弁置換術で起こり得るような、インプラントした際に左心室の索枝を被覆しないことによる心臓刺激伝導系への干渉を防ぐように構成されてもよい。例えば、弁100の長さは、約25mm未満、又は約18mm未満であってもよい。また弁100は、弁100の長さと作動時の拡張径との関係を示すアスペクト比が1未満であってもよい。しかしながら弁100は、いずれの長さ、より広くは、望ましいいずれのサイズで製造してもよい。
【0072】
経カテーテルの実施形態においては、圧潰形態において、弁100は、圧潰時プロファイルが拡張時プロファイルの約35%未満であってもよい。例えば、拡張径が26mmの弁100は、圧潰径が約8mm未満、又は約6mm未満であってもよい。径の差異率は弁100のサイズ及び原料並びにその各種用途によって異なるため、実際の差異率は本開示により限定されるものではない。
【0073】
弁100は、生物活性剤をさらに含み得る。生物活性剤は、弁100をインプラントすると徐放されるようにフィルム160の一部又は全体に塗布してもよい。生物活性剤としては、限定するものではないが、血管拡張剤、抗凝血剤、抗血小板剤、限定するものではないがヘパリン等の抗血栓剤等が挙げられる。他にも生物活性剤としては、限定するものではないが、以下の物質が挙げられる:ビンカアルカロイド(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン(すなわち、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン、酵素(L−アスパラギンを系統的に代謝し、自身のアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を取り除くL−アスパラギナーゼ)等の天然物を含む抗増殖/抗有糸分裂剤;G(GP)IIb/IIIa阻害剤及びビトロネクチン受容体拮抗剤等の抗血小板剤;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン、クロランブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、アルキルスルホネート−ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジニン(DTIC)等の抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジン及びシタラビン)、プリン類似体及び関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2−クロロデオキシアデノシン{クラドリビン})等の抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗剤;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン(すなわちエストロゲン);抗凝血剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩及び他のトロンビン阻害剤);繊維素溶解剤(組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ等)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレベルジン);副腎皮質ステロイド(コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6α−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン及びデキサメタゾン)、非ステロイド剤(サリチル酸誘導体、すなわちアスピリン)等の抗炎症剤;パラアミノフェノール誘導体、すなわちアセトミノフェン;インドール及びインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク及びエトダラク)、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク及びケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェン及び誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸及びメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン及びオキシフェンタトラゾン)、ナブメトン、金化合物(オーラノフィン、アウロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);血管形成剤;血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF);アンギオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素供与体;アンチセンスオリジオヌクレオチド及びこれらの組合せ;細胞周期阻害剤、mTOR阻害剤及び増殖因子受容体シグナル伝達キナーゼ阻害剤;レテノイド;サイクリン/CDK阻害剤;HMG補酵素レダクターゼ阻害剤(スタチン);プロテアーゼ阻害剤。
経カテーテルデリバリーシステム
【0074】
ある実施形態においては、
図3Aを参照すると、弁デリバリーシステム500は、上述の圧潰形態及び拡張形態と、バルーンカテーテル等の、カテーテルを経由して弁100を配置するように構成された細長軟性カテーテル480とを有する弁100を備える。カテーテル480は、弁100を拡張させるため、且つ/又は、必要に応じて弁100を調節して適当な位置に据えるためのバルーンを含み得る。弁100は、脈管構造を通して送達するために、カテーテル480の遠位部に取り付けてもよい。カテーテル480上で弁を圧潰形態に保つために、弁デリバリーシステムは、経カテーテル弁100にぴったり合う着脱式シース(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0075】
送達方法は、近位端及び遠位端を有する細長軟性カテーテルの遠位端において弁を半径方向に圧縮して圧潰形態にし、経大腿又は経心尖経路にて弁を自然大動脈弁開口部等の組織開口部に送達し、弁を組織開口部内で拡張する工程を含み得る。弁は、バルーンを膨張させることにより拡張できる。
【0076】
送達方法は、近位端及び遠位端を有する細長軟性カテーテルの遠位部において弁を半径方向に圧縮して圧潰形態にする工程を含み得る。固定具は、弁の開口部とカテーテルのルーメンの中を通るテザーと接続させてもよいが、弁のポストの周りに装着する。次に、送達経路を通じて弁を自然大動脈弁開口部等の自然弁開口部に送達し、自然開口部内に拡張させる。送達経路は、経大腿又は経心尖経路を含み得る。弁は、バルーンを膨張させることにより拡張できる。
外科的実施形態
【0077】
弁100の各実施形態においては、経カテーテル技術を用いるのではなく、外科的にインプラントしてもよい。外科的にインプラントした弁100の実施形態は上記とほぼ同じであってもよいが、
図3Bに示すように、ある実施形態においては、リーフレットフレーム外面126aに隣接したソーイングカフが付加される。ソーイングカフは、当技術分野においては周知であるが、組織開口部等のインプラント部位に弁100を連結させるために縫合できる構造となるように動作可能である。ソーイングカフは、限定するものではないが、ダブルベロアポリエステル等のいずれかの好適な材料を含んでもよい。ソーイングカフは、リーフレットフレーム130を取り囲むように設けてもよいし、リーフレットフレーム130から垂れ下がるように弁周囲に設けてもよい。
製造方法
【0078】
本明細書に記載の各実施形態は、本明細書に記載の弁100の実施形態の製造方法にも関連する。各種実施形態を製造するために、円筒形マンドレル710を用いてもよい。
図5を参照すると、マンドレル710は、その上にリーフレットフレーム130を受けるように動作可能な構造形態を備える。
【0079】
本明細書に記載の各実施形態は、本明細書に記載の弁100の実施形態の製造方法にも関連する。各種実施形態を製造するために、円筒形マンドレル710を用いてもよい。
図7を参照すると、マンドレル710は、その上にリーフレットフレーム130を受けるように動作可能な構造形態を備える。弁100の製造方法のある実施形態は、本明細書に記載の複合材料等のフィルム160の第1の層を、管状にしてマンドレル710に巻き付ける工程、リーフレットフレーム130を、
図7に示すようにフィルム160の第1の層の上に設置する工程、フィルム160の第2の層をリーフレットフレーム130の上に形成する工程、得られた組立体を熱硬化する工程、組立体を、
図8A及び8Bに示すように切断マンドレル712に収容させる工程、フィルム160をリーフレット窓137内のリーフレット窓上端部に沿って切断する工程を含む。
【実施例】
【0080】
実施例1
好ましい実施形態においては、延伸フルオロポリマー膜とエラストマー材料を有する複合材料から形成され、半硬質の非折りたたみ式金属フレームに接合されたポリマー製リーフレットを有し、ストレインリリーフをさらに有する心臓弁は、以下の方法で作製した。
【0081】
外径26.0mm、肉厚0.6mmの形状の1本の硬質MP35Nコバルトクロム製チューブをレーザー加工して弁フレームを作製した。このフレームを電解研磨すると、各面から0.0127mmの材料が除去され、丸くなった縁部が残った。フレームに粗面処理を施して、フレームに対するリーフレットの接着性を向上させた。フレームをアセトンの超音波浴に約5分間浸漬して洗浄した。次に、当業者に一般に知られている装置(例えば、PVA TePLaアメリカ社(カリフォルニア州コロナ)製プラズマペン)及び方法を用いて、金属フレームの面全体にプラズマ処理を施した。この処理は、フッ化エチレンプロピレン(FEP)接着剤の濡れ性を向上させるのにも役立った。
【0082】
次に、FEP粉末(ダイキンアメリカ社、ニューヨーク州オレンジバーグ)をフレームに付与した。より具体的には、標準的な台所型混合機等の密閉式混合装置内においてFEP粉末を攪拌して、空中に浮遊した「雲」を形成した。この時、フレームは雲の中に吊り下げておく。フレームの面全体に粉末の層が付着するまで、フレームをFEP粉末の雲にさらした。次に、フレームを320℃に設定した強制空気オーブンに約3分間入れて熱処理を施した。これにより粉末が溶融して、薄いコーティングとしてフレーム全体に付着した。フレームをオーブンから取り出して室温付近まで放冷した。
【0083】
ポリマー製ストレインリリーフを、以下の方法でフレームに装着した。直径15mmの薄肉(122μm)焼結ePTFEチューブを、テーパ状マンドレルに被せるようにして放射状に延ばして24.5mmの通気型金属製マンドレルに取り付けた。FEPコーティングを隙間なく施したほぼ無孔のePTFE膜の層を2層、FEP側をマンドレルに向けてマンドレルの周りに巻き付けた。巻き付け後のマンドレルを320℃に設定した対流式オーブンに入れ、20分間加熱して、室温に空冷した。ePTFEとほぼ無孔のePTFE膜とが合わさってインナー剥離ライナーとなり、マンドレルの通気孔間を圧力が伝わるように外科用メスを用いてこれに穴を開けた。この剥離ライナーは後工程にて全て取り外す。
【0084】
長さ5cmの、内径22mmの厚肉(990μ)部分焼結ePTFEチューブ(密度=0.3g/cm
3)を、剥離ライナー付きの24.5mmの通気型金属製マンドレルに取り付けた。テーパ状マンドレルで延ばすことによってePTFEチューブの内径を拡大して、径のより大きなマンドレルに対応できるようにした。
【0085】
タイプ1FEP(ASTM D3368)の薄膜(4μm)を溶融押出と延伸により作製した。このFEPを1層、長さ5cmのePTFEチューブに巻き付けた。
【0086】
FEP粉末をコーティングしたフレームを、全長5cmのePTFEチューブ及びFEPフィルムの概ね中央の位置で通気型金属製マンドレルに取り付けた。
【0087】
FEPを1層、フレームと長さ5cmのePTFEチューブに巻き付けた。
【0088】
長さ5cmの厚さ990μm/内径22mmのePTFEチューブをさらに1つ、より大きな構築物直径に対応できるようにその半径をテーパ状マンドレルで延ばすことによって、24.5mmの通気型金属製マンドレル上に層状に重ねた組立体に取り付けた。
【0089】
ほぼ無孔のePTFE膜を、構築物よりも直径の大きな筒状の形態にし、組立体に被せた。これを犠牲チューブと呼ぶ。焼結ePTFEファイバー(例えば、ゴア(登録商標)ラステックス(登録商標)ソーイングスレッド、部品番号S024T2、デラウェア州ニューアーク)を用いて犠牲チューブの両端を閉じてマンドレルを密封した。
【0090】
マンドレルを含む組立体を、マンドレルの内側は真空に保ちつつ上記の犠牲チューブの外側には100psiの空気圧を加えることができる対流式オーブン(温度設定値:390℃)で加熱した。マンドレルの温度(マンドレルの内径に直接接触した熱電対にて測定)が約360℃に達するように、組立体を40分間加熱処理した。組立体をオーブンから取り出し、100psiの圧力と真空の条件下のまま室温付近まで放冷した。
【0091】
続いて、ラステックス(登録商標)ファイバー及び犠牲チューブを取り外した。約30psiの圧力をマンドレルの内径に加えて組立体を取り外しやすくした。インナー剥離ライナーを、裏返しにして軸方向に引き離すことにより組立体の内径から剥がした。
【0092】
余分なポリマー材料を、張り出しを約0.5〜1.0mm残して外科用メスで切り取って、リーフレット窓及びフレームの底部から除去した。
【0093】
続いて、リーフレット材料を調製した。米国特許第7,306,729号明細書に記載された一般的な教示内容に従ってePTFEの膜を作製した。このePTFE膜は、単位面積質量が0.452g/m
2、厚さが約508nm、マトリックス引張強度が長手方向に705MPa、横方向に385MPaであった。この膜にフルオロエラストマーを吸収させた。このコポリマーは、本質的には約65〜70重量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルからなり、補足的に約35〜30重量パーセントのテトラフルオロエチレンからなる。
【0094】
フルオロエラストマーを、ノベックHFE7500(3M社、ミネソタ州セントポール)に2.5%濃度で溶解させた。この溶液を、(ポリプロピレン製離型フィルムで支持しながら)メイヤーバーでePTFE膜に塗布し、145℃に設定した対流式オーブンで30秒間乾燥させた。塗布工程を2回行った後、得られたePTFE/フルオロエラストマー、すなわち複合材料は、単位面積質量が1.75g/m
2、フルオロポリマーの量が29.3重量%、ドーム破裂強度が約8.6KPa、厚さが0.81μmであった。
【0095】
次に、ストレインリリーフの輪郭をなすポリマー材料に包まれたフレームを、円筒状又は管状のリーフレット材料に以下の方法で装着した。剥離ライナーを24.5mmの通気型マンドレルに取り付け、マンドレルの通気孔間を圧力が伝わるように外科用メスを用いて穴を開けた。
【0096】
ポリマー製ストレインリリーフ付きフレームを、全長100cmのマンドレルの概ね中央の位置で、通気型金属製マンドレルを覆っている剥離ライナーに取り付けた。
【0097】
62層のリーフレット材料を、フレーム及び長さ100cmのマンドレルに巻き付けた。余分なリーフレット材料を、外科用メスでマンドレルの通気孔付近から切り落とした。
【0098】
犠牲チューブを組立体に被せ、ラステックス(登録商標)ファイバーを用いて犠牲チューブの両端を閉じてマンドレルを密封した。
【0099】
マンドレルを含む組立体を、マンドレルの内側は真空に保ちつつ上記の犠牲チューブの外側には100psiの空気圧を加えることができる対流式オーブン(温度設定値:390℃)で加熱した。マンドレルの温度(マンドレルの内径に直接接触した熱電対にて測定)が約285℃に達するように、組立体を23分間加熱処理した。組立体をオーブンから取り出し、100psiの圧力と真空の条件下のまま室温付近まで放冷した。
【0100】
続いて、ラステックス(登録商標)ファイバー及び犠牲チューブを取り外した。約30psiの圧力をマンドレルの内側に加えて組立体を取り外しやすくした。インナー剥離ライナーを、裏返しにして軸方向に引き離すことにより組立体の内径から剥がした。
【0101】
次に、円筒状のフレーム/リーフレット組立体を、以下の方法で最終的な閉じられたリーフレットの形状に成形した。組立体を、リーフレットの閉じられた形状の輪郭を定める型穴を有する24.5mmの通気型マンドレルに取り付けた。
【0102】
ラステックス(登録商標)ファイバーを用いてリーフレットチューブの両端を閉じて、マンドレルの円周方向にある溝を密封した。
【0103】
マンドレルを含む組立体を、マンドレルの内側は真空に保ちつつ上記の犠牲チューブの外側には100psiの空気圧を加えることができる対流式オーブン(温度設定値:390℃)で加熱した。マンドレルの温度(マンドレルの内径に直接接触した熱電対にて測定)が約285℃に達するように、組立体を23分間加熱処理した。組立体をオーブンから取り出し、100psiの圧力と真空の条件下のまま室温付近まで放冷した。続いて、ラステックス(登録商標)ファイバーを取り外し、約10psiの圧力をマンドレルの内径に加えて組立体を取り外しやすくした。
【0104】
図6A及び6Bに示す切断マンドレル712の型穴714中に描かれた自由縁部ラインに概ね沿って、余分なリーフレット材料を切り取った。
【0105】
得られたリーフレットは、フルオロポリマーを28.22重量%含み、厚さが50.3μmであった。各リーフレットは、複合材料を62層有し、厚さ/層数の比が0.81μmであった。
【0106】
得られた弁組立体は、複数の細孔を有する複数のフルオロポリマー層と、この複数のフルオロポリマー層の細孔のほぼ全てに存在するエラストマーとの複合材料から形成されたリーフレットを含んでいる。各リーフレットは、血液が弁組立体を通過することが実質的に阻止される
図1Dに示す閉鎖位置と、血液が弁組立体を通過することが可能な
図1Cに示す開放位置とで切り替え可能である。つまり、弁組立体のリーフレットは、閉鎖位置と開放位置を循環し、概してヒト患者の血流方向を調節する。
【0107】
加速摩耗試験の前に流体力学的性能を測定した。性能の値は、EOA=2.4cm
2、逆流率=11.94%であった。
【0108】
ポリマー材料を、張り出しを約0.5〜1.0mm残して外科用メスで切り取って、リーフレット窓及びフレームの底部から除去した。
【0109】
続いて、リーフレット材料を調製した。米国特許第7,306,729号明細書に記載された一般的な教示内容に従ってePTFEの膜を作製した。このePTFE膜は、単位面積質量が0.452g/m
2、厚さが約508nm、マトリックス引張強度が長手方向に705MPa、横方向に385MPaであった。この膜にフルオロエラストマーを吸収させた。このコポリマーは、本質的には約65〜70重量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルからなり、補足的に約35〜30重量パーセントのテトラフルオロエチレンからなる。
【0110】
フルオロエラストマーを、ノベックHFE7500(3M社、ミネソタ州セントポール)に2.5%濃度で溶解させた。この溶液を、(ポリプロピレン製離型フィルムで支持しながら)メイヤーバーでePTFE膜に塗布し、145℃に設定した対流式オーブンで30秒間乾燥させた。塗布工程を2回行った後、得られたePTFE/フルオロエラストマー、すなわち複合材料は、単位面積質量が1.75g/m
2、フルオロポリマーの量が29.3重量%、ドーム破裂強度が約8.6KPa、厚さが0.81μmであった。
【0111】
得られたリーフレットは、フルオロポリマーを28.22重量%含み、厚さが50.3μmであった。各リーフレットは、複合材料を26層有し、厚さ/層数の比が1.93μmであった。
【0112】
得られた弁組立体は、複数の細孔を有する複数のフルオロポリマー層と、この複数のフルオロポリマー層の細孔のほぼ全てに存在するエラストマーとの複合材料から形成されたリーフレットを含んでいる。各リーフレットは、血液が弁組立体を通過することが実質的に阻止される
図2Dに示す閉鎖位置と、血液が弁組立体を通過することが可能な
図2Cに示す開放位置とで切り替え可能であった。つまり、弁組立体のリーフレットは、閉鎖位置と開放位置を循環し、概してヒト患者の血流方向を調節する。
【0113】
弁リーフレットの性能は、弁を横断する典型的な解剖学的な圧力及び流れを測定するリアルタイム脈拍再現装置で特徴づけた。流れ性能は、以下の方法で特徴づけた。
【0114】
弁組立体を、リアルタイム脈拍再現装置にて後で評価できるようにシリコーン製環状リング(支持構造体)に嵌め込んだ。嵌め込みは、脈拍再現装置メーカー(ビビトロ・ラボラトリーズ社(ViVitro Laboratories Inc.)、カナダ、ブリティッシュコロンビア州ビクトリア)の推奨に従って実施した。
【0115】
次に、嵌め込んだ弁組立体をリアルタイム左心臓血流脈拍再現システムの中に配置した。この血流脈拍再現システムには、VSI・ビビトロ・システムズ社(VSI Vivitro Systems Inc.)(カナダ、ブリティッシュコロンビア州ビクトリア)製の以下の構成部品:スーパーポンプ、サーボパワー増幅器、部品番号SPA3891;スーパーポンプヘッド、部品番号SPH5891B、シリンダー面積38.320cm
2;弁ステーション/固定部;波形発生装置、トリパック(TriPack)、部品番号TP2001;センサーインターフェイス、部品番号VB2004;センサー増幅部品、部品番号AM9991;及び矩形波電磁流量計(カロライナ・メディカル・エレクトロニクス社(Carolina Medical Electronics Inc.)、米国ノースカロライナ州イーストベンド)が含まれていた。
【0116】
通常は、血流脈拍再現システムでは、定容量形ピストンポンプを利用して試験用の弁を通過する所望の流体流を発生させる。
【0117】
心臓血流脈拍再現システムを調節して所望の流れ(5L/分)、平均圧力(15mmHg)、疑似脈拍数(70bpm)を生成した。次に、試験用の弁を約5〜20分間循環させた。
【0118】
試験期間中に圧力及び流れのデータを測定して回収した。データには、右心室圧、肺動脈圧、流速、及びポンプのピストン位置が含まれる。弁の特徴づけのために使用したパラメータは、有効開口部面積及び逆流率である。有効開口部面積(EOA)は次の式により算出できる:EOA(cm
2)=Q
rms/(51.6×(ΔΡ)
1/2)。ここで、Q
rmsは、収縮期/拡張期の流速の二乗平均(cm
3/秒)であり、ΔΡは、収縮期/拡張期の圧力低下の平均(mmHg)である。
【0119】
弁の流体力学的性能を示すもう1つの基準は、弁を逆流した流体や血液の量を一回拍出量で割った値である逆流率である。
【0120】
加速摩耗試験の前に流体力学的性能を測定した。性能の値は、EOA=2.4cm
2、逆流率=11.94%であった。
【0121】
本明細書で用いる単位質量当たり表面積(単位:m
2/g)は、ブルナウアー−エメット−テラー(BET)法を用いて、コールターSA3100気体吸着分析器(ベックマン・コールター社、米国カリフォルニア州フラートン)で測定した。測定を実施するために、延伸フルオロポリマー膜の中心部からサンプルを切り出し、小さなサンプルチューブの中に入れた。サンプルの質量は約0.1〜0.2gであった。このチューブをベックマン・コールター社(米国カリフォルニア州フラートン)製のコールターSA−Prep表面領域脱ガス装置(モデルSA−Prep、P/n5102014)の中に入れ、約110℃で約2時間ヘリウムパージした。次に、サンプルチューブをSA−Prep脱ガス装置から取り出して秤量した。次に、サンプルチューブをSA3100気体吸着分析器の中に入れ、自由空間を計算するためのヘリウムと吸着可能なガスとしての窒素を用いて、装置の説明書に従ってBET表面積分析を実施した。
【0122】
泡立ち点と平均流量細孔径は、ポーラス・マテリアルズ社(米国ニューヨーク州イサカ)製毛細流ポロメータ(モデルCFP1500AEXL)を用いて、ASTM F31 6−03の一般的な教示内容に従って測定した。膜のサンプルをサンプル室に入れ、表面張力が約20.1ダイン/cmのシルウィックシリコーン流体(SilWick Silicone Fluid)(ポーラス・マテリアルズ社製)で湿らせた。サンプル室の底部クランプには、直径約2.54cmの穴が開いていた。試験液としてイソプロピルアルコールを用いた。Capwinソフトウェアのバージョン7.73.012を用い、以下のパラメータを下表のとおりに設定した。本明細書中における平均流量細孔径と細孔径とは交換可能に用いられる。
パラメータ 設定点
最大流(cm
3/m) 200000
泡流(cm
3/m) 100
F/PT(旧泡時間) 50
最小泡圧(PSI) 0
ゼロ時間(秒) 1
V2増加(cts) 10
Preg増加(cts) 1
パルス遅延(秒) 2
最大圧(PSI) 500
パルス幅(秒) 0.2
最小eq時間(秒) 30
圧歪み(cts) 10
流れ歪み(cts) 50
Eqiter 3
Aveiter 20
最大圧力差(PSI) 0.1
最大流差(PSI) 50
Sart圧(PSI) 1
Sart流(cm
3/m) 500
【0123】
膜厚は、Kafer FZ1000/30厚み挟みゲージ(Kafer Messuhrenfabrik GmbH、ドイツ、フィリンゲンシュウェニンゲン)の2枚のプレートの間に膜を挟んで測定した。3回の測定の平均値を記録した。
【0124】
細孔中のエラストマーの存在は、表面及び/又は断面の視覚分析法やその他の分析法等の、当業者に公知のいくつかの方法により確認できる。これらの分析は、リーフレットからエラストマーを除去する前及び後に実施できる。
【0125】
膜のサンプルをダイスで切断して約2.54cm×約15.24cmの長方形の切片とし、重量(メトラー・トレド社製化学天秤、モデルAG204を使用)及び厚さ(Kafer社製Fz1000/30挟みゲージを使用)を測定した。これらのデータを用い、次の式により密度を計算した:ρ=m/w×T×t(式中、ρ=密度(g/cm
3):m=質量(g)、w=幅(cm)、l=長さ(cm)、t=厚さ(cm))。3回の測定の平均値を記録した。
【0126】
引張破断荷重は、平面グリップと0.445kNのロードセルを備えるINSTRON122引張試験機を用いて測定した。ゲージ長は約5.08cm、クロスヘッド速度は約50.8cm/分であった。サンプルのサイズは約2.54cm×約15.24cmであった。長手方向の測定では、サンプルの長いほうのサイズを最大強度の方向に向けた。直交MTS測定では、サンプルの長いほうのサイズを最大強度の方向に対して垂直に向けた。メトラー・トレド社製の天秤、モデルAG204を用いて各サンプルを秤量した後、Kafer社製FZ1000/30挟みゲージを用いて厚さを測定した。次に、各サンプルを引張試験機で個別に試験した。各サンプルの3つの異なる区画を測定した。3回の最大荷重(すなわち、ピークの力)測定の平均値を記録した。長手方向と横方向のマトリックス引張強度(MTS)を、次の式を用いて計算した:MTS=(最大荷重/断面積)×(PTFEのかさ密度)/(多孔膜の密度)(ただし、PTFEのかさ密度は約2.2g/cm
3とした)。曲げ剛性は、ASTM D790に記載の基本手順に従って測定した。大きな試験片が入手不可能な場合は、試験片は小さなものにしなければならない。試験条件は次のとおりであった。互いに約5.08mm離して横に並べた尖った柱を使用し、リーフレット試験片を三点曲げ試験装置で測定した。直径が約1.34mmで重量が約80mgの棒鋼を用いてy(下)方向にたわませた。この時、試験片はx方向に拘束はしなかった。この棒鋼をゆっくりと膜試験片の中心点に置いた。約5分間待った後、y方向のたわみを測定した。上記のように支持した弾性梁のたわみは、d=F×L
3/48×EIで表すことができる。ただし、F(単位はニュートン)は、梁の長さL(メートル)の中心に加える荷重であり、したがってL=懸垂柱間距離の1/2であり、EIは曲げ剛性(Nm)である。この関係式からEIの値を計算できる。長方形の断面に関しては、I=t
3×w/12である。ただし、I=断面二次モーメント、t=試験片の厚さ(メートル)、w=試験片の幅(メートル)である。この関係式により、曲げたわみの測定範囲における平均弾性率を計算できる。
【0127】
本実施形態の精神又は範囲を逸脱することなく本実施形態に種々の改変及び変更を行うことが可能であることは、当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲に入るのであれば、本実施形態には本発明の改変例及び変更例が含まれるということが意図されている。