(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770124
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】羽根駆動装置、カメラ及び携帯電子機器
(51)【国際特許分類】
G03B 9/02 20060101AFI20201005BHJP
G03B 9/06 20060101ALI20201005BHJP
G03B 9/24 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
G03B9/02 B
G03B9/06
G03B9/24
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-44429(P2019-44429)
(22)【出願日】2019年3月12日
(65)【公開番号】特開2020-148842(P2020-148842A)
(43)【公開日】2020年9月17日
【審査請求日】2019年3月12日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520128543
【氏名又は名称】エーエーシー コミュニケーション テクノロジーズ(ジョウシュウ)カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】色摩 和雄
【審査官】
三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−298729(JP,A)
【文献】
特開平03−267927(JP,A)
【文献】
特開昭61−144631(JP,A)
【文献】
特開2019−012187(JP,A)
【文献】
特開2016−122057(JP,A)
【文献】
特開2018−141829(JP,A)
【文献】
特開2008−257028(JP,A)
【文献】
特開2009−288327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/02
G03B 9/06
G03B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根駆動装置であって、
複数の羽根と、
前記羽根を支持するベース部材と、
前記ベース部材に回動自在に軸支され、前記羽根との連結部を備えるリング部材と、
開口を有し、前記羽根をカバーする板部材と、
前記ベース部材と前記リング部材とに保持される弾性部材と、
前記ベース部材と前記リング部材とに保持される形状記憶合金とを備え、
前記リング部材が前記弾性部材により、前記リング部材の回転方向の一方向に寄せられ、
前記羽根駆動装置は、前記形状記憶合金の加熱により、前記リング部材を前記弾性部材が寄せる回転方向と反対方向に駆動させ、前記リング部材に連結された前記羽根を回動させて前記開口へ迫り出させ、
前記形状記憶合金は、前記リング部材の周方向に沿ってのびる内周部及び外周部と、前記リング部材の径方向に折り返され、前記内周部と前記外周部とをつなぐ折返し部とを有し、
前記内周部、前記外周部及び前記折返し部は、前記リング部材の回動軸に垂直な一つの平面上に配され、
前記形状記憶合金の両終端が前記ベース部材に固定されていることを特徴とする羽根駆動装置。
【請求項2】
前記形状記憶合金が前記ベース部材の周方向に巻かれていることを特徴とする請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記ベース部材の中央に設置された複数の摺動用壁は、前記リング部材に設けられた摺動部と嵌合することを特徴とする請求項1または2に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記板部材、前記複数の羽根、前記リング部材、前記弾性部材および前記形状記憶合金は前記ベース部材に対して一方向から組み付け可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の羽根駆動装置。
【請求項5】
前記形状記憶合金は、前記内周部側の一端部と前記外周部側の他端部から給電を受けることを特徴とする請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の羽根駆動装置を備えることを特徴とするカメラ。
【請求項7】
請求項6に記載のカメラを備えることを特徴とする携帯電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置などに用いられる羽根駆動装置等に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
撮影技術の急速な発展に伴い、羽根駆動装置やレンズ駆動装置は、数多くの撮影装置で広く応用されている。羽根駆動装置をもつ光学装置を各種の携帯式電子機器、例えば携帯電話、タブレットコンピュータ等に応用したものは、特に消費者に受け入れられている。
【0003】
羽根駆動装置は単数または複数の羽根を駆動して、開口の状態を変化させるものであり、シャッター、絞り、絞り兼用シャッター、フィルタなどとして、カメラなどの各種光学ユニットに用いられている。レンズ駆動装置などの上、もしくはレンズ駆動装置の中に搭載する羽駆動装置は、レンズを移動する方式の光学装置上で、羽根駆動装置の駆動部の大きさや、重さ、組付け方向による多方向の突出部等が原因で、レンズ駆動装置の作動や配置の妨げになる可能性があった。
構造上占有面積の少ない形状記憶合金を用いた移動手段はあるが、大きな変化量が必要な際は形状記憶合金の長さを大きくする必要があった。
また形状記憶合金を用いる場合、両終端部のうち一方を羽根駆動のための部材へ直接固定する場合は、通電経路と共に可動しなければならず、通電経路可動分の非効率なスペースが必要なことや、通電経路が必要引張り量の以上の外乱要因となりうるため、羽根駆動のための部材の駆動へ影響が出る可能性があった。
【0004】
したがって、以上の課題を解決出来る新しい羽根駆動装置を提供することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−10430号公報
【特許文献2】特開2010−276654号公報
【特許文献3】特開平10−68979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ユーザが撮影するとき、光量を適切に調整する羽根駆動装置が取り付けられた光学装置において、レンズを駆動する際のレンズ駆動装置の作動や配置の妨げになる羽根駆動装置の大きさや重さの課題を解決するために、新しい羽根駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は以下のように実現された。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記するが、本発明の各構成要素はこれらの付記したものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0008】
本発明の第1態様は、羽根駆動装置を提供する。前記羽根駆動装置は、
複数の羽根と、
羽根を支持するベース部材と、
前記ベース部材に回動自在に軸支され、前記羽根との連結部を備えるリング部材と、
前記ベース部材と前記リング部材とに保持される弾性部材と、
前記ベース部材と前記リング部材とに保持される形状記憶合金とを備え、
前記リング部材が前記弾性部材により、前記リング部材の回転方向の一方向に寄せられ、
前記羽根駆動装置は、前記形状記憶合金の加熱により、前記リング部材を前記弾性部材が寄せる回転方向と反対方向に駆動させ、前記リング部材に連結された前記羽根を駆動する。
【0009】
前記形状記憶合金が前記ベース部材の周方向に巻かれていることが好ましい。
【0010】
前記形状記憶合金の両終端が前記ベース部材に固定されていることが好ましい。
【0011】
前記リング部材は前記ベース部材の中央に設置された複数の摺動用壁を持ち、前記リング部材に設けられた摺動部と嵌合することが好ましい。
【0012】
前記光学装置は前記ベース部材に対し一方向から組み付けられることが好ましい。
【0013】
また、本発明の第2態様は、上記レンズ駆動装置を備えるカメラなどの撮像装置を提供する。
【0014】
また、本発明の第3態様は、上記カメラなどの撮像装置を備えるスマートフォンなどの携帯電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の利点として、本発明の羽根駆動装置は、形状記憶合金を使うことで非常に薄型かつ、軽量な駆動部とすることができ、かつベース部材に対し一方向から組み付けることで羽根駆動装置他部材に干渉の懸念がある突出部を出来る限り抑え、羽根駆動装置自体の組み付けの容易化も兼ねており、レンズ駆動装置の移動に対し、上記羽根駆動装置の大きさや重さ、突出部が作動の妨げとならないことで、より効率の良いレンズ駆動をする目的が達成でき、羽根駆動装置自体が持つ光量調整を含め、撮像画像の品位が良くなる。
また形状記憶合金は変位量が少ないため構造上使用していないベースの周方向全体へ巻きつける事で羽根駆動のような大きな変位量を確保することが出来る。
さらに形状記憶合金の両終端をベース部材に固定することで羽根駆動の際の通電経路が駆動の妨げにならず羽根駆動のための部材が良好に光量を調整することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】本発明の羽根駆動装置の口径を有し、羽根室を構成し羽根をカバーする板部材を除いた正面図である。
【
図5】本発明の羽根駆動装置の口径を有し、羽根室を構成し羽根をカバーする板部材を除いた正面図であり、羽根部材を閉じた図である。
【
図6】本発明の羽根駆動装置の形状記憶合金が伸縮した際の形状記憶合金、弾性部材、リング部材の状態を表す図である。
【
図8】本発明の羽根駆動装置及びレンズ駆動装置の斜視図である。
【
図9】本発明の羽根駆動装置及びレンズ駆動装置を備えた携帯電子機器(携帯情報端末)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明について詳しく説明する。
【0018】
図1〜
図7は、本発明の羽根駆動装置100を示す図面である。
【0019】
羽根駆動装置100は、羽根を支持するベース部材10と、羽根21、口径を有し、羽根室を構成する板部材22と、口径を有し、羽根室を構成し羽根をカバーする板部材23と、回動自在に軸支され、前記羽根との連結部31を備えるリング部材30と、前記ベース部材と前記リング部材に保持される弾性部材40と、前記ベース部材と前記リング部材に保持される形状記憶合金50と、形状記憶合金を保持するための保持部材51、給電用の配線70と備える。
【0020】
羽根を構成する羽根室20には前記羽根21、口径を有し、羽根室を構成する板部材22と、口径を有し、羽根室を構成し羽根をカバーする板部材23を備える。
【0021】
羽根駆動装置の駆動部は、前記回動自在に軸支され、羽根との連結部31を備えるリング部材30の摺動部33と、前記ベース部材に設けられた摺動用壁15と嵌合しており、前記リング部材に保持される弾性部材40と、前記ベース部材と前記リング部材に保持される形状記憶合金50と、形状記憶合金を保持するための保持部材51、給電用の配線70と備える。
【0022】
羽根駆動装置上にある、前記ベース部材10と前記リング部材30に保持される弾性部材40が、前記ベース部材上の突起11及び、前記リング部上の突起32によって保持され、弾性部材40が縮む方向に回動し、付勢されている。
【0023】
前記羽根を支持するベース部材10と前記リング部材30に保持される形状記憶合金50に通電等の熱エネルギーを与えることにより、ベース部材上に配置された溝12に沿って形状記憶合金50が縮まりリング部材30が回動し、リング部材30上に配置された形状記憶合金50を保持するためのリング部上の突起32を引っ張り、ベース部材に設けられた羽根軸支用の軸13によって固定された羽根21は、前記リング部材30上に配置された羽根との連結部31によって羽根21を回動させ、口径へ迫り出すことで光量変化を行うことが可能である。
【0024】
形状記憶合金50は通電等、熱エネルギーを断つ事により放熱し、伸びていくことで弾性部材40の縮まる方向へ回動付勢され、羽根21は口径外へと回動し戻る。
【0025】
形状記憶合金50は大きな変化量を与えるため、ベース部材10の周方向に二重に巻かれており、全長を長く伸ばすことで必要移動量を達成出来る。
また形状記憶合金を保持するための保持部材51を、ベース部材10に固定することで、羽根との連結部31を備えるリング部材30または羽根21に固定部が必要なく、スペースを効率よく使えること、通電経路である給電用の配線70と共に動く必要がないため、リング部材30と連結された羽根21は良好な駆動が可能である。
【0026】
羽根との連結部31を備えるリング部材30には例えばリングの回動を検出するための素子や溝が彫られており、これにより回動を検出しても良い。これは羽根の位置を的確に検出し制御するための方法であり、検出を行う際の一例に過ぎない。
【0027】
前記ベース部材10の一方向からこれら部材は全て組まれている。
【0028】
前記ベース部材10の内側にはレンズを収容するための空間14が設けられ、レンズ間隔が狭い箇所に配置することを可能にしている。
【0029】
上述した羽根駆動装置100は、たとえば
図9に示すいわゆるスマートフォン、いわゆるフィーチャーフォン、またはタブレット機器などの携帯情報機器200用の撮像装置300に用いられてもよい。
【0030】
本発明の羽根駆動装置100によって、羽根駆動装置が持つ開口径の光量を自在に変化することが出来、薄型かつ軽量な駆動装置であるため、レンズ駆動装置による作動がある際も作動の妨げにならず、組立も一方向からの組み付けによって容易な組み付けを実現でき、レンズ駆動の妨げにならない効率の良い羽根駆動装置の目的が達成され、羽根21による適切な光量調整及び撮像画像の品位を向上させることが出来る。
【0031】
以上は、ただ本発明の好ましい実施形態に過ぎなく、本発明の保護範囲は、上記実施形態に限定されたものではなく、本分野の技術者が本発明に開示された内容に基づき作られた同等の修正または変形は、すべて本願の特許請求の範囲に記載された本発明に含まれている。
【符号の説明】
【0032】
10 … ベース部材
11 … ベース部材上の突起
12 … ベース部材上に配置された溝
13 … 羽根軸支用の軸
14 … レンズを収容するための空間
15 … 摺動部
20 … 羽根を構成する羽根室
21 … 羽根
22 … 口径を有し、羽根室を構成する板部材
23 … 口径を有し、羽根室を構成し羽根をカバーする板部材
30 … リング部材
31 … 羽根との連結部
32 … リング部上の突起
33 … 摺動部
40 … 弾性部材
50 … 形状記憶合金
51 … 形状記憶合金を保持するための保持部材
60 … リング部材の回転方向
70 … 給電用の配線
100 … 羽根駆動装置
200 … 携帯情報機器
300 … 撮像装置