(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の硬化性組成物は、(A)硬化性成分と、(B−1)無機フィラーと、前記(B−1)無機フィラーと平均粒子径が異なる(B−2)無機フィラーを含有する硬化性組成物であって、前記(B−1)無機フィラーの平均粒子径が、前記(B−2)無機フィラーの平均粒子径の5倍以上であり、前記(B−1)無機フィラーと前記(B−2)無機フィラーを、合計で、固形分の総質量の45質量%以上含むものである。
【0020】
硬化性組成物の、総質量中の無機フィラーの質量の配合比率を上げることで、強度に優れ、貯蔵弾性率が高く、線膨張係数(CTE)が低い硬化物を形成することができるものの、単一の無機フィラーを用いて無機フィラーの量を増やした場合、ドライフィルムのラミネート性の問題が生じる。また、硬化性組成物の表面の平滑化が困難となる。これらの問題は、硬化性組成物の固形分の総質量における無機フィラーの配合比率が45質量%以上、特に80質量%以上において顕著になる。
【0021】
本発明では、無機フィラーとして、(B−1)無機フィラーと、(B−1)無機フィラーと平均粒子径が異なる(B−2)無機フィラーを含有し、(B−1)無機フィラーの平均粒子径を、(B−2)無機フィラーの平均粒子径の5倍以上とすることで、(B−1)無機フィラーの隙間に(B−2)無機フィラーを充填する。これにより、残った隙間を少なくすることができ、樹脂含有量の少ない、すなわち、総質量中のフィラーの質量の比率が高い硬化性樹脂組成物を得ることができる。この硬化性樹脂組成物によれば、総質量中のフィラーの質量の比率が高く強度に優れた硬化物を得ることができるだけでなく、ドライフィルムのラミネート性にも優れる。また、組成物の表面の平滑化も図れる。
【0022】
また、本発明の硬化性組成物においては、総質量中の無機フィラーの質量の比率の上限値はないが、組成物中における(B−1)および(B−2)無機フィラーの体積比率の上限値としては、例えば95体積%以下である。なお、本発明の硬化性組成物においては、液状インキとしての取り扱いができる。
【0023】
以下に、本発明の硬化性組成物の各成分について説明する。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0024】
[(A)硬化性成分]
(A)硬化性成分は、光硬化性反応基および熱硬化性反応基の少なくとも一方を含有するものであればよいが、光硬化性反応基および熱硬化性反応基の両方を含有するものであることが好ましい。(A)硬化性成分としては、光照射により光硬化反応に寄与する(A1)光硬化性成分、および、加熱により熱硬化反応に寄与する(A2)熱硬化性成分が好ましい。
ここで、(A)硬化性成分としては、(A1)光硬化性成分および(A2)熱硬化性成分を含有することがより好ましい。また、本発明の硬化性組成物は、(A1)光硬化性成分と、(A2)熱硬化性成分としての、アルカリ可溶性樹脂および分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基を有する化合物とを含有する組成物であることがさらに好ましい。
また、(A1)光硬化性成分および(A2)熱硬化性成分は、光硬化反応および熱硬化反応の両方に寄与する光および熱硬化性成分であってもよく、そのような光および熱硬化性成分は、(A1)光硬化性成分および(A2)熱硬化性成分として好適に用いることができる。
【0025】
((A1)光硬化性成分)
(A1)光硬化性成分としては、エチレン性不飽和基を有する化合物であり、ポリマー、オリゴマー、モノマーなどが挙げられ、それらの混合物であってもよい。光硬化性成分を含むことにより、硬化膜の強度を向上させることができる。(A1)光硬化性成分は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、公知慣用の光硬化性モノマーである光重合性オリゴマー、光重合性ビニルモノマー等を用いることができる。
【0026】
光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニルまたは安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのアリル化合物;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートなどのイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
【0028】
光硬化性成分は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。光硬化性成分の配合比率は、全組成物の溶剤を除く固形分中に、例えば0〜55質量%であり、0〜50質量%であることが好ましい。
【0029】
(光重合開始剤)
本発明の硬化性組成物において、(A)硬化性成分が少なくとも(A1)光硬化性成分を含む場合には、さらに光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知の光重合開始剤であれば、いずれのものを用いることもできる。
【0030】
光重合開始剤としては、例えば、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製IRGACURE819)等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製IRGACURE TPO)等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p−ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(2−(1−ピル−1−イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2−ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもモノアシルフォスフィンオキサイド類、オキシムエステル類(以下、それぞれモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤とも言う)が好ましく、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)がより好ましい。
【0031】
光重合開始剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。光重合開始剤の配合比率は、光硬化性成分100質量部に対し、例えば、0.01〜30質量部である。
【0032】
((A2)熱硬化性成分)
(A2)熱硬化性成分を含むことにより、硬化膜の強度を向上させることができる。(A2)熱硬化性成分は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(A2)熱硬化性成分としては、公知のものをいずれも用いることができる。例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂、アルカリ可溶性樹脂等の公知の熱硬化性成分を使用できる。特に好ましいのは、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する化合物とアルカリ可溶性樹脂である。
【0033】
上記の分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する化合物は、分子中に3、4または5員環の環状(チオ)エーテル基を複数有する化合物であることが好ましく、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0034】
多官能エポキシ化合物としては、エポキシ化植物油;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂;チオエーテル型エポキシ樹脂;ブロム化エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;ジグリシジルフタレート樹脂;テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;ナフタレン基含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体;CTBN変性エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。
【0035】
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0036】
分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0037】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
【0038】
イソシアネート化合物として、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネートおよび2,4−トリレンイソシアネートダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0039】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0040】
(熱硬化触媒)
本発明の硬化性組成物は熱硬化触媒を含むことが好ましい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
熱硬化触媒は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化触媒の配合比率は、熱硬化性成分100質量部に対し、0.1〜20質量部であることが好ましい。
【0041】
また、(A2)熱硬化性成分としては、アルカリ可溶性基を有するアルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物、カルボキシル基含有樹脂、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有する化合物、チオール基を2個以上有する化合物が挙げられる。中でも、アルカリ可溶性樹脂がカルボキシル基含有樹脂またはフェノール樹脂であると、下地との密着性が向上するため好ましい。特に、現像性に優れるため、アルカリ可溶性樹脂はカルボキシル基含有樹脂であることがより好ましい。カルボキシル基含有樹脂は、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂であることが好ましいが、エチレン性不飽和基を有さないカルボキシル基含有樹脂でもよい。アルカリ可溶性樹脂がエチレン性不飽和基を有する場合は、光硬化性成分としても機能し、上記の光および熱硬化性成分に該当する。なお、本発明の硬化性組成物がアルカリ可溶性樹脂を含む場合、アルカリ現像する用途だけでなく、アルカリ現像しない用途に使用してもよい。
【0042】
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0043】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0044】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0045】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0046】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0047】
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0048】
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0049】
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0050】
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0051】
(9)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0052】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0053】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0054】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p−ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0055】
(13)上記(1)〜(12)等に記載のカルボキシル基含有樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有樹脂。
【0056】
上記カルボキシル基含有樹脂のうち、(1)、(7)、(8)、(10)〜(13)に記載のカルボキシル基含有樹脂が好ましい。
【0057】
フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、ビフェニル骨格若しくはフェニレン骨格またはその両方の骨格を有する化合物や、フェノール、オルソクレゾール、パラクレゾール、メタクレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール等を用いて合成した、様々な骨格を有するフェノール樹脂が挙げられる。
【0058】
また、フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類、ビスフェノールF、ビスフェノールS型フェノール樹脂、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物などの公知慣用のフェノール樹脂が挙げられる。
【0059】
フェノール樹脂の市販品としては、例えば、HF1H60(明和化成社製)、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2131(大日本印刷社製)、ベスモールCZ−256−A(DIC社製)、ショウノールBRG−555、ショウノールBRG−556(昭和電工社製)、CGR−951(丸善石油社製)、ポリビニルフェノールのCST70、CST90、S−1P、S−2P(丸善石油社製)が挙げられる。
【0060】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、20〜200mgKOH/gの範囲が望ましく、より好ましくは40〜150mgKOH/gの範囲である。(A)アルカリ可溶性樹脂の酸価が20mgKOH/g以上の場合、塗膜の密着性が良好であり、アルカリ現像が良好となる。一方、酸価が200mgKOH/g以下の場合、現像液による露光部の溶解を抑制できるため、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離したりすることを抑制して、良好にレジストパターンを描画することができる。
【0061】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、1,500〜50,000、さらには1,500〜30,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が1,500以上の場合、タックフリー性能が良好であり、露光後の塗膜の耐湿性が良好で、現像時の膜減りを抑制し、解像度の低下を抑制できる。一方、重量平均分子量が50,000以下の場合、現像性が良好で、貯蔵安定性にも優れる。
【0062】
アルカリ可溶性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。アルカリ可溶性樹脂の配合比率は、全組成物の溶剤を除く固形分中に、例えば、0〜55質量%であり、0〜50質量%であることが好ましい。
【0063】
(A2)熱硬化性成分は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。(A2)熱硬化性成分の配合比率は、全組成物の溶剤を除く固形分中に、例えば、0〜55質量%であり、0〜50質量%であることが好ましい。
【0064】
[(B)無機フィラー ((B−1)無機フィラーおよび(B−2)無機フィラー)]
本発明の硬化性組成物は、(B−1)無機フィラーと、(B−1)無機フィラーと平均粒子径が異なる(B−2)無機フィラーを含有し、(B−1)無機フィラーの平均粒子径が、(B−2)無機フィラーの平均粒子径の5倍以上であり、(B−1)無機フィラーと(B−2)無機フィラーを、合計で、組成物の固形分の総質量の45質量%以上含む。本
発明の硬化性組成物は、(B−1)無機フィラーと(B−2)無機フィラーを、合計で、組成物の固形分の総質量の50質量%以上、60質量%以上含む場合にさらに有効であり
、70質量%以上、80質量%以上、特に83質量%以上で有効である。
ここで、本明細書において、(B−1)および(B−2)無機フィラーの平均粒子径は、一次粒子の粒子径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒子径も含めた平均粒子径(D50)である。(B−1)および(B−2)無機フィラーの平均粒子径は、レーザー回折法により測定されたD50の値である。レーザー回折法による測定装置としては、日機装社製のMicrotrac MT3300EXIIが挙げられる。なお、(B−1)および(B−2)無機フィラーの最大粒子径(D100)および粒子径(D10)についても上記の装置にて同様に測定することができる。
【0065】
前述の通り、本発明は、(B−2)無機フィラーを(B−1)無機フィラーの隙間に充填することで、残った隙間を少なくすることができ、樹脂含有量の少ない、すなわち、総質量中のフィラーの質量の比率が高い硬化性樹脂組成物を得るものである。通常の市販品の同一製品内でも、粒子径にはもともと2〜3倍のばらつきがあるが、その比率では、細かい粒子が有効に隙間に入らないことから、(B−1)、(B−2)両フィラーの平均粒子径には、5倍以上の差が必要である。(B−1)、(B−2)両フィラーの平均粒子径比は、大きければ大きいほど良い。8倍以上であることがより好ましく、10倍以上がさらにより好ましい。
【0066】
(B−1)無機フィラーの平均粒子径は、5μm以下であることが好ましい。(B−1)無機フィラーの平均粒子径は、硬化性組成物の用途によって異なり、例えばICパッケージ基板に硬化膜を形成する用途では5μm以下であることが好ましく、マザーボード用のプリント配線板に硬化膜を形成する用途では30μm以下であることが好ましく、モールド(封止)用途では40μm以下であることが好ましい。また、(B−2)無機フィラーの最大粒子径は好ましくは500nm以下である。さらに、(B−1)無機フィラーの粒子径(D10)は、(B−2)無機フィラーの平均粒子径(D50)の5倍以上であることが好ましい。この比率が5倍以上であると、(B−1)無機フィラーの隙間への(B−2)無機フィラーの充填効率が向上し、硬化物の強度とドライフィルムのラミネート性とのバランスに優れる。
【0067】
(B−1)、(B−2)両無機フィラーの配合比は、体積比で(B−1):(B−2)=5:5〜9:1であることが好ましく、6:4〜8:2であることさらに好ましい。前記範囲内であると、硬化物の強度およびドライフィルムのラミネート性の両立がより一層図れる。
【0068】
(B−1)および(B−2)無機フィラーの材質は特に限定されず、例えば、シリカ、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、ノイブルグ珪土、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。中でもシリカが好ましく、硬化性組成物の硬化物の硬化収縮を抑制し、より低CTEとなり、また、密着性、硬度などの特性を向上させる。シリカとしては、溶融シリカ、球状シリカ、無定形シリカ、結晶性シリカなどが挙げられる。
【0069】
(B−1)および(B−2)無機フィラーの表面処理の有無は特に限定されない。しかし、前述の通り、本発明の硬化性組成物は樹脂含有量が少ないため、(B−1)および(B−2)無機フィラーは、分散性を高めるための表面処理がされていることが好ましい。
【0070】
また、(B−1)および(B−2)無機フィラーの表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよく、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等でフィラーの表面を処理すればよい。
【0071】
(B−1)および(B−2)無機フィラーの表面処理は、カップリング剤による表面処理であることが好ましい。カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノメチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、予めフィラーの表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、フィラー100質量部に対するカップリング剤の処理量は、0.5〜10質量部であることが好ましい。なお、本発明において、フィラーに施されたカップリング剤は、エチレン性不飽和基を有する化合物には含まれないものとする。
【0072】
光硬化性反応基としては、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。中でも、ビニル基および(メタ)アクリル基のいずれか少なくとも1種が好ましい。
【0073】
熱硬化性反応基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等が挙げられる。中でも、アミノ基およびエポキシ基のいずれか少なくとも1種が好ましい。
【0074】
なお、(B−1)および(B−2)無機フィラーの表面処理がされた無機フィラーは、表面処理された状態で本発明の硬化性組成物に含有されていればよく、表面未処理の無機フィラーと表面処理剤とを別々に配合して組成物中で無機フィラーが表面処理されてもよいが、予め表面処理した無機フィラーを配合することが好ましい。予め表面処理した無機フィラーを配合することによって、別々に配合した場合に残存しうる表面処理で消費されなかった表面処理剤によるクラック耐性等の低下を防ぐことができる。予め表面処理する場合は、溶剤や硬化性成分に無機フィラーを予備分散した予備分散液を配合することが好ましく、表面処理した無機フィラーを溶剤に予備分散し、該予備分散液を組成物に配合するか、表面未処理の無機フィラーを溶剤に予備分散する際に十分に表面処理した後、該予備分散液を組成物に配合することがより好ましい。
(B−1)および(B−2)無機フィラーは、本発明の硬化性組成物の使用態様により、粉体または固体状態で(A)成分等と配合してもよく、溶剤や分散剤と混合してスラリーとした後で(A)成分等と配合してもよい。
【0075】
[紫外線吸収剤]
本発明の硬化性組成物において、(A)硬化性成分が少なくとも(A1)光硬化性成分を含み、光重合開始剤を含む場合には、(B−1)無機フィラーおよび(B−2)無機フィラーの配合比率が高くなるほど開口部の形成が困難になるが、さらに紫外線吸収剤を含有することにより、(B−1)無機フィラーおよび(B−2)無機フィラーの配合比率が高い場合でも開口部を容易に形成することができる。なお、(B−1)無機フィラーおよび(B−2)無機フィラーの配合比率の上限値としては、解像性の観点から90質量%以下であることが好ましく、88質量%以下であることがより好ましい。
本発明に係る紫外線吸収剤は波長300nm〜450nmの光を吸収するものであれば、いずれのものを用いることもできる。
【0076】
紫外線吸収剤としては、カーボンブラック、黒色酸化チタン(チタンブラックとも言う)等の無機系紫外線吸収剤や、有機系紫外線吸収剤等を挙げることができる。中でもこれらのうち、硬化物の解像性の観点から、カーボンブラックが最も好ましい。
【0077】
有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シンナメート誘導体、アントラニレート誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体などが挙げられる。ベンゾフェノン誘導体の具体的な例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベ
ンゾフェノン及び2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾエート誘導体の具体的な例としては、2−エチルヘキシルサリチレート、フェニルサリチレート、p−t−ブチルフェニルサリチレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール誘導体の具体的な例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)べンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。トリアジン誘導体の具体的な例としては、ヒドロキシフェニルトリアジン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどが挙げられる。
【0078】
紫外線吸収剤としては市販のものであってもよく、例えば、TINUVIN PS、T
INUVIN 99−2、TINUVIN 109、TINUVIN 384−2、TIN
UVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 1130、TINUVIN 400、TINUVIN 405、TINUVIN 460、TINUVIN 479(以
上、BASFジャパン(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0079】
上記の有機系紫外線吸収剤は、カーボンブラックと併用することが好ましい。カーボンブラックと併用することで解像性がさらに安定する。
【0080】
紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。紫外線吸収剤は少量で効果があり、組成物の固形分の総質量の0.01〜10質量%含有することが好ましく、硬化物の解像性に影響を与える深部硬化性の観点から、0.02〜7質量%がより好ましい。紫外線吸収剤として、カーボンブラックを含有する場合は、硬化物の解像性の観点から、組成物の固形分の総質量の0.01〜1質量%含有することが好ましく、組成物の固形分の総質量の0.02〜0.5質量%含有することがより好ましく、組成物の固形分の総質量の0.05〜0.30質量%含有することが特に好ましい。
【0081】
(有機溶剤)
本発明の硬化性組成物は、組成物の調製や、基板やキャリアフィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
(その他の任意成分)
本発明の硬化性組成物には、必要に応じてさらに、光開始助剤、シアネート化合物、エラストマー、メルカプト化合物、熱硬化触媒、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤および/またはレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、ホスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤、着色剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0083】
本発明の硬化性組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いても良い。液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0084】
本発明の硬化性組成物は、ソルダーレジスト、カバーレイ、層間絶縁層等のプリント配線板の永久被膜としてのパターン層を形成するために有用であり、特にソルダーレジストの形成に有用である。また、本発明の硬化性組成物は、薄膜でも塗膜強度に優れた硬化物を形成できることから、薄膜化が要求されるプリント配線板、例えばICパッケージ基板(ICパッケージに用いられるプリント配線板)におけるパターン層の形成にも好適に用いることができる。さらに、本発明の硬化性組成物から得られる硬化物は、高弾性率で低CTEとなる点においても、総厚みが薄く剛性の不足するICパッケージ基板におけるパターン層の形成に好適に用いることができると言える。
【0085】
本発明の硬化性組成物は、キャリアフィルム(支持体)と、該キャリアフィルム上に形成された上記硬化性組成物からなる樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。ドライフィルム化に際しては、本発明の硬化性組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、1〜150μm、好ましくは10〜60μmの範囲で適宜選択される。
【0086】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0087】
キャリアフィルム上に本発明の硬化性組成物を成膜した後、さらに、膜の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、膜の表面に剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離するときに膜とキャリアフィルムとの接着力よりも膜とカバーフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0088】
なお、本発明においては、上記カバーフィルム上に本発明の硬化性組成物を塗布、乾燥させることにより樹脂層を形成して、その表面にキャリアフィルムを積層するものであってもよい。すなわち、本発明においてドライフィルムを製造する際に本発明の硬化性組成物を塗布するフィルムとしては、キャリアフィルムおよびカバーフィルムのいずれを用いてもよい。
【0089】
本発明のプリント配線板は、本発明の硬化性組成物またはドライフィルムの樹脂層から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の硬化性組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0090】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0091】
本発明の硬化性組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0092】
プリント配線板上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3〜3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後加熱硬化(例えば、100〜220℃)、もしくは加熱硬化後活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化膜を形成する。
【0093】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350〜450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10〜1000mJ/cm
2、好ましくは20〜800mJ/cm
2の範囲内とすることができる。
【0094】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
本発明の硬化性組成物は、上記のような現像液により硬化膜のパターンを形成する用途だけでなく、パターンを形成しない用途、例えばモールド用途(封止用途)に使用してもよい。
【実施例】
【0095】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0096】
(アルカリ可溶性樹脂の合成)
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショウノールCRG951」、昭和電工社製、OH当量:119.4)119.4部、水酸化カリウム1.19部およびトルエン119.4部を導入し、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8部を徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm
2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56部を添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2mgKOH/g(307.9g/eq.)であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキシドが平均1.08モル付加したものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液293.0部、アクリル酸43.2部、メタンスルホン酸11.53部、メチルハイドロキノン0.18部およびトルエン252.9部を、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6部の水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1部で置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5部およびトリフェニルホスフィン1.22部を、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8部を徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして、固形分65%、固形分の酸価87.7mgKOH/gの感光性のカルボキシル基含有樹脂A−1の溶液を得た。以下、このカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液を樹脂溶液A−1と称す。
【0097】
((B−1)無機フィラー1の調製)
アドマテック社製球状シリカ(アドマファインSO−E2)700g、溶剤としてPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)300g、ビーズミルにて0.5μmのジルコニアビーズを用い分散処理を行った。これを3回繰り返して3μmフィルターでろ過し、平均粒子径が500nmとなるシリカスラリーを調製した。なお、この(B−1)無機フィラー1は、粒子径D10が250nmであり、最大粒子径D100が3μmである。
【0098】
((B−1)無機フィラー2の調製)
アドマテック社製球状シリカ(アドマファインSO−E1)700g、溶剤としてPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)300g、ビーズミルにて0.5μmのジルコニアビーズを用い分散処理を行った。これを3回繰り返して3μmフィルターでろ過し、平均粒子径が250nmとなるシリカスラリーを調製した。なお、この(B−1)無機フィラー2は、粒子径D10が100nmであり、最大粒子径D100が1μmである。
【0099】
((B−2)無機フィラーの調製)
アドマテック社のビニル基を有する平均粒子径50nmのシリカスラリー(YA050C、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)溶剤)を使用した。なお、この(B−2)無機フィラーは、粒子径D10が20nmであり、最大粒子径D100が0.2μmである。
【0100】
(実施例1〜11および比較例1〜3)
下記表に示す種々の成分と共に表に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、ビーズミルで混練し、硬化性組成物を調製した。得られた硬化性組成物をそれぞれアプリケーターを用いて38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、80℃で20分乾燥して、厚み20μmの樹脂層を有するドライフィルムを作製した。
【0101】
(ラミネート性)
銅厚15μm、L(ライン:配線幅)/S(スペース:間隔幅)が下記の櫛歯パターンを有する両面プリント配線板に前処理として、メック社製CZ−8101処理にて1.0μm相当のエッチング処理を行った。次いで、各実施例および比較例のドライフィルムを、真空ラミネーター(CVP−300:ニッコーマテリアル社製)を用いて80℃の第一チャンバーにて真空圧3hPa、バキューム時間30秒の条件下でラミネートした後、プレス圧0.5MPa、プレス時間30秒の条件でプレスを行い評価基板を得た。ラミネート後の評価基板のスペースの底面(基板の表面)にドライフィルムの樹脂層が接しているかどうかを走査電子顕微鏡(SEM、倍率1000倍)にて観察した。
◎:L/S=10/10の場合、スペースの底面(基板の表面)にドライフィルムの樹脂層が接していた。
○:L/S=20/20の場合、スペースの底面にドライフィルムの樹脂層が接していた。
△:L/S=50/50の場合、スペースの底面にドライフィルムの樹脂層が接していた。
×:L/S=50/50の場合、スペースの底面にドライフィルムの樹脂層が接していなかった。
【0102】
(貯蔵弾性率)
GTS−MP箔(古河サーキットフォイル社製)の光沢面側(銅箔)上にして、上記で作製した実施例および比較例にかかる各ドライフィルムを、樹脂層が銅箔に接するように、上記と同様に真空ラミネーターを用いて張り合わせることにより、銅箔上に樹脂層を形成しキャリアフィルムを剥離した。これを、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm
2の条件で紫外線照射した後、170℃で60分加熱して硬化した。その後、硬化膜を銅箔より剥離した後、測定サイズ(5mm×50mm×20μmのサイズ(縦×幅×厚さ))にサンプルを切り出した。サンプルをDMS6100(日立ハイテクサイエンス社製)に供し、周波数を1Hzとして25℃における貯蔵弾性率を測定した。
○:25℃において貯蔵弾性率が10GPa以上。
×:25℃において貯蔵弾性率が10GPa未満。
【0103】
(線膨張係数(CTE))
GTS−MP箔(古河サーキットフォイル社製)の光沢面側(銅箔)上にして、上記で作製した実施例および比較例にかかる各ドライフィルムを、樹脂層が銅箔に接するように、上記と同様に真空ラミネーターを用いて張り合わせることにより、銅箔上に樹脂層を形成しキャリアフィルムを剥離した。これを、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm
2の条件で紫外線照射した後、170℃で60分加熱して硬化した。その後、硬化膜を銅箔より剥離した後、測定サイズ(5mm×50mm×20μmのサイズ(縦×幅×厚さ))にサンプルを切り出し、セイコーインスツル社製TMA6100に供した。TMA測定は、試験加重5g、サンプルを10℃/分の昇温速度で室温より昇温、連続して2回測定した。2回目における線膨張係数の異なる2接線の交点をガラス転移温度(Tg)とし、Tg以下の領域における線膨張係数(CTE(α1))として評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:Tg温度以下でのCTEが20ppm以下。
×:Tg温度以下でのCTEが20ppm超。
【0104】
(解像性)
実施例7〜11の各硬化性組成物を銅箔上に全面塗布し、80℃30分で乾燥し、組成物上で露光量が50mJ/cm
2となるようにダイレクトイメージング露光装置(光源は高圧水銀灯)により光照射し、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液で現像し、硬化物のパターンを形成した。パターン形成後、80μmの開口径が形成でき、かつ、形状が良好であるかどうかを評価した。
◎:開口部を形成可能であり、開口部の壁面がストレート形状である。
○:開口部を形成可能である。
×:開口部を形成できない。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
*1:上記で合成したアルカリ可溶性樹脂の溶液A−1
*2:IGM社製OmniradTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)(光重合開始剤)
*3:DIC社製エピクロンN−870(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂)*4:BASF社製Laromer(エチレン性不飽和基を有する化合物)
*5:上記で調製した(B−1)無機フィラー1
*6:上記で調製した(B−1)無機フィラー2
*7:上記で調製した(B−2)無機フィラー
*8:三菱化学社製MA−100
*9:三菱マテリアル社製13M−C
*10:BASF社製TINUVIN460
【0107】
上記表中に示す結果から、平均粒子径が5倍以上異なる2種類のフィラーを使用することで、固形分の総質量中のフィラーの質量の比率が高い硬化性組成物を得ることができることがわかる。また、上記表中に示す結果から、フィラーの質量の比率が高い樹脂組成物の場合でも、ドライフィルムのラミネート性に優れることがわかる。
さらに、このようにして得られた本発明の硬化性組成物を使用すると、硬化物の強度に優れ、貯蔵弾性率が高く、線膨張係数(CTE)が低いとともに、ドライフィルムのラミネート性も優れることがわかる。
また、紫外線吸収剤としては、硬化物の解像性の観点から、カーボンブラックが最も好ましいことがわかる。