特許第6770191号(P6770191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6770191レーザ眼科手術中に眼に対する重量を間接的に算定するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770191
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】レーザ眼科手術中に眼に対する重量を間接的に算定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/009 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   A61F9/009
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-520646(P2019-520646)
(86)(22)【出願日】2016年11月3日
(65)【公表番号】特表2019-530545(P2019-530545A)
(43)【公表日】2019年10月24日
(86)【国際出願番号】IB2016056628
(87)【国際公開番号】WO2018083520
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2019年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ビッテネベル
(72)【発明者】
【氏名】マルティン シュタリク
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0128852(US,A1)
【文献】 特開2015−163092(JP,A)
【文献】 特開2005−246047(JP,A)
【文献】 特表2012−500677(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0280509(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007,9/009
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼に対する重量を間接的に算定するためのシステムであって、
ドッキング機器と、
前記ドッキング機器の構成要素の検出可能位置を検出し、かつ前記検出可能位置に関するデータを生成するように動作可能な測定装置と、
表示装置と、
プロセッサであって、
前記検出可能位置に関するデータを前記測定装置から受信することと、
前記眼の中立位置に対する前記構成要素の前記検出可能位置の相対距離を算定することと、
被検知力距離参照データの参照により、前記ドッキング機器と眼との接触から生じる前記眼に対する重量を算定することと、
前記検出可能位置に関連する前記眼に対する前記重量の絵図表示を生成することと、
前記絵図表示を前記表示装置に送信することと
を行うように動作可能なプロセッサと
を含むシステム。
【請求項2】
前記被検知力距離参照データは、
力センサであって、被検知力を検知し、かつ眼に対する重量に対応する前記被検知力に関するデータを生成するように動作可能な力センサを前記システムまたは機能的に同一のシステムに組み込むことと、
前記プロセッサにおいて前記力センサおよび前記測定装置からデータを受信することと、
前記被検知力距離参照データを生成するために眼に対する重量を相対距離に関連付けることと
によって生成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
眼に対する前記重量は、前記被検知力距離参照データを外挿することによって算定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記被検知力距離参照データは、前記構成要素の全可動範囲内の任意の検出可能位置またはその任意のサブセットを含むように外挿される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ドッキング機器の構成要素は、吸引コーンと、吸引リングと、レンズとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ドッキング機器の構成要素は、吸引コーンと、前記吸引コーンの位置を調整するように動作可能な制御装置と、吸引リングと、レンズとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記測定装置は、光バリアを使用することにより、吸引コーンの検出可能位置を検出するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記測定装置は、スイッチを使用することにより、吸引コーンの検出可能位置を検出するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記測定装置は、経路記録装置を使用することにより、吸引コーンの検出可能位置を検出するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記測定装置は、アイカメラ、複眼カメラまたは視線追跡システムを使用することにより、吸引コーンの検出可能位置を検出するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記眼の前記中立位置は、前記眼が前記構成要素に接触し、および前記眼が、前記接触に基づいて前記眼に対する実質的に中立の引張力または押圧力に接触する位置である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
力センサは、計量装置である、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサは、警告を生成し、かつ前記警告を前記表示装置に送信するように更に構成され、前記警告は、眼に対する前記重量が規定の許容範囲外にあることを表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記警告は、前記ドッキング機器の前記構成要素の調整が必要であること、前記規定の許容範囲内に留まるように前記構成要素が調整されなければならない方向、前記構成要素がZ方向に調整されなければならない程度、またはこれらの任意の組み合わせを更に表す、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科手術および手術設備に関し、より具体的には、レーザ眼科手術中に眼に対する重量を間接的に算定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科手術では、毎年何万人もの患者の視力が確保および改善される。しかしながら、眼の非常に僅かな変化に対する視力の感度および多くの眼構造の細かく微細な性質を考慮すると、眼科手術は、実施することが困難であり、軽度のまたは稀な手術ミスさえも低減することおよび手術手技の精度を多少向上させることにより、手術後の患者の視力に大きい違いをもたらすことができる。
【0003】
眼科手術は、眼および眼の任意の部分に対して行われる手術である。眼科手術は、網膜の欠陥の修復、眼筋の修復、白内障もしくは癌の除去、または視力の回復もしくは改善のために定期的に行われる。屈折眼科手術は、例えば、眼鏡またはコンタクトレンズへの依存を減らすかまたは排除する目的で眼の屈折状態を改善するために用いられるある種の眼科手術である。屈折矯正手術処置は、角膜の外科的改造および/または白内障手術を含み得、これらのいずれもレーザにより行われ得る。
【0004】
種々の眼科手術処置において、レーザは、光破壊を利用して切開部を作成する。レーザを用いて眼科手術を行う場合、手術処置は、通常、ドッキング、撮像、解析およびレーザ治療を含む。ドッキング時、患者の眼は、患者の角膜を平坦化する圧力を付与して(圧平として知られる)、レーザ治療のために患者の角膜を適所に保持するために吸引コーンにドッキングされる。ドッキングは、敏感な工程であり、Z方向ならびにX方向およびY方向における吸引コーンの適切な配置が眼科手術の成功のために重要である。眼との接触時およびドッキング時に眼に種々の力がかかり、そのような力が過剰であるかまたは眼組織を損傷させる可能性がある(炎症の原因となるかまたは回避できる可能性のある他の合併症の原因となる)か否かを見分けることが重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、レーザ眼科手術中に眼に対する重量を間接的に算定するためのシステムを提供する。このシステムは、ドッキング機器と、ドッキング機器の構成要素の検出可能位置を検出し、かつ検出可能位置に関するデータを生成するように動作可能な測定装置と、表示装置と、プロセッサであって、検出可能位置に関するデータを測定装置から受信することと、眼の中立位置に対する構成要素の検出可能位置の相対距離を算定することと、被検知力距離参照データの参照により、ドッキング機器と眼との接触から生じる眼に対する重量を算定することと、検出可能位置に関連する眼に対する重量の絵図表示を生成することと、絵図表示を表示装置に送信することとを行うように動作可能なプロセッサとを含む。
【0006】
明らかに排他的でない限り互いに組み合され得る追加の実施形態において、システムは、力センサであって、被検知力を検知し、かつ眼に対する重量に対応する被検知力に関するデータを生成するように動作可能な力センサをシステムまたは機能的に同一のシステムに組み込むことと、プロセッサにおいて力センサおよび測定装置からデータを受信することと、被検知力距離参照データ距離参照データを生成するために眼に対する重量を相対距離に関連付けることとを更に含み、眼に対する重量は、被検知力距離参照データを外挿することによって算定され、被検知力距離参照データは、構成要素の全可動範囲内の任意の検出可能位置またはその任意のサブセットを含むように外挿され、ドッキング機器の構成要素は、吸引コーンと、吸引リングと、レンズとを含み、ドッキング機器の構成要素は、吸引コーンと、吸引コーンの位置を調整するように動作可能な制御装置と、吸引リングと、レンズとを含み、測定装置は、光バリア、スイッチ、経路記録装置、アイカメラ、複眼カメラまたは視線追跡システムを使用することにより、吸引コーンの検出可能位置を検出するように動作可能であり、眼の中立位置は、眼が構成要素に接触し、および眼が、その接触に基づいて眼に対する実質的に中立の引張力または押圧力に接触する位置であり、力センサは、計量装置であり、プロセッサは、警告を生成し、かつ警告を表示装置に送信するように更に構成され、警告は、眼に対する重量が規定の許容範囲外にあることを表し、および警告は、ドッキング機器の構成要素の調整が必要であること、規定の許容範囲内に留まるように構成要素が調整されなければならない方向、構成要素がZ方向に程度調整されなければならない程度、またはこれらの任意の組み合わせを更に表す。
【0007】
本開示は、レーザ眼科手術中に吸引コーンの位置を眼の上に維持するための方法を更に提供する。この方法は、ドッキング機器の構成要素の検出可能位置に関するデータを測定装置から受信することと、眼の中立位置に対する構成要素の検出可能位置の相対距離を算定することと、被検知力距離参照データの参照により、ドッキング機器と眼との接触から生じる眼に対する重量を算定することと、検出可能位置に関連する眼に対する重量の絵図表示を生成することと、絵図表示を表示装置に送信することとを含む。
【0008】
明らかに排他的でない限り互いに組み合され得る追加の実施形態において、被検知力距離参照データは、プロセッサにおいて、眼に対する重量に対応する被検知力に関するデータおよび検出可能位置に関するデータを受信することと、被検知力距離参照データ距離参照データを生成するために眼に対する重量を相対距離に関連付けることとによって生成され、眼に対する重量は、被検知力−参照データを外挿することによって算定され、被検知力距離参照データは、構成要素の全可動範囲内の任意の検出可能位置またはその任意のサブセットを含むように外挿され、眼の中立位置は、眼が構成要素に接触する位置であり、その接触に基づいて眼に対して実質的に中立の引張力または押圧力がかかり、被検知力距離参照データの参照により、眼に対する重量を算定することは、警告を生成および送信することを更に含み、警告は、眼に対する重量が規定の重量測定範囲外にあることを表し、および警告は、ドッキング機器の構成要素の調整が必要であること、規定の許容範囲内に留まるように構成要素が調整されなければならない方向、構成要素がZ方向に調整されなければならない程度、またはこれらの任意の組み合わせを更に表す。
【0009】
上記システムは、上記方法と共に使用され得、その逆も同様である。加えて、本明細書で説明する任意のシステムは、本明細書で説明する任意の方法と共に使用され得、その逆も同様である。
【0010】
ここで、本発明ならびにその特徴および利点のより詳細な理解のために、原寸に比例したものではなく、類似の参照符号が類似の特徴を指す添付の図面と併せて解釈される以下の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】レーザ眼科手術中に眼に対する重量を間接的に算定するためのシステムの概略図である。
図2】システムまたは機能的に同一のシステムに力センサを組み込むことにより、被検知力距離参照データを生成する概略図である。
図3】吸引コーンの可動範囲内における、吸引コーンの検出可能位置に関連する眼に対する重量の外挿を示すグラフである。
図4】レーザ眼科手術中に眼に対する重量を使用者の通常の操作で間接的に算定するためのシステムの概略図である。
図5】レーザ眼科手術中に眼に対する重量を間接的に算定するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、開示される主題の論述を容易にするために、例として詳細を記載する。しかしながら、開示される実施形態が例示的なものであり、全ての可能な実施形態を包含するものではないことが当業者に明らかなはずである。
【0013】
本開示は、レーザ眼科手術中に眼に対する重量を間接的に算定するためのシステムおよび方法を提供する。本開示を通じて、手術を受ける眼に関して動きが説明され得る。X方向またはY方向への動きは、眼の頂点に直交するX−Y平面内で発生する。Z方向への動きは、X−Y平面に直交する方向に発生する。本開示において、Z方向における「より低い」、「下に」および「下方に」とは、患者の眼により近づく動きまたはより近い位置を指す。Z方向における「より高い」、「上に」、「上方に」とは、患者の眼からより遠ざかる動きまたはより遠い位置を指す。
【0014】
眼科手術処置の開始時、患者は、通常、例えば寝椅子またはベッドであり得る支持体上に天井に向けて仰向けに載置される。レーザ手術処置が開始できる前にドッキング機器の構成要素を眼にドッキングしなければならない。通常、これらの構成要素は、吸引リングと、吸引コーンと、レンズとを含む。吸引コーンおよびレンズは、通常、フェムト秒レーザの一部である。吸引リングは、制御装置により位置決めされ得るが、多くの場合、眼の上に手動で位置決めされる。次いで、吸引コーンが眼に接触して適切な吸引力が第1の真空と第2の真空との使用により達成され得るまで、吸引コーンを手動でまたは制御装置により下降させ得る。吸引コーンが眼に接触すると、レンズと眼との接触が圧平を生じさせ、眼の表面の平坦化をもたらす。次に、吸引コーンを最適作用範囲まで上昇させ得る。フェムト秒レーザは、眼に押圧力をZ方向下方に加える。この押圧力は、吸引コーンの位置の調整中に増加して、より大きい重量が眼にかかる場合がある。吸引コーンが眼のごく近傍にありかつZ方向下方に移動し続けた場合、引張効果が発生することがあり、この引張効果も眼に対する重量に影響を及ぼし得る。
【0015】
眼に押圧力または引張力のいずれかを加えることにより、眼内圧および手術処置の成功に不可欠な他のパラメータの著しい変化が生じ得る。押圧力または引張力の1つの重要な尺度は、眼に対する重量である。概して、眼に対する重量は、眼への押圧力または引張力により、特にフェムト秒レーザにより影響を受けるが、眼に対する重量は、押圧力または引張力と直線的に相関しない傾向がある。眼に対する過剰な重量が眼組織自体を損傷させるか、または他の合併症、炎症もしくは意図しない副作用を引き起こし得るため、フェムト秒レーザにより加わる力の影響を含む、ドッキング機器と眼との接触から生じる眼に対する重量を算定することが重要である。追加的に、眼に対する重量が過剰になる場合、眼に対する重量の変化を手術処置中に監視することが有用である。本開示は、Z方向におけるドッキング機器の位置を利用して、手術処置中に眼に対する重量を算定する間接的方法を提供する。
【0016】
ここで、図を参照すると、図1は、レーザ眼科手術中に眼に対する重量を間接的に算定するためのシステムの概略図であり、システムは、ドッキング解除状態にある。システムは、レンズ102と眼101との接触がないことによって表されるように、ドッキング機器が眼に良好にドッキングされていないため、ドッキング解除状態にある。図示のように、システム100のドッキング機器は、第1の真空105と第2の真空106とに接続された吸引リング103と、レンズ102と、Z方向における吸引コーンの位置を調整するように動作可能である、制御装置108に接続された吸引コーン107とを含む。システム100は、メモリ135に接続されるプロセッサ130と、制御装置108と、測定装置120と、表示装置140とを更に含む。システム100の電子構成要素のいずれかは、ケーブル接続または無線接続を介して接続され得る。
【0017】
図1に示すように、吸引リング103は、眼101の上に位置決めされている。ここで、吸引コーン107は、制御装置108により吸引コーン107をZ方向に下降させることによって眼にドッキングされ得る。レンズ102が眼に接触するように吸引コーン107を下降させると、眼に押圧力が加えられ、押圧力は、ドッキング機器と眼との接触から生じる。眼に引張力も加えられ、引張力は、真空105および106により生成された吸引力から生じる。
【0018】
その後、フェムト秒レーザ(図示せず)がドッキング機器と結合され、その結果、格段に大きい押圧力がドッキング機器を通じて眼に伝達される。レーザの位置が調整され得、この調整の結果、眼に対する重量を増減させ得るドッキング機器の動きがもたらされる。
【0019】
測定装置120は、吸引コーンの検出可能位置を検出し、かつ検出可能位置に関するデータを生成するように動作可能である。例えば、測定装置120は、光バリア、スイッチ、経路記録装置、アイカメラ、複眼カメラ、または視線追跡システムを使用することにより、吸引コーンの検出可能位置を検出するように動作可能であり得る。プロセッサ130は、測定装置からデータを受信し、かつ規定の「中立位置」に対する吸引コーンの検出可能位置の相対距離を算定するように動作可能である。使用者により規定される「中立位置」は、眼が(ドッキング機器の)構成要素に接触する位置であり、そのような接触に基づいて眼に対して実質的に中立の引張力または押圧力がかかる、眼の中立位置を表す。プロセッサ130は、被検知力距離参照データの参照により、相対距離に関連する眼に対する重量を更に算定し得る。次いで、プロセッサは、眼に対する算定された重量の絵図表示を生成し、かつ絵図表示を表示装置140に送信し得る。システム100は、被検知力距離参照データの参照により、吸引コーンの可動範囲内の任意の検出可能位置についての眼に対する重量を使用者に提供し得る。更に、測定装置は、任意の後続の検出可能位置を(時間内に)検出し、かつ検出可能位置に関するデータを生成し得る。次いで、プロセッサ130は、過去に算定された眼に対する重量に関連する眼に対する重量の何らかの変化を算定し得る。そのようないかなる変化も、使用者に提示されるように、絵図表示に図示されかつ表示装置に送信され得る。
【0020】
絵図表示は、眼に対する重量を例えば数字、グラフ、目盛り、図形、ダイヤルまたはカウンタとして任意の形式で表し得る。絵図表示は、任意の態様の絵図表示の異なる色、大きさまたは厚さを提示することにより、眼に対する重量の増減、相対位置または検出可能位置などの変化を表し得る。表示装置は、複数の表示装置を含み得、かつスクリーン、ヘッドアップ表示装置またはこれらの組み合わせであり得る。
【0021】
プロセッサ130は、眼に対する重量が規定の許容範囲内にある値であるか否かを判断するように更に構成され得る。規定の許容範囲は、使用者により選択された任意の範囲であり得、かつ眼圧、眼の曲率または眼の既往歴などのパラメータに従って眼または患者に応じて異なり得る。プロセッサは、眼に対する重量が規定の許容範囲内の値であると判断した場合に待機モードに移行するように構成され得、この待機モードにおいて、プロセッサは、警告を生成しない。対照的に、プロセッサは、眼に対する重量が規定の許容範囲内の値でないと判断した場合に警告を生成および送信するように構成され得る。警告は、絵図表示に含まれ得、かつ眼に対する重量が規定の許容範囲内にないことを使用者に表し得る。警告は、再び許容範囲内に入るのにドッキング機器の構成要素の調整が必要であること、その方向、およびZ方向に必要である調整の程度を更に表し得る。そのような警告は、例えば、着色光、明滅光、点滅光、音声、警報、警笛、図形または眼に対する重量が規定の許容範囲内にないことを使用者に表すように動作可能な他の任意の信号の形態であり得る。警告は、リアルタイムで、好ましくは警告が必要であるとプロセッサが判断し次第、使用者に提示され得る。リアルタイムとは、0.5秒未満、1秒未満、または他に視覚情報に基づく使用者の通常の反応時間未満を意味し得る。
【0022】
以下に図2および図3で説明するように、プロセッサによって参照される被検知力データは、システム100または機能的に均等なシステムに力センサを組み込むことによって生成され得る。例えば、力センサは、計量装置であり得る。図2および図3で詳細に説明するが、力センサは、被検知力を検知し、かつその被検知力に関するデータを生成するように動作可能である。プロセッサは、データを受信し、かつその被検知力データを対応する検出可能位置に関連付けるように更に動作可能であり得る。次いで、プロセッサは、被検知力および検出可能位置に関するデータが受信される任意の検出可能位置に関連する眼に対する重量を算定し得る。
【0023】
更に、プロセッサによって参照される被検知力距離参照データは、外挿された被検知力距離データセットを含み得る。外挿された被検知力距離データセットは、過去に検出された検出可能位置に対応する、眼に対する重量の過去の算定値を外挿することによって生成され得る。眼に対する重量の過去の算定値は、ドッキング機器またはドッキング機器の任意の構成要素(例えば、吸引コーン)の全可動範囲内の任意の検出可能位置またはそのサブセットを含むように外挿され得る。外挿された被検知力距離データセットを含めることにより、実際の被検知力距離参照データがそれらの正確な検出可能位置のために生成されるかまたは利用できる必要なく、プロセッサが全可動範囲内の任意の検出可能位置についての眼に対する重量を算定することが可能となる。
【0024】
代替的に、可動範囲内の可能な全ての検出可能位置に関連する眼に対する重量の算定値を含む被検知力距離参照データが生成され得、その結果、外挿された被検知力距離データセットを含めるかまたは参照する必要がない。例えば、被検知力距離参照データは、全可動範囲にわたって構成要素の検出可能位置を検出するように動作可能な経路記録装置である測定装置を使用して生成され得る。
【0025】
被検知力距離参照データおよび/または外挿された被検知力距離データセットは、システム100または任意の機能的に同一のシステムによって生成され得る。次いで、そのような被検知力距離参照データは、メモリ135または他の機能的に同一のシステムのメモリに含まれ、かつプロセッサ130または他の任意の機能的に同一のシステムのプロセッサによって参照され得る。そのような被検知力距離参照データの参照により、システム100は、ドッキング機器またはその構成要素の全可動範囲内の任意の検出可能位置についての眼に対する重量の間接的算定値を生成し得る。
【0026】
プロセッサ130は、例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、あるいはプログラム命令を解釈および/もしくは実行するようにかつ/またはデータを処理するように構成された他の任意のデジタルまたはアナログ回路を含み得る。いくつかの実施形態において、プロセッサ130は、プログラム命令を解釈および/もしくは実行し、かつ/またはメモリに記憶されたデータを処理し得る。メモリは、一部または全部がアプリケーションメモリ、システムメモリまたはこれらの両方として構成され得る。メモリは、1つまたは複数のメモリモジュールを保持および/または収納するように構成された任意のシステム、装置または機器を含み得る。各メモリモジュールは、プログラム命令および/またはデータを一定期間保持するように構成された任意のシステム、装置または機器(例えば、コンピュータ可読媒体)を含み得る。説明する種々のサーバ、電子装置または他の機械は、関連する機械の機能を実行するためのプログラム命令を記憶および実行するための1つまたは複数の同様のかかるプロセッサまたはメモリを含み得る。
【0027】
図2は、図1に示すシステムまたは機能的に同一のシステムに力センサを組み込むことにより、被検知力距離参照データを生成する概略図200である。図1のシステムの構成要素は、図2に図示するように、制御装置108と、レンズ102と、測定装置120と、プロセッサ130とに接続された吸引コーン107である。この例において、対象とする検出可能位置210は、Z方向におけるレンズ102の位置とZ方向において均等である、吸引コーンの底部側の位置である。レンズ102は、吸引コーン107内に収容される。図示のシステムは、図1のシステムに組み込まれた力センサ205を更に含む。目盛り220は、ドッキング機器の構成要素である吸引コーンの全可動範囲を表す。
【0028】
測定装置120は、吸引コーン107の検出可能位置210を検出し、かつ検出可能位置に関するデータを生成するように動作可能である。力センサ205は、被検知力を検知し、かつその被検知力に関するデータを生成するように動作可能である。プロセッサ130は、測定装置および力センサからデータを受信し、かつ規定の「中立位置」に対する検出可能位置の相対距離を算定するように動作可能である。使用者により規定される「中立位置」は、眼が吸引コーンに接触する位置であり、その接触に基づいて眼に実質的に中立の引張力または押圧力がかかる、眼の中立位置を表す。プロセッサ130は、その検出可能位置についての被検知力距離参照データを生成するために、眼に対する重量に対応する被検知力に相対距離を関連付け得る。
【0029】
この例において、測定装置120および力センサ205は、検出可能位置250、251および252に関するデータを生成および送信する。プロセッサ130は、これらの検出可能位置の各々と規定の中立位置との相対距離を算定し、かつそれぞれの各相対距離を眼に対する対応する重量に関連付け得る。したがって、例えば、吸引コーン107が後に検出可能位置252に調整された場合、プロセッサ130は、過去に生成された被検知力距離参照データの参照により、眼に対する重量を算定し得る。したがって、プロセッサは、少なくとも過去に生成された検出可能位置に関する被検知力距離参照データの参照により、可動範囲内の任意の検出可能位置についての眼に対する重量を算定し得る。
【0030】
一例において、測定装置は、吸引コーンがその全可動範囲にわたって調整されるときの吸引コーンの検出可能位置を検出するように動作可能な経路記録装置であり得る。力センサデータは、この範囲全体にわたって任意の増分で生成され得る。そのようなデータは、吸引コーンの全可動範囲内の任意の検出可能位置についての被検知力距離参照データを生成するように処理され得る。したがって、プロセッサは、続いて検出される任意の検出可能位置についての被検知力距離参照データの参照により、眼に対する重量を算定し得る。そのような被検知力距離参照データは、生成された時点で、図1に示すシステムまたは任意の機能的に同一のシステムのメモリに含まれ得る。
【0031】
別の例として、全可動範囲内の全ての検出可能位置に関する被検知力距離参照データが生成されない場合、プロセッサは、被検知力距離参照データに含まれ得る外挿された被検知力距離データセットの参照により、任意の検出可能位置についての眼に対する重量を算定し得る。この例において、検出可能位置250、251および252に関する眼に対する重量のデータは、吸引コーンの全可動範囲にわたって外挿され得る。外挿データ点260、261および262は、外挿された被検知力距離データが実際の検出位置250、251および252から生成され得る検出可能位置を図示する。例えば、外挿データ点260は、可動範囲の(Z方向の)最低点を表し、かつ外挿データ点262は、可動範囲の(Z方向の)最高点を表す。そのようなデータは、任意の増分で外挿され得る。外挿された時点で、外挿された被検知力距離データセットが生成され、このデータセットは、プロセッサによって参照される被検知力距離参照データに含まれ得る。したがって、プロセッサは、外挿された被検知力距離データセットを更に含み得る被検知力距離参照データの参照により、全可動範囲内の任意の検出可能位置についての眼に対する重量を算定し得る。
【0032】
図3は、吸引コーンの可動範囲内における、吸引コーンの検出可能位置に関連する眼に対する重量の外挿を示すグラフである。図3のグラフは、吸引コーンの検出可能位置のX軸線を有し、ここで、「A」は、吸引コーンの可動範囲の(Z方向の)最も低い検出可能位置を表し、かつ「Z」は、可動範囲の(Z方向の)最も高い検出可能位置を表す。Y軸線は、重量の任意の測定基準または目盛りが使用され得るが、眼に対する重量のグラム単位の算定値を図示する。検出可能位置250、251および252は、図2で説明するように、実際に測定された検出可能位置に対応する。同様に、外挿データ点260、261および262は、図2で説明するように外挿データに対応する。外挿線350は、全可動範囲内の任意の検出可能位置についての眼に対する重量のグラム単位の算定値を表す。したがって、外挿線350は、プロセッサによって参照される被検知力距離参照データに含まれ得る外挿された被検知力距離参照データセットを図示する。外挿線350により図示する外挿データのいずれかまたは全てが被検知力距離参照データに含まれ得る。
【0033】
図4は、レーザ眼科手術中に眼に対する重量を使用者の通常の操作で間接的に算定するためのシステム400の概略図である。図示のように、システムは、眼101と、レンズ102、吸引コーン107および吸引リング103との接触によって表されるようにドッキング状態にある。吸引力は、真空105および106により加えられる。図示のドッキング位置において、測定装置120は、吸引コーンの可動範囲内の任意の検出可能位置、例えば検出可能位置401、402、403または404を検出し得る。図4に図示するように、検出可能位置402は、現在のドッキング位置を表す。システムは、図1で説明するように、検出可能位置402において眼に対する重量を算定し得る。例えば、吸引コーンが調整された場合またはドッキング中もしくは処置中に眼が位置401、403もしくは404に移動した場合、測定装置120は、新たな検出可能位置を検出するように動作可能である。次いで、システムは、眼に対する新たな重量を算定し、眼に対する重量の絵図表示を生成し、かつ使用者に提示されるように絵図表示を表示装置に送信し得る。
【0034】
図4に示すように、目盛り420は、使用者により規定された許容範囲を表す。許容範囲は、眼圧、眼の曲率または眼の既往歴などの患者固有のパラメータに基づいて異なり得る。この例において、検出可能位置402では、検出可能位置402が許容範囲420内にあるため、システムは、警告を生成または送信しない。対照的に、検出可能位置404では、検出可能位置404が許容範囲420外にあるため、システムは、警告を生成および送信する。警告は、表示装置により提示される絵図表示に含まれ得る。警告は、ドッキング機器の構成要素の調整が必要であること、その方向、およびZ方向に必要である調整の程度を更に表し得る。例えば、検出可能位置404において生成される警告は、検出可能位置が許容範囲内にないことと、再び許容範囲内に入るように吸引コーンが下方に調整されなければならないことと、検出可能位置402および404間の距離差だけ吸引コーンが調整されなければならないこととを表し得る。
【0035】
図5は、レーザ眼科手術中に眼に対する重量を間接的に算定するための方法のフローチャートである。ステップ505では、ドッキング機器の構成要素の検出可能位置に関するデータが受信され、ドッキング機器が眼科用レーザ手術に使用される。ステップ510では、検出可能位置と眼の中立位置との相対距離が算定され得る。眼の中立位置は、眼が(ドッキング機器の)構成要素に接触する位置であり、その接触に基づいて眼に実質的に中立の引張力または押圧力がかかる。ステップ515において、被検知力距離参照データの参照により、ドッキング機器と眼との接触から生じる眼に対する重量が算定される。被検知力距離参照データは、(検出可能位置と眼の中立位置との)相対距離と、眼に対する重量とに関するデータを指す。そのような被検知力距離参照データは、実際に生成されたデータのみを含み得、または被検知力距離参照データは、外挿された被検知力距離データセットを更に含み得る。したがって、眼に対する重量は、ステップ515において、外挿された被検知力距離データセットを含み得るかまたは含まない被検知力距離参照データの参照により算定され得る。参照データは、通常、実際の眼科手術中に生成されない。むしろ、参照データは、通常、少なくとも本明細書で説明するシステムと、特定のフェムト秒レーザと、眼に対する重量に寄与し得る他の設置部品とを含む手術システムのために生成される。したがって、参照データは、眼科手術中に使用される同様のシステムを用いて提供される。そのような参照データは、所与の手術システムの開発中に生成され、新たに製造されたシステムを使用して随時確認され得る。参照データは、個々の各手術システムに固有のデータとすることも可能である。したがって、参照データは、製造が完了した後またはシステムがインストールされた後に生成され得る。技術者は、特定のシステムのための参照データを定期的に確認および更新し得る。
【0036】
眼に対する重量がステップ515で算定された後、ステップ580において、検出可能位置に関連する眼に対する重量の絵図表示が生成され得、およびステップ590において絵図表示が表示装置に送信され得る。
【0037】
代替的に、眼に対する重量がステップ515で算定された後、ステップ535において、眼に対する重量が規定の許容範囲内にある値であるか否かが判断され得る。ステップ535において、眼に対する重量が許容範囲内にあると判定された場合、ステップ540において、眼に対する重量が許容範囲内にないことを表す警告を生成しなくてもよいため、工程が終了する。対照的に、ステップ535において、眼に対する重量の値が許容範囲内にないと判断された場合、ステップ545において、警告は、眼に対する重量の絵図表示に含まれるように生成され得る。そのような警告は、例えば、着色光、明滅光、点滅光、音声、警報、警笛、図形または眼に対する重量が規定の許容範囲内にないことを使用者に表すように動作可能な他の任意の信号の形態であり得る。警告は、リアルタイムで、好ましくは警告が必要であるとプロセッサが判断し次第、使用者に提示され得る。リアルタイムとは、0.5秒未満、1秒未満、または他に視覚情報に基づく使用者の通常の反応時間未満を意味し得る。ステップ580において、検出可能位置に関連する眼に対する重量の絵図表示が生成され得、およびステップ590において絵図表示が表示装置に送信され得る。
【0038】
絵図表示は、眼に対する重量を例えば数字、グラフ、目盛り、図形、ダイヤルまたはカウンタとして任意の形式で表し得る。絵図表示は、任意の態様の絵図表示の異なる色、大きさまたは厚さを提示することにより、眼に対する重量の増減、相対位置または検出可能位置などの変化を表し得る。表示装置は、複数の表示装置を含み得、かつスクリーン、ヘッドアップ表示装置またはこれらの組み合わせであり得る。
【0039】
被検知力距離参照データが、外挿された被検知力距離データセットを含む場合、ステップ520において、眼に対する重量に対応する被検知力に関するデータが受信され得、ステップ505において、ドッキング機器の構成要素の検出可能位置に関するデータが受信され得、およびステップ510において、検出可能位置と眼の中立位置との相対距離が算定され得る。ステップ525において、被検知力距離参照データを生成するために、眼に対する重量は、検出可能位置に対応する相対距離に関連付けられ得る。そのような被検知力距離参照データは、ステップ530において、外挿された被検知力距離データセットを生成するために外挿され得る。外挿された被検知力距離データセットは、全可動範囲内の任意の検出可能位置を含み得、かつデータセットは、眼に対する重量の算定のために参照される被検知力距離参照データに含まれ得る。したがって、被検知力距離参照データの参照により、ステップ515において、構成要素の全可動範囲内の任意の検出可能位置についての眼に対する重量が間接的に算定され得る。
【0040】
上記の開示された主題は、例示的であり、限定しないものとみなされるべきであり、添付の特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨および範囲に含まれる全てのかかる修正形態、改善形態および他の実施形態を網羅することが意図されている。したがって、本開示の範囲は、法の許す最大限の範囲において、以下の特許請求の範囲およびその均等物の許容される最も広義の解釈によって決定されるべきであり、前述の詳細な説明により制限または限定されないものとする。
図1
図2
図3
図4
図5