特許第6770195号(P6770195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770195
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】不飽和低級脂肪酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/353 20060101AFI20201005BHJP
   C07C 57/04 20060101ALI20201005BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20201005BHJP
   C07C 67/343 20060101ALI20201005BHJP
   B01J 29/85 20060101ALI20201005BHJP
   B01J 29/08 20060101ALI20201005BHJP
   B01J 29/18 20060101ALI20201005BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20201005BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20201005BHJP
   B01J 29/46 20060101ALI20201005BHJP
   B01J 37/30 20060101ALI20201005BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20201005BHJP
【FI】
   C07C51/353
   C07C57/04
   C07C69/54 Z
   C07C67/343
   B01J29/85 Z
   B01J29/08 Z
   B01J29/18 Z
   B01J29/40 Z
   B01J29/70 Z
   B01J29/46 Z
   B01J37/30
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-527200(P2019-527200)
(86)(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公表番号】特表2019-535735(P2019-535735A)
(43)【公表日】2019年12月12日
(86)【国際出願番号】CN2016107246
(87)【国際公開番号】WO2018094687
(87)【国際公開日】20180531
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】馬占玲
(72)【発明者】
【氏名】朱文良
(72)【発明者】
【氏名】馬現剛
(72)【発明者】
【氏名】劉紅超
(72)【発明者】
【氏名】劉勇
(72)【発明者】
【氏名】倪友明
(72)【発明者】
【氏名】劉世平
(72)【発明者】
【氏名】陳其偉
(72)【発明者】
【氏名】劉中民
【審査官】 高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−158135(JP,A)
【文献】 特開昭52−125117(JP,A)
【文献】 特表2016−521288(JP,A)
【文献】 特開2015−124153(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034879(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/184099(WO,A1)
【文献】 特開昭57−123137(JP,A)
【文献】 特開昭57−123138(JP,A)
【文献】 米国特許第04447641(US,A)
【文献】 特開2005−239583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチラールと分子式がR−CHCOORエステルとを酸性分子篩触媒が担持された反応器中でアルドール縮合反応させ、相応する不飽和低級脂肪酸又はエステルを得ることを含み、
前記H−、CH−、CHCH−、CH(CH−及びCH(CH−から選択され
前記RはCH−、CHCH−、CH(CH−及びCH(CH−から選択され、
前記酸性分子篩触媒は、シリカアルミナ分子篩、リン酸アルミニウム分子篩及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上を含み、
前記シリカアルミナ分子篩は、ZSM−35分子篩、ZSM−5分子篩、MOR分子篩、Y分子篩、βeta分子篩、MCM−22分子篩及びそれらの組み合せからなる群から選択される一種以上を含み、
前記リン酸アルミニウム分子篩は、SAPO−34分子篩、DNL−6分子篩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一種以上を含む
不飽和低級脂肪酸又はエステルを製造する方法。
【請求項2】
前記酸性分子篩触媒がZSM−5分子篩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記はH−及びCH−から選択され、前記はCH−から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性分子篩触媒におけるシリカアルミナ分子篩のシリカ対アルミナの原子比が1〜50である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性分子篩触媒におけるシリカアルミナ分子篩のシリカ対アルミナの原子比が2〜25である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性分子篩触媒は、前記分子篩の骨格組成元素以外の元素により変性された生成物をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸性分子篩触媒は、カリウム、セシウム、及び銅からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属元素をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記金属元素が、in situ合成、金属イオン交換又は浸漬により前記酸性分子篩触媒中に導入される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸性分子篩触媒の総重量に対して、前記金属元素の、金属単体換算での重量パーセントが0.01wt%〜10.0wt%である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸性分子篩触媒は、バインダとして、アルミナ、シリカ、ジルコニア及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれるいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸性分子篩触媒の総重量に対して、前記バインダの含有量が0wt%超で50wt%以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
メチラール対前記酸又はエステルのモル比が1/20〜5/1であり、原料の合計質量空間速度が0.05〜10.0h−1であり、反応温度が200〜400℃であり、かつ、反応圧力が0.2〜15.0MPaである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
メチラール対前記酸又はエステルのモル比が1/10〜2/1であり、原料の合計質量空間速度が0.3〜2.0h−1であり、反応温度が250〜350℃であり、かつ、反応圧力が0.2〜5.0MPaである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルドール縮合反応が、固定床反応器、流動床反応器又は槽型反応器の中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記アルドール縮合反応が、N、He、Ar、CH、C、H、CO、及びCOから選択されるいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む雰囲気の中で行われる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和低級脂肪酸エステルの製造方法に関し、特に、酢酸メチルとメチラールとをアルドール縮合反応させてアクリル酸及びアクリル酸メチルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸及びアクリル酸メチルは重要な化工原料であり、塗料、凝集剤、分散剤及びバインダ等として使用可能であり、建築、水処理、日常化学製品、土壌処理及び皮革等の分野に広く使用され、人々の日常生活と緊密な関係がある。従来、工業上に最も常用されるアクリル酸及びアクリル酸メチルの製造方法は、プロピレン二段酸化法であり、すなわち、第1段階でプロピレンをアクロレインに酸化し、第2段階で酸化してアクリル酸が得られる。しかしながら、その原料であるプロピレンが石油に由来し、再生不可能な資源に属し、持続可能な発展という思想に合致しない。
【0003】
イギリスルーサイト社は、2010年に初めてアルドール縮合反応によりメタクリル酸及びそのエステルの工業化生産を達成し、年間生産高が12000トンである。この方法は、第1段階でエチレン、一酸化炭素及びメタノール等の原料を用いてプロピオン酸メチルを合成し、生成物を分離して純粋なプロピオン酸メチルを得、第2段階でプロピオン酸メチル及びメタノールを酸化セリウム塩基触媒が担持された固定床反応器に導入し、その後、粗分離、精留してメタクリル酸メチルが得られる。この方法は、石炭系原料であるメタノール及び一酸化炭素を充分に利用し、我が国の石炭が多く、石油が少なく、天然ガスが乏しいというエネルギー構成と非常に一致し、我々のアクリル酸及びそのエステルの工業化製造のために斬新なルートを提供している。酢酸及び酢酸メチルは、重要な有機化工原料であり、石炭系原料をメタノールカルボニル化することで得られる。C1化学の迅速な発展に伴い、酢酸及び酢酸メチルの生産能力が過剰となっている。安価な原料である酢酸及び酢酸メチルを原料として、ホルムアルデヒドとアルドール縮合反応させることによってアクリル酸及びアクリル酸メチルを製造することができ、これは、アクリル酸及びアクリル酸メチルの持続可能な製造のために実行可能な方法を提供している。
【0004】
1967年、特許JP71016728Bには、酢酸、プロピオン酸及びギ酸を、アルカリ土類金属酸化物が担持されたシリカ触媒上にアルドール縮合反応させてアクリル酸又はメタクリル酸生成物を製造する。1966年、James F. Vitcha(I & EC product research and development 1966, 5:50−53)は、アルカリ金属が担持されたDecalsos分子篩触媒を製造し、酢酸及びホルムアルデヒドのアルドール縮合反応に触媒作用を及ぼしてアクリル酸及びそのエステルを製造し、ここで、ホルムアルデヒドがホルマリン水溶液により提供される。Debraj Saha(Dalton Trans. 2014, 43:13006-13017)は、2014年、2種類のアルカリ金属が担持されたMg−MOF及びCa−MOF材料を製造し、アルドール縮合反応に触媒作用を非常に良く及ぼすことができる。Mamoru Ai(Bull. Chem. Soc. Jpn. 1990, 63:1217−1220; Bull. Chem. Soc. Jpn. 1990, 63:3722−3724等)は、一連のV−P−O複合触媒を製造し、これらはプロピオン酸(エステル)又は酢酸(エステル)のアルドール縮合反応に触媒作用を効果的に及ぼして低級不飽和脂肪酸エステルを製造することができる。
【0005】
上記の文献が検討したアルドール縮合反応に用いた触媒は、塩基触媒又は酸−塩基二官能基触媒である場合がよくあり、その製造過程において、一般に浸漬、イオン交換、共沈等により活性成分を担体上に担持し、製造が煩瑣であり、影響要素が複雑で再現性が低く、活性成分が流失しやすい等の欠点が存在し、工業化大規模生産の要求を満足することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、不飽和低級脂肪酸エステルの新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
アルドール縮合反応は、塩基触媒下で行うことができるだけではなく、酸性条件下でも同様に順調に行うことができる。生成物を分離しにくい等の問題を避けるために、工業上に広く生産される固体酸分子篩を触媒として用いることができる。固体酸分子篩は、孔構造が豊富で、製造が簡単で、由来が幅広いなどの利点を有し、それをアルドール縮合反応の触媒として用いることは良好な工業応用見込みがある。
【0008】
これに基づき、本発明は、メチラール(DMM)と分子式がR−CH−COO−Rの酸又はエステルとを酸性分子篩触媒が担持された反応器中でアルドール縮合反応させ、相応する不飽和低級脂肪酸又はエステルルを得ることを含み、前記R及びRはそれぞれ独立にH−、CH−、CHCH−、CH(CH−又はCH(CH−等の基である不飽和低級脂肪酸エステルの新規な生産方法を提供する。
【0009】
1つの好ましい実施形態において、前記不飽和低級脂肪酸又はエステルをさらに水素化して対応する飽和アルコール類を生産する。
【0010】
1つの好ましい実施形態において、前記R及びRは、それぞれH−又はCH−である。
【0011】
1つの好ましい実施形態において、前記メチラール(DMM)と低級飽和酸エステルR−CH−COO−Rとが高圧ポンプ又は飽和ガスによりそれぞれ反応管内に持ち込まれて酸性分子篩触媒と接触させる。
【0012】
1つの好ましい実施形態において、前記酸性分子篩触媒は、シリカアルミナ分子篩及びリン酸アルミニウム分子篩のうちのいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む。好ましくは、前記酸性分子篩触媒のトポロジー構造は、RHO、CHA、FER、MFI、MOR、FAU、βetaのうちのいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む。より好ましくは、前記酸性分子篩触媒は、SAPO−34分子篩、DNL−6分子篩、ZSM−35分子篩、ZSM−5分子篩、MOR分子篩、Y分子篩、βeta分子篩及びMCM−22分子篩のうちのいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む。
【0013】
1つの好ましい実施形態において、前記酸性分子篩触媒におけるシリカアルミナ分子篩のシリカ対アルミナの原子比が1〜50であり、好ましくは2.5〜25である。
【0014】
1つの好ましい実施形態において、前記酸性分子篩触媒は、前記分子篩の骨格組成元素以外の元素により変性された生成物をさらに含む。
【0015】
1つの好ましい実施形態において、前記酸性分子篩触媒は、カリウム、セシウム、及び銅からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属元素をさらに含む。前記金属元素が、in situ合成、金属イオン交換又は浸漬により前記酸性分子篩触媒中に導入される。前記酸性分子篩触媒の総重量に対して、前記金属元素の、金属単体換算での重量パーセントが0.01wt%〜10.0wt%である。
【0016】
1つの好ましい実施形態において、前記酸性分子篩触媒は、バインダとして、アルミナ、シリカ、ジルコニア及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれるいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む。前記酸性分子篩触媒の総重量に対して、前記バインダの含有量が0wt%〜50wt%である。
【0017】
1つの好ましい実施形態において、前記原料ガスのうち、メチラール(DMM)対低級飽和酸エステルのモル比が1/20〜5/1であり、好ましくは1/10〜2/1である。
【0018】
1つの好ましい実施形態において、前記アルドール縮合反応が、200〜400℃の温度及び0.2〜15.0MPaの圧力で行われ、好ましくは250〜350℃及び0.2〜5.0MPaである。
【0019】
1つの好ましい実施形態において、前記原料の合計質量空間速度が0.05〜10.0h−1であり、好ましくは0.3〜2.0h−1である。
【0020】
1つの好ましい実施形態において、前記アルドール縮合反応が、固定床反応器、流動床反応器又は槽型反応器の中で行われる。
【0021】
1つの好ましい実施形態において、前記アルドール縮合反応が、N、He、Ar、CH、C、H、CO、COのうちのいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む雰囲気の中で行われる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、不飽和低級脂肪酸エステルの新規な製造方法、特にアクリル酸及びアクリル酸メチルの新規な製造方法を提供し、この方法は、酸性分子篩触媒上に行われ、反応活性が高く、触媒の工業化製造が簡単であり、触媒活性成分が流失しにくい等の特徴を有し、良好な工業応用見込みがある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、分子式がR−CH−COO−Rの酸又はエステルとメチラール(DMM)とを酸性分子篩が担持された反応器中でアルドール縮合反応させ、相応する不飽和低級脂肪酸又はエステル(CH=C(R)−COO−R)を製造し、R及びRはそれぞれ独立にH−、CH−、CHCH−、CH(CH−又はCH(CH−等の基である方法を提供する。
【0024】
1つの特定の実施形態において、本発明は、酢酸メチルとメチラールとを酸性分子篩触媒上にアルドール縮合させてアクリル酸及びそのエステルを製造する方法を提供する。
【0025】
好ましくは、本発明に用いる前記酸性分子篩触媒におけるシリカアルミナ分子篩のシリカ対アルミナの原子比が1〜50であり、より好ましくは2.5〜25である。
【0026】
好ましくは、前記酸性分子篩触媒は、カリウム、セシウム、銅からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属元素をさらに含む。前記金属元素は、in situ合成、金属イオン交換又は浸漬等により前記酸性分子篩触媒中に導入される。好ましくは、前記酸性分子篩触媒の総重量に対して、前記金属元素の金属単体換算での重量パーセントが0.01wt%〜10.0wt%である。
【0027】
好ましくは、本発明に用いる前記酸性分子篩触媒は、バインダとして、アルミナ、シリカ、ジルコニア及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれるいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む。好ましくは、前記酸性分子篩触媒の総重量に対して、前記バインダの含有量が0wt%〜50wt%である。
【0028】
好ましくは、本発明に用いる低級脂肪酸エステルが酢酸メチルであり、アルドール縮合反応後にアクリル酸及びアクリル酸メチルが得られる。
【0029】
好ましくは、本発明に用いるアルドール縮合反応は、温度が200〜400℃、反応圧力が0.2〜5.0MPa、原料の合計質量空間速度が0.3〜2.0h−1である条件下で行われる。
【0030】
好ましくは、本発明に用いるアルドール縮合反応器が固定床反応器、流動床反応器又は槽型反応器である。
【0031】
好ましくは、前記アルドール縮合反応が、N、He、Ar、CH、C、H、CO、COのうちのいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む雰囲気中で行われる。
【0032】
また、特に限定されないが、好適なアルドール縮合反応において、メチラール対酢酸メチルのモル比が1/10〜2/1の範囲内である。
【実施例】
【0033】
実施例
以下、幾つかの実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0034】
リン酸アルミニウム分子篩DNL−6、SAPO−34は、大連化学物理研究所が、Microporous andMesoporousMaterials 144 (2011) 113−119及びMicroporous andMesoporousMaterials 111 (2008) 143−149という文献に報告されている方法を用いて生産及び提供したものである。残りの分子篩及び関連原料はいずれも市販から入手した。
【0035】
本発明の実施例における分析方法及び条件は以下の通りである。
原料及び生成物は、Agilent社のAligent 7890Aガスクロマトグラフィーにより、Agilent社のFFAPキャピラリーカラムを用いてオンライン検出される。
【0036】
本発明の1つの実施形態によれば、固定床反応器を選用し、原料の合計質量空間速度が0.3〜2.0h−1であり、反応温度が200〜400℃であり、反応圧力が0.2〜5.0MPaである。原料は、以下の方式により反応器に導入される。
【0037】
原料である酢酸メチルとメチラールとを水浴(20℃)下で温度保持し、窒素ガスNを導入してバブリングを行い、原料が含まれる飽飽和蒸気が固定床反応器に入り、窒素ガスの流速に基づいて反応器に入る原料物質の量を調節することができる。異なる温度条件下、原料の飽和蒸気圧は、下記の式で算出することができる。
lg P=A−B/(t+C)
式中、A、B、Cはそれぞれ異なる原料の物性パラメータを表し、Lange’s Handbook of Chemistryを照会してわかるように、tは温度を表す。このようにして、任意温度下での原料の飽和蒸気圧を算出することができる。飽和蒸気圧から、単位時間当たりの反応器に入る原料物質の量を算出することができる。
メチラールの転化率=[(仕込み試料中のメチラールのモル数)−(排出試料中のメチラールのモル数)]/(仕込み試料中のメチラールのモル数)×(100%)
酢酸メチルの転化率=[(仕込み試料中の酢酸メチルのモル数)−(排出試料中の酢酸メチルのモル数)]/(仕込み試料中の酢酸メチルのモル数)×(100%)
アクリル酸及びアクリル酸メチルの選択率=(排出試料中のアクリル酸及びアクリル酸メチルの炭素原子モル数)/(全生成物の合計炭素原子モル数−ジメチルエーテルの炭素原子モル数)×(100%)
【0038】
本発明の実施例において生成物は大量のジメチルエーテルを含有し、工業上、それを循環して原料を改めて補充することができるので、選択率を計算する際にジメチルエーテル生成物を考慮しない。
【0039】
1 触媒の製造例
1.1 リン酸アルミニウム分子篩
SAPO−34、DNL−6は、大連化学物理研究所が水熱法を用いて製造したものである。原粉を550℃で4時間焼成し、押圧によりそれぞれ20〜40メッシュの1#、2#の触媒を得た。
【0040】
1.2 シリカアルミナ分子篩
焼成されたシリカアルミナ比がそれぞれ2.5、6.5、20、21.5のNa−Y、Na−MOR、βeta及びNa−ZSM−5分子篩 100グラムをそれぞれ0.5Mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液で3回交換し、1回当たり2時間であり、脱イオン水を用いて洗浄し、乾燥させて、550℃で4時間焼成し、水素型Y分子篩、水素型MOR分子篩、水素型βeta分子篩及び水素型ZSM−5分子篩を得、押圧によりそれぞれ20〜40メッシュの3#、4#、5#、6#の触媒を得た。
【0041】
1.3 水素型MORシリカアルミナ分子篩の成形
シリカアルミナ比が6.5のNa−MOR分子篩 80g、擬ベーマイト 28gを10%の希硝酸と均一に混合した後に押出成形し、550℃で4時間焼成し、0.5mol/Lの硝酸アンモニウムで3回交換し、1回当たり2時間であり、脱イオン水を用いて洗浄し、乾燥させて、550℃で4時間焼成し、触媒7#を得た。
【0042】
シリカアルミナ比が6.5のNa−MOR分子篩 80g、擬ベーマイト 20gを10%の希硝酸と均一に混合した後に押出成形し、550℃で4時間焼成し、0.5mol/Lの硝酸アンモニウムで3回交換し、1回当たり2時間であり、脱イオン水を用いて洗浄し、乾燥させて、550℃で4時間焼成し、触媒8#を得た。
【0043】
シリカアルミナ比が6.5のNa−MOR分子篩 80g、擬ベーマイト 50gを10%の希硝酸と均一に混合した後に押出成形し、550℃で4時間焼成し、0.5mol/Lの硝酸アンモニウムで3回交換し、1回当たり2時間であり、脱イオン水を用いて洗浄し、乾燥させて、550℃で4時間焼成し、触媒9#を得た。
【0044】
1.4 担持型M/ZSM−5触媒
等体積浸漬法により担持型M/ZSM−5触媒を製造する。2.02gのKNO、3.24gのCsCO及び1.88gのCu(NOをそれぞれ18mlの脱イオン水に溶解し、相応する硝酸塩水溶液を調製した。20gの6#の触媒をそれぞれ上記の塩溶液に加え、24時間静置し、その後、分離、脱イオン水による洗浄を経て、得られた試料を120℃のオーブン中で12時間乾燥させ、乾燥後の試料をマッフル炉中に放置し、2℃/minの昇温速度で処理温度550℃に昇温し、4h焼成して、それぞれ10#、11#、12#の触媒を得た。
【0045】
2 合成例
2.1 異なる分子篩上のアルドール縮合反応
異なるトポロジー構造を有する1#〜12#の酸性分子篩をそれぞれ40MPaの圧力で打錠し、20〜40メッシュの粒子を選別して測定を行った。分子篩触媒を固定床反応器の中に充填し、触媒を予め活性化させ、その条件は、Nの流速が30ml/minであり、2℃/minの速度で500℃に昇温し、さらに500℃で1時間温度保持し、その後、窒素ガス雰囲気下、所望の反応温度350℃に降温し、窒素ガスを用いて反応系の圧力を3MPaに上昇させ、メチラール対酢酸メチルのモル比が2/1であり、原料の合計質量空間速度が0.3h−1であり、この条件下でのアルドール縮合反応の結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
2.2 異なる反応温度でのアルドール縮合反応の結果
6#の触媒 0.5gを内径が8ミリメートルの固定床反応器中に充填し、窒素ガス雰囲気下、2℃/minの昇温速度で500℃に昇温し、1時間保持し、その後、窒素ガス雰囲気下、所望の反応温度に降温し、さらに窒素ガスを用いて反応系の圧力を3MPaに上昇させた。反応原料を上から下へと反応器中に導入し、メチラール対酢酸メチルのモル比が2/1であり、原料の合計質量空間速度が0.3h−1であり、異なる反応温度下でのアルドール縮合反応の結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
2.3 異なる反応圧力下でのアルドール縮合反応の結果
6#の触媒 0.5gを内径が8ミリメートルの固定床反応器中に充填し、窒素ガス雰囲気下、2℃/minの昇温速度で500℃に昇温し、1時間保持し、その後、窒素ガス雰囲気下、350℃に降温し、さらに窒素ガスを用いて反応系の圧力を反応に必要な圧力に上昇させた。反応原料を上から下へと反応器中に導入し、メチラール対酢酸メチルのモル比が2/1であり、原料の合計質量空間速度が0.3h−1であり、異なる反応圧力下でのアルドール縮合反応の結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
2.4 異なるメチラール対酢酸メチルのモル比でのアルドール縮合反応の結果
6#の触媒 0.5gを内径が8ミリメートルの固定床反応器中に導入し、窒素ガス雰囲気下、2℃/minの昇温速度で500℃に昇温し、1時間保持し、その後、窒素ガス雰囲気下、350℃に降温し、さらに窒素ガスを用いて反応系の圧力を反応に必要な圧力3MPaに上昇させた。反応原料を上から下へと反応器に導入し、原料の合計質量空間速度が0.3h−1であり、メチラール対酢酸メチルのモル比が2/1、1/1、1/10であり、そのアルドール縮合反応の結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
2.5 メチラールと異なる脂肪酸エステル類とを酸性分子篩上にアルドール縮合反応させる結果
【0054】
6#の触媒 0.5gを内径が8ミリメートルの固定床反応器中に充填し、窒素ガス雰囲気下、2℃/minの昇温速度で500℃に昇温し、1時間保持し、その後、窒素ガス雰囲気下、350℃に降温し、さらに窒素ガスを用いて反応系の圧力を反応に必要な圧力3MPaに上昇させた。反応原料を上から下へと反応器中に導入し、原料の合計質量空間速度が0.3h−1であり、メチラール対異なる脂肪酸エステル類原料のモル比が2/1であり、そのアルドール縮合反応の結果を表5に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
2.6 異なる原料質量空間速度下でのアルドール縮合反応の結果
6#の触媒を用い、反応温度が350℃、原料の合計質量空間速度が0.3h−1、1.0h−1、2.0h−1であり、その他の条件が実施例2.1と同様であり、反応結果を表6に示す。
【0057】
【表6】
【0058】
2.7 異なる反応器タイプの反応結果
7#の触媒を用い、反応温度が350℃、反応器がそれぞれ流動床反応器及び移動床反応器であり、その他の条件が実施例2.1と同様である。反応結果を表7に示す。
【0059】
【表7】
【0060】
2.8 異なる反応雰囲気下での反応結果
10#の触媒を用い、反応温度が350℃、反応雰囲気がそれぞれN、H、He、COであり、その他の条件が実施例2.1と同様である。反応結果を表8に示す。
【0061】
【表8】
【0062】
以上、本発明を詳しく説明したが、本発明はこの明細書に記載されている具体的な実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱しない限り、その他の変更及び変形を行うことができると理解されたい。本発明の範囲は添付の請求項により限定される。