(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パワーバッテリーパック(20)及びエネルギーバッテリーパック(30)から負荷への給電と、充電器から前記パワーバッテリーパック及び前記エネルギーバッテリーパックへの充電を制御する給充電管理装置(10)であって、
第1切替部(11)、第2切替部(12)、DC−DCコンバータ(13)、入出力部(14)、及び給充電制御部(15)を備え、
前記第1切替部は、前記パワーバッテリーパック、前記DC−DCコンバータの出力、及び前記入出力部に接続され、
前記第2切替部は、前記エネルギーバッテリーパック、前記DC−DCコンバータの入力、及び前記入出力部に接続され、
前記入出力部は、給電時に負荷に接続され、充電時に充電器に有線又は無線接続され、
前記パワーバッテリーパックの充電レートは、前記エネルギーバッテリーパックの充電レートに比べて2倍以上高く、前記エネルギーバッテリーパックのエネルギー密度は、前記パワーバッテリーパックのエネルギー密度に比べて1.5倍以上高く、
前記給充電制御部(15)は、
負荷への給電時に、前記第1切替部をオンに、前記第2切替部をオフに、前記DC−DCコンバータをオンに制御し、
前記パワーバッテリーパックの充電時に、前記第1切替部をオンに、前記第2切替部をオフに、前記DC−DCコンバータをオフに制御し、
前記エネルギーバッテリーパックの充電時に、前記第1切替部をオフに、前記第2切替部をオンに、前記DC−DCコンバータをオフに制御し、
充電開始時の前記パワーバッテリーパックの充電状態(SOC)を時刻及び/又はインデックスに関連付けた情報(「充電開始ログ情報」)を記憶部に記憶し、
前記記憶部に記憶されている直近又は過去複数の充電開始ログ情報における前記パワーバッテリーパックのSOC又はその平均値を所定の閾値と比較して、負荷への給電時における、前記パワーバッテリーパックの電流(I20)と前記エネルギーバッテリーパックの電流(I30)との電流比率を調整し、
前記調整した電流比率となるように、前記DC−DCコンバータを制御して前記エネルギーバッテリーパックからの電流(I30)を調整する
よう構成されている、前記給充電管理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッテリーに関して、小型化(高エネルギー密度)と急速充電の両方を満足するセルは現在においては存在せず、単一のセルでバッテリーを構成する場合には、小型化か急速充電のどちらを優先するかによってセルの選択が行われる。
【0007】
AGV(Automatic Guided Vehicle)のような移動体システムでは、バッテリーを搭載する移動体が、荷物の積み下ろし中など短時間の休止中に非接触充電などを用いてこまめに急速充電を行うことで24時間稼働を続ける使われ方や、昼休みや夜間にまとめて充電した後は極力充電せずに長時間稼働を続ける使われ方など、多様な環境が想定される。前者の使われ方には急速充電に有利なパワーバッテリーパックのセルが向いており、後者の使われ方にはエネルギー密度が高く、長時間稼働に有利なエネルギーバッテリーパックのセルが向いている。いずれか単一のセルでバッテリーパックを構成する場合は片方の稼働環境には適するものとなるものの、他方の稼働環境には適さないものとなる。
【0008】
そこで、本発明は、パワーバッテリーパックとエネルギーバッテリーパックを備え、使用される稼働環境に合わせて、給電時のパワーバッテリーパックの電流とエネルギーバッテリーパックの電流との電流比率を調整するハイブリッドバッテリーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明には、以下の態様が含まれる。
〔態様1〕
パワーバッテリーパック(20)と、
エネルギーバッテリーパック(30)と、
前記パワーバッテリーパック及び前記エネルギーバッテリーパックから負荷への給電と、充電器から前記パワーバッテリーパック及び前記エネルギーバッテリーパックへの充電を制御する給充電制御部(15)を備えた給充電管理装置(10)と
を含むハイブリッドバッテリーシステム(1)であって、
前記パワーバッテリーパックの充電レートは、前記エネルギーバッテリーパックの充電レートに比べて2倍以上高く、前記エネルギーバッテリーパックのエネルギー密度は、前記パワーバッテリーパックのエネルギー密度に比べて1.5倍以上高く、
前記給充電制御部(15)は、
充電開始時の前記パワーバッテリーパックの充電状態(SOC)を時刻及び/又はインデックスに関連付けた情報(「充電開始ログ情報」)を記憶部に記憶し、
前記記憶部に記憶されている直近又は過去複数の充電開始ログ情報における前記パワーバッテリーパックのSOC又はその平均値を所定の閾値と比較して、負荷への給電時における、前記パワーバッテリーパックの電流(I
20)と前記エネルギーバッテリーパックの電流(I
30)との電流比率を調整する
よう構成されている、前記ハイブリッドバッテリーシステム。
〔態様2〕
前記給充電制御部(15)は、
前記パワーバッテリーパックのSOC又はその平均値が前記所定の閾値以上の場合に、前記パワーバッテリーパックの電流(I
20)の割合が小さくなるように、前記電流比率を調整し、
前記パワーバッテリーパックのSOC又はその平均値が前記所定の閾値未満の場合に、前記パワーバッテリーパックの電流(I
20)の割合が大きくなるように、前記電流比率を調整する
よう構成されている、態様1に記載のハイブリッドバッテリーシステム。
〔態様3〕
前記給充電管理装置(10)は、第1切替部(11)、第2切替部(12)、DC−DCコンバータ(13)、及び入出力部(14)をさらに備え、
前記第1切替部は、前記パワーバッテリーパック、前記DC−DCコンバータの出力、及び前記入出力部に接続され、
前記第2切替部は、前記エネルギーバッテリーパック、前記DC−DCコンバータの入力、及び前記入出力部に接続され、
前記入出力部は、給電時に負荷に接続され、充電時に充電器に有線又は無線接続され、
前記給充電制御部は、
負荷への給電時に、前記第1切替部をオンに、前記第2切替部をオフに、前記DC−DCコンバータをオンに制御し、
前記調整した電流比率となるように、前記DC−DCコンバータを制御して前記エネルギーバッテリーパックからの電流(I
30)を調整する
よう構成されている、態様2に記載のハイブリッドバッテリーシステム。
〔態様4〕
前記給充電制御部は、
充電時に、前記エネルギーバッテリーパックよりも前記パワーバッテリーパックを優先的に充電し、
前記パワーバッテリーパックの充電時に、前記第1切替部をオンに、前記第2切替部をオフに、前記DC−DCコンバータをオフに制御し、
前記エネルギーバッテリーパックの充電時に、前記第1切替部をオフに、前記第2切替部をオンに、前記DC−DCコンバータをオフに制御する
よう構成されている、態様3に記載のハイブリッドバッテリーシステム。
〔態様5〕
パワーバッテリーパック(20)及びエネルギーバッテリーパック(30)から負荷への給電と、充電器から前記パワーバッテリーパック及び前記エネルギーバッテリーパックへの充電を制御する給充電管理装置(10)であって、
第1切替部(11)、第2切替部(12)、DC−DCコンバータ(13)、入出力部(14)、及び給充電制御部(15)を備え、
前記第1切替部は、前記パワーバッテリーパック、前記DC−DCコンバータの出力、及び前記入出力部に接続され、
前記第2切替部は、前記エネルギーバッテリーパック、前記DC−DCコンバータの入力、及び前記入出力部に接続され、
前記入出力部は、給電時に負荷に接続され、充電時に充電器に有線又は無線接続され、
前記パワーバッテリーパックの充電レートは、前記エネルギーバッテリーパックの充電レートに比べて2倍以上高く、前記エネルギーバッテリーパックのエネルギー密度は、前記パワーバッテリーパックのエネルギー密度に比べて1.5倍以上高く、
前記給充電制御部(15)は、
負荷への給電時に、前記第1切替部をオンに、前記第2切替部をオフに、前記DC−DCコンバータをオンに制御し、
前記パワーバッテリーパックの充電時に、前記第1切替部をオンに、前記第2切替部をオフに、前記DC−DCコンバータをオフに制御し、
前記エネルギーバッテリーパックの充電時に、前記第1切替部をオフに、前記第2切替部をオンに、前記DC−DCコンバータをオフに制御し、
充電開始時の前記パワーバッテリーパックの充電状態(SOC)を時刻及び/又はインデックスに関連付けた情報(「充電開始ログ情報」)を記憶部に記憶し、
前記記憶部に記憶されている直近又は過去複数の充電開始ログ情報における前記パワーバッテリーパックのSOC又はその平均値を所定の閾値と比較して、負荷への給電時における、前記パワーバッテリーパックの電流(I
20)と前記エネルギーバッテリーパックの電流(I
30)との電流比率を調整し、
前記調整した電流比率となるように、前記DC−DCコンバータを制御して前記エネルギーバッテリーパックからの電流(I
30)を調整する
よう構成されている、前記給充電管理装置。
〔態様6〕
態様1〜4のいずれか一項に記載のハイブリッドバッテリーシステム又は態様5に記載の給充電管理装置を備えた電動車両。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係るハイブリッドバッテリーシステム1について説明する。
図1は、ハイブリッドバッテリーシステム1のブロック図である。ハイブリッドバッテリーシステム1は、給充電管理装置10、パワーバッテリーパック20、及びエネルギーバッテリーパック30を備える。
【0012】
給充電管理装置10は、第1切替部11、第2切替部12、DC−DCコンバータ13、入出力部14、給充電制御部15、記憶部16、及び通信部17を備える。給充電管理装置10は、パワーバッテリーパック20及びエネルギーバッテリーパック30から負荷への給電と、充電器からパワーバッテリーパック20及びエネルギーバッテリーパック30への充電を制御する。
【0013】
図示していないが、給充電制御部15は、第1切替部11、第2切替部12、及びDC−DCコンバータ13に接続され、これらの回路・素子を制御する。また、給充電制御部15は、バッテリー管理IC24及び34に通信可能に接続されている。
【0014】
パワーバッテリーパック20は、バッテリーセル22と、バッテリーセル22の状態(電圧やSOCなど)及び給充電を管理するバッテリー管理IC24とを備える。バッテリー管理IC24は、給充電制御部15にバッテリーセル22の状態に関する情報を送信する。エネルギーバッテリーパック30は、バッテリーセル32と、バッテリーセル32の状態(電圧やSOCなど)及び給充電を管理するバッテリー管理IC34とを備える。バッテリー管理IC34は、給充電制御部15にバッテリーセル32の状態に関する情報を送信する。
【0015】
第1切替部11は、FETやリレーなどのスイッチング素子を含み、給充電制御部15からの制御信号に応じてオン・オフ制御される。第1切替部11は、給充電制御部15からの制御信号に応じて、パワーバッテリーパック20及びエネルギーバッテリーパック30から外部の負荷(例えば電動車両の駆動モーターなど)への給電時にオンに制御される。また、第1切替部11は、給充電制御部15からの制御信号に応じて、外部の充電器からパワーバッテリーパック20への充電時にオンに制御され、外部の充電器からエネルギーバッテリーパック30への充電時にオフに制御される。
【0016】
第2切替部12は、FET又はリレーなどのスイッチング素子を含み、給充電制御部15からの制御信号に応じてオン・オフ制御される。第2切替部12は、給充電制御部15からの制御信号に応じて、パワーバッテリーパック20及びエネルギーバッテリーパック30から外部の負荷への給電時にオフに制御される。また、第2切替部12は、給充電制御部15からの制御信号に応じて、外部の充電器からパワーバッテリーパック20への充電時にオフに制御され、外部の充電器からエネルギーバッテリーパック30への充電時にオンに制御される。
【0017】
DC−DCコンバータ13は、入力側がエネルギーバッテリーパック30及び第2切替部12に接続され、出力側がパワーバッテリーパック20及び第1切替部11に接続されている。DC−DCコンバータ13は、給充電制御部15からの制御信号に応じて、出力電流が変更制御される。
【0018】
入出力部14は、外部の負荷及び充電器へ接続されるインターフェースであり、負荷への接続端子や、充電器への接続端子などを含み、給電時に負荷に接続され、充電時に充電器に有線又は無線接続される。充電器と非接触充電(無線充電ともいう)が行われる場合には、受電共振器及び整流器などを含むものであってもよい。
【0019】
給充電制御部15は、コンピュータを備え、ソフトウェアとハードウェアとの協働により、第1切替部11、第2切替部12、及びDC−DCコンバータ13を制御する。給充電制御部15は、負荷への給電時に、記憶部16に記憶されたログ情報を基に、パワーバッテリーパック20の電流とエネルギーバッテリーパック30の電流との電流比率を変更できる。また、給充電制御部15は、充電時には、エネルギーバッテリーパック30よりも、パワーバッテリーパック20を優先的に充電するように、第1切替部11、第2切替部12、及びDC−DCコンバータ13を制御する。
【0020】
給充電制御部15は、パワーバッテリーパック20のバッテリー管理IC24からバッテリーセル22の状態(電圧やSOCなど)を受信し、エネルギーバッテリーパック30のバッテリー管理IC34からバッテリーセル32の状態(電圧やSOCなど)を受信する。充電時には、給充電制御部15は、通信部17を介して、充電器に備え付けられた通信部と無線又は有線により通信し、充電のスタンバイが完了したかどうかを判定し、給電モードから充電モードへ切り替える。
【0021】
パワーバッテリーパック20とエネルギーバッテリーパック30との違いは、主に次の点にある。パワーバッテリーパック20は、エネルギーバッテリーパック30に比べて、充電レート(バッテリー容量に対する充電電流値の比(充電電流(A)/容量(Ah)))が優れているが、エネルギー密度(重量密度、体積密度のいずれであってもよく、両方であってもよい)が劣る。
【0022】
より詳細には、パワーバッテリーパック20の充電レートは、エネルギーバッテリーパック30の充電レートに比べ、2倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、又は20倍以上高い。また、エネルギーバッテリーパック30のエネルギー密度は、パワーバッテリーパック20のエネルギー密度に比べ、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上、又は3倍以上高い。
【0023】
パワーバッテリーパック20の充電レートは、エネルギーバッテリーパック30の充電レートに比べ、2〜100倍、2〜80倍、2〜60倍、2〜40倍、5〜100倍、5〜80倍、5〜60倍、5〜40倍、10〜100倍、10〜80倍、10〜60倍、10〜40倍、15〜100倍、15〜80倍、15〜60倍、15〜40倍、20〜100倍、20〜80倍、20〜60倍、又は20〜40倍高くてもよい。また、エネルギーバッテリーパック30のエネルギー密度は、パワーバッテリーパック20のエネルギー密度に比べ、1.5〜50倍、1.5〜30倍、1.5〜20倍、1.5〜15倍、1.5〜10倍、1.5〜5倍、2〜50倍、2〜30倍、2〜20倍、2〜15倍、2〜10倍、2〜5倍、2.5〜50倍、2.5〜30倍、2.5〜20倍、2.5〜15倍、2.5〜10倍、2.5〜5倍、3〜50倍、3〜30倍、3〜20倍、3〜15倍、3〜10倍、又は3〜5倍高くてもよい。
【0024】
なお、パワーバッテリーパック20は、エネルギーバッテリーパック30に比べて、出力密度(最大出力(1秒間に取り出せる最大電力量)をバッテリーの重量で割った値(W/kg))が優れていてもよく、且つ/又は、放電レート(バッテリー容量に対する放電電流値の比(放電電流(A)/容量(Ah)))が優れていてもよい。
【0025】
図2は、ハイブリッドバッテリーシステム1を備えた電動車両50と、電動車両50が使用されるAGVシステム60の概要図である。
【0026】
電動車両50は、ハイブリッドバッテリーシステム1と、車輪を駆動させるためのモーターや作業手段を駆動させるためのモーターなどである負荷52を備える(
図2(a))。電動車両50は、ハイブリッドバッテリーシステム1からの給電を受けて、AGVシステム60内を移動し、例えば荷物を移動させたりするなどの作業を行う(
図2(b))。
【0027】
電動車両50のハイブリッドバッテリーシステム1は、AGVシステム60内の充電器70により充電される。充電は、有線により行われる接触充電であってもよいし、無線により行われる非接触充電であってもよい。例えば、オポチュニティ充電を採用したAGVシステム60では、電動車両50は、充電器70にて非接触充電が行われる。
【0028】
限定されるものではないが、非接触充電を行う充電器70は、電源71、給電を制御する制御部72、無線送電のための送電共振器73、及びハイブリッドバッテリーシステム1と通信する通信部74を備える。
【0029】
電動車両50のハイブリッドバッテリーシステム1が充電器70により無線充電が行われる場合、例えば以下の処理が行われる。電動車両50が充電器70に到着すると、ハイブリッドバッテリーシステム1の給充電制御部15は、通信部17を介して、充電器70の通信部74と通信し、送電電力や充電スタンバイ完了の情報を交換する。充電器70の制御部72が送電共振器73を制御し、電磁誘導方式により、送電共振器73から、ハイブリッドバッテリーシステム1の入出力部14の受電共振器(不図示)へ無線給電される。
【0030】
なお、ハイブリッドバッテリーシステム1又は給充電管理装置10を備えた電動車両は、AGVシステム60で用いるものに限られない。ハイブリッドバッテリーシステム1又は給充電管理装置10を備えた電動車両は、例えば、電気自動車(EV)、EVトラック、又は、クレーン車、ショベルカー、フォークリフト、若しくはブルドーザー(なおこれらに限定されない)などの電動重機であってもよい。また、ハイブリッドバッテリーシステム1が給電する電力は、車両の移動(すなわち車輪の駆動)に用いる場合に限らず、電装品(EVのエアコンやライトなど)や作業手段(クレーン車のクレーン部、ショベルカーのショベルなど)の駆動に用いるものであってもよい。
【0031】
図3A〜3Cを用いて、ハイブリッドバッテリーシステム1の給電・充電時における、給充電制御部15による給充電制御について説明する。
【0032】
ハイブリッドバッテリーシステム1から負荷52に給電が行われるとき(
図3A)、給充電制御部15は、第1切替部11をオンに、第2切替部12をオフに、DC−DCコンバータ13をオンに制御して、入出力部14を介して負荷52へ給電する。負荷52への電流Iは、パワーバッテリーパック20からの電流I
20とエネルギーバッテリーパック30からの電流I
30との和となる(I=I
20+I
30)。
【0033】
パワーバッテリーパック20の電流I
20とエネルギーバッテリーパック30の電流I
30との電流比率(I
20/I
30)は、給充電制御部15がDC−DCコンバータ13を制御して、エネルギーバッテリーパック30からの電流I
30を調整すること変更される。
【0034】
ハイブリッドバッテリーシステム1が充電されるとき、エネルギーバッテリーパック30よりも先に、パワーバッテリーパック20の方から充電が行われる(
図3B)。このとき、給充電制御部15は、第1切替部11をオンに、第2切替部12をオフに、DC−DCコンバータ13をオフに制御して、充電器70からの電流をパワーバッテリーパック20に送り、パワーバッテリーパック20を充電する。
【0035】
パワーバッテリーパック20の充電が完了すると、次にエネルギーバッテリーパック30の充電が行われる。このとき、給充電制御部15は、第1切替部11をオフに、第2切替部12をオンに、DC−DCコンバータ13をオフに制御して、充電器70からの電流をエネルギーバッテリーパック30に送り、エネルギーバッテリーパック30を充電する(
図3C)。
【0036】
図4は、ハイブリッドバッテリーシステム1から負荷への給電中と充電器からハイブリッドバッテリーシステム1への充電中において、パワーバッテリーパック20(バッテリーセル22)のSOCの変化とエネルギーバッテリーパック30(バッテリーセル33)のSOCの変化と時刻tとの関係の一例を示すグラフである。
【0037】
この例では、時刻t0にて、パワーバッテリーパック20が満充電(P0)であり、エネルギーバッテリーパック30も満充電(E0)であり、時刻t0から時刻t1まで負荷への給電が行われる。例えば、P0は、100%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、60%、又は55%であり、E0は、100%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、60%、又は55%であり、P0とE0は同じ値であってもよし、異なる値であってもよい。
【0038】
給電中は、パワーバッテリーパック20の電流の電流比率が高いことから(且つ/又は、エネルギーバッテリーパック30のエネルギー密度の方が高いことから)、パワーバッテリーバック20のSOCの低下がエネルギーバッテリーパック30よりも大きい。グラフでは、時刻t1において、パワーバッテリーパック20のSOCがP1であり、エネルギーバッテリーパック30のSOCがE1(>P1>0)である。
【0039】
時刻t1において、充電器からハイブリッドバッテリーシステム1の充電が開始される。充電開始時に(時刻t1)、給充電制御部15は、パワーバッテリーパック20のSOC及びエネルギーバッテリーパック30のSOCを時刻t1及び/又はインデックス(記憶順が分かるもの)に関連付けて記憶部16に記憶する。充電開始時のSOCのログ情報を「充電開始ログ情報」と称する。充電に際し、前記のとおりパワーバッテリーパック20の充電が優先的に行われる。時刻t2で、パワーバッテリーパック20が満充電(P0)になると(又は予め設定しておいたSOC)、次にエネルギーバッテリーパック30の充電が開始される。
【0040】
時刻t3で、エネルギーバッテリーパック30が満充電(E0)になると(又は予め設定しておいたSOC)又は充電器からハイブリッドバッテリーシステム1が切断されると、ハイブリッドバッテリーシステム1の充電が終了する。充電終了時に(時刻t3)、給充電制御部15は、パワーバッテリーパック20のSOC及びエネルギーバッテリーパック30のSOCを時刻t3及び/又はインデックス(記憶順が分かるもの)に関連付けて記憶部16に記憶する。充電終了時のSOCのログ情報を「充電終了ログ情報」という。
【0041】
詳細には後述するが、充電終了後に(時刻t3又はそれ以後)、給充電制御部15は、記憶部16に記憶した充電開始ログ情報(及び必要ならば充電終了ログ情報)に基づき、パワーバッテリーパック20の電流とエネルギーバッテリーパック30の電流との電流比率を変更してもよい。なお、給充電制御部15による当該電流比率の調整に加えて、給充電管理装置10に備わった入力手段(キーボード、タッチパネルなど。不図示)によるユーザの入力に応じて、給充電制御部15が電流比率を調整できるようにしてもよい。
【0042】
図5は、ハイブリッドバッテリーシステム1から負荷への給電中と充電器からハイブリッドバッテリーシステム1への充電中において、パワーバッテリーパック20(バッテリーセル22)のSOCの変化とエネルギーバッテリーパック30(バッテリーセル32)のSOCの変化と時刻tとの関係の一例を示すグラフである。
【0043】
この例では、パワーバッテリーパック20は非接触充電により頻繁に満充電まで充電される(時刻t1〜t2、t3〜t4、t5〜t6、t7〜t8、t9〜t10、t11〜t12、t13〜t14、t15〜t16)。時刻t14まではパワーバッテリーパック20が満充電(又は所定のSOC)になると充電器から切断され、エネルギーバッテリーパック30までは充電されないが、時刻t16において、エネルギーバッテリーパック30の充電が開始され、時刻t17にエネルギーバッテリーパック30が満充電まで充電される。この例は、頻繁に非接触によるオポチュニティ充電を行うAGVシステムにおいて、パワーバッテリーパック20のSOCが所定の値(Pth)以下になると電動車両が充電器に移動して充電し、エネルギーバッテリーパック30の充電は、作業が終了した夜間や休憩時間に有線充電で行われる場合などである。例えば、Pthは、60%、50%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、又は5%である。
【0044】
記憶部16に記憶した充電開始ログ情報(及び必要ならば充電終了ログ情報)は、給充電制御部15がパワーバッテリーパック20の電流とエネルギーバッテリーパック30の電流との電流比率を変更する際に考慮される。直前の充電開始ログ情報又は過去複数回の充電開始ログ情報を用いて、電流比率の調整が行われるようにしてもよい。
【0045】
例えば、過去4つの充電開始ログ情報を用いて電流比率の調整が行われるとすると、時刻t8において、給充電制御部15は、記憶部16から時刻t1、t3、t5、及びt7のパワーバッテリーパック20のSOCの情報を取得し(P1〜P4)、その平均値を算出し、その平均値の値を所定の閾値と比較することで、パワーバッテリーパック20があまり活用されていないかどうか判定する。十分に活用されていない場合は、パワーバッテリーパック20の電流比率を高めるように調整され、十分に活用されている場合は、パワーバッテリーパック20の電流比率を維持又は低減するように調整される。調整幅は、実際の仕様に合わせて適宜設定されるものであってもよいし、機械学習アルゴリズムを用いて動的に設定されるものであってもよい。
【0046】
また、
図6(a)に示すグラフの例は、時刻t1で取得される充電開始ログ情報によると、充電から次の充電までの期間(時刻t0〜t1)においてパワーバッテリーパック20のSOCが減りすぎていると判断される場合である(P1<所定の閾値Pth)。この場合、充電終了時(時刻t3)に、給充電制御部15は、負荷への給電に際し、DC−DCコンバータ13を制御して、エネルギーバッテリーパック30の電流の割合が大きくなるように、電流比率を変更する。このグラフに示すように、時刻t3〜t4に負荷へ給電する間、パワーバッテリーパック20の電流比率が低くなった結果、パワーバッテリーパック20のSOCの減り具合が緩和される。この例では、直前の(即ち時刻t1)の充電開始ログ情報に基づき電流比率を変更するものであるが、前記のとおり過去複数回の充電開始ログ情報に基づき電流比率を変更するものであってもよい。
【0047】
また、
図6(b)に示すグラフの例は、時刻t11で取得される充電開始ログ情報によると、充電から次の充電までの期間(時刻t0〜t11)においてパワーバッテリーパック20のSOCがあまり減っておらず(P11>所定の閾値Pth)、十分に活用されていないと判断される場合である。この場合、充電終了時(時刻t13)に、給充電制御部15は、負荷への給電に際し、DC−DCコンバータ13を制御して、エネルギーバッテリーパック30の電流の割合が小さくなるように、電流比率を変更する。このグラフに示すように、時刻t13〜t14に負荷へ給電する間、パワーバッテリーパック20の電流比率が高くなった結果、エネルギーバッテリーパック30のSOCの減り具合が緩和され、他方パワーバッテリーパック20の活用が十分に行われる。この例では、直前の(即ち時刻t11)の充電開始ログ情報に基づき電流比率を変更するものであるが、前記のとおり過去複数回の充電開始ログ情報に基づき電流比率を変更するものであってもよい。
【0048】
図7は、ハイブリッドバッテリーシステム1の給充電フローチャートである。
【0049】
ハイブリッドバッテリーシステム1は、負荷52へ給電する(ステップS1)。給電の際、給充電制御部15は、第1切替部11をオンに、第2切替部12をオフに、DC−DCコンバータ13をオンに制御して、入出力部14を介して負荷52へ給電する。パワーバッテリーパック20からの電流I
20とエネルギーバッテリーパック30からの電流I
30と電流比率は、直前(又はそれ以前)の充電時に設定されたものとなる。
【0050】
給充電制御部15は、ハイブリッドバッテリーシステム1が充電器に接続(無線接続含む)されたかどうか判定する(ステップS2)。充電器に接続された場合、給充電制御部15は、パワーバッテリーパック20のバッテリー管理IC24からパワーバッテリーパック20(バッテリーセル22)のSOCを取得し、エネルギーバッテリーパック30のバッテリー管理IC34からエネルギーバッテリーパック30(バッテリーセル32)のSOCを取得し、これらを現時点の時刻及び/又はインデックスに関連付けて記憶部16に記憶する(ステップS3)。
【0051】
給充電制御部15は、パワーバッテリーパック20を優先的に充電する(ステップS4)。充電の際、給充電制御部15は、第1切替部11をオンに、第2切替部12をオフに、DC−DCコンバータ13をオフに制御して、充電器からの電力をパワーバッテリーパック20に送り、パワーバッテリーパック20のバッテリーセル22を充電する。充電している間、給充電制御部15は、充電器が切断されたか判定し(ステップS5)、充電器が切断された場合は(ステップS5のYes)、ステップS10に進む。また、給充電制御部15は、パワーバッテリーパック20の充電が完了したかどうかを判定する(ステップS6)。
【0052】
充電が完了すると(ステップS6のYes)、次にエネルギーバッテリーパック30を充電する(ステップS7)。充電の際、給充電制御部15は、第1切替部11をオフに、第2切替部12をオンに、DC−DCコンバータ13をオフに制御して、充電器からの電力をエネルギーバッテリーパック30に送り、エネルギーバッテリーパック30のバッテリーセル32を充電する。充電している間、給充電制御部15は、充電器が切断されたか判定し(ステップS8)、充電器が切断された場合は(ステップS8のYes)、ステップS10に進む。また、給充電制御部15は、エネルギーバッテリーパック30の充電が完了したかどうかを判定する(ステップS9)。
【0053】
充電が完了すると(ステップS9のYes)、給充電制御部15は、パワーバッテリーパック20のバッテリー管理IC24からパワーバッテリーパック20(バッテリーセル22)のSOCを取得し、エネルギーバッテリーパック30のバッテリー管理IC34からエネルギーバッテリーパック30(バッテリーセル32)のSOCを取得し、これらを現時点の時刻及び/又はインデックスに関連付けて記憶部16に記憶する(ステップS10)。
【0054】
給充電制御部15は、記憶部16から、記憶しておいた直前の又は過去複数個の充電開始ログ情報を読み出し、直前のパワーバッテリーパック20のSOC(又は過去複数回のパワーバッテリーパック20のSOCの平均値)と所定の閾値とを比較し、次回給電時のパワーバッテリーパック20の電流とエネルギーバッテリーパック30の電流との電流比率を調整すべきか否か判定する(ステップS11)。調整が必要な場合(ステップS11でYes)、給充電制御部15は、次の給電時におけるパワーバッテリーパック20の電流とエネルギーバッテリーパック30の電流との電流比率を調整する(ステップS12)。
【0055】
電流比率の調整は、例えば、直前のパワーバッテリーパック20のSOC(又は過去複数回のパワーバッテリーパック20のSOCの平均値)が所定の閾値よりも低い場合は、パワーバッテリーパック20が使い過ぎていることになるから、次回の負荷への給電時にエネルギーバッテリーパック30の電流比率を高めるように調整される。他方、直前のパワーバッテリーパック20のSOC(又は過去複数回のパワーバッテリーパック20のSOCの平均値)が所定の閾値よりも高い場合は、パワーバッテリーパック20があまり使用されていないから、次回の負荷への給電時にパワーバッテリーパック20の電流比率を高めるように調整される。
【0056】
なお、電流比率の調整に用いる判定材料は、充電開始ログ情報のみに限らず、充電開始ログ情報に加えて充電終了ログ情報を用いてもよい。例えば、給充電制御部15は、記憶部16から、直前のパワーバッテリーパック20及びエネルギーバッテリーパック30のSOC(又は過去複数回の平均値)と、今回の充電時の充電終了ログ情報とを比較し、両者の時刻差(充電間隔)、パワーバッテリーパック20のSOCの差、及び/又はエネルギーバッテリーパック30のSOCの差に基づき、単位時間あたりのパワーバッテリーパック20及びエネルギーバッテリーパック30のSOCの減少率(dSOC/dt)を求め、これらを総合的に考慮して、電流比率の調整が必要などうかを判定するものであってもよい。
【0057】
上記実施形態で説明される寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構造又は様々な条件に応じて変更される。また、本発明は、具体的に記載された上記実施形態に限定されるものではない。
使用される稼働環境に合わせて、給電時のパワーバッテリーパックの電流とエネルギーバッテリーパックの電流との電流比率を調整するハイブリッドバッテリーシステムを提供する。
本発明は、パワーバッテリーパック(20)と、エネルギーバッテリーパック(30)と、負荷への給電と充電器からの充電を制御する給充電管理装置(10)とを備え、給充電管理装置(10)の給充電制御部(15)は、充電開始時のパワーバッテリーパックの充電状態(SOC)を時刻及び/又はインデックスに関連付けた情報を記憶部に記憶し、記憶部に記憶されている直近又は過去複数の充電開始ログ情報におけるパワーバッテリーパックのSOC又はその平均値を所定の閾値と比較して、負荷への給電時における、パワーバッテリーパックの電流(I20)とエネルギーバッテリーパックの電流(I30)との電流比率を調整する、ハイブリッドバッテリーシステムを提供する。