(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770263
(24)【登録日】2020年9月29日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】複数段式集塵構造、燃焼炉、および集塵方法
(51)【国際特許分類】
B04C 5/26 20060101AFI20201005BHJP
B04C 5/02 20060101ALI20201005BHJP
B04C 5/12 20060101ALI20201005BHJP
B04C 5/28 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
B04C5/26
B04C5/02
B04C5/12 Z
B04C5/28
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-216782(P2016-216782)
(22)【出願日】2016年11月4日
(65)【公開番号】特開2018-69217(P2018-69217A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】506366574
【氏名又は名称】株式会社工藤
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】工藤 美佐男
【審査官】
田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−522213(JP,A)
【文献】
実開昭60−189377(JP,U)
【文献】
特開2002−195523(JP,A)
【文献】
特開2009−056360(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0199284(US,A1)
【文献】
特開2002−257326(JP,A)
【文献】
国際公開第1992/002292(WO,A1)
【文献】
特開2000−254551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C 1/00−11/00
B01D 45/00−45/18
B01D 49/00−51/10
A47L 9/10− 9/19
F23G 5/00
F23G 5/20− 5/22
F23G 5/32− 5/38
F23J 3/00− 7/00
F23J 11/00−11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロン式集塵装置(以下、「サイクロン」)を用いた燃焼炉用の集塵構造であって、
下記<A>の構成を備えるサイクロン(以下、「誘導式サイクロン」)と、
通常のサイクロンおよび複数連列式のサイクロン(以下、「マルチサイクロン」)が直列に接続された三段式である
ことを特徴とする、複数段式集塵構造。
<A> 燃焼炉と接続しそこからの排ガスを最終的に外部に排出すべく流通させるための第一煙筒と、
その下端部が該第一煙筒の下端部よりも上に設けられていて排ガス排出用の上端部を有する第二煙筒と、
該第一煙筒内部に設けられた集塵筒と、
該集塵筒の下端部に設けられた集塵部とからなり、
該集塵筒はその全周に亘って形成されている該第一煙筒との間の間隙を上昇する排ガスを内部に流入させるための複数の集塵筒窓を備え、
該第二煙筒は該集塵筒と上下方向に連通していてかつ該集塵筒よりも小径である、サイクロン
【請求項2】
前記通常のサイクロン、前記誘導式サイクロン、前記マルチサイクロンの順に設けられた三段式であることを特徴とする、請求項1に記載の複数段式集塵構造。
【請求項3】
前記誘導式サイクロンの集塵筒窓は前記集塵筒の上端部に設けられていることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
【請求項4】
前記誘導式サイクロンの集塵筒周壁には、前記集塵筒窓への排ガス流入を円滑化するための誘導構造が該集塵筒窓毎に設けられていることを特徴とする、請求項1、2、3のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
【請求項5】
前記誘導式サイクロンの誘導構造は、前記集塵筒窓よりも下方位置に先端部が、また該集塵筒窓の位置またはその近傍に終端部があり、該先端部と該終端部は該集塵筒周上の角度差を有して設けられていることを特徴とする、請求項4に記載の複数段式集塵構造。
【請求項6】
前記誘導式サイクロンの前記誘導構造は、前記先端部から前記終端部へ向かって排ガスを誘導する筒周上誘導部と、該終端部から前記集塵筒窓を通って前記集塵筒内に排ガスを誘導する筒内誘導部とを備えていることを特徴とする、請求項5に記載の複数段式集塵構造。
【請求項7】
前記誘導式サイクロンの集塵筒窓および誘導構造は、前記集塵筒の周上に均等に設けられていることを特徴とする、請求項4、5、6のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
【請求項8】
前記通常のサイクロンの集塵部は他のサイクロン用の集塵部とは別に設けられていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
【請求項9】
前記各サイクロンの接続状態はこれらが連続的に設けられていることにより形成され、これらが一体をなしていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
【請求項10】
前記各サイクロンの接続状態は、各サイクロンが排ガス流路によって接続されていることにより形成され、各サイクロンが一体化していないことを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のいずれかに記載の複数段式集塵構造を備えていることを特徴とする、燃焼炉。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のいずれかに記載の複数段式集塵構造を用いて行うことを特徴とする、燃焼炉の集塵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集塵構造、燃焼炉、および集塵方法に係り、特に、消耗品使用や大きなメンテナンス労力を要することなく回収率を高めることのできる、集塵構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集塵構造やサイクロンについては従来、技術的な提案が多くなされている。たとえば後掲特許文献1には、燃焼装置の集塵装置として適用した場合にも燃焼ガスに含まれる焼却灰等の低融点物質の溶融を防止しうるサイクロンとして、ケーシングの周壁に形成されかつ固体粒子を含有したガスをケーシング内に導入するガス入口と、ケーシングの下端中央部に形成されかつガスから分離された固体粒子を排出する粒子排出口と、ケーシングの頂壁中央部に貫通状に設けられかつ固体粒子の分離されたガスを排出するガス流出筒からなるサイクロンであって、ガス流出筒内に下端開口が水噴霧口である噴霧管を配し、これを冷却水供給管に接続した構成が開示されている。
【0003】
また特許文献2には、集塵効率を高め、サイクロンの配置につき真空掃除機およびサイクロン集塵装置の形状に応じて自在に設計でき、2次サイクロンによっても除去されない微細ゴミを除去できるマルチサイクロン集塵装置として、第1流入口から流入した空気を上部にガイドし遠心分離してゴミを取除く第1サイクロン、その外側に所定間隔で配されるよう集塵ハウジング内に設けられ、流入した空気を遠心分離して微細ゴミを取除く複数の第2サイクロン、第1サイクロンからの排気を各第2サイクロンに流入させるようガイドしてそこから排出された空気を再度フィルタリングし外部に排出させるカバーユニットを備えた構成が開示されている。
【0004】
また、出願人は、広い設置面積、吸引用の動力が不要、均一で効率的な集塵および煙突内部の結露防止可能な燃焼装置の集塵構造として、燃焼炉と接続して排ガスを外部に排出すべく流通させる第一煙筒と、下端部が第一煙筒の下端部よりも上に設けられ排ガス排出用の上端部を有する第二煙筒と、第一煙筒内部に設けられた集塵筒と、集塵筒の下端部に設けられた集塵容器とからなり、集塵筒の全周に亘って形成されている第一煙筒との間の間隙を上昇する排ガスを内部流入させる複数の集塵筒窓を備え、第二煙筒は集塵筒と上下方向に連通している構成を開示した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−276916号公報「サイクロンおよびこれを用いた燃焼装置」
【特許文献2】特開2006−320713号公報「マルチサイクロン集塵装置」
【特許文献3】特開2009−56360号公報「燃焼炉の集塵構造および燃焼炉」(特許第5127012号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、従来のサイクロンによる集塵効率(ダスト回収率)は、通常、85%程度である。一方、集塵効率が要求される場合、隔壁式のバグフィルターがよく用いられる。しかし、布を用いるバグフィルターは、ダスト回収率には優れるものの、フィルターの目詰まりが発生するためその掃除が大変煩雑であり、また消耗も発生する。このような消耗品使用や煩雑なメンテナンスを要することなく高いダスト回収率の得られる方式があれば便利である。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、バグフィルターのように消耗品使用や大きく煩雑なメンテナンス労力を要することなく、優れたダスト回収率を得ることのできる集塵構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した結果、上記文献3開示のサイクロン(誘導式サイクロン)を用いた二段式、または三段式のサイクロン構造とすることによって解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕 サイクロン式集塵装置(以下、「サイクロン」)を用いた燃焼炉用の集塵構造であって、
下記<A>の構成を備えるサイクロン(以下、「誘導式サイクロン」)と、
通常のサイクロン
および複数連列式のサイクロン(以下、「マルチサイクロン」)
が直列に接続され
た三段式である
ことを特徴とする、複数段式集塵構造。
<A> 燃焼炉と接続しそこからの排ガスを最終的に外部に排出すべく流通させるための第一煙筒と、
その下端部が該第一煙筒の下端部よりも上に設けられていて排ガス排出用の上端部を有する第二煙筒と、
該第一煙筒内部に設けられた集塵筒と、
該集塵筒の下端部に設けられた集塵部とからなり、
該集塵筒はその全周に亘って形成されている該第一煙筒との間の間隙を上昇する排ガスを内部に流入させるための複数の集塵筒窓を備え、
該第二煙筒は該集塵筒と上下方向に連通していてかつ該集塵筒よりも小径である、サイクロン
〔2〕
前記通常のサイクロン、前記誘導式サイクロン、前記マルチサイクロンの順に設けられた三段式であることを特徴とする、〔1〕に記載の複数段式集塵構造。
〔
3〕 前記誘導式サイクロンの集塵筒窓は前記集塵筒の上端部に設けられていることを特徴とする、
〔1〕、〔2〕のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
〔
4〕 前記誘導式サイクロンの集塵筒周壁には、前記集塵筒窓への排ガス流入を円滑化するための誘導構造が該集塵筒窓毎に設けられていることを特徴とする、
〔1〕、〔2〕、〔3〕のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
【0010】
〔
5〕 前記誘導式サイクロンの誘導構造は、前記集塵筒窓よりも下方位置に先端部が、また該集塵筒窓の位置またはその近傍に終端部があり、該先端部と該終端部は該集塵筒周上の角度差を有して設けられていることを特徴とする、〔
4〕に記載の複数段式集塵構造。
〔
6〕 前記誘導式サイクロンの前記誘導構造は、前記先端部から前記終端部へ向かって排ガスを誘導する筒周上誘導部と、該終端部から前記集塵筒窓を通って前記集塵筒内に排ガスを誘導する筒内誘導部とを備えていることを特徴とする、〔
5〕に記載の複数段式集塵構造。
〔
7〕 前記誘導式サイクロンの集塵筒窓および誘導構造は、前記集塵筒の周上に均等に設けられていることを特徴とする、
〔4〕、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
【0011】
〔
8〕 前記通常のサイクロン
の集塵部は他のサイクロン用の集塵部とは別に設けられていることを特徴とする、〔1〕
、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
〔
9〕 前記各サイクロンの接続状態はこれらが連続的に設けられていることにより形成され、これらが一体をなしていることを特徴とする、〔1〕
、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
〔
10〕 前記各サイクロンの接続状態は、各サイクロンが排ガス流路によって接続されていることにより形成され、各サイクロンが一体化していないことを特徴とする、〔1〕
、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕のいずれかに記載の複数段式集塵構造。
〔
11〕 〔1〕
、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕のいずれかに記載の複数段式集塵構造を備えていることを特徴とする、燃焼炉。
〔
12〕 〔1〕
、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕のいずれかに記載の複数段式集塵構造を用いて行うことを特徴とする、燃焼炉の集塵方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複数段式集塵構造、燃焼炉、および集塵方法は上述のように構成されるため、これらによれば、バグフィルターのように消耗品使用や大きく煩雑なメンテナンス労力を要することなく、優れたダスト回収率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明複数段式集塵構造の第一の構成例を示す側断面視の説明図である。
【
図1-2】
図1の複数段式集塵構造における作用を示す説明図である。
【
図2】本発明に係る誘導式サイクロンの集塵筒の外表面構造例を示す側面図である。
【
図3】本発明に係る誘導式サイクロン実施例の要部の水平方向断面図である。
【
図3-2】
図3に示す実施例の作用を示す水平方向断面図である。
【
図3-3】
図3に示す実施例の集塵筒部分の一部の展開図である。
【
図3-4】
図3に示す実施例における作用を説明する展開図である。
【
図4】本発明複数段式集塵構造の第二の構成例を示す側断面視の説明図である。
【
図4-2】
図4の複数段式集塵構造における作用を示す説明図である。
【
図5】本発明複数段式集塵構造の第三の構成例を示す側断面視の説明図である。
【
図5-2】
図5の複数段式集塵構造における作用を示す説明図である。
【
図6】非一体型の本発明複数段式集塵構造の構成例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明複数段式集塵構造の第一の構成例を示す側断面視の説明図である。また、
図1−2は
図1の複数段式集塵構造における作用を示す説明図である。これらに図示するように本複数段式集塵構造1000は、サイクロン式集塵装置(サイクロン)を用いた燃焼炉用の集塵構造であって、誘導式サイクロン100と、通常のサイクロン400または複数連列式のサイクロン(マルチサイクロン)500の少なくともいずれかが直列に接続されてなることを、主たる構成とする。本第一の構成例は、通常のサイクロン400とマルチサイクロン500の双方が設けられている構成である。
【0015】
ここで、誘導式サイクロン100は、上記文献3開示の通り、下記の各要素を構成として含む。
(A1)燃焼炉と接続しそこからの排ガスを最終的に外部に排出すべく流通させるための第一煙筒1。
(A2)その下端部が第一煙筒1の下端部よりも上に設けられていて排ガス排出用の上端部を有する第二煙筒2。
(A3)第一煙筒1内部に設けられた集塵筒3。
(A4)集塵筒3の下端部に設けられた集塵部48。
(A5)集塵筒3はその全周に亘って形成されている第一煙筒1との間の間隙Sを上昇する排ガスを内部に流入させるための複数の集塵筒窓4を備える。
(A6)第二煙筒2は集塵筒3と上下方向に連通していてかつ集塵筒3よりも小径である。
【0016】
かかる構成により本複数段式集塵構造1000によれば、燃焼炉からの塵埃(ダスト)を含む排ガスの流れはまず通常のサイクロン(以下、「通常サイクロン」)400の給気口(排ガス流入口)40から通常サイクロン400の筐体41の内部49に入り、従来通常通りの作用によってダストが筐体内部49の下部に集塵され、残余のダストを含む排ガスの流れは、次いで誘導式サイクロン100の間隙S内を上昇する。なお、通常サイクロン400においては比較的大径のダストが集塵される。集塵効率(ダスト回収率)は大体85%である。
【0017】
誘導式サイクロン100の間隙S内に入った排ガスは、誘導式サイクロン100の作用によって処理され、ここで集塵されたダストは本構造1000最下部の集塵筒48に集塵され、残余のダストを含む排ガスの流れは、次いで、第二円筒2を通ってマルチサイクロン500へと入る。誘導式サイクロン100の作用をより詳細に述べる。誘導式サイクロン100では、ダストを含む排ガスの流れは第一煙筒1内つまり集塵筒3との間の空間Sを上昇し、その最上部に設けられた複数の集塵筒窓4をそれぞれ通って、集塵筒3内に流入する。流入した排ガスの流れは集塵筒3内において、ダストは下方に落下し、本構造1000最下部の集塵筒48に集塵集められる。
【0018】
一方排ガスは、集塵筒3内を再上昇してこれと連通する第二煙筒2を通って、その上端部2Aから排出され、マルチサイクロン500へと入る。なお、集塵筒窓4は集塵筒3の上端部に設けるものとすることができる。これにより、第一煙筒1内を上昇する排ガスの流れは第一煙筒1の最上部まで上昇して、そこから集塵筒窓4を通って集塵筒3内に円滑に流入する。本誘導式サイクロン100では、排ガスの流速が緩くても、複数の集塵筒窓4からそれが入りやすい構造であるため、気流が円滑に回りやすい。
【0019】
誘導式サイクロン100においては通常サイクロン400よりも小径のダストが集塵される。ここでも集塵効率(ダスト回収率)は大体85%であるとすると、通常サイクロン400を経た後の15%未回収ダストを含む排ガスの85%程度が、誘導式サイクロン100において集塵される。計算上は、通常サイクロン400および誘導式サイクロン100によって、98%ものダストが回収されることになる。
【0020】
第二円筒2を通ってマルチサイクロン500に入った排ガスは、マルチサイクロン500の作用によって処理され、ここで集塵されたダストは本構造1000最下部の集塵筒48に集塵され、残余のダストを含む排ガスの流れは、マルチサイクロン排気部52、および最終排気部56を通って外部に排気される。なお、マルチサイクロン500においては誘導式サイクロン100よりもさらにのダストが集塵される。ここでも集塵効率(ダスト回収率)は大体85%であるとすると、誘導式サイクロン100を経た後の2%未回収ダストを含む排ガスの85%程度が、マルチサイクロン500において集塵される。計算上は、通常サイクロン400、誘導式サイクロン100およびマルチサイクロンからなる本構成例1の複数段式集塵構造1000によって、99%以上ものダストが回収されることになる。
【0021】
本複数段式集塵構造1000の誘導式サイクロン100について、より詳細に説明する。
図2は、本発明に係る誘導式サイクロンの集塵筒の外表面構造例を示す側面図である。図示するように本誘導式サイクロンでは、その集塵筒13の周壁に、複数の集塵筒窓14への排ガスの流れFA1の流入を円滑化するための誘導構造15が、集塵筒窓14毎に設けられている構成とすることができる。そして誘導構造15は、集塵筒窓14よりも下方位置に先端部が、また集塵筒窓14の位置またはその近傍に終端部があり、先端部と終端部は集塵筒14周上の角度差を有して設けられている構成とすることができる。
【0022】
かかる構成により、第一煙筒と集塵筒13との間の空間を鉛直方向に上昇してきた排ガスの流れFA1は、集塵筒13の周上にカーブ状に設けられている誘導構造15に沿って集塵筒窓14方向へと流れ、集塵筒窓14を通して集塵筒13内に、円滑に流入する。図では誘導構造15は円弧状に設けられているが、要するに、排ガスの流れFA1が集塵筒13の周上を廻りつつ上昇して集塵筒窓14に至ることの可能な形状であればよく、したがってたとえば直線状の形状でもよい。なお、集塵筒は第一煙筒の内部に設けられるため、集塵筒内を流通する排ガスは第一煙筒内を上昇していくより高熱の排ガスによる熱を受けるため、排ガスを構成する水蒸気が集塵筒内部で冷却されて液化し、結露することがない。
【0023】
また、誘導構造15は、先端部から終端部へ向かって排ガスを誘導する筒周上誘導部と、終端部から集塵筒窓14を通って集塵筒13内に排ガスを誘導する筒内誘導部とを備えたものとして、構成することができる。かかる構成により、排ガスの流れは筒周上誘導部に沿って集塵筒13上を廻って上昇し、その終端部近傍またはそれに向かって設けられている筒内誘導部によって、集塵筒窓14を通って集塵筒13内に、より円滑に流入することができる。誘導構造15は各集塵筒窓14毎に設けられているため、集塵筒13周上の複数箇所にて同時に、排ガスの集塵筒13内への流入が、円滑になされる。
【0024】
図3は、本発明に係る誘導式サイクロン実施例の要部の水平方向断面図、
図3−2は
図3に示す実施例の作用を示す水平方向断面図である。これらに示すように、集塵筒窓34および誘導構造351、352は、集塵筒33の周上に均等に設けられた構成とすることができる。図ではそれぞれ8個が均等に設けられた構造であるが、本発明はこれに限定されず、適宜の数を設けるものとすることができる。
【0025】
かかる構成により、第一煙筒(図示せず)と集塵筒33との間に全周に亘って形成された排ガス流通用の空間内を上昇してきて誘導構造351の領域に入った排ガスの流れF1は、集塵筒33の全外周に亘って均等に複数設けられた誘導構造351、352によって同時に複数位置において誘導され、同時に複数位置において集塵筒窓34から集塵筒33内に流入する。したがって、排ガス(F1)は無理なく均一に複数の位置にて集塵筒33内に誘導されるため、集塵筒33内における排ガスの流れの状態も均衡のとれたものとなり、乱気流発生も防止される。
【0026】
ここで、誘導構造のうち筒周上誘導部351は、集塵筒窓34方向に対して角度をもって(傾斜をもって)排ガスの流れF1を誘導する作用が、また筒内誘導部352は主として排ガスの流れF1を集塵筒窓34に対して無理なく寄せて流入させる作用がある。
【0027】
筒周上誘導部351は、第一煙筒(図示せず)の内壁にも接して設けることとしてもよい。つまりこの場合、筒周上誘導部351が設けられる位置から上は、第一煙筒と集塵筒33との間は各筒周上誘導部351によって仕切られる構造となる。かかる構成とすることによって、排ガスに余計な流れの遊びがなくなり、すべての排ガスは誘導構造351、352に沿って上昇することとなり、集塵筒33内へのより均一、迅速、かつ効率的な排ガス導入がなされる。
【0028】
さて、誘導される排ガスの流れF1は、いずれの集塵筒窓34においても一定の角度をもって斜め方向から流入するため、集塵筒33内には排ガスの流れによって自然に、一定の状態の回転する気流が形成される。このように、本発明に係る誘導構造351、352および集塵筒窓34の構成によって自然に形成される集塵筒33内での回転運動を通して、排ガス(F1)からダストが効率的に分離され、落下する。
【0029】
図3−3は
図3に示す実施例の集塵筒部分の一部の展開図、
図3−4は
図3に示す実施例における作用を説明する展開図である。これらに図示するように、下方から上昇してきた排ガスの流れF0は、誘導構造のうち各筒周上誘導部351、351、・・・に誘導されて排ガスの流れF1、F1、・・・となり、集塵筒33周上を回転方向の角度をもって斜めに上昇し、途中からは各筒内誘導部352、352、・・・の作用も受けて各集塵筒窓34、34、・・・へと無理なく流入する。
【0030】
また、第一円筒と集塵筒33との間に形成された空間を上昇してきた排ガスの流れF0は、誘導構造351等によって排ガスの流れF1となり、各集塵筒窓34、34、・・・を通って集塵筒33内に流入するが、いずれの流入も上述の通り、集塵筒33の周上における一定の角度、傾斜をもって一斉にかつ均一になされるため、集塵筒33内では一定方向に回転する流れが形成される。流れは集塵筒33内を回転するうちに、その中に含むダストはその自重によって、下方へと落下する。一方、ダストが分離されたガスは、再度上昇する流れとなり、第二煙筒を通って外部に排出される。
【0031】
以上述べたように、通常サイクロン400、誘導式サイクロン100、およびマルチサイクロン500を備えた本発明複数段式集塵構造1000によれば、各段のサイクロンにてそれぞれ85%のダスト回収がなされることからすると、理論上はほぼ100%のダストを回収することができ、実際、少なくとも99.2〜99.5%の回収が可能である。そして、大径のものから小径のものまで、ほとんどのダストを集塵することができる。
【0032】
本発明の複数段式集塵構造は、これら通常サイクロン、誘導式サイクロン、およびマルチサイクロンを備えた三段式とすることが最も望ましい。また、連設する順序は、
図1等に示すように、下から通常サイクロン400、誘導式サイクロン100、マルチサイクロン500とすることで最適な結果を得ることができる。しかしながら、これらの順序を違えたものであっても本発明の範囲内である。また、本複数段式集塵構造において通常サイクロンが設けられている場合、その集塵部は他のサイクロン用の集塵部とは別に設けられているものとすることができる。つまり、
図1等に示した例では、二段目の誘導式サイクロン100および三段目のマルチサイクロン500からのダストは、最下部の集塵部48に集められ、一方、通常サイクロン400からのダストは、筐体内部49の下部に集められる。
【0033】
図4は、本発明複数段式集塵構造の第二の構成例を示す側断面視の説明図である。また、
図4−2は
図4の複数段式集塵構造における作用を示す説明図である。これらに図示するように本複数段式集塵構造900は、通常サイクロン400と誘導式サイクロン100とによって構成される。図示するように一段目を通常サイクロン400、二段目を誘導式サイクロン100とすることが望ましいが、これに限定されない。本構成例によれば、理論上は98%ものダストを回収することができる。
【0034】
図5は、本発明複数段式集塵構造の第三の構成例を示す側断面視の説明図である。また、
図5−2は
図5の複数段式集塵構造における作用を示す説明図である。これらに図示するように本複数段式集塵構造800は、誘導式サイクロン100とマルチサイクロン500とによって構成される。図示するように一段目を誘導式サイクロン100、二段目をマルチサイクロン500とすることが望ましいが、これに限定されない。本構成例でも、理論上は98%ものダストを回収することができる。
【0035】
なお図示するように、本構成例では、両サイクロン100、500により回収されたダストは、ともに集塵部80に集められる。また図示するように、本構成例800は、燃焼炉90に直接誘導式サイクロン100を設ける構成とすることができる。
【0036】
なお、以上説明したいずれかの複数段式集塵構造を備えている燃焼炉も、本発明の範囲内であり、また、いずれかの複数段式集塵構造を用いて行う燃焼炉の集塵方法も同様である。
【0037】
また、各図面を用いて説明した本発明複数段式集塵構造は、各サイクロンが連続的に設けられていることによって接続状態が形成されており、これらサイクロンが一体をなして複数段式集塵構造を形成しているものである。しかしながら本発明はかかる構成に限定されない。
図6は、各サイクロンが分離して設けられている形態(非一体型)の本発明複数段式集塵構造の構成例を示す概念図である。ここに(a)〜(d)で例示するように、各サイクロン6100等が排ガス流路によって接続されていることにより形成され、各サイクロン6100等は相互に分離して設けられ、一体をなしていない形態の複数段式集塵構造60000等であっても、本発明の範囲内である。
【0038】
また、一体型、非一体型を問わず、たとえば通常サイクロン1基、誘導式サイクロン2基、合計3基からなる構成のように、同じ種類のサイクロンが適宜の複数用いられている場合であっても、本発明の範囲内である。また、複数段式集塵構造を構成する各サイクロン(誘導式サイクロンが1基以上、通常サイクロンまたはマルチサイクロンが種類を問わず1基以上)のうち、一部が一体型で、その他が非一体型、という構成であっても、本発明の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の複数段式集塵構造、燃焼炉、および集塵方法は上述のように構成されるため、これらによれば、バグフィルターのように消耗品使用や大きく煩雑なメンテナンス労力を要することなく、優れたダスト回収率を得ることができる。したがって、集塵装置、燃焼炉製造分野および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0040】
1…第一煙筒
2…第二煙筒
3、13、33…集塵筒
4、14、34…集塵筒窓
15、351、352…誘導構造
40…給気口(排ガス流入口)
41…通常サイクロンの筐体
48、80…集塵部
49…筐体内部
50…マルチサイクロンを構成する個々のサイクロン
51…マルチサイクロンの筐体
52…マルチサイクロン排気部
54…マルチサイクロンの排ガス流入口
56…最終排気部
90…燃焼炉
100…誘導式サイクロン
400…通常のサイクロン(通常サイクロン)
500…複数連列式のサイクロン(マルチサイクロン)
800、900、1000…複数段式集塵構造
6100…誘導式サイクロン
6400…通常サイクロン
6500…マルチサイクロン
60000、61000、62000、63000…非一体型の複数段式集塵構造
FA1、F0、F1…排ガスの流れ
S…間隙