(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、全ての図面において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、全ての図面において、本発明を説明するために必要となる構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略している場合がある。さらに、本発明は以下の実施の形態に限定されない。
【0013】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係る航空機は、燃料を貯え、2以上の仮想区画に区分されているタンクと、タンク内の液面を検知し、仮想区画のそれぞれに配置されている液面センサと、航空機の加速度を検知する加速度センサと、航空機の所定の加速度における、液面センサが検知する液面の高さ及び仮想区画内の燃料量の相関関係である第1データを記憶している記憶器を有する制御装置と、を備え、制御装置は、液面センサが検知した液面の高さ、第1データ、及び加速度センサが検知した航空機の加速度からタンク内の燃料量を算出する(A)と、を実行するように構成されている。
【0014】
以下、本実施の形態1に係る航空機の一例について、
図1〜
図5を参照しながら説明する。
【0015】
[航空機の構造]
図1は、本実施の形態1に係る航空機の概略構成を示す模式図である。
図2は、
図1に示す航空機の右翼燃料タンクの概略構成を示す模式図である。なお、
図1においては、一部を省略している。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態1に係る航空機100は、該航空機100の胴体に配置されている中央タンク10、右翼に配置されている右翼燃料タンク20、左翼に配置されている左翼燃料タンク30、右翼に配置されているエンジン60a、60b、左翼に配置されているエンジン60c、60d、加速度センサ40、及び制御装置50を備えている。
【0017】
各エンジン60a〜60dには、中央タンク10、右翼燃料タンク20、及び左翼燃料タンク30の少なくともいずれか1のタンクから燃料流路70を介して燃料が供給される。燃料流路70の適所には、流量センサ80が配置されている。流量センサ80は、燃料流路70を通流する燃料の流量を検知し、検知した流量を制御装置50に出力するように構成されている。
【0018】
なお、本実施の形態1においては、4基のエンジンを備える構成としたがこれに限定されず、エンジンの数は任意である。また、エンジンは、胴体に配置されていてもよい。また、流量センサ80は、各エンジンに設けられているセンサを使用することができるため、その設置数、及び設置位置は、任意である。さらに、燃料は、あるタンクから燃料流路70を介して別のタンクに移送される場合もある。
【0019】
また、中央タンク10は、2以上(ここでは、2)の仮想区画10a、10bに区分されていて、各仮想区画10a、10bには、液面センサ1a、1bがそれぞれ配置されている。同様に、右翼燃料タンク20は、2以上(ここでは、6)の仮想区画20a〜20fに区分されていて、各仮想区画20a〜20fには、液面センサ2a〜2fがそれぞれ配置されている。また、左翼燃料タンク30は、2以上(ここでは、6)の仮想区画30a〜30fに区分されていて、各仮想区画30a〜30fには、液面センサ3a〜3fがそれぞれ配置されている。なお、各仮想区画の体積が同じになるように、タンク内を区画してもよく、各仮想区画の体積が異なるように、タンク内を区画してもよい。
【0020】
液面センサ1a〜3fは、配置されている各仮想区画10a〜30f内の燃料の液面の高さを検知し、制御装置50に検知したデータを出力するように構成されている。液面センサ1a〜3fとしては、液面の高さを検知することができれば、どのような機器であってもよく、例えば、静電容量式センサであってもよい。
【0021】
加速度センサ40は、航空機100の加速度(前後方向、左右方向、及び鉛直方向の加速度)を検知し、検知した加速度を制御装置50に出力するように構成されている。なお、制御装置50は、加速度センサ40から直接加速度データを取得してもよく、慣性基準装置(IRS)から加速度データを間接的に取得してもよい。
【0022】
制御装置50は、航空機100を構成する各機器を制御する機器であれば、どのような形態であってもよく、例えば、マイクロプロセッサ、CPU等に例示される演算処理器(図示せず)と、各制御動作を実行するためのプログラムを格納した、メモリ等から構成される記憶器51を備えている。そして、制御装置50は、演算処理器が、記憶器51に格納された所定の制御プログラムを読み出し、これを実行することにより、航空機100に関する各種の制御を行う。また、制御装置50は、単独の制御装置で構成される形態だけでなく、複数の制御装置が協働して、航空機100の制御を実行する制御装置群で構成される形態であっても構わない。
【0023】
[航空機の動作(燃料量測定方法)]
次に、本実施の形態1に係る航空機100の動作(燃料量測定方法)について、
図1〜
図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、右翼燃料タンク20内の燃料量の測定方法について説明する。中央タンク10及び左翼燃料タンク30については、右翼燃料タンク20と同様に測定することができるため、詳細な説明は省略する。
【0024】
図3は、本実施の形態1に係る航空機の動作を示すフローチャートである。
図4及び
図5は、液面センサが検知する液面の高さと燃料量(容積)との相関関係である第1データ(第1変動グラフ)の例を示す模式図である。
【0025】
図3に示すように、制御装置50は、航空機100の所定の加速度における、各仮想区画20a〜20f内の燃料量と、液面センサ2a〜2fが検知する液面の高さと、の相関関係である第1データを記憶器51に記憶させる(ステップS101)。
【0026】
具体的には、まず、作業員が、3Dシミュレーションモデル(例えば、CATIA等のソフト)を用いて、右翼燃料タンク20(各仮想区画20a〜20f)の形状と各液面センサ2a〜2fの配置位置と(
図2参照)から、基準加速度(飛行時などの代表姿勢。ここでは、前後方向の加速度及び左右方向の加速度が0とする;以下、第1姿勢という)における、各仮想区画20a〜20fの燃料量と液面の高さの変動を分析する。
【0027】
ついで、作業員が、第1姿勢における、航空機100の右翼燃料タンク20(仮想区画20a〜20f)の燃料量と液面の高さを実機で計測して、3Dシミュレーションモデルで分析したデータを較正する。具体的には、例えば、右翼燃料タンク20内に、1700lbの燃料を供給したときに、各液面センサ2a〜2fが検知する液面の高さを取得し、取得した液面の高さから、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を算出する。そして、各液面センサ2a〜2fが検知した液面の高さ及び仮想区画20a〜20f内の燃料量から、3Dシミュレーションモデルで分析したデータを較正する。較正した結果が
図4に示すグラフである。
【0028】
次に、3Dシミュレーションモデルを用いて、右翼燃料タンク20(各仮想区画20a〜20f)の形状と各液面センサ2a〜2fの配置位置と(
図2参照)から、所定の加速度における、各仮想区画20a〜20fの燃料量と液面の高さの変動を分析する。分析した結果が
図5に示すグラフである。なお、前後方向の加速度/鉛直方向の加速度、及び/又は左右方向の加速度/鉛直方向の加速度をパラメータ(所定の加速度)として、分析を実行する。
【0029】
図4及び
図5に示すように、各加速度における、燃料量と液面の高さの変動グラフ(以下、第1変動グラフという)が得られ、制御装置50は、当該第1変動グラフ群を第1データとして、記憶器51に記憶させる(
図3のステップS101)。なお、制御装置50は、第1データを一度、記憶器51に記憶させると、次回の燃料量測定を実行するときには、ステップS101を省略してもよい。
【0030】
次に、制御装置50は、
図3に示すように、液面センサ2a〜2fが検知した液面の高さ、第1データ、及び加速度センサ40が検知した加速度から、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出し(ステップS102)、本フローチャート(プログラム)を終了する。
【0031】
具体的には、まず、制御装置50は、加速度センサ40が検知した加速度に対応する変動グラフを選出し、液面センサ2a〜2fが検知した液面の高さから、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を算出する。
【0032】
次に、制御装置50は、算出した各仮想区画20a〜20f内の燃料量の総和を算出して、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する。なお、制御装置50は、算出した右翼燃料タンク20内の燃料量をコックピットのモニタ及び/又は航空機100の各タンクに燃料を供給する燃料供給装置等に出力してもよい。
【0033】
このように構成された本実施の形態1に係る航空機100では、加速度の変動を加味して燃料量を算出しているため、航空機の姿勢変更及び加減速に伴って、タンク内の液面が変動しても、タンク内の燃料量を正確に測定することができる。
【0034】
また、本実施の形態1に係る航空機100では、従来の航空機と同様に、第1姿勢における第1変動グラフを用いて、タンク内の燃料量を算出することもでき、冗長性を確保することができる。
【0035】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係る航空機は、制御装置が、加速度の異なる複数の第1データから、航空機の加速度及びタンク内の計測燃料量の相関関係である第2データを作成し、(A)として、液面センサが検知した液面の高さ及び第1データから、基準加速度における各仮想区画内の燃料量を算出する(A1)と、(A1)で算出した各仮想区画内の燃料量の総和である第1燃料量、加速度センサが検知した航空機の加速度、及び第2データから、第1燃料量を補正してタンク内の燃料量を算出する(A2)と、を実行するように構成されている。
【0036】
以下、本実施の形態2に係る航空機の一例について、
図6〜
図8を参照しながら説明する。なお、本実施の形態2に係る航空機の構成は、実施の形態1に係る航空機と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。また、以下の説明においては、右翼燃料タンク20内の燃料量の測定方法について説明する。中央タンク10及び左翼燃料タンク30については、右翼燃料タンク20と同様に測定することができるため、詳細な説明は省略する。
【0037】
[航空機の動作(燃料量測定方法)]
まず、本実施の形態2に係る航空機100の燃料量測定方法の一般例について、
図6を参照しながら説明する。なお、本実施の形態2に係る航空機100の燃料量測定方法の具体例については、後述する。
【0038】
図6は、本実施の形態2に係る航空機の動作を示すフローチャートである。
【0039】
図6に示すように、制御装置50は、実施の形態1に係る航空機100と同様にして、第1データを記憶器51に記憶させる(ステップS201)。なお、制御装置50は、第1データを一度、記憶器51に記憶させると、次回の燃料量測定を実行するときには、ステップS201を省略してもよい。
【0040】
次に、制御装置50は、第1データから、航空機の加速度及びタンク内の計測燃料量の相関関係である第2データを作成する(ステップS202)。詳細には、
図4及び
図5に示す第1データから、所定の加速度における、各仮想区画20a〜20f内の燃料量の総和を算出して、右翼燃料タンク20内の燃料量(これを計測燃料量という)を算出する。すなわち、計測燃料量とは、加速度により液面が変動するが、加速度による液面の変動を補正せずに、液面センサが検知した液面の高さを基に算出した燃料量をいう。
【0041】
ついで、制御装置50は、算出した右翼燃料タンク20内の計測燃料量及び航空機100の加速度からテーブル(第2データ)を作成し、当該テーブルを記憶する。
【0042】
次に、制御装置50は、液面センサ2a〜2fが検知した液面の高さ、及び第1姿勢における第1変動グラフ(第1データ)から、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を算出する(ステップS203)。すなわち、ステップS203では、実施の形態1に係る航空機100と異なり、航空機100の加速度を考慮せずに(加速度を0として)、先に各仮想区画20a〜20f内の燃料量を算出する。
【0043】
次に、制御装置50は、各仮想区画20a〜20f内の燃料量の総和である第1燃料量、加速度センサ40が検知した航空機100の加速度、及び第2データから、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出し(ステップS204)、本フローチャート(プログラム)を終了する。
【0044】
詳細には、制御装置50は、ステップS203で算出した各仮想区画20a〜20f内の燃料量を加算して、第1燃料量を算出する。ついで、制御装置50は、第2データから、
図8に示す、計測燃料量と加速度の変動グラフ(以下、第2変動グラフという)を作成する。そして、制御装置50は、
図8に示す第2変動グラフを用いて、第1燃料量及び加速度センサ40が検知した航空機100の加速度から、第1燃料量を補正して、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する。
【0045】
次に、本実施の形態2に係る航空機100の燃料量測定方法の具体例について、
図6〜
図8を参照しながら、詳細に説明する。
【0046】
図7は、航空機の加速度とタンク内の計測燃料量(容積)との相関関係である第2データの例を示す模式図である。
図8は、
図7に示す第2データから作成した計測燃料量と加速度の変動グラフ(第2変動グラフ)を示す模式図である。
【0047】
まず、作業員が、右翼燃料タンク20内に、1700lb又は3200lbの燃料を供給し、制御装置50は、各液面センサ2a〜2fが検知する液面の高さから、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を算出する(実機での測定)。ついで、制御装置50は、右翼燃料タンク20内に、1700lb又は3200lbの燃料が貯蔵されているという条件の基で、3Dシミュレーションモデルで分析したデータを、実機を用いて算出した燃料量を基に較正し、較正したデータを第1データとして、記憶する(
図6のステップS201)。
【0048】
次に、制御装置50は、ステップS201で記憶した第1データから、所定の加速度における、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を加算して、右翼燃料タンク20内の計測燃料量を算出する。ついで、制御装置50は、算出した右翼燃料タンク20内の計測燃料量及び航空機100の加速度からテーブル(第2データ)を作成し(
図7参照)、当該テーブルを記憶器51に記憶させる(
図6のステップS202)。
【0049】
次に、制御装置50は、液面センサ2a〜2fが検知した液面の高さ、及び第1姿勢における燃料量と液面の高さの変動グラフ(第1データ)から、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を算出する(ステップS203)。
【0050】
次に、制御装置50は、ステップS203で算出した各仮想区画20a〜20f内の燃料量を加算して、第1燃料量を算出し、加速度センサ40が検知した航空機100の加速度を取得する。
【0051】
ここで、第1燃料量が2000lbで、加速度センサ40が検知した航空機100の加速度が、左右方向の加速度/鉛直方向の加速度が0、かつ、前後方向の加速度/鉛直方向の加速度が+0.050であるとする。
【0052】
ついで、制御装置50は、第2データから、左右方向の加速度/鉛直方向の加速度が0、かつ、前後方向の加速度/鉛直方向の加速度が変動したときの燃料量の変動テーブル(
図7に示す、最も手前に位置するテーブル)を選択し、当該テーブルのデータを基に、
図8に示す第2変動グラフを作成する。
【0053】
ここで、
図8の黒丸(●)は、右翼燃料タンク20内の燃料量が1700lbの燃料が貯蔵されているという条件の基で、3Dシミュレーションモデルで分析した変動値(以下、第1変動値という)を示す。また、
図8の黒四角(■)は、右翼燃料タンク20内の燃料量が3200lbの燃料が貯蔵されているという条件の基で、3Dシミュレーションモデルで分析した変動値(以下、第2変動値という)を示す。なお、変動値とは、加速度により、右翼燃料タンク20内の燃料の液面が変動するために、液面センサ2a〜2fで検知する液面の高さが変動することにより、実際の燃料量から変動した値(計測燃料量)をいう。
【0054】
次に、制御装置50は、算出した第1燃料量、航空機100の加速度、及び
図8に示す第2変動グラフから、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出(補正)する(ステップS204)。
【0055】
具体的には、制御装置50は、
図8に示す第2変動グラフにおいて、燃料量が2000lb、加速度+0.050の交点に黒三角(▲)をおく。ついで、制御装置50は、燃料量が2000lbと加速度+0.050の交点に近傍の第1変動値及び第2変動値を取得する。
図8に示す第2変動グラフの場合、加速度が+0.035と+0.070のときの第1変動値及び第2変動値がそれぞれ選択される。そして、制御装置50は、加速度が+0.035と+0.070のときの第1変動値から、加速度が+0.050のときの第1変動値を予測する(
図8の白四角(□))。同様に、制御装置50は、加速度が+0.035と+0.070のときの第2変動値から、加速度が+0.050のときの第2変動値を予測する(
図8の白丸(○))。
【0056】
ついで、制御装置50は、加速度+0.050における、第1変動値(白四角(□))−第2変動値(白丸(○)間における第1燃料量の比率(
図8に示すa:b)を求める。そして、制御装置50は、求めた比率から、加速度0における右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する。すなわち、制御装置50は、第1変動値(ここでは、3200lb)と第2変動値(ここでは、1700lb)間が、a:bとなる値を算出し、その値が、右翼燃料タンク20の燃料量となる(
図8の白三角(△))。
【0057】
このようにして得られた、右翼燃料タンク20の燃料量は、加速度の変動を加味して燃料量を算出しているため、航空機の姿勢変更及び加減速に伴って、タンク内の液面が変動しても、タンク内の燃料量を正確に測定することができる。
【0058】
したがって、本実施の形態2に係る航空機100であっても、実施の形態1に係る航空機100と同様の作用効果を奏する。
【0059】
(実施の形態3)
本実施の形態3に係る航空機は、制御装置が、加速度の異なる複数の第1データから、航空機の加速度及びタンク内の計測燃料量の相関関係である第2データを作成し、液面センサが正常であるか否かを判断する(C)を実行し、(C)で少なくとも1の液面センサが異常であると判断すると、加速度の異なる複数の第1データから、航空機の加速度と(C)で正常であると判断した液面センサが配置されている仮想区画内の燃料量を加算した燃料量との相関関係である第3データを作成し、(A)として、(C)で正常であると判断した液面センサが検知した液面の高さ及び第1データから、基準加速度における各仮想区画内の燃料量を算出する(A3)と、(A3)で算出した各仮想区画内の燃料量の総和である第2燃料量、加速度センサが検知した航空機の加速度、及び第3データから、第2燃料量を補正して第3燃料量を算出する(A4)と、(A4)で算出した第3燃料量、航空機の加速度、第1データ、及び第2データから(C)で異常であると判断した液面センサが配置されている仮想区画内の燃料量を推定し、第3燃料量及び推定した仮想区画内の燃料量からタンク内の燃料量を算出する(A5)と、を実行するように構成されている。
【0060】
以下、本実施の形態3に係る航空機の一例について、
図9〜
図11を参照しながら説明する。なお、本実施の形態3に係る航空機の構成は、実施の形態1に係る航空機と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。また、以下の説明においては、右翼燃料タンク20内の燃料量の測定方法について説明する。中央タンク10及び左翼燃料タンク30については、右翼燃料タンク20と同様に測定することができるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
[航空機の動作(燃料量測定方法)]
まず、本実施の形態3に係る航空機100の燃料量測定方法の一般例について、
図9を参照しながら説明する。なお、本実施の形態3に係る航空機100の燃料量測定方法の具体例については、後述する。
【0062】
図9は、本実施の形態3に係る航空機の動作を示すフローチャートである。
【0063】
図9に示すように、制御装置50は、実施の形態1に係る航空機100と同様にして、第1データを記憶する(ステップS301)。なお、制御装置50は、第1データを一度、記憶器51に記憶させると、次回の燃料量測定を実行するときには、ステップS301を省略してもよい。
【0064】
次に、制御装置50は、各液面センサ2a〜2fが正常であるか否かを判定する(ステップS302)。例えば、液面センサから出力される故障信号(故障フラグ)が制御装置50に入力された場合、又は液面センサから出力される液面の高さの値が異常である場合には、液面センサが異常であると判定することができる。
【0065】
また、液面センサ2a〜2fから出力される液面の高さの値から算出される右翼燃料タンク20内の残存燃料量と、流量センサ80が検知する流量から算出される各エンジン60a〜60d等に供給された燃料量と、を比較することにより、各液面センサ2a〜2fが正常であるか否かを判定することができる。
【0066】
具体的には、制御装置50は、航空機100のフライト前(航空機100が駐機場に位置するとき)に右翼燃料タンク20内に貯蔵されていた燃料量から各エンジン60a〜60d等に供給された燃料量(航空機100が駐機場を離れてから現在までに流量センサ80が検知した流量の総和)を減算した値と、液面センサ2a〜2fから出力される液面の高さの値から算出される右翼燃料タンク20内の残存燃料量と、が一致しない場合には、液面センサ2a〜2fは異常であると判定することができる。この場合、制御装置50は、右翼燃料タンク20内に貯蔵されていた燃料量から各エンジン60a〜60d等に供給された燃料量を減算した値と、航空機100の加速度と、第1データと、第2データと、から、各液面センサ2a〜2fが検知すると予測される液面の高さを算出し、当該予測した高さと、各液面センサ2a〜2fが検知した高さと、を比較して、故障している液面センサを特定することができる。
【0067】
制御装置50は、ステップS302で各液面センサ2a〜2fが正常であると判定した場合には、実施の形態1に係る航空機100と同様にして、液面センサ2a〜2fが検知した液面の高さ、第1データ、及び加速度センサ40が検知した加速度から、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する(ステップS303)。なお、右翼燃料タンク20内の燃料量の算出は、実施の形態2に係る航空機100と同様にして、実行してもよい。
【0068】
一方、制御装置50は、ステップS302で各液面センサ2a〜2fのうち、少なくとも1の液面センサが異常であると判定した場合には、ステップS304に進む。なお、以下の説明では、制御装置50が、液面センサ2fが異常であると判定した場合について、説明する。
【0069】
ステップS304では、制御装置50は、ステップS301で記憶した第1データから、所定の加速度における、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を加算して、右翼燃料タンク20内の計測燃料量を算出する。ついで、制御装置50は、算出した右翼燃料タンク20内の計測燃料量及び航空機100の加速度からテーブル(第2データ)を作成し(
図7参照)、当該テーブルを記憶器51に記憶させる。なお、制御装置50は、ステップS304をステップS302の前に実行してもよい。また、制御装置50は、第2データを一度、記憶器51に記憶させると、次回の燃料量測定を実行するときには、ステップS304を省略してもよい。
【0070】
次に、制御装置50は、ステップS301で記憶した第1データから、所定の加速度における、ステップS302で正常であると判断した液面センサ2a〜2eが配置されている仮想区画20a〜20e内の燃料量の総和を算出する。ついで、制御装置50は、算出した総和及び航空機100の加速度からテーブル(第3データ)を作成し、当該テーブルを第3データとして、記憶器51に記憶させる(ステップS305)。なお、制御装置50は、ステップS304で算出した右翼燃料タンク20内の計測燃料量から、ステップS302で異常と判定した液面センサ2fが配置されている仮想区画20fの第1データから得られる燃料量を減算することにより、仮想区画20a〜20e内の燃料量の総和を算出してもよい。
【0071】
次に、制御装置50は、ステップS302で正常であると判断した液面センサ2a〜2eが検知した液面の高さ、及び第1姿勢における第1変動グラフ(第1データ)から、各仮想区画20a〜20e内の燃料量を算出する(ステップS306)。すなわち、ステップS306では、実施の形態2に係る航空機100と同様に、航空機100の加速度を考慮しないで、先に各仮想区画20a〜20e内の燃料量を算出する。
【0072】
次に、制御装置50は、ステップS306で算出した各仮想区画20a〜20e内の燃料量の総和である第2燃料量を算出する。ついで、制御装置50は、加速度センサ40が検知した航空機100の加速度、及び第3データから第2燃料量を補正し、第3燃料量を算出する(ステップS307)。すなわち、ステップS307では、ステップS302で正常であると判断した液面センサ2a〜2eが配置されている仮想区画20a〜20eについて、航空機100の加速度による液面の高さの変動を補正する。
【0073】
次に、制御装置50は、ステップS307で算出した第3燃料量、第1データ、及び第2データから右翼燃料タンク20内の燃料量を算出し(ステップS308)、本プログラムを終了する。
【0074】
具体的には、制御装置50は、まず、ステップS307で算出した第3燃料量、第1データ、及び第2データからステップS302で異常であると判断した液面センサ2fが配置されている仮想区画20f内の燃料量を推定する。
【0075】
ここで、右翼燃料タンク20内に所定の燃料量の燃料が貯蔵されている場合、ある加速度における各仮想区画20a〜20f内の燃料の液面は、それぞれ、所定の高さa〜fとなり、各液面センサ2a〜2fは、それぞれ、所定の高さa〜fを検知する。すなわち、航空機100が所定の加速度において、液面センサ2a〜2eが、それぞれ、所定の高さa〜eを検知した場合には、液面センサ2fは、必ず、所定の高さfを検知する。
【0076】
このため、航空機100の加速度と、故障していない(ステップS302で正常であると判断した)液面センサ2a〜2eが検知した液面の高さと、仮想区画20a〜20eの燃料量の総和である第3燃料量が算出されていれば、液面センサ2fの所定の加速度における第1データと第2データから、液面センサ2fが検知する液面の高さを推定することができる。そして、制御装置50は、推定した液面の高さと液面センサ2fの所定の加速度における第1データから、仮想区画20f内の燃料量を算出する(推定する)。
【0077】
ついで、制御装置50は、算出した仮想区画20fの燃料量を第3燃料量に加算することにより、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する。
【0078】
次に、本実施の形態3に係る航空機100の燃料量測定方法の具体例について、
図9〜
図11を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では、液面センサ2fが故障している場合について、説明する。
【0079】
図10は、航空機の加速度と正常であると判断した液面センサが配置されている仮想区画内の燃料量(容積)との相関関係である第3データの例を示す模式図である。
図11は、
図10に示す第3データから作成した燃料量と加速度の変動グラフ(第3変動グラフ)を示す模式図である。なお、
図11には、
図7に示す第2データから作成した燃料量と加速度の第2変動グラフを破線で示している。
【0080】
まず、実施の形態2と同様に、作業員が、右翼燃料タンク20内に、1700lb又は3200lbの燃料を供給し、制御装置50は、各液面センサ2a〜2fが検知する液面の高さから、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を算出する(実機での測定)。ついで、制御装置50は、右翼燃料タンク20内に、1700lb又は3200lbの燃料が貯蔵されているという条件の基で、3Dシミュレーションモデルで分析したデータを、実機を用いて算出した燃料量を基に較正し、較正したデータを第1データとして、記憶器51に記憶させる(
図9のステップS301)。
【0081】
なお、右翼燃料タンク20内に、1700lbの燃料が貯蔵されているときには、仮想区画20f内には、500lbの燃料が貯蔵されているとし、3200lbの燃料が貯蔵されているときには、仮想区画20f内には、600lbの燃料が貯蔵されているとする。
【0082】
次に、制御装置50は、各液面センサ2a〜2fが正常であるか否かを判定する(ステップS302)。なお、上述したように、ここでは、制御装置50は、液面センサ2fが異常であると判定したとする。
【0083】
次に、制御装置50は、ステップS301で記憶した第1データから、所定の加速度における、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を加算して、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する。ついで、制御装置50は、算出した右翼燃料タンク20内の計測燃料量及び航空機100の加速度からテーブル(第2データ)を作成し(
図7参照)、当該テーブルを記憶器51に記憶させる(ステップS304)。
【0084】
次に、制御装置50は、ステップS301で記憶した第1データから、所定の加速度における、ステップS302で正常であると判断した液面センサ2a〜2eが配置されている仮想区画20a〜20e内の燃料量の総和を算出する。ついで、制御装置50は、算出した総和及び航空機100の加速度からテーブル(第3データ)を作成し(
図10参照)、当該テーブルを第3データとして、記憶する(ステップS305)。
【0085】
次に、制御装置50は、ステップS302で正常であると判断した液面センサ2a〜2eが検知した液面の高さ、及び第1姿勢における第1変動グラフ(第1データ)から、各仮想区画20a〜20e内の燃料量を算出する(ステップS306)。
【0086】
次に、制御装置50は、ステップS306で算出した各仮想区画20a〜20e内の燃料量の総和である第2燃料量を算出する。ついで、制御装置50は、加速度センサ40が検知した航空機100の加速度を取得する。
【0087】
ここで、第2燃料量が1200lbで、加速度センサ40が検知した航空機100の加速度が、左右方向の加速度/鉛直方向の加速度が0、かつ、前後方向の加速度/鉛直方向の加速度が+0.050であるとする。
【0088】
ついで、制御装置50は、第3データから、左右方向の加速度/鉛直方向の加速度が0、かつ、前後方向の加速度/鉛直方向の加速度が変動したときの燃料量の変動テーブル(
図10に示す、最も手前に位置するテーブル)を選択し、当該テーブルのデータを基に、
図11に示す第3変動グラフを作成する。
【0089】
ここで、
図11の黒丸(●)は、仮想区画20a〜20e内の燃料量が1200lbの燃料が貯蔵されているという条件の基で、3Dシミュレーションモデルで分析した変動値(以下、第3変動値という)を示す。また、
図11の黒四角(■)は、仮想区画20a〜20e内の燃料量が2600lbの燃料が貯蔵されているという条件の基で、3Dシミュレーションモデルで分析した変動値(以下、第4変動値という)を示す。
【0090】
次に、制御装置50は、算出した第2燃料量、航空機100の加速度、及び
図11に示す第3変動グラフから、仮想区画20a〜20e内の燃料量(第2燃料量)を補正し、第3燃料量を算出する(ステップS307)。
【0091】
具体的には、制御装置50は、
図11に示す第3変動グラフにおいて、燃料量が1200lb、加速度+0.050の交点に黒三角(▲)をおく。ついで、制御装置50は、燃料量が1200lbと加速度+0.050の交点に近傍の第3変動値及び第4変動値を取得する。
図11に示す第3変動グラフの場合、加速度が+0.035と+0.070のときの第3変動値及び第4変動値がそれぞれ選択される。そして、制御装置50は、加速度が+0.035と+0.070のときの第3変動値から、加速度が+0.050のときの第3変動値を予測する(
図11の白四角(□))。同様に、制御装置50は、加速度が+0.035と+0.070のときの第4変動値から、加速度が+0.050のときの第4変動値を予測する(
図11の白丸(○))。
【0092】
ついで、制御装置50は、加速度+0.050における、第3変動値(白四角(□))−第4変動値(白丸(○)間における第2燃料量の比率(
図11に示すc:d)を求める。そして、制御装置50は、求めた比率から、加速度0における仮想区画20a〜20e内の燃料量を算出する。すなわち、制御装置50は、第3変動値(ここでは、2600lb)と第4変動値(ここでは、1200lb)間が、c:dとなる値を算出し、その値が、第1姿勢における、仮想区画20a〜20eの燃料量(第3燃料量)となる(
図11の白三角(△))。
【0093】
次に、制御装置50は、ステップS307で算出した第3燃料量、第1データ、及び第2データから右翼燃料タンク20内の燃料量を算出し(ステップS308)、本プログラムを終了する。
【0094】
具体的には、制御装置50は、まず、ステップS307で算出した第3燃料量、第1データ、及び第2データからステップS302で異常であると判断した液面センサ2fが配置されている仮想区画20f内の燃料量を推定する。ついで、制御装置50は、算出した仮想区画20fの燃料量を第3燃料量に加算し、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する(
図11の二重丸(◎))。
【0095】
また、制御装置50は、ステップS308において、第3燃料量を用いずに、第2データ(
図11における破線)の第1変動値(1700lb)と第2変動値(3200lb)を用いて、第2燃料量の比率(c:d)から、第1姿勢における右翼燃料タンク20内の燃料量を算出してもよい。すなわち、加速度が0のときに、第1変動値と第2変動値との間が、c:dとなる値を算出し、算出した値を右翼燃料タンク20内の燃料量としてもよい。
【0096】
このように構成された、本実施の形態3に係る航空機100では、複数の液面センサのいずれかの液面センサが故障した場合であっても、タンク内の燃料量を算出することができる。
【0097】
(実施の形態4)
本実施の形態4に係る航空機は、制御装置が、加速度の異なる複数の第1データから、航空機の加速度及びタンク内の計測燃料量の相関関係である第2データを作成し、液面センサが正常であるか否かを判断する(C)を実行し、(C)で少なくとも1の液面センサが異常であると判断すると、(A)として、(C)で正常であると判断した液面センサが検知した液面の高さ、加速度センサが検知した航空機の加速度、及び第1データから各仮想区画内の燃料量を算出する(A6)と、(A6)で算出した各仮想区画内の燃料量の総和である第4燃料量、航空機の加速度、及び第2データから(C)で異常であると判断した液面センサが配置されている仮想区画内の燃料量を推定し、第4燃料量及び推定した仮想区画内の燃料量からタンク内の燃料量を算出する(A7)と、を実行するように構成されている。
【0098】
以下、本実施の形態4に係る航空機の一例について、
図12を参照しながら説明する。なお、本実施の形態4に係る航空機の構成は、実施の形態1に係る航空機と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。また、以下の説明においては、右翼燃料タンク20内の燃料量の測定方法について説明する。中央タンク10及び左翼燃料タンク30については、右翼燃料タンク20と同様に測定することができるため、詳細な説明は省略する。
【0099】
[航空機の動作(燃料量測定方法)]
本実施の形態4に係る航空機100の燃料量測定方法の一例について、
図12を参照しながら説明する。
【0100】
図12は、本実施の形態4に係る航空機の動作を示すフローチャートである。
【0101】
図12に示すように、制御装置50は、実施の形態1に係る航空機100と同様にして、第1データを記憶する(ステップS401)。なお、制御装置50は、第1データを一度、記憶器51に記憶させると、次回の燃料量測定を実行するときには、ステップS401を省略してもよい。
【0102】
次に、制御装置50は、実施の形態3に係る航空機100と同様にして、各液面センサ2a〜2fが正常であるか否かを判定する(ステップS402)。
【0103】
制御装置50は、ステップS402で各液面センサ2a〜2fが正常であると判定した場合には、実施の形態1に係る航空機100と同様にして、液面センサ2a〜2fが検知した液面の高さ、第1データ、及び加速度センサ40が検知した加速度から、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する(ステップS403)。なお、右翼燃料タンク20内の燃料量の算出は、実施の形態2に係る航空機100と同様にして、実行してもよい。
【0104】
一方、制御装置50は、ステップS402で各液面センサ2a〜2fのうち、少なくとも1の液面センサが異常であると判定した場合には、ステップS404に進む。なお、以下の説明では、制御装置50が、液面センサ2fが異常であると判定した場合について、説明する。
【0105】
ステップS404では、制御装置50は、ステップS401で記憶した第1データから、所定の加速度における、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を加算して、右翼燃料タンク20内の計測燃料量を算出する。ついで、制御装置50は、算出した右翼燃料タンク20内の計測燃料量及び航空機100の加速度からテーブル(第2データ)を作成し(
図7参照)、当該テーブルを記憶器51に記憶させる。
【0106】
次に、制御装置50は、ステップS402で正常であると判断した液面センサ2a〜2eが配置されている各仮想区画20a〜20e内の燃料量を算出する(ステップS405)。具体的には、制御装置50は、ステップS401で記憶した第1データから、加速度センサ40が検知した加速度に対応する変動グラフを選出し、選出した変動グラフと、液面センサ2a〜2eが検知した液面の高さから、各仮想区画20a〜20e内の燃料量を算出する。
【0107】
次に、制御装置50は、ステップS405で算出した各仮想区画20a〜20e内の燃料量の総和である第4燃料量を算出する。ついで、制御装置50は、第4燃料量、第1データ、及び第2データからステップS402で異常であると判断した液面センサ2fが配置されている仮想区画20f内の燃料量を推定する。
【0108】
上述したように、航空機100の加速度と、故障していない(ステップS402で正常であると判断した)液面センサ2a〜2eが検知した液面の高さと、仮想区画20a〜20eの燃料量の総和である第4燃料量が算出されていれば、液面センサ2fの所定の加速度における第1データと第2データから、液面センサ2fが検知する液面の高さを推定することができる。そして、制御装置50は、推定した液面の高さと液面センサ2fの所定の加速度における第1データから、仮想区画20f内の燃料量を算出する(推定する)。
【0109】
ついで、制御装置50は、算出した仮想区画20fの燃料量を第4燃料量に加算することにより、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出し(ステップS406)、本プログラムを終了する。
【0110】
このように構成された、本実施の形態4に係る航空機100であっても、実施の形態3に係る航空機100と同様の作用効果を奏する。
【0111】
(実施の形態5)
本実施の形態5に係る航空機は、制御装置が、加速度センサから航空機の加速度を取得できなかった場合には、(A)として、液面センサが検知した液面の高さ及び基準加速度における第1データから各仮想区画内の燃料量を算出し、算出した燃料量を加算してタンク内の燃料量を算出するように構成されている。
【0112】
以下、本実施の形態5に係る航空機の一例について、
図13を参照しながら説明する。なお、本実施の形態5に係る航空機の構成は、実施の形態1に係る航空機と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。また、以下の説明においては、右翼燃料タンク20内の燃料量の測定方法について説明する。中央タンク10及び左翼燃料タンク30については、右翼燃料タンク20と同様に測定することができるため、詳細な説明は省略する。
【0113】
[航空機の動作(燃料量測定方法)]
ところで、加速度センサ40が故障した場合、又は加速度センサ40と制御装置50を接続するケーブルが断線した場合等では、制御装置50は加速度センサ40から加速度を取得できない。加速度を取得できない場合、制御装置50は、第1データから、加速度センサ40が検知した加速度に対応する変動グラフを選出することができないため、タンク内の燃料量を算出することができなくなるおそれがある。このため、本実施の形態5に係る航空機では、以下のようにして、タンク内の燃料量を算出する。
【0114】
図13は、本実施の形態5に係る航空機の動作を示すフローチャートである。
【0115】
図13に示すように、制御装置50は、実施の形態1に係る航空機100と同様にして、第1データを記憶する(ステップS501)。なお、制御装置50は、第1データを一度、記憶器51に記憶させると、次回の燃料量測定を実行するときには、ステップS501を省略してもよい。
【0116】
次に、制御装置50は、加速度センサ40から加速度を取得したか否かを判定する(ステップS502)。
【0117】
制御装置50は、加速度センサ40から加速度を取得した場合(ステップS502でYes)には、実施の形態1と同様に、液面センサ2a〜2fが検知した液面の高さ、第1データ、及び加速度センサ40が検知した加速度から、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出し(ステップS503)、本プログラムを終了する。なお、右翼燃料タンク20内の燃料量の算出は、実施の形態2に係る航空機100と同様にして、実行してもよい。
【0118】
一方、制御装置50は、加速度センサ40から加速度を取得できなかった場合(ステップS502でNo)には、各液面センサ2a〜2fが検知した液面の高さ、及び第1姿勢における第1変動グラフから、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を算出し、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出し(ステップS504)、本プログラムを終了する。
【0119】
すなわち、制御装置50は、加速度センサ40から加速度を取得できなかった場合には、前後、左右方向の加速度が0とみなして、第1姿勢における第1変動グラフを選択し、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する。
【0120】
このように構成された、本実施の形態5に係る航空機100であっても、実施の形態1に係る航空機100と同様の作用効果を奏する。また、本実施の形態5に係る航空機100では、加速度センサ40から加速度を取得できない場合にも、タンク内の燃料量を算出することができるため、タンク内の燃料量を表示できないというエラーの発生を抑制することができる。
【0121】
なお、加速度センサ40から加速度を取得できない場合に、制御装置50は、以下の方法により、タンク内の燃料量を算出してもよい。すなわち、まず、制御装置50が、航空機100の脚が接地している状態(航空機100の機首が所定の角度下がった状態;以下、第2姿勢という)における、液面センサが検知する液面の高さと燃料量(容積)との相関関係である第2姿勢が含まれる第1データを記憶部に記憶させておく。
【0122】
そして、制御装置50が、センサから航空機100の脚が接地していないことを示す信号を取得した場合には、各液面センサ2a〜2fが検知した液面の高さ、及び第1姿勢における第1変動グラフから、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を算出し、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する。
【0123】
一方、制御装置50が、センサから航空機100の脚が接地していることを示す信号を取得した場合には、各液面センサ2a〜2fが検知した液面の高さ、及び第2姿勢における第1変動グラフから、各仮想区画20a〜20f内の燃料量を算出し、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する。
【0124】
(実施の形態6)
本実施の形態6に係る航空機は、タンクから送出される燃料の流量を検知する流量センサをさらに備え、制御装置は、加速度センサから取得した航空機の加速度の変化率が所定値以上である場合には、(A)に代えて、前回算出したタンク内の燃料量及び流量センサが検知した燃料の流量からタンク内の燃料量を推定する(E)を実行するように構成されている。
【0125】
以下、本実施の形態6に係る航空機の一例について、
図14を参照しながら説明する。なお、本実施の形態6に係る航空機の構成は、実施の形態1に係る航空機と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。また、以下の説明においては、右翼燃料タンク20内の燃料量の測定方法について説明する。中央タンク10及び左翼燃料タンク30については、右翼燃料タンク20と同様に測定することができるため、詳細な説明は省略する。
【0126】
[航空機の動作(燃料量測定方法)]
ところで、航空機100が着陸するとき、特に、車輪が地面に接触するときには、その衝撃により、タンク内の液面が大きく変動する。また、航空機100がタキシング中に左右に方向転換するときにも、タンク内の液面が大きく変動する。すなわち、航空機100の加速度が所定値以上になると、タンク内の液面が大きく変動する。また、航空機100の鉛直方向の加速度が0付近となると、姿勢角のパラメータとしている前後方向又は左右方向の加速度/鉛直方向の値が不定となる場合が考えられる。このような場合に、液面センサが検知する液面の高さを基準にして、燃料量を算出すると、大きな誤差が生じるおそれがある。このため、本実施の形態6に係る航空機では、以下のようにして、タンク内の燃料量を算出する。
【0127】
図14は、本実施の形態6に係る航空機の動作の一例を示すフローチャートである。
【0128】
図14に示すように、制御装置50は、加速度センサ40から加速度を取得し、取得した加速度と前回加速度センサ40から取得した加速度から、加速度の変化率を算出する(ステップS601)。ついで、制御装置50は、ステップS601で算出した加速度の変化率が、所定値より小さいか否かを判定する(ステップS602)。
【0129】
ここで、所定値は、任意に設定することができ、例えば、航空機100の全長、重量、エンジンの出力、又は航続距離等に応じて、適宜設定してもよく、航空機の加速度変化が大きくなる運用を分析し、加速度変化が所定値以上となる時間とその時間での燃料消費量が指示の分解能に影響を与えない値としてもよい。
【0130】
制御装置50は、ステップS601で算出した加速度の変化率が、所定値より小さい場合(ステップS602でYes)には、加速度センサ40から取得した加速度を基に、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する(ステップS603)。なお、右翼燃料タンク20内の燃料量の算出は、実施の形態1に係る航空機100と同様に実行してもよく、実施の形態2に係る航空機100と同様に実行してもよい。
【0131】
一方、制御装置50は、ステップS601で算出した加速度の変化率が、所定値以上である場合(ステップS602でNo)には、前回算出した右翼燃料タンク20内の燃料量及び流量センサ80が検知した燃料の流量から、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出(推定)(ステップS604)し、本プログラムを終了する。
【0132】
具体的には、制御装置50は、例えば、航空機100のフライト前(航空機100が駐機場に位置するとき)に、右翼燃料タンク20内に貯蔵されていた燃料量(前回算出したタンク内の燃料量)から、航空機100が駐機場を離れてから現在までに流量センサ80が検知した流量の総和を減算した値を右翼燃料タンク20内の燃料量として推定してもよい。
【0133】
また、制御装置50は、例えば、前回右翼燃料タンク20内の燃料量を算出したときの加速度の変化率が、所定値より小さい場合には、当該燃料量を前回算出したタンク内の燃料量とし、当該燃料量から、前回右翼燃料タンク20内の燃料量を算出してから現在までに流量センサ80が検知した流量の総和を減算した値を右翼燃料タンク20内の燃料量として推定してもよい。
【0134】
[変形例1]
本実施の形態6の変形例1の航空機は、タンクから送出される燃料の流量を検知する流量センサをさらに備え、制御装置は、加速度センサから取得した航空機の加速度が第1範囲内にある場合には、(A)に代えて、前回算出したタンク内の燃料量及び流量センサが検知した燃料の流量からタンク内の燃料量を推定する(E)を実行するように構成されている。
【0135】
以下、本実施の形態6の変形例1の航空機の一例について、
図15を参照しながら説明する。なお、本変形例1の航空機の構成は、実施の形態1に係る航空機と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。また、以下の説明においては、右翼燃料タンク20内の燃料量の測定方法について説明する。中央タンク10及び左翼燃料タンク30については、右翼燃料タンク20と同様に測定することができるため、詳細な説明は省略する。
【0136】
[航空機の動作(燃料量測定方法)]
図15は、本実施の形態6における変形例1の航空機の動作を示すフローチャートである。
【0137】
図15に示すように、制御装置50は、加速度センサ40から加速度を取得し(ステップS701)、ステップS701で取得した加速度が、第1範囲外にあるか否かを判定する(ステップS702)。
【0138】
ここで、第1範囲は、任意に設定することができ、例えば、鉛直方向の加速度が、実際頻繁に運用される1.0Gより小さい値(例えば、0.9G以下であってもよく、0G以下であってもよい)としてもよく、左右方向の加速度がタキシング旋回時の加速度より小さく、駐機場の傾きによる加速度より大きい値(例えば0.05G)としてもよい。
【0139】
制御装置50は、ステップS701で取得した加速度が、第1範囲外の場合(ステップS702でYes)には、加速度センサ40から取得した加速度を基に、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出する(ステップS703)。なお、右翼燃料タンク20内の燃料量の算出は、実施の形態1に係る航空機100と同様に実行してもよく、実施の形態2に係る航空機100と同様に実行してもよい。
【0140】
一方、制御装置50は、ステップS701で算出した加速度が、第1範囲外ではない場合、すなわち、第1範囲内である場合(ステップS702でNo)には、前回算出した右翼燃料タンク20内の燃料量及び流量センサ80が検知した燃料の流量から、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出(推定)(ステップS704)し、本プログラムを終了する。
【0141】
具体的には、制御装置50は、例えば、航空機100のフライト前(航空機100が駐機場に位置するとき)に、右翼燃料タンク20内に貯蔵されていた燃料量(前回算出したタンク内の燃料量)から、航空機100が駐機場を離れてから現在までに流量センサ80が検知した流量の総和を減算した値を右翼燃料タンク20内の燃料量として推定してもよい。
【0142】
また、制御装置50は、例えば、前回右翼燃料タンク20内の燃料量を算出したときの加速度が、第1範囲外ではない場合には、当該燃料量を前回算出したタンク内の燃料量とし、当該燃料量から、前回右翼燃料タンク20内の燃料量を算出してから現在までに流量センサ80が検知した流量の総和を減算した値を右翼燃料タンク20内の燃料量として推定してもよい。
【0143】
このように構成された、本変形例1の航空機100であっても、実施の形態6に係る航空機100と同様の作用効果を奏する。
【0144】
(実施の形態7)
本実施の形態7に係る航空機は、タンクから送出される燃料が通流する燃料流路と、燃料流路に設けられているバルブと、をさらに備え、制御装置は、加速度センサから取得した航空機の加速度の変化率が所定値以上である場合には、(A)に代えて、前回算出したタンク内の燃料量及びバルブが開放されていた時間からタンク内の燃料量を推定する(F)を実行するように構成されている。
【0145】
以下、本実施の形態7に係る航空機の一例について、
図16を参照しながら説明する。
【0146】
[航空機の構成]
図16は、本実施の形態7に係る航空機の概略構成を示す模式図である。
【0147】
図16に示すように、本実施の形態7に係る航空機100は、実施の形態1に係る航空機100と基本的構成は同じであるが、燃料流路70にバルブ90が設けられている点がことなる。バルブ90は、燃料流路70内の燃料の通流を許可/阻止することができれば、どのようなバルブであってもよく、例えば、開閉弁又は流量調整弁等を用いることができる。また、バルブ90は、その設置場所及び設置個数は、任意に設定される。そして、バルブ90は、制御装置50の制御により、弁体を開放又は閉止される。
【0148】
[航空機の動作(燃料量測定方法)]
次に、本実施の形態1に係る航空機100の動作(燃料量測定方法)について、
図16及び
図17を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、右翼燃料タンク20内の燃料量の測定方法について説明する。中央タンク10及び左翼燃料タンク30については、右翼燃料タンク20と同様に測定することができるため、詳細な説明は省略する。
【0149】
図17は、本実施の形態7に係る航空機の動作を示すフローチャートである。
【0150】
図17に示すように、本実施の形態7に係る航空機100は、実施の形態6に係る航空機100と同様の動作が実行されるが、ステップS604に代えて、ステップS604Aが実行される点が異なる。具体的には、制御装置50は、ステップS601で算出した加速度の変化率が、所定値以上である場合(ステップS602でNo)には、前回算出した右翼燃料タンク20内の燃料量及びバルブ90を開放していた時間から、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出(推定)(ステップS604A)し、本プログラムを終了する。
【0151】
具体的には、制御装置50は、例えば、航空機100のフライト前に、右翼燃料タンク20内に貯蔵されていた燃料量(前回算出したタンク内の燃料量)から、バルブ90を開放することにより燃料流路70を通流する燃料の流量と航空機100が駐機場を離れてから現在までにバルブ90を開放した時間とを積算して得た流量を減算した値を右翼燃料タンク20内の燃料量として推定してもよい。
【0152】
また、制御装置50は、例えば、前回右翼燃料タンク20内の燃料量を算出したときの加速度の変化率が、所定値より小さい場合には、当該燃料量を前回算出したタンク内の燃料量とし、当該燃料量から、前回右翼燃料タンク20内の燃料量を算出してから、バルブ90を開放することにより燃料流路70を通流する燃料の流量と現在までにバルブ90を開放した時間とを積算して得た流量を減算した値を右翼燃料タンク20内の燃料量として推定してもよい。
【0153】
なお、バルブ90を開放することにより燃料流路70を通流する燃料の流量は、燃料流路70を通流する燃料の平均値であってもよく、デフォルトで設定されている流量であってもよい。
【0154】
このように構成された、本実施の形態7に係る航空機100であっても、実施の形態6に係る航空機100と同様の作用効果を奏する。
【0155】
[変形例1]
本実施の形態7の変形例1の航空機は、タンクから送出される燃料が通流する燃料流路と、燃料流路に設けられているバルブと、をさらに備え、制御装置は、加速度センサから取得した航空機の加速度が第1範囲内にある場合には、(A)に代えて、前回算出したタンク内の燃料量及びバルブが開放されていた時間からタンク内の燃料量を推定する(F)を実行するように構成されている。
【0156】
以下、本実施の形態7の変形例1の航空機の一例について、
図18を参照しながら説明する。なお、本変形例1の航空機の構成は、実施の形態7に係る航空機と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。また、以下の説明においては、右翼燃料タンク20内の燃料量の測定方法について説明する。中央タンク10及び左翼燃料タンク30については、右翼燃料タンク20と同様に測定することができるため、詳細な説明は省略する。
【0157】
[航空機の動作(燃料量測定方法)]
図18は、本実施の形態7における変形例1の航空機の動作を示すフローチャートである。
【0158】
図18に示すように、本実施の形態7における変形例1の航空機100は、実施の形態6における変形例1の航空機100と同様の動作が実行されるが、ステップS704に代えて、ステップS704Aが実行される点が異なる。具体的には、制御装置50は、ステップS701で算出した加速度が、第1範囲内である場合(ステップS702でNo)には、前回算出した右翼燃料タンク20内の燃料量及びバルブ90を開放していた時間から、右翼燃料タンク20内の燃料量を算出(推定)(ステップS704A)し、本プログラムを終了する。
【0159】
具体的には、制御装置50は、実施の形態7のステップS604Aと同様に、前回算出した右翼燃料タンク20内の燃料量から、バルブ90を開放することにより燃料流路70を通流する燃料の流量と現在までにバルブ90を開放した時間とを積算して得た流量を減算した値を右翼燃料タンク20内の燃料量として推定する。
【0160】
このように構成された、本変形例1の航空機100であっても、実施の形態6に係る航空機100と同様の作用効果を奏する。
【0161】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。