(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0013】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0014】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0015】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0016】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0017】
また、本明細書において、「電子部品」とは、電子を利用した部品を意味し、特に、半導体内の電子を利用した部品は「半導体部品」となる。この「半導体部品」の例としては、半導体チップを挙げることができる。したがって、「半導体チップ」を包含する語句が「半導体部品」であり、「半導体部品」の上位概念が「電子部品」となる。
【0018】
また、本明細書において、「半導体装置」とは、半導体部品と、この半導体部品と電気的に接続された外部接続端子とを備える構造体であり、かつ、半導体部品が封止体で覆われている構造体を意味する。特に、「半導体装置」は、外部接続端子によって、外部装置と電気的に接続可能に構成されている。
【0019】
さらに、本明細書において、「パワートランジスタ」とは、複数の単位トランジスタ(セルトランジスタ)を並列接続することによって(例えば、数千個から数万個の単位トランジスタを並列接続する)、単位トランジスタの許容電流よりも大きな電流においても、単位トランジスタの機能を実現する単位トランジスタの集合体を意味する。例えば、単位トランジスタがスイッチング素子として機能する場合、「パワートランジスタ」は、単位トランジスタの許容電流よりも大きな電流にも適用可能なスイッチング素子となる。スイッチング素子を構成する「パワートランジスタ」として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)とが例示できる。本明細書において、「パワートランジスタ」という用語は、例えば、「パワーMOSFET」と「IGBT」の両方を包含する上位概念を示す語句として使用している。また、パワートランジスタを備える半導体チップの事を、パワー半導体チップと呼ぶ場合がある。
【0020】
(実施の形態)
本実施の形態では、パワートランジスタを備えた半導体チップを含む複数の電子部品が、一つのパッケージ内に収容された電子装置(半導体モジュール)の例として、インバータ回路(電力変換回路)を備える半導体パッケージ(半導体装置)である、電力変換装置を取り上げて説明する。また、本実施の形態では、パワートランジスタとしてIGBTを利用する例を取り上げて説明する。
【0021】
インバータ回路とは、直流電力を交流電力に変換する回路である。例えば、直流電源のプラスとマイナスを交互に出力すれば、これに応じて電流の向きが逆転する。この場合、電流の向きが交互に逆転するので、出力は交流電力と考えることができる。これがインバータ回路の原理である。ここで、交流電力といっても、単相交流電力や3相交流電力に代表されるように様々な形態がある。本実施の形態では、直流電力を3相の交流電力に変換する3相インバータ回路を例に挙げて説明することにする。ただし、本実施の形態における技術的思想は、3相インバータ回路に適用する場合に限らず、例えば、単相インバータ回路などにも幅広く適用することができる。
【0022】
<3相インバータ回路の構成例>
図1は、本実施の形態におけるインバータ回路および3相誘導モータを含むモータ回路の構成を示す回路図である。
図1において、モータ回路は、3相誘導モータであるモータMTおよびインバータ回路PWCを有している。モータMTは、位相の異なる3相の電圧により駆動するように構成されている。モータMTでは、位相が120度ずれたU相、V相、W相と呼ばれる3相交流を利用して導体であるロータRTの回りに回転磁界を発生させる。この場合、ロータRTの回りを磁界が回転する。このことは、導体であるロータRTを横切る磁束が変化することを意味する。この結果、導体であるロータRTに電磁誘導が生じて、ロータRTに誘導電流が流れる。そして、回転磁界中で誘導電流が流れるということは、フレミングの左手の法則によって、ロータRTに力が加わることを意味し、この力によって、ロータRTが回転する。モータ回路では、直流から交流を作り出すインバータ回路PWCを利用することにより、誘導モータに交流電力を供給している。
図1に例示するモータMTの場合、3相交流を利用することにより、ロータRTを回転させる。このため、
図1に示すインバータ回路PWCは、3種類(U相、V相、W相)の交流電力を生成し、モータMTに供給している。
【0023】
以下に、インバータ回路PWCの構成例について説明する。
図1に示すように、本実施の形態におけるインバータ回路PWCには、3相に対応してトランジスタQ1とダイオードFWDが設けられている。本実施の形態におけるインバータ回路PWCが備えるスイッチ素子は、トランジスタQ1とダイオードFWDを逆並列接続した構成要素により構成される。言い換えれば、
図1に示すレグLG1の上アームおよび下アーム、レグLG2の上アームおよび下アーム、レグLG3の上アームおよび下アームのそれぞれは、トランジスタQ1とダイオードFWDを逆並列接続した構成要素により構成されている。
【0024】
トランジスタQ1は、スイッチング素子として動作する、パワートランジスタであって、本実施の形態の例では、例えばIGBTである。インバータ回路PWCでは、相対的に高い電位が供給されるハイサイド用の端子(例えば正電位端子)HTとモータMTの各相(U相、V相、W相)との間にトランジスタQ1とダイオードFWDが逆並列に接続されている。また、モータMTの各相より相対的に低い電位が供給されるロウサイド用の端子(例えば負電位端子)LTと、モータMTの各相(U相、V相、W相)との間にトランジスタQ1とダイオードFWDが逆並列に接続されている。すなわち、単相ごとに2つのトランジスタQ1と2つのダイオードFWDが設けられている。言い換えれば、レグLG1、LG2、およびLG3のそれぞれは、ハイサイド用のスイッチング素子として動作するパワートランジスタであるトランジスタQ1、およびロウサイド用のスイッチング素子として動作するパワートランジスタであるトランジスタQ1を備えている。このため、3相で6つのトランジスタQ1と6つのダイオードFWDが設けられている。そして、個々のトランジスタQ1のゲート電極には、ゲート駆動回路(駆動回路)GCが接続されており、このゲート駆動回路GCによって、トランジスタQ1のスイッチング動作が制御されるようになっている。このように構成されたインバータ回路PWCにおいて、ゲート駆動回路GCでトランジスタQ1のスイッチング動作を制御することにより、直流電力を3相交流電力に変換して、この3相交流電力をモータMTに供給するようになっている。
図1に示すように、本実施の形態の場合、レグLG1、LG2、およびLG3のそれぞれに対して、一個ずつゲート駆動回路GCが接続されている。詳細は後述するが、3相分のゲート駆動回路GCは、互いに独立した三個の半導体部品に形成されている。
【0025】
本実施の形態におけるインバータ回路PWCには、スイッチング素子として、IGBTであるトランジスタQ1が使用され、トランジスタQ1と逆並列接続するようにダイオードFWDが設けられている。単に、スイッチング素子によってスイッチ機能を実現する観点からは、スイッチング素子としてのトランジスタQ1があれば、ダイオードFWDがない構成も考えられる。しかし、インバータ回路PWCに接続される負荷にインダクタンスが含まれている場合には、ダイオードFWDを設ける必要がある。
【0026】
負荷がインダクタンスを含まない純抵抗である場合、還流するエネルギーがないため、ダイオードFWDは不要である。しかし、負荷にモータのようなインダクタンスを含む回路が接続されている場合、オンしているスイッチとは逆方向に負荷電流が流れる状態(モード)がある。すなわち、負荷にインダクタンスが含まれている場合、負荷のインダクタンスからインバータ回路PWCへエネルギーが戻ることがある(電流が逆流することがある)。
【0027】
このとき、IGBTであるトランジスタQ1単体では、この還流電流を流し得る機能をもたないので、トランジスタQ1と逆並列にダイオードFWDを接続する必要がある。すなわち、インバータ回路PWCにおいて、モータ制御のように負荷にインダクタンスを含む場合、トランジスタQ1をターンオフしたとき、インダクタンスに蓄えられたエネルギー(1/2LI
2)を必ず放出しなければならない。ところが、トランジスタQ1単体では、インダクタンスに蓄えられたエネルギーを開放するための還流電流を流すことができない。そこで、このインダクタンスに蓄えられた電気エネルギーを還流するため、トランジスタQ1と逆並列にダイオードFWDを接続する。つまり、ダイオードFWDは、インダクタンスに蓄えられた電気エネルギーを開放するために還流電流を流すという機能を有している。以上のことから、インダクタンスを含む負荷に接続されるインバータ回路PWCにおいては、スイッチング素子であるトランジスタQ1と逆並列にダイオードFWDを設ける必要性がある。このダイオードFWDは、フリーホイールダイオードと呼ばれる。
【0028】
また、本実施の形態におけるインバータ回路PWCの場合、例えば、
図1に示すように、ハイサイド用の端子HTとロウサイド用の端子LTとの間に、容量素子CAPが接続されている。この容量素子CAPは、例えば、インバータ回路PWCでのスイッチングノイズの平滑化や、システム電圧の安定化を図る機能を有している。
図1に示す例では、容量素子CAPは、インバータ回路PWCの外部に設けられているが、容量素子CAPはインバータ回路PWCの内部に設けられていても良い。
【0029】
また。
図1に示すように、本実施の形態のインバータ回路PWCは、3相分に相当する6個のスイッチング素子を含む出力部PW1と、出力部PW1の6個のパワートランジスタの駆動を制御する、制御部PW2と、を有している。制御部PW2は、上記した3個のゲート駆動回路GCの他、ゲート駆動回路GCに含まれるハイサイド用の駆動回路およびロウサイド用の駆動回路のそれぞれの動作を制御する制御回路(ロジック回路、演算回路)CTを有している。また、
図1では図示を省略したが、制御部PW2は、上記の他、インバータ回路PWCの動作を制御する種々の制御回路を含んでいても良い。例えば、ゲート駆動回路GCから出力されるゲート駆動信号や、ゲート駆動回路GCに入力される信号などのノイズを低減させるノイズフィルタ回路が、制御部PW2に形成されていても良い。また例えば、出力部PW1を構成する電子部品の温度などを測定し、測定された電気信号のノイズフィルタリング、あるいは増幅を行う回路が、制御部PW2に形成されていても良い。
【0030】
<パワー半導体チップの構造>
次に、
図1に示すインバータ回路PWCを構成するIGBTであるトランジスタQ1を備えたパワー半導体チップの構造、およびダイオードFWDを備えた半導体チップの構造について図面を参照しながら説明する。
図2は、
図1に示すトランジスタが形成された半導体チップの表面側の形状を示す平面図である。
図3は、
図2に示す半導体チップの裏面を示す平面図である。
図4は、
図2および
図3に示す半導体チップが有するトランジスタの構造例を示す断面図である。
【0031】
本実施の形態の場合、インバータ回路PWCを構成するトランジスタQ1とダイオードFWDとは、互いに独立した半導体チップに形成されている。以下では、トランジスタQ1が形成された半導体チップ(パワー半導体チップ、半導体部品)SC1について先に説明し、ダイオードFWDが形成された半導体チップ(パワー半導体チップ、半導体部品)SC2について後で説明する。
【0032】
図2および
図3に示すように、本実施の形態における半導体チップSC1は、表面(面、上面、主面)SCt(
図2参照)、および表面SCtの反対側の裏面(面、下面、主面)SCb(
図3参照)を有している。半導体チップSC1の表面SCtおよび裏面SCbは、それぞれ四角形である。表面SCtの面積と裏面SCbの面積とは、例えば等しい。
【0033】
また、
図2に示すように、半導体チップSC1は、表面SCtに形成されたゲート電極(ゲート電極パッド、表面電極)GPおよびエミッタ電極(エミッタ電極パッド、表面電極)EPを有している。
図2に示す例では、表面SCtには、一つのゲート電極GPと、二つのエミッタ電極EPとが露出している。二つのエミッタ電極EPのそれぞれの露出面積は、ゲート電極GPの露出面積より大きい。エミッタ電極EPは、インバータ回路PWC(
図1参照)の出力端子、またはロウサイド用の端子LT(
図1参照)に接続される。このため、エミッタ電極EPの露出面積を大きくすることで、大電流が流れる伝送経路のインピーダンスを低減できる。
【0034】
また、
図3に示すように、半導体チップSC1は、裏面SCbに形成されたコレクタ電極(コレクタ電極パッド、裏面電極)CPを有している。半導体チップSC1の裏面SCb全体にわたって、コレクタ電極CPが形成されている。
図2と
図3を比較して判るように、コレクタ電極CPの露出面積は、エミッタ電極EPの露出面積よりもさらに大きい。詳細は後述するが、コレクタ電極CPは、インバータ回路PWC(
図1参照)の出力端子、またはハイサイド用の端子HT(
図1参照)に接続される。このため、コレクタ電極CPの露出面積を大きくすることで、大電流が流れる伝送経路のインピーダンスを低減できる。
【0035】
また、
図2に示すように、本実施の形態の半導体チップSC1は、表面SCtにおいて露出する複数の電極を有する。この複数の電極には、上記したゲート電極GPおよびエミッタ電極EPの他、複数の信号電極(信号電極パッド、表面電極)DTPが含まれる。複数の信号電極DTPのそれぞれは、半導体チップSC1の温度などを測定したデータを電気信号として出力する出力端子である。信号電極DTPを介して出力される電気信号の例としては、例えば、半導体チップSC1の温度信号、エミッタ電極EPの電位レベルの計測信号、あるいはエミッタ電極EPに流れる電流の検出信号などを例示できる。
図2に示す例では、複数の信号電極DTPのうちの一部であるエミッタ信号電極EDPは、半導体チップSC1の内部において、エミッタ電極EPと電気的に接続されている。このため、エミッタ電極EPの電位レベルの計測信号、あるいはエミッタ電極EPに流れる電流の検出信号などは、エミッタ信号電極EDPから出力することが可能である。信号電極DTPから出力された電気信号は、例えば
図1に示す制御回路CTに入力される。そして、制御回路CTにおいて、電気信号に対するデータ処理(演算処理)が行われる。処理後のデータは、例えば外部の制御機器に出力され、半導体チップSC1の状態を監視するためのデータとして利用可能である。あるいは、処理後のデータに基づいて、制御回路CTからゲート駆動回路GC(
図1参照)に出力される制御信号を変更する、所謂フィードバック制御を行うこともできる。このように、半導体チップSC1の温度などの測定データを電気信号として出力することにより、インバータ回路PWCの動作を効率化することができる。すなわち、インバータ回路PWCの性能を向上させることができる。
【0036】
また、ゲート電極GPおよび複数の信号電極DTPのそれぞれは、信号伝送用の電極である。このため、エミッタ電極EPと比較して、流れる電流の値が小さい。したがって、電極の露出面積は、エミッタ電極EPの露出面積より小さい。
【0037】
また、
図2に示すように半導体チップSC1の表面は、平面視において四辺を有している。
図2に示す例では、半導体チップSC1は、平面視において、X方向に沿って延びる辺(長辺)SC1e1、辺SC1e1の反対側に位置する辺(長辺)SC1e2、X方向に交差(
図2では直交)するY方向に沿って延びる辺(短辺)SC1e3、および辺SC1e3の反対側に位置する辺(短辺)SC1e4を有する。また、辺SC1e1および辺SC1e2は、辺SC1e3および辺SC1e4と比較して相対的に長い。また、半導体チップSC1の表面SCtにおいて露出する複数の電極のうち、複数の信号電極DTPおよびゲート電極GPのそれぞれは、同じ辺(
図2に示す例では辺SC1e3)に沿って配列されている。後述するように、ゲート電極GPおよび複数の信号電極DTPのそれぞれは、ワイヤを介して接続される。ゲート電極GPおよび複数の信号電極DTPのそれぞれが同じ辺に配列されている場合、各電極に接続される信号伝送経路のレイアウトを単純化できるので、各経路の等長化の設計が容易になる。
【0038】
また、半導体チップSC1が備えるトランジスタQ1は、例えば、
図4に示すような構造を持っている。半導体チップSC1の裏面SCbに形成されたコレクタ電極CP上には、p
+型半導体領域PR1が形成されている。p
+型半導体領域PR1上にはn
+型半導体領域NR1が形成され、このn
+型半導体領域NR1上にn
−型半導体領域NR2が形成されている。そして、n
−型半導体領域NR2上にはp型半導体領域PR2が形成され、このp型半導体領域PR2を貫通し、n
−型半導体領域NR2に達するトレンチTRが形成されている。さらに、トレンチTRに整合してエミッタ領域となるn
+型半導体領域ERが形成されている。トレンチTRの内部には、例えば、酸化シリコン膜よりなるゲート絶縁膜GOXが形成され、このゲート絶縁膜GOXを介してゲート電極GEが形成されている。このゲート電極GEは、例えば、ポリシリコン膜から形成され、トレンチTRを埋め込むように形成されている。
【0039】
このように構成されたトランジスタQ1において、ゲート電極GEは、
図2に示すゲート電極GPに接続されている。同様に、エミッタ領域となるn
+型半導体領域ERは、エミッタ電極EPと電気的に接続されている。コレクタ領域となるp
+型半導体領域PR1は、半導体チップSC1の裏面SCbに形成されているコレクタ電極CPと電気的に接続されている。トランジスタQ1は、パワーMOSFETの高速スイッチング特性および電圧駆動特性と、バイポーラトランジスタの低オン電圧特性を兼ね備えている。
【0040】
なお、n
+型半導体領域NR1は、バッファ層と呼ばれる。このn
+型半導体領域NR1は、トランジスタQ1がターンオフしているときに、p型半導体領域PR2からn
−型半導体領域NR2内に成長する空乏層が、n
−型半導体領域NR2の下層に形成されているp
+型半導体領域PR1に接触してしまうパンチスルー現象を防止するために設けられている。また、p
+型半導体領域PR1からn
−型半導体領域NR2へのホール注入量の制限などの目的のために、n
+型半導体領域NR1が設けられている。
【0041】
また、トランジスタQ1のゲート電極GEは、ゲート駆動回路GC(
図1参照)に接続されている。このとき、ゲート駆動回路GCからの信号がゲート電極GPを介してトランジスタQ1のゲート電極GEに印加されることにより、ゲート駆動回路GCからトランジスタQ1のスイッチング動作を制御することができるようになっている。
【0042】
次に、
図1に示すダイオードFWDが形成された半導体チップについて説明する。
図5は、
図1に示すダイオードが形成された半導体チップの表面側の形状を示す平面図である。
図6は、
図5に示す半導体チップの裏面を示す平面図である。また、
図7は、
図5および
図6に示す半導体チップが有するダイオードの構造例を示す断面図である。
【0043】
図5および
図6に示すように、本実施の形態における半導体チップSC2は、表面(面、上面、主面)SCt(
図5参照)、および表面SCtの反対側の裏面(面、下面、主面)SCb(
図6参照)を有している。半導体チップSC2の表面SCtおよび裏面SCbは、それぞれ四角形である。表面SCtの面積と裏面SCbの面積とは、例えば等しい。
【0044】
また、
図5に示すように半導体チップSC2の表面は、平面視において四辺を有している。
図2に示す例では、半導体チップSC2は、平面視において、X方向に沿って延びる辺(長辺)SC2e1、辺SC2e1の反対側に位置する辺(長辺)SC2e2、X方向に交差(
図5では直交)するY方向に沿って延びる辺(短辺)SC2e3、および辺SC2e3の反対側に位置する辺(短辺)SC2e4を有する。また、辺SC2e1および辺SC2e2は、辺SC2e3および辺SC2e4と比較して相対的に長い。
【0045】
また、
図2と
図5を比較して判るように、半導体チップSC1(
図2参照)の表面SCtの面積は、半導体チップSC2(
図5参照)の表面SCtの面積より大きい。
【0046】
また、
図5に示すように、半導体チップSC2は、表面SCtに形成されたアノード電極(アノード電極パッド、表面電極)ADPを有している。また、
図6に示すように、半導体チップSC2は、裏面SCbに形成されたカソード電極(カソード電極パッド、裏面電極)CDPを有している。半導体チップSC2の裏面SCb全体にわたって、カソード電極CDPが形成されている。
【0047】
また、半導体チップSC2が備えるダイオードFWDは、例えば、
図7に示すような構造を持っている。
図7に示すように、半導体チップSC2の裏面SCbに形成されたカソード電極CDP上には、n
+型半導体領域NR3が形成されている。そして、n
+型半導体領域NR3上にn
−型半導体領域NR4が形成されており、n
−型半導体領域NR4上に、互いに離間したp型半導体領域PR4が形成されている。p型半導体領域PR4の間には、p
−型半導体領域PR3が形成されている。p型半導体領域PR3とp
−型半導体領域PR4上には、アノード電極ADPが形成されている。アノード電極ADPは、例えば、アルミニウム−シリコンから構成されている。
【0048】
このように構成されたダイオードFWDによれば、アノード電極ADPに正電圧を印加し、カソード電極CDPに負電圧を印加すると、n
−型半導体領域NR4とp型半導体領域PR3の間のpn接合が順バイアスされ電流が流れる。一方、アノード電極ADPに負電圧を印加し、カソード電極CDPに正電圧を印加すると、n
−型半導体領域NR4とp型半導体領域PR3の間のpn接合が逆バイアスされ電流が流れない。このようにして、整流機能を有するダイオードFWDを動作させることができる。
【0049】
<駆動回路の構成>
次に、
図1に示すゲート駆動回路GCの構成について説明する。
図8は、ゲート駆動回路の回路ブロック構成を示す図である。
図8では、モータMTを駆動するインバータ回路PWCの3相のうちの1相を例に挙げて、この1相を制御するゲート駆動回路GCの構成について説明する。
図8において、高圧電源と電気的に接続される端子VCCと、例えば低圧電源と電気的に接続される端子COMとの間に、例えば、インバータ回路PWCの1相分を構成するハイサイドトランジスタHQ1とロウサイドトランジスタLQ1とが直列接続されている。そして、ハイサイドトランジスタHQ1とロウサイドトランジスタLQ1との間の中間ノードが端子Vsを介してモータMTと電気的に接続されている。
【0050】
ゲート駆動回路GCは、ハイサイドトランジスタ(ハイサイドIGBT)HQ1のオン/オフ動作とロウサイドトランジスタ(ロウサイドIGBT)LQ1のオン/オフ動作を制御するように構成されている。例えば、ゲート駆動回路GCは、ハイサイドトランジスタHQ1のゲート電極に印加するゲート電圧を制御することにより、ハイサイドトランジスタHQ1のオン/オフ動作を実現し、かつ、ロウサイドトランジスタLQ1のゲート電極に印加するゲート電圧を制御することにより、ロウサイドトランジスタLQ1のオン/オフ動作を実現する。
【0051】
図8に示すゲート駆動回路GCは、例えば低圧電源(例えば15ボルト)と電気的に接続される端子VDLおよび基準電位(例えば接地電位などの固定電位)と電気的に接続される端子VSSに接続されている。ゲート駆動回路GCは、制御回路CTから入力される入力信号を処理する入力信号処理回路ISCと、レベルシフト回路LSCと、ロウサイド駆動回路DCLと、ハイサイド駆動回路DCHとを有している。
図8に模式的に示すように、制御回路CTは、ハイサイド駆動回路DCHの動作を制御する信号SGHを、制御信号線THSLを介して伝送する。また、制御回路CTは、ロウサイド駆動回路DCLの動作を制御する信号SGLを、制御信号線TLSLを介して伝送する。
【0052】
ロウサイド駆動回路DCLは、入力信号処理回路ISCから出力される処理信号に基づいて、ロウサイドトランジスタLQ1のゲート電極に印加するゲート電圧を制御する。例えば、ロウサイド駆動回路DCLは、端子VSSから基準電位を入力し、この基準電位に基づいて生成されたゲート電圧をロウサイドトランジスタLQ1のゲート電極に供給する。ここで、ゲート電極に供給されるゲート電圧が、基準電位に対してしきい値電圧以上の場合、ロウサイドトランジスタLQ1はオンする。一方、ゲート電極に供給されるゲート電圧が、基準電位に対して、しきい値電圧未満の場合、ロウサイドトランジスタLQ1はオフする。このようにして、ロウサイドトランジスタLQ1のオン/オフ動作がロウサイド駆動回路DCLによって制御される。
【0053】
一方、ハイサイド駆動回路DCHは、入力信号処理回路ISCの処理信号をレベルシフト回路LSCに入力した後、このレベルシフト回路LSCからの出力信号に基づいて、ハイサイドトランジスタHQ1のゲート電極に印加するゲート電圧を制御する。例えば、ハイサイド駆動回路DCHは、負荷であるモータMTに接続された端子Vsから基準となる基準電位を入力する。ハイサイドトランジスタHQ1では、例えばハイサイドトランジスタHQ1のエミッタ電位を基準電位に使用する。このエミッタ電位は、
図2に示す半導体チップSC1のエミッタ信号電極EDPから出力され、エミッタ線ELHを介してハイサイド駆動回路DCHに供給される。ハイサイドトランジスタHQ1のエミッタ電位は、端子COMに供給される電位と、端子VCCに供給される電位の間で変動する。例えば、ハイサイドトランジスタHQ1がオンしている場合には、ハイサイドトランジスタHQ1のエミッタ電位は、端子VCCに供給される電源電位と同電位となる。この場合、ハイサイドトランジスタHQ1をオンさせるためには、電源電位を基準としてゲート電圧を生成する必要があることを意味する。このため、ハイサイド駆動回路DCHでは、ハイサイドトランジスタHQ1のエミッタ電位を端子Vsから入力して、この端子Vsから入力した電位を基準にして、ハイサイドトランジスタHQ1のゲート電極に印加するゲート電圧を生成している。端子Vsから入力する電位は、電源電位まで変動することになることから、この端子Vsから入力する電位を基準として生成されるハイサイドトランジスタHQ1のゲート電圧は、電源電位よりも高い電位が必要とされる。ハイサイド駆動回路DCHでは、例えば、端子VFBをインバータ回路PWCの外部に位置する低圧電源LPS(例えば15ボルト)と接続し、この端子VFBから入力される電位を利用して、電源電位よりも高いゲート電圧を生成している。このゲート電圧は、ハイサイド駆動回路DCHからハイサイドトランジスタHQ1のゲート電極に供給される。以上のようにして、ゲート電極に供給されるゲート電圧が、基準電位に対してしきい値電圧以上の場合、ハイサイドトランジスタHQ1はオンする一方、ゲート電極に供給されるゲート電圧が、基準電位に対してしきい値電圧未満の場合、ハイサイドトランジスタHQ1はオフする。このようにして、ハイサイドトランジスタHQ1のオン/オフ動作がハイサイド駆動回路DCHによって制御される。
【0054】
ところで、制御回路CTは、端子VDLよりもさらに低い電源電位(例えば1.5ボルトや3ボルト程度)に接続される端子VDSに接続されている。この端子VDSから供給される電源電位は、制御用のデジタル信号の生成に利用される。この制御用のデジタル信号には、
図8に模式的に示す信号SGH、SGLも含まれる。
【0055】
一方、ハイサイドトランジスタHQ1のゲート電極には、ゲート線GLHを介してゲート駆動信号であるゲート信号GSHが伝送される。また、ロウサイドトランジスタLQ1のゲート電極には、ゲート線GLLを介してゲート駆動信号であるゲート信号GSLが伝送される。このゲート信号GSH、GSLの電位差(電圧)は、例えば15ボルトであって、信号SGH、SGLの電位差(電圧)より大きい。また、ゲート線GLH、GLLに流れる電流は、制御信号線THSL、TLSLに流れる電流より100倍以上大きい。例えば、制御信号線THSL、TLSLに流れる電流は、μA(マイクロアンペア)オーダーであるが、ゲート線GLH、GLLに流れる電流は、mA(ミリアンペア)オーダーである。このため、
図8に模式的に示すようにゲート信号GSH、GSLの信号波形の振幅は、信号SGH、SGLの信号波形の振幅より大きい。
【0056】
このように、信号波形の振幅が大きいゲート信号GSH、GSLの場合、信号波形の振幅が小さい信号SGH、SGLと比較して、電位レベルが立ち上がる時間の制御が難しくなる。しかし、パワートランジスタの動作を安定化させるためには、複数のゲート信号のそれぞれにおいて、電位レベルがしきい値を超えるまでの立ち上がり時間、および電位レベルがしきい値を下回るまでの立ち下り時間を揃えることが重要である。このため、ゲート信号GSH、GSLはデジタル信号であるが、立ち上がり時間および立ち下り時間を制御する観点からは、アナログ信号のような取扱いをすることが好ましい。すなわち、ゲート信号GSHとゲート信号GSLの立ち上がり時間、立ち下り時間を揃える観点からは、ゲート線GLHの経路距離とゲート線GLLの経路距離を等長化することが好ましい。また、
図1を用いて説明したように、本実施の形態のインバータ回路PWCは、3相を持つので、
図8に示すゲート線GLHおよびゲート線GLLは、それぞれ3本ずつ設けられている。この場合、6本のゲート線のそれぞれの経路距離を等長化することが好ましい。
【0057】
詳細は後述するが、本実施の形態の場合、
図1に示す出力部PW1と制御部PW2とが互いに異なる基板に形成されるので、6本のゲート線のそれぞれの経路距離が長くなる。したがって、6本のゲート線のそれぞれの経路距離を等長化することが、インバータ回路PWCの性能向上にとって、重要である。
【0058】
<電子装置の構造>
次に、
図1に示すインバータ回路PWCを構成する電子装置EA1の構成例について説明する。
図9は、
図1に示すインバータ回路を構成する電子装置の外観を示す斜視図である。なお、
図10では、
図11に示すベース基板SUBを取り除いた状態で、基板SU1の裏面側を示している。
図11は、
図10のA−A線に沿った断面図である。
図11では、半導体チップに接続されるワイヤの一部を点線で示している。また、
図11では、配線基板SU2に搭載されるドライバ部品PDRに接続される複数の電子部品から成る電子部品群を、一つの電子部品として模式的に示している。また、
図12は、
図11に示す下段側の基板の上面側のレイアウトを示す平面図である。
【0059】
また、
図13は、
図11に示す上段側の基板の上面側のレイアウトを示す平面図である。
図13では、配線基板SU2に形成された配線の例として、配線WLGH、WLGL、WLEHを示している。配線WLGH、WLGL、WLEHのそれぞれは、
図11に示す配線基板SU2の上面S2tと下面S2bとの間に形成されているので、
図13ではこれらの配線を二点鎖線で示している。
【0060】
図1に示すインバータ回路PWCを構成する本実施の形態の電子装置EA1は、
図9に示すように、上面側が筐体(ケース、ハウジング)HSに覆われている。電子装置EA1は、互いに電気的に接続された複数の半導体チップSC1、SC2(
図12参照)が筐体HS内に収容され、外部端子である複数のリード(リード部材、端子)LDが筐体HSから露出する、ケースモジュールである。
【0061】
筐体HSは、複数の半導体部品(半導体チップSC1、SC2(
図12参照))を覆う蓋部(蓋材、キャップ)HSTと、蓋部HSTを支持する支持部(フレーム)HSFと、を有する。筐体HSを構成する支持部HSFおよび蓋部HSTのそれぞれは、樹脂製の部材であって、例えば、ポリエチレンテレフタラート(以下、PETと記載する)を主要な原料としている。なお、本実施の形態の場合、蓋部HSTと支持部HSFとは互いに独立し、分離可能な部材である。ただし、蓋部HSTと支持部HSFとが互いに分離不可能であっても良い。例えば、蓋部HSTと支持部HSFとが接着材を介して接着固定されていても良い。あるいは、蓋部HSTと支持部HSFとが一体に形成されていても良い。
【0062】
また、
図10に示すように、支持部HSFは基板(出力基板)SU1の周囲を連続的に囲んでいる。
図11に示すように蓋部HSTは基板SU1の上面(面、表面、主面)S1t全体を覆っている。支持部HSFの内側には、空間が設けられ、支持部HSF、蓋部HST、およびベース基板SUBに囲まれた空間(収容部PKT)内に、基板SU1上に搭載された、複数の半導体チップSC1、SC2が収容されている。基板SU1の上面S1tの周縁部は、接着材(グルー)BD1を介して筐体HSと接着固定されている。
【0063】
また、筐体HSの蓋部HSTからは、複数のリードLDが突出している。筐体HSの蓋部HSTには複数の貫通孔(図示は省略)が形成され、複数のリードLDは複数の貫通孔にそれぞれ挿入されている。複数のリードLDのそれぞれは、電子装置EA1の外部端子であって、
図12に示す基板SU1上に搭載された複数の半導体チップSC1や
図13に示す配線基板(制御基板)SU2上に搭載された複数のドライバ部品(半導体装置、半導体部品、半導体パッケージ)PDR、あるいはコントローラ部品(半導体装置、半導体部品、半導体パッケージ)PCTと電気的に接続されている。
【0064】
また、
図10に示すように、筐体HSの収容部PKTは、平面視において、X方向に沿って延びる辺(長辺)HSe1、辺HSe1の反対側に位置する辺(長辺)HSe2、X方向に交差(
図10では直交)するY方向に沿って延びる辺(短辺)HSe3、および辺HSe3の反対側に位置する辺(短辺)HSe4を有する。また、辺HSe1および辺HSe2は、辺HSe3および辺HSe4と比較して相対的に長い。なお、
図10に示す例では、筐体HSの収容部PKTは、平面視において、四角形(
図10では長方形)を成す。筐体HSは外周縁に四つの辺を有している。詳しくは、平面視において、筐体HSの外縁は、X方向に沿って延びる辺(長辺)HSe5、辺HSe5の反対側に位置する辺(長辺)HSe6、X方向に交差(
図10では直交)するY方向に沿って延びる辺(短辺)HSe7、および辺HSe7の反対側に位置する辺(短辺)HSe8を有する。また、辺HSe5および辺HSe6は、辺HSe7および辺HSe8と比較して相対的に長い。収容部PKTの辺HSe1と外縁の辺HSe5は、筐体HSの一部分を挟んで互いに反対側に位置している。同様に、収容部PKTの辺HSe2、HSe3、HSe4と外縁の辺HSe6、HSe7、HSe8は、筐体HSの一部分を挟んで互いに反対側に位置している。
【0065】
また、基板SU1は、平面視において、X方向に沿って延びる(延在する)辺(長辺、基板辺)S1e1、辺S1e1の反対側に位置する辺(長辺、基板辺)S1e2、X方向に交差(
図10では直交)するY方向に沿って延びる(延在する)辺(短辺、基板辺)S1e3、および辺S1e3の反対側に位置する辺(短辺、基板辺)S1e4を有する。また、辺S1e1および辺S1e2は、辺S1e3および辺S1e4と比較して相対的に長い。
【0066】
図10に示す例では、基板SU1は、平面視において、四角形(詳しくは長方形)を成す。また、
図10に示す例では、基板SU1の辺S1e1は、筐体HSの収容部PKTの辺HSe1と対向する。基板SU1の辺S1e2は、筐体HSの収容部PKTの辺HSe2と対向する。基板SU1の辺S1e3は、筐体HSの収容部PKTの辺HSe3と対向する。基板SU1の辺S1e4は、筐体HSの収容部PKTの辺HSe4と対向する。
【0067】
また、
図9および
図10に示すように、筐体HSは、電子装置EA1を例えばヒートシンクや支持部材などに固定するための取り付け部分である、フランジ部(部分)FLGを有している。
図10に示すように、フランジ部FLGは、平面視における筐体HSの長手方向であるX方向において、支持部HSFの両端に設けられている。言い換えれば、X方向において、二つのフランジ部FLGは、基板SU1が収容される収容部PKTを介して互いに反対側に配置されている。また、複数のフランジ部FLGの中央には、それぞれ貫通孔(孔、ネジ穴、ネジ挿入孔)THHが形成されている。貫通孔THHは、筐体HSのフランジ部FLGを厚さ方向に貫通する開口部であって、電子装置EA1を例えばヒートシンクや支持部材などに固定する際には、貫通孔THHにネジ(図示は省略)を挿入することにより、電子装置EA1をネジ止め固定することができる。
【0068】
図10に示す例では、辺HSe3の中心と辺HSe4の中心を結ぶように長手方向であるX方向に延びる仮想線(中心線)VL1に沿って、二個の貫通孔THHが形成されている。
図10に示す例では、仮想線VL1は、X方向において、一方の側に配置された貫通孔THHの中心点と、他方の側に配置された貫通孔THHの中心点を結ぶ(通過する)直線である。また、
図10に示す例では、基板SU1の下面(面、裏面、主面)S1b側から視た平面視において、仮想線VL1は、基板SU1の下面S1bを通る(通過する)。ここで、基板SU1の下面S1bの中心点は、
図12に示す基板SU1の上面(面、表面、主面)S1tの中心点と同様に定義できる。すなわち、
図12に示す基板SU1の下面S1b(
図10参照)および上面S1tの中心点は、基板SU1の辺(長辺、基板辺)S1e1の中点と辺(長辺、基板辺)S1e2の中点とを結ぶ線(図示しない仮想線)と、辺(短辺、基板辺)S1e3の中点と辺(短辺、基板辺)S1e4の中点とを結ぶ線(図示しない仮想線)と、の交点である。
【0069】
次に、電子装置EA1の筐体HSの収容部PKTに収容される基板SU1、SU2および基板SU1、SU2に固定される各部材について説明する。
図11に示すように、電子装置EA1は、筐体HSの収容部PKTに収容される、基板SU1および配線基板(基板)SU2を有している。基板SU1は、インバータ回路PWC(
図1参照)の出力部PW1(
図1参照)に相当する基板であって、基板SU1には、出力部PW1を構成する複数の半導体部品が搭載されている。
図12に示すように、基板SU1には、スイッチング素子として動作する、6個の半導体チップSC1、およびフリーホイールダイオードとして動作する6個の半導体チップSC2が搭載されている。また、
図11に示す基板SU2は、インバータ回路PWCの制御部PW2(
図1参照)に相当する基板であって、基板SU2には、制御部PW2を構成する複数の電子部品が搭載されている。
図13に示すように、配線基板SU2には、ゲート駆動回路GC(
図1参照)を備えた3個のドライバ部品PDRが搭載されている。また、配線基板SU2には、制御回路CT(
図1参照)を備えた1個のコントローラ部品PCTが搭載されている。
【0070】
図11および
図12に示すように、電子装置EA1は、基板SU1と、基板SU1の上面S1tに形成された複数の金属パターン(金属から成るパターン)MPと、複数の金属パターンMPのうちの一部に搭載される複数の半導体チップSC1と、を有する。
【0071】
図11に示すように基板SU1は、複数の半導体チップSC1が搭載されるチップ搭載面である上面(表面、主面、面)S1tと、上面S1tの反対側に位置する下面(裏面、主面、面)S1bを有する。基板SU1は、例えばアルミナ(酸化アルミニウム:Al
2O
3)などのセラミック材料から成るセラミック基板である。
【0072】
また、
図11に示すように、基板SU1の上面S1tおよび下面S1bには、複数の金属パターンMPが接合されている。これら複数の金属パターンMPは、例えば、銅(Cu)膜の表面にニッケル(Ni)膜が積層された積層膜であって、基板SU1の上面S1tまたは下面S1bに銅膜が直接的に接合されている。本実施の形態のように、銅から成る金属パターンMP上に直接的に半導体チップSC1が搭載される基板SU1は、DBC(Direct Bonding Cupper)基板と呼ばれる場合もある。
【0073】
基板SU1の下面S1b側に形成された金属パターンMPBは電子装置EA1の放熱経路を構成する金属膜であって、基板SU1の下面S1bの大部分を覆うように一様に形成されている。セラミック基板である基板SU1の下面S1bに金属膜を形成することで、電子装置EA1の放熱性を向上させることができる。また、基板SU1の上面S1tに形成された複数の金属パターンMPのそれぞれは、インバータ回路PWC(
図1参照)の導電経路の一部を構成し、互いに分離されている(離間している)。
【0074】
複数の金属パターンMPには、ハイサイド側の電位が供給される金属パターンMPHが含まれている。また、複数の金属パターンMPには、ロウサイド側の電位が供給される金属パターンMPLが含まれている。また、複数の金属パターンMPには、トランジスタQ1(
図1参照)のスイッチング動作に応じて変化する電位が供給される金属パターンMPU、MPV、MPWが含まれている。
【0075】
金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれには、120度の位相差を持つようにそれぞれ異なる電位が供給される。このため、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれは、互いに分離されている(離間している)。また、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれは、出力用のリードLD(端子TU、TV、およびTW)が接続された金属パターンMPTと複数のワイヤBWを介して接続されている。このため、
図1に示すU相、V相、およびW相の出力用の伝送経路には、
図12に示すワイヤBWが含まれる。
【0076】
図12に示す例では、金属パターンMPHは、複数個(
図12では2個)の金属パターンMPHがワイヤBW(BWP)を介して互いに電気的にされた構造になっている。同様に、金属パターンMPLは、複数個(
図12では2個)の金属パターンMPLがワイヤBW(BWP)を介して互いに電気的にされた構造になっている。金属パターンMPHには、U相、V相、W相(
図1参照)のそれぞれにおいて、同じ電位(ハイサイド側の電位)が供給される。また、金属パターンMPLには、U相、V相、W相のそれぞれにおいて、同じ電位(ロウサイド側の電位)が供給される。したがって、本実施の形態に対する変形例としては、金属パターンMPH、MPLのそれぞれが、一個の金属パターンMPにより構成されていても良い。この場合、複数の金属パターンMPH、MPLをワイヤBW(BWP)で接続しなくて良いので、部品点数を削減できる。
【0077】
一方、本実施の形態のように、金属パターンMPH、MPLのそれぞれが、複数個に分割されている場合、X方向において、分割された金属パターンMPH、MPLのそれぞれの延在距離を、金属パターンMPH、MPLのそれぞれが分割されない場合に対して、低減できる。このため、金属パターンMPと基材であるセラミック基板との線膨張係数差に起因して発生する応力を低減できる。
【0078】
また、複数の金属パターンMPのうちの一部には、複数の半導体チップSC1および半導体チップSC2が搭載されている。複数の半導体チップSC1は、
図1を用いて説明したように、IGBTであるトランジスタQ1が形成されたスイッチ素子であって、金属パターンMPH、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれに搭載されている。
【0079】
半導体チップSC1のうち、金属パターンMPHに搭載されているものは、ハイサイド側のスイッチに相当する半導体チップ(半導体部品)SCHである。金属パターンMPHには、半導体チップSCHと半導体チップSC2のセットが、3組搭載されている。複数の半導体チップSC2のそれぞれは、ダイオードFWD(
図1参照)を備えている。平面視において、3個の半導体チップSCHは、X方向に沿って(言い換えれば、筐体HSの収容部PKT(
図10参照)の長辺である辺HSe1に沿って)並んでいる。また、複数の半導体チップSCHのそれぞれと対を成す複数の半導体チップSC2のそれぞれは、Y方向に沿って、半導体チップSCHと並ぶように搭載されている。
図12に示す例では、半導体チップSCHは、半導体チップSC2より辺HSe1側に配置されている。言い換えれば、半導体チップSCHは、辺HSe1と半導体チップSC2の間に搭載されている。辺HSe1側には、半導体チップSCHと電気的に接続される複数のリード(リード部材)LDが配置されている。つまり、半導体チップSCHは半導体チップSC2と比較して、リードLDまでの距離が短い。
【0080】
また、半導体チップSC1のうち、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWに搭載されているものは、ロウサイド側に相当する半導体チップSCLである。複数の半導体チップSC2のそれぞれは、複数の半導体チップSCLのそれぞれとセットになるように、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWに搭載されている。平面視において、3個の半導体チップSCLは、X方向に沿って(言い換えれば、筐体HSの収容部PKT(
図10参照)の長辺である辺HSe2に沿って)並んでいる。また、複数の半導体チップSCLのそれぞれと対を成す複数の半導体チップSC2のそれぞれは、Y方向に沿って、半導体チップSCLと並ぶように搭載されている。
図12に示す例では、半導体チップSCLは、半導体チップSC2より辺HSe2側に配置されている。言い換えれば、半導体チップSCLは、辺HSe2と半導体チップSC2の間に搭載されている。辺HSe2側には、半導体チップSCLと電気的に接続される複数のリード(リード部材)LDが配置されている。つまり、半導体チップSCLは半導体チップSC2と比較して、リードLDまでの距離が短い。
【0081】
図14に示すように、本実施の形態では、半導体チップSC1は、半導体チップSC1の裏面SCbが金属パターンMPの上面(表面)MPtと対向するように、導電性接続材(ダイボンド材、導電性部材、導電性接着材、接続部材、接合材)SD1を介して金属パターンMP上に接着固定されている。
図14は、
図11に示す下段側の基板において、半導体チップが金属パターン上に搭載された部分の詳細を示す要部拡大断面図である。
図14に示す導電性接続材SD1は、例えば、半田、あるいは、複数(多数)の導電性粒子(例えば銀粒子)を樹脂中に含有する導電性樹脂などである。
図14に示すように、半導体チップSC1の裏面SCbには、コレクタ電極CPが形成されている。コレクタ電極CPは、導電性接続材SD1を介して金属パターンMPと電気的に接続されている。
【0082】
詳しくは、
図12に示すように複数の半導体チップSC1のうち、ハイサイド用の半導体チップSCHのそれぞれのコレクタ電極CP(
図14参照)は、金属パターンMPHに接続されている。金属パターンMPHは、複数のワイヤBWを介して、ハイサイド用の電位が供給されるハイサイド用の端子HTに相当するリードLDに接続されている。
【0083】
また、
図14に示すように半導体チップSC2は、半導体チップSC2の裏面SCbが金属パターンMPの上面(表面)MPtと対向するように、導電性接続材SD1を介して金属パターンMP上に固定されている。半導体チップSC2の裏面SCbには、カソード電極CDPが形成されており、カソード電極CDPは、導電性接続材SD1を介して金属パターンMPと電気的に接続されている。
【0084】
また、上記した複数の金属パターンMPのうち、複数の金属パターンMPTにはそれぞれ一つのリードLDが接続されている。また、複数の金属パターンMPのうち、金属パターンMPHおよび金属パターンMPLには、それぞれ複数のリードLDが形成されている。また、金属パターンMPHおよび金属パターンMPLには、基板SU1の上面S1tが有する四辺のうち、短辺である辺S1e3および辺S1e4に沿って、それぞれ一つずつリードLDが搭載されている。
【0085】
また、上記した複数の金属パターンMPのうち、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれには、リードLDが搭載されていない。言い換えれば、複数の金属パターンMPのうち、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれには、リードLDは直接的には接続されていない。金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれは、複数のワイヤBWを介して金属パターンMPTと電気的に接続されている。つまり、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれは、複数のワイヤBWおよび金属パターンMPTを介してリードLDと電気的に接続されている。
【0086】
また、
図12に示すように、半導体チップSC1のエミッタ電極EP(
図14参照)には、複数のワイヤBWが接続されている。詳しくは、ハイサイド用の半導体チップSCHのエミッタ電極EPは複数のワイヤBWを介して金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのうちのいずれかに接続されている。言い換えれば、ハイサイド用の半導体チップSCHのエミッタ電極EPは、U相の端子TU、V相の端子TV、またはW相の端子TWのうちのいずれかに接続されている。
【0087】
また、ハイサイド用の半導体チップSCHのエミッタ電極EPに接続される複数のワイヤBWのそれぞれは、一方の端部が、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのうちのいずれかに接続され、他方の端部は、端子TU,TV、またはTWに相当するリードLDに接続されている。言い換えれば、金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのそれぞれは、複数のワイヤBWを介して端子TU,TV、またはTWに相当するリードLDに接続されている。
【0088】
また、半導体チップSC1のエミッタ電極EPに接続される複数のワイヤBWのそれぞれは、半導体チップSC2のアノード電極ADP(
図14参照)にも接続されている。言い換えれば、半導体チップSC2のアノード電極ADPのそれぞれは、複数のワイヤBWを介して金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのうちのいずれかに接続されている。
【0089】
また、ロウサイド用の半導体チップSCLのエミッタ電極EP(
図14参照)は複数のワイヤBWを介して金属パターンMPLに接続されている。金属パターンMPLは、複数のワイヤBWを介して、ロウサイド用の電位が供給されるロウサイド用の端子LTに相当するリードLDに接続されている。言い換えれば、ロウサイド用の半導体チップSCLのエミッタ電極EPは、ロウサイド用の端子LTと電気的に接続されている。また、半導体チップSC1のエミッタ電極EPに接続される複数のワイヤBWのそれぞれは、半導体チップSC2のアノード電極ADP(
図14参照)にも接続されている。言い換えれば、半導体チップSC2のアノード電極ADPのそれぞれは、複数のワイヤBWを介してロウサイド用の端子LTと電気的に接続されている。
【0090】
また、半導体チップSC1のゲート電極GP(
図2参照)には、一本のワイヤBWが接続されている。詳しくは、
図12に示すように、ハイサイド用の半導体チップSCHおよびロウサイド用の半導体チップSCLのそれぞれが有するゲート電極GP(
図2参照)のそれぞれは、ワイヤBWを介して金属パターンMPTと電気的に接続されている。金属パターンMPTは、半導体チップSC1の信号伝送用の電極パッドと、複数のリードLDのうちの信号伝送用のリードLDを電気的に接続する経路中に介在する配線パターンである。金属パターンMPTの両端部にはそれぞれ異なるワイヤBWSが接続されている。金属パターンMPTの一方の端部は、ワイヤBWSを介して半導体チップSC1のゲート電極GPと電気的に接続されている。また、金属パターンMPTの他方の端部は、ワイヤBWSを介してリードLDに接続されている。
図12では、信号伝送用のリードLDの例として、半導体チップSCHおよび半導体チップSCLが有するトランジスタQ1(
図1参照)のスイッチング動作を駆動する駆動信号(ゲート信号)が伝送される、リードLGH、LGLを示している。
図12に示すリードLGHは、
図8に示すゲート信号GSHを伝送するゲート線GLHの一部分を構成する。また、
図12に示すリードLGLは、
図8に示すゲート信号GSLを伝送するゲート線GLLの一部分を構成する。
【0091】
また、
図12に示す複数のワイヤBWは、金属ワイヤであって、本実施の形態では例えばアルミニウムから成る。ただし、ワイヤBWの材料には種々の変形例があって、アルミニウムの他、金、あるいは銅を用いることもできる。また、
図12に示す例では、複数のワイヤBWのうち、相対的に大きい電流が流れるワイヤBWPは、相対的に小さい電流が流れるワイヤBWSより線径(延在方向に直交する方向の幅、太さ)が大きい。詳しくは、複数のリードLDのうち、端子HT、LT、TU、TV、およびTWに相当するリードLDのそれぞれには、相対的に太いワイヤBWPが接続されている。また、半導体チップSC1のエミッタ電極EP(
図14参照)には、複数のワイヤBWPが接続されている。さらに、互いに隣り合う金属パターンMPH同士、あるいは金属パターンMPL同士は、ワイヤBWPを介して電気的に接続されている。上記以外のワイヤBWは、主に信号伝送用の経路を構成し、相対的に線形が小さいワイヤBWSである。大きな電流を流れる経路に線径が大きいワイヤBWPを用いることにより、伝送経路の抵抗を低減できる。
【0092】
また、
図11に示すように、筐体HSの収容部PKTにおいて、基板SU1の上方には、配線基板SU2が配置されている。配線基板SU2は、基板SU1の上面S1tと対向する下面(裏面、主面、面)S2bと、下面S2bの反対側に位置する上面(表面、主面、面)S2tを有する。配線基板SU2には、半導体部品であるドライバ部品PDRを含む、複数の電子部品が搭載されている。
図15は、
図11に示す上段側の基板において、半導体パッケージおよび電子部品が搭載されている状態を示す要部拡大断面図である。なお、
図13に示すドライバ部品PDRとコントローラ部品PCTは、断面構造が同様なので、
図15に示す半導体パッケージは、ドライバ部品PDRまたはコントローラ部品PCTの断面図として記載している。
【0093】
本実施の形態の例では、配線基板SU2には、上面S2tおよび下面S2bにそれぞれ電子部品が搭載されている。このため、配線基板SU2の上面S2tおよび下面S2bのそれぞれには、電子部品が電気的に接続される複数のボンディングリード(端子)BL(
図15参照)が形成されている。例えば、
図15に示す例では、ドライバ部品PDRの半導体チップSC3と電気的に接続されるリードLD3は、導電性接続材SD2を介してボンディングリードBLと電気的に接続されている。また、コントローラ部品PCTの半導体チップSC4と電気的に接続されるリードLD4は、導電性接続材SD2を介してボンディングリードBLと電気的に接続されている。また、電子部品ECの電極ECEは、導電性接続材SD2を介してボンディングリードBLと電気的に接続されている。導電性接続材SD2は、
図14に示す導電性接続材SD1と同様に、例えば、半田、あるいは、複数(多数)の導電性粒子(例えば銀粒子)を樹脂中に含有する導電性樹脂などである。
【0094】
また、配線基板SU2は、配線基板SU2に搭載された電子部品に接続される複数の配線WLを有している。
図11に示す例では、配線基板SU2は、上面S2tと下面S2bとの間に複数の配線層を有し、各配線層に配線WLが形成されている。上面S2tと下面S2bの間に積層された複数の配線層は、層間導電路であるビア配線を介して互いに電気的に接続されている。このように、上面S2tと下面S2bの間に積層された複数の配線層を備える配線基板SU2の場合、上面S2tと下面S2bとを半導体部品を含む電子部品ECの実装スペースとして活用できる。例えば、電子装置EA1に各種回路を内蔵させる場合、回路を構成する電子部品ECの数の増大に伴って、配線基板SU2の実装面積、および各電子部品ECに接続される配線WLの配置スペースが必要になる。配線基板SU2の場合、複数の配線WLの大部分は、上面S2tと下面S2bの間に形成されるので、配線基板SU2の上面S2tの面積の増大を抑制できる。
【0095】
配線基板SU2が有する複数の配線WLは、電子部品EC同士、あるいは電子部品ECと
図11に示すリードLDとを電気的に接続している。配線WLとリードLDとの接続方法の詳細は、後述する。
【0096】
また、
図13に示すように配線基板SU2の上面S2tには、3個のドライバ部品PDRおよび1個のコントローラ部品PCTを含む、複数の電子部品ECが搭載されている。複数のドライバ部品PDRは、ゲート駆動回路GC(
図8参照)を備えた半導体部品である。本実施の形態の場合、ゲート駆動回路GCは、ドライバ部品PDRが有する半導体チップSC3(
図15参照)に形成されている。このゲート駆動回路GCは、リードLD3(
図15参照)を介して配線基板SU2のボンディングリードBL(
図15参照)と電気的に接続されている。また、本実施の形態の場合、制御回路CT(
図8参照)は、コントローラ部品PCTの半導体チップSC4(
図15参照)に形成されている。制御回路CTは、リードLD4を介して配線基板SU2のボンディングリードBLと電気的に接続されている。コントローラ部品PCTが有する複数のリードLD4の内の一部は、配線WLを介してドライバ部品PDRが有する複数のリードLD3のうちの一部に接続されている。また、コントローラ部品PCTが有する複数のリードLD4の内の他の一部は、配線WLを介して、
図9に示すように筐体HSから露出するリードLDに接続されている。また、複数のドライバ部品PDRのそれぞれが有する複数のリードLD3の内の一部は、配線WLを介して、
図9に示すように筐体HSから露出するリードLDに接続されている。
【0097】
図13では、ノイズフィルタやアンプなどの回路を構成する複数の電子部品から成る電子部品群が搭載された領域を、群毎に分けて四角形で模式的に示している。
図13において四角形で囲む電子部品群ECGのそれぞれには、複数の(多数の)電子部品ECが搭載されている。複数の電子部品ECには、例えば、コンデンサ部品、インダクタ部品、あるいは抵抗部品などが含まれる。これらの電子部品ECは、半田などの導電性接続材SD2(
図15参照)を介してボンディングリードBL(
図15参照)上に表面実装する、所謂、チップ部品である。
【0098】
図13に示すように、複数のドライバ部品PDRのそれぞれは、配線基板SU2の上面S2tにおいて、X方向に沿って並ぶように搭載されている。
図13に示す例では、複数のドライバ部品PDRのそれぞれは、辺HSe3の中心と辺HSe4の中心を結ぶように長手方向であるX方向に延びる仮想線VL1と重なっている。
【0099】
また、複数の(3個の)ドライバ部品PDRのそれぞれが有する封止体MRは、平面視において、筐体HSの収容部PKTの辺HSe1に沿って配置される辺MRe1、および辺MRe1の反対側の辺MRe2を有している。複数の(3個の)ドライバ部品PDRのそれぞれが有する複数のリードLD3(
図15参照)のうち、ハイサイドのスイッチング素子である半導体チップSCH(
図12参照)に接続されるリードLD3は、辺MRe1において封止体MRから露出している。また、ハイサイドのスイッチング素子である半導体チップSCHに接続されるリードLD3は、辺MRe1に沿って配列されている。一方、複数の(3個の)ドライバ部品PDRのそれぞれが有する複数のリードLD3のうち、ロウサイドのスイッチング素子である半導体チップSCL(
図12参照)に接続されるリードLD3は、辺MRe2において封止体MRから露出している。また、ロウサイドのスイッチング素子である半導体チップSCLに接続されるリードLD3は、辺MRe2に沿って配列されている。
【0100】
また、配線基板SU2が有する複数の配線WL(
図11参照)のうち、ハイサイドのスイッチング素子である半導体チップSCH(
図12参照)に接続される配線WLは、平面視において、ドライバ部品PDRから筐体HSの収容部PKTの辺HSe1の間に配置されている。例えば、
図13では、ドライバ部品PDRから筐体HSの収容部PKTの辺HSe1の間に配置される、配線WLGHおよび配線WLEHを示している。配線WLGHは、半導体チップSCHが有するハイサイドトランジスタHQ1(
図8参照)のゲート電極と、ドライバ部品PDRのハイサイド駆動回路DCH(
図8参照)とを電気的に接続する配線である。また、配線WLEHは、半導体チップSCHが有するハイサイドトランジスタHQ1のエミッタ電極と、ドライバ部品PDRのハイサイド駆動回路DCHとを電気的に接続する配線である。ハイサイド駆動回路DCHには、配線WLEHを介して、ハイサイドトランジスタHQ1のエミッタ電位が、ハイサイドのゲート電圧の基準電位として供給されている。
【0101】
また、配線基板SU2が有する複数の配線WL(
図11参照)のうち、ロウサイドのスイッチング素子である半導体チップSCL(
図12参照)に接続される配線WLは、平面視において、ドライバ部品PDRから筐体HSの収容部PKTの辺HSe2の間に配置されている。例えば、
図13では、ドライバ部品PDRから筐体HSの収容部PKTの辺HSe2の間に配置される、配線WLGLを示している。配線WLGLは、半導体チップSCLが有するロウサイドトランジスタLQ1(
図8参照)のゲート電極と、ドライバ部品PDRのロウサイド駆動回路DCL(
図8参照)とを電気的に接続する配線である。
【0102】
また、電子装置EA1は、複数のリードLDを有している。複数のリードLDは、基板SU1(
図12参照)に搭載される半導体部品と配線基板SU2に搭載される電子部品とを電気的に接続する伝送経路としての機能を備える。また、複数のリードLDは、電子装置EA1の外部端子としての機能を備える。
図11に示すように、複数のリードLDのそれぞれは、筐体HSの収容部PKTの内面に沿って、基板SU1の上面S1tの法線方向であるZ方向に延びている。
【0103】
また、
図12および
図13に示すように、複数のリードLDのそれぞれは、平面視において、筐体HSの収容部PKTの辺HSe1、HSe2、HSe3、およびHSe4のうちの何れかに沿って並ぶように配列されている。詳しくは、複数のリードLDのうち、半導体チップSCH(
図12参照)に接続されるリードLDは、辺HSe1に沿って配列されている。
図12および
図13に示す例では、半導体チップSCHのゲート電極GP(
図2参照)に接続されるリードLGH、および半導体チップSCHの信号電極DTP(
図2参照)に接続されるリードLEHは、辺HSe1に沿って配列されている。
【0104】
また、複数のリードLDのうち、半導体チップSCL(
図12参照)に接続されるリードLDは、辺HSe2に沿って配列されている。
図12および
図13に示す例では、半導体チップSCLのゲート電極GP(
図2参照)に接続されるリードLGLは、辺HSe2に沿って配列されている。
【0105】
また、複数のリードLDのうち、端子HTおよび端子LTに相当するリードLDは、辺HSe4に沿って配列されている。なお、
図12および
図13に示す例では、辺HSe3に沿って配列されるリードは、他の部材と電気的に分離されている。しかし、変形例としては、辺HSe3に沿って配列されるリードを例えば金属パターンMPHや金属パターンMPLと接続し、これらを端子HT、LTとして利用しても良い。
【0106】
また、複数のリードLDのうち、端子HT、LT、TU、TV、およびTWに相当するリードLDのそれぞれは、他のリードLD(例えばリードLGH、LGL)と比較して、リードの延在方向に対して直交する方向における断面積が相対的に大きい。これにより、大きな電流が流れる伝送経路の抵抗を低減できる。
【0107】
また、
図11に示すように、筐体HSと基板SU1との間の空間には、封止材(ゲル状絶縁材)MGが充填されている。複数の半導体チップSC1、SC2および複数のワイヤBWのそれぞれは、この封止材MGにより封止されている。複数の半導体チップSC1、SC2、複数のワイヤBWおよびリードLDの被封止部分は、封止材MGにより保護される。また、基板SU1上に搭載される電子部品のそれぞれは、
図1を用いて説明した出力部PW1を構成し、配線基板SU2に搭載された電子部品と比較して、大電流が流れる。本実施の形態のように、複数の半導体チップSC1、SC2および複数のワイヤBWのそれぞれが、封止材MGにより封止されている場合、各部品の絶縁耐圧を向上させることができる。
【0108】
なお、半導体チップを封止する方法としては、例えばエポキシ樹脂など、加熱することで硬化し、ある程度の強度が確保できる樹脂材料を用いる方法がある。例えば、
図13に示すドライバ部品PDRは、半導体チップSC3(
図11参照)が封止体MRにより封止された半導体パッケージである。この封止体MRは、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を硬化させた硬い樹脂である。封止材MGは、エポキシ樹脂よりも柔らかいゲル状の材料(高分子化合物)から成る。詳しくは、本実施の形態では、封止材MGは、シリコーンゲルである。シリコーンゲルは、シロキサン結合による主骨格を持つ高分子化合物である、シリコーン樹脂の一種である。シリコーン樹脂は、熱エネルギーを付与することにより硬化する、熱硬化性樹脂に分類されるが、硬化後の弾性が、例えば天然ゴムのように低弾性であるという特性を備えている。また、シリコーン樹脂のうち、シリコーンゲルは、硬化後にゲル状態になる樹脂であって、鎖状高分子の架橋構造の密度がシリコーンゴムと呼ばれるエラストマーより低い。このため、シリコーンゲルの硬化後の弾性は、シリコーンゴムの硬化後の弾性より低い。
図13に示すドライバ部品PDRやコントローラ部品PCTのような半導体パッケージの場合、封止体MRの強度を向上させることにより、半導体パッケージの強度が向上するので、硬い樹脂材料で封止されていることが好ましい。一方、本実施の形態のように、筐体HSの内部に樹脂を充填する場合、筐体HSを硬い材料で構成することにより、電子装置EA1の強度は向上するので、封止材MGは柔らかくても良い。また、本実施の形態では、
図11に示す接着材BD1として、シリコーンゴムを用いているが、封止材MGは、接着材BD1より低弾性である。言い換えれば、封止材MGは、接着材BD1より柔らかく、変形し易い。このため、電子装置EA1に温度変化が生じた時に発生した応力は、シリコーンゲルである封止材MGが変形することにより、低減される。
【0109】
<レイアウトの検討>
本実施の形態の電子装置EA1において、
図13に示す配線基板SU2に搭載されている電子部品ECの全てを、
図12に示す基板SU1に搭載した場合、基板SU1の面積が大きくなる。本実施の形態のように、多数の電子部品ECを複数の基板に振り分けて搭載し、基板SU1と配線基板SU2とを積層することにより、電子装置EA1の平面積(言い換えれば、電子装置EA1の実装面積)の増大を抑制することができる。しかし、本願発明者の検討によれば、多数の電子部品ECを複数の基板に振り分けて搭載する際に、電子部品ECおよびこれに接続される配線のレイアウトを工夫することにより、電子装置EA1の性能向上を図れることが判った。
【0110】
例えば、本実施の形態の場合、
図12に示す基板SU1には、モータMT(
図1)を駆動する大電流が流れる複数の半導体チップSCHおよび複数の半導体チップSCLが集約して配置されている。一方、
図13に示す配線基板SU2には、流れる電流は相対的に小さいが、端子数が多いドライバ部品PDRやコントローラ部品PCTが搭載されている。この場合、基板SU1および配線基板SU2の構造を、搭載される電子部品の特徴に対応した構造にすることができる。すなわち、
図12に示す複数の半導体チップSCHおよび複数の半導体チップSCLが搭載される基板SU1では、大電流の伝送経路の抵抗を低減する観点から、金属パターンMPH、MPL、MPU、MPV、およびMPWの面積がそれぞれ大きくなっている。また、大電流が流れることにより生じる熱を効率的に放熱する観点から、
図10に示すように、基板SU1の下面S1bには、金属パターンMPBが形成されている。一方、
図15に示す配線基板SU2が有する複数の配線WLのそれぞれは、
図12に示す金属パターンMPHなどと比較して面積が小さい。しかし、多数の配線WLを効率的に引き回せるように、複数の配線層が積層された構造になっている。
【0111】
また、
図8を用いて既に説明したように、ゲート信号GSHとゲート信号GSLの立ち上がり時間、立ち下り時間を揃える観点からは、ゲート線GLHの経路距離とゲート線GLLの経路距離を等長化することが好ましい。また、本実施の形態のインバータ回路PWCは、3相を持つので、
図8に示すゲート線GLHおよびゲート線GLLは、それぞれ3本ずつ設けられている。この場合、6本のゲート線のそれぞれの経路距離を等長化することが好ましい。本実施の形態のように、複数のドライバ部品PDR(
図13)と、複数の半導体チップSC1(
図12参照)とが互いに異なる基板に搭載されている場合、ゲート線GLHおよびゲート線GLLの経路距離がそれぞれ長くなる。このため、経路距離が短い場合と比較して、経路距離のバラつきがスイッチング動作の信頼性に与える影響が大きい。
【0112】
本実施の形態の場合、インバータ回路において、ハイサイド回路(ハイサイド側のスイッチング素子およびハイサイド駆動回路に接続される伝送経路)の構成部品を
図12に示す辺HSe1側に集約し、ロウサイド回路(ロウサイド側のスイッチング素子およびロウサイド駆動回路に接続される配線)の構成部品を、辺HSe2側に集約している。詳しくは、
図12に示すように、平面視において、複数の半導体チップSCHのそれぞれは収容部PKTの辺HSe1側に配置されている。複数の半導体チップSCLのそれぞれは、収容部の辺HSe2側に配置されている。また、
図13に示すように、ハイサイドトランジスタHQ1(
図8参照)のゲート電極と、ドライバ部品PDRのハイサイド駆動回路DCH(
図8参照)とを電気的に接続する複数の配線WLGHは、辺HSe1と複数のドライバ部品PDRの間に配置されている。複数の配線WLGHは、辺HSe1に沿って配列される複数のリード(リード部材)LGHに接続されている。また、ロウサイドトランジスタLQ1(
図8参照)のゲート電極と、ドライバ部品PDRのロウサイド駆動回路DCL(
図8参照)とを電気的に接続する複数の配線WLGLは、辺HSe2と複数のドライバ部品PDRの間に配置されている。複数の配線WLGLは、辺HSe2に沿って配列される複数のリード(リード部材)LGLに接続されている。
【0113】
図13に示すように、ドライバ部品PDRの位置を基準として、互いに反対側に位置する辺HSe1および辺HSe2に、ロウサイド回路用の部品とハイサイド回路用の部品を分けて配置することにより、
図8に示すゲート線GLHおよびGLLの経路距離の調整を容易に行うことができる。
【0114】
例えば、本実施の形態では、
図13に示すように、複数のドライバ部品PDRは、
図12に示す複数の半導体チップSCHおよび複数の半導体チップSCLの配列方向と同じ、X方向に沿って並ぶように配列されている。このため、3本のゲート線GLHのそれぞれの経路距離の等長化を容易に行うことができる。また、3本のゲート線GLLのそれぞれの経路距離の等長化を容易に行うことができる。
【0115】
また例えば、本実施の形態では、複数のドライバ部品PDRのそれぞれは、辺HSe3の中心と辺HSe4の中心を結ぶように長手方向であるX方向に延びる仮想線VL1と重なる位置に配置されている。このため、配線基板SU2と、基板SU1上のそれぞれにおいて、ゲート線GLH(
図8参照)とゲート線GLL(
図8参照)の経路距離を等長化すれば、結果的に、ゲート線GLHの全体とゲート線GLLの全体が等長化される。つまり、ゲート線GLHとゲート線GLLの経路距離の等長化を容易に行うことができる。
【0116】
本実施の形態では、3本のゲート線GLHおよび3本のゲート線GLLのそれぞれが等長化されている。なお、「等長化されている」とは、等長化の対象である複数の伝送経路のそれぞれの経路距離が、その経路を流れる電気信号の電位レベルがしきい値を超えるまでの立ち上がり時間、および電位レベルがしきい値を下回るまでの立ち下り時間が許容可能なマージン内に入る程度に等距離になっていることを言う。したがって、等長化の対象である複数の伝送経路のそれぞれの経路距離が完全に一致する場合の他、ある範囲内に収まる程度の誤差がある場合も含まれる。「等長化されている」と言えるためには、誤差範囲は、少なくとも25%以内であり、10%以内であることが特に好ましい。
【0117】
また、
図13に示すように、本実施の形態の電子装置EA1は、制御回路CT(
図8参照)を備えるコントローラ部品PCTを有している。コントローラ部品PCTは、配線基板SU2の上面S2tに搭載されている。コントローラ部品PCTは、X方向において、複数のドライバ部品PDRのうちの隣り合う二個のドライバ部品PDRの間に搭載されている。
【0118】
コントローラ部品PCTは、3個のドライバ部品PDRのそれぞれに接続されている。また、本実施の形態の例では、コントローラ部品PCTは、
図12に示す複数の半導体チップSC1および半導体チップSC2と直接的には接続されていない。言い換えれば、コントローラ部品PCTは、半導体チップSC1およびSC2と分離されている。
図2に示す半導体チップSC1の複数の信号電極DTPから出力される電気信号のうちの一部は、
図13に示すドライバ部品PDRにおいてデータ処理され、処理後のデータが電気信号としてコントローラ部品PCTに伝送される。また、
図8を用いて説明した制御回路CTから入力される入力信号は、ゲート駆動回路GCにより処理され、ゲート駆動回路GCにより生成されたゲート信号が、
図2に示す半導体チップSC1のゲート電極GPに伝送される。
【0119】
また、
図8を用いて説明したように、ゲート信号GSH、GSLの信号波形の振幅は、信号SGH、SGLの信号波形の振幅より大きい。言い換えれば、信号SGH、SGLの信号波形の振幅は、ゲート信号GSH、GSLの信号波形の振幅より小さい。このため、コントローラ部品PCTとドライバ部品PDRとの間で、電気信号を伝送する複数の伝送経路のそれぞれは、等長化されていなくても良い。
【0120】
本実施の形態のように、コントローラ部品PCTが、X方向において、複数のドライバ部品PDRのうちの隣り合う二個のドライバ部品PDRの間に配置されている場合、複数の配線WLGH、WLEH、およびWLGLの配線経路がコントローラ部品により阻害され難い。このため、配線WLGH、WLEH、およびWLGLのレイアウトの自由度が向上し、等長化し易い。
【0121】
また、
図13に示すように、配線基板SU2には、筐体HSの収容部PKTの辺HSe1と複数のドライバ部品PDRのそれぞれとの間には、ドライバ部品PDRのうちの一つ、および複数の半導体チップSCH(
図12参照)のうちの一つと電気的に接続される電子部品群ECGが搭載されている。また、配線基板SU2には、筐体HSの収容部PKTの辺HSe2と複数のドライバ部品PDRのそれぞれとの間には、ドライバ部品PDRのうちの一つ、および複数の半導体チップSCL(
図12参照)のうちの一つと電気的に接続される電子部品群ECGが搭載されている。これらの電子部品群ECGは、例えば、
図8に示すゲート駆動回路GCから出力されるゲート駆動信号や、ゲート駆動回路GCに入力される信号などのノイズを低減させるノイズフィルタ回路を構成する電子部品EC(
図13参照)である。
【0122】
図13に示すように、コントローラ部品PCTは、X方向において、隣り合う電子部品群ECGの間に配置されている。このため、電子部品群ECGの配置スペースは、コントローラ部品PCTによって阻害されず、ドライバ部品PDRの近傍に電子部品群ECGを配置することができる。
【0123】
また、コントローラ部品PCTは、Y方向において、収容部PKTの辺HSe1より辺HSe2に近い位置に配置されている。
図13に示すように複数のリードLDのうち、端子TU、TV、TWに相当するリードLDは、収容部PKTの辺HSe1に沿って配列されている。端子TU、TV、TWの電位は周期的に変化するが、最も高い時には、端子HTと同電位になる。本実施の形態のように、コントローラ部品PCTが、Y方向において、収容部PKTの辺HSe1より辺HSe2に近い位置に搭載されている場合、コントローラ部品PCTとの間で信号を伝送するリードLDは、辺HSe2に沿って配列される。このため、信号伝送経路を構成するリードLDと、電位が供給される端子TU、TV、およびTWとの距離を離すことができる。
【0124】
また、
図13に示すように配線基板SU2には、配線基板SU2を厚さ方向に貫通する貫通孔THSが形成されている。貫通孔THSは、
図11に示す配線基板SU2の上面S2tおよび下面S2bのうち、一方の面から他方の面まで貫通している。この貫通孔THSは、電子装置EA1の製造工程において、配線基板SU2を固定した後、
図11に示す収容部PKT内に封止材MGを充填する際に、後述する
図25に示すノズルNZを挿入するために利用される。基板SU1上全体に封止材MGを充填するためには、
図13に示す平面視において、配線基板SU2の中央に近い部分に貫通孔THSが配置されていることが好ましい。また、本実施の形態のように、電子装置EA1が長方形である場合には、長手方向であるX方向に沿って複数の貫通孔THSが設けられていることが好ましい。
【0125】
本実施の形態の場合、コントローラ部品PCTが辺HSe2側に寄った位置に配置されているので、3個のドライバ部品PDRのそれぞれの間に、貫通孔THSが配置されている。
【0126】
上記では、複数のゲート線の経路距離を等長化することの重要性について説明した。
図8を用いて説明したように、本実施の形態では、ハイサイド駆動回路DCHにおいて、ゲート電圧を生成する際の基準電位として、ハイサイドトランジスタHQ1のエミッタ電位を基準電位に使用する。このエミッタ電位は、半導体チップSC1(
図2参照)のエミッタ信号電極EDP(
図2参照)から出力され、エミッタ線ELHを介してハイサイド駆動回路DCHに供給される。ハイサイドトランジスタHQ1のエミッタ電位は変動するので、エミッタ線ELHの経路距離は、ハイサイド用のゲート線GLHの経路距離と等長化されていることが好ましい。
【0127】
本実施の形態の場合、上記したように、インバータ回路において、ハイサイド回路(ハイサイド側のスイッチング素子およびハイサイド駆動回路に接続される伝送経路)の構成部品を
図12に示す辺HSe1側に集約し、ロウサイド回路(ロウサイド側のスイッチング素子およびロウサイド駆動回路に接続される配線)の構成部品を、辺HSe2側に集約している。このため、エミッタ線ELHの経路距離と、ハイサイド用のゲート線GLHの経路距離とを容易に等長化することができる。
【0128】
詳しくは、
図13に示すように、ハイサイドトランジスタHQ1(
図8参照)のエミッタ電極と、ドライバ部品PDRのハイサイド駆動回路DCH(
図8参照)とを電気的に接続する複数の配線WLEHは、辺HSe1と複数のドライバ部品PDRの間に配置されている。複数の配線WLEHは、辺HSe1に沿って配列される複数のリード(リード部材)LEHに接続されている。電子装置EA1では、ドライバ部品PDRの位置を基準として、同じ辺HSe1側に複数の配線WLEHおよび複数の配線WLGHを配置している。また、
図8に示すエミッタ線ELHおよびゲート線GLHのそれぞれは、同じドライバ部品PDR(
図13参照)および同じ半導体チップSCH(
図12参照)に接続される。このため、エミッタ線ELHの経路距離と、ハイサイド用のゲート線GLHの経路距離とを容易に等長化することができる。
【0129】
<配線基板とリードとの接続>
次に、
図13に示す配線基板SU2と複数のリードLDとを電気的に接続する部分の詳細について説明する。
図16は、
図13に示すリードと配線基板とが電気的に接続される部分を拡大して示す拡大平面図である。また、
図17は、
図16のA−A線に沿った拡大断面図である。なお、
図13に示す複数のリードLDのうち、配線WLGH、WLEH、および配線WLGLのそれぞれに接続されるリードLGH,LEH、およびLGLは、同様の構造である。このため、
図17では、同様な構造になっている各部の符号を合わせて付している。
【0130】
図16および
図17に示すように、配線基板SU2は、上面S2tおよび下面S2b(
図17参照)のうち、一方から他方まで貫通する複数の開口部THLを備えている。また、平面視において、複数の開口部THLのそれぞれは、配線基板SU2の周縁に設けられている。複数のリードLDのそれぞれは、複数の開口部THLのそれぞれと、筐体の収容部PKTの内面とに囲まれた領域に配置されている。
【0131】
本実施の形態に対する変形例として、配線基板SU2の周縁よりも内側に平面的に閉じた形状の貫通孔が形成されていても良い。しかし、本実施の形態のように配線基板SU2の周縁部に、平面的に閉じていない開口部THLが形成されている場合、以下の点で好ましい。すなわち、
図16に示すように、配線基板SU2の側面S2sと筐体HSの収容部PKTの内面との間には、隙間(クリアランス)がある。本実施の形態の開口部THLは、平面的に閉じておらず、
図17に示すように開口部THLの側面S2sは、筐体HSの内面と対向している。このため、本実施の形態の場合、複数のリードLDの配置スペースとして、開口部THLの内側の領域に加え、この隙間部分を利用可能である。したがって、変形例として上記したように、平面的に閉じた貫通孔を形成する場合と比較して、配線基板SU2の平面視における開口面積を低減できる。このように、複数のリードLDを貫通させる開口部THLの開口面積が低減できれば、配線基板SU2において、部品配置スペースを拡大させることができる。
【0132】
また、
図16および
図17に示すように、複数の開口部THLのうちの一部は、リードLDと配線基板SU2の配線WLとを電気的に接続する、接続部として機能している。
図17に示すように、配線WLGHは、複数の開口部THLのうち、筐体HSの辺HSe1に設けられた開口部THL1において、半田SD3を介して複数のリードLGHと電気的に接続されている。また、配線WLGLは、複数の開口部THLのうち、筐体HSの辺HSe2に設けられた開口部THL2において、半田SD3を介して複数のリードLGLと電気的に接続されている。配線WLEHは、複数の開口部THLのうち、筐体HSの辺HSe1に設けられた開口部THL1において、半田SD3を介して複数のリードLEHと電気的に接続されている。
【0133】
詳しくは、配線基板SU2の開口部THL1およびTHL2には、上面S2tの一部分、側面S2sの一部分、および下面S2bの一部分を覆うように形成された金属膜(導体パターン)THMが形成されている。配線WLGH、WLEH、およびWLGLのそれぞれは、各開口部に形成された金属膜THMに接続されている。また、半田SD3は、金属膜THMおよびリードLDに密着している。このため、配線WLGH、WLEH、およびWLGLのそれぞれは、金属膜THMおよび半田SD3を介してリードLDに接続される。
【0134】
また、
図17に示すように筐体HSは、配線基板SU2を支持する基板保持面HShを有している。基板保持面HShは、配線基板SU2が、下方に脱落することを抑制することができる。また、半田SD3を介して配線基板SU2と複数のリードLDとを接続することにより、配線基板SU2は、基板保持面HSh上に固定される。
【0135】
ところで、
図13に示す複数のリードLDには、半導体チップSC1(
図12参照)と電気的に接続され、かつ、ドライバ部品PDRなど、配線基板SU2に搭載された部品と電気的に分離されたリードLDが含まれる。例えば、
図13に示す端子TU、TV、TW、HT、およびLTがこれに相当する。配線基板SU2の複数の開口部THLのうち、端子TU、TV、TW、HT、およびLTに相当するリードLDを囲む開口部THL3(
図16参照)は、金属膜THMで覆われず、かつ配線基板SU2を構成する絶縁材料INS(
図17参照)が露出している。
【0136】
言い換えれば、本実施の形態では、全ての開口部THLに金属膜THMを設けるのではなく、配線基板SU2と電気的に接続されるリードを囲む開口部THLに対して、選択的に金属膜THMが形成されている。この場合、リードLDの変形等により、例えば端子TUと配線基板SU2とが接触したとしても、配線基板SU2と端子TUとが電気的に接続されることを抑制できる。
【0137】
<ゲート電極とリードとの接続>
次に、
図12に示す基板SU1と複数のリードLDとを電気的に接続する部分の詳細について説明する。
図18は、
図12に示すハイサイド側の半導体チップに接続されるゲート線の要部拡大平面図である。また、
図19は、
図12に示すロウサイド側の半導体チップに接続されるゲート線の要部拡大平面図である。
【0138】
図18に示すように、半導体チップSCHのゲート電極GPとリードLGHとは、ワイヤBW1、金属パターンMPT、およびワイヤBW2を介して電気的に接続されている。詳しくは、ワイヤBW1の一方の端部はゲート電極GPに接続され、他方の端部は、金属パターンMPTに接続されている。また、ワイヤBW2の一方の端部は金属パターンMPTに接続され、他方の端部はリードLGHに接続されている。
【0139】
また、
図19に示すように、半導体チップSCLのゲート電極GPとリードLGLとは、ワイヤBW3、金属パターンMPT、およびワイヤBW4を介して電気的に接続されている。詳しくは、ワイヤBW3の一方の端部はゲート電極GPに接続され、他方の端部は、金属パターンMPTに接続されている。また、ワイヤBW4の一方の端部は金属パターンMPTに接続され、他方の端部はリードLGLに接続されている。
【0140】
ここで、
図12に示すように、金属パターンMPLは、リードLDと半導体チップSCLとの間に配置されている。これにより、半導体チップSCLのエミッタ電極EP(
図2参照)と金属パターンMPLとをワイヤBWで接続することができる。しかしこのレイアウトの場合、
図19に示すように、ロウサイドの半導体チップSCLに接続されるワイヤBW4は、平面視において、金属パターンMPLを跨ぐように延びる。この結果、ロウサイドのゲート電極GPに接続されるゲート線において、ワイヤBW4の長さがワイヤBW3の長さよりも長くなる。
【0141】
一方、
図18に示すように、ハイサイドの半導体チップSCHに接続されるワイヤBW2は、平面視において、金属パターンMPT以外の金属パターンMPと重なっていない。このため、ハイサイドのゲート線を構成するワイヤBW2の長さは、ロウサイドのゲート線を構成するワイヤBW4(
図19参照)より短い。このため、本実施の形態では、以下の構成により、ハイサイドのゲート線とロウサイドのゲート線の等長化を図っている。すなわち、ハイサイドの半導体チップSCHのゲート電極GPに接続されるワイヤBW1の長さは、半導体チップSCHのエミッタ電極EP以外の電極に接続される複数のワイヤBWの中で、最も長い。また、ワイヤBW1の長さは、ワイヤBW2の長さより長い。このようにワイヤBW1の長さを長くすることにより、ハイサイドのゲート線とロウサイドのゲート線の経路距離の等長化が実現される。
【0142】
<電子装置の製造方法>
次に、
図1〜
図19を用いて説明した電子装置EA1の製造工程について、
図20に示す工程フローに沿って説明する。
図20は、
図9に示す電子装置の組立てフローを示す説明図である。
【0143】
<第1基板準備>
まず、
図20に示す第1基板準備工程では、
図21に示す基板SU1を準備する。
図21は、
図20に示す第1基板準備工程で準備する基板の平面図である。
【0144】
本工程で準備する基板SU1は、複数の半導体チップSC1が搭載されるチップ搭載面である上面(表面、主面、面)S1tと、上面S1tの反対側に位置する下面(裏面、主面、面)S1bと、を有する。基板SU1は、セラミック材料から成るセラミック基板である。
【0145】
また、基板SU1の上面S1tには、複数の金属パターンMPが接合されている。また、
図10を用いて説明したように、基板SU1の下面S1tには、金属パターンMPBが形成されている。これら複数の金属パターンMPは、例えば、銅(Cu)膜の表面にニッケル(Ni)膜が積層された積層膜であって、基板SU1の上面S1tまたは下面S1bに銅膜が直接的に接合されている。アルミナなどのセラミックからなる板材に銅膜を接合する場合、共晶反応を利用して接合する。また、銅膜の表面にニッケル膜を積層する方法は、例えば電気メッキ法を用いることができる。
【0146】
また、複数の金属パターンMPのうち、ハイサイド側の電位が供給される金属パターンMPHには、半導体チップSCHおよび半導体チップSC2が搭載されている。半導体チップSCHおよび半導体チップSC2は、長方形の平面形状を有し、互いの長辺(
図2の辺SC1e1と
図5の辺SC2e1)が向かい合った状態(対向した状態)で並んでいる。また、複数の半導体チップSCHのそれぞれは、複数の電極(電極パッド)の中で、ゲート電極GP(
図2参照)が最も辺S1e1に近い位置に配置されるように搭載されている。
【0147】
また、複数の金属パターンMPのうち、交流電力の出力端子に接続される金属パターンMPU、MPV、MPWには、それぞれ1個の半導体チップSCLおよび1個の半導体チップSC2が搭載されている。半導体チップSCLおよび半導体チップSC2は、長方形の平面形状を有し、互いの長辺(
図2の辺SC1e1と
図5の辺SC2e1)が向かい合った状態(対向した状態)で並んでいる。また、複数の半導体チップSCLのそれぞれは、複数の電極(電極パッド)の中で、ゲート電極GP(
図2参照)が最も辺S1e2に近い位置に配置されるように搭載されている。
【0148】
また、Y方向において、基板SU1の辺S1e1から辺S1e2に向かって、半導体チップSCH、ハイサイドの半導体チップSC2、ロウサイドの半導体チップSC2、および半導体チップSCLの順で並んでいる。
【0149】
上記した
図14に示すように、複数の半導体チップSCH、SCL、SC2のそれぞれは、裏面SCbと金属パターンMPの上面MPtを対向させた状態で、所謂フェイスアップ実装方式で搭載される。また、半導体チップSC1の裏面SCbには、コレクタ電極CP、半導体チップSC2の裏面SCbには、カソード電極CDPが形成されており、コレクタ電極CPやカソード電極CDPと金属パターンMPとを電気的に接続するため、半導体チップSC1、SC2は導電性接続材(ダイボンド材、導電性部材、導電性接着材、接続部材、接合材)SD1を介して搭載される。
【0150】
<筐体取付>
次に、
図20に示す筐体取付工程では、
図11に示したように、基板SU1の周囲を囲むように、筐体HSを取り付け、接着材BD1を介して基板SU1と筐体HSを固定する。言い換えれば、筐体取付工程では、基板SU1が筐体HSの収容部PKT内に収容される。本工程では、基板SU1の上面S1tの周縁部を覆うように筐体HSの支持部HSFを接着固定する。基板SU1の上面S1tの周縁部と筐体HSの支持部HSFとは、接着材BD1を介して接着固定される。また、本工程において、基板SU1の下面S1bは、ベース基板SUBに接着固定される。
【0151】
筐体HSの支持部HSFには、
図20に示す筐体準備工程において、複数のリードLDが予め取り付けられている。複数のリードLDのそれぞれは、筐体HSの収容部の内面に沿って延びるように取り付けられ、
図12に示すように辺HSe1、HSe2、およびHSe3に沿って配列されている。
【0152】
<ワイヤ接続>
次に、
図20に示すワイヤ接続工程では、
図12に示すように、複数の半導体チップおよびリードLDを、ワイヤ(導電性部材)BWを介して電気的に接続する。
【0153】
図12を用いて説明したように、本工程では、ハイサイド用の半導体チップSCHのエミッタ電極EP(
図2参照)および半導体チップSC2(
図21参照)のアノード電極ADP(
図5参照)は複数のワイヤBWPを介して金属パターンMPU、金属パターンMPV、および金属パターンMPWのうちのいずれかに接続される。また、ロウサイド用の半導体チップSCLのエミッタ電極EPおよび半導体チップSC2のアノード電極ADPは、複数のワイヤBWPを介して金属パターンMPLに接続される。また、ハイサイド用の半導体チップSCHおよびロウサイド用の半導体チップSCLのそれぞれが有するゲート電極GP(
図2参照)のそれぞれは、ワイヤBWSを介して金属パターンMPTと電気的に接続される。また、半導体チップSCH、SCLのその他の信号電極DTP(
図2参照)のそれぞれは、ワイヤBWSを介して金属パターンMPTと電気的に接続される。
【0154】
また、本実施の形態のように金属パターンMPLおよび金属パターンMPHのそれぞれが、複数に分割されている場合、本工程において、ワイヤBWを介して電気的に接続される。なお、金属パターンMP同士を接続するワイヤBWは、
図20に示す第1基板準備工程において予め形成されていても良い。
【0155】
図12に示す複数のワイヤBWは、金属ワイヤであって、本実施の形態では例えばアルミニウムから成る。ただし、ワイヤBWの材料には種々の変形例があって、アルミニウムの他、金、あるいは銅を用いることもできる。なお、本実施の形態では、半導体チップSC1と金属パターンMPとを電気的に接続する部材としてワイヤを用いる例を示しているが、変形例としては、帯状に形成された金属(例えばアルミリボン)を用いることもできる。またあるいは、パターニングされた金属板(銅クリップ)を用いて、半田を介して接続することもできる。
【0156】
<第2基板準備>
また、
図20に示す第2基板準備工程では、
図22に示す配線基板SU2を準備する。
図22は、
図20に示す第2基板準備工程で準備する配線基板の平面図である。なお、
図20では、第2基板準備工程を筐体準備工程の下に記載しているが、第2基板準備工程は、第2基板収容工程の前に終わっていれば、タイミングは限定されない。例えば、
図20に示す第1基板準備工程、第2基板準備工程、および筐体準備工程を同時並行で実施しても良い。
【0157】
本工程で準備する配線基板SU2は、
図11を用いて説明したように、基板SU1の上面S1tと対向する下面(裏面、主面、面)S2bと、下面S2bの反対側に位置する上面(表面、主面、面)S2tを有する。配線基板SU2には、半導体部品であるドライバ部品PDRを含む、複数の電子部品が搭載されている。
【0158】
また、
図22に示すように、配線基板SU2は、平面視において、X方向に沿って延びる(延在する)辺(長辺、基板辺)S2e1、辺S2e1の反対側に位置する辺(長辺、基板辺)S2e2、X方向に交差(
図22では直交)するY方向に沿って延びる(延在する)辺(短辺、基板辺)S2e3、および辺S2e3の反対側に位置する辺(短辺、基板辺)S2e4を有する。また、辺S2e1および辺S2e2は、辺S2e3および辺S2e4と比較して相対的に長い。
【0159】
辺S2e1には、
図16および
図17を用いて説明した複数の開口部(凹部、切欠き部)THL1および複数の開口部THL3が設けられている。また、辺S2e2には、開口部(凹部、切欠き部)THL2が設けられている。また配線基板SU2の開口部THL1およびTHL2には、
図16および
図17を用いて説明した複数の金属膜(導体パターン)THMが形成されている。
【0160】
図13を用いて説明した筐体HSの収容部PKTの各辺と、配線基板SU2に搭載された各部品との関係は、以下のように言い換えることができる。
【0161】
すなわち、複数のドライバ部品PDRのそれぞれは、配線基板SU2の上面S2tにおいて、辺S2e3の中心と辺S2e4の中心を結ぶように長手方向であるX方向に延びる仮想線(中心線)VL2と重なる位置に搭載されている。
【0162】
また、ハイサイドトランジスタHQ1(
図8参照)のゲート電極と、ドライバ部品PDRのハイサイド駆動回路DCH(
図8参照)とを電気的に接続する複数の配線WLGHは、辺S2e1と複数のドライバ部品PDRの間に配置されている。複数の配線WLGHは、辺S2e1に沿って配列される複数の金属膜THMに接続されている。
【0163】
また、ロウサイドトランジスタLQ1(
図8参照)のゲート電極と、ドライバ部品PDRのロウサイド駆動回路DCL(
図8参照)とを電気的に接続する複数の配線WLGLは、辺S2e2と複数のドライバ部品PDRの間に配置されている。複数の配線WLGLは、辺S2e2に沿って配列される複数の金属膜THMに接続されている。
【0164】
また、配線基板SU2の辺S2e1と複数のドライバ部品PDRのそれぞれとの間には、ドライバ部品PDRのうちの一つ、および複数の半導体チップSCH(
図12参照)のうちの一つと電気的に接続される電子部品群ECGが搭載されている。また、配線基板SU2の辺S2e2と複数のドライバ部品PDRのそれぞれとの間には、ドライバ部品PDRのうちの一つ、および複数の半導体チップSCL(
図12参照)のうちの一つと電気的に接続される電子部品群ECGが搭載されている。
【0165】
また、コントローラ部品PCTは、X方向において、隣り合う電子部品群ECGの間に配置されている。このため、電子部品群ECGの配置スペースは、コントローラ部品PCTによって阻害されず、ドライバ部品PDRの近傍に電子部品群ECGを配置することができる。また、コントローラ部品PCTは、Y方向において、収容部PKTの辺S2e1より辺S2e2に近い位置に配置されている。
【0166】
<第2基板収容>
また、
図20に示す第2基板収容工程では、
図23に示すように、配線基板SU2を筐体HSの収容部PKT内に収容する。
図23は、
図20に示す第2基板収容工程で、配線基板を筐体内に収容した状態を示す断面図である。また、
図24は、配線基板を収容した後における下段側の半導体チップと上段側のドライバ部品との位置関係を示す透視平面図である。この場合の透視平面とは、配線基板SU2および配線基板SU2に搭載される電子部品を透過して、基板SU1上に搭載された半導体チップSC1を見た平面である。
図24では、見易さのため、基板SU1または配線基板SU2に搭載された多数の部品のうち、6個の半導体チップSC1(点線で図示)と、3個のドライバ部品PDR以外の部品は図示を省略している。
【0167】
本工程では、
図20に示すように、配線基板SU2の下面S2bが、基板SU1の上面S1tと対向するように、配線基板SU2を基板SU1上に配置する。
図17を用いて説明したように、筐体HSの支持部HSFは、基板保持面HShを有している。このため、配線基板SU2は、基板保持面HShにより保持される。なお、この段階では配線基板SU2は固定されていない。配線基板SU2は、次のリード接続工程において、筐体HS内に固定される。
【0168】
また、本工程では、
図10に示す仮想線VL1と
図22に示す仮想線VL2とが平面視において重なるように配線基板SU2が配置されることが好ましい。
【0169】
ここで、配線基板SU2が固定された後のドライバ部品PDRと半導体チップSC1との位置関係について、
図24を用いて説明する。なお、以下で説明する位置関係は、完成後の電子装置EA1においても同様な関係が維持される。
【0170】
図24に示すように、筐体HSは、X方向に沿って延びる辺(長辺)HSe5と、辺HSe5の反対側に位置する辺(長辺)HSe6とを有している。平面視において、複数の半導体チップSCHのそれぞれは、辺HSe5(または辺HSe1)に沿うように、かつ、複数の半導体チップSCLのそれぞれよりも辺HSe5(または辺HSe1)に近い位置に配置されている。平面視において、複数の半導体チップSCLのそれぞれは、辺HSe6(または辺HSe2)に沿うように、かつ、複数の半導体チップSCHのそれぞれよりも辺HSe6(または辺HSe2)に近い位置に配置されている。また、複数の半導体チップSCH、SCLのそれぞれは、筐体HSの辺HSe5(または辺HSe1)に沿って延びる辺SCe1と、辺SCe1の反対側に位置し、かつ、筐体HSの辺HSe6(または辺HSe2)に沿って延びる辺SCe2と、を有している。
【0171】
ここで、複数のドライバ部品PDR、複数の半導体チップSCH、および複数の半導体チップSCLのうち、互いに電気的に接続されているドライバ部品PDR、半導体チップSCH、半導体チップSCLのセットの位置関係に着目する。
図24に示す例では、ドライバ部品PDRUが半導体チップSCHUおよび半導体チップSCLUに電気的に接続されている。言い換えれば、半導体チップSCHUおよび半導体チップSCLUはドライバ部品PDRUに制御される。また、ドライバ部品PDRVが半導体チップSCHVおよび半導体チップSCLVに電気的に接続されている。言い換えれば、半導体チップSCHVおよび半導体チップSCLVはドライバ部品PDRVに制御される。ドライバ部品PDRWが半導体チップSCHWおよび半導体チップSCLWに電気的に接続されている。言い換えれば、半導体チップSCHWおよび半導体チップSCLWはドライバ部品PDRWに制御される。
【0172】
図24に示すように、透過平面視において、X方向と交差する方向θ1において、ドライバ部品PDRUは、ドライバ部品PDRUの中心CNTが、半導体チップSCHUと半導体チップSCLUの間に位置するように、配線基板SU2の上面S2t上に搭載されている。また、透過平面視における方向θ2において、ドライバ部品PDRVは、ドライバ部品PDRVの中心CNTが、半導体チップSCHVと半導体チップSCLVの間に位置するように、配線基板SU2の上面S2t上に搭載されている。また、透過平面視における方向θ3において、ドライバ部品PDRWは、ドライバ部品PDRWの中心CNTが、半導体チップSCHWと半導体チップSCLWの間に位置するように、配線基板SU2の上面S2t上に搭載されている。なお、ここで述べる複数のドライバ部品PDRのそれぞれの中心CNTとは、
図22で示される、複数のドライバ部品PDRのそれぞれが有する辺MRe1の中点と、辺MRe1の反対側にある辺MRe2の中点とを結ぶ中心線の中点である。
【0173】
また、
図24に示す例では、透過平面視におけるY方向において、ドライバ部品PDRUは、半導体チップSCHUの辺SCe1と半導体チップSCLUの辺SCe2の間に位置するように、配線基板SU2の上面S2t上に搭載されている。また、透過平面視におけるY方向において、ドライバ部品PDRVは、半導体チップSCHVの辺SCe1と半導体チップSCLVの辺SCe2の間に位置するように、配線基板SU2の上面S2t上に搭載されている。また、透過平面視におけるY方向において、ドライバ部品PDRWは、半導体チップSCHWの辺SCe1と半導体チップSCLWの辺SCe2の間に位置するように、配線基板SU2の上面S2t上に搭載されている。
【0174】
上記のレイアウトになっていることにより、
図8を用いて説明したように、ハイサイドのゲート線GLHの経路距離とロウサイドのゲート線GLLの経路距離を等長化することができる。
【0175】
<リード接続>
また、
図20に示すリード接続工程では、
図13に示す複数のリードLDのうちの一部と、配線基板SU2とを電気的に接続する。
【0176】
図17を用いて説明したように、本工程では、配線WLGHは、開口部THL1において、半田SD3および金属膜THMを介して複数のリードLGHと電気的に接続される。また、配線WLGLは、開口部THL2において、半田SD3および金属膜THMを介して複数のリードLGLと電気的に接続される。配線WLEHは、開口部THL1において、半田SD3および金属膜THMを介して複数のリードLEHと電気的に接続される。また、本工程において、半田SD3が硬化すると、配線基板SU2は、複数の半田SD3および複数のリードLDを介して筐体HSに固定される。
【0177】
<封止>
次に、
図20に示す封止工程では、
図25に示すように収容部PKTのうち、基板SU1と配線基板SU2の間の空間内に封止材MGを供給し、複数のリードLDのそれぞれの一部分、複数の半導体チップSC1、SC2および複数のワイヤBWを封止する。
図25は、
図20に示す封止工程で、筐体の収容部内に樹脂を供給した状態を示す断面図である。
【0178】
本実施の形態では、
図11に示す蓋部(蓋材、キャップ)HSTが取り付けられていない状態で封止工程を実施する。また、
図22に示すように配線基板SU2には複数の貫通孔THSが形成されている。このため、本実施の形態では、
図25に示すように、貫通孔THS内に樹脂充填用の治具であるノズルNZを挿入し、基板SU1と配線基板SU2の間の空間内に封止材MGを供給する。
【0179】
ところで、
図20に対する変形例として、封止工程をワイヤ接続工程の後、かつ第2基板収容工程の前に行う方法がある。この場合、配線基板SU2が収容される前に封止工程を行えるので、配線基板SU2に形成された複数の貫通孔THSが設けられていなくても良い。ただし、この変形例の場合、封止工程の後でリード接続工程を行うことになる。本実施の形態のように、比較的に流動性が高いゲル状の封止材MGを用いる場合、封止工程において、封止材MG内に多くの気泡が発生する場合がある。この気泡は、例えば真空チャンバ内に製造中の電子装置を配置して、所謂、真空脱気を実施することにより、容易に除去することができる。しかし、この際にゲルの飛沫が周囲に付着する場合がある。そして、このゲルの飛沫がリードLDのうち、半田SD3で接合される部分に付着すると、半田SD3の接合性が低下する原因になる。
【0180】
そこで、本実施の形態では、配線基板SU2に貫通孔THSを形成し、リード接続工程の後に封止工程を行う方法を適用している。
【0181】
また、既に説明したように、基板SU1上全体に封止材MGを充填するためには、
図13に示す平面視において、配線基板SU2の中央に近い部分に貫通孔THSが配置されていることが好ましい。また、本実施の形態のように、電子装置EA1が長方形である場合には、長手方向であるX方向に沿って複数の貫通孔THSが設けられていることが好ましい。
【0182】
<蓋部取付>
次に、
図20に示す封止工程では、
図11に示すように筐体HSの上部に蓋部HSTを取り付け、封止材MGで封止された領域を覆う。封止材MGで封止された領域を蓋部HSTで覆うことにより、筐体HSの内部の空間への異物の侵入などを防止することができる。筐体HSの蓋部HSTには複数の貫通孔が形成されており、複数のリードLDは複数の貫通孔(図示は省略)にそれぞれ挿入される。
【0183】
図13に示すように、筐体HSの支持部HSFは、蓋部HSTを保持する蓋保持部HThを備えている。
図13に示す例では、支持部HSFの4つの角部のそれぞれに蓋保持部HThが形成されている。蓋部HSTと支持部HSFの蓋保持部HThは、例えば図示しない接着材を介して固定される。あるいは、蓋部HSTは、接着材を介さずに、支持部HSFの収容部PKT上に載置されていても良い。支持部HSF上において、蓋部HSTの位置がずれなければ、完全に固定されていなくても、筐体HSの内部の空間への異物の侵入は防ぐことができる。
【0184】
以上の各工程により、
図1〜
図19を用いて説明した電子装置EA1が得られる。その後、外観検査や電気的試験など、必要な検査、試験を行い、出荷される。あるいは、図示しない実装基板に実装される。
【0185】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。なお、上記実施の形態中でもいくつかの変形例について説明したが、以下では、上記実施の形態で説明した変形例以外の代表的な変形例について説明する。
【0186】
<変形例1>
上記実施の形態では、配線基板SU2と複数のリードLDの一部を電気的に接続する方法として、Z方向に沿って直線的に延びるリードLDと配線基板SU2の周縁部に設けられた金属膜THMとを半田SD3を介して接続する実施態様について説明した。以下では、
図16および
図17に示す接続構造に対する変形例について説明する。
【0187】
図26は、
図17に対する変形例を示す要部拡大断面図である。また、
図27は、
図16に対する変形例を示す要部拡大平面図、
図28は、
図27のA−A線に沿った要部拡大断面図である。
【0188】
図26に示す電子装置EA2は、複数のリードLDのうち、配線基板SU2に接続されるリードLDのそれぞれが、Z方向と交差する方向に突出する突出部LPJを備えている点で、
図17に示す電子装置EA1と相違する。
図26に示す例では、突出部LPJは、リードLGH、リードLEHおよびリードLGLのそれぞれに形成されている。
【0189】
図26に示すように突出部LPJは、配線基板SU2の上面S2tの一部を覆うように設けられている。また、突出部LPJの少なくとも一部分は、半田SD3に接触している。このようにリードLDに突出部LPJを設け、突出部が半田SD3と接触することにより、
図17に示す例と比較して、リードLDと半田SD3の接触面積が増大する。このため、リードLDと半田SD3との接合強度が増加する。また、リードLDと半田SD3とが電気的に接続される部分における抵抗成分を低減できる。
【0190】
また、
図27および
図28に示す電子装置EA3は、複数のリードLDのうち、配線基板SU2に接続されるリードLDのそれぞれが、
図16、
図17、および
図26に示す半田SD3を介さずに配線基板SU2の金属膜THMと電気的に接続されている点で、
図16に示す電子装置EA1および
図26に示す電子装置EA2と相違する。
図28に示す例では、複数のリードLDのうち、リードLGH、リードLEHおよびリードLGLのそれぞれが、以下の接続方法により配線基板と接続されている。
【0191】
すなわち、
図27に示すように、筐体HSの内面と、リードLDとの間には、複数のリードLDおよび筐体HSの内面と接触し、かつ、筐体HSの辺HSe1に沿って延びる棒部材(スペーサ部材)SPB1が配置されている。同様に、筐体HSの内面と、リードLDとの間には、複数のリードLDおよび筐体HSの内面と接触し、かつ、筐体HSの辺HSe2(
図28参照)に沿って延びる棒部材(スペーサ部材)SPB2(
図28参照)が配置されている。棒部材SPB(SPB1およびSPB2)は、絶縁材料から成る棒状の部材である。電子装置EA3の場合、棒部材SPBを筐体HSの内面とリードLDとの間に挿入することで、リードLDを配線基板SU2の方向に押し付けている。この結果、リードLDが配線基板SU2の方向に曲がり、突出部LPJが配線基板SU2の金属膜THMに接触している。
【0192】
電子装置EA3のような接続方法は、半田SD3を用いずにリードLDと配線基板SU2とを接続できるので、隣り合うリードLD同士の短絡が発生し難い。このため、複数のリードLDの配置間隔を低減することができる。
【0193】
なお、電子装置EA3に対する更なる変形例として、
図17に示すように、Z方向に直線的に延びるリードLDを
図28に示す棒部材SPBにより押し付けても良い。ただし、リードLDと金属膜THMとを確実に接触させる観点からは、
図28に示すように、リードLDが突出部LPJを有していることが好ましい。
【0194】
また、
図27に示すように、一本の棒部材SPBにより複数のリードLDを一括して押し付ける場合、端子TU、TV、TWのように配線基板SU2と電気的に接続されないリードも配線基板SU2の方向に押し付けられる。しかし、既に説明したように、配線基板SU2の開口部(凹部、切欠き部)THL3には金属膜THMが形成されていないので、仮に、端子TU、TV、TWと配線基板SU2とが接触した場合でも、配線基板SU2と端子TU、TV、TWとは電気的に分離された状態を維持できる。
【0195】
<変形例2>
また、上記実施の形態では、3相インバータ回路に適用した実施態様を取り上げて説明したが、3相以外のインバータ回路にも適用できる。例えば、上記実施の形態で説明した技術を、単相インバータ回路などに適用しても良い。この場合、例えば
図1に示すレグLG1、LG2およびLG3のうちのいずれか一つを備えるインバータ回路が得られる。また、単層のインバータ回路において、ハイサイドのゲート線の経路距離と、ロウサイドのゲート線の経路距離とを容易に等長化することができる。
【0196】
<変形例3>
また、上記実施の形態では、複数のドライバ部品PDRおよびコントローラ部品PCTのそれぞれが、配線基板SU2の上面S2tに搭載されている実施態様を取り上げて説明したが、複数のドライバ部品PDRやコントローラ部品PCTが下面S2bに搭載されていても良い。また例えば、複数のドライバ部品PDRが上面S2tに搭載され、コントローラ部品PCTが下面S2bに搭載されていても良い。ただし、複数のドライバ部品PDRに接続されるゲート線GLH、GLL(
図8参照)の等長化を図る観点からは、複数のドライバ部品PDRのそれぞれは、同じ面に搭載されていることが好ましい。
【0197】
<変形例4>
また、上記実施の形態では、
図11に示すように、基板SU1と配線基板SU2の間の領域は封止材MGにより封止され、配線基板SU2の上面S2t側に搭載されたドライバ部品PDRなどは、封止材MGから露出した構成について説明した。しかし、配線基板SU2上にも封止材MGが充填されていても良い。この場合、配線基板SU2上に搭載された部品が封止材MGにより保護される。例えば、ドライバ部品PDRやコントローラ部品PCTとして、半導体チップを用いた場合、半導体チップにワイヤを接続すれば、ワイヤを保護する必要がある。そこで、配線基板SU2の上面S2t側が封止材MGに封止されていれば、このワイヤを保護することができる。
【0198】
<変形例5>
また、上記実施の形態では、スイッチング素子を構成するトランジスタQ1としてIGBTを使用する例について説明した。しかし、変形例として、インバータ回路のスイッチング素子として、パワーMOSFETを使用しても良い。パワーMOSFETの場合、トランジスタを構成する半導体素子内に、寄生ダイオードであるボディダイオードが形成される。このボディダイオードは、
図7に示すダイオード(フリーホイールダイオード)FWDの機能を果たす。このため、パワーMOSFETを備えた半導体チップを使用すれば、その半導体チップの内部にボディダイオードが内蔵される。したがって、パワーMOSFETを用いる場合には、一つのスイッチング素子として一つの半導体チップを用いれば良い。
【0199】
また、インバータ回路のスイッチング素子として、パワーMOSFETを使用する場合、上記実施の形態および実施の形態2でした説明において、エミッタと記載した部分をソースと読み替え、コレクタと記載した部分をドレインと読み替えて適用することができる。このため、重複する説明は省略する。
【0200】
<変形例6>
また、例えば、上記の通り種々の変形例について説明したが、上記で説明した各変形例同士を組み合わせて適用することができる。
【0201】
また、上記実施の形態で説明した半導体装置およびその製造方法について技術的思想を抽出すれば、下記のように表現することができる。
【0202】
〔付記1〕
(a)第1主面、および前記第1主面の反対側の第2主面を備え、複数の第1半導体部品および複数の第2半導体部品が前記第1主面に搭載された第1基板を準備する工程、
(b)平面視において、前記第1方向に延びる第1長辺、前記第1長辺の反対側の第2長辺、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第1短辺、前記第1短辺の反対側の第2短辺を持つ収容部を備えるケースを準備する工程、
(c)第3主面、および前記第3主面の反対側の第4主面を備え、前記第3主面または前記第4主面に複数の第3半導体部品が搭載された第2基板を準備する工程、
(d)前記(a)工程および前記(b)工程の後、前記ケースに前記第1基板を収容する工程、
(e)前記(d)工程の後、前記第1基板の前記第1主面と、前記第2基板の前記第3主面とが対向するように、前記第2基板を前記ケースの前記収容部に搭載する工程、
(f)前記ケースの前記収容部の内面に沿って、前記第1主面の法線方向である第3方向に延びる複数のリード部材のうちの一部と、前記第2基板とを電気的に接続する工程、
(g)前記ケースの前記収容部のうち、前記第1基板と前記第2基板の間の空間に樹脂を供給して前記第1半導体部品および前記第2半導体部品を封止する工程、
を含み、
前記複数の第1半導体部品のそれぞれは、第1パワートランジスタを備え、平面視において、前記収容部の前記第1長辺側に、第1方向に沿って並ぶように配置され、
前記複数の第2半導体部品のそれぞれは、第2パワートランジスタを備え、平面視において、前記収容部の前記第2長辺側に、前記第1方向に沿って並ぶように配置され、
前記複数の第3半導体部品のそれぞれは、前記第1パワートランジスタを駆動する第1駆動回路、および前記第2パワートランジスタを駆動する第2駆動回路を備え、平面視において前記第1方向に沿って並ぶように搭載され、
前記複数のリード部材は、前記ケースの前記内面の前記第1長辺に沿って配列され、前記第1パワートランジスタのゲート電極と電気的に接続される複数の第1リード部材と、前記ケースの前記内面の前記第2長辺に沿って配列され、前記第2パワートランジスタのゲート電極と電気的に接続される複数の第2リード部材と、を有し、
前記第2基板は、
前記ケースの前記第1長辺と前記複数の第3半導体部品のそれぞれとの間に配置され、かつ、前記第1駆動回路とを電気的に接続される複数の第1配線と、
前記ケースの前記第2長辺と前記複数の第3半導体部品のそれぞれとの間に配置され、かつ、前記第2駆動回路とを電気的に接続される複数の第2配線と、
を有し、
前記(f)工程において、
前記複数の第1配線は、前記ケースの前記第1長辺側で前記複数の第1リード部材に接続され、
前記複数の第2配線は、前記ケースの前記第2長辺側で前記複数の第2リード部材に接続される、電子装置の製造方法。