特許第6770710号(P6770710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770710
(24)【登録日】2020年9月30日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】貯湯給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   F24H1/18 503Z
   F24H1/18 503B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-186547(P2016-186547)
(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公開番号】特開2018-54138(P2018-54138A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】神田 宜儀
(72)【発明者】
【氏名】原 人志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 友徳
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−69667(JP,A)
【文献】 特開2013−133998(JP,A)
【文献】 特許第5938260(JP,B2)
【文献】 特開2007−218528(JP,A)
【文献】 特開2010−230191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の負圧を破壊する負圧破壊弁と、前記貯湯タンクに連通して前記貯湯タンク内の圧力を検知する圧力検知手段を備え、前記貯湯タンク内の湯水が予め定められた滞留期間を超えて滞留した場合には前記貯湯タンク内での雑菌の繁殖を防止するための加熱殺菌動作を行う貯湯給湯装置において、
前記圧力検知手段の検知圧力が所定圧力以下になった場合には、前記滞留期間を短縮して前記加熱殺菌動作を行うことを特徴とする貯湯給湯装置。
【請求項2】
前記所定圧力は、前記負圧破壊弁が作動して前記貯湯タンク内に空気を吸引する圧力であることを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯装置。
【請求項3】
前記負圧破壊弁は、前記貯湯タンク内の過圧を逃がすための過圧逃がし機能を備えた負圧破壊弁であることを特徴とする請求項1または2に記載の貯湯給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源機で加熱した湯水を貯湯タンクに貯留して給湯する貯湯給湯装置に関し、特に所定の期間を超えて貯湯タンク内に湯水が滞留している場合には、貯湯タンク内の湯水を加熱して殺菌する加熱殺菌動作を行う貯湯給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、貯湯タンクに貯留した湯水を給湯に使用する貯湯給湯装置が広く利用されている。このような貯湯給湯装置は、外部熱源機を使用して湯水を加熱し、加熱された高温の湯水を貯湯タンクに貯留する貯湯運転を行う。
【0003】
給湯時には、貯湯タンクに貯留された湯水が上水の給水圧によって貯湯タンクから出湯され、出湯された湯水に代わって新鮮な上水が貯湯タンクに貯留される。上水は浄水場で殺菌処理等をして供給されているので、給湯使用と共に貯湯タンクに新鮮な上水が供給されていれば、湯水が入れ替わって貯湯タンク内で雑菌が繁殖する虞はない。
【0004】
しかし、使用者が旅行等で不在のため給湯使用がない状態が続く場合や、給湯使用量が少量であるため貯湯タンク内の湯水が新鮮な上水にほとんど入れ替わらない場合がある。このように貯湯タンクの湯水が滞留する場合には、貯湯タンク内で雑菌が繁殖する虞があるので、雑菌を死滅させて繁殖を防止するための加熱殺菌動作を行うように構成されている。
【0005】
例えば、特許文献1のように、80時間毎に加熱殺菌動作を行って雑菌の繁殖を防ぐように構成された貯湯給湯装置がある。加熱殺菌動作は、貯湯タンクに例えば65℃の高温の湯水を満たすことにより雑菌を死滅させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5938260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、貯湯運転時には、加熱により湯水が熱膨張して貯湯タンク内の圧力が上昇する。貯湯タンク内の圧力が予め設定されている上限の圧力まで上昇すると、過圧逃がし弁から湯水を放出する。これにより貯湯タンク内の圧力を上限の圧力以下に抑えて漏水等を防いでいる。一方、加熱された湯水は降温するにつれて体積が収縮するが、上水の給水圧により体積収縮を補うように給水配管から上水が供給されるので、通常は貯湯タンク内が負圧になることはない。
【0008】
しかし、上水道の断水等のために貯湯タンク内が負圧になる場合がある。例えば、貯留された湯水が降温して収縮するときに断水等により上水が供給されない場合、湯水の体積収縮により貯湯タンク内の圧力が下がる。また、給水通路には貯湯給湯装置内の湯水が逆流しないように逆止弁が設けられているが、逆止弁が異物の噛み込み等によって機能せず、上水道管の破裂等による断水時に上水道管側が負圧になって貯湯タンク内の湯水が給水管側へ流れる場合がある。これらの場合には、負圧破壊弁から空気を吸引して貯湯タンク内が負圧になることを回避可能なように構成されている。
【0009】
こうして吸引された空気中には様々な雑菌が存在するので、空気を吸引した場合には貯湯タンク内で雑菌が繁殖する虞がある。例えばレジオネラ菌は人体に有害であり、その繁殖の虞がある場合には加熱殺菌を行ってから給湯する必要がある。貯湯タンク内の湯水の滞留期間が長くなるほど雑菌が繁殖するので、空気を吸引した場合には早期に加熱殺菌を行って給湯する湯水の安全を確保することが好ましい。
【0010】
そのため、従来の貯湯給湯装置は、特許文献1のように、空気吸引による雑菌の繁殖を想定して安全を確保するために周期的に加熱殺菌動作を行うように構成されている。しかし、頻繁には発生しない空気吸引を想定して頻繁に加熱殺菌動作を行うことは、エネルギー消費が増えるので好ましくない。
【0011】
本発明の目的は、貯湯タンク内に空気が混入したと判定された場合には、次の加熱殺菌動作までの期間を短縮して加熱殺菌動作を行うことにより、安全な湯水を給湯可能な貯湯給湯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明の貯湯給湯装置は、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の負圧を破壊する負圧破壊弁と、前記貯湯タンクに連通して前記貯湯タンク内の圧力を検知する圧力検知手段を備え、前記貯湯タンク内の湯水が予め定められた滞留期間を超えて滞留した場合には前記貯湯タンク内での雑菌の繁殖を防止するための加熱殺菌動作を行う貯湯給湯装置において、前記圧力検知手段の検知圧力が所定圧力以下になった場合には、前記滞留期間を短縮して前記加熱殺菌動作を行うことを特徴としている。
【0013】
上記構成により、貯湯タンク内の圧力が所定圧力以下になったことを検知した場合には、負圧破壊弁から空気を吸引したと判定して予め定められた滞留期間を短縮する。短縮した滞留期間を超えて貯湯タンク内の湯水が滞留した場合には、加熱殺菌動作を行うので安全な湯水を給湯可能である。
【0014】
第2の発明の貯湯給湯装置は、第1の発明において、前記所定圧力は、前記負圧破壊弁が作動して前記貯湯タンク内に空気を吸引する圧力であることを特徴としている。
【0015】
上記構成により、貯湯タンク内の圧力が負圧破壊弁から空気を吸引する圧力以下になったことを検知した場合には、空気の吸引があったと判定して予め定められた滞留期間を短縮する。短縮した滞留期間を超えて貯湯タンク内の湯水が滞留した場合には、加熱殺菌動作を行うので安全な湯水を給湯可能である。
【0016】
第3の発明の貯湯給湯装置は、第1または第2の発明において、前記負圧破壊弁は、前記貯湯タンク内の過圧を逃がすための過圧逃がし機能を備えた負圧破壊弁であることを特徴としている。
【0017】
上記構成により、加熱により湯水が熱膨張して貯湯タンク内の圧力が上昇した場合に圧力を逃がすことができるので、配管接続部等からの漏水等を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貯湯タンク内に空気が混入したと判定された場合には次の加熱殺菌動作までの期間を短縮して加熱殺菌動作を行うことにより、安全な湯水を給湯可能な貯湯給湯装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の貯湯給湯装置を備えた貯湯給湯システムの概略図である。
図2】貯湯給湯装置の貯湯運転時及び循環加熱回路の加熱殺菌動作時の湯水の流れを示す図である。
図3】貯湯タンクの加熱殺菌動作時の湯水の流れを示す図である。
図4】追焚湯水通路及び暖房湯水通路の加熱殺菌動作時の湯水の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0021】
最初に、本発明の貯湯給湯装置3を備えた貯湯給湯システム1について説明する。
図1に示すように、貯湯給湯システム1は、外部熱源機2と、貯湯給湯装置3で構成されている。外部熱源機2と貯湯給湯装置3は、入水管4aと出湯管4bにより接続されている。
【0022】
外部熱源機2は、図示を省略するが貯湯給湯装置3との間で湯水を循環させる循環ポンプを備え、貯湯給湯装置3から入水管4aを通って供給される湯水を加熱し、加熱された高温の湯水を出湯管4bから貯湯給湯装置3に供給する。外部熱源機2としては、燃料電池等による発電の排熱を利用する熱源機やヒートポンプ式熱源機等が使用可能である。尚、循環ポンプは貯湯給湯装置3に設けられていてもよい。
【0023】
次に、貯湯給湯装置3について説明する。
図2に示すように、貯湯給湯装置3は、補助熱源機5と、湯水を貯留する貯湯タンク6と、貯湯タンク6の上端部に接続された出湯通路7と、補助熱源機5で加熱された湯水を出湯通路7に供給する補助出湯通路8と、出湯通路7に接続されて湯水を給湯先へ供給する給湯通路9と、給湯通路9から分岐して浴槽(図示略)に湯張りを行う注湯通路10と、貯湯タンク6の湯水を外部熱源機2で加熱して貯湯タンク6に貯留するように循環させる循環加熱回路11と、貯湯タンク6に上水を供給する給水通路12と、湯水と上水を混合する混合弁13と、浴槽の湯水を加熱するための風呂追焚用の熱交換器14と、補助出湯通路8から分岐して風呂追焚用の熱交換器14に湯水を供給する追焚湯水通路15と、追焚回路16と、暖房端末(図示略)で使用する暖房用の湯水を加熱するための暖房用の熱交換器17と、追焚湯水通路15から分岐して暖房用の熱交換器17に湯水を供給する暖房湯水通路18と、暖房回路19と、各種制御を行う制御部20等を備えている。
【0024】
貯湯タンク6の側部には、複数の貯湯温度センサ6a〜6dが適当な間隔で設けられ、貯留された湯水の温度を検知する。図示を省略するが、貯湯タンク6の周囲は、貯留された湯水の降温を防ぐ保温材で覆われている。
【0025】
給水通路12は、上流端が上水源に接続され、下流端が貯湯タンク6の下端部に接続され、上水源から低温の上水を貯湯タンク6等に供給する。給水通路12から給水バイパス通路21が分岐されて混合弁13に接続されている。給水通路12には、分岐部より上流側に給水温度センサ42が設けられ、分岐部より下流側に逆止弁22が設けられている。
【0026】
分岐部の下流側には三方弁23が設けられ、分岐部と三方弁23の間に貯湯タンク6と連通して圧力を検知する圧力センサ24(圧力検知手段)と、過圧逃がし機能及び負圧破壊機能を備えた負圧破壊弁25が設けられている。負圧破壊弁25は、圧力が予め設定された上限の圧力を超えると湯水を放出し、予め設定された下限の圧力(所定圧力)以下になると空気を吸引する。三方弁23は、通常は上水が貯湯タンク6へ流れるように調節されている。
【0027】
給水バイパス通路21には逆止弁26が設けられている。また、給水バイパス通路21から高温出湯回避通路27が分岐されて給湯通路9に接続され、高温出湯を回避可能に構成されている。
【0028】
出湯通路7は、上流端が貯湯タンク6の上端部に接続され下流端が混合弁13に接続されている。混合弁13には給湯通路9の上流端が接続されている。出湯通路7には貯湯タンク6から出湯された湯水の温度を検知するタンク出湯温度センサ43が設けられている。
【0029】
混合弁13は、給水バイパス通路21から供給される低温の上水と出湯通路7から供給される高温の湯水との混合比を調節して、ユーザが操作リモコン(図示略)を介して設定した温度の湯水を給湯通路9に供給する。給湯通路9には、流量調整弁28と給湯流量センサ44と給湯温度センサ45が設けられている。
【0030】
給湯通路9から分岐されて浴槽に湯張りを行う注湯通路10には開閉弁29が設けられ、注湯通路10の下流端は後述の風呂戻り通路部16aに接続されている。
【0031】
風呂追焚用の熱交換器14は、補助出湯通路8から分岐した追焚湯水通路15を流れる湯水との熱交換により追焚回路16を流れる浴槽の湯水を加熱する。追焚湯水通路15の下流端は、三方弁23にて給水通路12から分岐した下部補助通路30に接続されている。追焚湯水通路15には開閉弁31が設けられ、風呂追焚運転時には熱交換器14に補助熱源機5で加熱された湯水が流れるように開けられる。
【0032】
追焚回路16は、浴槽の湯水を熱交換器14において加熱するように循環させるものであり、浴槽の湯水を熱交換器14に送る循環ポンプ32が介装された風呂戻り通路部16aと、熱交換器14で加熱された湯水を浴槽に送る風呂往き通路部16bを有する。
【0033】
暖房用の熱交換器17は、追焚湯水通路15から分岐した暖房湯水通路18を流れる湯水との熱交換により暖房回路19を流れる暖房用湯水を加熱する。暖房湯水通路18の下流端は追焚湯水通路15の開閉弁31の下流側に接続されている。暖房湯水通路18には開閉弁33が設けられ、暖房運転時には熱交換器17に補助熱源機5で加熱された湯水が流れるように開けられる。
【0034】
暖房回路19は、暖房端末で使用する暖房用の湯水を熱交換器17において加熱するように循環させるものであり、暖房用の湯水を熱交換器17に送る循環ポンプ34が介装された暖房戻り通路部19aと、熱交換器17で加熱された湯水を暖房端末に送る暖房往き通路部19b等を有する。暖房戻り通路部19aには暖房用湯水の膨張を吸収する膨張タンク35が設けられている。
【0035】
補助熱源機5は、燃料の燃焼熱により湯水を加熱して補助出湯通路8を介して出湯通路7に高温の湯水を供給する。補助出湯通路8には、追焚湯水通路15の分岐部より下流側に流量調整弁36が設けられている。補助熱源機5に貯湯タンク6上部から湯水を供給するための上部補助通路37が出湯通路7から分岐して三方弁38に接続され、補助熱源機5に湯水や上水を供給するための下部補助通路30が三方弁38に接続され、三方弁38から延びる補助導入通路39が補助熱源機5に接続されている。
【0036】
補助導入通路39には湯水を補助熱源機5に送るためのポンプ40が介装されている。三方弁38は、補助導入通路39への湯水の供給通路として上部補助通路37と下部補助通路30を択一的に切換え可能である。
【0037】
循環加熱回路11は、往き通路部11aと戻り通路部11bとこれらを接続するバイパス通路部11cを備えている。往き通路部11aは、上流端が貯湯タンク6の下端部に接続され、下流端は外部熱源機2と接続する入水管4aに接続されている。戻り通路部11bは、上流端が外部熱源機2と接続する出湯管4bに接続され、下流端は貯湯タンク6の上端部に接続されている。
【0038】
往き通路部11aと戻り通路部11bには夫々温度センサ46,47が設けられ、外部熱源機2による加熱前後の湯水の温度を検知可能である。往き通路部11aとバイパス通路部11cの接続箇所に切換三方弁41が介装されている。切換三方弁41は、外部熱源機2に送る湯水の供給通路を貯湯タンク6側とバイパス通路部11c側とに切換え可能である。
【0039】
制御部20は、貯湯温度センサ6a〜6d、タンク出湯温度センサ43、給水温度センサ42、給湯温度センサ45等により各部の湯水温度を取得し、切換三方弁41、混合弁13、三方弁23、三方弁38、その他の弁類やポンプと共に外部熱源機2や補助熱源機5を作動させて、給湯設定温度の給湯等が可能なように種々の運転を制御する。また、混合弁13の混合比と給湯流量センサ44の検知流量の積算値に基づいて貯湯タンク6から出湯された湯水の量を算出し、加熱殺菌動作を制御する。
【0040】
次に、貯湯運転について説明する。
制御部20は、外部熱源機2を作動させて、図2に示すように貯湯タンク6の下部から低温の湯水を外部熱源機2に供給し、外部熱源機2で加熱された高温の湯水を貯湯タンク6の上部から貯留する貯湯運転を行う。
【0041】
貯湯タンク6の湯水が加熱されて戻ってくるので、加熱された湯水の熱膨張により貯湯タンク6内の圧力が上昇する。貯湯運転の継続により貯湯タンク6内の圧力が上限の圧力になると、三方弁23を介して貯湯タンク6と連通する負圧破壊弁25から湯水を放出し、貯湯タンク6内の圧力が上限の圧力を超えないようにしている。
【0042】
次に、加熱殺菌動作について説明する。
給湯使用がない状態が続く場合や、給湯使用量が少量であるため貯湯タンク6内の湯水が新鮮な上水にほとんど入れ替わらない場合には、貯湯タンク6内や配管内で雑菌が繁殖する虞がある。また、一旦雑菌が繁殖すると、貯湯タンク6内の湯水が入れ替わっても雑菌が残り、すぐに雑菌が繁殖するようになる。雑菌が繁殖した湯水は人体に有害であり、そのまま給湯することはできない。そのため、予め定められた滞留期間(例えば500時間)内に貯湯タンク6内の湯水の全量が入れ替わらない場合に、雑菌を死滅させて繁殖を防止するための加熱殺菌動作を行うように構成されている。尚、滞留期間の始期は、貯湯タンク6から出湯された湯水の量に基づいて更新され、加熱殺菌動作完了時にも更新される。
【0043】
加熱殺菌動作は、出湯通路7を遮断するように混合弁13を調節し、三方弁38を下部補助通路30側に切換え、給水通路12を遮断して貯湯タンク6と下部補助通路30が連通するように三方弁23を調節し、ポンプ40を作動させる。図3に示すように、貯湯タンク6内の湯水を補助熱源機5で例えば65℃〜80℃の高温に加熱し、この高温の湯水を貯湯タンク6に貯留する。
【0044】
貯湯タンク6に高温の湯水が満たされたら、流量調整弁36を閉じ、開閉弁31,33を開け、三方弁38を上部補助通路37側に切換えて、図4に示すように上部補助通路37と追焚湯水通路15と暖房湯水通路18を高温の湯水で加熱殺菌する。また、図2に示すように貯湯タンク6内の高温の湯水を循環加熱回路11に循環させて加熱殺菌する。尚、貯湯タンク6に貯留する湯水の加熱は、外部熱源機2により行うことも可能である。
【0045】
加熱殺菌動作中は、貯湯タンク6に貯留された湯水を給湯に使用することはできない。そのため、加熱殺菌動作中に給湯使用する場合には、加熱殺菌動作を中断して給水通路12と下部補助通路30が連通するように三方弁23を調節し、補助熱源機5で加熱した高温の上水を混合弁13で低温の上水と混合して給湯する。給湯使用が終わったら、給水通路12を遮断して貯湯タンク6と下部補助通路30が連通するように三方弁23を戻して、加熱殺菌動作を再開する。
【0046】
次に、本発明の貯湯給湯装置3の作用、効果について説明する。
貯湯運転により加熱した湯水を貯湯タンク6に貯留する。このとき加熱された湯水の熱膨張による貯湯タンク6内の圧力上昇は、過圧逃がし機能を備えた負圧破壊弁25から湯水を放出することにより、予め定められている上限の圧力以下に抑えることができる。
【0047】
貯湯運転後に給湯使用量が少量、または給湯使用がないため加熱された湯水が貯湯タンク6に滞留した状態が続くと、貯湯タンク6内の湯水の温度が下がっていく。このとき、湯水の降温と共に湯水の体積が収縮するが、通常は、給水通路12から体積収縮を補うように上水が供給されるので、貯湯タンク6内は負圧にならない。従って、給水通路12の負圧破壊弁25から空気は吸引されない。
【0048】
しかし、貯湯運転後に上水道の断水等が発生した場合には湯水の体積収縮を補う上水が供給されず、貯湯タンク6内の圧力が低下する。貯湯タンク6内の圧力が所定圧力以下になると、負圧破壊弁25が機能して空気が吸引される。
【0049】
また、上水道管の破裂等による断水が発生して上水道管側が負圧になっても、給水通路12には逆止弁22が設けられているので、貯湯タンク6内の湯水が給水通路12を逆流することを防いでいる。しかし、この逆止弁22が例えば異物を噛み込んで機能せず、貯湯タンク6内の湯水が逆流して所定圧力以下になる場合がある。この場合も、負圧破壊弁25が機能して空気が吸引される。
【0050】
吸引された空気中の雑菌により配管内等で雑菌が繁殖する虞があるので、空気を吸引した場合には早期に加熱殺菌動作を行うようにする。空気の吸引を直接検知することが困難であるため、圧力が所定圧力以下になったことを圧力センサ24により検知した場合に、制御部20は空気を吸引したと判定する。
【0051】
空気を吸引したと判定すると、次の加熱殺菌動作までの滞留期間を例えば100時間に短縮する。短縮された滞留期間内に貯湯タンク6に貯留された湯水が全量入れ替わらなければ加熱殺菌動作を行う。こうして雑菌の繁殖の虞がある貯湯タンク6内を加熱殺菌動作により加熱殺菌するので、安全な湯水を給湯することができる。尚、短縮された滞留期間内に貯湯タンク6に貯留された湯水が全量入れ替われば、雑菌の繁殖の虞がないので加熱殺菌動作を行わない。
【0052】
また、本発明の貯湯給湯装置3であれば、殺菌された上水や湯水が貯湯タンク6に貯留され、空気が吸引されない通常時には雑菌が繁殖する虞がないので頻繁に加熱殺菌動作を実行する必要がなく、予め設定される滞留期間を例えば500時間程度にして、エネルギー消費を抑えることができる。
【0053】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0054】
2 外部熱源機
3 貯湯給湯装置
5 補助熱源機
6 貯湯タンク
7 出湯通路
8 補助出湯通路
11 循環加熱回路
12 給水通路
20 制御部
22 逆止弁
23 三方弁
24 圧力センサ(圧力検知手段)
25 負圧破壊弁
30 下部補助通路
36 流量調整弁
37 上部補助通路
38 三方弁
39 補助導入通路
40 ポンプ
44 給湯流量センサ
図1
図2
図3
図4