(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術は、結束鋼管の端面を撮像した画像を用いて鋼管本数を計数するもので、結束鋼管を形成している各鋼管の端面が明確に表示されている画像を準備する必要がある。ここで、結束鋼管の端面を正面から1台のカメラで撮像するだけでは、結束鋼管の各鋼管の端面が明確に表示された画像は得られないので、結束鋼管を形成している複数の鋼管の少なくとも一部が共通して含まれるように、複数の位置でそれぞれ結束鋼管の端面を撮像し、得られた各画像を重ね合わせて合成画像を作成することにより、結束鋼管の各鋼管の端面が明確に表示された画像を得ている。しかしながら、合成画像を得るには複数の作業を行う必要があるため、結束鋼管の出荷に即応して鋼管本数を確認することはできないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、口径規格が同一の複数の鋼管が長手方向を揃えて束ねられた結束鋼管に含まれる鋼管本数を出荷に即応して計数することが可能な結束鋼管検査装置及び結束鋼管検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る結束鋼管検査装置は、口径規格が同一の複数の鋼管が長手方向を揃えて束ねられた結束鋼管に含まれる鋼管本数を数える結束鋼管検査装置において、
前記結束鋼管の端面を該結束鋼管の長手方向から撮影して結束鋼管端面画像を作成する撮像手段と、
前記結束鋼管端面画像から輪郭線を抽出して輪郭線画像を形成する輪郭線抽出手段と、
前記輪郭線画像に含まれる円弧を抽出し、該円弧を円周の一部とする円弧対応円の該輪郭線画像上における中心位置及び該輪郭線画像内の該円弧対応円の総数を求める円検出手段と、
前記各円弧対応円の中心位置を用いて、該円弧対応円毎に近接する円弧対応円までの近接中心間距離を求める近接中心間距離設定手段と、
前記鋼管の口径規格が同一であることから、該結束鋼管の隣接鋼管中心間距離の分布範囲を設定し、前記円弧対応円毎に前記近接中心間距離と前記分布範囲を比較して、該近接中心間距離が該分布範囲外にある前記円弧対応円を特定し、特定された該円弧対応円の個数を前記総数から除いた残数を前記結束鋼管の鋼管本数とする鋼管本数計数手段とを有し
、
前記円検出手段には前記各円弧対応円の半径を求める機能が設けられ、
前記結束鋼管の結束鋼管情報を取得するデータ取得手段と、前記円検出手段で求めた前記円弧対応円の半径と前記結束鋼管情報中の口径規格から設定される前記鋼管の半径分布範囲を比較して、該半径分布範囲から外れる半径の前記円弧対応円が存在する場合は異径鋼管有り、該半径分布範囲から外れる半径の前記円弧対応円が存在しない場合は異径鋼管無しと判定する異径鋼管検出手段とを有している。
【0007】
前記目的に沿う第2の発明に係る結束鋼管検査方法は、口径規格が同一の複数の鋼管を長手方向を揃えて束ねた結束鋼管に含まれる鋼管本数を数える結束鋼管検査方法において、
前記結束鋼管の端面を該結束鋼管の長手方向から撮影して結束鋼管端面画像を作成する第1工程と、
前記結束鋼管端面画像から輪郭線を抽出して輪郭線画像を形成する第2工程と、
前記輪郭線画像に含まれる円弧を抽出し、該円弧を円周の一部とする円弧対応円の該輪郭線画像上における中心位置及び該円弧対応円の総数を求める第3工程と、
前記各円弧対応円の中心位置を用いて、該円弧対応円毎に近接する円弧対応円までの近接中心間距離を求める第4工程と、
前記鋼管の口径規格が同一であることから、該結束鋼管の隣接鋼管中心間距離の分布範囲を設定し、前記円弧対応円毎に前記近接中心間距離と前記分布範囲を比較して、該近接中心間距離が該分布範囲外にある前記円弧対応円を特定し、特定された該円弧対応円の個数を前記総数から除いた残数を前記結束鋼管の鋼管本数とする第5工程とを有
し、
前記第1工程では前記結束鋼管の結束鋼管情報を取得し、前記第3工程では前記各円弧対応円の半径を求め、更に、前記第3工程で求めた前記円弧対応円の半径と前記結束鋼管情報中の口径規格から設定される前記鋼管の半径分布範囲を比較して、該半径分布範囲から外れる半径の前記円弧対応円が存在する場合は異径鋼管有り、該半径分布範囲から外れる半径の前記円弧対応円が存在しない場合は異径鋼管無しと判定する第6工程を有する。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明に係る結束鋼管検査装置及び第2の発明に係る結束鋼管検査方法においては、結束鋼管端面画像の輪郭線画像に含まれる円弧を抽出して鋼管本数を求めるので、各鋼管の端面が鮮明に表れている結束鋼管端面画像は要求されない。このため、結束鋼管端面画像の作成が容易になって、結束鋼管の出荷に即応して結束鋼管に含まれる鋼管本数を計数することが可能となる。
また、結束鋼管の隣接鋼管中心間距離の分布範囲内に存在する近接中心間距離を有する円弧対応円の総数を鋼管本数とするので、輪郭線画像において、鋼管画像に基づかない輪郭線から円弧が抽出されても、この円弧を円周の一部とする円弧対応円の近接中心間距離は結束鋼管の隣接鋼管中心間距離の分布範囲から大きく外れるため、結束鋼管端面画像から結束鋼管に含まれる鋼管本数を正確に計数することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図3に示すように、本発明の一実施の形態に係る結束鋼管検査装置10は、口径規格が同一の複数(
図3では19本)の鋼管11が長手方向を揃えて束ねられて形成された結束鋼管12に含まれる鋼管本数を数える装置である。なお、
図3の符号13は、鋼管11を結束するための帯材である。
【0011】
結束鋼管検査装置10は、図示しない照明装置で照らされている結束鋼管12の端面を結束鋼管12の長手方向から撮影して結束鋼管端面画像を作成する撮像手段の一例であるCCDカメラ14と、結束鋼管端面画像から輪郭線を抽出して輪郭線画像を形成する輪郭線抽出手段15と、輪郭線画像に含まれる円弧を抽出し、抽出した円弧を円周の一部とする円弧対応円の総数M(
図4では、M=20)を求めると共に、円弧対応円C
i(i=1、2、・・・、M)毎に中心座標(輪郭線画像上に設定した二次元座標系における中心位置)と半径rを求める円検出手段16とを有している。
【0012】
ここで、輪郭線抽出手段15は、例えば、入手した結束鋼管端面画像に対して微分処理を行い、微分強度が所定の閾値より大きい点(2値化処理により抽出した点)を輪郭点として抽出する機能を備えたプロクラムをコンピュータに搭載させることにより、円検出手段16は、抽出された輪郭点の座標をハフ変換することにより抽出された円弧を円周の一部とする円弧対応円の輪郭線画像上における中心座標と半径、及び円弧対応円の総数を求める機能を備えたプロクラムをコンピュータに搭載させることによりそれぞれ構成することができる。
なお、円検出手段16では、輪郭線画像上の輪郭点の座標を数学的に処理することにより円弧を検出するので、
図4に示すように、円検出手段16により求めた円弧対応円は、結束鋼管端面画像内の結束鋼管画像の輪郭線から抽出された円弧に基づく円弧対応円(
図4では、C
1、C
2、・・・、C
19)と、結束鋼管端面画像内の結束鋼管画像以外の画像の輪郭線から抽出された円弧に基づく円弧対応円(
図4ではC
20)から構成される。
【0013】
また、
図1に示すように、結束鋼管検査装置10は、各円弧対応円C
i(i=1、2、・・・、M)の中心座標を用いて、円弧対応円C
i(i=1、2、・・・、M)毎に近接する円弧対応円までの近接中心間距離を求める機能を備えたプロクラムをコンピュータに搭載させることにより構成した近接中心間距離設定手段17と、鋼管11の口径規格が同一であることから、結束鋼管12の隣接鋼管中心間距離の分布範囲を設定し、円弧対応円C
i毎に近接中心間距離と分布範囲を比較して、近接中心間距離が分布範囲外にある円弧対応円(
図4では、C
20)を特定し、特定された円弧対応円の個数Sを総数Mから除いた残数(=M−S)を結束鋼管12の鋼管本数とする鋼管本数計数手段18とを有している。
【0014】
図1に示すように、更に、結束鋼管検査装置10は、例えば、結束鋼管12に添付された二次元バーコード又はICタグ等の記録媒体19に書き込まれた結束鋼管情報(例えば、結束鋼管12を構成する鋼管11の口径規格、長さ、使用本数等)を取得する(読み取る)データ取得手段20と、特定された円弧対応円(
図4では、C
1、C
2、・・・、C
19)の半径と結束鋼管情報中の口径規格から設定される鋼管11の半径分布範囲を比較して、半径分布範囲から外れる半径の円弧対応円が存在する場合は異径鋼管有り、半径分布範囲から外れる半径の円弧対応円が存在しない場合は異径鋼管無しと判定する機能を備えたプロクラムをコンピュータに搭載させることにより構成した異径鋼管検出手段21とを有している。
【0015】
そして、結束鋼管検査装置10は更に、
図1に示すように、鋼管本数計数手段18で得られた鋼管本数と結束鋼管情報中の使用本数を比較して、鋼管本数が使用本数に一致するか否かを判定する機能を備えたプロクラムをコンピュータに搭載させることにより構成した本数照合手段22と、本数照合手段22で鋼管本数が使用本数に一致すると判定され、かつ異径鋼管検出手段21で異径鋼管無しと判定された場合は合格判定を、鋼管本数が使用本数に一致すると判定され、かつ異径鋼管検出手段21で異径鋼管有りと判定された場合は誤口径として不合格判定を、鋼管本数が使用本数に一致しないと判定された場合は誤本数として不合格判定を行う機能を備えたプロクラムをコンピュータに搭載させることにより構成した合否判定手段23と、合否判定手段23の判定結果を、例えば、文字、音、及び光のいずれか1を用いて又は2以上を組み合わせて表示する表示手段24と、合否判定手段23の判定結果、結束鋼管12の結束鋼管端面画像、及び結束鋼管情報を記憶する記憶手段25とを有している。
【0016】
続いて、本発明の一実施の形態に係る結束鋼管検査装置10を使用した結束鋼管検査方法について説明する。
図2、
図3、
図4に示すように、口径規格が同一の複数の鋼管11を長手方向を揃えて束ねた結束鋼管12に含まれる鋼管本数を数える方法であって、例えば、結束鋼管12に添付された記録媒体19に書き込まれた結束鋼管12の結束鋼管情報を取得し(読み取り)、結束鋼管12の端面を結束鋼管12の長手方向から撮影して結束鋼管端面画像を作成する第1工程と、結束鋼管端面画像から輪郭線を抽出して輪郭線画像を形成する第2工程と、輪郭線画像に含まれる円弧を抽出し、抽出された円弧を円周の一部とする円弧対応円の総数Mを求めると共に、円弧対応円C
i(i=1、2、・・・、M、
図4ではM=20)の中心座標(輪郭線画像上に設定した二次元座標系における中心位置)と円弧対応円C
iの半径を求める第3工程と、各円弧対応円C
iの中心座標を用いて、円弧対応円C
i毎に近接する円弧対応円までの近接中心間距離を求める第4工程とを有している。
【0017】
更に、結束鋼管検査方法は、鋼管11の口径規格が同一であることから、結束鋼管12の隣接鋼管中心間距離の分布範囲を設定し、円弧対応円C
i毎に近接中心間距離と分布範囲を比較して、近接中心間距離が分布範囲外にある円弧対応円(
図4では、C
20)を特定し、特定された円弧対応円の個数Sを総数Mから除いた残数(=M−S)を結束鋼管12の鋼管本数とする第5工程と、
第3工程で特定された円弧対応円の半径と結束鋼管情報中の口径規格から設定される鋼管11の半径分布範囲を比較して、半径分布範囲から外れる半径の円弧対応円が存在する場合は異径鋼管有り、半径分布範囲から外れる半径の円弧対応円が存在しない場合は異径鋼管無しと判定する第6工程と、第5工程で得られた鋼管本数と結束鋼管情報中の使用本数を比較し、鋼管本数が使用本数に一致し、かつ第6工程で異径鋼管無しと判定された場合は合格判定を、鋼管本数が使用本数に一致し、かつ第6工程で異径鋼管有りと判定された場合は誤口径として不合格判定を、鋼管本数が使用本数に一致しない場合は誤本数として不合格判定を行う第7工程とを有する。
【0018】
本発明の結束鋼管検査方法では、例えば、CCDカメラ14を用いて結束鋼管12を撮影することにより結束鋼管12の結束鋼管端面画像は容易に作成する(第1工程)ことができ、得られた結束鋼管端面画像に対して、市販の画像解析装置を適用することにより結束鋼管端面画像の輪郭線画像を容易に形成する(第2工程)ことができるので、第1、第2工程の説明は省略し、第3〜第7工程について説明する。
【0019】
(第3工程)
輪郭線画像上に二次元座標系を設け、輪郭線上の輪郭点(x,y)を、輪郭点(x,y)を通るすべての円を表示する3つのパラメータ(円の中心位置のx座標P
1、円の中心位置のy座標P
2、円の半径r)で構成される三次元空間の曲面に変換(ハフ変換)する。その結果、三次元空間には、輪郭点(x,y)の個数に相当する曲面が存在することになって、これらの曲面に共有点が存在する場合、各曲面に対応する輪郭点(x,y)は一つの円周上に存在することになる。このため、輪郭点(x,y)の位置を変えながら共有点が検出される度に、各輪郭点(x,y)に対して、(x−P
1)
2+(y−P
2)
2=r
2の関係を適用することにより、円の中心座標(P
1、P
2)と半径rを決定することができ、共有点の総数Mが円の総数に対応する。なお、検出された円弧対応円には、識別のために番号1〜Mを付与する。
【0020】
輪郭線画像から円を抽出する場合、輪郭線上の全輪郭点に対しハフ変換を行なって円の中心座標(P
1、P
2)と半径rを決定すると、非常に演算時間が長くなるという問題が生じる。そこで、円の中心座標(P
1、P
2)、半径r、及び総数が判明しているモデル輪郭線画像を用いて、輪郭線上に設定する輪郭点の個数を増加させながら、検出される円の中心座標(P
1、P
2)、半径r、及び総数の変化を求め、検出された円の中心座標(P
1、P
2)、半径r、及び総数が、それぞれ判明している値に一定精度範囲で一致するために必要な輪郭点の個数を求めて、演算時間の短縮化を図った。このため、輪郭線画像からは円弧が抽出されることになり、検出される円は、抽出された円弧を円周の一部とする円弧対応円となる。
【0021】
(第4工程)
先ず、円弧対応円C
iの中心座標を用いて、円弧対応円同士の中心間距離を求める。次いで、円弧対応円C
i(i=1、・・・、M)毎に、円弧対応円C
iの周囲に存在する円弧対応円C
j(j=1、・・・、i−1、i+1、・・・M)との間の中心間距離d
i1、・・・、d
ii−1、d
ii+1、・・・、d
Mを小さい順に並べ、先頭から(値の小さいものから)k番目までの中心間距離を用いて最近傍集合N
i(=[d
iλ1、d
iλ2、d
iλ3、・・・、d
iλk])を求め、最近傍集合N
iの要素の平均値(=(d
iλ1+d
iλ2+d
iλ3+・・・+d
iλk))/k)を近接中心間距離L
iとする。
【0022】
ここで、円弧対応円C
i(i=1、・・・、M)と円弧対応円C
j(j=1、・・・、M、但しi≠j)との間の中心間距離d
ijは、円弧対応円C
iの中心座標(P
1i、P
2i)、円弧対応円C
jの中心座標(P
1j、P
2j)を用いてd
ij={(P
1i−P
1j)
2+(P
2i−P
2j)
2}
1/2として求めることができる。なお、
図5(A)には、
図4の円弧対応円C
1の周囲に存在する円弧対応円C
j(j=2、・・・、20)との間の中心間距離d
12、d
13、d
14、・・・、d
117、d
118、d
119、d
120を、
図5(B)には、
図4の円弧対応円C
20の周囲に存在する円弧対応円C
j(j=1、2、3、・・・、19)との間の中心間距離d
201、d
202、d
203、・・・、d
2017、d
2018、d
2019をそれぞれ示す。
【0023】
また、口径規格が同一の鋼管11を用いて結束鋼管12を形成した場合、結束鋼管12の内側に存在する鋼管には6本の鋼管が、結束鋼管12の外周角部に存在する鋼管には3本の鋼管が、結束鋼管12の外周辺部に存在する鋼管には4本の鋼管がそれぞれ隣接する。従って、最近接する円弧対応円の最大個数は6個であり、近接中心間距離を求める円弧対応円の位置が結束鋼管12内で変化しても近接中心間距離は一定値を示すことから、kの値は1〜6の範囲に設定できる。更に、結束鋼管端面画像の結束鋼管の束から離れた位置において円弧対応円が複数検出される確率は非常に小さいので、結束鋼管の束から離れた位置で検出された円弧対応円C
iの周囲に存在する円弧対応円C
jとの間の中心間距離d
ijを小さい順に並べた場合、先頭から2番目までの中心間距離を用いて最近傍集合N
jを形成すると、2番目に小さい値の集合要素は、円弧対応円C
iと結束鋼管端面画像の結束鋼管内の円弧対応円C
jとの間の中心間距離を示す確率が高くなる。このため、kの値を少なくとも2とすることにより、近接中心間距離L
iは、近接中心間距離を求める円弧対応円の場所(結束鋼管12内であるか又は結束鋼管12の束から離れた位置であるか)を反映した値となる。
【0024】
(第5工程)
先ず、鋼管11の口径規格が同一であることから、結束鋼管12の隣接鋼管中心間距離の分布範囲を設定する。次いで、円弧対応円C
i(i=1、・・・、M)毎に近接中心間距離L
iと分布範囲を比較して、近接中心間距離L
iが分布範囲外にある円弧対応円(例えば、結束鋼管端面画像の結束鋼管の束から離れた位置で検出された円弧対応円、
図4ではC
20)を特定し、特定された円弧対応円の個数Sを円弧対応円の総数Mから除いた残数(=M−S)を結束鋼管12の鋼管本数とする。
ここで、隣接鋼管中心間距離の分布範囲は、例えば、円弧対応円C
i(i=1、・・・、M)の近接中心間距離L
iの平均値L
A(=(L
1+L
2+・・・+L
M)/M)と、近接中心間距離L
iの不偏分散u
2から得られる不偏標準偏差uと、数値係数α
1、α
2を用いて、上限値をL
A+α
1u、下限値をL
A−α
2uとして設定することができる。なお、不偏分散u
2は{(L
1−L
A)
2+(L
2−L
A)
2+・・・+(L
M−L
A)
2}/(M−1))として算出される。
【0025】
そして、第1工程で取得した結束鋼管12の結束鋼管情報中の鋼管11の口径規格から、結束鋼管端面画像における鋼管画像の直径(画素数)が判るので、L
A+α
1uが鋼管画像の直径より大きくなるように、L
A及びuの値に応じてα
1を設定する。これにより、例えば、結束鋼管端面画像の結束鋼管の束から離れた位置で検出された円弧対応円(
図4ではC
20)の近接中心間距離は上限値を超えるため鋼管本数の計数において排除され、特定された円弧対応円C
20の個数1を総数20から除いた残数19を結束鋼管12の鋼管本数とする。
また、L
A−α
2uが鋼管画像の直径より小さくなるように、L
A及びuの値に応じてα
2を設定する。これにより、例えば、円弧対応円が重なって検出された場合、これらの円弧対応円の近接中心間距離は下限値を下回るため、重なっている円弧対応円は鋼管本数の計数において排除の対象となる。ここで、重なっている円弧対応円のそれぞれの近接中心間距離とL
A−α
2uを順次比較する場合、近接中心間距離がL
A−α
2uより小さくなって対応する円弧対応円が鋼管本数の計数において排除される度に、残りの円弧対応円の中心座標を用いて円弧対応円毎の近接中心間距離の平均値L
Aを再計算してL
A−α
2uの値を更新しながら行う。その結果、鋼管本数の計数において、重なっている円弧対応円の中の一つを残して、他の円弧対応円を排除することができる。
【0026】
(第6工程)
結束鋼管端面画像中の鋼管画像は、鋼管11の肉厚を反映した外周線と内周線から構成されるが、結束鋼管端面画像を2値化処理すると、外周線と内周線の中でより鮮明な(コントラストの高い)方の線に対応した輪郭線が抽出され易い。
例えば、結束鋼管端面画像を2値化処理して得られる輪郭線画像が、鋼管11の内周線に対応する輪郭線を含む場合、
第3工程で特定された円弧対応円の半径は、鋼管11の内半径に対応する。一方、結束鋼管情報中の口径規格に基づいて、鋼管11の最大内半径と最小内半径をそれぞれ画素数を用いて設定できる。従って、鋼管11の最大内半径と最小内半径を用いて設定される鋼管11の内半径分布範囲と
第3工程で特定された各円弧対応円の半径を比較して、鋼管11の内半径分布範囲から外れる半径の円弧対応円が存在する場合は、結束鋼管端面画像中に異径鋼管の画像が存在していることになって、結束鋼管12中に異径鋼管有りと判定でき、鋼管11の内半径分布範囲から外れる半径の円弧対応円が存在しない場合は、結束鋼管端面画像中に異径鋼管の画像が存在しないことになって、結束鋼管12中に異径鋼管無しと判定できる。
【0027】
(第7工程)
結束鋼管の合否条件は、結束鋼管端面画像を用いて計数された鋼管本数が結束鋼管情報中の使用本数に一致し、かつ鋼管本数の計数に使用された鋼管画像から得られる鋼管のサイズ(例えば、半径)が結束鋼管情報中の口径規格の範囲内であることである。このため、先ず、第5工程で得られた鋼管本数と結束鋼管情報中の使用本数を比較し、鋼管本数が使用本数に一致しない場合は誤本数として不合格判定する。次いで、鋼管本数が使用本数に一致した場合、更に結束鋼管を構成している各鋼管11の鋼管画像毎に、鋼管画像のサイズが結束鋼管情報中の口径規格の範囲内である(異径鋼管無し)か否(異径鋼管有り)かを判定する。そして、異径鋼管有りと判定された場合は誤口径として不合格判定し、異径鋼管無しと判定された場合は合格判定する。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
25Aの鋼管19本を束ねた結束鋼管に本発明を適用し、結束鋼管の鋼管本数の計数と、鋼管の口径検出が可能であることを確認した。
先ず、
図6に示すように、結束鋼管の端面を長手方向から撮影して結束鋼管端面画像(482×383ピクセル)を作成した。次いで、結束鋼管端面画像から輪郭線画像を形成し、輪郭線画像の各輪郭点をハフ変換することにより、輪郭線画像に含まれる円弧をそれぞれ抽出して円弧対応円の中心座標と内半径を求めた。そして、輪郭線画像に含まれる円弧の抽出が終了した時点で検出されている円弧対応円の総数を求めると19であった。検出された円弧対応円の画像を
図7に、検出された円弧対応円毎の中心座標と内半径を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
次いで、円弧対応円毎に、円弧対応円の周囲に存在する他の円弧対応円との間の中心間距離を小さい順に並べ、先頭から2番目までの中心間距離を用いて最近傍集合を形成した。そして、円弧対応円についての最近傍集合の要素の平均値を求めて、円弧対応円に対する近接中心間距離とした。ここで、円弧対応円毎に求めた近接中心間距離を用いて算出した近接中心間距離の平均値は70.08(単位はピクセル)、近接中心間距離の不偏標準偏差は0.95(単位はピクセル)であった。
【0031】
続いて、鋼管の口径規格から、数値係数α
1を2として近接中心間距離の上限値を71.98(単位はピクセル)、数値係数α
2を2として近接中心間距離の下限値を68.17(単位はピクセル)とする結束鋼管の隣接鋼管中心間距離の分布範囲を設定し、円弧対応円毎に求めた近接中心間距離と分布範囲を比較して、近接中心間距離が分布範囲外にある円弧対応円を特定すると、該当する円弧対応円は存在しなかった。従って、特定された円弧対応円の個数0を総数19から除いた残数19が結束鋼管の鋼管本数となり、結束鋼管の使用本数に一致した。
【0032】
また、25Aの鋼管の内半径は、結束鋼管端面画像上では約28ピクセルの長さを有するので、表1に示されるように特定された円弧対応円の内半径が27〜29ピクセルであることから、結束鋼管端面画像を介して、結束鋼管を構成している鋼管の口径が確認できる。
【0033】
(実施例2)
25Aの鋼管18本と20Aの鋼管1本を束ねた結束鋼管に本発明を適用し、結束鋼管の鋼管本数の計数と、結束鋼管内の異径鋼管の検出が可能であることを確認した。
図8に示すように、実施例1と同様の方法で結束鋼管端面画像(484×387ピクセル)を作成し、結束鋼管端面画像から輪郭線画像を形成して、輪郭線画像の各輪郭点をハフ変換することにより、輪郭線画像に含まれる円弧に対応する円弧対応円の中心座標と内半径を求めた。そして、輪郭線画像に含まれる円弧の抽出が終了した時点で検出されている円弧対応円の総数を求めると19であった。検出された円弧対応円の画像を
図9に、検出された円弧対応円毎の中心座標と内半径を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
次いで、円弧対応円毎に、円弧対応円の周囲に存在する他の円弧対応円との間の中心間距離を小さい順に並べ、先頭から2番目までの中心間距離を用いて最近傍集合を形成した。そして、円弧対応円についての最近傍集合の要素の平均値を求めて、円弧対応円に対する近接中心間距離とした。ここで、円弧対応円毎に求めた近接中心間距離を用いて算出した近接中心間距離の平均値は75.75(単位はピクセル)、近接中心間距離の不偏標準偏差は2.30(単位はピクセル)であった。
【0036】
続いて、鋼管の口径規格から、数値係数α
1を3として近接中心間距離の上限値を82.64(単位はピクセル)、数値係数α
2を3として近接中心間距離の下限値を68.86(単位はピクセル)とする結束鋼管の隣接鋼管中心間距離の分布範囲を設定し、円弧対応円毎に求めた近接中心間距離と分布範囲を比較して、近接中心間距離が分布範囲外にある円弧対応円を特定すると、該当する円弧対応円は存在しなかった。従って、特定された円弧対応円の個数0を総数19から除いた残数19が結束鋼管の鋼管本数となり、結束鋼管の使用本数に一致した。
【0037】
また、結束鋼管端面画像上では、25Aの鋼管の内半径は27〜30ピクセル、20Aの鋼管の内半径は23〜25ピクセルの長さをそれぞれ有する。従って、表2に示されるように、特定された円弧対応円の中で、27〜30ピクセルの内半径の円弧対応円が18個、23〜25ピクセルの内半径の円弧対応円が1個であることから、結束鋼管端面画像を介して、結束鋼管は25Aの鋼管18本と20Aの鋼管1本から構成されている(結束鋼管に異径鋼管が含まれている)ことが確認できる。
更に、20Aの鋼管に対応する円弧対応円の中心座標が判明しているので、例えば、
図9を用いて、20Aの鋼管(異径鋼管)の場所を示すこともできる。
【0038】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。