(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は結晶性樹脂であり、剛性や靭性等の機械的強度、摺動性、及び耐クリープ性に優れる。ポリアセタール樹脂は、自動車部品、電気・電子部品及び工業部品などの各種機構部品用の樹脂材料として、広範囲にわたり使用されている。
【0003】
近年、自動車分野を中心にVOC(揮発性有機化合物)に関して自主規制の流れが顕著である。このため、自動車の内装に使用される樹脂として、ホルムアルデヒド発生量の少ないポリアセタール樹脂が求められている。
【0004】
前述の各種機構部品は、通常次のようにして連続生産される。先ず、ポリアセタール樹脂に安定剤等の各種添加剤を配合し、押出し機等により溶融混練し、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを得る。得られたポリアセタール樹脂組成物のペレットを用いて所望の成形品を射出成形し、各種機構部品を連続生産する。
【0005】
このような連続生産を長期間に亘り行う場合、ポリアセタール樹脂は、押出し機等により所定の滞留時間および温度で溶融混練されることにより熱分解し、ホルムアルデヒドを放出する。そして、放出されたホルムアルデヒドは、糖化反応(ホルモース反応)により炭化物となる。また、ポリアセタール樹脂中に添加されている安定剤等の各種添加剤は、押出し機等により所定の滞留時間および温度で溶融混練されることにより、いわゆる焼けによる変性が起こり、変性物となる。
【0006】
ポリアセタール樹脂成形品を長期間連続使用した際、上記炭化物や変性物が存在する箇所は、成形品使用時の応力が集中し、破壊の起点となる。したがって、上記炭化物や変性物が混入したポリアセタール樹脂組成物から得られる成形品は、本来有するポリアセタール樹脂由来の耐久性が阻害される。そのため、ポリアセタール樹脂組成物を用いて各種の機構部品を連続生産する場合、ポリアセタール樹脂を含む原料を押出し機等により溶融混練する際の温度をポリアセタール樹脂の融点近傍まで極力下げ、更には滞留時間を抑えるなどの条件で、ポリアセタール樹脂組成物のペレットを生産し、上記炭化物および変性物の発生を抑制している。また定期的に押出し機等の溶融混練装置を洗浄するなどの処置を施し、上記炭化物および変性物が成形品に混入することを防止している。さらには、ポリアセタール樹脂組成物を用いた成形品中に上記炭化物および変性物等の異物が混入していないか、目視で検査するなどの工程検査を行い、品質管理に多大な労力を要しているのが現状である。
【0007】
ポリアセタール樹脂成形品から発生するホルムアルデヒドを低減する方法として、ポリアミド樹脂、アミノ置換トリアジン類化合物、ヒドラジド化合物等の化合物を添加する方法が一般的に知られている(例えば、特許文献1、2)。また、ポリアセタール樹脂の長期特性を改良することによりホルムアルデヒドを低減するする方法として、脂肪酸金属塩を添加する方法も提案されている(例えば、特許文献3、4)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、説明する。本発明は、以下の記載に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0018】
〔ポリアセタール樹脂組成物〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)と、ステアリン酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩である化合物(B1)と、パルミチン酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩である化合物(B2)と、を有し、前記化合物(B1)/前記化合物(B2)が、300/1〜120/1である。
【0019】
〔ポリアセタール樹脂(A)〕
本実施形態に用いるポリアセタール樹脂(A)としては、オキシメチレン基を有するポリマーであれば特に限定されないが、例えば、オキシメチレン基を主鎖に有し、重合体連鎖の両末端がエステル基により封鎖されたポリオキシメチレンホモポリマー;オキシメチレン基以外の他の構成単位を含有する、ポリオキシメチレンコポリマー、ポリオキシメチレンブロックポリマー、及びポリオキシメチレンターポリマーが挙げられる。また、ポリアセタール樹脂(A)は、直鎖構造のみならず分岐構造や架橋構造を有してもよい。尚、これらポリアセタール樹脂は不安定末端基を安定化されている事がより好ましい。
【0020】
〔化合物(B1)及び化合物(B2)〕
本実施形態の化合物(B1)は、ステアリン酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であり、化合物(B2)は、パルミチン酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩である。化合物(B1)及び化合物(B2)を併用することにより、成形品から発生するホルムアルデヒド量がより低減し、且つ長期連続成形性がより向上する。
【0021】
化合物(B1)/化合物(B2)は、300/1〜120/1であり、好ましくは270/1〜120/1であり、より好ましくは250/1〜130/1である。ステアリン酸とパルミチン酸の比が上記範囲内であることにより、ホルムアルデヒド量低減効果、及び長期連続成形性がより向上する傾向にある。
【0022】
化合物(B1)及び化合物(B2)に含まれ得るアルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム及びカルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムが挙げられる。
【0023】
化合物(B1)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部であり、より好ましくは0.001〜3質量部であり、さらに好ましくは0.01〜1質量部である。化合物(B1)の含有量が上記範囲内であることにより、成形品から発生するホルムアルデヒド量がより低減し、且つ長期連続成形性がより向上する傾向にある。
【0024】
化合物(B2)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.00001〜0.005質量部であり、より好ましくは0.00001〜0.003質量部であり、さらに好ましくは0.0001〜0.001質量部である。化合物(B2)の含有量が上記範囲内であることにより、成形品から発生するホルムアルデヒド量がより低減し、且つ長期連続成形性がより向上する傾向にある。
【0025】
化合物(B1)及び化合物(B2)の総含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部であり、より好ましくは0.001〜3質量部であり、さらに好ましくは0.01〜1質量部である。化合物(B1)及び化合物(B2)の総含有量が上記範囲内であることにより、成形品から発生するホルムアルデヒド量がより低減し、且つ長期連続成形性がより向上する傾向にある。
【0026】
なお、化合物(B1)及び化合物(B2)の測定方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、組成物からメタノール等の抽出溶媒を用いて脂肪酸を抽出し、更にその抽出成分をガスクロマトグラフ質量分析計で分析する方法が挙げられる。このような方法により、組成物に含まれるステアリン酸/パルミチン酸を測定することができる。
【0027】
〔化合物(D)〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、アミノ置換トリアジン類化合物及び/又はグアナミン類化合物(D)をさらに含むことが好ましい。化合物(D)単独でもホルムアルデヒド捕捉能力を有するが、化合物(B1)及び化合物(B2)と併用することにより、ホルムアルデヒド捕捉能力が更に向上する傾向にあるが、その他のアルカリ金属塩等と併用した場合には、ホルムアルデヒド発生量の抑制効果は発揮されず、むしろ発生量を増加させる傾向にある。すなわち、ポリアセタール樹脂(A)、化合物(B1)、化合物(B2)、及び化合物(D)を併用することにより、ホルムアルデヒド発生量がより低減し、かつ、長期特性及び成形性がより向上する傾向にある。化合物(D)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
アミノ置換トリアジン類化合物としては、特に限定されないが、例えば、メラミン又はその誘導体(メラム、メレム、メロンなど)、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−メラミン樹脂、メラミンーフェノールーホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0029】
また、グアナミン類化合物としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族グアナミン化合物(モノグアナミン類、アルキレンビスグアナミン類など)、脂環族グアナミン系化合物(モノグアナミン類など)、芳香族グアナミン系化合物、CTU−グアナミン、CMTU−グアナミンなどが挙げられる。
【0030】
化合物(D)の合計含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部であり、より好ましくは0.01〜1質量部、さらに好ましくは0.01〜0.3質量部である。化合物(D)の合計含有量が上記範囲内であることにより、成形品から発生するホルムアルデヒド量がより低減し、且つ長期連続成形性がより向上する傾向にある。
【0031】
〔その他の成分〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、必要に応じて、安定剤(C)をさらに含んでもよい。安定剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、立体障害性フェノール系酸化防止剤、耐候安定剤、離型剤、潤滑剤、導電剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、染顔料、顔料、熱可塑性樹脂以外のその他の樹脂、あるいは無機充填剤又は有機充填剤等が挙げられる。
【0032】
上記立体障害性フェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3'−メチル−5'−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4 −ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]及びペンタエリスリトールテトラキス[メチレン‐3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。これらの前記立体障害性フェノール系酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記耐候安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、蓚酸アニリド系化合物、及びヒンダードアミン系光安定剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましいものとして挙げられる。
【0034】
上記ベンゾトリアゾール系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。これらの化合物はそれぞれ1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記蓚酸アリニド系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリドなどが挙げられる。これらの化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物、などが挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤は、それぞれ1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
中でも好ましい耐候安定剤は、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル]ベンゾトリアゾール、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。
【0038】
上記離型剤及び潤滑剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルコール、脂肪酸及びそれらの脂肪酸エステル、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーンが好ましいものとして挙げられる。離型剤及び潤滑剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記導電剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、導電性カーボンブラック、金属粉末又は繊維が挙げられる。導電剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。また、熱可塑性樹脂としては、上述した樹脂の変性物も含まれる。
【0041】
上記熱可塑性エラストマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。熱可塑性エラストマーは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
上記染顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、(無機系顔料及び有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。染顔料は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記無機系顔料とは樹脂の着色用として一般的に使用されているものを言い、以下に限定されるものではないが、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、りん酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。
【0044】
上記有機系顔料とは、以下に限定されるものではないが、例えば、縮合ウゾ系顔料、イノン系顔料、フロタシアニン系顔料、モノアゾ系顔料、ジアゾ系顔料、ポリアゾ系顔料、アンスラキノン系顔料、複素環系顔料、ペンノン系顔料、キナクリドン系顔料、チオインジコ系顔料、ベリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料等の顔料である等の顔料が挙げられる。
【0045】
顔料の添加割合は色調により大幅に変わるため明確にすることは難しいが一般的には、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲で用いられる。
【0046】
顔料は1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記熱可塑性樹脂以外のその他の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。その他の樹脂は1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
無機充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、繊維状、粉粒子状、板状及び中空状の充填剤が用いられる。
【0049】
繊維状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も含まれる。
【0050】
粉粒子状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイト等の珪酸塩;酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩;炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
【0051】
板状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔が挙げられる。
中空状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等が挙げられる。
【0052】
有機充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状充填剤が挙げられる。
【0053】
これらの充填剤は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0054】
これらの充填剤は表面処理された充填剤、未表面処理の充填剤、何れも使用可能であるが、成形表面の平滑性、機械的特性の面から表面処理の施された充填剤の使用の方が好ましい場合がある。
【0055】
表面処理剤としては、特に限定されず、従来公知の表面処理剤が使用可能である。例えば、シラン系カップリング処理剤、チタネート系カップリング処理剤、アルミニウム系カップリング処理剤、ジルコニウム系カップリング処理剤等の各種カップリング処理剤、樹脂酸、有機カルボン酸、有機カルボン酸の塩等、界面活性剤が使用できる。より具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
【0056】
安定剤(C)の含有量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部であり、より好ましくは0.01〜2質量部、さらに好ましくは0.01〜1質量部である。安定剤(C)の合計含有量が上記範囲内であることにより、成形品から発生するホルムアルデヒド量がより低減し、且つ長期連続成形性がより向上する傾向にある。
【0057】
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、公知の方法により各成分を混合して得ることができる。例えば、ポリアセタール樹脂(A)、化合物(B1)、化合物(B2)、化合物(D)、及び安定剤(C)を、一軸又は二軸の押出し機を用いて溶融混練し、ペレット状に調整することができる。
【0058】
〔成形体の製造方法〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物より成形体を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、上記のようにして得られるペレットなどを、一般に用いられる加工方法、例えば、射出成形や押出し成形することにより製造することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。以下、評価方法を説明する。
【0060】
(1)成形品からのホルムアルデヒド放出量測定
東芝機械(株)製IS−100GN射出成形機を用いて、シリンダー温度230℃で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を射出成形機シリンダー内に30分滞留させた。30分後に射出成形機シリンダー内のポリアセタール樹脂を射出圧力60MPa、射出時間25秒、冷却時間15秒、金型温度80℃にて成形し、試験片(サイズ:100*40*3mm、ゲートサイズ:3*3mmのサイドゲート)を作製した。
【0061】
その後試験片を、23℃で50%の湿度に調整した恒温室内に1昼夜放置した。1昼夜経過後、ドイツ自動車工業会規定の方法に従ってVDA275値を定量した。尚、抽出条件は、65℃の温度で3時間とした。
【0062】
(2)長期連続成形性
下記成形条件に従って、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物から成形体を作製し、長期連続成形後の成形品表面の異物点数を観察した。観察は9901ショット〜10000ショットの各成形体表面において、目視で観察できる異物をカウントし、101成形体の平均値を異物点数とした。
〈成形条件〉
・射出成形機 : 東芝機械(株)IS−100GN
・シリンダー設定温度 : 230℃
・金型設定温度 : 80℃
・成形サイクル : 射出/冷却=10/5秒
・金型サイズ : 100×40mm×3mm平板
(流動末端先端部にガス抜き部設置)
・成形ショット数 : 10,000ショット
【0063】
(3)実施例で使用した成分
(A−1)ポリアセタール樹脂
ジャケット付き2軸パドル型連続重合反応機((株)栗本鐵工所製、径2B、L/D=14.8)を80℃に調整し、下記条件にてポリアセタール樹脂コポリマーを重合した。なお、Lは、重合反応機の原料供給口から排出口までの距離(m)を示し、Dは重合反応機の内径(m)を示す。
【0064】
得られたポリマーの不安定末端基を除去し、1,3−ジオキソランに由来するコモノマー成分の含有量が4mol%であり、MFR値が9g/10minのポリアセタール樹脂コポリマーを得た。
【0065】
なお、ポリアセタール樹脂コポリマーの重合条件及び末端安定化条件を以下に示した。
[重合条件]
・トリオキサン(主モノマー) :3500gr/hr
・1,3−ジオキソラン(コモノマー):120.9gr/hr
・メチラール(分子量調節剤) :2.4gr/hr
・有機溶媒としてシクロヘキサン :6.5g/hr
・三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラート(重合触媒):
トリオキサン1molに対して、0.20×10
-4mol
なお、重合触媒は上記成分と別ラインにてフィードした。
【0066】
[末端安定化条件]
重合反応機から排出された粗ポリアセタール共重合体を、トリエチルアミン水溶液(0.5質量%)中にサンプリングし、その後、常温で1hr攪拌を実施した後、遠心分離機でろ過し、窒素下で120℃×3hr乾燥し、ポリアセタール樹脂コポリマーを得た。
【0067】
(B−1) ステアリン酸カルシウム1
ステアリン酸カルシウム/パルミチン酸カルシウム比:120/1)
(B−2) ステアリン酸カルシウム2
ステアリン酸カルシウム/パルミチン酸カルシウム比:150/1)
(B−3) ステアリン酸カルシウム3
ステアリン酸カルシウム/パルミチン酸カルシウム比:250/1)
(B−4) ステアリン酸カルシウム4
(ステアリン酸カルシウム/パルミチン酸カルシウム比:2/1)
(B−5) ステアリン酸カルシウム5
(ステアリン酸カルシウム/パルミチン酸カルシウム比:99/1)
【0068】
〔化合物(B1)/化合物(B2)の測定方法〕
ステアリン酸カルシウム中のステアリン酸カルシウム/パルミチン酸カルシウムの比は下記方法にて測定した。用いたステアリン酸カルシウム10mgにメタノール(5%塩酸含有)を1mL加え、室温で一昼夜静置した。その後、ガスクロマトグラフ質量分析計に注入し、ステアリン酸カルシウム、及びパルミチン酸カルシウムに由来するピークの面積比より化合物(B1)/化合物(B2)を算出した。
【0069】
(C−1) トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)
【0070】
(D−1) メラミン
(D−2) ベンゾグアナミン
【0071】
〔実施例1〕
ポリアセタール樹脂(A−1)100質量部に、酸化防止剤(C−1)0.3質量部と化合物(B−2)0.1部を添加し、ヘンシェル混合機を用いて均一混合した。得られた混合物を2軸押出し機(シリンダー設定温度:200℃)で溶融混練し、ペレット状とした。このペレットを80℃で3時間乾燥させた後、ホルムアルデヒド発生量と長期連続成形性を評価した。結果を表1に示した。
【0072】
〔実施例2〜5〕
組成を表1の通りとした以外は、実施例1と同様の操作をした。結果を表1に示した。
【0073】
〔比較例1〕
ポリアセタール樹脂(A−1)100質量部に、酸化防止剤(C−1)0.3質量部を添加し、ヘンシェル混合機を用いて均一混合した。得られた混合物を2軸押出し機(シリンダー設定温度:200℃)で溶融混練し、ペレット状とした。このペレットを80℃で3時間乾燥させた後、ホルムアルデヒド発生量と長期連続成形性を評価した。結果を表1に示した。
【0074】
〔比較例2〜7〕
組成を表1の通りとした以外は、比較例1と同様の操作をした。結果を表1に示した。
【0075】
【表1】
【0076】
表1の評価結果から明らかなように、本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ホルムアルデヒド発生量を低減し且つ長期連続成形性にも優れた効果を発揮する事が判った。