(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記両エレメントのプレキャストブロックは、略コ字状の端部同士が近接するように配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の地中連続壁の構築方法。
【背景技術】
【0002】
LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)などの低温液化ガスを貯留する設備として地下タンクがある。
図16(a)に地下タンク100の概略を示す。地下タンク100は、鉄筋コンクリート製の略円筒状の地中連続壁110を山留兼遮水壁として内部の地盤を掘削し、躯体の構築を行った地下構造物である。
【0003】
地下タンク100の躯体は、鉄筋コンクリート製の底版103と側壁105、および鋼製屋根107から構成されることが一般的である。側壁105は底版103上に略円筒状に形成され、底版103や側壁105の内面には断熱材やメンブレン(不図示)なども設置される。
【0004】
図16(b)に示すように、地中連続壁110は、地中連続壁110の周方向(図の左右方向に対応する)に交互に配置された複数の先行エレメント111と後行エレメント113によって構成される。地中連続壁110の構築時は、まず地中連続壁110の周方向に所定の間隔を空けて地盤に掘削溝を形成し、当該掘削溝に先行エレメント111を構築する。その後、先行エレメント111と先行エレメント111の間に掘削溝を形成して当該掘削溝に後行エレメント113を構築する(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
図17は先行エレメント111と後行エレメント113の構築方法を示す図である。この例では、先行エレメント111の構築時、まず回転式またはバケット式の連壁掘削機によって地盤を短冊形に掘削して
図17(a)に示すように掘削溝117を形成した後、当該掘削溝117に鉄筋籠121を挿入する。その後、掘削溝117に
図17(b)に示すようにコンクリート129を打設して充填することで先行エレメント111が構築される。
【0006】
地盤の掘削は掘削溝117に安定液を満たしつつ行い、鉄筋籠121の挿入前に掘削溝117中の安定液の良液置換を行っておき、コンクリート129を打設する。これは後述する後行エレメント113の構築時においても同様である。
【0007】
図17(a)に示すように、鉄筋籠121は水平方向および鉛直方向の鉄筋122a、122bを有するほか、コンクリート打設時に後行エレメント側にコンクリート129が漏れ出すのを防止するため、鉄筋籠121の妻部に鋼板123が設けられ、当該鋼板123に押え板125、土木シート127などが取付けられる。鋼板123等は鉄筋籠121の両妻部に設けられ、両妻部の鋼板123同士を結ぶように鋼板123の補強用のタイロッド124が取付けられる。
【0008】
コンクリート打設時は、コンクリート129の漏れ防止やタイロッド124の破断防止のためにコンクリート129の打設速度を管理し、打設圧を所定値以内に管理する。地盤の掘削からコンクリート129の打設完了までは、安定液の比重管理、周辺地盤との水位差を確保するための液位の管理を行うことで、掘削溝117の安定を図りながら作業を行う。
【0009】
先行エレメント111の構築後、上記と同様の方法で、
図17(c)に示すように先行エレメント111の側方の地盤を掘削して掘削溝117を形成する。掘削溝117は3〜5ガット程度掘削し、掘削溝117の長さ(地中連続壁110の周方向の長さ)は9〜15m程度となることが多い。なお、「ガット」は連壁掘削機により1回で掘削できる掘削溝の長さをいう。
【0010】
こうして掘削溝117を形成した後、当該掘削溝117に
図17(d)に示すように鉄筋籠131を挿入してその周囲にコンクリート129を打設すると後行エレメント113が構築される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、従来の方法では、安定液の良液置換、鋼板等を設けた複雑な構成を有する鉄筋籠の使用、コンクリートの打設速度の管理等を行う必要があり、施工に手間やコストが掛かっていた。また鉄筋籠の建込時重量は100tを超えることもあり、大型のクレーンが常時必要であった。
【0013】
後行エレメントの構築時に先行エレメントのコンクリートを切削しながら地盤を掘削して掘削溝を形成する工法もあり、この場合では前記のような先行エレメントのコンクリート漏れの心配をせずに施工を簡略化できるが、コンクリートを切削することから安定液の劣化が早く、安定液の作泥量、廃液量が多くなるという問題点がある。また掘削機も回転式のものに限定され、バケット式のものは使用できない。
【0014】
また従来の方法では掘削溝が開放状態(コンクリートが打設されていない状態)にある期間が長く、その期間中、掘削溝の安定を保つ必要がある。また前記のように掘削溝が9〜15m程度と長いと掘削溝の安定を保つこと自体も難しい。例えば良液置換の際に安定液をそれより比重の低い良液に置き換える時に掘削溝が崩壊することがあり、その場合には大掛かりな補修工事が必要になる。そのため掘削溝の両側にかなりの地盤補強が必要になることが多い。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、地中連続壁を容易に構築できる地中連続壁の構築方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するための第1の発明は、地盤に形成した掘削溝にプレキャストブロックを挿入して地中連続壁のエレメントを構築する工程と、前記エレメントの側方の地盤を掘削して掘削溝を形成し、前記プレキャストブロックに近接するように当該掘削溝にプレキャストブロックを挿入し、地中連続壁のエレメントを構築する工程と、両エレメントのプレキャストブロックの間に充填材を充填する工程と、を有し、前記充填材を充填する前に、前記プレキャストブロックと前記掘削溝
の対向する内面との間
のそれぞれに、前記充填材の堰止部を設けることを特徴とする地中連続壁の構築方法である。
第2の発明は、地盤に形成した掘削溝にプレキャストブロックを挿入して地中連続壁のエレメントを構築する工程と、前記エレメントの側方の地盤を掘削して掘削溝を形成し、前記プレキャストブロックに近接するように当該掘削溝にプレキャストブロックを挿入し、地中連続壁のエレメントを構築する工程と、両エレメントのプレキャストブロックの間に充填材を充填する工程と、を有し、
両エレメントを構築した後であって前記充填材を充填する前に、
前記プレキャストブロックの幅方向の両側のそれぞれで、両エレメントのプレキャストブロックの
溝に、前記充填材の堰止部
である一体の板材の両端部を
挿入することを特徴とする地中連続壁の構築方法である。
【0017】
本発明では、地盤を掘削し、プレキャストブロックを建て込んでエレメントを構築する作業を繰り返すことによって地中連続壁を構築する。プレキャストブロックを用いることによりエレメントの構築作業を素早く完了することができ、掘削完了の翌日にエレメントの構築作業を終えることも可能である。また1回の掘削で形成する掘削溝は1ブロック分の長さで十分であり短くできるため掘削溝は安定し、且つ掘削溝が開放状態にある期間も短いので地盤補強無しでも作業ができる。
【0018】
またプレキャストブロックを用いることでエレメントそのものは前記のような良液置換を行うことなく構築でき、複雑な構成の鉄筋籠も必要ない。また隣り合うエレメントのプレキャストブロック間にコンクリート等の充填材を充填する際も、プレキャストブロック同士が近接するので小面積の充填作業で済み短時間で終えることができる。また、前記した堰止部を設けることでプレキャストブロック間の充填作業を好適に行うことができ、プレキャストブロック間から漏れ出した充填材がエレメントの側方の地盤を掘削する際に邪魔になることもない。
【0019】
以上より、本発明の構築方法によれば地中連続壁を容易に構築できて工期やコストを低減できる。またプレキャストブロック間の充填作業はいつでも良いため、工程を容易に調整できる。さらに、既製のプレキャストブロックを用いることで高品質な地中連続壁が構築できる。
【0020】
前記プレキャストブロックは筒状であり、前記プレキャストブロックの内側に充填材が充填されることが望ましい。
筒状とすることでプレキャストブロックを軽量化でき、運搬等が簡単で掘削溝への建込作業も容易になる。またプレキャストブロック内への充填作業もいつでも良く、工程を容易に調整できる。
【0021】
前記エレメントを構築する際、掘削溝に安定液を充填した状態で地盤の掘削を行い、前記エレメントの最下段の前記プレキャストブロックは底板部を有することが望ましい。
最下段のプレキャストブロックに底板部を設けておくことで、プレキャストブロックに掘削溝内の安定液による浮力を働かせ、掘削溝への建込作業を安定的に行うことができる。プレキャストブロックは、そのかさ比重を適切な値に定めることで、安定液中に自重で沈下させることができる。
【0022】
前記エレメントは、複数の前記プレキャストブロックを上下に連結して構築され、前記エレメントを構築する際、前記プレキャストブロックの上端部を前記安定液の上方で支持し、当該プレキャストブロックの上に新たなプレキャストブロックを連結することが望ましい。
これにより、掘削溝の位置で気中にてプレキャストブロック同士を連結することができ、プレキャストブロックの建込作業の流れのなかで容易にプレキャストブロックの連結を行うことができる。
【0023】
前記両エレメントのプレキャストブロックは、略コ字状の端部同士が近接するように配置されることが望ましい。また前記両エレメントのプレキャストブロックの前記端部の間に鉄筋籠が設置されることも望ましい。
プレキャストブロックの端部を略コ字状とすることで、プレキャストブロック間の充填材とプレキャストブロックとの一体性を高め、地中連続壁の耐力を向上させることができる。プレキャストブロックの端部の間に鉄筋籠を設置することで、地中連続壁の耐力を更に向上させることができる。
【0024】
前記エレメントは、複数の前記プレキャストブロックを上下に連結して構築され、前記エレメントを構築する際、上段のプレキャストブロックの下面から突出した鉄筋を、下段のプレキャストブロックの上面の固化材が充填された穴に挿入し、緊結材を用いて上下のプレキャストブロックを緊結することが望ましい。
これにより、上下のプレキャストブロックを短時間でしっかりと連結できる。
【0025】
第3の発明は、地盤の掘削溝に構築された複数のエレメントを有する地中連続壁であって、各エレメントがプレキャストブロックを用いて構築され、平面において隣り合うエレメントのプレキャストブロックが近接して配置され、両エレメントのプレキャストブロックの間に充填材が充填され、前記プレキャストブロックと前記掘削溝
の対向する内面との間
のそれぞれに、前記充填材の堰止部が設けられたことを特徴とする地中連続壁である。
第4の発明は、地盤の掘削溝に構築された複数のエレメントを有する地中連続壁であって、各エレメントがプレキャストブロックを用いて構築され、平面において隣り合うエレメントのプレキャストブロックが近接して配置され、両エレメントのプレキャストブロックの間に充填材が充填され、
前記プレキャストブロックの幅方向の両側のそれぞれで、前記両エレメントのプレキャストブロックの
溝に、前記充填材の堰止部
である一体の板材の両端部が
挿入されたことを特徴とする地中連続壁である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、地中連続壁を容易に構築できる地中連続壁の構築方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0029】
[第1の実施形態]
(1.地中連続壁110a)
図1(a)は本発明の実施形態に係る地中連続壁110aを示す図である。地中連続壁110aは、
図16の地中連続壁110と同様、鉄筋コンクリート等によって地下タンク100(地下構造物)を囲う位置に構築された略円筒状の壁体である。
【0030】
図1(b)に示すように、地中連続壁110aは複数のエレメント112から構成される。これらのエレメント112は地中連続壁110aの周方向(図の左右方向に対応する。後述する
図2において同じ。)に沿って並べて配置される。隣り合うエレメント112同士は近接して配置される。
【0031】
本実施形態では上下に連結したプレキャストブロック1を用いて各エレメント112が構築されており、この点で前記の地中連続壁110と異なっている。
図16等で既に説明したその他の構成については、図等で同じ符号を付して説明を省略する。なお、以降、最上段のプレキャストブロック1から最下段のプレキャストブロック1へと順に1
1、1
2、1
3、1
4、…1
nと添え字を付して説明に用いることがある。
【0032】
(2.地中連続壁110aの構築方法の概略)
図2は地中連続壁110aの構築方法の概略を示す図である。地中連続壁110aの構築時は、
図2(a)に示すように、まず地盤に短冊形の掘削溝117を形成する。本実施形態では、回転式またはバケット式の連壁掘削機を用い、地盤の掘削を1ガット分行うことで掘削溝117が形成される。掘削溝117の長さ(地中連続壁110aの周方向の長さ)は小さく、例えば3.2m程度以下とできる。
【0033】
次に、
図2(b)に示すように掘削溝117にエレメント112を構築する。その後、
図2(c)に示すようにエレメント112の側方の地盤を同じく1ガット分掘削し、掘削溝117を形成する。そして、
図2(d)に示すように当該掘削溝117に新たなエレメント112を構築する。
【0034】
その後、更にその側方に同様の掘削溝を形成して
図2(e)に示すように新たなエレメント112を構築する。こうして地盤の掘削とエレメント112の構築を繰り返すことで、
図2(f)に示すように地中連続壁110aが構築される。
【0035】
本実施形態では片押し方式により地中連続壁110aを構築しており、
図3(a)に示すようにエレメント112の構築を1箇所から開始して地中連続壁110aの周方向に沿って一方向にエレメント112を延伸させる。ただしこれに限ることはなく、
図3(b)に示すように複数の箇所からエレメント112の構築を開始してもよい。また
図3(c)に示すように1箇所から複数の方向に延伸するようにエレメント112を構築することも可能であり、
図3(d)に示すように複数の箇所から複数の方向に延伸するようにエレメント112を構築することも可能である。
【0036】
(3.エレメント112の構築手順)
次に、エレメント112の構築手順について
図4、
図5等を参照して説明する。
【0037】
地中連続壁110aのエレメント112を構築する際は、
図4(a)に示すように地盤を掘削して掘削溝117を形成した後、当該掘削溝117にプレキャストブロック1を建込む。地盤の掘削は、掘削溝117の安定のため掘削溝117に安定液を充填した状態で行う。
【0038】
図6はプレキャストブロック1(以下、単にブロックということがある)を示す図である。
図6(a)はブロック1の側面図、
図6(b)はブロック1の上面図である。また
図7はブロック1の断面を示す図であり、
図7(a)は
図6(a)の線A−Aによる水平方向の断面図、
図7(b)、(c)はそれぞれ
図6(b)の線B−B、C−Cによる鉛直方向の断面図である。
【0039】
ブロック1は略梯子状の平面を有する筒状の部材であり、その大きさは、例えば、幅1.2m程度、長さ3.0m程度、高さ5.0m程度とする。ここで、ブロック1について「幅」というときは、略円筒状の地中連続壁110aの径方向の長さを指すものとし、
図6(b)に示すブロック1の平面の短辺方向の長さに対応する。同様に、ブロック1について「長さ」というときは、地中連続壁110aの周方向の長さを指すものとし、
図6(b)に示すブロック1の平面の長辺方向の長さに対応する。また、ブロック1の「高さ」とはブロック1の鉛直方向の長さである。
【0040】
なお、ブロック1の壁厚(
図6(b)のt参照)は例えば0.15m程度とするが、これに限ることはない。またブロック1の幅や長さ、高さについても、前記した値に限らない。
【0041】
ブロック1の内側は中空となっており、ブロック1の長さ方向の両端部は略コ字状の平面形状を有する。また
図7(a)に示すように、ブロック1には水平方向および鉛直方向の鉄筋17a、17bが埋設される。その他、ブロック1の中空部分を横断するようにせん断補強鉄筋を設けることなども可能である。
【0042】
ブロック1には、上面に開口する略鉛直方向の穴11やシース管5、下面に開口する略鉛直方向のシース管7なども設けられる。また、ブロック1の下面からは略鉛直方向の鉄筋13が突出している。穴11と鉄筋13は平面において対応する位置に設けられる。シース管5、7も同様、平面において対応する位置に設けられる。
【0043】
シース管5の下端はブロック1の側面の上部に設けた凹部9に達しており、シース管7の上端はブロック1の側面の下部に設けた凹部15に達している。
【0044】
前記したように、本実施形態では上下にブロック1を連結して用いるが、このうち最下段のブロック1(1
n)および最上段のブロック1(1
1)については上記したブロック1の構成と若干異なっている。
【0045】
図8(a)、(b)は最下段のブロック1(1
n)を
図6(a)、
図7(c)と同様に示す図である。最下段のブロック1(1
n)には、
図6、
図7で説明したブロック1の中空部分に底板部14を設けて有底筒状にし、ブロック下部のシース管7、凹部15、鉄筋13を省略したものを用いる。この例では鉄筋コンクリートによって底板部14を形成しているが、鋼板等によって底板部14を形成することも可能である。
【0046】
図示は省略するが、最上段のブロック1(1
1)には、
図6、
図7で説明したブロック1においてブロック上部のシース管5、凹部9、穴11を省略したものを用いる。
【0047】
図9は掘削溝117内へのブロック1の建込方法を示す図である。
図9(a)に示すように、本実施形態では、クレーン等でブロック1(1
n)を吊って掘削溝117の位置に移動させ、ブロック1を安定液23の中に建込む。
【0048】
図10(a)は
図9(a)の線D1−D1による鉛直方向の断面を示す図である。本実施形態では、掘削溝117の地下タンク100側(
図10(a)の左側に対応する)の地表面にガイドウォール27aが形成され、地下タンク100と反対側(
図10(a)の右側に対応する)の地表面にガイドウォール27bが形成されており、ブロック1の上端部をガイドウォール27a、27bに設けたブラケット25等により仮受けし安定液23の上方で支持する。
【0049】
ブロック1には安定液23による浮力が働き、ブラケット25には、ブロック1の総重量から浮力を引いた分の荷重が作用する。本実施形態では、ブロック1のかさ比重(ブロック1の総重量を、中空部分を含むブロック1の総体積で割った値)が1.0程度であり、ブラケット25に作用する荷重は小さいのでその構成は簡略化できる。
【0050】
図9の説明に戻る。本実施形態では、次に、クレーン等を用いて先程のブロック1の上に
図9(b)に示すように新たなブロック1(1
n-1)を配置し、上下のブロック1の連結を気中にて行う。
【0051】
ブロック1の連結について示すのが
図11である。ブロック1の連結時には、
図11(a)に示すように、予め下段のブロック1の穴11にモルタル等の固化材12を充填しておく。また、水膨張シール材(不図示)をブロック1の上面の各辺に沿って設置しておく。
【0052】
そして、上段のブロック1のシース管7と鉄筋13の位置を下段のブロック1のシース管5と穴11の位置にそれぞれ合わせ、上段のブロック1を下降させる。
【0053】
こうして
図11(b)に示すように下段のブロック1の穴11に上段のブロック1の鉄筋13を挿入し、下段のブロック1の上に上段のブロック1を設置する。この時、下段のブロック1のシース管5と上段のブロック1のシース管7とが連通する。
【0054】
その後、連通したこれらのシース管5、7に
図11(c)に示すようにPC鋼材20(緊結材)を通し、PC鋼材20を緊張してその両端を下段のブロック1の凹部9と上段のブロック1の凹部15でナット21等を用いて定着する。PC鋼材20の緊張については、ジャッキによってPC鋼材20を緊張した後ナット21の締め込みを行う方法でも良いし、ナット21にトルクを掛ける方法でも良い。以上の手順により上下のブロック1が緊結される。上下のブロック1間は、この時潰れた水膨張シール材によりシールされる。
【0055】
なお、
図11(a)に示す段階で予めPC鋼材20を下段のブロック1のシース管5に挿入して設置し、当該PC鋼材20の上部を下段のブロック1の上に出しておいてもよい。この場合、上段のブロック1は、シース管7にPC鋼材20の上部を通しつつ下降させる。
【0056】
こうして
図9(b)に示すように上下のブロック1を連結した後、クレーン等でこれらのブロック1を吊った状態でブラケット25を外し、掘削溝117内の安定液23中を下降させ、
図9(c)に示すように上段のブロック1の上端部を前記と同様安定液23の上方で支持する。
図10(b)は
図9(c)の線D2−D2による鉛直方向の断面図であり、上段のブロック1の上端部は前記と同様ガイドウォール27a、27bに設けたブラケット25等で仮受けされる。
【0057】
上下にブロック1を連結し、吊り下げていくと安定液23による浮力は大きくなり、クレーンの吊荷重は減少して建込作業を安定的に行うことができる。本実施形態では、上下のブロック全体のかさ比重を、安定液23中に自重で沈下でき、且つ吊荷重が過大にならない適当な値(例えば1.0程度)としている。
【0058】
しかしながら、かさ比重が小さく自重で沈下しない場合などでは、ブロック1の内側に所要量の水(真水)を注入し、当該水の重量を含む上下のブロック1の総重量と浮力の差分を管理しながら、安定液23中にゆっくりと沈ませてもよい。
【0059】
図9の説明に戻る。本実施形態では、その後、
図9(d)に示すように、ブラケット25で仮受けしたブロック1の上に前記と同様の方法で新たなブロック1(1
n-2)を連結する。以上の手順を繰り返し、ブロック1を上下に連結しつつ、連結された複数のブロック1を掘削溝117の安定液23中で建込んでゆく。
【0060】
こうして掘削溝117にブロック1を挿入し建込んでエレメント112を構築した後、
図4(b)に示すようにエレメント112の側方の地盤を掘削して掘削溝117を形成する。そして、
図4(c)に示すように前記と同様の手順で当該掘削溝117にブロック1を挿入し建込んで新たなエレメント112を構築する。
【0061】
こうして平面において隣り合う2列のエレメント112が構築される。両エレメント112のブロック1は、略コ字状の端部同士が近接するように配置される。
【0062】
そして、
図4(d)に示すように、両エレメント112のブロック1の側壁と掘削溝117の間にパッカー130(堰止部)を設置する。パッカー130は、両エレメント112のブロック1の近接する端部付近に配置される。パッカー130は、ブロック1の地下タンク100側(
図4(d)の下側に対応する)と地下タンク100の反対側(
図4(d)の上側に対応する)のそれぞれで配置される。
【0063】
その後、
図5(a)に示すように、両エレメント112のブロック1の内側にコンクリート35(充填材)を打設して充填するとともに、両エレメント112のブロック1間の空間にコンクリート36(充填材)を打設して充填する。なお、
図12(a)に示すように、ブロック1の端部の間の空間に鉄筋籠140を設置した後、コンクリート36を打設してもよい。
【0064】
ブロック1の内側については、コンクリート35を気中コンクリートとして打設することが可能であり、コンクリート35の品質は格段に良くなる。
【0065】
なお、前記のようにブロック1内に真水等による注水を行った場合は、最上段のブロック1を地表面に設けたブラケット(不図示)等で固定し、水を抜いた後コンクリート35を気中コンクリートとして打設することができる。あるいは、最初にトレミー管(不図示)を用いてコンクリート35を水中コンクリートとして打設し、浮力に対して安定した状態に達した後水を抜き、その上方のコンクリート35を気中コンクリートとして打設することもできる。水中コンクリートの打設を行う場合も、真水中にコンクリート35を打設できるので品質は良くなる。
【0066】
一方、両エレメント112のブロック1間の空間については、良液置換を行った後、トレミー管(不図示)を用いてコンクリート36を水中コンクリートとして打設する。
【0067】
本実施形態では、前記のようにパッカー130を設けていることにより、
図5(a)に示すようにブロック1間からコンクリート36が漏れ出してもパッカー130の位置で堰止められ、コンクリート36がパッカー130の位置を超えてブロック1と掘削溝117の隙間に溢れ出し、掘削溝117の端部117aに達することが無くなる。また両エレメント112のブロック1間の空間は小さく面積にして0.8m
2程度に抑えることができ、良液置換やコンクリート36の充填作業を短時間で終えることができる。
【0068】
こうしてコンクリート35、36の打設を行った後、
図5(b)に示すように先程構築したエレメント112の側方の地盤を更に掘削して掘削溝117を形成する。この時、上記のようにパッカー130によってコンクリート36が堰止められているので、漏れ出したコンクリート36が掘削溝117の掘削に悪影響を及ぼすことはない。
【0069】
前記と同様、この掘削溝117に
図5(c)に示すようにブロック1を挿入し建込んで新たなエレメント112を構築し、当該新たなエレメント112とその隣のエレメント112に関し、前記と同様の位置にパッカー130を設置する。
【0070】
その後、
図5(d)に示すように、新たに構築したエレメント112のブロック1内にコンクリート35を打設して充填するとともに、当該エレメント112のブロック1とその隣のエレメント112のブロック1の間にコンクリート36を打設して充填する。
【0071】
以下
図5(b)〜(d)の手順を繰り返すことで、地中連続壁110aが構築される。ブロック1と掘削溝117の間には隙間(
図5(d)の37a、37b参照)が残るが、地下タンク100側(
図5(d)の下側に対応する)の隙間37aについては、地下タンク100の構築時に地下タンク100側の地盤を掘削することから充填しなくても特に問題は無く、地下タンク100の底版103(
図1参照)の下面より深い位置のみにモルタル等のグラウト材を充填しておけばよい。一方、地下タンク100の反対側(
図5(d)の上側に対応する)にある隙間37bについては、全深度をグラウト材で埋めればよい。
【0072】
以上説明したように、本実施形態では、地盤を掘削し、プレキャストブロック1を建て込んでエレメント112を構築する作業を繰り返すことによって地中連続壁110aを構築する。プレキャストブロック1を用いることによりエレメント112の構築作業を素早く完了することができ、掘削完了の翌日にエレメント112の構築作業を終えることも可能である。また1回の掘削で形成する掘削溝117は1ブロック分の長さで十分であり短くできるため掘削溝117は安定し、且つ掘削溝117が開放状態にある期間も短いので地盤補強無しでも作業ができる。
【0073】
またブロック1を用いることでエレメント112そのものは前記のような良液置換を行うことなく構築でき、複雑な構成の鉄筋籠も必要ない。また隣り合うエレメント112のブロック1間にコンクリート36を充填する際も、ブロック1同士が近接するので小面積の充填作業で済み短時間で終えることができる。また、本実施形態では前記したパッカー130を設けることでブロック1間の充填作業を好適に行うことができ、ブロック1間から漏れ出したコンクリート36がエレメント112の側方の地盤を掘削する際に邪魔になることもない。
【0074】
以上より、本実施形態の構築方法によれば地中連続壁110aを容易に構築できて工期やコストを低減できる。さらに、既製のブロック1を用いることで高品質な地中連続壁110aが構築できる。
【0075】
また、本実施形態ではブロック1を中空の筒状部材とし、内側にコンクリート35を充填してエレメント112を構築するので、ブロック1を軽量化でき、運搬等が簡単で掘削溝117への建込作業も容易になる。
【0076】
ブロック1内のコンクリート35やブロック1間のコンクリート36の充填作業はいつでも良く、工程を容易に調整できる。例えば本実施形態ではエレメント112の側方に1列分のエレメント112を構築するごとにコンクリート35、36の打設を行っているが、複数列のエレメント112を構築するごとにコンクリート35、36の打設を行ってもよい。
【0077】
また、本実施形態ではブロック1の端部を略コ字状とすることで、ブロック1間のコンクリート36とブロック1との一体性を高め、地中連続壁110aの耐力を向上させることができる。また前記したようにブロック1の端部の間の空間に鉄筋籠140を埋設した後にコンクリート36を充填し、コンクリート36内に鉄筋籠140を配置することで、地中連続壁110aの耐力を更に向上させることができる。
【0078】
また本実施形態では最下段のブロック1(1
n)に底板部14を設けておくことで、ブロック1に掘削溝117内の安定液23による浮力を働かせ、掘削溝117への建込作業を吊荷重の小さな小型のクレーンを用いて安定的に行うことができる。ブロック1は、そのかさ比重を適切な値に定めることで安定液23中に自重で下降させることができ、ブロック1内のコンクリート35も気中コンクリートとして打設できる。
【0079】
また本実施形態では、エレメント112を構築する際、ブロック1の上端部を安定液23の上方で支持し、掘削溝117の位置で気中にてブロック1同士を連結することができ、ブロック1の建込作業の流れのなかで容易にブロック1の連結を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態では上段のブロック1の下面から突出した鉄筋13を、下段のブロック1の上面の固化材12が充填された穴11に挿入し、ブロック1同士をPC鋼材20を用いて前記のように緊結することで、上下のブロック1同士を短時間でしっかりと連結できる。
【0081】
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば地中連続壁110aは略円筒状としたが、例えば略角筒状など、その他の筒状のものであってもよい。また地中連続壁110aは筒状のものでなくともよく、例えば直線状のものであってもよい。
【0082】
また、ブロック1は中空部分を有する筒状の部材としたが、地中連続壁110aの壁厚が小さく、エレメント112の平面が小さくなるようなケースでは、
図12(b)に示すようにブロック1’を中実の部材としてもよい。また本実施形態ではPC鋼材20を用いて上下のブロック1同士を緊結したが、これに限らない。例えば緊結材としてPC鋼材20の代わりにハイテンションボルト等を用いることも可能である。
【0083】
また本実施形態では1ガット分の掘削を行うごとに1つの中空部分を有するブロック1を建て込んでいるが、複数ガット分の掘削を行うごとに、その掘削溝の長さに応じた、
図12(c)に示すような1または複数の中空部分を有する長いブロック1”を建て込むこともできる。この場合、ブロック1”の重量が大きくなるので、高さを小さくする等、軽量化のための工夫をしておくことが望ましい。
図12(c)のような長いブロック1”を用いる代わりに、建込み前に地上部で複数のブロック1を水平方向に連結し長くして用いることも可能である。
【0084】
以下、本発明の別の例を第2、第3の実施形態として説明する。各実施形態はそれまでに説明した実施形態と異なる点について主に説明し、同様の点については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また第1の実施形態も含め、各実施形態で説明する構成は必要に応じて組み合わせて用いることも可能である。
【0085】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、コンクリート36の堰止部の構成において第1の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では
図13(a)に示すようにブロック1aの長さ方向の両端部に溝19が設けられており、平面において隣り合う2列のエレメント112を構築した後、
図13(b)に示すように両エレメント112のブロック1aの溝19に止水板150(堰止部)を通し、ブロック1a間に止水板150を設置する。
【0086】
止水板150は地下タンク100側(
図13(b)の下側に対応する)と地下タンク100の反対側(
図13(b)の上側に対応する)の両方に設けられ、これによりブロック1a間の空間が閉じられる。
【0087】
溝19はブロック1aの全高さに亘って形成されており、その平面は、
図14(a)に示すようにブロック1aの外面から内側へと略直線状に延びる直線部分と、その先端の略円形部分から構成される。
【0088】
本実施形態では、止水板150が塩ビ板などの樹脂製の板材であり、
図14(b)に示すように板材の両端には略円柱状のリブが設けられている。止水板150はこれらのリブを両エレメント112のブロック1aの溝19の略円形部分に挿入することで設置される。
【0089】
この後の手順は第1の実施形態と略同様であり、
図13(c)に示すようにブロック1aの内側にコンクリート35を打設して充填するとともに、ブロック1a間の空間にコンクリート36を打設して充填する。
【0090】
本実施形態でも第1の実施形態と同様の効果が得られ、また止水板150を設けていることにより、コンクリート36がブロック1a間から漏れ出すことも無い。なお、止水板150としては、
図14(c)に示すような平板状の鋼板や、
図14(d)に示すような中央部を山形に折り曲げた折板状の鋼板などを用いることもできる。
【0091】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、
図16、17等で説明したものと同様、エレメント112を先行エレメントと後行エレメントに分けて構築する例である。
【0092】
すなわち、本実施形態では、まず
図15(a)に示すように地中連続壁110aの周方向に間隔を空けて1ガット分の掘削溝117を形成し、各掘削溝117に第1の実施形態と同様の手順でブロック1を建込むことによりエレメント112(先行エレメント)が構築される。
【0093】
次に、
図15(b)に示すようにエレメント112の間の地盤を1ガット分掘削して構築済みのエレメント112の側方に掘削溝117を形成し、同じくブロック1を建込むことによりエレメント112(後行エレメント)を構築する。
【0094】
この時、地中連続壁110aの周方向にエレメント112が3列に並ぶので、
図15(b)に示すように第1の実施形態と同様の位置にパッカー130を設置する。
【0095】
そして、
図15(c)に示すように各エレメント112のブロック1の内側にコンクリート35を打設して充填するとともに、平面において隣り合うエレメント112のブロック1間の空間にコンクリート36を打設して充填する。
【0096】
こうして先行エレメントと後行エレメントを構築することで、第1の実施形態と同様の地中連続壁110aが構築でき、第1の実施形態と同様の効果が得られる。なお、場合によっては、
図15(c)に示す中央のエレメント112のブロック1と掘削溝117の間のパッカー130を省略し、両端部のエレメント112のブロック1と掘削溝117の間のみにパッカー130を設置することも可能である。
【0097】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。