(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
嗅覚を介した香りの心理的作用以外にも、香料素材の中には、メントールのように皮膚と接触すると冷やりとした感覚を与えるものや、カプサイシンのように発熱感を与えるものがある。これは、実際に皮膚の温度が低下または上昇するものではなく、冷感や温感を引き起こす受容体活性化チャネルをメントールやカプサイシン等が刺激することにより、人間が冷温感を感じる作用である。このような香料素材が有する作用と、香料素材が本来有する香りとを組み合わせることにより、今までにない新たな芳香剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定量のエタノール、メントール及びラベンダー精油を含有する芳香剤を、特定の粒子径で布帛に処理することにより、その布帛と接触した人間の体温により、布帛に付着した香気成分が揮散し、直後から十分な香り立ちが得られ、かつ、一定時間の後には香りが消失することを見出し、本発明のスプレー型芳香剤を完成するに至った。
メントールとラベンダーの香りを組み合わせた芳香剤は、これまでにもあったが、配合するエタノールの量と噴射する粒子径とを特定のものとすることにより、体温が伝わると同時に十分な香り立ちが得られ、かつ、一定時間の後には香りが消失するという、特異的な効果を発揮するものである。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.(A)エタノール、(B)メントール及び(C)ラベンダー精油を含有する、体温揮散性布帛用スプレー型芳香剤であって、
エタノールを芳香剤全量に対して30〜60重量%含有し、
噴射時の粒子径が100μm以上150μm未満であることを特徴とする、体温揮散性布帛用スプレー型芳香剤。
2.(B)メントールを芳香剤全量に対して1〜5重量%含有することを特徴とする、1.に記載のスプレー型芳香剤。
3.(C)ラベンダー精油を芳香剤全量に対して0.1〜0.7重量%含有することを特徴とする、1.または2.に記載のスプレー型芳香剤。
4.(D)界面活性剤をさらに含有することを特徴とする、1.〜3.のいずれかに記載のスプレー型芳香剤。
5.(E)ラベンダー精油以外の精油をさらに含有することを特徴とする、1.〜4.のいずれかに記載のスプレー型芳香剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスプレー型芳香剤は、噴霧した布帛と人間が接触することにより、人間の体温により布帛に付着した香気成分が揮散し、直後から十分な香り立ちを実感することができる。しかも、本発明のスプレー型芳香剤は、冷感作用を有するメントールを含有するものであるから、噴霧した布帛との接触により冷やりとした感覚も得ることができる。
また、本発明のスプレー型芳香剤は、噴霧した布帛と人間との接触が一定時間継続すると、布帛に付着した香気成分が全て揮散し香りが消失する。これは、毎日洗濯しない、例えば、寝具などの布帛に本発明のスプレー型芳香剤を毎日使用しても、香りが蓄積することがなく、使用するたびにフレッシュな香りを楽しむことができる。
本発明のスプレー型芳香剤を寝具などに使用すると、入眠するまでの間はメントールやラベンダーの香りを感じリラックスすることができ、さらに、メントールの冷感作用により、夏の寝苦しい夜でも冷やりとした冷涼感を得ることができる。また、本発明のスプレー型芳香剤を着用する衣類に使用すると、噴霧直後から一定時間の間はメントールやラベンダーの香りを感じリラックスすることができるが、一定時間後には香りが消失し香気成分が蓄積しないので、必要な時に気軽に本発明のスプレー型芳香剤を再度使用することができる。
本発明のスプレー型芳香剤は、人間の体温によりすばやい香り立ちと、キレのある香りの消失を実現することができるので、寝具、クッション、座布団等の人間と接触する布帛製品や、パジャマ等の衣類などに時限的な香りを賦香する際に、好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のスプレー型芳香剤について詳細に説明する。
【0009】
本発明のスプレー型芳香剤は、(A)エタノール、(B)メントール及び(C)ラベンダー精油を含有する、体温揮散性布帛用スプレー型芳香剤である。
<(A)成分>
本発明における(A)成分のエタノールは、布帛に噴霧した直後のべたつきのなさと、香り立ちの良さや香りの持続性を向上させるために含有されている。
(A)成分のエタノールとしては、例えば、無水エタノール、95体積%エタノール(規格値95体積%〜95.5体積%)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、布帛に噴霧した直後のべたつきのなさの点から、無水エタノールまたは95体積%エタノールが好ましい。
(A)成分のエタノールの含有量は、布帛に噴霧した直後のべたつきや刺激のなさと、香り立ちの良さや香りの持続性の点から、スプレー型芳香剤全量に対して、無水エタノールとして、30〜60重量%が好ましく、40〜60重量%がより好ましく、50〜60重量%が特に好ましい。前記含有量が好ましい範囲内であれば、布帛に噴霧した直後のべたつきのなさは良好である。
(A)成分のエタノールの含有量は、(C)成分のラベンダー精油、(E)成分のラベンダー精油以外の精油及びその他の成分を配合した場合、これらの成分から持ち込まれるエタノールを含む、無水エタノールに換算したエタノールの合計含有量を意味する。
【0010】
<(B)成分>
本発明における(B)成分のメントールは、清涼感を有する香りと冷感作用を得るために含有されている。
(B)成分のメントールは、l−メントール、dl−メントールが好ましいが、これらと他の異性体との混合物を用いてもよい。また、l−メントールは、和種ハッカ油に65〜85%、洋種ハッカ油に50〜70%含有されており、これらの精油を用いることもできる。
(B)成分のメントールの含有量は、スプレー型芳香剤全量に対して、1〜5重量%が好ましく、1〜4重量%がより好ましく、1〜3重量%が特に好ましい。前記含有量が好ましい範囲内であれば、鼻への刺激性がなく良好な清涼感を有する香りを得ることができ良好である。
【0011】
<(C)成分>
本発明における(C)成分のラベンダー精油は、芳香と適度な香りの持続性を得るために含有されている。
ラベンダー精油とは、シソ科ラベンダー属(Lavandula angustifolia)の植物の花、蕾及びその周辺部を水蒸気蒸留し、水不溶性の精油部分を集めたものを意味する。シソ科ラベンダー属の植物としては、トゥルー・ラベンダー、オカムラサキ、ヒドコート・ブルー、レディ、ロゼア、スーパーサファイアブルー、スーパーセビリアンブルー、スパイク・ラベンダー、スイート・ラベンダー、デンタータ、ヒブリダ、ムルティフィダ、ペドゥンクラータ、ストエカス、ヴィリディス等が知られている。本発明のスプレー型芳香剤においては、これらの何れもが使用可能である。ラベンダー精油は、リナリルアセテート(25〜55%程度)、リナロール、ピネン、リモネン、ゲラニオール、シネオール等を含有する。
(C)成分のラベンダー精油の含有量は、スプレー型芳香剤全量に対して、0.1〜0.7重量%が好ましく、0.1〜0.6重量%がより好ましく、0.2〜0.5重量%が特に好ましい。前記含有量が好ましい範囲内であれば、鼻への刺激性がなく、しかも、(A)エタノールと(B)メントールが有する、わずかながらの鼻への刺激性を緩和する効果に優れ、良好な香りを得ることができる。
【0012】
<(D)成分>
本発明のスプレー型芳香剤は、必要に応じてノニオン系、アニオン系、カチオン系等(D)成分である界面活性剤を配合することができる。
スプレー型芳香剤の原液を水性溶液とする場合は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤を配合することが好ましい。
(D)成分の界面活性剤の含有量は、目的に応じ適宜決定することができるが、スプレー型芳香剤の原液を水性溶液とする場合は、スプレー型芳香剤全量に対して、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜8重量%がより好ましく、0.1〜5重量%が特に好ましい。
【0013】
<(E)成分>
本発明のスプレー型芳香剤は、目的に応じて(E)成分としてラベンダー精油以外の精油を、さらに配合することができる。
本発明で(E)成分として配合できる精油としては、特に制限されないが、例えば、バラ精油、シナモン精油、オレンジ精油、レモン精油、グレープフルーツ精油、ライム精油、プチグレン精油、ユズ精油、ネロリ精油、ベルガモット精油、ラバンジン精油、カモミール精油、アビエス精油、ベイ精油、ボアドローズ精油、イランイラン精油、シトロネラ精油、ゼラニウム精油、ユーカリ精油、レモングラス精油、パチュリ精油、ジャスミン精油、シダー精油、ベチバー精油、ローズマリー精油、ガルバナム精油、オークモス精油、パイン精油、樟脳精油、芳樟精油、テレビン精油、クローブ精油、クローブリーフ精油、カッシア精油、ナツメグ精油、カナンガ精油、タイム精油等の精油成分である。本発明のスプレー型芳香剤は、(E)成分として、ベルガモット精油、カモミール精油、ユーカリ精油、イランイラン精油、ゼラニウム精油、ローズマリー精油から選択される1種以上の精油が好適であり、さらに、(E)成分として、ベルガモット精油、カモミール精油、ユーカリ精油、イランイラン精油、ゼラニウム精油、ローズマリー精油を全て含有していることが最適である。本発明のスプレー型芳香剤は、必要応じて(B)成分、(C)成分及び(E)成分以外に香り成分を配合することができる。この香り成分としては、様々な文献、例えば、「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1960)、「香りの百科」,日本香料協会編,朝倉書店(1989)、「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Pajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)、「Perfume and Flavor Chemicals(aroma chemicals)」,Vols.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)、「香料と調香の基礎知識」,中島基貴編著,産業図書(1995)、「合成香料 化学と商品知識」,印藤元一著,化学工業日報(1996)、「香りの百科事典」,谷田貝光克編,丸善(2005)に記載の化合物が使用できる。それぞれを引用することにより本明細書の開示の一部とする。
本発明で使用される香り成分としては、特に制限されないが、例えば、リナリルアセテート、C6〜C12の各種脂肪族アルデヒド、フェニルエチルアルコール、ベンジルアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメイト、バニリン、ニトロムスク類、ガラクソライド、トナリド、ペンタリド、サンタレックス、アミルサリシレート、アミルアセテート、γ−ウンデカラクトン、メチルフェニルグリシド酸エチル、ヘリオトロピン、ピネン、リナロール、メントール、シトラール、シトロネラール、ボルネオール等の合成香料;天然香料及び合成香料を調製して得られる調合香料等が挙げられる。
本発明のスプレー型芳香剤において、(E)成分としてラベンダー精油以外の精油は、スプレー型芳香剤全量に対して、0.001〜10重量%が好ましく、0.005〜5重量%がより好ましく、0.01〜3重量%が特に好ましい。
【0014】
<その他の成分>
この他にも、本発明のスプレー型芳香剤は、必要に応じて、例えば、色素(タール色素、ベンガラ色素、天然色素等)、防腐剤(メチルパラベン、フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム、有機窒素硫黄ハロゲン系化合物、PCMX、TBZ等)、安定化剤(アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール等)、消泡剤(シリコーン樹脂等)等を含有することもできる。これらその他の添加剤の含有量は、スプレー型芳香剤全量に対して、一般的に10重量%以下である。さらに、キレート剤、粘度調整剤、比重調整剤、紫外線防止剤、酸化防止剤等を配合してもよい。
スプレー型芳香剤は、上記各成分を、エタノール以外のアルコールや有機溶媒や水を用いて適宜液体製剤とすることができる。 水は、例えば、天然水、水道水、ミネラル水、電気分解水、酸化還元水、その他の活性水、精製水、超微粒子水などを用いることができるが、これらに限られるものではない。
【0015】
<噴霧時の粒子径について>
本発明のスプレー型芳香剤は、噴霧時の粒子径が100μm以上150μm未満の範囲であることが重要である。これにより、本発明のスプレー型芳香剤を布帛に噴霧した直後のべたつきがなく、当該布帛と接触した人は鼻への刺激性を感じることなく適度な香りを実感することができる。
ここで、上記粒子径は粒度分布測定装置により測定される数値を意味する。具体的には、粒度分布測定装置のレーザー光発光部より受光部に照射されるレーザービームと、試験検体(スプレー型芳香剤)の噴霧口との距離が10cm程度となる位置から、噴霧物がレーザービームを垂直に通過するように試験検体(スプレー型芳香剤)を噴霧する。噴霧中に測定を行い、噴霧物の粒度分布を自動演算処理装置により解析することで求めることができる。測定器は東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製の「LDSA―1400A」を用いた。
【0016】
<スプレー容器>
本発明のスプレー型芳香剤は、液体製剤をスプレー容器に充填することにより、スプレー剤として使用することができる。スプレー容器としては、本発明のスプレー型芳香剤を容易に充填でき、スプレー剤として機能するものであればよいが、汎用性やスプレー精度の高さを考慮すると、以下の3つのスプレー容器が好ましい。
(1)噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したディスペンサー式スプレー容器:このスプレー容器は、大気圧でスプレーでき、加圧ガスなどを必要とせず、かつ容器構造も比較的単純であるので安全性が高く、携帯用に向くスプレー容器である。構造は吸い上げ式のチューブを装着した押し出しポンプ式のノズルと、これを固定し内容物を充填するねじ式容器からなる。このスプレー容器は、フィンガースプレーと呼ばれ汎用されており、噴霧粒子径が小さいため、噴射時の粒子径が100μm以上150μm未満であることを特徴とする本発明のスプレー容器として特に好ましい。
(2)トリガー式スプレー容器:このスプレー容器は、内容物を充填する容器本体の口部にピストル状のトリガー式スプレー装置が装着されたものであり、大気圧でスプレーでき、スプレー容器として汎用性の高いものである。ここでいうトリガー式スプレー容器には、スプレー機能を高めるために、トリガー式スプレー容器の一部を改良したものも全て含まれる。トリガー式スプレー容器は使い勝手が良いが、噴霧粒子径が大きいタイプも多い。本発明の芳香剤は、噴霧粒子径が大きくなるとべたつきやすくなるため、噴霧粒子径が小さいトリガー式スプレー容器を選択する必要がある。
(3)エアゾール式スプレー容器:このスプレー容器は、容器内へ噴射剤を充填することによって、上記(1)(2)の2つのスプレー容器では実現できない連続した噴霧を可能とするものである。一般的に、エアゾール式スプレー容器を用いると、上記(1)(2)の2つのスプレー容器に比べ、より細かな霧状に噴霧することが可能となる。エアゾール式スプレー容器で使用する噴射剤としては、ジメチルエーテル、液化石油ガス、炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガス、空気、酸素ガス、フロンガス等を挙げることができ、これらは単独であるいは2種以上併用して用いられる。
【0017】
本発明のスプレー型芳香剤を使用する布帛としては、人が少なくとも1分以上接触し体温が伝わる布帛を意味し、例えば、枕カバー、布団カバー、タオルケット、掛け布団、敷パット、コタツ布団、毛布、シーツ、枕、マットレス、ひざ掛け、フリーケット、サマーケット等の寝具類、肌着、パジャマ、シャツ、ズボン、靴下、各種ユニフォーム、作業着、スキーウエア、ブルゾン、帽子、手袋、学生服等の衣類、ソファ、椅子、座布団、絨毯、カーペット、クッション、椅子等のインテリア、その他ぬいぐるみ等の雑品などが挙げられるが、これらに限られるものではない。
これら布帛の中でも、シーツ、枕、枕カバー等の寝具類やパジャマ等の衣類など、仮眠や昼寝を含む就寝時に使用する布帛に、本発明のスプレー型芳香剤を使用することが好ましい。これにより、入眠するまでの間はメントールやラベンダーの香りを感じリラックスすることができ、さらに、メントールの冷感作用により、夏の寝苦しい夜でも冷やりとした冷涼感を得ることができる。また、一定時間後には香りが消失し香気成分が蓄積しないので、次の使用時には、フレッシュな香りを楽しむことができる。
【実施例】
【0018】
以下、製剤例及び試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
【0019】
<試験1:(A)エタノール配合量について>
(1)試験検体
表1に示す、(A)エタノール、(B)メントール、(C)ラベンダー精油及び水の含有量に基づき、実施例1〜4、比較例1〜2の組成物を得た。
(2)試験方法
37℃に加温した綿布(5cm×5cm)に、マイクロピペットにより上記試験検体100μLを含浸させる処理をした後、専門パネラー10名により、処理3分後及び30分後における「香りの強度」「鼻への刺激」「手による感触」を確認し、以下の評価基準に従い評価した。
(3)評価方法
「香りの強度」評価は、各専門パネラーが「香る(2点)」、「やや香る(1点)」、「香らない(0点)」の3段階で点数評価した。
「鼻への刺激」評価は、各専門パネラーが「刺激を感じない(2点)」、「やや刺激を感じる(1点)」、「刺激を感じる(0点)」の3段階で点数評価した。
「手による感触」評価は、各専門パネラーが「べたつきを感じない(2点)」、「ややべたつきを感じる(1点)」、「べたつきを感じる(0点)」の3段階で点数評価した。
その評価点数から平均値を求め、以下の判定基準で判定した結果を表1に示す。
[判定基準]
◎:平均点1.6点以上
○:平均点1.0点以上〜1.6点未満
×:平均点1.0点未満
【0020】
【表1】
【0021】
比較例1、2の結果より、アルコールの配合量が少ないと、処理3分後に手による感触としてべたつきが感じられ、アルコールの配合量が多いと、処理3分後に鼻への刺激が感じられるのに加え、処理30分後には香りの強度が悪く、香りの持続性が低下することが明らかとなった。
一方、実施例1〜4の結果より、(A)成分であるエタノールは、芳香剤全量に対して30〜60重量%の範囲で配合することにより、処理3分後および30分後ともに、香りの強度、鼻への刺激、手による感触は良好で、べたつきや鼻への刺激のない、処理直後の香り立ちと香りの持続性に優れた処方となることが確認できた。
【0022】
<試験2:(B)メントール配合量について>
(1)試験検体
表2に示す、(A)エタノール、(B)メントール、(C)ラベンダー精油及び水の含有量に基づき、実施例5〜6、比較例3の組成物を得た。
(2)試験方法・評価方法
37℃に加温した綿布(5cm×5cm)に、マイクロピペットにより上記試験検体100μLを含浸させる処理をした後、専門パネラー10名により、処理3分後及び30分後における「香りの強度」「鼻への刺激」「手による感触」を確認し、「試験1」と同じように評価結果を判定し、その結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
比較例3の結果より、メントールを配合しないと、処理30分後の香りの強度が悪く、香りの持続性が低下することが明らかとなった。
一方、実施例5〜6の結果より、メントールを配合することにより、処理3分後および30分後ともに、香りの強度、鼻への刺激、手による感触は良好で、べたつきや鼻への刺激のない、処理直後の香り立ちと香りの持続性に優れた処方となることが確認できた。
【0025】
<試験3:精油の種類と配合量について>
(1)試験検体
表3に示す、(A)エタノール、(B)メントール、(C)ラベンダー精油またはその他の精油及び水の含有量に基づき、実施例3、7〜8、比較例4〜7の組成物を得た。
(2)試験方法・評価方法
37℃に加温した綿布(5cm×5cm)に、マイクロピペットにより上記試験検体100μLを含浸させる処理をした後、専門パネラー10名により、処理3分後及び30分後における「香りの強度」「快・不快強度」「鼻への刺激」「手による感触」を確認した。また、処理180分後における「残香強度」を確認した。
「香りの強度」「鼻への刺激」「手による感触」については、「試験1」と同じように評価した。
「快・不快強度」と「残香強度」は、以下の評価基準に従い評価し、その評価点数から平均値を求めた。
「快・不快強度」評価は、各専門パネラーが「快(2点)」、「どちらでもない(1点)」、「不快(0点)」の3段階で点数評価した。
また、「残香強度」評価は、各専門パネラーが「香らない(2点)」、「やや香る(1点)」、「香る(0点)」の3段階で点数評価した。
それぞれの評価に関する判定基準は、「試験1」と同じであり、その結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
比較例4〜5の結果より、ローズマリー精油は0.1重量%の配合量でも、処理3分後に「鼻への刺激」があるほか、処理30分後の「香りの強度」が低く香りの持続性が低下するため、精油成分として単独での配合には適さないことが明らかとなった。
比較例6〜7の結果より、ゼラニウム精油は0.3重量%の配合量では、処理3分後に「鼻への刺激」があり不快感を与えるほか、処理180分後の「残香強度」が高く、さらに、0.1重量%の配合量では、処理3分後、30分後の「快・不快強度」、処理3分後の「鼻への刺激」、処理180分後の「残香強度」の低下が十分ではないため、精油成分として単独での配合には適さないことが明らかとなった。
一方、実施例3、7〜8の結果より、ラベンダー精油はその配合量を増加させることにより、エタノールとメントールがわずかながらも有する鼻への刺激性を緩和させる効果が得られることが明らかとなった。さらに、実施例3、7〜8の結果より、ラベンダー精油を特定量配合させることにより、処理3分後および30分後ともに、「香りの強度」、「快・不快強度」、「鼻への刺激」、「手による感触」はいずれも良好で、しかも、処理180分後の「残香強度」も低く、香りの蓄積性が低い優れた処方となることが確認できた。
【0028】
<試験4:噴霧粒子径について>
(1)試験検体
試験1の実施例3の組成物を、噴霧時の噴霧粒子径の異なる3種類のスプレー容器A〜Cそれぞれに充填した。
スプレー容器A〜Cそれぞれから噴霧した噴霧粒子径は、レーザ光散乱方式粒度分布測定装置LDSA−1400A(東日コンピュータアプリケーションズ株式会社製)を使用し、スプレー容器A〜Cの噴霧口との距離を10cmとして測定した。スプレー容器A〜Cの噴霧粒子径は、以下の範囲である。
スプレー容器A:80〜95μm
スプレー容器B:100〜145μm
スプレー容器C:150〜160μm
(2)試験方法・評価方法
37℃に加温した綿布(5cm×5cm)に、スプレー容器A〜Cそれぞれから1回噴霧した後、専門パネラー10名により、噴霧3分後における「香りの強度」「鼻への刺激」「手による感触」を確認した。「試験1」と同じように評価結果を判定し、その結果を表4に示す。
【0029】
【表4】
【0030】
比較例8の結果より、噴霧時の噴霧粒子径が小さいと試験検体が綿布に細かい粒子のまま付着するため、香料が速やかに揮散し香りが持続しなかったものと考察される。
また、比較例9の結果より、噴霧時の噴霧粒子径が大きいと試験検体が綿布に纏まった状態で付着するため、揮散しやすいアルコールやメントールが強く感じられるほか、水は揮散しにくいため、噴霧した綿布にべたつきが感じられた。
一方、実施例9の結果より、噴霧時の噴霧粒子径を特定の範囲のものとすることにより、香りの強度、快・不快強度、鼻への刺激、手による感触はいずれも良好で、優れた処方となることが確認できた。