【文献】
垣内力 他,ビデオセオドライトを用いた動体の自動追尾と位置計測について,日本写真測量学会学術講演会発表論文集,日本,1998年10月,Vol.1998 秋季,253-256
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の性能評価では、ターゲットを動かすための工具や測量機を動かすためのテーブルなど、いずれにしても、測量機以外に、一定の動作をさせるための大型な装置が必要であった。
【0006】
本発明の目的は、測量機以外の装置を用いなくても、追尾性能を評価することのできる測量機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の測量機は、ターゲットの位置を撮影画像から検出する追尾部と、仮想的なターゲットの位置を作成する仮想ターゲット位置算出部と、前記仮想ターゲット位置算出部で作成した前記仮想的なターゲットの位置を前記追尾部で捉えたように変換する仮想追尾部と、前記仮想追尾部の出力を前記追尾部の出力と同等に扱い、水平軸および鉛直軸の回転動作を決定する追尾演算部と、前記追尾演算部の出力から制御信号を生成するモータ制御部と、前記モータ制御部の前記制御信号を受けて、前記水平軸および前記鉛直軸を回転させるモータと、前記水平軸および前記鉛直軸の回転量を検出するエンコーダと、を備える。
【0008】
上記態様において、前記仮想ターゲット位置算出部は、極座標または三次元座標で前記仮想的なターゲットの位置を更新し、前記仮想追尾部は、予め設定された望遠鏡の仮想視野に前記仮想的なターゲットが存在する場合は、前記仮想視野の中心から前記仮想的なターゲットまでのずれを計算するのも好ましい。
【0009】
上記態様において、前記仮想追尾部は、前記追尾部と前記仮想追尾部の制御周期のずれを補正するために、前記仮想追尾部の出力したデータの時系列データテーブルを作成し、前記追尾演算部に、前記時系列データのなかから前記追尾部のデータ取得時と一致するデータを出力するのも好ましい。
【0010】
上記態様において、前記仮想ターゲット位置算出部は、前記仮想的なターゲットの動作パターンとして、少なくとも、前記仮想的なターゲットが水平方向に往復運動するパターン、前記仮想的なターゲットが傾斜して往復運動するパターン、前記仮想的なターゲットが長時間回転するパターン、前記仮想的なターゲットが所定の振動を有するパターンのいずれか一つを作成するのも好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の測量機によれば、測量機以外の装置を用いなくても、追尾性能を評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本形態に係る測量機の概略縦断面図である。符号1が測量機である。測量機1は、整準部3の上に設けられた基盤部4と、基盤部4上を鉛直軸6周りに水平回転する托架部7と、托架部7に水平軸11周りに鉛直回転する望遠鏡9と、を有する。托架部7の水平回転と望遠鏡9の鉛直回転の協働により、測距光及び追尾光がターゲットに照射される。
【0015】
鉛直軸6の下端部には水平回転用のモータ5が設けられ、上端部には水平角検出用のエンコーダ21が設けられている。水平軸11の一方の端部には鉛直回転用のモータ12が設けられ、他方の端部には鉛直角検出用のエンコーダ22が設けられている。エンコーダ21,22は、アブソリュートエンコーダまたはインクリメンタルエンコーダである。
【0016】
図2は、本形態に係る測量機1の制御ブロック図である。測量機1は、測距部31と、追尾部32と、マイクロコントローラ23と、上述のモータ5,12と、上述のエンコーダ21,22とを有する。測距部31は、測距光として赤外パルスレーザ光をターゲット10に送光する。そして、ターゲット10からの反射光を例えばフォトダイオード等の受光部で受光し、測距信号に変換する。追尾部32は、発光部321から追尾光として測距光とは異なる波長の赤外レーザ光を出力する。追尾光は追尾光学系323を介してターゲット10に送光され、ターゲット反射して再び追尾光学系323を介して受光部322に入射する。受光部322は、例えばCCDセンサ、CMOSセンサ等のイメージセンサである。受光部322では、追尾光を含む風景画像(点灯画像)と追尾光を除いた風景画像(消灯画像)を取得する。受光部322で撮られた両画像は、画像処理装置324に送られ、画像の差分が求められる。差分を求めることにより、ターゲット10の像の中心が求められる。画像処理装置324は、画像上で、望遠鏡9の視野中心とターゲット10の中心との隔たり(ΔH,ΔV)を求め、マイクロコントローラ23に出力する。
【0017】
マイクロコントローラ23は、CPU,ROM,RAM等を集積回路に実装したものであり、托架部7に収容されている(
図1)。マイクロコントローラ23は、追尾演算部33と、モータ制御部34と、後に詳述する仮想ターゲット位置算出部35および仮想追尾部36を有する。
【0018】
追尾演算部33は、追尾部32の出力(ΔH,ΔV)から、モータ5,12の回転動作を決定する。モータ制御部34は、追尾演算部33の出力から、モータ5,12の制御信号を生成する。制御信号を受けたモータ5,12は、鉛直軸6及び/又は水平軸11をそれぞれ追尾部32からの出力(ΔH,ΔV)に相当する位置まで回転させる。エンコーダ21,22は、それぞれ鉛直軸6,水平軸11の回転角を検出し、モータ制御部34へフィードバックさせる。測量機1では、望遠鏡9の視野中心とターゲット10の中心との隔たりが一定値以内に収まる位置がターゲット10の位置として検出されるまで、自動追尾が行われる。
【0019】
さらに、測量機1は、仮想追尾機能を有する。
図3は、本形態に係る測量機1の仮想追尾に係る制御ブロック図である。
【0020】
仮想ターゲット位置算出部35は、極座標(Dt,Vt,Ht)または三次元座標(X,Y,Z)で、仮想ターゲット10´の位置を作成し、時々刻々と更新する。
【0021】
仮想追尾部36には、
図4に示すように、予め、極座標(Dt,Vt,Ht)または三次元座標(X,Y,Z)で、望遠鏡9の仮想視野41が設定されている。仮想追尾部36は、まず、仮想ターゲット10´の水平角及び鉛直角と、仮想視野角を調べ、仮想視野41内に仮想ターゲット10´が存在するか否かを調べる。仮想視野41内に仮想ターゲット10´が存在する場合は、仮想視野41の中心42から仮想ターゲット10´の中心までの水平方向のずれ(ΔH)および鉛直方向のずれ(ΔV)を求めて、追尾演算部33に出力する。このように、仮想追尾部36は、仮想ターゲット位置算出部35で作成した仮想的なターゲットの位置を追尾部32で捉えたように空間的に変換する。
【0022】
ここで、好ましくは、仮想追尾部36は、実際の追尾部32と仮想追尾部36との分解能・遅れの特性を考慮し、時間的な変換も行う。
図5は、本形態に係る追尾部32と仮想追尾部36のタイミングチャート図である。
【0023】
追尾部32の発光部321の発光パルス出力は、例えば発光時間が4[msec]、消灯時間が4[msec]で行われており、このため追尾部32の制御周期は8[msec]となっている。受光部322では、発光時間の平均的な位置で点灯画像が撮られるので、つまり、ターゲット10の位置は発光時間のうち2[msec]の位置で検出されたかのように取得される。この2[msec]が、受光部322の遅れとなる。追尾部32では、8[msec]で一セットとなるため、8[msec]に一回、望遠鏡9の視野中心とターゲット10の中心との隔たり(ΔH,ΔV)を追尾演算部33に出力する。
【0024】
一方、仮想追尾部36は、ソフトウェア上の処理であるため、データはマイクロコントローラ23のCPUの性能に応じて取得可能である。CPUの制御周期が例えば1[msec]であるとすると、仮想追尾部36は、仮想視野41の中心42と仮想ターゲット10´の中心との隔たり(ΔH,ΔV)を、1[msec]ごとに追尾演算部33に出力することができる。
【0025】
ここで、追尾部32と仮想追尾部36の分解能の違いを補正するために、仮想追尾部36は、出力したデータの時系列データテーブル51(
図5)を作成する。時系列データテーブル51に示すデータd1,d2,d3…,d8は、それぞれ
図5に示す仮想追尾部36の制御周期T1,T2,T3…,T8で得られた出力データ(ΔH,ΔV)である。この例では、仮想追尾部36は、追尾演算部33に対し、最新のデータd8ではなく、追尾部32のデータ取得時と一致する、6[msec]分過去のデータ、データd2を、出力する。このように、仮想追尾部36のデータを実際の追尾部32の制御周期と等しく出力すれば、仮想追尾部36は実際の追尾部32の動きを正確に再現することができる。
【0026】
追尾演算部33は、仮想追尾部36からの出力(ΔH,ΔV)を、実際の追尾部32と同等に扱い、モータ5,12の回転動作を決定する。モータ制御部34は、追尾演算部33の出力から、モータ5,12の制御信号を生成する。制御信号を受けたモータ5,12は、鉛直軸6及び/又は水平軸11をそれぞれ仮想追尾部36からの出力分(ΔH,ΔV)に相当する位置まで回転させる。エンコーダ21,22は、それぞれ鉛直軸6,水平軸11の回転角を検出し、モータ制御部34へフィードバックさせる。測量機1では、仮想視野41の中心と仮想ターゲット10´の中心との隔たりが一定値以内に収まる位置が仮想ターゲット10´の位置として検出されるまで、仮想的に自動追尾が行われる。
【0027】
図6は、本形態に係る測量機1の仮想追尾の制御フローチャートである。
【0028】
まず、ステップS1で、仮想ターゲット位置算出部35は、スタート時の望遠鏡9が向いている方向をエンコーダ21,22から検出し、ターゲット10の設置予定距離を入力等から取得して、仮想ターゲット10´の初期位置を決定する。
【0029】
次に、ステップS2で、仮想ターゲット位置算出部35は、仮想ターゲット10´を移動させ、仮想位置を更新する。仮想追尾部36は、仮想ターゲット10´を仮想追尾する。
【0030】
次に、ステップS3で、仮想追尾部36は、出力したデータの時系列データテーブル51を作成する。
【0031】
次に、ステップS4で、仮想追尾部36は、追尾部32との分解能・遅れの特性を補正する。
【0032】
次に、ステップS5で、追尾演算部33は、モータ5,12の回転動作(モータ5,12の目標位置・目標速度)を算出する。
【0033】
次に、ステップS6で、モータ制御部34は、モータ5,12の現在位置および現在速度から、制御信号を生成する。
【0034】
次に、ステップS7で、エンコーダ21,22は、鉛直軸6,水平軸11の回転角を取得する。
【0035】
次に、ステップS8で、追尾演算部33は、追尾が終了したか判断する。終了していない場合は、ステップS2に戻る。終了した場合は、仮想追尾を停止する。なお、上記のステップS4は、仮想追尾の制御フローに必須の要素とはしないが、行うと好ましい。
【0036】
なお、ステップS2における仮想ターゲット10´の動作パターンは、予めプログラムが組まれていてよく、作業者がパターンを任意に選択できるものとする。パターン例を次に示す。
【0037】
パターン1は、測量機1の視軸方向の先(例えば極座標Dt=10m)に仮想ターゲット10´を設置し、仮想ターゲット10´を(例えばモータパルス10Hzで)水平方向に往復運動させる(極座標Htを変更する)パターンである。パターン1は、従来の工具を用いた追尾性能の評価を模したパターンである。
【0038】
パターン2は、測量機1の視軸方向の先(例えば極座標Dt=10m)に仮想ターゲット10´を設置し、仮想ターゲット10´の水平角または鉛直角を(例えばモータパルス10Hzで)増減させる(極座標HtまたはVtを変更する)パターンである。パターン2は、従来のテーブルを用いた追尾性能の評価を模したパターンである。
【0039】
パターン3は、測量機1の視軸方向の先(例えば三次元座標Y=10m)に仮想ターゲット10´を設置し、仮想ターゲット10´を(例えばモータパルス10Hzで)長時間、所定の角速度で等速回転させる(三次元座標X,Zを変更する)パターンである。パターン3は、ある回転盤にターゲット10を固定し、回転盤を長時間、所定の角速度で等速回転させる連続使用評価を模したパターンである。
【0040】
パターン4は、仮想ターゲット10´に、(例えば三次元座標のZ方向に)所定の振動を与えるパターンである。このパターンによれば、ターゲット10が重機に搭載された場合の追尾性能を評価できる。
【0041】
本形態の測量機1によれば、仮想ターゲット位置算出部35により仮想的なターゲットの動きが算出され、仮想追尾部36によりあたかも追尾部32でターゲットを捉えたかのような処理が行われるので、測量機1の内部で追尾性能を評価することができる。このため、従来の追尾性能の評価のために用いられていた、ターゲットを動かすための工具や測量機を動かすためのテーブルなど、大型な装置が不要となる。
【0042】
さらに、本形態の測量機1によれば、追尾性能の評価は測量機1単体で行うことができるので、追尾性能の評価のための施設を用意する必要がなくなる。このため、測量現場や営業所など、工場以外の任意の場所で追尾性能を評価することができる。特に、極寒・極暑環境での追尾性能の評価では、測量機1単体をその環境に置けばよいため、施設環境の整備が今までよりも容易になる。また、本形態の測量機1は、仮想追尾部36のセンサスペックを変更すれば、開発中の追尾センのサ性能シミュレーションにも利用することができる。
【0043】
以上、本発明の好ましい測量機について、実施の形態を述べたが、当業者の知識に基づいて改変させることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。