(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モータ駆動回路は、停止状態の前記モータの駆動を開始した後、0.2秒より長く定められた所定時間の経過後に、前記モータの回転数にかかわらず、前記半導体光源を点灯することを特徴とする請求項6に記載の車両用灯具。
変更前の前記目標配光パターンが第1領域を含み、変更後の前記目標配光パターンが前記第1領域に対応する領域を含まないとき、前記光量演算部は、前記第1領域の幅をゼロに向かって時間とともに緩やかに減少させることを特徴とする請求項8に記載の点灯回路。
変更後の前記目標配光パターンが第2領域を含み、変更前の前記目標配光パターンが前記第2領域に対応する領域を含まないとき、前記光量演算部は、前記第2領域の幅をゼロから時間とともに緩やかに増大させることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の点灯回路。
変更前の前記目標配光パターンが第1領域を含み、変更後の前記目標配光パターンが第2領域を含むとき、前記光量演算部は、前記第1領域と前記第2領域の距離が所定のしきい値より近い場合に、前記第1領域と前記第2領域を対応づけることを特徴とする請求項8から12のいずれかに記載の点灯回路。
前記配光パターンが前記目標配光パターンに到達する前に、前記目標配光パターンが変更された場合、前記光量演算部は、そのときの現在の配光パターンを、変更前の前記目標配光パターンとすることを特徴とする請求項8から14のいずれかに記載の点灯回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ADB機能を実現する方式として、アクチュエータを制御するシャッター方式、ロータリー方式、LEDアレイ方式などが提案されている。シャッター方式やロータリー方式は、消灯領域(遮光領域)の幅を連続的に変化させることが可能であるが、消灯領域の数が1個に制限される。LEDアレイ方式は、消灯領域を複数個、設定することが可能であるが、消灯領域の幅が、LEDチップの照射幅に制約されるため、離散的となる。
【0006】
本出願人は、これらの問題点を解決可能なADB方式として、ブレードスキャン方式を提案している(特許文献2参照)。ブレードスキャン方式とは、回転するリフレクタ(ブレード)に光を入射し、リフレクタの回転位置に応じた角度で入射光を反射して反射光を車両前方で走査しつつ、光源の点消灯あるいは光量を、リフレクタの回転位置に応じて変化させることで、車両前方に、所望の配光パターンを形成するものである。
【0007】
本発明のある側面は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ブレードスキャン方式に使用可能な点灯回路の提供にある。
【0008】
加えて本発明者は、ADB機能を有する車両用灯具について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。配光パターンを瞬時に不連続に変化させると、それまで光が照射されていた領域が急に暗くなったり、照射領域が急に移動することとなり、運転者に不快感を与え、あるいは運転に支障が生ずるおそれがある。
【0009】
本発明のある側面は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、運転者に与える不快感を減少し、および/または安全性を高めることが可能な点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1. 本発明のある態様は、車両用灯具に使用される点灯回路に関する。車両用灯具は、半導体光源と、半導体光源の出射光を受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光を車両前方で走査するリフレクタと、を備える。点灯回路は、リフレクタの所定の基準箇所が所定位置を通過するタイミングを示す位置検出信号を生成する位置検出器と、車両前方に形成すべき配光パターンの情報を受け、位置検出信号にもとづいて、各時刻において半導体光源が発生すべき光量を演算する光量演算部と、各時刻において光量演算部が演算した光量が得られるように半導体光源を点灯させるドライバと、を備える。
【0011】
この態様では、リフレクタの周期運動が、点灯回路の制御下にない場合においても、位置検出信号にもとづいて、各時刻におけるリフレクタの位置が推定され、リフレクタの位置から、反射光が照射される領域が推定されることとなる。したがって、この態様によれば、リフレクタの位置の変化にあわせて、半導体光源の光量を時々刻々と変化させることができ、所望の配光パターンを形成することができる。
【0012】
点灯回路は、位置検出信号にもとづき、リフレクタの周期運動の周期を演算する周期演算部をさらに備えてもよい。光量演算部は、位置検出信号と周期にもとづいて、各時刻において半導体光源が発生すべき光量を演算してもよい。
この態様によれば、リフレクタの周期運動の周期が変動する場合においても、各時刻におけるリフレクタの位置を正確に推定できる。
【0013】
車両用灯具は、複数の半導体光源を備えてもよい。光量演算部は、複数の半導体光源ごとに個別に、各時刻において半導体光源が発生すべき光量を演算してもよい。
リフレクタへの光の入射角は半導体光源ごとに異なるため、リフレクタがある位置にあるときに、反射光が照射する領域は、半導体光源ごとに異なる。この態様によれば、半導体光源毎に、各時刻における反射光が照射する領域を個別に推定し、リフレクタの位置の変化にあわせて、各半導体光源の光量を時々刻々と変化させることができ、所望の配光パターンを形成することができる。
【0014】
複数の半導体光源は直列に接続されてもよい。光量演算部は、半導体光源ごとに点灯、消灯を決定してもよい。ドライバは、複数の半導体光源に駆動電流を供給するコンバータと、複数の半導体光源に対応し、それぞれが対応する半導体光源と並列に設けられた複数のバイパススイッチと、複数のバイパススイッチそれぞれのオン、オフを、対応する半導体光源の点灯、消灯指示に応じて制御するスイッチコントローラと、を含んでもよい。
これにより、照射領域ごとに、点灯、消灯を制御したり、光量を変化させることが可能となる。
【0015】
光量演算部は、周期が所定のしきい値より長いとき、半導体光源を消灯してもよい。
リフレクタの運動周期が長い場合に半導体光源を点灯すると運転者がちらつき(フリッカともいう)を感じるため、消灯することで不快感を防止できる。
【0016】
リフレクタにはスリットが設けられ、位置検出器は、リフレクタの裏側に設けられたフォトセンサを含んでもよい。
これにより位置検出器は、スリットが、フォトセンサの上を通過したことを検知できる。
【0017】
リフレクタはモータにより位置決めされ、位置検出器は、モータからのホール信号にもとづいて位置検出信号を生成してもよい。
【0018】
光量演算部は、リフレクタが、その端部を含む所定範囲に半導体光源の出射光を受光可能な位置にあるとき、半導体光源を消灯してもよい。
リフレクタの端部は、中央部に比べて反射面の精度が相対的に低く、ばらつきが相対的に大きく、また蒸着ムラが生じやすいことから、光が散乱してグレアが生じたり、所望の配光パターンが得にくいという問題がある。端部を配光パターンの形成に使用しないことにより、グレアフリーで所望の配光パターンを形成しやすくなる。
【0019】
本発明の別の態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、半導体光源と、半導体光源の出射光を反射するリフレクタと、リフレクタが取り付けられ、その回転によりリフレクタの反射光を車両前方で走査せしめるモータと、モータを駆動するモータ駆動回路と、半導体光源を駆動する点灯回路と、を備える。点灯回路は、モータの駆動開始後、モータの回転数が所定の最低回転数に達した後に、半導体光源を点灯する。
リフレクタの運動周期が長い状態で半導体光源を点灯すると運転者がちらつき(フリッカともいう)を感じることとなる。モータの回転数が運転者がちらつきを感じにくい最低回転数に達する前は、半導体光源を非点灯とすることで、不快感を防止できる。
【0020】
モータ駆動回路は、停止状態のモータが、0.2秒より短い時間で、最低回転数に到達するように、モータを駆動してもよい。
これによりパッシング操作(Headlight Flashing)を行う場合に、半導体光源を点滅させることができる。
【0021】
モータ駆動回路は、停止状態のモータの駆動を開始した後、0.2秒より長く定められた所定時間の経過後に、モータの回転数にかかわらず、半導体光源を点灯してもよい。
パッシング操作(Headlight Flashing)ではちらつきは知覚されにくいため、点灯させることを優先することができる。
【0022】
2. 本発明の別の態様も、車両用灯具に使用される点灯回路に関する。車両用灯具は、半導体光源と、半導体光源の出射光を受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光を車両前方で走査するリフレクタと、を備える。点灯回路は、車両前方に形成すべき目標配光パターンを示す情報を受け、各時刻において半導体光源が発生すべき光量を演算する光量演算部と、各時刻において、光量演算部が演算した光量が得られるように半導体光源を点灯させるドライバと、を備える。光量演算部は、目標配光パターンが変更されたとき、変更後の目標配光パターンに向かって配光パターンが時間とともに徐々に変化するように、各時刻における光量を演算する。
【0023】
この態様によれば、不連続に変化する目標配光パターンが与えられるプラットフォームにおいても、点灯回路の光量演算部により配光パターンを時間とともに実質的に連続的に変化させることができ、運転者に与える不快感を減少し、および/または安全性を高めることができる。別の観点から言えば、車両側において必要な処理は、目標配光パターンを生成することであり、車両用灯具が自動的に配光パターンを徐変させるため、車両側の演算処理の負荷を軽減できる。
【0024】
変更前の目標配光パターンが第1領域を含み、変更後の目標配光パターンが第1領域に対応する第2領域を含むとき、光量演算部は、第1領域の一端、他端が第2領域の一端、他端それぞれに実質的に同時に到達するように、配光パターンを変化させてもよい。
これにより、配光パターンを自然に変化させることができる。
【0025】
変更前の目標配光パターンが第1領域を含み、変更後の目標配光パターンが第1領域に対応する領域を含まないとき、光量演算部は、第1領域の幅をゼロに向かって時間とともに緩やかに減少させてもよい。
これにより光を照射すべき物体が車両前方から消失した場合に、配光パターンを自然に変化させることができる。
【0026】
光量演算部は、第1領域の両端をその基準座標に向かって移動することにより、第1領域の幅を減少させてもよい。
【0027】
変更後の目標配光パターンが第2領域を含み、変更前の目標配光パターンが第2領域に対応する領域を含まないとき、光量演算部は、第2領域の幅をゼロから時間とともに緩やかに増大させてもよい。
これにより光を照射すべき物体が車両前方に突然現われた場合に、配光パターンを自然に変化させることができる。
【0028】
光量演算部は、第2領域の両端を、その基準座標から離間する方向に移動することにより、第2領域の幅を増大させてもよい。
【0029】
変更前の目標配光パターンが第1領域を含み、変更後の目標配光パターンが第2領域を含むとき、光量演算部は、第1領域と第2領域の距離が所定のしきい値より近い場合に、第1領域と第2領域を対応付けてもよい。
2つの領域の距離が離れている場合、それらに照射される車両前方の物体は同一でない可能性が高く、それらの距離が近い場合には、それらに照射される車両前方の物体は同一である可能性が高い。この態様によれば、自然なADBが実現できる。
【0030】
第1領域と第2領域の距離は、それぞれの基準座標の距離で定義されてもよい。
【0031】
あるいは変更前の目標配光パターンが第1領域を含み、変更後の目標配光パターンが第2領域を含むとき、配光パターン情報は、第1領域と第2領域が対応するか否かを示すデータを含んでもよい。
車両側のECUは、カメラや車速等の情報にもとづいて、高度に、各領域により照射される物体を識別可能な場合がある。この場合には、第1、第2領域の対応付けの判定を、車両側にゆだねることで、正確性を高めることができる。
【0032】
配光パターンの遷移時間は0.1秒以上、10秒以下であってもよい。
これにより、運転者に与える違和感を低減しつつ、配光パターンを変化させることができる。
【0033】
配光パターンが目標配光パターンに到達する前に、目標配光パターンが変更された場合、光量演算部は、そのときの現在の配光パターンを、変更前の目標配光パターンとしてもよい。
これにより、配光パターンの遷移が完了する前に車両前方の状況が変化した場合には、直ちに目標配光パターンを変更することで、新たな目標配光パターンに向かって配光パターンを徐変できる。
【0034】
光量演算部は、目標配光パターンが変更されると、変更前の目標配光パターンから変更後の目標配光パターンへ、所定の遷移時間にわたり、配光パターンを変化させてもよい。
この場合、目標配光パターンに依存することなく、遷移に要する時間を一定とすることができる。またひとつの配光パターンに複数の消灯領域(点灯領域)が含まれる場合に、各領域の移動を同時に完了させることができる。
【0035】
光量演算部は、目標配光パターンが変更されると、配光パターンに含まれる各領域の基準座標の速度が所定値となるように、配光パターンを変化させてもよい。
この場合、ひとつの配光パターンに複数の領域が含まれる場合に、各領域を同じ速度で移動させることができる。
【0036】
各領域の基準座標は、領域の中心座標であってもよい。これにより、各領域を違和感なく移動させ、あるいはサイズを変更できる。
【0037】
あるいは基準座標を、領域の左端または右端にとってもよい。この場合、光量演算部における演算処理を簡略化できる。
【0038】
車両用灯具は、複数の半導体光源を備えてもよい。光量演算部は、複数の半導体光源ごとに個別に、各時刻において半導体光源が発生すべき光量を決定してもよい。
【0039】
リフレクタはモータにより回転制御されてもよい。
【0040】
本発明の別の態様は、車両用灯具に関する。車両用灯具は、半導体光源と、半導体光源の出射光を受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光を車両前方で走査するリフレクタと、半導体光源を駆動する上述のいずれかの点灯回路と、を備える。
【0041】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0042】
本発明のある態様によれば、ブレードスキャン方式に使用可能な点灯回路を提供できる。また別の態様によれば、運転者に与える不快感を減少し、および/または安全性を高めることが可能な点灯回路を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0045】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0046】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0047】
図1は、実施の形態に係る車両用灯具1を模式的に示す斜視図である。
図1の車両用灯具1は、ブレードスキャン方式のADB機能を有し、車両前方に多様な配光パターンを形成する。車両用灯具1は主として、ブレード(反射鏡、リフレクタともいう)100、光源110、投影レンズ120および点灯回路200を備える。後述するように光源110は複数個設けてもよいが、ここでは理解の容易化、説明の簡素化のため、1個の光源110の場合を説明する。
【0048】
光源110は、LED(発光ダイオード)あるいはレーザダイオードを利用した半導体光源である。ブレード100は光源110の出射光L1を受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光L2を車両前方で横方向(図中、Y方向)に走査する。本実施の形態では、ブレード100は、図示しないモータのロータに取り付けられており、回転運動を行なう。ある時刻においてブレード100の出射光L1は、ブレード100の位置(ロータの回転角)に応じた反射角で反射し、照射領域300が形成される。
【0049】
ブレード100が回転することで、反射角が変化し、照射領域300がY方向に走査される。この動作を高速に、たとえば50Hz以上で繰り返すことで車両前方には、配光パターン310が形成される。点灯回路200は、所望の配光パターンが得られるように、ブレード100の周期運動と同期しながら、光源110の光量(輝度)を制御する。照射領域300が照射される範囲(領域)を点灯領域R
ON、照射領域300が照射されない範囲(領域)を消灯領域R
OFFと称する。配光パターン310は、点灯領域R
ON消灯領域R
OFFの組み合わせである。
【0050】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係る点灯回路200を備える車両用灯具ならびに灯具システムのブロック図である。灯具システム2は、ADB用ECU4および車両用灯具1を備える。ADB用ECU4は、車両側に搭載されてもよいし、車両用灯具1に内蔵されてもよい。
【0051】
ADB用ECU4は、カメラ情報S1や車両情報S2を受ける。ADB用ECU4は、カメラ情報S1にもとづいて、車両前方の状況、具体的には対向車、先行車の有無、歩行者の有無等を検出する。またADB用ECU4は、車両情報S2にもとづいて、現在の車速、ステアリング角などを検出する。ADB用ECU4はこれらの情報にもとづいて、車両前方に照射すべき配光パターンを決定し、配光パターンを指示する情報(配光パターン情報)S3を車両用灯具1に送信する。たとえば配光パターン情報S3は、横方向の照射座標を角度で表し、角度と、角度ごとの光量の対応関係を指示するデータを含んでもよい。
【0052】
たとえば理解の容易化のために、光源110の光量が、点灯、消灯のみで制御されるものとする。この場合、配光パターン情報S3は、車両前方に形成すべき配光パターン310のうち、消灯領域R
OFFを示すデータを含んでもよい。たとえば配光パターン情報S3は、消灯領域R
OFFの左端を示す座標θ
Lと、右端を示す座標θ
Rのセットを含んでもよい。消灯領域R
OFFが複数の場合、複数の座標のセット(θ
L,θ
R)含んでもよい。あるいは、配光パターン情報S3は、消灯領域R
OFFの中心座標θ
Cと、消灯領域R
OFFの幅Δθのセットを含んでもよいし、消灯領域R
OFFの左端座標θ
L(もしくは右端座標θ
R)と消灯領域の幅Δθのセットを含んでもよい。
【0053】
反対に配光パターン情報S3は、消灯領域R
OFFを示すデータに代えて、点灯領域R
ONを示すデータを含んでもよいし、それらの両方を含んでもよい。
【0054】
点灯回路200は、配光パターン情報S3にもとづいてブレード100の回転と同期しながら光源110の光量(輝度)を制御する。点灯回路200は、位置検出器202、周期演算部204、光量演算部210、ドライバ220を備える。周期演算部204および光量演算部210を、灯具ECU206と称する。灯具ECU206は、マイクロコントローラあるいはマイクロプロセッサ、あるいはASIC(Application Specified IC)を用いて構成できる。
【0055】
位置検出器202は、ブレード100の所定の基準箇所が所定位置を通過するタイミングを示す位置検出信号S4を生成する。たとえば基準箇所は、2枚のブレード100の端部(区切れ目)であってもよいし、各ブレードの中央であってもよく、任意の箇所とすることができる。
【0056】
ブレード100を回転させるモータ130には、ホール素子が取り付けられていてもよい。この場合、ホール素子からのホール信号は、ロータの位置、すなわちブレードの位置(以下、ブレード座標という)に応じた周期波形となる。位置検出器202は、ホール信号の極性が反転するタイミングを検出してもよく、具体的には一対のホール信号を比較するホールコンパレータで構成してもよい。ホール素子の取り付け位置は任意である。
【0057】
周期演算部204は、位置検出器202からの位置検出信号S4にもとづき、ブレードの周期運動の周期Tpを演算する。たとえば位置検出信号S4がホールコンパレータの出力である場合、周期演算部204は、位置検出信号S4のエッジの間隔(半周期)を測定する。周期演算部204は、エッジの間隔をクロック信号を利用してカウントするカウンタで構成することができる。周期演算部204は、測定した周期を示す周期情報S5を出力する。
【0058】
光量演算部210は、配光パターン情報S3を受け、位置検出信号S4および周期情報S5が示す周期Tpにもとづいて、各時刻において光源110が発生すべき光量を演算する。
【0059】
たとえば光量演算部210は、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specified IC)などで構成され、位置情報発生器212および光量コントローラ214と称される機能ブロックを含む。
【0060】
位置情報発生器212は、周期情報S5および位置検出信号S4にもとづいて、各時刻におけるブレード100の位置を示す位置情報S6を生成する。たとえば位置情報発生器212は、位置検出信号S4のエッジごとにリセットされ、周期TpをN分割(Nは整数)して得られる単位時間ごとにカウントアップ(あるいはカウントダウン)するカウンタで構成してもよい。
【0061】
光量コントローラ214は、配光パターン情報S3および位置情報S6にもとづき、各時刻における光源110の目標光量(点灯、消灯)を演算し、目標光量を指示する光量指令値S7を生成する。
【0062】
ブレード座標X(すなわち位置情報S6)と照射座標θの対応関係は、光源110およびブレード100の幾何学的な配置関係から導くことができる。光量コントローラ214は、位置情報S6と照射座標θの対応関係を保持するテーブルを含んでもよいし、それらの対応関係を記述する演算式を保持してもよい。
【0063】
そして光量コントローラ214は、配光パターン情報S3に含まれる照射座標θで記述されるデータθ
L,θ
Rを、ブレード座標のデータX
L、X
Rに変換し、各時刻の光量を決定してもよい。あるいは光量コントローラ214は、位置情報S6が示すブレード座標Xを照射座標θに変換し、各時刻の光量を決定してもよい。
【0064】
光量演算部210は、周期Tpが所定のしきい値より長いとき、つまりモータ130の回転数が所定値より低い場合には、光源110を消灯することが好ましい。また、消灯から点灯への切り替えに際し、光量演算部210は、モータ130の回転数が所定値より低い間は、光源110を点灯させないことが望ましい。ブレード100の運動周期Tpが長い場合に光源110を点灯すると運転者がちらつき(フリッカともいう)を感じることとなるため、そのような状況では光源110を消灯することで不快感を防止できる。
【0065】
たとえば照射領域300の走査周期が50Hz以下のときに、光源110を消灯することとしてもよい。経験的に50Hzを下回ると、ちらつきが人間の目に知覚されることが知られている。2枚のブレード100が使用される場合、モータ130の回転数が1500rpm以上であれば、ちらつきは知覚されないと言える。
【0066】
ドライバ220は、光量指令値S7を受け、各時刻において光量演算部210が演算した光量が得られるように光源110を点灯させる。
【0067】
以上が点灯回路200およびそれを備える車両用灯具1の構成である。続いてその動作を説明する。
【0068】
図3は、
図2の点灯回路200の動作を説明する図である。横軸は、照射座標θであり、ブレード座標Xであり、時間tでありえ、それらは1対1で対応づけられる。配光パターン310は、照射座標は0〜30度の範囲で規定される。ここでは2つの消灯領域R
OFF1,R
OFF2を形成する場合を示している。
【0069】
照射領域300は、ブレード100がある位置で停止しているときに、1個の光源110が照射する部分を示している。時間の経過とともにブレード100が回転するにしたがい、照射領域300は照射座標が増大する方向(あるいは反対方向)に走査される。照射領域300の走査方向側の一辺をリーディングエッジ302、反対の一辺をトレイリングエッジ304と称する。本実施の形態では、リーディングエッジ302の座標を基準として、光量の制御を行なうものとする。
【0070】
ブレード100を位置決めするモータ130は、所定の回転数で回転している。たとえばモータ130は、3600rpmで回転する。ただしモータ130の回転数は完全に一定に保つことはできず、またモータ130の回転は灯具ECU206の制御下にはなく、フリーラン状態にあると言え、灯具ECU206がモータ130(ブレード100)の状態に適応しつつ、光源110を制御する。
【0071】
ある時刻t0において、位置検出信号S4がアサートされると、その時刻がブレード座標Xの基準値(たとえば0)に対応づけられ、その後、時間とともにブレードの位置を示す位置情報S6の値が増加する。つまり時間tと位置情報S6が1対1で対応づけられる。傾きは、直前に演算された位置検出信号S4の周期Tpから定められる。
【0072】
消灯領域R
OFF1,R
OFF2それぞれの左端座標θ
L,右端座標θ
Rは、ブレード座標XのデータX
L,X
Rに変換される。そして光量コントローラ214は、消灯領域R
OFF1,R
OFF2における光量がゼロとなるように、光量指令値S7を生成する。
【0073】
図3に示すように、光量指令値S7がオフからオンに切りかわるタイミングは、消灯領域の範囲とΔXだけずれている。ΔXは、照射領域300の幅である。この理由を説明する。ブレードスキャン方式では照射領域300を走査して配光パターンを形成するため、配光パターン310は、照射領域300の積分値で与えられる。したがってもしオンからオンの切りかえをリーディングエッジ302の座標を基準として行なうと、消灯領域R
OFFに光が照射されてしまう。そこで光量コントローラ214は、リーディングエッジ302の座標が消灯領域の始端(点灯領域の終端)X
Lとなると、光源110をオンからオフに切りかえる。また光量コントローラ214は、トレイリングエッジ304の座標が消灯領域の終端(点灯領域の始端)X
Rとなると、言い換えればリーディングエッジ302の座標がX
R+ΔXとなると、光源110をオフからオンに切りかえることが望ましい。これにより消灯領域R
OFFを暗くできる。
【0074】
以上が点灯回路200の動作である。
この点灯回路200によれば、ブレード100の周期運動が、点灯回路200の制御下にない場合においても、ブレード100の周期Tpと位置検出信号S4にもとづいて、各時刻におけるブレード100の位置を推定できる。そして推定されたブレード100の位置から、反射光の照射領域300の位置が推定可能である。したがって、ブレード100の位置の変化にあわせて、光源110の光量を時々刻々と変化させることができ、所望の配光パターンを形成することができる。
【0075】
続いて、光源110が1個の場合を説明したが、複数の光源110を用いてもよい。
図4は、複数の光源110を用いた場合の点灯回路200の配光パターン310を説明する図である。ここでは3個の光源110A〜110Cが使用され、それぞれの照射領域は、300A〜300Cとして示される。
【0076】
図4には、ある時刻における照射領域300A〜300Cが示されている。複数の光源110を完全に同じ位置にレイアウトすることは不可能であり、ブレード100への入射角も光源110ごとに異なることから、複数の光源110A〜110Cは異なる照射領域300A〜300Cを形成する。
【0077】
そして点灯領域R
ON(消灯領域R
OFF)も、光源110A〜110Cごとに独立して形成される。最終的に形成される配光パターン310の光量は、それらの重ね合わせである。このように複数の光源110を併用することにより、各光源110のオン、オフを制御するのみで、多階調の配光パターン310を形成することができる。
【0078】
続いて、複数の光源110の点消灯制御について説明する。
図5および
図6は、複数の光源110の点消灯制御を説明する図である。
【0079】
上述のように、複数の光源110A〜110Cは異なる照射領域300A〜300Cを形成するため、ブレード座標Xと照射座標θの関係は、光源110ごとに異なる。そこで光量コントローラ214は、光源110ごとに個別に、位置情報S6(ブレード座標)と照射座標θの対応関係を保持するテーブルあるいは対応関係を記述する演算式を保持してもよい。配光パターン情報S3は、光源110に共通する点灯領域R
ON(消灯領域R
OFF)を指定するデータを含んでもよいし、光源110ごとに個別の点灯領域R
ON(消灯領域R
OFF)を指定するデータを含んでもよい。
【0080】
位置検出信号S4のエッジのタイミング、つまり位置情報S6が基準値(たとえばゼロ)の時刻において、照射領域300A〜300Cは図示の座標に位置するものとする。このときの照射領域300A〜300Cそれぞれのリーディングエッジの照射座標をθ
SA〜θ
SCとする。
【0081】
図6を参照する。位置情報S6は、位置検出信号S4のエッジのタイミングと同期して繰り返し発生する。
図6には、位置情報S6と、各光源110の照射座標θ
A〜θ
Cの関係が示される。位置検出信号S4がアサートされるタイミングにおいて、照射座標θ
A〜θ
Cはθ
SA〜θ
SCである。
【0082】
光量コントローラ214は、光源110A〜110Cの光量を個別に制御し、光源110A〜110Cごとの光量指令値S7
A〜S7
Cを生成する。
光源110Aに関しては、位置情報S6が、照射座標θ
Aの消灯領域R
OFFに対応するブレード座標Xを示す間、光量指令値S7
Aをオフ(消灯)レベルとする。同様に、光源110Bに関しては、位置情報S6が、照射座標θ
Bの消灯領域R
OFFに対応するブレード座標Xを示す間、光量指令値S7
Bをオフ(消灯)レベルとする。光源110Cについても同様である。
【0083】
点灯回路200によれば、光源110毎に、各時刻における反射光の照射領域300A〜300Cを個別に推定し、ブレード100の位置の変化にあわせて、各光源110の光量を時々刻々と変化させることができ、所望の配光パターンを形成することができる。
【0084】
ここでは位置情報S6(ブレード座標)を、複数の光源110A〜110Cで共有する場合を示したが、ハードウェア資源に余裕が有る場合には、光源110ごとに個別に位置情報S6を生成してもよい。
【0085】
図7は、複数の光源110を駆動するドライバ220の回路図である。
複数の光源110A〜110Cは直列に接続される。各光源110は、直列接続された複数のLEDを含んでもよい。またLEDの個数は光源110ごとに異なっていてもよい。
【0086】
ドライバ220は、コンバータ222、コンバータコントローラ224、複数のバイパススイッチSWA〜SWC、スイッチコントローラ226を備える。コンバータ222にはスイッチ8を介してバッテリ6からの電池電圧V
BATが供給される。コンバータ222は、光源110に対して目標輝度に応じた駆動電流I
LEDを供給する。コンバータコントローラ224は、駆動電流I
LEDを検出し、電流検出値が目標値に近づくように、コンバータ222のスイッチングのデューティ比あるいは周波数をフィードバック制御してもよい。高速な制御を実現するために、コンバータコントローラ224は、電流検出値が目標値の近傍に定められた上側しきい値に達するとコンバータ222のスイッチ素子をオフし、電流検出値が目標値の近傍に定められた下側しきい値まで低下するとスイッチ素子をオンする動作を繰り返してもよい。これはヒステリシス制御とも称される。
【0087】
たとえばコンバータ222は、昇圧型、降圧型、あるいは昇降圧型のコンバータである。好ましくはコンバータ222はCuk型のコンバータを用いるとよい。Cukコンバータのトポロジーは公知であるため説明を省略する。
【0088】
複数のバイパススイッチSWA〜SWCは、光源110A〜110Cに対応する。各バイパススイッチSWは、対応する光源110と並列に設けられる。バイパススイッチSWは、対応する光源110の点灯・消灯を切りかえるために設けられる。たとえばバイパススイッチSWAがオンすると、駆動電流I
LEDは、光源110Aには流れず、したがって光源110Aは消灯する。
【0089】
スイッチコントローラ226は、複数のバイパススイッチSWA〜SWCそれぞれのオン、オフを、対応する光源110A〜110Cの点灯、消灯指示(すなわち光量指令値S7
A〜S7
C)にもとづいて制御する。
【0090】
以上がドライバ220の構成である。
ブレードスキャン方式のADB制御を行なう場合、各光源110の光量を、短い周期で高速に制御する必要がある。そこでこの方式はバイパススイッチSWを用いることで、好適なADB制御が実現できる。
【0091】
図8は、ブレード100の正面図である。ブレード100の端部102およびその近傍は、中央部に比べて反射面の精度のばらつきが相対的に大きく、また蒸着ムラが生じやすいことから、光が散乱してグレアが生じたり、所望の配光パターンが得にくいという問題がある。そこで車両用灯具1は、ブレード100の端部102およびその近傍を配光パターン310の形成に使用しないよう配慮して設計することが望ましい。つまり、破線で囲まれる有効領域106の一部あるいは全部を利用して、所定の照射座標(0〜30°)をカバーできるように、光源110の光軸、ブレード100の向き、投影レンズ120を含む光学系を設計することが望ましい。
【0092】
そして光量演算部210は、ブレード100が、その端部102を含む所定範囲104に光源110の出射光を受光可能な位置にあるとき、光源110を消灯する。これにより、グレアフリーで所望の配光パターンを形成しやすくなる。
【0093】
第1の実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、第1の実施の形態に関する変形例について説明する。
【0094】
(第1変形例)
位置検出器202によるブレード100の位置検出方法は、ホール素子を利用したものに限定されない。たとえば位置検出器202は、モータ130のロータの位置を検出する光学式、あるいはその他の方式のロータリーエンコーダを利用して、位置検出信号S4を生成してもよい。あるいは位置検出器202は、ブレード100の裏側に設けられたフォトセンサと、ブレード100の表面側からフォトセンサに向かって光を照射する位置検出用の光源と、を含んでもよい。そしてブレード100に、スリットあるいはピンホールを設けてもよい。これにより、スリットあるいはピンホールが、フォトセンサの上を通過するタイミングを検出できる。スリットは、
図8に示す2枚のブレード100の間隙であってもよい。また位置検出用の光源は、赤外線光源を利用してもよいし、光源110であってもよい。このように位置検出器202の構成にはさまざまなバリエーションが存在しうる。
【0095】
(第2変形例)
実施の形態では2枚のブレード100の場合を説明したが、ブレードの枚数は限定されず、1枚であってもよいし、3枚以上であってもよい。また実施の形態では、ブレード100を回転運動させる場合を説明したが、ブレード100は往復運動させてもよい。
【0096】
(第3変形例)
実施の形態では、光源110の光量の制御として、点灯、消灯を切りかえる場合を説明したが、照射座標に応じて、光量を連続的に制御してもよい。
【0097】
(第4変形例)
実施の形態では、周期演算部204によって周期Tpを測定する場合を説明したが本発明はそれには限定されない。モータ130の回転数が一定であることが保証されるプラットフォームにおいては、ブレード100の運動の周期Tpとして所定値を用いてもよい。あるいは灯具ECU206がモータ130の回転数を制御する場合には、灯具ECU206が周期Tpを直接的に知ることができる。
【0098】
(第5変形例)
実施の形態では光源110の光量の制御として、点灯、消灯を切りかえる場合を説明したが、照射座標に応じて、光量を連続的に制御してもよい。
【0099】
(第6変形例)
光源110としては、LEDの他に、LD(レーザダイオード)や有機EL(エレクトロルミネッセンス)などの半導体光源を用いてもよい。
【0100】
(第7変形例)
実施の形態では、コンバータ222をCukコンバータで構成したが本発明はそれには限定されない。たとえばコンバータ222は、降圧コンバータ(Buckコンバータ)であり、降圧コンバータをコンバータコントローラ32を用いて制御してもよい。この場合、降圧コンバータの前段に、電池電圧V
BATを受けるフライバック型あるいはフォワード型の昇降圧コンバータを挿入してもよい。
【0101】
(第2の実施の形態)
続いて、モータの回転制御と、光源110の点消灯制御について説明する。
図9は、第2の実施の形態に係る車両用灯具1aのブロック図である。
【0102】
車両用灯具1aは、光源110、ブレード100、モータ130、モータ駆動回路132、点灯回路200aを備える。ブレード100は、光源110の出射光を反射するリフレクタであり、モータ130には、ブレード100が取り付けられる。モータ130の回転によりブレード100の反射光が車両前方で走査される。モータ130としてはブラシレスDCモータを用いることができる。モータ駆動回路132は、モータ130を駆動する。モータ駆動回路132は、市販のモータ駆動ICを用いることができる。点灯回路200aは、光源110に駆動電流を供給して光源110を点灯させる。
【0103】
本実施の形態においてモータ駆動回路132は、光源110の点灯が指示されると、モータ130を回転させる。そして点灯回路200aは、モータ130の駆動開始後、モータ130の回転数が所定の最低回転数に達した後に、光源110を点灯する。点灯回路200aは、
図2の点灯回路200と同様に、灯具ECU206とドライバ220を含んでもよい。また灯具ECU206は、
図2と同様に構成することができるが、その限りではない。
【0104】
多くのモータ駆動回路132は、モータ130の回転数に比例した周波数を有するFG(Frequency Generation)信号を出力する。たとえばモータ駆動回路132は、図示しないホール素子から出力される一対のホール信号を比較するホールコンパレータを含み、ホールコンパレータから出力される矩形信号に応じて、FG信号を出力するように構成される。点灯回路200aは、FG信号を監視し、その周期を測定することにより、モータ130の回転数を検出してもよい。あるいは点灯回路200aはホールコンパレータからの矩形信号を監視することにより、モータ130の回転数を検出してもよい。あるいは点灯回路200aはホールコンパレータを内蔵してもよい。
【0105】
ビームのスキャン周波数が50〜60Hzを下回ると、人間はフリッカを知覚する。モータ130に二枚のブレード100が取り付けられる灯具では、最低回転数は1500〜1800rpm、もしくはそれより高く設定することが望ましい。
【0106】
一般的なパッシング操作(Headlight Flashing)では、点灯時間は0.2秒〜1程度である。そこでモータ駆動回路132は、停止状態のモータ130が、0.2秒より短い時間で、最低回転数に到達するように、モータ130を駆動する。最低回転数に達するまでの時間を起動時間T
STARTと呼ぶ。言い換えればT
START<0.2秒となるような、モータ130およびモータ駆動回路132の組み合わせが選定される。これによりパッシング操作においても光源を確実に点滅させることができる。
【0107】
図10は、
図9の車両用灯具1aの動作波形図である。時刻t0にADB用ECU4から点灯が指示される。これに応答してモータ駆動回路132がモータ130の駆動を開始する。起動時間T
STARTの経過後の時刻t1にモータ130の回転数が最低回転数(たとえば1800rpm)に達すると、灯具ECU206はドライバ220に点灯を指示する。これにより光源110に駆動電流I
LDが供給され、光源110が点灯する。なお時刻t1以降の駆動電流I
LDを一定として示すが、実際には
図3に示すように配光パターン情報S3に応じた波形を有しうる。
【0108】
以上が車両用灯具1aの動作である。この車両用灯具1aによれば、モータ130の回転数が運転者がちらつきを感じにくい最低回転数に達する前は、モータ130を非点灯とすることで、不快感を防止できる。
【0109】
なお車両の設計方針として、低回転によるフリッカを抑制することよりも、点灯を優先させたい場合がある。この場合、モータ駆動回路132が停止状態のモータの駆動を開始した後、起動時間T
STARTより長く定められた所定時間(強制オン時間)の経過後に、モータ130の回転数にかかわらず、光源110を点灯してもよい。強制オン時間は0.2〜0.5秒程度に定めてもよい。たとえばモータ130の劣化、ゴミなどの付着などの要因により、起動時間T
STARTが0.2秒より長くなったり、最低回転数に到達しない状況も想定される。強制オン時間を設定することで、光源110の点灯を優先できる。
【0110】
続いて第2の実施の形態に関する変形例を説明する。
【0111】
図9の点灯回路200aは、モータ130の回転数を監視し、モータが最低回転数に到達したことを検出したが、本発明はそれに限定されない。起動時間T
STARTのばらつきが小さく、安定している場合、灯具ECU206は、モータ駆動回路132による通電時間を測定し、起動時間T
STARTの設計値に相当する時間が経過すると、光源110を点灯させてもよい。
【0112】
(第3の実施の形態)
上述のように配光パターン情報S3は、目標となる配光パターン(以下、目標配光パターン)を指示するデータを含む。そして目標配光パターンは、車両前方の状況などに応じて時々刻々と変化する。第3の実施の形態では、時間とともに変化する目標配光パターンに応じて、光源110を点灯可能な点灯回路200aについて説明する。
【0113】
図11は、第3の実施の形態に係る車両用灯具1aのブロック図である。車両用灯具1aは、ブレード100、光源110、点灯回路200aを備える。
【0114】
点灯回路200aは、光量演算部210aおよびドライバ220を備える。光量演算部210aは、目標配光パターンを示す配光パターン情報S3を受け、各時刻において光源110が発生すべき光量を演算する。ドライバ220は各時刻において、光量演算部210aが演算した光量が得られるように、光源110を点灯させる。
【0115】
以下、配光パターン情報S3が指示する目標配光パターンに符号310Rを、現在の車両用灯具1が車両前方に形成している配光パターンに符号310を付す。
【0116】
光量演算部210aは、目標配光パターン310Rが変更されたとき、変更後の目標配光パターン310Rに向かって配光パターン310が時間とともに徐々に変化するように(徐変制御ともいう)、各時刻における光量を演算する。
【0117】
たとえば光量演算部210aは、光量コントローラ214および徐変コントローラ216を含む。
【0118】
徐変コントローラ216は、変更前の目標配光パターン310Rと、変更後の目標配光パターン310Rにもとづき、時間とともに変化する配光パターン(徐変配光パターンという)310Sを演算し、徐変配光パターン310Sを示す情報S3Sを生成する。光量コントローラ214は、情報S3Sが示す徐変配光パターン310Sが得られるように、光量指令値S7を生成する。徐変配光パターン310Sから光量指令値S7への変換は、第1の実施の形態で説明した通りである。
【0119】
以上が点灯回路200aの基本構成である。
続いてその動作を説明する。
図12は、点灯回路200aの徐変制御を説明する図である。
図12には、変更前の目標配光パターン310R_STARTと、変更後の目標配光パターン310R_END、および複数の徐変配光パターン310Sが示される。この例では、変更前の目標配光パターン310R_STARTは第1領域(消灯領域R
OFF1)を含み、変更後の目標配光パターン310R_ENDが第1領域(R
OFF1)に対応する第2領域(消灯領域R
OFF2)を含む。
【0120】
変更前の目標配光パターン310R_STARTから変更後の目標配光パターン310R_ENDには、複数N個の徐変配光パターン310S_1〜310S_Nを経て徐々に遷移する。配光パターン310の遷移時間は0.1秒以上、10秒以下であることが好ましい。これにより、運転者に与える違和感を低減しつつ、配光パターンを変化させることができる。
【0121】
以上が点灯回路200aの基本動作である。この点灯回路200aによれば、不連続に変化する目標配光パターン310Rが与えられるプラットフォームにおいて、点灯回路200aの光量演算部210aにより配光パターン310を時間とともに連続的に変化させることができ、運転者に与える不快感を減少し、および/または安全性を高めることができる。
【0122】
別の観点から言えば、車両側(
図2のADB用ECU4)において必要な処理は、目標配光パターンを示す配光パターン情報S3を生成することであり、徐変制御は車両用灯具1aが自動的に行なうため、車両側の演算処理の負荷を軽減できる。さらに車両側の演算負荷に加えて、車両メーカにおける設計段階の手間を大幅に低減することができる。これらは車両用灯具1に大きな付加価値を付与する。
【0123】
続いて徐変配光パターン310Sの具体的な生成方法について説明する。
【0124】
(第1の制御方法)
図13(a)は、第1の制御方法を説明する図である。第1の制御方法では、目標配光パターン310R_STARTから目標配光パターン310R_ENDの変化速度が予め定められている。変化速度は、配光パターンに含まれる各領域の基準座標の速度であってもよい。具体的には消灯領域R
OFF(もしくは点灯領域R
ON)の基準座標(中心座標θ
C、左端θ
Lまたは右端θ
R)を、所定の速度で変化させる。この例では、消灯領域R
OFFの中心座標θ
Cを基準座標として、徐変配光パターン310Sが生成される。
【0125】
光量演算部210aは、基準座標(中心座標θ
C)が単位時間ΔTあたり、所定の制御ステップΔθ
S変化するように、徐変配光パターン310Sを生成する。単位時間ΔTは、たとえばブレードの走査時間である。制御ステップΔθ
Sは、ADB用ECU4からの制御に応じて変更可能であってもよい。
【0126】
ステップ数Nは、第1領域R
OFF1の中心座標θ
C1と第2領域R
OFF2の中心座標θ
C2の差(距離)θ
C2−θ
C1を用いて、以下の式で計算される。
N≒(θ
C2−θ
C1)/Δθ
S−1
となる。たとえば(θ
C2−θ
C1)が10°であり、Δθ
Sが1°であるとき、N=9個の徐変配光パターン310Sを経て、徐変制御が完了する。遷移時間Tsは、N×ΔTであり、2つの領域R
OFF1,R
OFF2の距離に応じて変化する。
【0127】
光量演算部210aは、第1領域R
OFF1の一端、他端が第2領域R
OFF2の一端、他端それぞれに実質的に同時に到達するように、徐変配光パターン310Sを変化させてもよい。この場合、消灯領域の左端θ
Lは、(θ
L2−θ
L1)/Nを変化幅として移動させ、消灯領域の右端θ
Rは、(θ
R2−θ
R1)/Nを変化幅として移動させればよい。
【0128】
この処理は、別の観点から見れば、光量演算部210aが、第1領域R
OFF1から第2領域R
OFF2に向かって、消灯領域の幅ΔθをNステップで変化させることと等価である。
【0129】
図13(b)には、第1の制御方法において、基準座標を各領域の右端θ
Rに採った場合の動作が示される。この場合、右端θ
Rの速度が一定となるように、配光パターンが制御される。左端θ
Lを基準座標にとってもよい。
【0130】
第1の制御方法によれば、ひとつの配光パターンに複数の領域が含まれる場合に、各領域を同じ速度で移動させることができ、自然なADB制御が実現できる。
【0131】
(第2の制御方法)
図13(c)は、第2の制御方法を説明する図である。第2の制御方法では、目標配光パターン310R_STARTから目標配光パターン310R_ENDの遷移時間(徐変時間)Tsが予め定められている。具体的には消灯領域R
OFF(もしくは点灯領域R
ON)の基準座標(中心座標θ
C、左端θ
Lまたは右端θ
R)は、移動距離にかかわらず、所定の遷移時間Tsをかけて移動を完了する。
【0132】
この制御方法では、ステップ数Nは、以下の式で与えられる。
N=Ts/ΔT
ΔTは単位時間であり、たとえばブレード100の走査時間である。遷移時間Tsは、ADB用ECU4からの制御に応じて変更可能であってもよい。
【0133】
徐変配光パターン310Sは、消灯領域R
OFFの中心座標θ
Cを基準として生成されてもよい。この場合、中心座標θ
Cは、(θ
C2−θ
C1)/Nを変化幅として移動することとなる。
【0134】
光量演算部210aは、第1領域R
OFF1の一端、他端が第2領域R
OFF2の一端、他端それぞれに実質的に同時に到達するように、徐変配光パターン310Sを変化させてもよい。この場合、消灯領域の左端θ
Lは、(θ
L2−θ
L1)/Nを変化幅として移動させ、消灯領域の右端θ
Rは、(θ
R2−θ
R1)/Nを変化幅として移動させればよい。
【0135】
この処理は、別の観点から見れば、光量演算部210aが、第1領域R
OFF1から第2領域R
OFF2に向かって、消灯領域の幅ΔθをNステップで変化させることと等価である。
【0136】
第2の制御方法によれば、目標配光パターンに依存することなく、遷移に要する時間を一定とすることができる。またひとつの配光パターンに複数の消灯領域(点灯領域)が含まれる場合に、各領域の移動を同時に完了させることができる。
【0137】
続いて、点灯回路200aの徐変制御のバリエーションについて説明する。
【0138】
図14(a)、(b)は、変更前の目標配光パターン310Rと変更後の目標配光パターン310Rとが、互いに対応する領域を含まない場合の制御を示す。
図14(a)には、変更前の目標配光パターン310R_STARTが第1領域R
OFF1を含み、変更後の目標配光パターン310R_ENDが第1領域R
OFF1に対応する領域を含まない場合を示す。この場合、光量演算部210aは、第1領域R
OFF1の幅をゼロに向かって時間とともに緩やかに減少させる。これにより光を照射すべき物体が車両前方から消失した場合に、配光パターンを自然に変化させることができる。
【0139】
より具体的には光量演算部210aは、第1領域R
OFF1の両端をその基準座標(たとえば中心座標θ
C)に向かって移動することにより、第1領域R
OFF1の幅を減少させてもよい。
【0140】
図14(b)には、変更後の目標配光パターン310R_ENDが第2領域R
OFF2を含み、変更前の目標配光パターン310R_STARTが第2領域R
OFF2に対応する領域を含まない場合を示す。この場合、光量演算部210aは、第2領域R
OFF2の幅をゼロから時間とともに緩やかに増大させる。これにより光を照射すべき物体が車両前方に突然現われた場合に、配光パターンを自然に変化させることができる。
【0141】
より具体的には光量演算部210aは、第2領域R
OFF2の両端を、その基準座標(たとえば中心座標θ
C)から離間する方向に移動することにより、第2領域R
OFF2の幅を増大させてもよい。
【0142】
図15は、変更前の目標配光パターン310Rに含まれる第1領域R
OFF1と、変更後の目標配光パターン310Rに含まれる第2領域R
OFF2が対応しない場合の制御を示す。この場合、第1領域R
OFF1、第2領域R
OFF2はそれぞれ、
図14(a)、(b)で説明したように徐変制御すればよい。
【0143】
光量演算部210aは、第1領域R
OFF1と第2領域R
OFF2の距離が所定のしきい値より近い場合に、第1領域R
OFF1と第2領域R
OFF2を対応づけて、
図12に示すように徐変制御し、それらの距離がしきい値より遠い場合に、第1領域R
OFF1と第2領域R
OFF2が対応しないものとして
図15に示す徐変制御を行なってもよい。2つの領域の距離は、それらの基準座標の距離であってもよく、すなわちそれぞれの中心座標θ
C(あるいは左端もしくは右端)の距離で定義してもよい。
【0144】
2つの領域の距離が離れている場合、それらに照射される車両前方の物体は同一でない可能性が高く、それらの距離が近い場合には、それらに照射される車両前方の物体は同一である可能性が高い。したがって、距離にもとづいて対応関係を判定することで自然なADBが実現できる。
【0145】
あるいは変形例において、ADB用ECU4からの配光パターン情報S3は、第1領域R
OFF1と第2領域R
OFF2が対応するか否かを示すデータを含んでもよい。
車両側のADB用ECU4は、カメラや車速等の情報にもとづいて、高度に、各領域により照射される物体を識別可能な場合がある。この場合には、第1、第2領域の対応付けの判定を、車両側にゆだねることで、正確性を高めることができる。
【0146】
配光パターン310が目標配光パターン310Rに到達する前に、目標配光パターン310Rが変更される状況が生じうる。この場合、光量演算部210aは、変更時における現在の配光パターン310を、変更前の目標配光パターン310R_STARTとすればよい。
【0147】
図16は、遷移途中の目標配光パターンの変更を説明する図である。ここでは第2の制御方法が採用され、遷移時間Tsが規定されている。時刻t1以前に、ある配光パターンが形成されている。時刻t1に、目標配光パターンが310R_END1に変更される。時刻t1以降、光量演算部210aは、時刻t1から遷移時間Ts経過後の時刻t2に、目標配光パターン310R_END1が得られるように、配光パターンを徐変させる。
【0148】
時刻t2より前の時刻t3に、新たな目標配光パターン310R_END2が設定される。光量演算部210aは、時刻t3における配光パターンを、変更前の目標配光パターン310R_START2に設定し、時刻t3から遷移時間Ts経過後の時刻t4に、目標配光パターン310R_END2が得られるように、配光パターンを徐変させる。
【0149】
この制御により、配光パターンの遷移が完了する前に車両前方の状況が変化した場合には、直ちに目標配光パターンを変更することで、新たな目標配光パターンに向かって配光パターンを徐変できる。
【0150】
続いて第3の実施の形態に関する変形例を説明する。
(第8変形例)
第3の実施の形態で説明した第1の制御方法において、第1領域R
OFF1の一端、他端が第2領域R
OFF2の一端、他端それぞれに、同時に到達することとしたが、本発明はそれには限定されず、異なる時刻に到達してもよい。
【0151】
(第9変形例)
第3の実施の形態における配光パターンの徐変制御は、第1の実施の形態で説明した点灯回路200の構成を前提としてもよい。つまり
図11の点灯回路200aは、位置検出器202、周期演算部204を備えてもよい。
【0152】
車両用灯具1aは、ブレード100の位置制御を行なってもよい。この場合には、位置検出器202、周期演算部204は不要であり、位置の制御目標値にもとづいて、配光パターンを生成することができる。
【0153】
(第10変形例)
図17は、第10変形例に係る車両用灯具1bのブロック図である。この変形例では、徐変コントローラ216と光量コントローラ214の順序が入れ替えられている。光量コントローラ214は、配光パターン情報S3を受け、目標配光パターンに対応する光量指令値S7を生成する。徐変コントローラ216は、変更前の目標配光パターンに対応する光量指令値S7_STARTから、変更後の目標配光パターンに対応する光量指令値S7_ENDへと徐々に変化する徐変光量指令値S7Sを生成し、ドライバ220に出力する。この変形例によっても、
図5の点灯回路200bと同様の動作を行なうことができる。
【0154】
いくつかの実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。