特許第6770912号(P6770912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770912
(24)【登録日】2020年9月30日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】無人機輸送用飛しょう体
(51)【国際特許分類】
   B64D 5/00 20060101AFI20201012BHJP
   B64D 1/12 20060101ALI20201012BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B64D5/00
   B64D1/12
   B64C39/02
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-31698(P2017-31698)
(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公開番号】特開2018-135026(P2018-135026A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 豊
(72)【発明者】
【氏名】阪口 晃敏
(72)【発明者】
【氏名】友永 行信
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0266578(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0211588(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0060271(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0112252(KR,A)
【文献】 特開平11−121100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 5/00
B64C 39/02
B64D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機を輸送する無人機輸送用飛しょう体であって、
前記無人航空機を収容する収容室を有するとともに、当該収容室に前記無人航空機を出し入れさせるための開口部が形成された収容部材と、
前記収容部材に設けられ、前記収容室内に収容された前記無人航空機を前記開口部の開口方向に移動させる移動手段と、
楔状に形成され、前記収容室の内側面と前記無人航空機との間に、前記無人機輸送用飛しょう体の飛行方向またはその反対方向に沿って狭窄する向きに配置された緩衝部材と、
を備え
前記開口部が前記無人機輸送用飛しょう体の飛行方向とは反対向きに開口していることを特徴とする無人機輸送用飛しょう体。
【請求項2】
前記緩衝部材が紐状部材を介して前記収容部材と連結されていることを特徴とする請求項1に記載の無人機輸送用飛しょう体。
【請求項3】
前記緩衝部材は、
前記無人航空機のうち、前記飛行方向側の端部を支持する第一緩衝部材と、前記飛行方向とは反対側の部分を支持する第二緩衝部材とを含み、
前記第一緩衝部材が、前記飛行方向と反対方向に向かって狭窄する向きに配置され、前記第二緩衝部材が、前記飛行方向に向かって狭窄する向きに配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無人機輸送用飛しょう体。
【請求項4】
前記移動手段は、前記収容室内のうち前記無人航空機よりも前記開口方向の反対側に配置されて、当該無人航空機を前記開口方向に押す押出し機構であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の無人機輸送用飛しょう体。
【請求項5】
前記無人航空機は、他の部分よりも強固なフレーム部分を有し、
前記緩衝部材は、前記無人航空機のうち前記フレーム部分と当接するように配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の無人機輸送用飛しょう体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機を輸送する技術に関し、特に、無人航空機を安全に保護しつつ目標空域まで高速で輸送した後に、好適に飛行開始させるのに有用な技術である。
【背景技術】
【0002】
一般に、一定時間の滞空が可能な無人航空機は、軽量化等のために高動圧環境に耐え得る構造強度を有していない。そのため、この種の無人航空機は飛行速度が比較的に遅く、目標空域までの進出に時間を要してしまう。
他方、高速飛行が可能な無人航空機は、短時間で目標空域に到達可能ではあるが、高重量等のために目標空域での滞空時間が短くなってしまう。
そこで、一定時間滞空可能な無人航空機を目標空域まで短時間で進出させるためには、ロケットによる人工衛星の打ち上げ等に見られるように、無人航空機を収容部材に収容して安全に保護した状態で、当該収容部材を高速で輸送する(飛行させる)必要がある。
【0003】
この場合、輸送時における無人航空機の保持構造としては、人工衛星をフェアリング内で保持する構造(例えば、特許文献1参照)を応用することが考えられる。
一般に、人工衛星は、図3(a),(b)に示すように、基端部を衛星分離部に当接させた状態でクランプバンドに締め付けられることによって、衛星分離部に保持されている。この保持構造を収容部材内の無人航空機に適用してやればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−121100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロケットの打ち上げ時には横方向への荷重がさほど大きく作用しないため、上述した人工衛星の保持構造は、人工衛星自体の強度も含め、ロケットの軸方向の荷重に耐えるものであれば足りる。
しかしながら、無人航空機を飛しょう体で輸送する場合には、ロケットの打ち上げ時と異なり、横方向への荷重が大きく作用する。そのため、上述した人工衛星の保持構造を単純に無人航空機に適用した場合、無人航空機が片持ち支持される状態となり、横方向への荷重によって当該無人航空機に大きな曲げ荷重が作用してしまう。無人航空機は上述のとおり高い構造強度を有していないことから、この曲げ荷重によって破損するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、無人航空機を安全に保護しつつ好適に輸送して飛行開始させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、無人航空機を輸送する無人機輸送用飛しょう体であって、
前記無人航空機を収容する収容室を有するとともに、当該収容室に前記無人航空機を出し入れさせるための開口部が形成された収容部材と、
前記収容部材に設けられ、前記収容室内に収容された前記無人航空機を前記開口部の開口方向に移動させる移動手段と、
楔状に形成され、前記収容室の内側面と前記無人航空機との間に、前記無人機輸送用飛しょう体の飛行方向またはその反対方向に沿って狭窄する向きに配置された緩衝部材と、
を備え
前記開口部が前記無人機輸送用飛しょう体の飛行方向とは反対向きに開口していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無人機輸送用飛しょう体において、
前記緩衝部材が紐状部材を介して前記収容部材と連結されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の無人機輸送用飛しょう体において、
前記緩衝部材は、
前記無人航空機のうち、前記飛行方向側の端部を支持する第一緩衝部材と、前記飛行方向とは反対側の部分を支持する第二緩衝部材とを含み、
前記第一緩衝部材が、前記飛行方向と反対方向に向かって狭窄する向きに配置され、前記第二緩衝部材が、前記飛行方向に向かって狭窄する向きに配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の無人機輸送用飛しょう体において、
前記移動手段は、前記収容室内のうち前記無人航空機よりも前記開口方向の反対側に配置されて、当該無人航空機を前記開口方向に押す押出し機構であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の無人機輸送用飛しょう体において、
前記無人航空機は、他の部分よりも強固なフレーム部分を有し、
前記緩衝部材は、前記無人航空機のうち前記フレーム部分と当接するように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、収容部材内の無人航空機は、収容室の内側面と当該無人航空機との間に配置された緩衝部材によって保護される。これにより、無人航空機は、作用する荷重を緩衝部材を介して外皮面で圧縮荷重として受けるため、端部で片持ち支持される場合に比べ、当該無人航空機に作用する曲げ荷重を小さくすることができる。
したがって、人工衛星の保持構造を適用した場合と異なり、無人航空機を安全に保護しつつ好適に輸送して飛行開始させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における無人機輸送用飛しょう体を示す図であって、(a)が側断面図であり、(b)が蓋部材を外した状態の背面図である。
図2】無人機がキャニスタの収容室から押し出された状態の無人機輸送用飛しょう体を示す図である。
図3】人工衛星の保持構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
[無人機輸送用飛しょう体の構成]
まず、本実施形態における無人機輸送用飛しょう体(以下、単に「輸送用飛しょう体」という。)1の構成について説明する。
図1は、輸送用飛しょう体1を示す図であって、(a)が側断面図であり、(b)が後述の蓋部材3を外した状態の背面図である。また、図2は、無人機UAVが後述のキャニスタ2から押し出された状態の輸送用飛しょう体1を示す図である。なお、図1及び図2では、キャニスタ2のみを断面で図示している。
【0016】
図1(a),(b)に示すように、輸送用飛しょう体1は、無人機UAVを高速輸送するためのものである。より詳しくは、輸送用飛しょう体1は、例えば高速で飛行する図示しない航空機によって所定の飛行軌道に投入されることにより高速で飛行(飛しょう)し、目標空域に到達した後に無人機UAVを単体で離脱させて自律飛行を開始させるものである。無人機UAVは、自律飛行可能な無人航空機であり、特に限定はされないが、低速での一定時間の滞空飛行が可能な機体である。
具体的に、輸送用飛しょう体1は、キャニスタ2と、蓋部材3と、複数(本実施形態では8つ)の緩衝部材5と、押出し機構6とを備えている。
【0017】
キャニスタ2は、略円錐状に形成された収容部材であり、その内部が無人機UAVを収容する収容室2aとなっている。収容室2a内には、無人機UAVが翼を折り畳んで機体後方をキャニスタ2の先端側に向けた状態で収容されている。このキャニスタ2は、先端側を飛行方向前側として、その飛行方向に対応した翼を有するとともに、高速での飛行に耐える十分な強度を有している。
また、キャニスタ2の底部(後端部)には、主に無人機UAVを収容室2aに収容及び取出すための後方向きの開口部21が、当該底部の略全面に亘って形成されている。ただし、この開口部21は、少なくとも無人機UAVが挿通可能な大きさであればよい。
なお、以下の説明では、輸送用飛しょう体1(キャニスタ2)の向きについて、その飛行方向と対応させて、キャニスタ2の先端側を「前(前側)」、底部側を「後(後側)」と記載する。
【0018】
蓋部材3は、キャニスタ2後端部の開口部21を閉塞するとともに、飛行時におけるキャニスタ2後流の空気の流れを整流するためのものである。この蓋部材3は、例えば火薬などの分離機構(図示省略)により、キャニスタ2から分離可能なようにキャニスタ2に結合されている。そして、当該蓋部材3は、輸送用飛しょう体1が目標空域に到達した後に、キャニスタ2から分離されて開口部21を開口させる。
【0019】
複数の緩衝部材5は、収容室2a内で無人機UAVを保護するためのものである。これら複数の緩衝部材5は、本実施形態においては、収容室2aの前端部に配置された4つの前部緩衝部材51と、収容室2aの中程よりやや後側に配置された4つの後部緩衝部材52とから構成されている。
このうち、4つの前部緩衝部材51は、収容室2aの前端部において、無人機UAV後端部の上下左右の4箇所を保護している(図1及び図2では、上下2箇所を保護する2つのみ図示)。より詳しくは、各前部緩衝部材51は、略楔状に形成され、後方(開口部21の開口方向)に向かって狭窄する向きに配置されて、収容室2aの内側面(上下左右の各側面)と無人機UAVとの間に詰められている。
一方、4つの後部緩衝部材52は、収容室2aの中程よりやや後側において、無人機UAVの中程よりやや前側部分の上下左右の4箇所を保護している。より詳しくは、各後部緩衝部材52は、略楔状に形成され、前方(開口部21の開口方向と反対方向)に向かって狭窄する向きに配置されて、収容室2aの内側面(上下左右の各側面)と無人機UAVとの間に詰められている。
【0020】
押出し機構6は、無人機UAVをキャニスタ2の収容室2a内から押し出すためのものである。この押出し機構6は、前後方向に移動可能な押出し部材61と、この押出し部材61を後方に移動させるスプリング部材62とを備えている。そして、押出し機構6は、スプリング部材62を縮ませて押出し部材61を無人機UAVよりも前側に保持した状態で、キャニスタ2の収容室2a前端部に設けられている。
【0021】
この押出し機構6は、図示しない制御手段(または無人機UAVの制御部)に動作制御される。
具体的に、押出し機構6は、高速で飛行する輸送用飛しょう体1から蓋部材3が分離されてキャニスタ2の開口部21が開口し、さらに減速機構(例えばドラッグシュートなど;図示省略)によりキャニスタ2が十分に減速した後に、無人機UAVを収容室2a内から押し出す。
より詳しくは、押出し機構6は、制御手段により押出し部材61の保持状態が解除されることにより、図2に示すように、スプリング部材62に付勢された押出し部材61が無人機UAVを後方へ移動させて、当該無人機UAVを開口部21から収容室2a外へ押し出す。
このとき、無人機UAVを保護する緩衝部材5は、楔状に形成されて開口部21の開口方向またはその反対方向に沿って狭窄する向きに配置されているため、大きな抵抗なく、押出し機構6によって無人機UAVとともに収容室2a外へ押し出される。
より詳しくは、収容室2aの前端部に配置された前部緩衝部材51は、無人機UAVの後端部(つまり、開口部21の開口方向とは反対側の端部)を支持しており、開口部21の開口方向に向かって狭窄する向きに配置されている。そのため、当該前部緩衝部材51は、この開口方向に押し出される無人機UAVの移動を大きく妨げることがない。
また、後部緩衝部材52は、無人機UAVのうちの前側部分(つまり、開口部21の開口方向側の部分)を支持しており、開口部21の開口方向とは反対方向に向かって狭窄する向きに配置されている。そのため、当該後部緩衝部材52は、この開口方向に押し出される無人機UAVによって簡単に押されて移動することとなり、例えば単純な矩形状などで収容室2aの内側面と無人機UAVとの間に詰められる場合に比べ、無人機UAVの移動を大きく妨げることがない。
これにより、無人機UAVは、キャニスタ2から離脱して独立して飛行可能な状態となり、折り畳んでいた翼を展開させて自律飛行を開始する。
【0022】
[効果]
以上のように、本実施形態によれば、キャニスタ2内の無人機UAVは、収容室2aの内側面と当該無人機UAVとの間に配置された緩衝部材5によって保護される。これにより、無人機UAVは、作用する荷重を緩衝部材5を介して外皮面で圧縮荷重として受けるため、端部で片持ち支持される場合に比べ、当該無人機UAVに作用する曲げ荷重を小さくすることができる。
また、無人機UAVをキャニスタ2から離脱させるときには、押出し機構6によって無人機UAVが開口部21の開口方向に移動されて、収容室2aから取り出される。このとき、収容室2aの内側面と無人機UAVとの間に配置された緩衝部材5は、楔状に形成されて、開口部21の開口方向またはその反対方向に沿って狭窄する向きに配置されているため、無人機UAVの移動に対して大きな抵抗にはならない。
したがって、人工衛星の保持構造を適用した場合と異なり、無人機UAVを安全に保護しつつ好適に輸送して飛行開始させることができる。ひいては、高速輸送時の横方向荷重に耐え得る無人機UAVの高強度化の必要がなく、当該無人機UAVの軽量化を図ることができる。
【0023】
[変形例]
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0024】
例えば、無人機UAVを保護する緩衝部材5の数量や位置は、上記実施形態のものに特に限定されない。この緩衝部材5は、楔状に形成されて、開口部21の開口方向またはその反対方向に沿って狭窄する向きに配置されることで、当該開口方向への無人機UAVの移動を大きく妨げないものであればよい。ただし、緩衝部材5は、無人機UAVのうち比較的に強固なフレーム部分と当接するように配置されることが好ましい。
【0025】
また、複数の緩衝部材5は、ロープなどの紐状部材を介してキャニスタ2と連結されていることが好ましい。これにより、無人機UAVとともに収容室2a内から押し出された後でも、当該複数の緩衝部材5が周囲に飛散してしまうことを防止することができる。
【0026】
また、上記実施形態では、押出し機構6が無人機UAVを収容室2a外に押し出すこととしたが、本発明に係る移動手段は、収容室内に収容された無人航空機を開口部の開口方向に移動させるものであれば、収容室内部から無人航空機を押すものでなくともよい。
例えば、開口部21から後方に開傘したドラッグシュート(パラシュート)などによって、収容室2a内から無人機UAVを引き出すこととしてもよい。
あるいは、開口部21を開口させた後に、キャニスタ2がドラッグシュート(パラシュート)などによって吊支されて開口部21を下向きにした状態で降下することとし、無人機UAVを下方の開口部21から自由落下させてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 無人機輸送用飛しょう体
2 キャニスタ(収容部材)
2a 収容室
21 開口部
3 蓋部材
5 緩衝部材
51 前部緩衝部材(第一緩衝部材)
52 後部緩衝部材(第二緩衝部材)
6 押出し機構(移動手段)
UAV 無人機
図1
図2
図3