(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の熱処理装置においては、円形の半導体ウェハーを石英の円板形状のプレート上に設けた複数の微小な支持ピン上に載置して熱処理を行っている。当該円板形状のプレートの直径は半導体ウェハーの直径よりも大きい。このような石英のプレート上に半導体ウェハーを載置してハロゲンランプによる予備加熱を行うと、半導体ウェハーの外縁部からの放熱が顕著となり、その外縁部分での温度低下が大きくなって半導体ウェハーの面内温度分布が不均一になるという問題が生じ易い。
【0008】
このため、特許文献1には、円板形状のプレートの周縁部に炭化ケイ素(SiC)にて形成された温度補償リングを設け、ハロゲンランプによる予備加熱時には温度補償リングが昇温して半導体ウェハーの外縁部から放出された熱を補償することが提案されている。このようにすれば、予備加熱段階における半導体ウェハーの面内温度分布を均一にすることができる。
【0009】
しかしながら、炭化ケイ素の温度補償リングは、予備加熱に続くフラッシュ加熱時にフラッシュランプから出射されたフラッシュ光によって熱的な損傷を受けるという新たな問題が生じていた。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フラッシュ光照射による損傷を生じさせることなく基板の面内温度分布を均一にすることができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を保持する石英のサセプタと、前記チャンバーの下方に設けられ、前記サセプタに保持された前記基板の下面に光を照射するハロゲンランプと、前記チャンバーの上方に設けられ、前記サセプタに保持された前記基板の上面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、前記サセプタに保持された前記基板の周縁部に近接するように設けられ、赤外光を吸収し、かつ、可視光を透過する赤外光吸収部材と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、基板にフラッシュ光を照射することによって当該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を保持する石英のサセプタと、前記チャンバーの下方に設けられ、前記サセプタに保持された前記基板の下面に光を照射するハロゲンランプと、前記チャンバーの上方に設けられ、前記サセプタに保持された前記基板の上面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、前記サセプタに保持された前記基板の周縁部に近接するように設けられ、赤外光の透過率が20%以下、かつ、可視光の透過率が60%以上の赤外光吸収部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る熱処理装置において、前記チャンバー内にて前記赤外光吸収部材を上下動させる駆動機構をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記赤外光吸収部材が石英の被覆部材によって覆われることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記サセプタの平面サイズは前記基板の平面サイズよりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1および請求項3から請求項5の発明によれば、赤外光を吸収し、かつ、可視光を透過する赤外光吸収部材がサセプタに保持された基板の周縁部に近接するように設けられるため、赤外光吸収部材がハロゲンランプからの光を吸収して基板周縁部から放出された熱を補償するとともに、フラッシュ光は赤外光吸収部材を透過することとなり、フラッシュ光照射による損傷を生じさせることなく基板の面内温度分布を均一にすることができる。
【0017】
請求項2および請求項3から請求項5の発明によれば、赤外光の透過率が20%以下、かつ、可視光の透過率が60%以上の赤外光吸収部材がサセプタに保持された基板の周縁部に近接するように設けられるため、赤外光吸収部材がハロゲンランプからの光を吸収して基板周縁部から放出された熱を補償するとともに、フラッシュ光は赤外光吸収部材を透過することとなり、フラッシュ光照射による損傷を生じさせることなく基板の面内温度分布を均一にすることができる。
【0018】
特に、請求項3の発明によれば、チャンバー内にて赤外光吸収部材を上下動させる駆動機構を備えるため、赤外光吸収部材による基板周縁部の加熱の程度を調整することができる。
【0019】
特に、請求項4の発明によれば、赤外光吸収部材が石英の被覆部材によって覆われるため、当該赤外光吸収部材に好ましくない成分が含まれていたとしても、そのような成分が基板に付着するのを防止することができる。
【0020】
特に、請求項5の発明によれば、サセプタの平面サイズは基板の平面サイズよりも小さいため、基板周縁部からの放熱を抑制して基板の面内温度分布をさらに均一にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0024】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0025】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0026】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0027】
チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は熱処理空間65に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0028】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、窒素(N
2)等の不活性ガス、または、水素(H
2)、アンモニア(NH
3)等の反応性ガスを用いることができる(本実施形態では窒素)。
【0029】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0030】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
【0031】
図2は、保持部7の平面図である。
図3は、保持部7の縦断面図である。保持部7は、支持部72およびサセプタ74を備えて構成される。支持部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0032】
サセプタ74はチャンバー6の内壁面に取り付けられた4個の支持部72によって支持される。サセプタ74は、円板形状の保持プレート75の上面に複数の基板支持ピン77を立設して構成される。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも小さい。すなわち、サセプタ74の平面サイズは半導体ウェハーWの平面サイズよりも小さいのである。
【0033】
保持プレート75の上面には、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、円板形状の保持プレート75の外周円と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm〜φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0034】
サセプタ74の保持プレート75の周縁部が4個の支持部72によって支持される。具体的には、支持部72の先端に形成された鉛直方向に沿って延びる部分の上端によって保持プレート75の下面周縁部が支持される。サセプタ74が4個の支持部72によって支持された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の上面は水平面となる。
【0035】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、サセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の上面までの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0036】
図2に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計120(
図1参照)が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計120が開口部78を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光し、別置のディテクタによってその半導体ウェハーWの温度が測定される。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0037】
また、円板形状のサセプタ74の周囲を囲繞するように光吸収リング20が配置されている。
図4は、光吸収リング20の近傍を拡大した図である。光吸収リング20は円環形状の部材である。円環形状の光吸収リング20の内径は、サセプタ74の保持プレート75の直径よりも大きく、半導体ウェハーWの直径よりも小さい。光吸収リング20の外径は、半導体ウェハーWの直径よりも大きい。光吸収リング20の厚さは適宜のものとすることができる。
【0038】
図8は、光吸収リング20の透過率の分光特性を示す図である。同図に示すように、光吸収リング20は、可視光の透過率が60%以上である一方、赤外光の透過率は20%以下である。すなわち光吸収リング20は、赤外光を吸収し、かつ、可視光を透過する性質を有する素材にて形成されている。このような特性を有する素材としては、例えば株式会社五鈴精工硝子製の赤外線吸収フィルターISK−150を用いることができる。
【0039】
光吸収リング20の内径は半導体ウェハーWの直径よりも小さいため、光吸収リング20はサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面周縁部に近接するように設けられることとなる。
図1,3に示すように、光吸収リング20は、チャンバー6の壁面に取り付けられた昇降駆動部25によって昇降可能に設けられる。昇降駆動部25は、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの周縁部の下方にて
図4の矢印AR4に示すように光吸収リング20を上下動させることにより、当該半導体ウェハーWの下面周縁部と光吸収リング20との間隔dを調整する。
【0040】
図5は、移載機構10の平面図である。また、
図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円筒状のチャンバー側部61の内壁に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0041】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図2参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0042】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0043】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0044】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0045】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0046】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する光照射部である。
【0047】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0048】
また、
図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0049】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0050】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0051】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(
図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0052】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0053】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0054】
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0055】
まず、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0056】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0057】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。このときには、半導体ウェハーWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0058】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0059】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の上面との間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置に退避する。
【0060】
また、チャンバー6に半導体ウェハーWが搬入されるときには、サセプタ74の周囲に光吸収リング20が配置されている。光吸収リング20は、その上面が基板支持ピン77の上端よりも低くなる高さ位置に昇降駆動部25によって移動されている。従って、半導体ウェハーWがサセプタ74に保持されたときには、当該半導体ウェハーWの下面周縁部と光吸収リング20とが近接対向することとなる(
図3,4)。半導体ウェハーWがサセプタ74に保持された後、半導体ウェハーWの下面周縁部と光吸収リング20との間隔dが予め設定された値となるように、光吸収リング20の高さ位置が昇降駆動部25によって調整される。
【0061】
半導体ウェハーWが保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。
【0062】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が放射温度計120によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を放射温度計120が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計120による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。予備加熱温度T1は、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。
【0063】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、放射温度計120によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0064】
ところで、ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階では、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部の温度よりも低下する傾向にある。本実施形態においては、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの周縁部に近接するように光吸収リング20を設けている。光吸収リング20は、赤外光を吸収し、かつ、可視光を透過する。
【0065】
ハロゲンランプHLから出射される光の分光分布においては、主として赤外域での強度が強い。すなわち、ハロゲンランプHLは主に赤外光を出射するのである。従って、ハロゲンランプHLから出射された光は光吸収リング20にも吸収されることとなる。そして、ハロゲンランプHLから出射された光を吸収することによって光吸収リング20の温度も上昇する。半導体ウェハーWの下面周縁部と近接対向する光吸収リング20が昇温することにより、光吸収リング20からの熱放射によって半導体ウェハーWの周縁部が加熱される。その結果、予備加熱時の半導体ウェハーWの周縁部からは熱が放出される一方、その半導体ウェハーWの周縁部には光吸収リング20から熱が与えられるのである。換言すれば、ハロゲンランプHLによって予備加熱される半導体ウェハーWの周縁部から放出された熱が光吸収リング20によって補償されることとなり、予備加熱時の半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。
【0066】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0067】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0068】
本実施形態では、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの周縁部に近接するように光吸収リング20を設け、予備加熱時に半導体ウェハーWの周縁部から放出された熱を光吸収リング20によって補償することにより、予備加熱段階での半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にしている。その結果、フラッシュ光照射時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
【0069】
また、光吸収リング20は、赤外光を吸収し、かつ、可視光を透過する。フラッシュランプFLから出射されるフラッシュ光の分光分布においては、主として可視光域での強度が強く、ハロゲンランプHLよりも波長が短い。すなわち、フラッシュランプFLは主に可視光を出射するのである。従って、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光は光吸収リング20には吸収されず、光吸収リング20を透過することとなる。このため、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によって光吸収リング20が熱的な損傷を受けることは防がれる。なお、フラッシュ加熱時のフラッシュ光照射時間は極めて短いため、光吸収リング20がフラッシュ光を透過しても、半導体ウェハーWの温度分布には影響を及ぼさない。
【0070】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は放射温度計120によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、放射温度計120の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0071】
本実施形態においては、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの周縁部に近接するように光吸収リング20を設けている。光吸収リング20は、赤外光を吸収し、かつ、可視光を透過する。予備加熱を行うハロゲンランプHLは主に赤外光を出射し、フラッシュ加熱を行うフラッシュランプFLは主に可視光を出射する。すなわち大まかに言えば、光吸収リング20は、ハロゲンランプHLから出射された光を吸収し、かつ、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を透過するのである。
【0072】
従って、ハロゲンランプHLによる予備加熱時には光吸収リング20がハロゲンランプHLから出射された光を吸収して昇温し、半導体ウェハーWの周縁部から放出された熱を補償して半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にする。その一方、フラッシュランプFLによるフラッシュ光照射時には、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光が光吸収リング20を透過するため、光吸収リング20が熱的な損傷を受けることは防がれる。すなわち、赤外光を吸収し、かつ、可視光を透過する光吸収リング20をサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの周縁部に近接して設けることにより、フラッシュ光照射による損傷を生じさせることなく半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができるのである。
【0073】
また、本実施形態においては、半導体ウェハーWよりも平面サイズが小さいサセプタ74によって半導体ウェハーWを保持している。よって、半導体ウェハーWの周縁部近傍には石英のサセプタ74が存在していない。石英のサセプタ74はハロゲンランプHLから出射された赤外光をも透過するため予備加熱時にもほとんど昇温せず、半導体ウェハーWの周縁部から放熱の原因となる。本実施形態では、半導体ウェハーWの周縁部近傍に石英のサセプタ74が存在していないため、予備加熱時における半導体ウェハーWの周縁部からの放熱を抑制して半導体ウェハーWの面内温度分布をより均一にすることができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面周縁部に対向するように光吸収リング20を配置していたが、これに限定されるものではなく、半導体ウェハーWの端縁部を囲繞するように光吸収リング20を配置しても良いし、半導体ウェハーWの上面周縁部に対向するように光吸収リング20を配置しても良い。このような配置であっても、予備加熱時に半導体ウェハーWの周縁部から放出される熱を光吸収リング20によって補償することができ、半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。要するに、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの周縁部に近接するように光吸収リング20を配置すれば良い。もっとも、半導体ウェハーWの上面周縁部に対向するように光吸収リング20を配置すると、光吸収リング20がフラッシュ光照射時の障害となるおそれもあるため、上記実施形態のように、半導体ウェハーWの下面周縁部に対向するように光吸収リング20を設けるのが好ましい。
【0075】
また、光吸収リング20の素材が半導体製造プロセスに好ましくない成分を含有する場合には、光吸収リング20を石英によって被覆するようにしても良い。
図9は、光吸収リング20を石英によって被覆した例を示す図である。光吸収リング20は、上記実施形態と同様の素材にて形成されており、赤外光を吸収し、かつ、可視光を透過する。その光吸収リング20の表面全面が石英の被覆部材29によって覆われる。これにより、光吸収リング20に含有される半導体製造プロセスに好ましくない成分が半導体ウェハーWに付着するのを防止することができる。
【0076】
また、放射温度計120に加えて半導体ウェハーWの異なる位置の温度を測定する複数の放射温度計を設けるようにしても良い。複数の放射温度計は、例えば半導体ウェハーWの中央部、周縁部およびそれらの中間部の温度を測定する。そして、半導体ウェハーWの周縁部の温度低下の程度に応じて、半導体ウェハーWの下面周縁部と光吸収リング20との間隔dを調整するようにしても良い。半導体ウェハーWの周縁部の温度低下の程度が大きいときには光吸収リング20を上昇させて間隔dを小さくし、当該周縁部の温度低下の程度が小さいときには光吸収リング20を下降させて間隔dを大きくする。より具体的には、半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部の温度と等しくなるように、制御部3が昇降駆動部25をフィードバック制御して間隔dを調整する。
【0077】
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0078】
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。処理対象の基板が矩形のガラス基板であれば、光吸収リング20の形状も四角の環状となる。また、本発明に係る技術は、高誘電率ゲート絶縁膜(High-k膜)の熱処理、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。