【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、請求項1に記載の方法により完全にまたは部分的に解決される。本発明の実施形態およびさらなる詳細が、添付の従属請求項、図面および配列表に記載される。
【0014】
したがって、本方法は、試料中のPIK3CAアレル、すなわち、試料中の突然変異、例えば、ホットスポット突然変異を含有するPIK3CAアレルの存在の決定に関する。試料は、例えば、CTCのものであり得るが、本方法は、任意の他のタイプの生物学的試料中で、例えば、血漿/血清中の無細胞DNAまたは固形腫瘍のFFPE組織中で使用することもできる。PIK3CA突然変異の検出を使用して多くのタイプの癌、例として、結腸、乳房、脳、甲状腺、膵臓、前立腺、頭頸部、卵巣、子宮頸部、肝臓、胃、食道、皮膚および肺の癌を決定することができる。本方法は、例えば、乳癌の初期診断の間にPIK3CA突然変異が存在し得た癌の発症のリスクを決定する場合に特に有利である。
【0015】
本発明の方法は、L.Zhouら[Zhou L,et al.Rare allele enrichment and detection by allele−specific PCR,competitive probe blocking,and melting analysis.BioTechniques 2011;50:311−8]によりBRAF突然変異について最初に記載されたアプローチに基づく。この方法の基本的アプローチを使用して、CTCの試料中のPIK3CAホットスポット突然変異を検出するようにデノボプライマーおよびプローブを設計し、全ての実験条件を確認した。融解分析および非標識プローブの態様は、ユタ大学(University of Utah)からIDAHO technologyにライセンス付与された。
【0016】
本発明による方法は、均一系中の希少アレルの検出を向上させ得る。本方法は、競合ブロッキングプローブを使用する非対称およびアレル特異的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、および融解分析を含む。本方法は、増幅すべき突然変異アレルDNA標的の第1鎖の3’(3プライム)末端に相補的な突然変異アレル特異的プライマーおよび検出すべき突然変異が存在する正確な位置における野生型DNAの対応する第1鎖の野生型配列に相補的なオリゴヌクレオチドである非標識ブロッキングプローブ(競合プローブ)を要求する。さらに、本方法は、PCRにより増幅すべきDNA標的の第2鎖の3’末端に相補的な共通プライマーを含む。
【0017】
この場合、例えば、CTCの試料中のPIK3CA突然変異アレルの存在を決定する本発明による方法は、
・非対称およびアレル特異的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するステップ、ならびに
・PCRにおいて産生されたDNAの融解分析を実施するステップ
を含み、
PCRを、
・増幅すべき突然変異アレルDNA標的の第1鎖の3’(3プライム)末端に相補的な突然変異アレル特異的プライマー、
・検出すべき突然変異が存在する対応位置における突然変異アレルの第1鎖に対応する野生型DNAの第1鎖の野生型配列に相補的なオリゴヌクレオチドであり、PCR反応におけるDNA合成のためのプライマーとして作用するのをブロックされる非標識ブロッキングプローブ;および
・PCRにより増幅すべきDNA標的の第2鎖の3’末端に相補的な共通プライマー
の使用により実施し、
融解分析を、
・野生型アレル配列に相補的であり、突然変異アレルの配列と重複する配列を含むオリゴヌクレオチドである非標識プローブである融解プローブ;および
・増幅突然変異アレル鎖または野生アレル鎖に結合している融解プローブの二本鎖成分を少なくとも含む二本鎖DNA成分の融解温度を計測するための検出可能な成分(融解温度は、増幅突然変異アレル鎖に結合している融解プローブおよび増幅野生アレル鎖に結合している融解プローブの二本鎖成分間で異なる)
の使用により実施する。
【0018】
次いで、アレル特異的PCRを使用して希少アレルを濃縮する。アレル特異的PCRは、所望の突然変異アレルに完全に特異的であるように設計される突然変異アレル特異的プライマー(リバースまたはフォワード)である第1のプライマーを要求し、その3’末端は、検出すべき突然変異部位に正確に存在するように設計される。共通プライマー(フォワードまたはリバース)である第2のプライマーも使用し、そのプライマーは第1のプライマーが結合する相補鎖に結合し、突然変異および野生型鎖アレルの両方の増幅に使用することができる。このように、試料中に存在する他のアレル、例えば、野生型はミスマッチし、非特異的増幅は制限される。しかしながら、突然変異アレル特異的プライマーのみを使用することにより、この阻害は、これまで記載された全ての例において100%完全ではない。それというのも、野生型は、通常、過剰濃度において存在するためである。
【0019】
したがって、本方法は、非標識ブロッキングプローブを使用する競合プローブブロッキングの使用を含む。非標識ブロッキングプローブ(競合プローブ)は、検出すべき突然変異が存在する正確な位置中の野生型配列に相補的なオリゴヌクレオチドである。この非標識ブロッキングプローブは、PCRにおいてプライマーとして使用されるその3’末端においてブロックされ、例えば、PCRのための通常プライマーと比較してその3’末端における付加リン酸基を有することによりブロックされる。この非標識ブロッキングプローブは、野生型アレルの競合ブロッキングに使用し、突然変異アレル特異的プライマーよりも高濃度、例えば、アレル特異的プライマーの5から20倍または10倍高い濃度において付加する。突然変異アレル特異的プライマーおよび非標識ブロッキングプローブの配列における重複が存在し、突然変異アレル特異的プライマーおよびこの非標識ブロッキングプライマーの両方が存在する場合(野生型および突然変異体);非標識ブロッキングプローブは野生型にハイブリダイズし、突然変異アレル特異的プライマーは突然変異アレルにハイブリダイズする。したがって、非標識ブロッキングプローブは、感度増加のためのアレル特異的プライマーと競合する。それというのも、それは野生型とマッチさせるように設計され、したがって、野生型アレル上に正確に結合するためである。非標識ブロッキングプローブは、対応するホットスポット突然変異が可能な限り非標識ブロッキングプローブの中央近くに配置されるように設計することができる。このように、野生型の非特異的増幅を最小の程度に低減させることができる。希少アレル濃縮は、アレル特異的プライマーと比較して過剰のブロッキングプローブおよびリバースプライマーについて最適である。
【0020】
非対称PCRは、突然変異アレル特異的プライマーを、共通プライマーに関してより低濃度(例えば、10倍低い)において添加するアレル特異的PCRを含む。このように、この突然変異アレル特異的プライマーは、極めて低い濃度において存在する突然変異アレルによってのみPCRにおいて完全に使用される。突然変異アレルの存在下で、および数回のPCRサイクル後、突然変異アレル特異的プライマーは完全に使用され、次いで突然変異情報を含む鎖が過剰に産生される。それというのも、それは、両方のアレルに共通である他のプライマーのための一定のテンプレートとして使用され、野生型アレルの増幅が突然変異アレル特異的プライマーおよび非標識ブロッキングプローブの使用により制限されるためである。産生される一本鎖PCR産物は、突然変異情報を含有する。PCR後、それらは過剰であり、過剰で完全に相補的でないプローブにより認識されるため、融解曲線がより低温である。
【0021】
融解分析はPCR反応に行い、目的の融解温度よりも低い温度から、目的の融解温度を超える温度に温度を増加させ、二本鎖DNAの融解温度を検出するステップを含む。
【0022】
融解分析は、野生型アレル配列に相補的であり、好ましくは、突然変異位置の周囲の突然変異アレルの配列と重複する配列を含むオリゴヌクレオチドである非標識プローブである融解プローブの使用を含む。この場合、融解プローブ(非標識ブロッキングプローブ)は、突然変異アレル特異的プライマーの配列と重複する配列を含み得る。融解プローブは、野生型アレルへのその結合と比較して突然変異アレルへのその結合について異なる融解温度を提供する。融解プローブは、本明細書においても例示されるとおり、非標識ブロッキングプローブであり得る。突然変異アレルに対する非標識ブロッキングプローブの融解温度は、野生型アレルに対する非標識ブロッキングプローブの融解温度よりも低い。非標識ブロッキングプローブは極めて高い濃度において添加し、これは、主として、野生型配列をブロックする反応において使用し、突然変異アレル特異的プライマーは、野生型に非特異的に結合せず、非特異的PCR産物を生じさせ得ない。さらに、この同一の非標識ブロッキングプローブは、上記のとおり突然変異情報を含有する一本鎖および野生型一本鎖を認識している。結果として、得られる融解曲線は、プローブ下のアレルに特異的なシグネチャーに類似する。
【0023】
融解プローブおよび非対称PCR産物の相補第1鎖間の融解温度の計測は、蛍光色素を使用する蛍光検出技術の使用により実施することができる。一実施形態において、蛍光色素は、計測試料中の二本鎖DNAの存在下でのみ蛍光を発光する色素である。色素は、LC−Green Plusであり得る。二本鎖DNAおよび蛍光色素LC−Green Plusの蛍光の発光を計測することにより、突然変異アレルについて特徴的な融解曲線を導出する。それというのも、突然変異DNA配列の融解温度は、野生型配列のものよりも低いためである。本方法は、全ての産物が二本鎖であり、100%において蛍光を発光する場合、PCR反応の終了後に温度を増加させることを含み得る。次いで、温度を徐々に増加させ、温度がDNA配列について特徴的な温度、すなわち、Tmに達する場合、蛍光が減少し始める。Tmは、DNAの50%が二本鎖であり、50%が一本鎖である温度である。
【0024】
色素を使用する融解分析は、例えば、55から60摂氏度の10秒間および95摂氏度の1分間のアニーリングのステップ(温度を、55から60摂氏度の温度から開始して0.2摂氏度/秒の増分(変化速度)だけ徐々に増加させる)、ならびに色素を検出することにより融解温度を計測するステップ(データ収集ステップ)を含み得る。
【0025】
PCR反応において増幅すべき突然変異アレルDNA標的は、PIK3CAのエクソン9(配列番号1)および/またはエクソン20(配列番号2)を含み得、またはそれからなり得、突然変異アレル特異的プライマー配列は、エクソン9(配列番号1)またはエクソン20(配列番号2)のDNA鎖に相補的である。
【0026】
融解プローブは、非標識ブロッキングプローブであり得る。非標識ブロッキングプローブは、増幅のためのPCRプライマーと比較して付加リン酸基により修飾されている3’末端を有し得る。これは、DNA鎖の合成のためのPCRプライマーとしての非標識ブロッキングプローブの使用をブロックする。場合により、非標識ブロッキングプローブは、1つ以上の非蛍光部分、例えば、限定されるものではないが、非蛍光副溝バインダー、ビオチン、スペーサー、リンカー、リン酸、塩基類似体、非天然塩基などにより修飾することができる。
【0027】
上記のとおり、検出可能な成分は蛍光成分を含み得、この場合、融解分析は蛍光成分を検出することを含み得る。蛍光成分は、蛍光色素、例えば、試料中の二本鎖DNAの存在下でのみ蛍光を発光するLC−Green PlusまたはSYBR Green Iからなる群の蛍光色素であり得る。
【0028】
非標識ブロッキングプローブは、突然変異アレル特異的プライマーよりも高濃度において反応中で添加して野生型アレル配列の増幅をブロックする。非標識プローブは、野生型DNAに優先的に結合し、プライマー結合と競合する。同時に、より低濃度の突然変異アレル特異的プライマーは、突然変異アレル配列のみの伸長をもたらす。したがって、ブロッキングプローブの濃度は、過剰の野生型アレルへの結合のため突然変異プライマーよりも高いことが望ましい。さらに、突然変異アレル特異的プライマーおよび共通プライマー間の異なる濃度は、突然変異情報を含む鎖の産生を過剰にもたらして本方法の感度を増加させる。
【0029】
突然変異は、PIK3CAのエクソン9(配列番号1)中に存在し得、突然変異アレル特異的プライマーは、配列5’TTCTCCTGAT
T−3’(配列番号3)(
Tは、突然変異部位を示し、Aは、野生型アレル配列の増幅を阻害する付加ミスマッチを示す)を含むか、またはそれからなり、突然変異希少アレルのみの増幅を増加させ、方法の特異度の向上をもたらす。突然変異アレル特異的プライマーの配列は、好ましくは、5’−ACTCCATAGAAAATCTTTCTCCTGAT
T−3’(配列番号4)を含み得、またはそれであり得る。
【0030】
非標識ブロッキングプローブは、配列5’−CTGAT
CAGTGA−3’(配列番号5)(
Cは、配列が野生型部位に相補的な正確な位置を示す)、および非標識ブロッキングプローブがPCR反応においてDNA合成のためのプライマーとして作用するのをブロックするPCRブロッキング成分を含み得、またはそれからなり得る。非標識ブロッキングプローブの配列は、好ましくは、5’−CTTTCTCCTGAT
CAGTGATTTCAGAG−P−3’(配列番号6)(Pは、PCRブロッキング成分として作用するリン酸である)を含み得、またはそれであり得る。
【0031】
共通プライマーは、配列5’−GCTCAAAGCAATTTCTACACGAGA−3’(配列番号7)に対して75%から100%の同一性を有し得る。これは、共通プライマーが、核酸配列5’−GCTCAAAGCAATTTCTACACGAGA−3’(配列番号7)に対して少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%または少なくとも90%の同一性、例えば、75〜100%、76〜100%、77〜100%、78〜100%、79〜100%、80〜100%、81〜100%、82〜100%、83〜100%、84〜100%、85〜100%、86〜100%、87〜100%、89〜100%、90〜100%、91〜100%、92〜100%、93〜100%、94〜100%、95〜100%、96〜100%、97〜100%、98〜100%、99〜100%または約100%の同一性を有し得ることを意味する。
【0032】
突然変異は、PIK3CAのエクソン20(配列番号2)中にも存在し得、突然変異アレル特異的プライマーは、配列5’−AATGATGCAC
G−3’(配列番号8)(
Gは、突然変異部位を示す)を含むか、またはそれからなる。突然変異アレル特異的プライマーの配列は、好ましくは、5’−ATGAAACAAATGAATGATGCAC
G−3’(配列番号9)を含むか、またはそれであり得る。
【0033】
非標識ブロッキングプローブは、配列5’−TGCAC
ATCATG−3’(配列番号10)(
Aは、配列が野生型部位に相補的な正確な位置を示す)、および非標識ブロッキングプローブがPCR反応においてDNA合成のためのプライマーとして作用するのをブロックするPCRブロッキング成分を含み得、またはそれからなり得る。非標識ブロッキングプローブの配列は、好ましくは、5’−GAATGATGCAC
ATCATGGTGG−P−3’(配列番号11)(Pは、PCRブロッキング成分として作用するリン酸である)を含み得、またはそれであり得る。
【0034】
この場合、共通プライマーは、配列5’−TCTCAGTTATCTTTTCAGTTCAATGC−3’(配列番号12)に対して75%から100%の同一性を有し得る。これは、共通プライマーが、核酸配列5’−TCTCAGTTATCTTTTCAGTTCAATGC−3’(配列番号12)に対して少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%または少なくとも90%の同一性、例えば、75〜100%、76〜100%、77〜100%、78〜100%、79〜100%、80〜100%、81〜100%、82〜100%、83〜100%、84〜100%、85〜100%、86〜100%、87〜100%、89〜100%、90〜100%、91〜100%、92〜100%、93〜100%、94〜100%、95〜100%、96〜100%、97〜100%、98〜100%、99〜100%または約100%の同一性を有し得ることを意味する。
【0035】
本文書はまた、
i)対象における悪性新生物疾患を診断し、および/または
ii)対象における悪性新生物疾患の治療の効力を予測し、および/または
iii)対象における悪性新生物疾患の治療のアウトカムを評価し、および/または
iv)対象における悪性新生物疾患の再発を評価する
方法であって、
対象は、悪性新生物疾患を有する、または有すると疑われる哺乳動物であり、
本明細書に記載のステップにより試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの存在を分析することを含む方法
に関する。
【0036】
本明細書に記載の方法は、有利には、試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの存在を検出するため、ならびに
i)対象における悪性新生物疾患を診断し、および/または
ii)対象における悪性新生物疾患の治療の効力を予測し、および/または
iii)対象における悪性新生物疾患の治療のアウトカムを評価し、および/または
iv)対象における悪性新生物疾患の再発を評価するため
に使用することができ、
対象は、悪性新生物疾患を有する、または有すると疑われる哺乳動物である。
【0037】
分析される試料は生物学的試料であり得、前記生物学的試料は、対象から得ることができる。有利には、対象はヒトである。
【0038】
悪性新生物疾患は、乳癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃(gastric)癌、頭頸部癌、肝臓癌、卵巣癌、甲状腺癌、皮膚癌、膵臓癌、前立腺癌および胃(stomach)癌からなる群から選択することができる。
【0039】
有利には、悪性新生物疾患は、乳癌である。
【0040】
対象における悪性新生物疾患を診断および/または予後診断する場合、本方法は、
a)所与の対象から生物学的試料を得るステップ
b)本明細書に記載の前記生物学的試料から得られたDNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの存在を分析する方法を実施するステップ
c)前記DNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの存在を検出するステップ;ならびに
d)前記DNA試料中で検出されたPIK3CA突然変異アレルDNAの量を陽性および/または陰性対照と比較し、それにより対象における悪性新生物疾患を診断および/または予後診断するステップ
を含む。
【0041】
さらなる実施形態は、陽性対照が突然変異を担持する細胞系からの細胞を含む実施形態である。いっそうさらなる実施形態は、陰性対照が悪性新生物疾患を罹患していない健常対象からの細胞を含む実施形態である。
【0042】
悪性新生物疾患を罹患する対象における治療のアウトカムを予測するか、または治療に対する応答を予測する場合、本方法は、
a)所与の対象から生物学的試料を得るステップ
b)本明細書に記載の前記生物学的試料から得られたDNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの存在を分析する方法を実施するステップ;ならびに
c)前記DNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの存在を検出するステップ;ならびに
d)前記DNA試料中で検出されたPIK3CA突然変異アレルDNAの量を陽性および/または陰性対照と比較し、それにより前記DNA試料中で検出されたPIK3CA突然変異アレルDNAの存在に基づき前記対象における悪性新生物疾患の治療のアウトカムを予測するステップ
を含む。
【0043】
悪性新生物疾患について治療されている対象における悪性新生物疾患の治療の効力を評価する場合、本方法は、
a)悪性新生物疾患について治療を受けている対象から生物学的試料を得るステップ
b)本明細書に記載の前記生物学的試料から得られたDNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの存在を分析する方法を実施するステップ;
c)前記DNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの存在を検出するステップ;および
d)悪性新生物疾患についての前記対象の治療間の1つ以上の時点においてステップa)からc)を繰り返すステップ
を含み、経時的な前記DNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの相対存在の変化は、治療の効力を示す。
【0044】
したがって、有効な治療の指標は、本方法を繰り返すステップにおける事前の分析試料に対する前記DNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの存在の減少の相対変化である。
【0045】
場合により、当技術分野に公知の、または本明細書に記載の標準的なスコアリング系により、前記DNA試料中の検出されたPIK3CA突然変異アレルDNAのスコアリングを行うことができる。
【0046】
試料は、悪性新生物疾患を含む可能性がある任意の試料、好ましくは、悪性新生物疾患を有する対象からの生物学的試料であり得、その対象は、治療予定、治療の合間または現在治療中の患者である。
【0047】
悪性新生物疾患の再発を評価する場合、本方法は、
a)既に悪性新生物疾患を有した対象から生物学的試料を得るステップ、
b)前記生物学的試料から得られたDNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの存在を検出するステップ、
c)悪性新生物疾患についての前記対象の治療後の1つ以上の時点においてステップa)およびb)を繰り返すステップ
を含み、経時的な前記DNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの相対存在の変化は、悪性新生物疾患の再発を示し得る。
【0048】
したがって、再発の指標は、悪性新生物疾患を同定する前記DNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの増加量の相対変化、すなわち、本方法を繰り返すステップにおける事前の分析試料に対する前記DNA試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAの存在の経時的増加である。
【0049】
本方法はまた、試料中のPIK3CAのエクソン9中の突然変異の存在を検出するためのポリヌクレオチドであって、少なくとも配列5’−TTTCTCCTGAT
T−3’(配列番号3)、好ましくは、5’−ACTCCATAGAAAATCTTTCTCCTGAT
T−3’(配列番号4)(
Tは、突然変異部位を示し、Aは、付加ミスマッチを示す)を含むか、またはそれからなる配列を含むか、またはそれからなるポリヌクレオチドに関する。ポリヌクレオチドは、有利には、上記の方法において、PIK3CAのエクソン9中の突然変異の存在を検出するための突然変異アレル特異的プライマーとして使用することができる。ポリヌクレオチドは、乳癌のための予後診断マーカーとして使用することができる。
【0050】
本発明はまた、試料中のPIK3CAのエクソン20中の突然変異の存在を検出するためのポリヌクレオチドであって、少なくとも配列5’−AATGATGCAC
G−3’(配列番号8)、好ましくは、5’ATGAAACAAATGAATGATGCAC
G−3’(配列番号9)(
Gは、突然変異部位を示す)を含むか、またはそれからなる配列を含むか、またはそれからなるポリヌクレオチドに関する。ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の方法において、PIK3CAのエクソン20中の突然変異の存在を検出するための突然変異アレル特異的プライマーとして使用することができる。ポリヌクレオチドは、乳癌のための予後診断マーカーとして使用することができる。
【0051】
本発明はまた、試料、例えば、CTC、ctDNAまたはFFPE中のPIK3CA突然変異アレルDNAを検出するためのキットに関する。試料中のPIK3CA中の突然変異を検出するためのキットは、
i)生物学的試料中のPIK3CA突然変異アレルDNAを検出し、および/または
ii)対象における悪性新生物疾患を検出する;または
iii)対象における悪性新生物疾患を診断または予後診断する;または
iv)対象における悪性新生物疾患の治療のアウトカムを予測する;または
v)対象における悪性新生物疾患の治療の効力を評価する、または
vi)対象における悪性新生物疾患の再発を評価するため
に使用することもできる。
【0052】
キットは、
− 試料中のPIK3CAのエクソン9中の突然変異を検出するための第1のポリヌクレオチド(前記第1のポリヌクレオチドは、少なくとも配列5’TTTCTCCTGAT
T−3’(配列番号3)を含むか、またはそれからなり、好ましくは、前記第1のポリヌクレオチドは、5’−ACTCCATAGAAAATCTTTCTCCTGAT
T−3’(配列番号4)を含むか、またはそれからなる)、および/または
− 試料中のPIK3CAのエクソン20中の突然変異を検出するための第2のポリヌクレオチド(前記第2のポリヌクレオチドは、少なくとも配列5’−AATGATGCAC
G−3’(配列番号8)を含むか、またはそれからなり、好ましくは、前記第2のポリヌクレオチドは5’−ATGAAACAAATGAATGATGCAC
G−3’(配列番号9)を含むか、またはそれからなる)を含み得る。第1および/または第2のポリヌクレオチドは、上記の方法において、突然変異アレル特異的プライマーとして使用することができる。
【0053】
キットは、少なくとも配列5’−CTGAT
CAGTGA−3’(配列番号5)およびPCRブロッキング成分を含むか、もしくはそれからなる第3のポリヌクレオチド(好ましくは、前記第3のポリヌクレオチドは、5’−CTTTCTCCTGAT
CAGTGATTTCAGAG−P−3’(配列番号6)(Pは、リン酸であり、Aは、付加ミスマッチである)を含むか、またはそれである)、ならびに/または少なくとも配列5’−TGCAC
ATCATG−3’(配列番号10)およびPCRブロッキング成分を含むか、もしくはそれからなる第4のポリヌクレオチド(好ましくは、前記第4のポリヌクレオチドは、5’−GAATGATGCAC
ATCATGGTGG−P−3’(配列番号11)(Pは、リン酸である)を含むか、またはそれである)をさらに含み得る。第3および/または第4のポリヌクレオチドは、上記の方法において、非標識ブロッキングプローブとして使用することができる。
【0054】
キットは、配列5’−GCTCAAAGCAATTTCTACACGAGA−3’(配列番号7)に対して75%から100%の同一性を有する配列を有する第5のポリヌクレオチド、および/または配列5’−TCTCAGTTATCTTTTCAGTTCAATGC−3’(配列番号12)に対して75%から100%の同一性を有する第6のポリヌクレオチドをさらに含み得る。第5および/または第6のポリヌクレオチドは、上記の方法において、共通プライマーとして使用することができる。