【実施例】
【0084】
(実施例1)
寄託番号CECT−20901のEupenicillium crustaceumの菌株によって生成される発酵エキスの調製
A)寄託番号CECT−20901のEupenicillium crustaceumの菌株の培養プロセス。
【0085】
寄託番号CECT−20901のEupenicillium crustaceumの菌株を、発酵槽中、25℃およびpH7.5で、水と、炭素供給源としての5g/Lのマンニトールと、5g/Lの酵母エキスと、炭素および窒素供給源としての5g/Lのダイズペプトンと、30g/Lの海塩とを含有する培養培地で培養する。培養培地に、5%体積の成長前培養物を接種する。発酵をおよそ1週間にわたって実施し、その間、培養物に、十分な空気を供給し、撹拌速度150〜350rpmで撹拌する。
B)寄託番号CECT−20901のEupenicillium crustaceumの菌株によって生成される発酵エキスの単離。
【0086】
Eupenicillium crustaceum細胞を、ステップA)によって生成された発酵ブロスから、およそ10,000gで連続的に遠心分離することによって分離する。上清ブロスを廃棄し、Eupenicillium crustaceum細胞を、リンガー1/4緩衝液(2.25g/Lの塩化ナトリウム、0.105g/Lの塩化カリウム、0.12g/Lの塩化カルシウム六水和物および0.05g/Lの炭酸水素ナトリウム)に再浮遊させる。この後、細胞を、フレンチプレスを使用し、40KPsiで2サイクルの操作で破砕する。次に、破砕されたブロスを、イソプロパノール(イソプロパノール:破砕されたブロスの体積比4.7:1.0)を用い、撹拌容器中、3時間にわたって抽出する。次に、エキスの精製を、エキスを40〜50℃の温度でロータエバポレーションすることによって実施する。次に、試料エキスの乾燥重量を、(液体)エキスを110℃で恒量に達するまで乾燥させることによって得る。詳細には、エキス2mLを110℃で恒量に達するまで乾燥させる。次に、乾燥エキスの恒量を使用して、エキスの乾燥重量濃度(試料の乾燥重量を試料の重量で割ったもの)を算出した。これにより、10%(W/W)の値が得られる。本実施例では、別段の指定がなければ、発酵エキスは、液体(すなわち、乾燥されていない)形態で使用され、また、エキスの重量に言及されている場合には、これは、エキスの相当する乾燥重量である。液体エキスは、さらに使用されるまで−20℃の温度で保たれる。
(実施例2)
寄託番号CECT−20901のEupenicillium crustaceumの菌株によって生成される発酵エキスの物理化学的特徴付け。
【0087】
発酵エキスの物理化学的特徴付けのために、寄託番号CECT−20901のEupenicillium crustaceum菌株に由来するエキスの3つの異なるバッチについて、遊離アミノ酸およびペプチド分析、炭水化物分析(フェノール−硫酸法)、および脂質含量分析を行う。バッチ1は、実施例1に従って得られたものである。バッチ2および3は、実施例1に記載されている連続的な遠心分離条件と同等の非連続的な遠心分離を使用したことのみ異なって、実施例1に記載されているプロトコールに従って得られたものである。
遊離アミノ酸およびペプチド分析
【0088】
遊離アミノ酸の分析とペプチドの分析には、同じ方法を使用するが、遊離アミノ酸には、加水分解(パートi)を実施せず、ペプチドにはそれを実施することが異なる。
i.加水分解
寄託番号CECT−20901のEupenicillium crustaceum菌株に由来する発酵エキスの3つのバッチの乾燥重量は以下の通りである:バッチ1の乾燥重量濃度は10%(W/W)であり、バッチ2の乾燥重量濃度は18.4%(W/W)であり、バッチ3の乾燥重量濃度は19.9%(W/W)である。各バッチについて、エキス25mgを10mLの清潔な加水分解チューブに入れる。6NのHCl+0.5%フェノール1mLを添加し、混合物を24時間にわたって110℃まで加熱する。その後、加水分解された試料を凍結乾燥させ、20mMのHCl 3mLに再溶解させる。
ii.アミノ酸誘導体化
AccQ−Fluor試薬に基づくACCQ−TAGケミストリーパッケージ(WATERS Cromatografia、SA)を使用してアミノ酸を分析する。加熱ブロックを55℃に予め加熱した。全てのAccQ. Fluor Reagent Powderがバイアルの底にあることを確実にするために、Tap Vial 2Aを少し前に開封する。清潔なマイクロピペットを、Vial 2BからAccQ・Fluor Reagent Diluent 1mLを吸い出して廃棄することによってすすぐ。AccQ・Fluor Reagent Diluent 1mLをVial 2BからVial 2A中のAccQ・Fluor Reagent Powderに移す。vial 2Aに軽くふたをし、10秒間ボルテックスする。再構成したAccQ・Fluor Reagentは、デシケーター中、室温で最大1週間にわたって保管することができる。その後、較正標準(1〜50pmol/μLであるシステインを除いて、各アミノ酸を2〜100pmol/μLで含有する)を誘導体化しなければならない。較正標準10μLを清潔な試料チューブの底部に添加し、次に、AccQ.Fluor Borate Buffer 70μLを試料チューブに添加し、短時間ボルテックスする。その後、再構成したAccQ.Fluor Reagent 20μLを試料チューブに添加し、数秒間ボルテックスした。混合物を室温で1分間インキュベートし、次に、バイアルを55℃で10分間する。
試料を用いて同じ方法に従った(較正標準を加水分解された試料に置き換える)。分析に使用するカラムは、AccQ・Fluor Column(WATERS製)であり、溶出液はA)AccQ・Fluor Eluent A、およびB)水/アセトニトリル(40:60)である。溶出勾配を、0%のBで開始し、0.2分間で2%のBまで上昇させる。次に、15分の時点で、B濃度を7%まで上昇させ、19分の時点で、Bを10%まで上昇させる。Bの濃度の上昇を継続し、32分の時点でのBの濃度は33%である。次に、濃度を1分間安定させ、その後、Bの濃度を1分間で100%まで上昇させる。カラムを洗浄するために100%のBを3分間一定に保ち、最終的に濃度を0%まで戻して再度開始する。流速は全ての分析の間一定にし(1mL/分)、Fluorescence Detectorにおいて検出を行う(λ
ex=250nm;λ
em=395nm)。注入体積は、10μLであり、オーブン温度は37℃である。
遊離アミノ酸(加水分解されていない試料)の濃度およびペプチドの濃度(遊離アミノ酸濃度を差し引くことができる総濃度)を較正標準に基づいて算出する。
炭水化物分析(フェノール−硫酸法)
【0089】
グルコースの種々の標準を、水に種々の濃度(20〜500μg/mL)で溶解させる。別々に、5%フェノール溶液を調製するためにフェノール500mgを水10mLに溶解させる。寄託番号CECT−20901のEupenicillium crustaceum菌株に由来する発酵エキスの各バッチを水中10mg/mLに調製する。次に、この溶液(または標準のうちの1つ)100μLに、5%フェノール溶液100μLを添加する。得られた溶液を混合し、次に、硫酸500μLを添加する。混合後、反応溶液を40℃で30分間インキュベートする。その後、反応を室温で15〜20分間保ち、490nmにおける吸光度を読み取る。グルコース標準を用いて実施した較正に基づいて、試料の炭水化物濃度を算出する。
脂質含量分析(ヘキサン抽出試験)
【0090】
バッチ1、2および3それぞれ5gをヘキサン10mLに溶解させる。この溶液を10分間超音波処理し、5分間ボルテックスで混合する。その後、固体を分離するために、溶液を4000rpmで10分間遠心分離する。液相を回収し、次に、固体を、全ての脂質を抽出するためにヘキサン5mLで2回洗浄し、次に、廃棄する。有機相を混合し、窒素流を通して蒸発させる。その後、抽出から得られた固体を凍結乾燥器中で終夜乾燥させ、秤量する。試料の脂質の濃度を、秤量された総試料に対する抽出され秤量された固体の百分率として算出する。
脂質含量分析(二クロム酸塩試験)
【0091】
この方法は、上記のヘキサン抽出試験の代替法であり、試料が少量である場合に有用である。バッチ1、2および3それぞれ30mgをヘキサン2.5mLに溶解させる。この溶液を10分間超音波処理し、5分間ボルテックスで混合する。その後、固体を分離するために、溶液を4000rpmで10分間遠心分離する。液相を回収し、次に、固体を、全ての脂質を抽出するためにヘキサン5mLで2回洗浄し、次に、廃棄する。有機相を混合し、窒素流を通して蒸発させる。その後、反応溶液(K
2Cr
2O
7 2.5gを36NのH
2SO
4 1Lに溶解させたもの)3mLを添加し、45分間にわたって100℃まで加熱し、種々の時点で3回混合する。試料を室温まで冷まし、0.2mLのアリコートを水2.5mL中に希釈する。その後、350nmにおける吸光度を読み取り、ブランク(試料を用いずに同じ処理を行ったもの)から差し引く。差異は脂質量に比例する。吸光度の差異を比較することによって脂質含量が分かっていない試料中の脂質を算出するために標準試料を使用する。
【0092】
寄託番号CECT−20901のEupenicillium crustaceum菌株からの3つの異なるバッチに対して実施した遊離アミノ酸およびペプチド分析、炭水化物分析、および脂質含量分析からの結果を表1に示す。バッチ1についての脂質分析の結果は、ヘキサン抽出試験を使用して得たものであり、バッチ2および3についての脂質分析の結果は二クロム酸塩試験を使用して得たものである。
【表1】
HPLCによる特徴付け
【0093】
実施例1に従って得られた寄託番号CECT−20901のEupenicillium crustaceum菌株に由来する発酵エキスを水/2−プロパノール(1:4、v/v)に1mg/mLで希釈し、HPLCにより、サイズ排除カラムTSKgel G2000SWXLを用い、以下の条件を使用して分析する:カラムはTSKgel G2000SWXL(ID7.8mm×長さ30.0cm、粒径5mm、細孔径125Å)である。溶出液は0.1Mのリン酸緩衝液、pH6.7+0.1MのNa
2SO
4であり、溶出は、1mL/分の流速を使用して均一濃度に保つ。検出器は、UV(λ=220nm)であり、注入量は25μLであり、オーブン温度は37℃である。
【0094】
発酵エキスは、12分および12.3分の時点でピークを示し、滞留時間10〜20分のガウス分布を伴う。総面積の73.5%は11〜16分に位置し、総面積の65%は11〜14分に位置する。分子量の異なる種々の標準(サイログロブリン、670,000Da;アルブミン、66,000Da;リボヌクレアーゼ、13,700Daおよびアミノ安息香酸、122Da)を使用して、保持時間から分子量を算出する。発酵エキスのピーク(12分および12.3分)の分子量は325,9Da〜229,2Daであり、標準を使用して算出した場合に3,400Da〜122Da(これは標準の最小重量である)の間隔を有するガウス分布を伴う。標準を用いて算出した場合、ガウス分布下面積の73.5%は1053.9Da〜122Daの分子量を有する。
(実施例3)
酵素結合免疫吸着測定アッセイ(ELISA)によるヒト真皮線維芽細胞におけるI型コラーゲン合成のin vitro研究。
【0095】
I型コラーゲンは、皮膚に存在するコラーゲンの主要な型であり、皮膚の強度および弾力性に関与する。コラーゲンは、年齢と共に変性し、溶解する。線維芽細胞は、コラーゲンの主要な生成細胞である。したがって、ヒト真皮線維芽細胞(HDFa)を候補美容のための活性物質で処理した結果としてのコラーゲン合成の誘導のin vitroにおける定量により、その候補が皮膚老化防止剤として有効か否かに関する指標がもたらされる。候補によりコラーゲン合成がもたらされる場合、これは、その候補が皮膚老化防止剤として有効であるという指標である。
【0096】
化粧生成物によるコラーゲン誘導は、酵素結合免疫吸着測定アッセイ(ELISA)によって評価される。
【0097】
ヒト真皮線維芽細胞をトリプシンで処理し、5×10
4個の細胞/ウェルを48ウェルプレートに播種する。37℃、5%CO
2加湿空気中で24h(時間)インキュベートした後、新鮮な培地を、実施例1に従って得られた寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株のエキスのスカラー希釈物と共に、20〜0.1μg/mLで添加する。各濃度を3連で試験する。無処理の細胞を対照として48ウェルプレートの6ウェルに播種する。細胞を、37℃、5%CO
2加湿空気中さらに48hインキュベートする。次に、ウェルの培地を、ELISAによって分析することができるように収集する。標準曲線を、仔ウシの皮膚由来のI型コラーゲン(Sigma)を用い、1mg/mlのストック溶液から開始して調製する。標準曲線希釈物および細胞培養処理物から収集した上清を96ウェルプレートに移す。試料中および標準曲線希釈物中のコラーゲンにより96ウェルプレートの壁が覆われ、それを4℃、加湿雰囲気中で終夜保つ。次に、ウェルプレートをPBS−0.05%Tween−20(v:v)(Sigma)で3回洗浄し、3%ウシ血清アルブミン(BSA)(w:v)(Sigma)を用いて1hブロッキングする。ブロッキング後、ウェルプレートを、抗I型コラーゲン抗体(Sigma)と共に2hインキュベートする。このインキュベーションの後、二次抗体IgG−HRP(Molecular Probes)を添加する。この時点で、ウェルプレートを、ホスファターゼ基質(OPD、Sigma)と共に撹拌しながら30分インキュベートする。3MのH
2SO
4を添加することによって反応を停止させ、マイクロタイタープレートリーダーTECAN GENiosで490nmにおける吸光度を読み取る。I型コラーゲン標準曲線の線形回帰を使用してコラーゲン濃度を決定する。表2に示されている通り、コラーゲン合成の結果は、無処理の細胞(対照)に対して増大する。
【表2】
【0098】
結果は、本発明のエキスによって、ヒト線維芽細胞におけるI型コラーゲン合成が促進することを示している。
(実施例4)
コラゲナーゼ活性についてのin vitroアッセイ
【0099】
コラーゲンは、皮膚結合組織における最も豊富なタンパク質である。コラーゲンは、新しい細胞が成長するにしたがってそれらを支持しながら必要な柔軟性をもたらすことを支援するメッシュ様構造を形成する。皮膚では継続的なコラーゲンの合成とコラーゲンの分解がなされ、それらプロセスのバランスにより、皮膚の引張強度および弾力の両方が決定される。コラーゲン分解は、年齢と共に増加する。コラゲナーゼは、コラーゲンを切断して断片にするメタロプロテイナーゼである。コラゲナーゼ活性を阻害することができる美容のための活性物質は、皮膚の抵抗性を改善することおよび皮膚老化防止剤として作用することにおいて有効であり得るということになる。
【0100】
コラゲナーゼ活性は、EnzChek Gelatinase/Collagenase Assay Kit(Molecular Probes)を用いて測定される。寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株のエキスを実施例1に従って得、反応緩衝液中10mg/mlのエキスおよび0mg/mlのエキス(対照)の濃度の溶液にする。これらの溶液を黒色96ウェルマイクロプレートに添加する。各濃度を2連で試験する。次に、1mg/mlのDQ Gelatin 20μlを各ウェルおよびコラゲナーゼ100μlに添加する。プレートを室温で、光から保護して2時間にわたってインキュベートし、多数の時点で蛍光を測定する。マイクロタイタープレートリーダーTecan GENiosでλ
exc=495nmおよびλ
em=515nmにおける蛍光を読み取る。
【0101】
表3は、2回のアッセイの最小値についての対照に対する蛍光の百分率の平均値として表された結果を示す。
【表3】
【0102】
結果は、本発明のエキスによってコラゲナーゼ活性を阻害することが可能であることを示している。
(実施例5)
ヒト真皮線維芽細胞におけるエラスチン誘導の評価
【0103】
エラスチンは、弾性であり、皮膚を柔軟だが緊密なように保つのを補助し、皮膚を引っ張った場合の弾み反応をもたらす、結合組織内のタンパク質である。線維芽細胞がエラスチンの主要な生成細胞である。この理由で、ヒト真皮線維芽細胞における美容のための活性物質によるエラスチン誘導のin vitroにおける定量により、美容のための活性物質が皮膚に対して有し得る潜在的な抗老化効果に関する情報がもたらされる。美容のための活性物質によってコラーゲン合成が誘導されれば、これは、美容のための活性物質が皮膚老化防止剤として有効であることの指標である。
【0104】
美容のための活性物質によるエラスチン誘導は、Fastin Elastin Assay(Tebu−Bio)によって評価される。
【0105】
ヒト真皮線維芽細胞をトリプシンで処理し、3×10
5個の細胞/ウェルを培養フラスコに播種する。37℃、5%CO
2加湿空気中で72時間インキュベートした後、新鮮な培地を、実施例1に従って得られた寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株のエキス、1μg/mL、0.1μg/mLおよび0.01μg/mLの濃度と共に添加する。無処理の細胞を、エラスチン合成についての陰性対照として播種する。各濃度を2連で試験する。細胞を、37℃、5%CO
2加湿空気中さらに48hインキュベートする。次に、エラスチンを細胞から抽出する。これを行うために、細胞培地を除去し、細胞をPBS(Sigma)で2回洗浄し、次に、Cell Dissociation Solution(Sigma)を添加する。細胞懸濁液を微量遠心分離チューブに移し、1Mのシュウ酸を添加し、100℃で1hインキュベートする。エラスチンが可溶化されたら、アッセイキットに付随して供給されるα−エラスチンを使用して標準を調製する。その時点から、試料および標準を、エラスチンの単離および染料に関するキットの説明書に従って一緒に処理する。最後に、キットに付随して供給されるDye Dissociation Reagentを用いて染料を抽出し、マイクロタイタープレートリーダーTECAN GENiosで540nmにおける吸光度を測定する。
【0106】
表4では、3回のアッセイの最小値についての、陰性対照に対するエラスチン誘導の百分率の平均値が示されている。
【表4】
【0107】
結果は、本発明のエキスによってヒト真皮線維芽細胞におけるエラスチン合成が促進することを示している。
(実施例6)
エラスターゼ活性についてのin vitroアッセイ
【0108】
皮膚の弾力は、コラーゲンおよびグリコサミノグリカンと共に結合組織を構成する真皮内のタンパク質であるエラスチンによる影響を受ける機械的特性である。結合組織のタンパク質の代謝は老化プロセスの間に低下し、酵素、主に、エラスチンおよびコラーゲンの分解の原因となるエラスターゼおよびコラゲナーゼがますます多く存在する。したがって、結果として皮膚の弾力が喪失するのを防止するための1つの可能性のある方法は、エラスターゼ酵素の活性を阻害することができる活性成分を使用することである。
【0109】
エラスターゼ活性は、EnzChek Elastase Assay kit(Molecular Probes)を用いて測定される。
【0110】
寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株のエキスを実施例1に従って得、反応緩衝液中10mg/mlのエキス、5mg/mlのエキス、2mg/mlのエキス、1mg/mlのエキスおよび0mg/mlのエキス(対照)の濃度の溶液にする。溶液を黒色96ウェルマイクロプレートに添加する。各濃度を2連で試験する。エラスチン使用液(1mg/ml)50μlを、希釈した酵素100μlと共に各ウェルに添加する。マイクロプレートを室温で、光から保護して4時間にわたってインキュベートし、多数の時点で蛍光を測定する。マイクロタイタープレートリーダーTECAN GENiosでλ
exc=490nmおよびλ
em=535nmにおける蛍光を読み取る。
【0111】
表5には、2回のアッセイの最小値についての対照に対する蛍光の百分率の平均値が示されている。
【表5】
【0112】
結果は、本発明のエキスによってエラスターゼ活性を阻害することが可能であることを示している。
(実施例7)
終末糖化産物の形成のin vitroにおける評価
【0113】
糖化は、タンパク質とグルコースなどの還元糖との間の非酵素的反応である。この反応により、終末糖化産物(AGE)として公知のものが形成される。糖化により、タンパク質の構造および機能が変化し、それによりタンパク質の機能障害が導かれる。皮膚では、I型コラーゲンの糖化が皮膚鈍麻の発生および皮膚の弾力の低下に関連すると考えられている。糖化は年齢と共に増加する。したがって、AGE形成を阻害することができる美容のための活性物質には、皮膚の弾力および明度の改善に対する効果があり得る。そのような美容のための活性物質は、有効な皮膚老化防止剤であると思われる。
【0114】
0.2Mのグルコースおよび0.6%(v:v)のコラーゲンを、実施例1に従って得られた寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株のエキスの濃度、100μg/ml、1μg/mlおよび0μg/ml(基礎対照)の存在下インキュベートする。各濃度を2連で試験する。全ての溶液を60℃でインキュベートし、0日目および3日目に試料採取し、AGE形成を測定する。
【0115】
グルコースとI型コラーゲンとの間のAGE形成は、OxiSelect(商標)Advanced Glycation End Product Competitive ELISA Kit(Cell Biolabs)を用いて評価される。次に、試料またはAGE−BSA標準を、AGEコンジュゲートを予め吸収させたELISAプレートに添加する。短時間インキュベートした後、抗AGEポリクローナル抗体を添加し、その後、HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)とコンジュゲートした二次抗体を添加する。二次抗体と共にインキュベートした後、基質溶液と共にインキュベートしたウェルプレートを、停止溶液を添加することによって反応を停止させる。マイクロタイタープレートリーダーTECAN GENiosで450nmにおける吸光度を測定する。
【0116】
表6は、3回のアッセイについての、対照に対するAGEの百分率の平均値を示す。
【表6】
【0117】
結果は、1μg/mlの濃度の本発明のエキスによりAGEの生成が阻害される(生成されるAGEの量が、エキスが存在しない場合に生成される量の80.6%である)ことを示している。エキスの量を100μg/mlまで増加させることにより、AGEの生成の阻害が増大し、生成されるAGEの量は、エキスが存在しない場合に生成されるAGEの量の70.3%まで下がる。
(実施例8)
血管透過性についてのin vitroアッセイ
【0118】
目の腫れおよび目の下のたるみはいくつかの寄与因子によって引き起こされるが、目領域の下の過剰な流体の保持または浮腫が主な原因であると考えられている。流体は不十分なリンパ循環および毛細血管透過性の増大を含めたいくつかの理由で構築される。したがって、血管透過性を低下させ、したがって、間質内区画内に蓄積する流体の量を減少させる美容のための活性物質が、目の腫れおよび目の下のたるみの化粧処置に関する良好な候補になり得る。
【0119】
ヒト臍静脈内皮細胞をトリプシンで処理し、5×10
4個の細胞/ウェルを、96ウェル組織培養プレート中の、1.0μmの対称的な細孔を含有するインサートに播種する。37℃、5%CO
2加湿空気中で72時間インキュベートした後、内皮単層が形成され、それにより膜細孔が閉塞される。この時点で、新鮮な培地を、実施例1に従って得られた寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株のエキス、5μg/mL、1μg/mLおよび0.2μg/mLの濃度と共に添加する。無処理の細胞を血管透過性についての対照として使用する。各濃度を3連で試験する。全ての細胞を37℃、5%CO
2で24時間インキュベートする。
【0120】
処理後、FITC−デキストランを細胞の上部に添加し、それにより、細胞単層を透過させる。20分後にマイクロタイタープレートリーダーTECAN GENiosでλ
exc=485nmおよびλ
em=535nmにおけるプレートウェル溶液の蛍光を測定することによって透過性の程度を決定する。
【0121】
表7は、3回のアッセイの最小値についての、対照に対する血管透過性の阻害の百分率の平均値を示す。
【表7】
【0122】
結果は、本発明のエキスが、エキスが存在する場合に、エキスが存在しない場合と比較して、細胞単層を透過するFITC−デキストランの量が最大20.8%少ないという点で、血管透過性の阻害に役立つことを示している。
(実施例9)
ビリルビン分解における影響についてのin vitroアッセイ
【0123】
近年、ビリルビンが目の周囲のくまの存在の要因であると考えられている。目の周囲の微小循環がくま形成の最も重要な要因のひとつであることが周知である。目の周囲の浮腫における血管漏出により、ビリルビンが蓄積し、これにより、色が黄色から青色まで変動し得るくまが生じる。したがって、目の周囲のビリルビンの分解を促進することができる美容のための活性物質が、目のくまの低減を補助する良好な化粧剤になり得る。
【0124】
ビリルビンの酸化を避けるために、光から保護したバイアル中で試験を実施する。水/2−プロパノール(1:1、v/v)中0.1%ビリルビン溶液1mLを10mLのメスフラスコに添加する。その後、25mg/mLの水/2−プロパノール(1:1、v/v)中溶液中の、実施例1に従って得られた寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株のエキス4mLを添加し、次に、フラスコに水/2−プロパノール(1:1、v/v)を充填して10mLを満たす。これらの条件では、菌株Eupenicillium crustaceumのエキスの最終濃度は1%である。同時に、25mg/mLのEupenicillium crustaceumエキス溶液を伴わない陰性対照を、0.1%ビリルビン溶液1mLおよび10mLのメスフラスコを満たすために必要な体積の水/2−プロパノール(1:1、v/v)を添加して調製する。両方の溶液が調製されたら、それらを光から保護したガラスバイアルに移し、室温で、一定の撹拌しながら保つ。ビリルビンの濃度を種々の時点でHPLCによって追跡する。
【0125】
3回の反復実験を比較するために、ゼロ時間における抱合型ビリルビンの面積を100%に正規化した。24時間後、1%のEupenicillium crustaceumエキス溶液によりビリルビン濃度を19.36%低下させることができる。表8には、異なる時点におけるビリルビンの正規化された面積が示されている。
【表8】
【0126】
結果は、24時間後、本発明のエキスを含有する試料中に存在するビリルビンの量が対照試料の80.64%であることを示している。したがって、通常の分解と比較して、19.36%のビリルビンの減少が達成される。
(実施例10)
寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含む化粧品組成物の調製
【0127】
成分が以下の表9に記載されている化粧品組成物を調製する。適切な容器内で、A相の成分を溶解させ、A1相成分を、完全な分散が達成されるまで撹拌しながら少しずつ添加する。次に、A2相成分を添加し、得られた成分の混合物を、溶解するまで一定に撹拌し、70〜75℃まで加熱した。
【0128】
別の容器内で、B相成分70〜75℃で融解させ、それを、A相、A1相およびA2相の成分の混合物にタービンで撹拌しながら少しずつ添加した。
【0129】
次に、40℃で、C相の成分を少しずつ添加し、撹拌する。続いて、D相の構成成分を完全に分散するまで撹拌しながら少しずつ添加し、E相の構成成分を完全に分散するまで撹拌しながら少しずつ添加する。水酸化ナトリウムを撹拌しながら添加することによってpHを6.0〜6.5に調整し(q.s、このpHに調整するのに十分な量)(F相)、それにより、表9に示されている割合を有する化粧品組成物を得た。組成物は、局所投与に適したクリームである。
【表9】
(実施例11)
女性志願者においてカラスの足跡皺の処置に関する寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスの有効性を試験する、実施例10の組成物を用いたin vivo研究
【0130】
本研究は14日間にわたって実施し、測定を最初に時間=0において、次に、14日後に行う。40〜54歳のコーカサス人女性である20名の志願者を含める。被験体は、寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含む実施例10のクリームを一方の目の輪郭(左側または右側)に塗布し、プラセボクリームを他方の目の輪郭に塗布する。クリームを1日2回(朝晩)塗布する。被験体は自身の参照としての役割を果たし、種々の時点で得られる結果を最初のゼロ時点で得られる結果と比較する。さらに、活性クリームを用いて得られる結果を、プラセボクリームを用いて得られる結果と比較する。
【0131】
生成物の有効性は、縞投影システムによるカラスの足跡(眼窩周囲の)皺の粗さパラメータ(Ra、Rz、Rt)の評価によって評価される:
Ra(平均粗さ):絶対的な高さの値の算術平均
Rz(平均軽減):最高点と最低点の間の距離(5つのピークおよび5つの谷)
Rt(総粗さ):最も高いピークと最も低い谷の間の距離(評価の長さに沿って見出される)
【表10】
【0132】
表10に示されている結果は、14日間の処置期間にわたって、寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含有するクリームが、眼窩周囲の皺に起因する皮膚の粗さの低減において有効であることを実証するものである。つまり、皺のサイズが縮小し、皺のある皮膚がより滑らかになる。
(実施例12)
寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含む化粧品組成物の調製
【0133】
成分が以下の表11に記載されている化粧品組成物を調製する。適切な容器内で、A相の成分を溶解させ、A1相成分を、完全な分散が達成されるまで撹拌しながら少しずつ添加する。次に、A2相成分を添加し、これらの成分の混合物を、溶解するまで一定に撹拌し、70〜75℃まで加熱した。
【0134】
別の容器内で、B相成分70〜75℃で融解させ、得られた混合物をA相、A1相およびA2相の成分の混合物にタービンで撹拌しながら少しずつ添加する。
【0135】
次に、40℃で、C相の成分を少しずつ添加し、撹拌する。
【0136】
この後、D相の構成成分を完全に分散するまで撹拌しながら少しずつ添加し、E相の構成成分を少しずつ添加し、完全に分散するまで撹拌する。水酸化ナトリウムを撹拌しながら添加することによってpHを6.0〜6.5に調整し(q.s、このpHに調整するのに十分な量)(F相)、表11に示されている割合を有する化粧品組成物を得た。化粧品組成物は、局所使用に適したクリームである。
【表11】
(実施例13)
コーカサス人の皮膚型の女性志願者における、目の下のくまの処置に関する寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスの有効性を試験する、実施例12の組成物を用いたin vivo研究。
【0137】
本研究は、28日間にわたって実施し、測定を、最初のゼロ時点、次に、28日後に行う。22〜65歳のコーカサス人女性である21名の志願者を含める。被験体は、寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含有する実施例12のクリームを一方の目の輪郭(左側または右側)に塗布し、プラセボクリームを他方の目の輪郭に塗布する。クリームを1日2回(朝晩)塗布する。被験体は自身の参照としての役割を果たし、種々の時点で得られる結果を最初のゼロ時点で得られる結果と比較する。さらに、活性クリームを用いて得られる結果を、プラセボクリームを用いて得られる結果と比較する
【0138】
生成物の有効性は、くまの、血管構成成分の分析に使用される交差偏光下でのデジタル写真によって評価され、結果を表12に示す。
【表12】
【0139】
表12に示されている結果は、28日間の処置期間にわたって、寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含有するクリームが、目の下のくまの皮膚の暗さの低減(すなわち、色のライトニング)において有効であることを実証するものである。
(実施例14)
寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含む化粧品組成物の調製
【0140】
成分が以下の表XXに記載されている化粧品組成物を調製する。適切な容器内で、A相の構成成分を溶解させ、A1相構成成分を、完全な分散が達成されるまで撹拌しながら少しずつ添加する。次に、A2相構成成分を添加し、成分のこの混合物を、溶解するまで一定に撹拌し、70〜75℃まで加熱した。
【0141】
別の容器内で、B相構成成分を70〜75℃で融解させ、混合物を、A相、A1相およびA2相の構成成分の混合物にタービンで撹拌しながら少しずつ添加する。次に、40℃で、C相の成分を撹拌しながら少しずつ添加する。続いて、D相の構成成分を完全に分散するまで撹拌しながら少しずつ添加し、E相の構成成分を少しずつ添加し、完全に分散するまで撹拌する。水酸化ナトリウムを撹拌しながら添加することによってpHを6.0〜6.5に調整し(q.s、このpHに調整するのに十分な量)(F相)、表13に示されている割合を有する化粧品組成物を得た。組成物は、局所適用に適したクリームである。
【表13】
(実施例15)
女性志願者において、涙袋の処置に関する有効性を試験する、実施例14の組成物を用いたin vivo研究
【0142】
本研究は、28日間にわたって実施し、測定を、最初のゼロ時点、次に、14日後、次に、28日後に行う。41〜66歳のコーカサス人女性である20名の志願者を含める。被験体は、寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含む実施例14のクリームを一方の目の輪郭(左側または右側)に塗布し、プラセボクリームを他方の目の輪郭に塗布する。クリームを1日2回(朝晩)塗布する。被験体は自身の参照としての役割を果たし、種々の時点で得られる結果と最初の時点で得られる結果を比較する。さらに、活性クリームを用いて得られる結果を、プラセボクリームを用いて得られる結果と比較する。
【0143】
生成物の有効性は、縞投影システムによる涙袋の体積の評価によって評価され、結果を表14に示す。
【表14】
【0144】
表14に示されている結果は、14日間および28日間の処置期間にわたって、寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含有するクリームは、涙袋の体積の減少において有効であることを実証するものである。
(実施例16)
ヒト上皮メラニン細胞におけるメラニン形成についてのin vitroアッセイ
【0145】
メラニン形成は、皮膚におけるメラニン細胞内で起こるプロセスであり、それにより、皮膚色の色素決定因子であるメラニンが合成される。美容のための活性物質によって誘導されるin vitroにおけるメラニン定量により、美容のための活性物質の潜在的なホワイトニング効果に関する情報がもたらされる。
【0146】
ヒトメラニン細胞をトリプシンで処理し、6ウェルプレートにおいて、2×10
5個の細胞/ウェルの密度でプレーティングする。37℃、5%CO
2で終夜インキュベートした後、実施例1に従って得られた寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株のエキスを10μg/mL、5μg/mL、1μg/mLおよび0.2μg/mLで用いた最初の処理を行う。無処理の細胞を対照として使用する。各濃度を2連で試験する。処理を3日目、6日目、8日目および10日目に反復する。最後に、細胞を、最後の処理後に37℃、5%CO
2でさらに72時間インキュベートする。
【0147】
最後のインキュベーションの後、細胞を、細胞計数およびメラニン測定のために分離する。細胞懸濁液を3000rpmで15分間遠心分離し、ペレットを、10%DMSO(v:v)を伴う1NのNaOH 1mlに溶解させる。細胞を80℃で2時間にわたって溶解させ、12000rpmで10分間遠心分離する。メラニン濃度を、プレートリーダーTECAN GENiosで450nmにおける吸光度を測定することによって決定し、値をウェル当たりの細胞の数に関して正規化する。メラニン濃度を、合成メラニンを既知濃度で用いてプロットした標準曲線から、細胞当たりのピコグラム数(pg/細胞)の単位で決定する。
【0148】
表15には、3回のアッセイについての、対照に対するメラニンの百分率の平均値が示されている。
【表15】
【0149】
表15に示されている結果は、本発明のエキスが、ヒト上皮メラニン細胞におけるメラニン形成(メラニン合成)の阻害において有効であることを実証するものである。
(実施例17)
チロシナーゼ活性についてのin vitroアッセイ
【0150】
メラニン形成は、メラニン細胞内で起こるプロセスであり、それにより、皮膚色の色素決定因子であるメラニンが合成される。メラニン形成において重要な酵素は、チロシナーゼである。チロシナーゼにより、チロシンがメラニンに変換される反応のカスケードが開始する。したがって、チロシナーゼ活性を阻害することができる美容のための活性物質には、皮膚ホワイトニング剤としての潜在性がある。
【0151】
チロシナーゼ活性は、HumanLike Tyrosinase Assay Kit(Feldan)を用いて測定される。200μl/ウェルの反応混合物をマイクロプレートウェルに添加し、実施例1に従って得られた寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株のエキス10μlの試料を100μg/ml、10μg/mlおよび1μg/mlで添加する。各濃度を2連で試験する。最後に、酵素2μlをローディングする。酵素を伴わないウェルをブランクとして使用する。マイクロタイタープレートリーダーTECAN GENios(Genios、Tecan)でλ=490nmにおける吸光度を読み取る。
【0152】
表16には、3回のアッセイについての、対照に対する吸光度の百分率の平均値が示されている。
【表16】
【0153】
表16に示されている結果は、本発明のエキスが、チロシナーゼ活性の阻害において有効であることを実証するものである。
(実施例18)
ヒト上皮メラニン細胞の遺伝子発現のプロファイルの研究
【0154】
ヒトメラニン細胞をトリプシンで処理し、6ウェルプレートにおいて、2×10
5個の細胞/ウェルの密度でプレーティングする。37℃、5%CO
2で終夜インキュベートした後、実施例1に従って得られた寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株のエキスを10μg/mLで用いた最初の処理を行う。無処理の細胞を対照として使用する。各濃度を10ウェルで試験する。処理を3日目、6日目、8日目および10日目に反復する。最後に、細胞を、最後の処理後に37℃、5%CO
2でさらに72時間インキュベートする。
【0155】
最後のインキュベーションの後、細胞をウェル中で直接溶解させ、RNAを抽出し、RNeasyPlus Mini kit(Qiagen)により、製造者のプロトコールに従って、各レプリカおよび各条件から精製する。簡潔には、溶解した細胞をホモジナイズし、RNasesを不活化する。ゲノムDNAを、gDNA Eliminatorスピンカラムを使用することによって試料から除去する。次に、試料を、特別なRNA結合カラムを通過させ、数回の微量遠心分離洗浄を行って、夾雑物および不純物を排除した後、精製されたRNAを、超純水50μlで溶出する。
【0156】
得られたRNAの純度、完全性および濃度を、分光光度法(Nanodrop)を用いて、バイオアナライザ(Agilent Bioanalyzer)で評価する。4つの対照試料および4つの処理試料を純度および完全性の結果に従って選択する。
【0157】
後に、標識化を行い、試料を、ヒト遺伝子発現マイクロアレイ(ASurePrint G3、Agilent)でハイブリッド形成させる。
【0158】
処理で得られた正規化値を、陰性対照で得られた正規化値と比較して、差次的発現を有する遺伝子を得る。次に、データのパラメトリック分析を、Bioconductorソフトウェアによって行う。次に、得られた値を、GSEA(Gene Set Analysis Enrichment)によって評価して、ジーンオントロジーおよび生物学的経路に関して、差次的発現を有する遺伝子をグループ化する。
【0159】
選択されたメラニン形成に関与する遺伝子について得られたLogFcの結果は次表に示されている通りである。LogFCは、倍数変化(FC)の対数(基数2)である。FCは、遺伝子の発現レベルの変化を測定するためのマイクロアレイにおける遺伝子発現データの解析において使用される。倍数変化は、比較される2つの実験条件間の量の変化がどのくらいであるかを記述する評価基準として、または、比較される2つの実験条件間の強度の比として定義される。この意味では、LogFCが負の値である遺伝子は、対照と比較して下方調節されており、LogFCが正の値である遺伝子は、対照と比較して上方調節されている。
【表17】
【表18】
【表19】
【0160】
表18に示されている結果は、本発明のエキスが、遺伝子を上方調節または下方調節し、その結果、メラニン形成の阻害をもたらすことができることを実証するものである。表19および表17に示されている結果は、本発明のエキスが、メラノソームバイオジェネシスに直接関与する遺伝子およびメラニン合成に関与する酵素をコードする遺伝子を下方調節することができることを実証するものである。遺伝子調節におけるこれらの効果の全てに関して、本発明のエキスは、メラニン形成プロセスを阻害し、その結果、ホワイトニング効果を得ることに役立つ。
(実施例19)
寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスの化粧品組成物の調製
【0161】
適切な容器内で、A相の成分を溶解させ、A1相を少しずつ添加し、完全な分散が達成されるまで撹拌する。次に、A2相を添加し、成分のこの混合物を、溶解するまで一定に撹拌し、70〜75℃まで加熱する。
【0162】
別の容器内で、B相成分70〜75℃で融解させ、それを、A相、A1相およびA2相の成分の混合物にタービンで撹拌しながら少しずつ添加する。
【0163】
次に、40℃で、C相の成分を少しずつ添加し、撹拌する。
【0164】
続いて、D相の構成成分を完全に分散するまで撹拌しながら少しずつ添加し、E相の構成成分を少しずつ添加し、完全に分散するまで撹拌する。水酸化ナトリウム(q.s、このpHに調整するのに十分な量)(F相)を撹拌しながら添加することによってpHを6.0〜6.5に調整し、表20に示されている割合を有する化粧品組成物を得た。
【表20】
(実施例20)
アジア人の皮膚型の志願者における、年齢に伴う斑の処置および皮膚ライトニング効果についての寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスの有効性を試験する、実施例19の組成物を用いたin vivo研究。
【0165】
本研究は、56日間実施し、測定を、最初の時点および8週間の処置後に行う。38〜53歳の女性アジア人志願者22名のパネルに、実施例19のクリームを顔の半分に、およびプラセボクリームを顔のもう一方の半分に、1日2回(朝晩)塗布する。被験体は自身の参照としての機能を果たし、種々の時点で得られた結果を最初の時点で得られた結果と比較した。さらに、活性クリームを用いて得られた結果を、プラセボクリームを用いて得られた結果と比較した。
【0166】
生成物の有効性を以下によって評価した:
−光のスペクトル反射による皮膚色の測定、パラメータL*、b*およびITA°(n=22)、結果を表21に示す
L*:ルミナンスパラメータ(暗い〜明るい;皮膚の明るさまたは明度)
b*:クロミナンスパラメータ(青色〜黄色;皮膚の黄色さ)
ITA°(個別類型角(Individual Typology Angle)):[アークタンジェント((L*−50)/b*)]×180/3.14159
【表21】
【0167】
種々の時点で(ベースラインおよび8週間)、各志願者について各パラメータ(L*、b*およびITA)を測定する。後に、各パラメータについて平均値を算出し、表21に含まれる%は、[(8週の時点での平均値−0週の時点での平均値)/0週の時点での平均値](%)である。皮膚コントラストは、非色素沈着過剰領域におけるパラメータの値から色素沈着過剰領域におけるパラメータの値を引いたものである、すなわち、コントラストは、処置終了時に皮膚色がより均一であるか否かの皮膚色の均質性に関するパラメータである。したがって、コントラストが負の値であることにより、皮膚色均質性の改善が示される。コントラストを各志願者およびパラメータについて、L*を例として以下の通り算出する:L*コントラスト=L*非色素沈着過剰−L*過剰色素。平均コントラスト値を算出し、それを使用して処置中のコントラストの進展を算出する:%コントラスト=[(8週の時点での平均値−0週の時点での平均値)/0週の時点での平均値]。この%は、表21中にコントラストの見出しで含まれる。
【0168】
表21に示されている結果は、8週間の処置期間にわたって、寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含有するクリームは、皮膚の色素沈着過剰領域(年齢に伴う斑)における皮膚明るさ(L*およびITA°)の増大および皮膚の黄色さ(b*)の低減において有効であることを実証するものである。さらに、色素沈着過剰領域と非色素沈着過剰領域の間のコントラストが低下し、これにより、年齢に伴う斑のホワイトニング効果が示される。
【0169】
反射型共焦点顕微鏡による色素沈着過剰領域におけるメラニンの強度の分析(n=2)、結果は表22に示されている通りである。
【表22】
【0170】
表22に示されている結果は、8週間の処置期間にわたって、寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含有するクリームは、皮膚の色素沈着過剰領域(年齢に伴う斑)におけるメラニン強度の低下において有効であることを実証するものである。
(実施例21)
寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスを含むマイクロエマルションの調製。
【0171】
適切な容器内で、ドクサートナトリウムUSP[INCI:スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム]およびイソステアリン酸[INCI:イソステアリン酸]を混合する(A相)。
【0172】
別の容器内で、実施例1に従って得られた寄託番号CECT20901のEupenicillium crustaceum種の菌株の発酵エキスと水[INCI:水(アクア)]およびブチレングリコール1,3[INCI:ブチレングリコール]の混合物を、エタノール[INCI:アルコール]に溶解する(B相)。B相を、撹拌しながらA相にゆっくり添加する。表23参照。
【表23】
(実施例22)
実施例21のマイクロエマルションを含む脂質ナノ粒子組成物の調製
【0173】
水[INCI:水(アクア)]、Amigel(登録商標)[INCI:スクレロチウムガム]、Zemea(商標)[INCI:プロパンジオール]、ヒアルロン酸[INCI:ヒアルロン酸ナトリウム]およびフェノキシエタノール[INCI:フェノキシエタノール](A相成分)を、この順序で適切な容器に添加し、均質性が達成されるまで撹拌した。
【0174】
実施例XXのマイクロエマルション、精製ダイズ油IP Ph. Eur.[INCI:GLYCINE SOJA(ダイズ)油]、Arlacel 83[INCI:セスキオレイン酸ソルビタン]、およびMassocare HD[INCI:イソヘキサデカン](B相成分)を含む混合物を別の容器に添加した。
【0175】
次に、B相成分の混合物を、エマルションが形成されるまでタービンで撹拌しながらA相成分の混合物に添加した。
【0176】
次に、混合物を、高圧ホモジナイズシステムであるMicrofluidizer(登録商標)を用いてホモジナイズした。
【0177】
最後に、SENSOMER CT−400[INCI:カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド]を撹拌しながらゆっくり添加した(C相)。表24参照。
【表24】
(実施例23)
再構築されたヒト色素沈着上皮におけるメラニン形成阻害についてのin vitroアッセイ
【0178】
色素沈着過剰は、誇大なメラニン生成によって引き起こされる障害である。中でも、過剰な日光への曝露、老化、ホルモンの変化、炎症、アレルギーなどの因子により、メラニン生成および分布プロセスの不均衡が引き起こされ、その結果、皮膚染色が生じる。日光黒子(SL)(老人性黒子、そばかす、肝斑、または年齢に伴う斑としても公知)は、限局性の色素沈着した斑であり、典型的には、身体のUV曝露領域において見出される。日光黒子の出現に関して現在提唱されている分子機序は、Wnt経路を含めた上皮シグナル伝達経路の刺激を伴う。WNT−1は、日光黒子に関与するWntシグナル伝達経路の活性化因子である。
【0179】
再構築されたヒト色素沈着上皮(RHPE)、10日齢、フォトタイプIV(SkinEthic laboratories)を、到着直後にマルチウェルプレートのアガロース栄養溶液から取り出し、各ウェルに予めSkinEthic成長培地(SkinEthic laboratories)を充填しておいた6ウェルプレートに入れる。37℃、5%CO
2で終夜インキュベートした後、組換えヒトWNT−1(Peprotech)を200ng/mlで用いて、または実施例1に従って得られたエキスを200μg/mlまたは100μg/mlでWNT−1と共に用いて最初の処理を行う。各ウェルの培地を吸引し、新鮮な培地(組換えヒトWNT−1、またはエキスおよび組換えヒトWNT−1のいずれかを含有する)を添加する。各アッセイは、RHPEを成長培地だけで処理する対照(基本条件)ウェルを有する。処置を6日目まで、すなわち5日間、毎日反復し、そこで、組織モデルを、Cryo−M−Bed(Bright)に包埋する。
【0180】
5日間の処置後、組織モデルを4℃で3時間、4%パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、リン酸緩衝食塩水(PBS)(Sigma)で4回洗浄した。次に、試料を0.6モル濃度〜2.3モル濃度のスクロース勾配にかけ、室温で3時間インキュベートする。最後のインキュベーションの後、組織モデルをCryo−M−Bedに包埋する。10μmの切片を、クリオスタット(Leica)を用いて切り、切片中のメラニンを、Fontana−Masson Stain kit(Abcam)を使用して染色する。
【0181】
組織切片を、アンモニア銀液58〜60℃に予め温めたと共に0〜60分インキュベートする。組織切片が、黄色がかった/茶色になったら、それらを、蒸留水を何回か換えながらすすぐ。次に、組織切片を塩化金溶液中で30秒間インキュベートし、再度すすぐ。組織切片をチオ硫酸ナトリウム溶液中で1〜2分間インキュベートし、水道水で2分間すすぎ、その後、蒸留水を2回換えてすすぐ。切片を、Nuclear Fast Red Solution中で5分間インキュベートし、水道水で2分間すすぎ、その後、蒸留水を2回換えてすすぐ。最後に、切片を、無水アルコールを3回換えて脱水し、きれいにし、Neo−Mount(登録商標)(Merck)で標本にする。
【0182】
切片を、Zeiss光学顕微鏡を使用して観察し、Zenソフトウェアを使用して画像を取得する。各画像から、染色された領域の量を定量する。
【0183】
表25は、3回のアッセイの最小値についての、基本条件に対するメラニン含量の誘導倍率を示す。
【表25】
【0184】
結果は、本発明のエキスが、色素沈着過剰のヒト皮膚モデルにおけるメラニン含量の有意な減少を、試験濃度で誘導することを示している。
(実施例24)
遺伝子発現分析についてのin vitroアッセイ
【0185】
本研究の目的は、実施例1に従って得られたエキスの脱色有効性を、暗く色素沈着したメラニン細胞におけるメラニン形成経路の遺伝子の発現をRT−qPCRアレイ系を使用して評価することによって調査することである。
【0186】
新生児の、暗く色素沈着したドナー(HEMn−DP)(Life Technologies)由来のヒト上皮メラニン細胞をトリプシン処理し、6ウェル培養プレートにおいて、ヒトMelanocyte Growth Supplement−2(HMGS−2−(PMAフリー))(Life Technologies)を補充したMedium 254中に3×10
5個の細胞/ウェルの密度でプレーティングする。37℃、5%CO
2で終夜インキュベートした後、実施例1に従って得られたエキスを1μg/mlを用いるかまたは培地だけを用いる(基本条件)最初の処理を行う。各ウェルの培地を吸引し、次に、新鮮な培地(エキスまたは培地だけのいずれかを含有する)を添加する。処理を3日目、6日目、8日目および10日目に反復する。最後に、細胞を、最後の処理後に37℃、5%CO
2でさらに72時間インキュベートする。
【0187】
最後のインキュベーションの後、細胞を、Aurum Total RNa Mini kit(BioRad)に記載されているプロトコールに従い、製造者のプロトコールに従って、ウェル中で直接溶解させる。溶解した細胞をホモジナイズし、RNasesを不活化する。次に、試料を、特別なRNA結合カラムを通過させ、数回の微量遠心分離洗浄を行って夾雑物および不純物を排除した後、精製されたRNAを、溶出溶液80μlで溶出する。RNA溶出の後、RNA試料の純度の定量および分析を、暗順応計(Eppendorf)を用いて実施する。
【0188】
高品質RNA0.4μgを、最終体積20μlでiScript advanced(BioRad)を用いて逆転写する(retrotranscribed)。完全な反応混合物を、サーマルサイクラー(Eppendorf)中、42℃で30分間インキュベートし、反応は85℃において5分間で停止する。相補的DNAを、リアルタイムPCRサーモサイクラー(BioRad)で、SYBR(登録商標)Green(BioRad)と共に使用するためのヒトメラニン形成96ウェルパネルにおいて、SsoAdvanced Universal Inhibitor−Tolerant SYBRgreen supermix(BioRad)を使用して、qPCRによって増幅する。SYBR Greenは、二本鎖DNA分子に結合して、蛍光を発光し、この蛍光が定量され、それはPCR反応における生成物の量に比例する。BioRad CFX96機器のサイクリング条件は、95℃で3分間、その後95℃で5秒の変性、60℃で30秒間のアニーリングおよび伸長の40サイクルである。GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ)、TBP(TATAボックス結合タンパク質)およびHRPT1(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1)を、内在性対照として使用する。試料遺伝子および参照遺伝子の発現に対する倍数変化を、CFX Managerソフトウェア(BioRad)を使用し、正規化発現(ΔΔ(Ct))法を使用してデフォルト閾値を用いて算出する。
【0189】
表26は、3回のアッセイの最小値についての、示されている種々の遺伝子の発現の基本条件に対する相対レベルを示す。
【表26】
【0190】
結果は、本発明のエキスが、ヒトメラニン細胞におけるメラニン形成遺伝子の発現の有意な低減を試験濃度で、およびDKK1遺伝子の有意な増大を誘導することを示している。DKK1遺伝子は、WNT経路を通じたメラニン細胞の増殖の阻害剤でもあるファゴサイトーシス阻害剤をコード化する。
(実施例25)
ELISAによるチロシナーゼ定量についてのin vitroアッセイ
【0191】
メラニン形成において重要な酵素は、チロシンがバイオポリマーメラニンに変換される反応のカスケードを開始するチロシナーゼである。この酵素は、2つの異なる反応:モノフェノール化合物のo−ジフェノールへの水酸化;およびo−ジフェノールのo−キノンへの酸化を触媒する。この酵素は、チロシンを3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−ドーパ)に変換し、L−ドーパを酸化してドパキノンを形成させる。L−ドーパは、メラニン生合成に顕著に関与する。
【0192】
新生児の、暗く色素沈着したドナー(HEMn−DP)(Life Technologies)由来のヒト上皮メラニン細胞をトリプシン処理し、96ウェル培養プレートにおいて、ヒトMelanocyte Growth Supplement−2(HMGS−2−(PMAフリー))(Life Technologies)を補充したMedium 254中に5×10
3個の細胞/ウェルの密度でプレーティングする。37℃、5%CO
2で終夜インキュベートした後、実施例1に従って得られたエキスを50または10μg/mlで用いるか、または培地だけ(基本条件)を用いる最初の処理を行う。各ウェルの培地を吸引し、次に、新鮮な培地(50μg/mlもしくは10μg/mlのエキス、または培地だけを含有する)を添加する。処理を3日目、6日目、8日目および10日目に反復する。13日間の培養後、培養細胞において、Tyrosinase Cell−Based ELISA kit(Abnova)を使用して酵素定量を行う。まず、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で2回すすぎ、4%ホルムアルデヒドで20分間固定する。次に、細胞を洗浄緩衝液で3回洗浄し、クエンチング緩衝液を添加し、20分間インキュベートする。プレートを再度洗浄し、ブロッキング緩衝液を用いて1hブロッキングする。ブロッキング後、ウェルプレートを、抗チロシナーゼ抗体または抗GAPDH抗体と共に16時間インキュベートする。各条件について合計6ウェルを使用し、そのうちの3つは抗チロシナーゼ抗体と共にインキュベートし、他の3つは抗GAPDH抗体と共にインキュベートする。このインキュベーションの後、二次抗体(抗チロシナーゼ抗体と共にインキュベートしたウェルについてはHRPコンジュゲート抗ウサギIgG、または抗GAPDH抗体と共にインキュベートしたウェルについてはHRPコンジュゲート抗マウスIgG)を対応するウェルに添加し、1.5時間インキュベートする。次に、ウェルプレートを、TMB one−Step Solutionと共に、暗所中、穏やかに振とうしながら30分間インキュベートする。各ウェルに停止溶液を添加することによって反応を停止させる。マイクロタイタープレートリーダー(Clariostar、BMG Labtech)で450nmにおける吸光度を読み取る。GAPDHシグナルをチロシナーゼ値の正規化のために使用する。
【0193】
表27は、3回のアッセイの最小値についての、基本条件に対するチロシナーゼレベル発現阻害の平均百分率を示す。
【表27】
【0194】
結果は、本発明のエキスが、メラニン細胞培養物におけるチロシナーゼタンパク質レベルの有意な低下を試験濃度で誘導することを示している。
(実施例26)
ミクロスフェアに基づくファゴサイトーシスについてのin vitroアッセイ
【0195】
皮膚色素沈着は、メラニン細胞から付近のケラチノサイトへのメラニン色素の移動によって、および基底上の上皮層におけるメラニン細胞の分布パターン、ならびに、メラニン細胞において合成されるメラニンの量および型によって決定される。メラニン色素は、メラノソームと称される特殊な膜結合型細胞小器官において合成され、貯蔵される。メラノソームは、細胞体からメラニン細胞中で周囲に輸送され、メラニン細胞の樹状突起から隣接するケラチノサイトに移動する。移動後、メラノソームは核に向かって輸送されて、ケラチノサイトにおいて内部サンスクリーンとして作用するメラニンキャップを形成する。
【0196】
メラニン細胞の培養物の上清を、6ウェル培養プレートにおいて、Human Melanocyte Growth Supplement−2(HMGS−2−(PMAフリー)、Life Technologies)を補充したMedium 254(Life Technologies)中に3×10
5個の細胞/ウェルの密度で播種した、新生児の、暗く色素沈着したドナー(HEMn−DP)(Life Technologies)由来のヒト上皮メラニン細胞から得る。24h後、培地を除去し、細胞を、実施例1に従って得られたエキス、1μg/mlと共に、または培地だけ(上清対照)と共に、37℃、CO
2インキュベーター中で13日間インキュベートする。処理を3日目、6日目、8日目および10日目に反復する。13日目に、上清を収集し、ヒト上皮ケラチノサイトを処置するために使用する。
【0197】
ヒト上皮ケラチノサイト(HEKa)(Life Technologies)をトリプシン処理し、3×10
5個の細胞/ウェルを、Epilife Defined Growth Supplement(EDGS)(Life Technologies)を補充したEpilife培地中のコーティングマトリックスで予めコーティングしたカバーガラスを伴う12ウェル培養プレートに播種する。37℃、5%CO
2加湿空気中で24時間インキュベートした後、100ng/mlのDKK1(R&D Systems)または処理されたメラニン細胞の上清を含有する新鮮な培地を添加する。各プレートは、培地だけ(基本条件)で処理した対照ウェルを有する。プレートを、37℃、5%CO
2で30分間インキュベートする。処理後、培地を除去し、細胞を、FluoSpheres(登録商標)カルボン酸改変赤色蛍光ミクロスフェア(直径0.5μm、Life Technologies)、3×10
8個/mlと共に4時間インキュベートする。ミクロスフェアを、ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma)を用い、製造者の指示書に従って予めコーティングする。インキュベーションの後、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)(Sigma)で広範に洗浄して、内部移行していないミクロスフェアを除去し、3.7%(V/V)パラホルムアルデヒド(Sigma)で10分間固定する。細胞をPBSで洗浄し、冷たいアセトン中で3分間インキュベートする。試料を、PBS中1%(W/V)BSAで30分間ブロッキングする。細胞の輪郭を可視化するために、細胞を、Alexa Fluor(登録商標)488ファロイジン(Life Technologies)を用いて暗所中、20分間標識する。細胞の核を染色し、カバーガラスを、DAPIを有するProLong Gold退色防止試薬(Life Technologies)とともにマウントする。細胞を、Zeiss蛍光顕微鏡を使用して観察し、定量のためにZenソフトウェアを使用して画像を取得する。
【0198】
ミクロスフェア取り込みの定量分析のために、3回の異なる実験においてランダムに取得した6つの顕微鏡視野内に存在するミクロスフェアおよび核の数を各条件について計数する。各画像のミクロスフェアの数を、各画像中の核の数で正規化する。
【0199】
表28は、3回のアッセイの最小値についての、基本条件に対するファゴサイトーシスの平均誘導倍率を示す。
【表28】
【0200】
結果は、本発明のエキスが、ケラチノサイトによるミクロスフェア取り込みまたはファゴサイトーシスの有意な阻害を試験濃度で誘導することを示している。