(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770971
(24)【登録日】2020年9月30日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】レーザー光源の周波数の変調を測定する方法、システムおよびコンピュータプログラム、ならびにライダーのレーザー光源の周波数を較正する方法
(51)【国際特許分類】
G01J 9/04 20060101AFI20201012BHJP
H01S 5/065 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
G01J9/04
H01S5/065
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-550213(P2017-550213)
(86)(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公表番号】特表2018-511054(P2018-511054A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】EP2016055639
(87)【国際公開番号】WO2016150783
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年2月28日
(31)【優先権主張番号】1500603
(32)【優先日】2015年3月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511148123
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミネ,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ピエ,グレゴワール
(72)【発明者】
【氏名】フェネルー,パトリック
【審査官】
平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第5808743(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 9/00 − 9/04
G01S 7/48 − 7/51
G01S 17/00 − 17/95
H01S 5/02
H01S 5/065− 5/0687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光源(1)の周波数f(t)の変調を測定する方法であって、
−変調コントローラ(11)により、前記レーザー光源を周期Tにわたり変調するステップと、
−所与の周期Tにおいて、前記レーザー光源の下流に位置していて2本のアーム間に遅延τを生じさせることが可能な干渉計(2)の2本のアーム間でビート光度の測定を複数回実行し、変調の制御により前記測定を同期化するステップと、
−前記測定値から前記周波数f(t)を計算するステップとを含んでいて、
−各周期T中、前記周波数f(t)は変化し、
−複数の周期Tにわたり、前記遅延τが時間の関数としてΔτ>10%λ/cおよびΔτ/τ<0.01λ/cだけ変化し、ここにcは光速度、λは光源の波長であり、
−前記測定が所与の周期の時点tiで実行されて、時点ti+kTで反復され(k≧1)、遅延τは実行される都度変化し、
−前記周波数f(t)の変調が、前記遅延τの変化に起因して異なる干渉条件下で得られた反復測定値の全てから計算されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記周波数f(t)の変調が、複数の測定値を用いて共分散行列から計算されることを特徴とする、請求項1に記載のレーザー光源の周波数f(t)の変調を測定する方法。
【請求項3】
前記遅延τの時間の関数としての変化が圧電装置により誘導されることを特徴とする、請求項1または2に記載のレーザー光源の周波数f(t)の変調を測定する方法。
【請求項4】
前記計算が、
−周期毎に均一な反復的測定値をベクトルx(t)形式(0≦t≦T)で編成するステップと、
−当該ベクトルx(t)が表す楕円柱の軸w0を計算するステップと、
−前記周波数f(t)の関数である角度によりパラメータ化されている射影により、前記軸w0に沿って所定の平面上へ射影するステップとを含んでいることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー光源の周波数f(t)の変調を測定する方法。
【請求項5】
前記角度の、前記周波数f(t)の関数が1次展開され、前記角度が前記周波数f(t)に比例することを特徴とする、請求項4に記載のレーザー光源の周波数f(t)の変調を測定する方法。
【請求項6】
前記周期Tが概ね数μ秒であり、前記遅延が数秒〜数分の持続期間にわたり変化することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー光源の周波数f(t)の変調を測定する方法。
【請求項7】
ライダーのレーザー光源(1)の周波数f(t)を設定点f0(t)に較正する方法であって、
−前記レーザー光源(1)の周波数f(t)を所定の周期的な制御電圧U(t)により変調するステップと、
−前記周波数f(t)とU(t)との間の線形変換を設定するステップと、
−f0(t)および前記線形変換から第1の制御電圧U1(t)を計算するステップと、
−i=1から始めて、
・請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー光源の周波数fi(t)を測定するステップと、
・誤差Δfi(t)=fi(t)−f0(t)を計算し、Δfi(t)と前記線形変換から修正制御電圧を計算するステップと、
・前段の制御電圧Ui(t)および前記修正制御電圧から新たな制御電圧Ui+1(t)を設定するステップと
・i=i+1とするステップを反復するステップとを含む方法。
【請求項8】
前記周波数f(t)とU(t)との間の前記線形変換が、FTMと称する周波数変調の伝達関数の測定により得られることを特徴とする、請求項7に記載の較正方法。
【請求項9】
反復回数が10より少ないことを特徴とする、請求項7または8のいずれか1項に記載の較正方法。
【請求項10】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行された際に請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法のステップを実行可能にするコード命令を含んでいるコンピュータプログラム。
【請求項11】
レーザー光源の周波数f(t)の変調を測定するシステムであって、
−変調コントローラ(11)に関連付けられたレーザー光源(1)と、
−一方のアームに遅延線(21)を有する2アーム干渉計(2)と、
−前記2アーム干渉計(2)により生じたビート信号を測定する装置(4)と、
−測定された信号を処理する装置(5)と、
−前記変調コントローラ(11)および前記測定された信号を処理する装置(5)に接続された同期装置(6)とを含み、
前記測定された信号を処理する装置(5)が請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実現するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
前記2アーム干渉計(2)がMach−ZehnderまたはMichelson型であることを特徴とする、請求項11に記載の周波数f(t)の変調を測定するシステム。
【請求項13】
前記2アーム干渉計(2)が音響光変調器を一切含んでいないことを特徴とする、請求項11または12に記載の周波数f(t)の変調を測定するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、レーザー光源の周波数変調の測定、および可能ならば制御に関する。
【背景技術】
【0002】
今日まで、レーザー光源の周波数変調の測定は、2本のアームのうち1本が音響光学変調器を含むMichelsonまたはMach−Zehnder干渉計を用いて実現している場合が最も多い。この種のシステムの一例を
図1aに示す。当該システムは、
−レーザー光源1と、デジタル設定点を格納する装置111および当該デジタル設定点をアナログ信号f
0(t)に変換する変換器112を備えていて、周波数設定点f
0(t)に対応する変調電圧のコントローラ11と、
−発光された光の一部を干渉計2へ送信すべくサンプリングするカプラー12と、
−一方のアームに遅延線21、他方のアームに自身がRF発生器221に関連付けられた音響光学変調器(または「AOM」)22を有する2アームMach−Zehnder干渉計2と、2個のカプラーの一方23が好適には2個の等しい部分への分割を可能にし、他方24が当該2本のアームを通過した光の再結合を可能にする2個のカプラーと、
−干渉計により生じたビートの光度信号をアナログ電気信号に変換可能なフォトダイオード3と、
−当該アナログ信号をデジタル信号に変換する変換器41、発生器221に直列接続されていて当該発生器のアナログ信号をデジタル信号に変換する変換器42、および変換器41、42により生じたデジタル信号を所定の時点で格納する装置43を含み、フォトダイオード3により伝達された信号を測定する装置4と、
−格納された信号を処理して、設定電圧をコントローラ11に送信する装置5と、
−格納装置43、音響光学変調器22(変換器42および発生器221を介して)、および電圧コントローラ11の間の同期装置6とを含んでいる。
【0003】
周波数は、干渉計からの信号出力を解析することにより決定されるが、これは2本のアームから各々発せられる2個の信号間のビート信号の問題である。
【0004】
フォトダイオードにより測定される信号(DC成分があれば除外する)は従って、次式の通りであり、
x(t)∝cos(φ(t)−φ(t−τ)+2πf
maot)
ここにφ(t)はレーザー光源の位相、f
maoは音響光学変調器の周波数、およびτは光ファイバにより誘導されてMach−Zehnder干渉計2の2本のアーム間の経路差に対応する遅延である。位相差φ(t)−φ(t−τ)は以下の関係に従うレーザーの周波数f(t)の特徴を表す。
【数1】
【0005】
レーザーの周波数を評価するために、次式を計算することを推奨する。
x(t)・exp(−2iπf
maot)
次いで、f
maoよりも低いカットオフ周波数の低域フィルタを適用するために、z(t)が次式のように得られる。
z(t)∝exp(iφ(t)−iφ(t−τ))
【0006】
z(t)の複素数引数の評価により、式(1)に従いレーザーの周波数を最終的に導くことができる。
【0007】
当該方法は音響光学変調器により誘導される周波数変換に依存する。
【0008】
音響光変調器は、サイズ、重量、電力消費、信頼性、およびこれを用いるシステムのコストを直接悪化させ得る要素である。これらの悪化は間接的でもあり得る。例えば、音響光学変調器により生じる干渉に起因して、一連の検出を電磁気的に遮蔽することが必要な場合がある。また、高い中間周波数での動作には、より複雑な一連の検出を用いることが必要である点に注意されたい。
【0009】
他の解決策により、レーザー光源の周波数変調を測定することができる。最も簡単な解決策は、例えば遅延が極めて短いMach−Zehnder干渉計、または自由スペクトル範囲が大きい光学共鳴器等、直交位相の近傍で「明瞭な」干渉計の使用に基づくものである。Fabry−Perot共鳴器を備えたこの種のシステムの一例を
図1bに示す。当該システムは、
−レーザー光源1と、デジタル設定点を格納する装置111および当該デジタル設定点をアナログ信号f
0(t)に変換する変換器112を備えていて、周波数設定点f
0(t)に対応する変調電圧のコントローラ11と、
−発光された光の一部を干渉計2へ送信すべくサンプリングするカプラー12と、
−Fabry−Perot共鳴器2と、
−共鳴器2により生じた光度信号をアナログ電気信号に変換可能なフォトダイオード3と、
−当該アナログ信号をデジタル信号に変換する変換器41、および変換器41により生じたデジタル信号を所定の時点で格納する装置43を含み、フォトダイオード3により伝達された信号を測定する装置4と、
−格納された信号を処理して、設定電圧をコントローラ11に送信する装置5と、
−格納装置43と電圧コントローラ11との間の同期装置6とを含んでいる。
【0010】
この場合、干渉計または共鳴器から出力されてフォトダイオードにより測定される信号を次式のように書くことができる。
x(t)=A・F(f(t))
ここにAは注入電力に依存する比例定数、Fはレーザーの周波数f(t)=f
moy+Δf(t)の可能な変化範囲にわたる単調(従って可逆)な関数である。例えば、短遅延干渉計の場合、電力が完全に釣り合っていれば次式が得られる。
x(t)∝cos(φ(t)−φ(t−τ))+1≒cos(2πτf(t))+1
当該関数が可逆であるための必要条件は、τが充分小さいこと、すなわち|2πΔf(t)τ|<πである。
【0011】
このように、当該技術は残念なことに、変調ダイナミックレンジが大きく、同時に高い測定精度が必要な用途には適していない。また、比例定数Aが電力に依存することで、周波数の測定精度が低下する恐れがある。最後に、システムのドリフトが、測定値のドリフトをもたらす(例えば、干渉計の2チャネル間の出力バランスの喪失、または共鳴器の応答におけるスペクトル変化)をもたらす恐れがある。
【0012】
最後の解決策は、2アーム二重干渉計により生じた干渉信号の位相成分および直交成分を同時に測定するものである。Mach−Zehnder干渉計を備えたこのようなシステムの一例を
図1cに示す。当該システムは、
−レーザー光源1と、デジタル設定点を格納する装置111および当該デジタル設定点をアナログ信号f
0(t)に変換する変換器112を備えていて、周波数設定点f
0(t)に対応する変調電圧のコントローラ11と、
−発光された光の一部を干渉計2へ送信すべくサンプリングするカプラー12と、
−カプラー12が受光した光を好適には2個の等しい部分に分割するカプラー23を有し、一方のアームに遅延線21を有し、他方のアームにおいて光信号がカプラー25により、
・位相成分(当該位相成分は次いでカプラー241を用いて他方のアームを通過した光と再結合される)と、
・直交成分(四分の一波表板等の素子22を用いて得られ、次いでカプラー242を用いて他方のアームを通過した光と再結合される)とに分割される2アームMach−Zehnder干渉計2と、
−干渉計により生じた遅延信号と位相成分との間のビートの光度信号を第1のアナログ電気信号に変換可能な第1のフォトダイオード31と、
−干渉計により生じた遅延信号と直交成分との間のビートの光度信号を第2のアナログ電気信号に変換可能な第2のフォトダイオード32と、
−第1のダイオード31に接続された変換器41、第2のダイオード32に接続された変換器42、および変換器41、42により生じたデジタル信号を所定の時点で格納する装置43を含み、フォトダイオード31、32により伝達された信号を測定する装置4と、
−格納された信号を処理して、設定電圧をコントローラ11に送信する装置5と、
−格納装置43と電圧コントローラ11との間の同期装置6とを含んでいる。
【0013】
この場合、x(t)=A・cos(φ(t)−φ(t−τ))+B、およびy(t)=C・sin(φ(t)−φ(t−τ))+Dが測定され、ここにA、B、C、Dは注入電力および干渉計のチャネル間の出力バランスに依存する係数である。これらの係数を完全に把握することにより以下の測定が可能である。
【数2】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
当該技術は、精巧な(すなわち長い遅延を含む)干渉計を用いて精度とダイナミックレンジとを程よく両立させることができるため有利である。当該技術により、任意の音響光変調器を一切使用する必要がなくなる。しかし、時間不変の4分の1波長板を必要とする。また、位相を極めて高い精度で制御する必要があり、2個の信号を同時に取得して、注入電力およびチャネルの出力バランスに依存し、従って時間経過に伴いドリフトする係数A、B、C、Dを良く把握することを必要とする。
【0015】
本発明の目的は、これらの短所を緩和することである。具体的には、精度とダイナミックレンジとを程よく両立させる観点から、および本方法を実装するシステムのコスト、規模、および信頼性の観点から、上述の必要条件を全て同時に満たすレーザー光源の周波数変調を測定する方法に対するニーズが今日に至るまで存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、レーザー光源の周波数変調の測定もまた、2本のアームの一方が遅延によりずれている2アーム干渉計(例えばMach−ZehnderまたはMichelson型の)を用いて、以下の動作条件下で実現される。
−変調信号は周期的であり、
−ビート測定値は、一周波数の変調周期(典型的に数百μ秒)のスケールではほとんど変化しないが、測定の反復周期(数秒)のスケールではかなり変化する干渉計のアーム間で位相差に基づく別々の干渉条件下で異なる変調周期にわたり得られる。これにより、干渉信号の位相成分および直交成分を実質的に生成することができる。次いでレーザーの周波数変調がそこから導かれる。
【0017】
より厳密には、本発明の一主題は、レーザー光源の周波数変調f(t)を測定する方法であって、以下のステップ、すなわち
−変調コントローラにより、レーザー光源を周期Tにわたり変調するステップと、
−所与の周期Tにおいて、レーザー光源の下流に位置していて2本のアーム間に遅延τを生じさせることが可能な干渉計の2本のアーム間でビート光度の測定を複数回実行し、変調の制御により当該測定を同期化するステップと、
−測定値から周波数f(t)を計算するステップとを含んでいる。
【0018】
本方法は、主として、
−各周期T中、f(t)は変化するが遅延τは一定であるとみなされ、
−遅延τは複数の周期Tにわたり時間の関数として変化し(実際には、τはλ/cに関して典型的には10%λ/cを上回る程度に顕著に変化するが、典型的には1%未満のように相対的には殆ど変化せず、cは光速度である)、
−所与の周期の時点t
iで実行される測定は時点t
i+kTで反復され(k≧1)、遅延τは実行される都度変化することを特徴とする。
【0019】
本方法により、レーザー光源の変調周波数を、音響光変調器を一切含まない簡単な2アーム干渉計を用いて精度とダイナミックレンジを程よく両立させながら測定することができる。これにより、当該要素の使用に伴う短所(コスト、大きさ、信頼性、その他)を回避できる。更に、提案する解決策は、低周波数であり得る信号の解析に基づいているため、一連の検出および信号処理に対する特定の制約、例えばサンプラに対する制約を緩和することができる。
【0020】
計算は、好適には以下のステップ、すなわち
−周期毎に均一な反復的測定値をベクトルx(t)の式(0≦t≦T)で編成するステップと、
−当該ベクトルx(t)が表す楕円柱の軸w
0を計算するステップと、
−f(t)の関数である角度によりパラメータ化されている射影により、軸w
0に沿って所定の平面上へ射影するステップとを含んでいる。実際には、当該関数を1次展開し、次いでf(t)に比例する角度で射影をパラメータ化することが有利である。
【0021】
周期Tは典型的には概ね数μ秒(5μ秒〜1m秒)であり、遅延τは典型的には100ミリ秒〜1分(100ms〜1mn)の範囲の持続期間にわたり変化する。
【0022】
本発明の一変型例によれば、遅延時間τの関数としての変化は圧電装置により誘導される。
【0023】
本発明は、予めユーザーにより設定された周波数変調になるべく近づけるように制御信号を較正すべく用いてもよい。このため、本発明はまた、ライダーのレーザー光源の周波数を設定点f
0(t)に較正する方法にも関し、以下のステップ、すなわち
−レーザー光源の周波数を所定の周期的な制御電圧U(t)により変調するステップと、
−f(t)とU(t)との間の線形変換、例えばFTMと称する周波数変調の伝達関数の測定により得られる変換を設定するステップと、
−f
0(t)および前記線形変換から第1の制御電圧U
1(t)を計算するステップと、
−i=1から始めて、
・上述のようにレーザー光源の周波数f
i(t)を測定するステップと、
・誤差Δf
i(t)=f
i(t)−f
0(t)を計算し、Δf
i(t)と前記線形変換から修正制御電圧を計算するステップと、
・前段の制御電圧U
i(t)および修正制御電圧から新たな制御電圧U
i+1(t)を設定するステップと
・i=i+1とするステップを反復するステップとを含んでいる。
【0024】
反復回数は一般に10より少ない。
【0025】
本発明の別の主題はコンピュータプログラムであり、前記プログラムは、前記プログラムがコンピュータ上で実行された際に上述の方法のステップを実行可能にするコード命令を含んでいる。
【0026】
本発明はまた、レーザー光源の周波数変調f(t)を測定するシステムにも関し、
−変調コントローラに関連付けられたレーザー光源と、
−一方のアームに遅延線を有する2アーム干渉計と、
−当該干渉計により生じたビート信号を測定する装置と、
−測定された信号を処理する装置と、
−変調コントローラおよび処理ユニットに接続された同期装置とを含み、
当該処理装置が上述の方法の実装に適していることを特徴とする。
【0027】
干渉計は例えばMach−ZehnderまたはMichelson型である。
【0028】
有利な特徴として、干渉計は音響光変調器を一切含んでいない。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照しながら非限定的な例として与える以下の詳細説明を精査することにより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1a】AOMを備えた2アームMach−Zehnder干渉計(
図1a)、光学共鳴器(
図1b)、または干渉信号の位相成分および直交成分を測定可能な2アーム干渉計(
図1c)を有する、従来技術によるレーザー光源の周波数変調を測定するシステムの例を模式的に示す。
【
図1b】AOMを備えた2アームMach−Zehnder干渉計(
図1a)、光学共鳴器(
図1b)、または干渉信号の位相成分および直交成分を測定可能な2アーム干渉計(
図1c)を有する、従来技術によるレーザー光源の周波数変調を測定するシステムの例を模式的に示す。
【
図1c】AOMを備えた2アームMach−Zehnder干渉計(
図1a)、光学共鳴器(
図1b)、または干渉信号の位相成分および直交成分を測定可能な2アーム干渉計(
図1c)を有する、従来技術によるレーザー光源の周波数変調を測定するシステムの例を模式的に示す。
【
図2a】Mach−Zehnder干渉計(
図2a)またはMichelson干渉計(
図2b)を用いて本発明による方法を実装可能なレーザー光源の周波数変調を測定するシステムの一例を模式的に示す。
【
図2b】Mach−Zehnder干渉計(
図2a)またはMichelson干渉計(
図2b)を用いて本発明による方法を実装可能なレーザー光源の周波数変調を測定するシステムの一例を模式的に示す。
【
図3a】当初は楕円経路(
図3a)で、当該経路を円に変換して(
図3b)一定の範囲内で直接周波数を得るべく2周期にわたり得られた測定値を表すベクトルの経路の一例を示す。
【
図3b】当初は楕円経路(
図3a)で、当該経路を円に変換して(
図3b)一定の範囲内で直接周波数を得るべく2周期にわたり得られた測定値を表すベクトルの経路の一例を示す。
【
図4a】当初は楕円に基づく円筒状経路で400周期にわたり得られた測定値を表すベクトルの例示的経路の、3個の主成分からなる三次元空間への射影を模式的に示す。
【
図4b】円筒の軸にほぼ直交直角し、且つ円に正規化された平面に射影された
図4aの経路を模式的に示す。
【
図5】本発明によるレーザー光源の周波数を較正する方法の各種ステップを示す。
【
図6】i回の反復後に得られた変調誤差の一例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
全ての図を通じて同一要素は同一参照符号で参照されている。
【0032】
本発明による方法を実装可能な測定システムの第1の例について、
図2aを参照しながら以下に述べる。本システムは、
−レーザー光源1と、デジタル設定点を格納する装置111および当該デジタル設定点をアナログ信号f
0(t)に変換する変換器112を備えていて、周波数設定点f
0(t)に対応する変調電圧のコントローラ11と、
−発光された光の一部を干渉計2へ送信すべくサンプリングするカプラー12と、
−一方のアームに遅延線21を有する2アームMach−Zehnder干渉計2と、2個のカプラーの一方23が好適には2個の等しい部分への分割を可能にし、他方24が当該2本のアームを通過した光の再結合を可能にする2個のカプラーと、
−干渉計2により生じた光度信号をアナログ電気信号に変換可能なフォトダイオード3と、
−当該アナログ信号をデジタル信号に変換する変換器41、および変換器41により生じたデジタル信号を所定の時点で格納する装置43を含み、ダイオード3により伝達された信号を測定する装置4と、
−格納された信号を処理して、設定電圧をコントローラ11に送信する装置5と、
−格納装置43と、同じく処理装置に接続された電圧コントローラ11との間の同期装置6とを含んでいる。
【0033】
本発明による方法を実装可能な測定システムの、上例におけるMach−Zehnder干渉計をMichelson干渉計で代替した別の例について、
図2bを参照しながら以下に述べる、本システムは、
−レーザー光源1と、デジタル設定点を格納する装置111および当該デジタル設定点をアナログ信号f
0(t)に変換する変換器112を備えていて、周波数設定点f
0(t)に対応する変調電圧のコントローラ11と、
−発光された光の一部を干渉計2へ送信すべくサンプリングするカプラー12と、
−各アームの終端にミラー26、例えばファラデーミラーを有し、一方のアームに遅延線21を有する2アームMichelson干渉計2と、
・カプラー12からの光が入射した際に好適には2個の等しい部分への分割を可能にし、
・両方のアームを通過した光が出射する際に再結合可能にするカプラー23と、
−干渉計2により生じた光度信号をアナログ電気信号に変換可能なフォトダイオード3と、
−当該アナログ信号をデジタル信号に変換する変換器41、および変換器41により生じたデジタル信号を所定の時点で格納する装置43を含み、ダイオード3により伝達される信号を測定する装置4と、
−格納された信号を処理して、設定電圧をコントローラ11に送信する装置5と、
−格納装置43と、同じく処理装置に接続された電圧コントローラ11との間の同期装置6とを含んでいる。
【0034】
上述の構成は全て光ファイバに基づいていてよい。
【0035】
図2bのシステムの場合、ミラー26により、偏波保持しない光ファイバを用いる場合であっても干渉信号のレベルは一定である。
【0036】
上の二例において、レーザー1の照射範囲の一部が、一方のアームが遅延線21により遅延τだけずれている干渉計2に注入され、残りの照射範囲は、例えば遠隔測定または測風用途を目的とし、
図2a、2bに見られるように、光源の変調方法には寄与しない(測風または遠隔測定信号は光源の変調に用いられない)。干渉計により生じた干渉信号は次いで、フォトダイオード3を用いて電気信号に変換され、次いでバッファメモリ(バッファ)43に保存すべく変換器41によりデジタル信号に変換される。同期装置6を用いて、メモリ43による信号の取得をコントローラ11の周波数変調設定点に同期させる。複数の変調周期の取得により、処理装置5は固有の方法を用いてレーザー1の変調周波数を再構成することができる。
【0037】
本発明による方法は、様々な変調周期が異なる干渉条件下で得られたならば機能する。これは、例えば干渉計の熱ドリフトまたはレーザーの波長のドリフトに起因して「自然に」実現できる。本方法はまた、例えば干渉計の2本のアームの一方が(約π/2の)位相変調システムを含む場合に誘導することができる。この位相変調は低周波(典型的には10Hz未満)であるため、単に圧電効果または熱効果により実現することができる。
【0038】
本発明の周波数測定により、従来技術の例で見られるAOMを省略することができる。これは、干渉計2からのビート信号出力の処理に基づいている。このアーキテクチャにおいて、当該ビート信号を次式のように書くことができる。
x(t)=cos(φ(t)−φ(t−τ)+ψ(t,τ))
ここに時点tにおけるレーザーの位相は、
φ(t)+ψ(t)
と書かれ、式φ(t)は周波数変調に関連付けられた位相の変化を表し、ψ(t)は平均周波数、および寄生位相変動(例えば位相ノイズから生じる)に関連付けられた全ての項を含んでいる。ψ(t,τ)は、干渉計2のアーム間の光路の変化に依存するが、周波数変調の周期のスケールでは殆ど変動しない位相である。実際には、τはλ/c(典型的にはΔτ>10%λ/c、ここにcは光速度、λは光源の波長)に関して顕著に変化するが、ほとんど相対的に変化しない(典型的には1%未満、すなわち(Δτ/τ)<0.01、但しΔτは複数の周期Tにわたるτの変化)。
【0039】
レーザーの周波数f(t)は、位相の導関数に比例する。
【数3】
【0040】
本発明による処理は、位相変動ψ(t,τ)に関する周波数f(t)の寄与の分離、すなわちψ(t,τ)を定数範囲内での除外を図るものである。当該処理は、変調信号が(周期Tで)周期的であると仮定し、2個の時間スケール、すなわち
−f(t)は変化するがψ(t,τ)は一定である短い時間スケール、すなわち典型的には数μ秒、
−ψ(t,τ)が変化した長い時間スケール、すなわち典型的に数秒〜数分)
を用いて周波数f(t)を測定する。
【0041】
実際には、複数の変調周期を包含する長い時間スケールでm個の異なる周期にわたり信号x
i(t)を測定して次式を得ることが必要である。
x
i(t)=x(t−k
iT) ここに1≦i≦m,k
i∈N,0≦t<T
【0042】
上述の時点k
iTにおけるx
i(t)の測定値は均質と言われる。レーザーにより発された周波数は、より長い時間スケールの間隔を置いた複数の測定周期の終了時点でのみ再構成可能である。
【0043】
干渉計アーム間の位相シフトψ(t,τ)が変調周期Tにわたり一定のままである、すなわち
ψ(t−k
iT,τ)≒cste=ψ
i 但し0<t<T
であるように、熱および経時効果は充分に小さい、またはより一般に干渉条件が充分安定していると仮定する。
【0044】
従って、測定された時間ベクトルを以下の式で示し、
x
i(t)=cos(2πτf(t−k
iT)+ψ
i))=cos(2πτf(t)+ψ
i)
且つ時間依存ベクトルx(t)=(x
1(t),...,x
m(t))
Tを考えることができ、
指数の記号Tは転置行列を意味する。
【0045】
二次元の場合、ベクトル
x(t)=(x
1(t),x
2(t))
T=(cos(2πτf(t)+ψ
1),cos(2πτf(t)+ψ
2))
T
は、
図3aに示すようにψ
1≠ψ
2ならば楕円を表す。
【0046】
点Pの座標は、(cos(α(t)+ψ
1),(cos(α(t)+ψ
2))である。αは、一定の範囲内でのみ決定できる。複数の点P(α)が得られる場合、
ψ
2−ψ
1
により特徴付けられる楕円を表すが、ψ
1およびψ
2の楕円を導ける直接的な幾何学構造は存在しない。二次元において、楕円の全ての点からαを決定する一つの方式は、αの自然な定義(すなわち角度)に戻るべく楕円を円に変換するものである。これを行うため、以下の操作を行うことができる。
−楕円の偏心を決定する。これを行うため、楕円の軸が常に±45°であることを考慮して、軸(1,1)および(1,−1)上の点x(すなわち楕円)の経路の射影の最大値を決定することが必要である。(1,1)上での最大値をM
1と表記し、(1,−1)上の最大値をM
−1と表記する。
−パラメータ1/M
1の軸(1,1)、およびパラメータ1/M
−1を有する軸(1,−1)の拡張を実行する(例えば、−45度の回転、続いてパラメータ1/M
1を有する横座標の軸およびパラメータ1/M
−1を有する縦座標の軸の拡張、続いて+45度の回転を実行することにより)。
【0047】
軸x1、x2をA1、A2に変換する上述の操作により、
図3aは
図3bを変形され、αは従って、一定の範囲内で、円に沿った点の位相を直接表す。
【0048】
同様に、m次元の場合、x(t)は
【数4】
の正しく選択された平面内の楕円を表していなければならない。この楕円上で、点xの位相はα(t)=2πτf(t)を直接与える。
【0049】
楕円の軸を決定するために、共分散行列Γ=<x(t)x(t)
T>を計算し、次いで固有ベクトルv
iおよび固有値λ
iを定義すべく対角化する。
Γv
i=λ
iv
i
λ
1≧λ
2≧...≧λm≧0: 固有値
(v
1、v
2、...、v
m):
【数5】
の正規直交基底(固有ベクトル)
【0050】
実際には、最も大きい3個の固有値だけが無視できない。従って、(v
1,v
2,v
3)により形成される部分空間でのxの射影を計算することにより問題の次元を減らすことができる。当該部分空間におけるベクトルx(t)の経路{x(t),0≦t≦T}に対する実験結果の一例を
図3bに示す。当該経路は、サンプリング周波数125MHz、すなわち約25000個/周期の点について約10秒間にわたり測定された200μ秒のm=400周期で得られた(満足すべき結果は、5000点/周期以上で得られた)。典型的には周期Tは10〜800μ秒、遅延τは典型的には1秒〜300秒の持続期間にわたり変化する。当該複数の点は軸w
0の楕円柱に編成される。楕円の軸w
0を決定すべく、法線の二乗に対する法線の分散等の基準C(w)に対して最小化を図る(射影平面は極力円形になるように選択される)。
【数6】
ここにpw(x)が軸wに沿ったxの射影を示す。
【0051】
w
0に沿って点xを射影することにより、僅かに楕円をなす形状が得られ、
図4aから分かるように、再正規化の後、
α(t)≒2πτf(t)
が成り立ち、従って、
図4bに示すように時間経過に伴う周波数が導かれる。
【0052】
上述の技術を用いて、例えば、周期Tにわたり、
−定数
−正弦
−放物線
−三角形
である部分を含む所与の複素周波数f(t)を適用することにより様々な周波数f(t)を同時に評価することができる。
【0053】
信号x
i(t)を、自身のベクトル式での編成に基づいて扱う方法を記述してきた。例えば、反復線形回帰、擬似アニーリング、あるいは全ての測定値を考慮に入れる再帰的、遺伝的またはモンテカルロアルゴリズム等、他の処理方法も考えられる。
【0054】
上述の方法は特に、AOMを一切用いることなく、ライダーのレーザー光源の周波数を設定点f
0(t)に較正すべく用いてよい。このような手順により、レーザーの伝達関数に生じ得るドリフト(温度、ダイオードの経年劣化等に関する)を回避することができる。
図5を参照しながら上で述べた主な較正ステップは以下のように実行される。
【0055】
第1のステップは、制御電圧とレーザーの周波数との間で線形変換を定義するものである。当該線形変換は、周波数変調の伝達関数を測定することにより得られる点で有利である。これは従って、上述の方法を用いて、以下の式
【数7】
の変調の制御電圧として既知の白色雑音(例えば0〜150kHzの範囲の周波数帯の)を用いることにより、(ここにΦkは独立なランダム位相)、および発光周波数を測定することにより行われる。変調伝達関数は以下の関係から得られる。
【数8】
【0056】
従って較正処理は、上述の伝達関数の(実験的に観察された)非線形性を考慮して以下を反復する。すなわち
−周波数設定点から、レーザーダイオードに印加する第1の電圧を、当該設定点の線形変換を用いて、例えば以下のような変調伝達関数を用いて計算し、
U
1(t)=TF
−1{TF{f
0(t)}
ν×FTM
−1(ν)}
−上述の方法を用いて発光周波数f
1(t)を測定し、
−前段の測定値から、設定点に関する周波数の誤差Δf
i(t)=f
i(t)−f
0(t)を導き、
−当該誤差により、Δf
i(t)および上述の関数(例えばFTM)から定まる制御電圧の修正が可能であり、
U
i+1(t)−U
i(t)−TF
−1{TF{Δf
i(t)}
ν×FTM
−1(ν)}
−本システムは、必要な制御電圧、従って発光周波数を改良すべく上述の3ステップを反復する。
【0057】
一般に2回の反復で満足な結果が得られ、典型的には
図6に示すように実現可能な最小誤差(すなわち約1分)を実現するのには3〜4回の反復で充分である。
【0058】
上述の較正および測定方法により、従来技術の例で見られるAOMを省略することができる。しかし、その使用を排除するものではなく、特にAOMを、低周波ノイズを回避すべく干渉計の一方のアームにオプションとしてAOMを追加してもよい。
【0059】
ビート信号は、ハードウェアおよび/またはソフトウェア要素を用いて処理可能である。当該処理は、コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータプログラム製品を用いて実現することができ、コード命令を含む当該コンピュータプログラムにより再構成方法のステップを実行することができる。当該媒体は、電子、磁気、光、電磁気であっても、または赤外線を用いる記憶媒体であってもよい。このような媒体は、例えば半導体メモリ(ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM))、テープ、フロッピーディスク、ハードディスクまたは光ディスク(コンパクトディスク−読出し専用メモリ(CD−ROM)、コンパクトディスク−読出し/書込み(CD−R/W)およびDVD)である。
【0060】
本発明について特定の実施形態を参照しながら記述してきたが、本発明はこれらに一切限定されず、上述の手段およびこれらの組合せの任意の技術的等価物であっても、本発明の範囲に含まれる限り本発明に包含されることは明らかである。