(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶剤1〜3が、極性非プロトン性溶媒と極性プロトン性溶媒の少なくとも一方からなる水溶液を有する有機溶剤であることを特徴とする請求項1に記載のろう付け用フラックス組成物。
前記溶剤1〜3が、水、エーテル類、エステル類、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、エステル系グリコールエーテル類、一級アミン類、アミド類、アセトニトリルからなる溶剤群のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のろう付け用フラックス組成物。
前記溶剤1が、水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、tert−ブタノール、アセトニトリルからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることを特徴とする請求項1に記載のろう付け用フラックス組成物。
前記溶剤2が、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−ブタノール、ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることを特徴とする請求項1または請求項4に記載のろう付け用フラックス組成物。
前記溶剤3が、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ブトキシエタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチルラクトン、3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール、グリセリン、2−アミノエタノールからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることを特徴とする請求項1、請求項4または請求項5に記載のろう付け用フラックス組成物。
前記溶剤1〜3が、極性非プロトン性溶媒と極性プロトン性溶媒の少なくとも一方からなる水溶液を有する有機溶剤であることを特徴とする請求項7に記載の粉末ろう組成物。
前記溶剤1〜3が、水、エーテル類、エステル類、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、エステル系グリコールエーテル類、一級アミン類、アミド類、アセトニトリルからなる溶剤群のいずれかであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の粉末ろう組成物。
前記溶剤1が、水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、tert−ブタノール、アセトニトリルからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることを特徴とする請求項7に記載の粉末ろう組成物。
前記溶剤2が、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−ブタノール、ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることを特徴とする請求項7または請求項10に記載の粉末ろう組成物。
前記溶剤3が、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ブトキシエタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチルラクトン、3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール、グリセリン、2−アミノエタノールからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることを特徴とする請求項7、請求項10または請求項11に記載の粉末ろう組成物。
アルミニウム合金からなるヘッダーパイプと扁平管とフィンを備え、これらヘッダーパイプと扁平管とフィンを含むアルミニウム合金部材のいずれかが請求項7〜請求項12の何れかに記載の粉末ろう組成物の溶融凝固物であるフィレットにより接合されたことを特徴とする熱交換器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に記載の粉末ろう組成物、熱交換器を用いることにより、チューブとフィンとのろう付け接合部に選択腐食を発生することがなく、信頼性の高い、工業上実用性の高い扁平多穴管及び熱交換器が得られている。
しかし、上述の粉末ろう組成物は、扁平多穴管の表面に塗布した後、フラックスや金属粉末を管表面に固着する必要がある。そのため、粉末ろう組成物を管表面に塗布した後、溶剤の蒸発温度範囲において一定時間加熱保持する必要があり、溶剤の蒸発に必要な時間が長い場合は生産性が低下することが懸念される。
【0005】
そこで、ろう付け用組成物には、生産性を向上させるために溶剤の蒸発量を向上させること(乾燥性)が要求される。また、扁平多穴管上に形成されたろう付け組成物の塗膜が、塗膜形成時あるいはフィンとの組立て時に、剥離などが生じないように塗膜と扁平多穴管を十分な強度で固着していること(塗膜強度・密着性)が要求される。
さらに、均一な防食層や良好なフィンとの接合部を形成するために、ろう付け用組成物の塗布膜にブリスター等の膨れが無い、均一な厚みでの塗布膜の形成(塗膜の膜厚均一性)が要求される。
【0006】
本願発明は、これらの背景に鑑み、塗膜の乾燥に要する時間を短縮することができ、生産性に優れるとともに、塗布対象物への塗膜密着性が良好で、ろう付けした場合の接合率が良好な粉末ろう組成物の提供を目的とする。また、このような優れた粉末ろう組成物の塗膜を表面に備えた熱交換器用アルミニウム合金管部材の提供と上述の粉末ろう組成物によってろう付けされ、耐食性に優れた熱交換器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るろう付け用フラックス組成物は、フッ化物系フラックスと樹脂と溶剤を含み、前記樹脂が、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルのいずれか1種又は2種以上の高分子材料を含み、且つ、前記溶剤が水、または水溶性を有する有機溶剤であって、酢酸ブチルの蒸発量に対する溶剤aの蒸発量の比を溶剤aの比蒸発量Q
aと定義した場合、以下の(1)式より求められる比蒸発量Q
aについて、Q
a>60の溶剤を溶剤1と定義し、60≧Q
a>10の溶剤を溶剤2と定義し、Q
a≦10の溶剤を溶剤3と定義し、
ろう付け用フラックス組成物中の全溶剤100%とした場合に、溶剤1〜3のそれぞれの
配合質量割合が、溶剤1:溶剤2:溶剤3=0〜20%:30〜70%:10〜60%であることを特徴とする。
Q
a=(P
a×√M
a)/(P
酢酸ブチル×√M
酢酸ブチル)×100…(1)式
ただし、(1)式において、Q
a:溶剤aの比蒸発量、P
a:溶剤aの飽和蒸気圧(20℃)、M
a:溶剤aの分子量、P
酢酸ブチル:酢酸ブチルの飽和蒸気圧(20℃)、M
酢酸ブチル:酢酸ブチルの分子量を意味する。
【0008】
(2)本発明に係るろう付け用フラックス組成物において、前記溶剤1〜3が、極性非プロトン性溶媒と極性プロトン性溶媒の少なくとも一方からなる水溶液を有する有機溶剤であることが好ましい。
(3)本発明に係るろう付け用フラックス組成物において、前記溶剤1〜3が、水、エーテル類、エステル類、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、エステル系グリコールエーテル類、一級アミン類、アミド類、アセトニトリルからなる溶剤群のいずれかであることが好ましい。
【0009】
(4)本発明に係るろう付け用フラックス組成物において、前記溶剤1が、水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、tert−ブタノール、アセトニトリルからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることが好ましい。
(5)本発明に係るろう付け用フラックス組成物において、前記溶剤2が、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−ブタノール、ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることが好ましい。
【0010】
(6)本発明に係るろう付け用フラックス組成物において、前記溶剤3が、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ブトキシエタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチルラクトン、3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール、グリセリン、2−アミノエタノールからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることが好ましい。
【0011】
(7)本発明に係る粉末ろう組成物は、Si粉末とフッ化物系フラックスと樹脂(高分子材料)と溶剤を含む粉末ろう組成物であって、前記樹脂が、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルのいずれか1種又は2種以上を含む高分子材料であり、前記溶剤が水、または水溶性を有する有機溶剤であって、酢酸ブチルの蒸発量に対する溶剤aの蒸発量の比を溶剤aの比蒸発量Q
aと定義した場合、以下の(1)式より求められる比蒸発量Q
aについて、Q
a>60の溶剤を溶剤1と定義し、60≧Q
a>10の溶剤を溶剤2と定義し、Q
a≦10の溶剤を溶剤3と定義し、粉末ろう組成物中の全溶剤100%とした場合に、溶剤1〜3のそれぞれの
配合質量割合が、溶剤1:溶剤2:溶剤3=0〜20%:30〜70%:10〜60%であることを特徴とする。
Q
a=(P
a×√M
a)/(P
酢酸ブチル×√M
酢酸ブチル)×100…(1)式
ただし、(1)式において、Q
a:溶剤aの比蒸発量、P
a:溶剤aの飽和蒸気圧(20℃)、M
a:溶剤aの分子量、P
酢酸ブチル:酢酸ブチルの飽和蒸気圧(20℃)、M
酢酸ブチル:酢酸ブチルの分子量を意味する。
【0012】
(8)本発明に係る粉末ろう組成物において、前記溶剤1〜3が、極性非プロトン性溶媒と極性プロトン性溶媒の少なくとも一方からなる水溶液を有する有機溶剤であることが好ましい。
(9)本発明に係る粉末ろう組成物において、前記溶剤1〜3が、水、エーテル類、エステル類、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、エステル系グリコールエーテル類、一級アミン類、アミド類、アセトニトリルからなる溶剤群のいずれかであることが好ましい。
【0013】
(10)本発明に係る粉末ろう組成物において、前記溶剤1が、水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、tert−ブタノール、アセトニトリルからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることが好ましい。
【0014】
(11)前記本発明に係る粉末ろう組成物において、前記溶剤2が、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−ブタノール、ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることが好ましい。
【0015】
(12)前記本発明に係る粉末ろう組成物において、前記溶剤3が、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ブトキシエタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチルラクトン、3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール、グリセリン、2−アミノエタノールからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることが好ましい。
【0016】
(13)本発明に係るアルミニウム合金部材は、先のいずれかに記載の粉末ろう組成物からなる塗膜が表面に形成されたことを特徴とする。
(14)本発明に係る熱交換器は、アルミニウム合金からなるヘッダーパイプと扁平管とフィンを備え、これらヘッダーパイプと扁平管とフィンを含むアルミニウム合金部材のいずれかが先の何れかに記載の粉末ろう組成物の溶融凝固物であるフィレットにより接合されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フッ化物系フラックスと樹脂と溶剤を含むろう付け用フラックス組成物、および、Si粉末とフッ化物系フラックスと樹脂と溶剤を含む粉末ろう組成物において、溶剤が水または水溶性有機溶剤であって、酢酸ブチルの蒸発量に対する比蒸発量が60を超える溶剤1と比蒸発量が10〜60の溶剤2と比蒸発量が10以下の溶剤3を溶剤1:溶剤2:溶剤3=0〜20%、30〜70%、10〜60%の
配合質量割合とした。このため、塗膜の乾燥に要する時間を短縮でき、塗膜密着性に優れ、ろう付け後の高い接合率を得ることが可能な優れたろう付け用フラックス組成物および粉末ろう組成物を提供することができる。
【0018】
本発明では、乾燥に要する時間を短縮できるので、熱交換器を構成する扁平管やフィン、ヘッダーパイプなどのいずれかのアルミニウム合金部材にろう付け用として粉末ろう組成物からなる塗膜を形成する場合、高い生産効率で密着性に優れた塗膜を形成できる。
また、上述の粉末ろう組成物からなる塗膜を有する扁平管やフィン、ヘッダーパイプなどのアルミニウム合金部材をろう付け接合して熱交換とした場合、ろう付け部分の接合率の高い熱交換器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に示す実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は熱交換器のチューブを構成する扁平管(アルミニウム合金部材:扁平多穴管)1に対しその上面にろう付け用の塗膜2を形成し、扁平多穴管1に対し板状のフィン(アルミニウム合金部材)3を組み合わせた状態を示す部分断面図である。
図1に示す状態から、加熱炉などを用いて不活性(非酸化性)雰囲気中において580〜620℃程度の温度に1〜10分程度加熱して塗膜2を溶融させ、後に常温まで冷却して溶融物を凝固させることでろう付けを行うことができる。
ろう付け後の状態を
図2に示すが、塗膜2の溶融物が扁平管1とフィン3の境界部分に集まり、溶融物が凝固することによりフィレット4が生成され、このフィレット4により扁平管1にフィン3がろう付け接合されている。
【0021】
扁平管(扁平多穴管)1は、アルミニウム合金からなり、その厚さに対し幅の比率が大きい扁平形状のチューブであり、扁平管1の幅方向には複数(数個〜数10個)の冷媒通路1aが隔壁1bに仕切られた状態で隣接形成されている。この実施形態において冷媒通路1aは横断面矩形状に形成され、同じ形状の冷媒通路1aが26個形成されている。
【0022】
扁平管1を構成するアルミニウム合金は、熱交換器用の扁平管、チューブに適用されるアルミニウム合金であれば特に制限はない。一例として、質量%で、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜1.5%、Cu:0.1%未満を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金などからなる。扁平管1は、アルミニウム合金を押出し加工することによって作製されたものである。なお、扁平管1に形成される冷媒通路1aの数は1つ以上であれば任意の数で良いが、冷媒通路1aの数が複数形成されている構造が熱交換効率向上の面で好ましい。
なお、本明細書において添加元素の範囲を0.05〜1.0%のように「〜」を用いて表記した場合、特に注記しない限り、その上限と下限を含む範囲とする。よって、0.05〜1.0%は0.05%以上1.0%以下の範囲を意味する。
【0023】
以下、扁平管1を構成するアルミニウム合金に含まれる元素について説明する。
扁平管1に含まれるSiは強度向上効果を有する元素である。Mnは、扁平管1の耐食性を向上するとともに、機械的強度を向上させる元素である。また、Mnは、押出し成形時の押出性を向上する効果を有する。Mnは、ろうの流動性を抑制し、フィレットと扁平管表面の後述するZn濃度差を小さくする効果がある。Cuは、
扁平管1の耐食性に影響を与える元素であり、上述の範囲を選択することができる。
【0024】
フィン3はアルミニウム合金からなり、このアルミニウム合金は、熱交換器用フィンに適用される種類のアルミニウム合金であれば特に制限はない。この実施形態においてフィン3はL型に折曲され、折曲部3aを扁平管1の上面側に沿わせて複数のフィン3が扁平管1の上に整列配置されている。フィン3の上部3bはそれぞれ扁平管1の上面に対しほぼ直角向きに配置され、フィン3の上部3bどうしは互いに平行に所定の間隔をあけて隣接配置されている。
【0025】
フィン3を構成するアルミニウム合金は、熱交換器用フィンに用いられるアルミニウム合金の一般的なものを広く適用できるが、一例を挙げるならば、質量%で、Zn:0.3〜5.0%、Mn:0.5〜2.0%、Fe:1.0%以下、Si:1.5%以下を含有し、残部不可避不純物およびアルミニウムからなるアルミニウム合金などからなる。
フィン3は、上記組成を有するアルミニウム合金を常法により溶製し、熱間圧延工程、冷間圧延工程などを経て、目的の形状に加工される。なお、フィン3の製造方法は、特に限定されるものではなく、既知の製法を適宜採用することができる。
【0026】
フィン3にZnを含有させることによってフィン
3の電位を下げて、フィン3に犠牲防食効果を付与することができる。Mnはフィン3の強度を向上させ、耐食性も向上させることができる。フィン3にSiを含有させることによって、Mnとの化合物を形成し、強度向上効果を奏し得る。Feはフィン3の強度を向上させる作用を有する。
【0027】
本実施形態においてろう付け前の扁平管1の上面には、一例として、Si粉末:1〜5g/m
2、Zn含有フラックス(KZnF
3粉末等):3.0〜20g/m
2、樹脂:0.2〜8.3g/m
2、を含み、これらに溶剤を添加したろう付用塗膜2が形成されている。
【0028】
以下、粉末ろう組成物からなる塗膜2を構成する成分と各成分の塗布量について説明する。
<Si粉末>
Si粉末は、扁平管1を構成するAlと反応し、フィン3と扁平管1を接合するろうを形成するが、ろう付時にSi粉末が溶融してろう液となる。このろう液にZnフラックス中のZnが拡散し、扁平管1の表面に均一に広がる。液相であるろう液内でのZnの拡散速度は固相内の拡散速度より著しく大きいので、扁平管1の上面(塗布面)のZn濃度がほぼ均一となり、これにより扁平管1の上面に均一なZn溶融拡散層が形成され、扁平管1の耐食性を向上させることができる。
【0029】
「Si粉末塗布量:1〜5g/m
2」
Si粉末の塗布量が1g/m
2未満であると、ろう付性が低下する場合がある。一方、Si粉末の塗布量が5g/m
2を超えると、過剰なろう形成によりフィレットにZnが濃縮しやすくなり、未反応Si残渣が発生する場合があるとともに、扁平管1の腐食深さが大きくなり、フィンの分離を防止しようとする目的の効果が得られない場合がある。
このため、塗膜におけるSi粉末の含有量は1〜5g/m
2とすることが好ましい。ここで用いるSi粉末の粒径は、一例としてD(99)で15μm以下である。D(99)は小径粒側からの体積基準の積算粒度分布が99%となる径である。
【0030】
<Zn含有フラックス、非Zn含有フラックス>
Zn含有フラックスは、ろう付に際し、扁平管1の表面にZn溶融拡散層を形成し、耐孔食性を向上させる効果がある。また、Zn含有フラックスは、ろう付け時に
扁平管1およびフィン3の表面の酸化物を除去し、ろうの広がり、ぬれを促進してろう付性を向上させる作用を有する。このZn含有フラックスは、Znを含まないフラックスに比べ活性度が高いので、比較的微細なSi粉末を用いても良好なろう付け性が得られる。
【0031】
非Zn含有フラックスは、K
3AlF
6+KAlF
4なる組成のフラックスや、LiF、KF、CaF
2、AlF
3、K
2SiF
6等のフッ化物系に加えて、KCl、BaCl、NaCl等の塩化物系フラックスがある。市販されている商品(製品)では、例えば、フッ化物系フラックスあるいはフルオロアルミン酸カリウム系のフラックスがあり、4フッ化カリウムアルミニウムを主成分とするフラックスであり、添加物を加えた種々の組成が知られており、K
3AlF
6+KAlF
4なる組成のものや、Cs
(x)K
(y)F
(z)などを例示できる。また、他に、LiF、KF、CaF
2、AlF
3、K
2AlF
5・5H
2O等のフッ化物を添加したフッ化物系フラックスあるいはフルオロアルミン酸カリウム系のフラックスを用いることもできる。
上述のZn含有フラックスを用いるか、Zn含有フラックスに加えて非Zn含有フラックスを添加することでろう付け性向上に寄与することができる。
【0032】
「Zn含有フラックス塗布量:3.0〜20g/m
2」
Zn含有フラックスの塗布量が3.0g/m
2未満であると、Zn溶融拡散層の形成が不十分になる場合があり、扁平管の耐食性が低下する場合がある。一方、塗布量が20g/m
2を超えると、フィレットにおけるZn濃縮が顕著になり、フィレットの耐食性が低下して、フィン剥離を加速する場合がある。このため、Zn含有フラックスの塗布量を3.0〜20g/m
2とすることが望ましい。
Zn含有フラックスは、KZnF
3を主体として用いることが好ましいが、KZnF
3に、必要に応じて、K
1−3AlF
4−6、Cs
0.02K
1−2AlF
4−5、AlF
3、KF、K
2SiF
6などのZnを含有しないフラックスを混合した混合型のフラックスを用いても良い。
【0033】
「非Zn含有フラックス塗布量:1〜10g/m
2」
非Zn含有フラックス塗布量が1g/m
2未満であると、非Zn含有フラックスを添加した効果が得られず、非Zn含有フラックス塗布量が10g/m
2を超えると、ろうの流動性が過剰に向上する事によって想定以上のZnがフィレットに濃縮して、フィン剥離に繋がる場合がある。なお、良好なろう付け性を確保するためには、Zn含有フラックスが上述の量含まれていればよいので、非Zn含有フラックスは略しても良い。
【0034】
<樹脂および溶剤の混合物>
ろう付け用の塗膜2には、Si粉末、Zn含有フラックス、非Zn含有フラックスに加えて樹脂と溶剤が含まれている。
「樹脂の塗布量:0.2〜8.3g/m
2」
樹脂の塗布量が0.2g/m
2未満であると、塗膜硬度が低下し、加工性(耐塗膜剥離性)が低下する。一方、樹脂の塗布量が8.3g/m
2を超えると、ろう付け時に樹脂の残渣が多く残り、ろう付性が低下する場合がある。このため、樹脂の塗布量は、0.2〜8.3g/m
2とすることが好ましい。なお、樹脂および溶剤は、通常、ろう付の際の加熱により蒸散する。
【0035】
樹脂については、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルのいずれか1種又は2種以上を含む高分子材料であることが好ましい。
また、溶剤として水を含む場合は、
ろう付け用フラックス組成物または粉末ろう組成物中の
水の割合として、0.4〜2.5質量%程度であることが望ましく、更に、水を含めた溶剤は、30〜80質量%程度であることが望ましい。
【0036】
一方、溶剤について、酢酸ブチルの蒸発量に対する溶剤aの蒸発量の比を溶剤aの比蒸発量Q
aと定義した場合、以下の(1)式より求められる比蒸発量Q
aについて、Q
a>60の溶剤を溶剤1と定義し、60≧Q
a>10の溶剤を溶剤2と定義し、Q
a≦10の溶剤を溶剤3と定義することができる。そして、粉末ろう組成物中(乾燥前の塗膜中)の全溶剤100%とした場合、溶剤1〜3のそれぞれの
配合質量割合が、溶剤1:溶剤2:溶剤3=0〜20%:30〜70%:10〜60%の範囲であることが望ましい。
【0037】
Q
a=(P
a×√M
a)/(P
酢酸ブチル×√M
酢酸ブチル)×100…(1)式
ただし、(1)式において、Q
a:溶剤aの比蒸発量、P
a:溶剤aの飽和蒸気圧(20℃)、M
a:溶剤aの分子量、P
酢酸ブチル:酢酸ブチルの飽和蒸気圧(20℃)、M
酢酸ブチル:酢酸ブチルの分子量を意味する。
なお、本明細書において溶剤などの添加物の範囲を0〜20%のように「〜」を用いて表記した場合、特に注記しない限り、その上限と下限を含む範囲とする。よって、0〜20%は0%以上20%以下の範囲を意味する。
【0038】
また、これらの溶剤1〜3は、極性非プロトン性溶媒、極性プロトン性溶媒からなる水溶性を有する有機溶剤であることが好ましい。
また、これらの溶剤1〜3が、水、エーテル類、エステル類、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、エステル系グリコールエーテル類、一級アミン類、アミド類、アセトニトリル等からなる溶剤群であることが好ましい。
【0039】
前記溶剤1が、具体的には水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、tert−ブタノール、アセトニトリルからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤のいずれかであることが好ましい。
【0040】
前記溶剤2が、具体的には2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−ブタノール、ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルホルムアミドからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることが好ましい。
【0041】
前記溶剤3が、具体的にはジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ブトキシエタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチルラクトン、3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール、グリセリン、2−アミノエタノールからなる群より選ばれた1又は2種以上の溶剤であることが好ましい。
【0042】
Si粉末、Zn含有フラックス及び樹脂および溶剤あるいはこれらに非Zn含有フラックスを添加した粉末ろう組成物の塗布方法は、本発明において特に限定されるものではなく、スプレー法、シャワー法、フローコータ法、ロールコータ法、刷毛塗り法、浸漬法、静電塗布法などの適宜の方法によって行うことができる。また、粉末ろう組成物の塗布領域は、扁平管1の全表面としてもよく、また、扁平管1の一部表面または裏面とするものであってもよく、要は、少なくともフィン3をろう付するのに必要な扁平管1の領域に塗布されていればよい。
また、前記粉末ろう組成物に対しSi粉末を除いた成分、即ち、Zn含有フラックスと樹脂および溶剤あるいはこれらに非Zn含有フラックスを添加した成分に前記水又は溶剤を添加したものがろう付け用フラックス組成物となる。換言すると、フッ化物系フラックスと樹脂および溶剤を含み、溶剤が水または前記水溶性溶剤であるものをろう付け用フラックス組成物と称することができる。
【0043】
上述の溶剤1、2、3を上述の範囲で適量含んでいる塗膜2であるならば、塗膜2を乾燥させる場合に、乾燥速度を高くすることができる。
図3に、扁平管1に塗膜2を塗布するとともに、該塗膜2を乾燥させて巻き取る工程で用いる設備の一例を示す。
図3に示す工程では、扁平管1を巻き付けておくことができ、扁平管1を巻き出し可能な巻出ローラー6と、巻出ローラー6から巻き出された扁平管1の上面及び下面あるいは全面に粉末ろう組成物を塗布し、塗膜2を形成可能なコーター(ロールコーター)7と、乾燥炉8と、巻取ローラー9をこの順に設置した塗布乾燥設備5を利用することができる。乾燥炉8の内部には扁平管1を案内するためのガイドローラー8aを複数設けていることが好ましい。
【0044】
図3に示す工程では、まず、巻出ローラー6から巻き出した扁平管1の上面あるいは下面または全面にコーター7によって必要な厚さのろう付け組成物を塗布して塗膜2を形成する。
次に、未乾燥の塗膜付きの扁平管1を乾燥炉8に導入すると、乾燥炉8を通過する間に塗膜2を乾燥させることができ、扁平管1の塗布面に塗膜を固着することができる。
【0045】
この乾燥炉8の内部に導入した塗膜付きの扁平管1を10秒〜数10秒で通過する速度で移動させ、乾燥炉8を通過する間に塗膜2を乾燥させて、塗膜を固着する。乾燥炉8を通過させる場合、扁平管1の外表面温度を150℃程度まで上昇させ、溶剤の蒸散を促進しながら乾燥させることが好ましい。
乾燥炉8から引き出した乾燥塗膜付きの扁平管1を巻取ローラー9に巻き取り、収容することができる。
【0046】
本実施形態では上述のように、粉末ろう組成物中の全溶剤100%とした場合に、上述した溶剤1〜3のそれぞれの
配合質量割合が、溶剤1:溶剤2:溶剤3=0〜20%:30〜70%:10〜60%の範囲であるため、塗膜2を乾燥炉8において乾燥させた場合に溶剤の揮発速度が高く、乾燥を短時間で完了できる効果がある。このため、扁平管1にろう付け組成物の塗膜2を形成し、乾燥させて定着する場合の塗膜乾燥性に優れ、生産性に優れさせることができる。即ち、乾燥時間を短縮できるならば巻出ローラー6から乾燥炉8に扁平管1を送る場合の送り速度を向上できるので、生産性を向上できる。
【0047】
また、溶剤1〜3のそれぞれの
配合質量割合が、溶剤1:溶剤2:溶剤3=0〜20%:30〜70%:10〜60%の範囲である場合、乾燥後において扁平管1に対し、塗膜2の充分高い固着強度を得ることができる。このため、扁平管1に塗膜2を形成し乾燥させた後、扁平管1とフィン3と組み付ける場合、乾燥後の塗膜がフィン3によって擦られた場合であっても乾燥後の塗膜の剥離を生じ難い構造を提供できる。
【0048】
なお、この種のろう付け組成物として、Si粉末とZn含有フラックス、樹脂の合計49.3質量%、溶剤50.7質量%の組成比として、溶剤をIPA(イソプロピルアルコール)7.5質量%と水2.5質量%とソルフィット(株式会社クラレ、商品名)40.7質量%から構成することでろう付け組成物を得ることができる。
この組成比のろう付け組成物は、溶剤の主要部がソルフィット(株式会社クラレ、商品名)からなるが、この物質は沸点が174℃、酢酸ブチルに対する比蒸発量Q
aが5.4であり、上述の配合の溶剤よりも乾燥に要する時間が長い。溶剤として相対蒸発量において4〜10倍の差異がある。
従って上述の配合
質量割合の溶剤を用いるならば、上述の物質を用いたろう付け組成物より遙かに早く塗膜を乾燥させることができる。
【0049】
後述する実施例において詳述するが、例えば、
図3に示す乾燥炉8を用いて乾燥した場合、乾燥炉内での扁平管表面温度150℃程度に設定して対比すると以下のようになる。前記IPAを有する組成のろう付け組成物の乾燥時間5秒。上述の溶剤1:溶剤2:溶剤3の配合
質量割合としたろう付け組成物の乾燥時間2〜3秒となる。
【0050】
前記IPAを用いたろう付け組成物であっても上述の乾燥炉を用いて上述の条件で乾燥するならば、乾燥工程で不良を生じることはないが、乾燥炉を小型化したり、乾燥時の移動速度を上述より向上させると乾燥不良を引き起こすおそれが生じる。このため、上述した配合組成の溶剤1+溶剤2+溶剤3の溶剤を備えたろう付け組成物を用いるならば、乾燥速度の大幅な向上、あるいは、乾燥炉の小型化を実現できる。
【0051】
なお、
図1ではフィン3の折曲部3aを扁平管1の上部に接触させた構造を示したが、フィン3の構造の一例として、板状のフィンの一部にスリット状の切込部あるいは貫通孔を設け、切込部や貫通孔の内周縁にバーリング加工による折曲部を設け、この折曲部を介し扁平管1にフィンをろう付けする構造が知られている。
【0052】
この構造を採用した場合、扁平管1の上下両面に塗膜2を形成し、この扁平管1をフィン
3のスリット状の切込部あるいは貫通孔に挿通する必要がある。扁平管1を切込部あるいは貫通孔に挿通する場合、フィン
3の折曲部が塗膜2に接触して塗膜2を擦るので、扁平管1表面と裏面に形成する塗膜
2はフィン
3との接触時に剥離しないように固着強度が高いことが望ましい。
また、上述のように乾燥が早く、固着強度の高い塗膜2であるならば、フィンとの組み付け時に塗膜2の膜剥がれを生じ難く、均一な塗膜2となる。また、ろう付け時にZn含有フラックスからの均一なZn拡散を図ることができ、必要なZn拡散層を形成することで耐食性に優れた扁平管1を提供することができる。また、ろう付け部分の良好な接合率を得ることができる。
【0053】
このように構成した扁平管(アルミニウム合金部材)1とフィン(アルミニウム合金部材)とをヘッダーパイプ(アルミニウム合金部材)などにろう付け接合して熱交換器を構成することがある。
このように構成した熱交換器であるならば、ろう付け部分の接合率が高く、扁平管1が耐食性に優れているので、扁平管1に孔が生じ難く、腐食寿命の長い熱交換器を提供することができる。
このように先に説明した配合
質量割合の溶剤を用いたろう付け用の塗膜2は、熱交換器用アルミニウム合金部材である扁平管、フィン、ヘッダーパイプのろう付けに用いて好適であり、接合率の高いろう付けができる。
【0054】
「熱交換器」
図4は、本発明に係わる熱交換器の一例を示すものである。この熱交換器100は離間して平行に配置されたヘッダーパイプ11、12と、これらのヘッダーパイプ11、12の間に相互に間隔を保って平行に、かつ、ヘッダーパイプ11、12に対して直角に接合された複数の扁平管13と、各扁平管13に付設された波形のフィン14を主体として構成されている。ヘッダーパイプ11、12、扁平管13及びフィン14は、いずれもアルミニウム合金から構成されている。
【0055】
より詳細には、ヘッダーパイプ11、12の相対向する側面に複数のスリット16が各パイプの長さ方向に定間隔で形成され、これらヘッダーパイプ11、12の相対向するスリット16に扁平管13の端部を挿通してヘッダーパイプ11、12間に扁平管13が架設されている。また、ヘッダーパイプ11、12間に所定間隔で架設された複数の扁平管13、13の間に波形のフィン14が配置され、これらのフィン14が扁平管13の上面13A側あるいは下面13B側にろう付けされている。
【0056】
即ち、
図5に示す如く、ヘッダーパイプ11、12のスリット16に対し扁平管13の端部を挿通した部分においてろう材により第1のフィレット18が形成され、ヘッダーパイプ11、12に対し扁平管13がろう付されている。また、波形のフィン14において波の頂点の部分を隣接する扁平管13の上面または下面に対向させてそれらの間の部分に生成されたろう材により第2のフィレット19が形成され、扁平管13の上面側と下面側に波形のフィン14がろう付されている。
扁平管13は先の第1実施形態の扁平管1と同様に形成されたアルミニウム合金からなる扁平多穴管であり、その内部には複数の冷媒通路13Cが形成されている。
【0057】
本実施形態の熱交換器100は、後述する製造方法において詳述するように、ヘッダーパイプ11、12とそれらの間に架設された複数の扁平管13と複数のフィン14とを組み付けて
図6に示す如く熱交換器組立体101を形成し、これを加熱してろう付けすることにより製造されたものである。なお、ろう付け時の加熱によって扁平管13の上面13A側と下面13B側には
図5に示すZn溶融拡散層13Eが形成されている。
【0058】
ヘッダーパイプ11、12を構成するアルミニウム合金は、一般的な熱交換器用ヘッダーパイプに適用されるアルミニウム合金からなるが、例えば、Al−Mn系をベースとしたアルミニウム合金が好ましい。
例えば、Mn:0.05〜1.50%を含有することが好ましく、他の元素として、Cu:0.05〜0.8%、Zr:0.05〜0.15%を含有することができる。
扁平管13を構成するアルミニウム合金は第1実施形態の扁平管1を構成するアルミニウム合金と同等の合金を用いることができ、フィン14を構成するアルミニウム合金は第1実施形態のフィン3を構成するアルミニウム合金と同等の合金を用いることができる。
【0059】
以上説明したヘッダーパイプ11、12、扁平管13及びフィン14を主たる構成要素とする熱交換器100の製造方法について説明する。
図6は、フィン14との接合面に塗膜17を塗布した扁平管13を使用して、ヘッダーパイプ11、12、扁平管13及びフィン14を組み立てた状態を示す熱交換器組立体101の部分拡大図であって、加熱ろう付けする前の状態を示している。
図6に示す熱交換器組立体101において、扁平管13はその一端をヘッダーパイプ11に設けたスリット16に挿入されている。また、ヘッダーパイプ11、12の芯材11の表面側にろう材層23が設けられている。塗膜17は先の実施形態において説明した塗膜2と同等材料からなる塗膜である。ヘッダーパイプ11、12の外周面にはろう材層23が塗布形成されている。
【0060】
図6に示すように組み立てられたヘッダーパイプ11、12、扁平管13及びフィン14からなる熱交換器組立体101をろう材の融点以上の温度に加熱し、加熱後に冷却すると、ろう材層23、塗膜17が溶けた後に固化して
図5に示すようにヘッダーパイプ11と扁平管13、扁平管13とフィン14が各々ろう付け接合され、
図4、
図5に示す構造の熱交換器100が得られる。この時、ヘッダーパイプ11、12の内周面のろう材層23は溶融してスリット16近傍に流れ、第1のフィレット18を形成してヘッダーパイプ11、12と扁平管13とが接合される。
また、扁平管13の表裏面の塗膜17は溶融してAl−SiろうあるいはAl−Si−Znろうとなり、毛管力によりフィン14近傍に流れ、第2のフィレット19を形成して扁平管13とフィン14とがろう付け接合される。また、ヘッダーパイプ11、12の表面に設けられていたろう材層23はろう付け後に僅かに表面に残留する。
【0061】
扁平管13の上面と下面ではろう付けによってフラックス中のZnが拡散して扁平管13の表面側または下面側にZn溶融拡散層13Eが形成され、扁平管13の表面側または下面側でZnの拡散を受けている領域が扁平管13の肉厚方向の内部側(Znの拡散を受けていない領域)よりも卑になる。ここで、扁平管13の肉厚方向の内部側とは溶融拡散層13Eが形成されている扁平管13の表面側あるいは裏面側より扁平管13の肉厚方向に深い領域を示す。
【0062】
以上説明した熱交換器100は、扁平管13の上下両面に形成した塗膜17を利用し、ろう付けすることによって構成されている。
塗膜17は先の実施形態の塗膜2と同等材料からなるので、塗膜17を塗布して形成後乾燥させる場合に早期乾燥ができる特徴を有する。また、塗膜2と同等の塗膜17を用いることで、ろう付け部分の接合率の良好な熱交換器100を提供できる。
更に、均一塗布が可能な塗膜17を利用することでZnの均一拡散ができるので、均一なZn溶融拡散層13Eを得ることができ、均一な防食層を備えた耐食性に優れた熱交換器100を提供できる。
【0063】
図7は扁平管に塗膜を形成し、塗膜を乾燥させる一連の工程を実施する塗布乾燥設備の第2の例について示す説明図である。
図7に示す塗布乾燥設備30は
図3に示す塗布乾燥設備5に類似する構成であり、巻出ローラー6とコーター7と乾燥炉と巻取ローラー9を備えている点は同等構成である。
図7に示す塗布乾燥設備30において、乾燥炉31は先の実施形態の乾燥炉8と同じように加熱乾燥ができる装置であるが、その内部に入口側から出口側まで列をなす複数のガイドローラー31aが上下3段になるように設置され、ガイドローラー31aの各列の折り返し位置に反転ローラー31bが設けられている構成が異なる。
【0064】
図7に示す乾燥炉31は塗膜が形成された扁平管1を内部に導入してガイドローラ31aに沿って移動させ、扁平管1を3段になるように加熱炉内で反転移動させつつ往復搬送しながら乾燥することができる。
図7に示す設備において、通過する扁平管の表面温度を150℃程度まで昇温して塗膜を乾燥させることができる。
【0065】
図7に示す乾燥炉31を用いて塗膜を乾燥させる場合、3段設けた乾燥経路のうち、1番下の乾燥経路を通過する内に、塗膜を完全に乾燥させないと、2段目、3段目に塗膜が移動する際に反転ローラー31bの位置で塗膜に反転折り曲げ力が作用するので、乾燥塗膜に剥離やクラック、浮き上がりなどの欠陥を発生させるおそれがある。
この点において本実施形態では、先に説明したように乾燥の早い溶剤を用いているので、乾燥炉31を用いて高速乾燥させた場合であっても、1段目において塗膜を完全に乾燥できるので、塗膜にクラックや剥離、浮き上がりなどの欠陥部を生じることなく乾燥させることができる。
このため、乾燥炉31を用いた乾燥工程において従来より乾燥速度の向上を図ることができる。また、従来の塗膜生成、乾燥ラインより高速で塗膜の乾燥ができるようになる。
【実施例】
【0066】
以下、粉末ろう組成物からなる塗膜の実施例について説明するが、本発明に係る粉末ろう組成物は以下に説明する実施例に制限されるものではない。
後に詳述する組成比の粉末ろう組成物の塗膜を用いて以下に詳述する塗布安定性と塗膜乾燥性と塗膜密着性とフィン接合率について試験を行った。
粉末ろう組成物は、Si粉末:13.75質量%、Zn含有フラックス(KZnF
3粉末):30.25質量%、高分子材料としてアクリル樹脂:5質量%の含有量に固定し、残部;51質量%の溶剤について後記する表1〜表49、51、52に示す配合
質量割合で溶剤1+溶剤2+溶剤3を混合して用いた。
また、本実施例においては、粉末ろう組成物の塗膜を用いた上述の各種試験の他に、ろう付け用フラックス組成物としての塗布安定性と塗膜乾燥性と塗膜密着性についても試験を行った。また、そのろう付け用フラックス組成物に適用するろう材としてブレージングシートを組み合わせてろう付けした場合のフィン接合率についても試験した。それらの結果を表50、53、54に示す。
【0067】
「塗布安定性(膜厚/膜厚バラツキ)評価」
塗布安定性の評価について、幅:約50mm×長さ:約50mm×厚さ:0.1mmのアルミニウム合金の板材表面の片面に、粉末ろう組成物をバーコータ(No.16:JIS K5400参照)にて塗布し、大気中、乾燥炉にて塗膜を乾燥させた。乾燥炉は
図3に示す乾燥炉を用いた。
このようにして得られたアルミニウム合金板材の塗布前の重量をW
1[g]、乾燥後の重量をW
2[g]とし、粉末ろう付組成物の塗布面積をA[
m2]とした時、乾燥塗布重量Dを、式(W
2−W
1)/A [g/
m2]に基づいて算出した。それらの結果を後記する表1〜表51に示す。
【0068】
次に、粉末ろう組成物が塗布されたアルミニウム合金板材を、1種類の粉末ろう組成物について、n=5個(n:試料数)で作製し、各々乾燥塗布重量を算出した。このようにして得られた乾燥塗布重量より、平均値、最大値と最小値を求めた。
上記平均値、最大値と最小値より、平均値に対して、最大値及び最小値が±1.0g/
m2以下の範囲にある場合を「○」、±1.0g/
m2を超える範囲にある場合を「×」として塗布安定性を評価した。それらの結果を後記する表1〜表49、51、52に示す。
また、ろう付け用フラックス組成物としての塗布安定性と塗膜乾燥性と塗膜密着性についても試験するために、表50、53、54に示すようにZn含有フラックスとアクリル樹脂に加え、各種組成の溶剤1+溶剤2+溶剤3を加えてろう付け用フラックス組成物を作製した。
これらの試験には、フィン3を構成するアルミニウム合金板に、質量%でSi:10.0%を含有し、残部Al及び不可避不純物の組成を有するアルミニウム合金ろう材層(厚さ20μm)を貼り合わせたブレージングシートを用い、このブレージングシートでフィンを構成し、このフィンを用いて後述するろう付け試験を行った。
【0069】
「塗膜乾燥性評価」
塗膜乾燥性の評価については、幅:約50mm×長さ:約50mm×厚さ:0.1mmのアルミニウム合金板材表面の片面に、粉末ろう付組成物をバーコータ(No.16)にて塗布した後、A&D社製加熱乾燥式水分計MF−50を用いて、設定温度100℃にて加熱した時の、アルミニウム合金板材の重量の時間変化を測定した。
更に、塗布直後のアルミニウム合金板材の重量から、上記条件で加熱・乾燥した時に重量の時間変化が無くなった時のアルミニウム合金板材の重量を引いた値(相対乾燥重量)を100とした時に、塗布直後の相対乾燥重量を100とし、相対乾燥重量が5未満となった時間を乾燥時間とした。
上記乾燥時間より、80sec以下を「◎」、120sec以下を「○」、180sec以下を「△」とし、180secを超えた場合を「×」として塗膜乾燥性試験の評価とした。それらの結果を後記する表1〜表51に示す。
【0070】
「塗膜密着性評価」
塗膜密着性の評価については、幅:約50mm×長さ:約50mm×厚さ:0.1mmのアルミニウム合金板材表面の片面に、粉末ろう付組成物をバーコータ(No.16)にて塗布し、乾燥させた。
このようにして得られた、上記粉末ろう組成物の塗膜が形成されたアルミニウム合金板材を用いて、引っかき硬度(鉛筆法)(JIS−K−5600−5−4)に基づき、鉛筆硬度が、B以上を「○」、2B以下を「×」として塗膜密着性を評価した。それらの結果を後記する表1〜表51に示す。
【0071】
「フィン接合率の評価」
フィン接合率の評価については、幅:約15mm×長さ:約100mm×厚さ:約1.4mmのアルミニウム合金角材の上面と下面に、粉末ろう組成物をバーコータ(No.16)にて塗布し、乾燥させた。
更に、幅:約15mm×厚さ:0.1mmのアルミニウム合金板材を用いて、コルゲート加工した。上記、粉末ろう組成物の塗膜が形成されたアルミニウム合金の角材と、コルゲート加工されたアルミフィンとを、交互に重ねるようにして組み立てた後、ろう付け炉(不活性雰囲気)にて600℃、3分間保持して、ろう付を行った。
ろう付け用フラックス組成物を用いたフィン接合率の評価においては、前記アルミニウム合金角材にフラックス組成物を前記と同等の方法で塗布し乾燥させた。また、前記ろう材層を複合したブレージングシートをコルゲート加工したアルミニウムフィンを用いて前記と同等条件にてろう付けを行った。
【0072】
以上のようにして得られたろう付アルミ組立品について、次式によってフィン接合率を求めた。フィン接合率が95%以上を「○」、95%未満を「×」と評価した。それらの結果を後記する表1〜表49、51、52に示す。また、ブレージングシートを用いたフラックス組成物の試験については結果を後記する表50、53、54に示す。
式:フィン接合率(%)=(アルミフィンとアルミ角材の総ろう付長さ)/(アルミフィンとアルミ角材の総接触長さ)×100
上述の各試験に用いる粉末ろう組成物として以下の表1〜表51に示す各種配合組成の粉末ろう組成物を用いて各試験を行い、それらの結果を各表に示した。また、ブレージングシートを用いたフラックス組成物の試験についても各試験を行い、それらの結果を各表に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
【表11】
【0084】
【表12】
【0085】
【表13】
【0086】
【表14】
【0087】
【表15】
【0088】
【表16】
【0089】
【表17】
【0090】
【表18】
【0091】
【表19】
【0092】
【表20】
【0093】
【表21】
【0094】
【表22】
【0095】
【表23】
【0096】
【表24】
【0097】
【表25】
【0098】
【表26】
【0099】
【表27】
【0100】
【表28】
【0101】
【表29】
【0102】
【表30】
【0103】
【表31】
【0104】
【表32】
【0105】
【表33】
【0106】
【表34】
【0107】
【表35】
【0108】
【表36】
【0109】
【表37】
【0110】
【表38】
【0111】
【表39】
【0112】
【表40】
【0113】
【表41】
【0114】
【表42】
【0115】
【表43】
【0116】
【表44】
【0117】
【表45】
【0118】
【表46】
【0119】
【表47】
【0120】
【表48】
【0121】
【表49】
【0122】
【表50】
【0123】
【表51】
【0124】
【表52】
【0125】
【表53】
【0126】
【表54】
【0127】
表1〜表54は、各表に記載のように調整して得た実施例1〜実施例504の塗膜の各試験結果と比較例1〜40の試験結果を示す。
実施例1〜実施例410は、溶剤1として水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1,4−ジオキサン、tert−ブタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシエタン、アセトニトリルのうち、1種または2種を選択した。実施例411〜実施例492は溶剤1を含有していない塗膜組成とした。
【0128】
実施例1〜実施例492は、溶剤2として、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−ブタノール、ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルホルムアミドのうち、1種または2種を選択した。
【0129】
実施例1〜実施例492は、溶剤3として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ブトキシエタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチルラクトン、3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコール、グリセリン、2−アミノエタノールのうち、1種または2種を選択した。
【0130】
表1〜表5に示す実施例1〜実施例41は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が20:70:10の場合の粉末ろう組成物であり、表5〜表9に示す実施例42〜実施例82は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が10:70:20の場合の粉末ろう組成物である。
表9〜表13に示す実施例83〜実施例123は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が15:70:15の場合の粉末ろう組成物であり、表13〜表17に示す実施例124〜実施例164は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が20:60:20の場合の粉末ろう組成物である。
【0131】
表17〜表21に示す実施例165〜実施例205は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が20:50:30の場合の粉末ろう組成物であり、表21〜表25に示す実施例206〜実施例246は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が20:40:40の場合の粉末ろう組成物である。
表25〜表29に示す実施例247〜実施例287は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が20:30:50の場合の粉末ろう組成物であり、表29〜表33に示す実施例288〜実施例328は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が10:30:60の場合の粉末ろう組成物である。
【0132】
表33〜表37に示す実施例329〜実施例369は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が5:70:25の場合の粉末ろう組成物であり、表37〜表41に示す実施例370〜実施例410は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が5:35:60の場合の粉末ろう組成物である。
表42〜表46に示す実施例411〜実施例451は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が0:70:30の場合の粉末ろう組成物であり、表46〜表49に示す実施例452〜実施例492は、溶剤1:溶剤2:溶剤3の割合が0:40:60の場合の粉末ろう組成物である。
【0133】
表51に示す比較例1〜比較例10は、溶剤1の含有量が20質量%を超える例か、溶剤2の含有量が70質量%を超える例か、溶剤3の含有量が10質量%より少ない粉末ろう組成物である。
表52に示す比較例11〜比較例20は、溶剤2の含有量が30質量%より少ない例か、溶剤2の含有量が70質量%を超える例か、溶剤3の含有量が60質量%を超える粉末ろう組成物である。
【0134】
表1〜表49に記載の実施例1〜実施例492が示すように、溶剤1〜3のそれぞれの割合を、溶剤1:溶剤2:溶剤3=0〜20%:30〜70%:10〜60%の範囲とした粉末ろう組成物であるならば、(W
2−W
1)/A [g/
m2]の式により算出した乾燥塗布重量Dの値がn数=5個の場合の平均値で±1.0g/
m2の範囲内に収まって評価「○」となっており、塗布安定性に優れることが分かった。
【0135】
表1〜表17に記載の実施例1〜実施例164が示すように、溶剤1〜3のそれぞれの割合を、溶剤1:溶剤2:溶剤3=10〜20%:60〜70%:10〜20%の範囲とした粉末ろう組成物であるならば、塗膜乾燥性評価において「◎」の評価であり、特に優れた塗膜乾燥性を得ることができた。
【0136】
同様に、表33〜表37に記載の実施例329〜369が示すように、溶剤1:溶剤2:溶剤3=5%:70%:25%の範囲とした粉末ろう組成物であるならば、塗膜乾燥性評価において「◎」の評価であり、特に優れた塗膜乾燥性を得ることができた。
このことから、塗膜乾燥性については、溶剤1:溶剤2:溶剤3=5〜20%:60〜70%:10〜25%の範囲とした粉末ろう組成物であるならば、特に優れた塗膜乾燥性を得ることができることが分かった。
【0137】
表1〜表49に記載の実施例1〜実施例492が示すように、溶剤1〜3のそれぞれの割合を、溶剤1:溶剤2:溶剤3=0〜20%:30〜70%:10〜60%の範囲とした粉末ろう組成物であるならば、塗膜密着性に優れ、フィン接合率の高いろう付けが可能であることも分かった。
【0138】
これらの実施例に対し、表51、表52に示す比較例1〜20が示すように、溶剤1の含有量について20質量%を超える(比較例2、3、8〜10、11)と、塗膜の乾燥速度が速くなりすぎるため、塗布工程中において塗料の粘度が上昇し、塗布量のバラツキが大きくなることにより、塗布安定性が悪化することが分かった。
溶剤2の含有量について70質量%を超える(比較例1、4〜7、15、16、19)と、乾燥速度が速くなりすぎるため、塗布工程中での塗料の粘度が上昇し、塗布量のバラツキが大きくなり、塗布安定性が悪化するか、塗布安定性の悪化に加えて塗膜密着性も低下することが分かった。また、溶剤2の含有量について、30質量%未満(比較例11〜14)とすると塗膜乾燥性が悪化することから、十分に塗膜が乾燥されなくなり、塗膜密着性も低下することが分かった。
【0139】
溶剤3の含有量について、10質量%未満とする(比較例1、2)と膜表面で被膜を形成し、膜内部からの乾燥が妨げられることにより塗膜密着性が悪化することが分かった。比較例1、2はフィン接合率も悪化している。溶剤3の含有量について、60質量%を超える(比較例13,17、18、20)と乾燥速度が遅くなる結果、十分に膜が乾燥されないことにより、塗膜密着性が悪化することが分かった。比較例13、14、17、18、20はフィン接合率も悪化した。
以上の説明から、溶剤の配合については、溶剤1:溶剤2:溶剤3=0〜20%:30〜70%:10〜60%の範囲とすることにより、塗膜の塗布安定性に優れ、塗膜乾燥性に優れ、塗膜密着性に優れることが明らかとなった。
【0140】
また、表50に示す実施例493〜504は、Si粉末の代わりのろう材としてブレージングシートのろう材層を用い、ろう付け用フラックス組成物について塗布安定性、塗膜乾燥性、膜密着性を評価した結果を示す。また、これらのろう付け用フラックス組成物に加えブレージングシートのろう材層を適用してろう付けした場合のフィン接合率について評価した結果を示す。
表50に示す実施例493〜504の試料について溶剤1+溶剤2+溶剤3の配合量は、表1〜表49に示す試料のいずれかの配合量と同様に設定しているが、いずれの試料においても塗布安定性、塗膜乾燥性、膜密着性に優れていた。
【0141】
これらの試料に対し、表53、54に示す比較例21〜40の試料は、溶剤1:溶剤2:溶剤3=0〜20%:30〜70%:10〜60%の範囲から、溶剤1、溶剤2、溶剤3のいずれかが外れた試料である。
比較例21〜40の試料は、塗布安定性、塗膜乾燥性、膜密着性、フィン接合率のいずれかにおいて評価が悪化した。
以上のことから、ろう付け用フラックス組成物について塗布安定性、塗膜乾燥性、膜密着性を良好とし、ろう材と組み合わせて良好なフィン接合率を得るためには、溶剤1:溶剤2:溶剤3=0〜20%:30〜70%:10〜60%の範囲とすることが重要であることがわかった。