(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングを近づけると、前記挿抜補助突起が前記ばね片の間隔を押し広げた後に、前記接点部が前記相手端子と摺動して前記嵌合時の位置に至る、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の各要素における長さ方向X、幅方向Yおよび高さ方向Zは、図中に示すように定義する。本実施形態においては、高さ方向Zが鉛直方向と一致し、長さ方向Xおよび幅方向Yが水平方向と一致するように、電気コネクタ1が配置される。
【0013】
[電気コネクタ1]
本実施形態の電気コネクタ1は、例えば、高電圧大電流の電気回路に使用されるヒューズ部材を交換可能に収容する。電気コネクタ1は、
図2に示すように、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60を備える。レバーアセンブリ10は、キャップアセンブリ60に嵌合可能に形成されている。
【0014】
レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60の嵌合は、以下のように行われる。
まず、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60を
図1(a)に示す嵌合前の状態に組付ける。そして、レバーアセンブリ10に設けられる後述のレバー50を
図1(b)に示す位置まで倒す。これにより、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60の嵌合が完了する。逆に、
図1(b)の位置からレバー50を
図1(a)の位置まで起こすと、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60の嵌合が解除される。
【0015】
また、
図1(b)に示す嵌合位置からレバー50を水平方向に摺動させると、
図1(c)に示す回路作動位置に移動する。嵌合位置においては、図示しないインターロックスイッチがオフであり、電気回路は遮断されている。一方、回路作動位置においては、インターロックスイッチがオンになることで電気回路が通電状態になる。
【0016】
[レバーアセンブリ10]
レバーアセンブリ10は、
図2(a),
図3に示すように、アウターハウジング20と、カバー30と、ヒューズ部材40と、レバー50とを備える。アウターハウジング20は、第1ハウジングの一例である。
アウターハウジング20は、電気絶縁性の樹脂材料を射出成形することにより一体的に形成される。カバー30、レバー50も、アウターハウジング20と同様である。
【0017】
[アウターハウジング20]
アウターハウジング20は、
図3に示すように、高さ方向Zの両側(
図3の上下両側)が開口し、上下の開口23,24の間に第1収容室21を備える。第1収容室21には、電気回路に接続されるヒューズ部材40が収容される。また、アウターハウジング20の上面側にはカバー30が取り付けられ、
図2(a)に示すように、上側の開口23はカバー30で覆われる。アウターハウジング20においては、高さ方向Zの下側の開口24が間口側となる。
【0018】
レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60が嵌合されると、第1収容室21は、キャップアセンブリ60に設けられた後述の第2収容室71と重複する。したがって、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60の嵌合状態において、ヒューズ部材40は、内外で重複する第1収容室21と第2収容室71に収容される。
【0019】
図5(a)に示すように、アウターハウジング20は、幅方向Yの両側に、レバー50の側体51A,51Bがそれぞれ回転可能に支持される一対の回転軸25,25を備えている。
【0020】
また、
図5(a)に示すように、アウターハウジング20の第1収容室21には、幅方向Yに沿って延びる2つの第1の仕切壁26A,26Bが設けられている。第1の仕切壁26A,26Bには、後述の可溶体41を受けるスリット26Cが、それぞれ高さ方向Zに沿って形成されている。
【0021】
第1収容室21において、第1の仕切壁26Aで仕切られた
図5(a)中右側の空間21Aには、ヒューズバスバー42およびクリップスプリング80A(
図6参照)が収容される。同様に、第1収容室21において、第1の仕切壁26Bで仕切られた
図5(a)中左側の空間21Bには、ヒューズバスバー42およびクリップスプリング80B(
図6参照)が収容される。
【0022】
図5(a)に示すように、第1の仕切壁26Aで仕切られた空間21Aには、長さ方向Xに沿って延びる第2の仕切壁27Aが設けられている。同様に、
図5(a)に示すように、第1の仕切壁26Bで仕切られた空間21Bには、長さ方向Xに沿って延びる第2の仕切壁27Bが設けられている。
【0023】
第2の仕切壁27A,27Bは、幅方向Yにおいてヒューズバスバー42,42の配置される位置にそれぞれ形成されており、ヒューズバスバー42,42を受ける。
【0024】
図5(b)に示すように、第2の仕切壁27A,27Bは、アウターハウジング20の下側の開口24から高さ方向Zに沿ってアウターハウジング20の途中の位置まで形成されている。そして、第2の仕切壁27A,27Bの図中上側の部分は、中央が下に凸となる段差状の切り欠き部27Cを有している。この切り欠き部27Cの形状は、ヒューズバスバー42の形状に対応している。
【0025】
図5(a),(b)に示すように、第2の仕切壁27A,27Bの切り欠き部27Cの近傍には、後述の支持ばね81を押し広げるための4つの挿抜補助突起28A,28B,28B,28Aがそれぞれ設けられている。挿抜補助突起28A,28Bは、
図5(a)に示すように、第2の仕切壁27A,27Bの両面にそれぞれ形成されている。
【0026】
第2の仕切壁27A,27Bのそれぞれにおいて、隣り合う挿抜補助突起28A,28Bとの長さ方向Xの間隔は、いずれも等間隔である。第2の仕切壁27A,27Bのそれぞれにおいて、中央の2つの挿抜補助突起28B,28Bは、切り欠き部27Cのくぼんだ部分の両側に臨む。
図5(b),(c)に示すように、中央の2つの挿抜補助突起28Bは、両端部に位置する2つの挿抜補助突起28Aよりも高さ方向Zにおいて図中下側に位置している。挿抜補助突起28Aと挿抜補助突起28Bの高さ方向Zの位置は、ヒューズバスバー42の後述する第1接点部42Aおよび第2接点部42Bの高さ方向Zの位置に対応してずれている。
【0027】
また、
図5(c)に示すように、各々の挿抜補助突起28A,28Bは、第2の仕切壁27Bの壁面から幅方向Yに突出し、高さ方向Zに細長い形状である。
図5(c)は、第2の仕切壁27Bの挿抜補助突起28A,28Bを示すが、第2の仕切壁27Aの挿抜補助突起の構成も
図5(c)と同様である。
【0028】
[ヒューズ部材40]
ヒューズ部材40は、過大な電流が流れると溶断するように構成され、ヒューズ部材40に接続される電気回路を保護する。
ヒューズ部材40は、
図3に示すように、平板状の可溶体41と、可溶体41の両端にそれぞれ接続される平板状のヒューズバスバー42,42と、を備えている。ヒューズバスバー42,42は相手端子の一例である。
【0029】
各々のヒューズバスバー42,42の形状は同じであり、いずれも導電性を有する金属材料、例えば銅合金からなる板材を打抜き加工した後、金や錫などの導電性金属でめっき処理を施すことで作製される。
【0030】
一方のヒューズバスバー42は可溶体41の表面に取り付けられ、他方のヒューズバスバー42は可溶体41の裏面に取り付けられている。可溶体41の高さ方向Zにおいて、2つのヒューズバスバー42,42を取り付ける位置はいずれも同じである。
【0031】
ヒューズバスバー42,42は、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60の嵌合状態において、
図3に示す下側の部分が後述するクリップスプリング80A,80Bに支持される。これにより、ヒューズバスバー42において
図3に示す下側の部分は、クリップスプリング80A,80Bとの接点部として機能する。このヒューズバスバー42の接点部の中央には、
図3の下側に突出する矩形の第2接点部42Bが形成されている。そして、第2接点部42Bの両側には、第2接点部42Bとは高さ方向Zに異なる位置にある第1接点部42Aが形成されている。
【0032】
[レバー50]
レバー50は、外力により操作される部材であって、アウターハウジング20に対して回転および摺動可能に取り付けられている。レバー50は、回転軸25,25を中心にして、
図1(a)に示される嵌合解除位置と、
図1(b)に示される嵌合位置との間を移動できるように構成されている。また、レバー50は、
図1(b)に示される嵌合位置と
図1(c)に示される回路作動位置との間を水平方向に摺動できるように構成されている。
【0033】
レバー50は、
図3に示すように、互いに平行に延びる一対の側体51A,51Bと、一対の側体51A,51Bを互いに連結する連結体52と、を備える。一対の側体51A,51Bの一端側はアウターハウジング20に回転可能に支持される。一対の側体51A,51Bの他端は、連結体52によって連結される。
側体51A,51Bのそれぞれには、アウターハウジング20の回転軸25,25が挿入される軸受孔53,53が設けられている。
【0034】
また、側体51A,51Bのそれぞれには、後述のカム突起73が挿入されるカム溝55が形成されている。
レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60を嵌合させるときには、レバー50を嵌合解除位置から回転させて水平に倒すことで嵌合位置にする。この動作のときに、カム溝55をカム突起73が移動し、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60は相互に嵌合される。
【0035】
[キャップアセンブリ60]
キャップアセンブリ60は、
図2(b),
図6に示すように、キャップハウジング70と、一対のクリップスプリング80A,80Bとを備えている。キャップハウジング70は、第2ハウジングの一例である。
【0036】
[キャップハウジング70]
キャップハウジング70は、電気絶縁性の樹脂材料を射出成形することにより一体的に形成される。キャップハウジング70は、
図2(b),
図6に示すように、高さ方向Zの一方の側(
図6の上側)が開口する第2収容室71を備える。キャップハウジング70において、高さ方向Zの他方の側(
図6の下側)は、図示しない底床が取り付けられる。また、第2収容室71の内部には、ヒューズ部材40と電気的に接続されるクリップスプリング80A,80Bが収容される。
【0037】
レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60が嵌合されると、ヒューズ部材40のヒューズバスバー42,42がそれぞれクリップスプリング80A,80Bの支持ばね81,81に挿入される。これにより、ヒューズ部材40とクリップスプリング80A,80Bが電気的に接続される。このとき、重複するアウターハウジング20の第1収容室21とキャップハウジング70の第2収容室71に、ヒューズ部材40およびクリップスプリング80A,80Bが収容された状態になる。
【0038】
また、キャップハウジング70の幅方向Yの両側には、レバー50のカム溝55に挿入されるカム突起73,73が形成されている。
【0039】
[クリップスプリング80A,80B]
クリップスプリング80A,80Bは、
図6に示すように、ヒューズ部材40のヒューズバスバー42と電気的に接続されるコンタクト部材である。クリップスプリング80A,80Bは、いずれも導電性および弾性を有する金属材料、例えば銅合金からなる板材を打抜き加工した後、折り曲げ加工することで作製される。
【0040】
クリップスプリング80A,80Bは、ヒューズ部材40のヒューズバスバー42と電気的に接続される支持ばね81と、支持ばね81を支持する平板状の支持体82と、をそれぞれ備えている。クリップスプリング80A,80Bの支持体82,82は、それぞれ電気回路の図示しない接点に接続される。また、クリップスプリング80A,80Bをキャップハウジング70に組付けると、支持ばね81,81は、図示しない底床を貫通して第2収容室71の内部に突出する。
【0041】
ここで、クリップスプリング80A,80Bは、支持体82の形状が異なる点を除いてその構成は同一である。そのため、以下の説明においては、クリップスプリング80Aの構成を説明し、クリップスプリング80Bの説明は省略する。
【0042】
クリップスプリング80Aの支持ばね81は、
図6および
図7に示すように、背の高い二対の第1ばね片83,83と、背の低い一対の第2ばね片84,84の組み合わせで構成される。このように、第1ばね片83と第2ばね片84は、高さ方向Zの長さが異なっている。各対の第1ばね片83,83は、幅方向Yに対向して設けられている。同様に、各対の第2ばね片84,84は、いずれも幅方向Yに対向して設けられている。
【0043】
支持ばね81の長さ方向Xにおいて、第2ばね片84は、微小な隙間を隔てて第1ばね片83,83の間に配置されている。ヒューズバスバー42が支持ばね81に挿入されるときに、第2ばね片84は、ヒューズバスバー42の第2接点部42Bと接触する。ヒューズバスバー42が支持ばね81に挿入されるときに、第1ばね片83,83は、ヒューズバスバー42の第1接点部42A,42Aとそれぞれ接触する。
【0044】
第1ばね片83および第2ばね片84は、いずれも先端部83A,84Aが支持ばね81の外側に向けて折り返されている。また、
図7(c),
図8に示すように、第1ばね片83および第2ばね片84の屈曲部83B,84Bには、それぞれ対向するばね片から内向きに突出する接点部83C,84Cが形成されている。
【0045】
接点部83C,84Cは、それぞれ第1ばね片83および第2ばね片84の高さ方向Zに沿って延びている。第1ばね片83の接点部83Cは、長さ方向Xにおいて第1ばね片83の中央よりも第2ばね片84側に偏った位置に配置されている。また、第2ばね片84の接点部84Cは、長さ方向Xにおいて第2ばね片84の中央に配置されている。
【0046】
ヒューズバスバー42が支持ばね81に挿入されるときには、ヒューズバスバー42を受ける第2の仕切壁27A,27Bが、ヒューズバスバー42に先立って支持ばね81の間に挿入される。
【0047】
図8において、電気コネクタ1を嵌合解除位置から嵌合位置まで移動させたときの挿抜補助突起28A,28Bが移動する範囲29をそれぞれ破線で示す。両側の第1ばね片83の接点部83Cは、長さ方向Xにおいて挿抜補助突起28A,28Bの間に配置される。また、中央の第2ばね片84の接点部84Cは、長さ方向Xにおいて挿抜補助突起28B,28Bの間に配置される。つまり、接点部83C,84Cは、いずれも長さ方向Xにおいて挿抜補助突起28A,28Bとずれた位置に配置されている。
第2の仕切壁27Aが支持ばね81の間に挿入されると、2つの第1ばね片83の接点部83Cは、いずれも挿抜補助突起28A,28Bの間を通過する。また、第2の仕切壁27Aが支持ばね81の間に挿入されると、第2ばね片84の接点部84Cは、挿抜補助突起28B,28Bの間を通過する。
【0048】
[電気コネクタ1の動作]
次に、
図1,
図9−
図12を参照しつつ、本実施形態の電気コネクタ1を、嵌合解除位置から嵌合位置に変化させるときの動作を説明する。この動作は、電気回路にヒューズ部材40を取り付けるときに行われる。
【0049】
ここで、
図9,
図10は、嵌合解除位置から嵌合位置までのヒューズバスバー42とクリップスプリング80Aの係合状態の変化を斜視図で示している。
図11,
図12は、
図9,
図10に対応する側面図である。
【0050】
図9〜
図12はクリップスプリング80Aの係合状態を示すが、クリップスプリング80Bの係合状態も同様である。そのため、以下においては、クリップスプリング80Aの係合状態を説明し、クリップスプリング80Bの係合状態に関する重複説明は省略する。
【0051】
嵌合解除位置においては、
図1(a)に示すように、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60が嵌合前の状態で組付けられている。このとき、レバー50は高さ方向Zに沿って起き上がった状態にある。嵌合解除位置のカム突起73は、カム溝55の一端に位置している。
【0052】
レバーアセンブリ10の内部において、ヒューズ部材40はアウターハウジング20に保持されている。このとき、可溶体41は、第1の仕切壁26A,26Bのスリット26Cに挿入される。また、ヒューズバスバー42,42は、第1接点部42Aおよび第2接点部42Bが第2の仕切壁27A,27Bの切り欠き部27Cに当接するようにそれぞれ配置される。
【0053】
嵌合解除位置においては、
図9(a),
図11(a)に示すように、第2の仕切壁27Aがクリップスプリング80Aの支持ばね81の間に挿入されている。このとき、挿抜補助突起28Aは第1ばね片83よりも図中上側に位置している。
図9(a)、
図11(a)に挿抜補助突起28Bは図示されていないが、挿抜補助突起28Bと第2ばね片84の位置関係は、挿抜補助突起28Aと第1ばね片83の場合と同様である。
【0054】
このように、嵌合解除位置においては、第2の仕切壁27A,27Bの挿抜補助突起28A,28Bは、ヒューズバスバー42,42よりもアウターハウジング20の間口(開口24)側に配置されている。また、挿抜補助突起28A,28Bは、第1ばね片83および第2ばね片84とは接触していない。
【0055】
レバー50を嵌合解除位置から回転させると、カム溝55を移動するカム突起73によって、回転運動がレバーアセンブリ10の下側への直進運動に変換される。これにより、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60が嵌合方向である高さ方向Zに相対的に近づくように移動する。
【0056】
そして、レバー50を嵌合解除位置から水平に倒れるまで回転させると、電気コネクタ1は、
図1(b)に示す嵌合位置に移動する。なお、嵌合位置のカム突起73は、カム溝55の中間に位置している。
【0057】
上記のレバー50の回転により、ヒューズバスバー42とクリップスプリング80Aの係合状態は、
図9(a),
図11(a)に示す嵌合解除位置の状態から以下のように変化する。
【0058】
まず、嵌合解除位置からレバー50を回転させると、
図9(a),
図11(a)に示す状態から
図9(b),
図11(b)に示す状態に変化する。
図9(b),
図11(b)においては、キャップハウジング70に対してアウターハウジング20が図中下側に移動し、嵌合解除位置よりも第2の仕切壁27Aが支持ばね81の間にさらに深く挿入される。
【0059】
この過程において、支持ばね81の長さ方向Xに配置される二対の第1ばね片83,83は挿抜補助突起28A,28Aとそれぞれ接触する。アウターハウジング20が図中下側に移動すると、幅方向Yに対向する第1ばね片83の間に挿抜補助突起28Aが挿入されて第1ばね片83が弾性変形する。以上のようにして、幅方向Yに対向する第1ばね片83の間隔は挿抜補助突起28Aによって押し広げられる。
【0060】
また、挿抜補助突起28Aと第1ばね片83の接点部83Cの位置は長さ方向Xにずれている。そのため、第2の仕切壁27Aが支持ばね81に対して高さ方向Zに相対移動しても、接点部83Cは挿抜補助突起28Aとは干渉しない。
【0061】
図9(b)、
図11(b)に挿抜補助突起28Bは図示されていないが、挿抜補助突起28Bと第2ばね片84の位置関係は、挿抜補助突起28Aと第1ばね片83の場合と同様である。
つまり、嵌合解除位置よりも第2の仕切壁27Aが支持ばね81の間に挿入されると、一対の第2ばね片84は挿抜補助突起28B,28Bと接触する。アウターハウジング20が図中下側に移動すると、幅方向Yに対向する第2ばね片84の間に挿抜補助突起28B,28Bが挿入されて第2ばね片84が弾性変形する。以上のようにして、幅方向Yに対向する第2ばね片84の間隔は挿抜補助突起28B,28Bによって押し広げられる。
【0062】
また、挿抜補助突起28Bと第2ばね片84の接点部84Cの位置は長さ方向Xにずれている。そのため、第2の仕切壁27Aが支持ばね81に対して高さ方向Zに相対移動しても、接点部84Cは挿抜補助突起28Bとは干渉しない。
【0063】
ここで、第2ばね片84は、背の高い第1ばね片83と比べて高さ方向Zに短いので弾性変形しにくい。そのため、第1ばね片83は1つの挿抜補助突起28Aで支持されるのに対し、第2ばね片84は2つの挿抜補助突起28B,28Bによって両側から支持される。これにより、第2ばね片84の変形が容易となるので、第1ばね片83を変形させるのに必要な力で、第2ばね片84を十分に変形させることができる。
【0064】
図9(b),
図11(b)に示す状態からレバー50をさらに回転させると、
図10(a),
図12(a)に示す状態に変化する。
図10(a),
図12(a)においては、
図9(b),
図11(b)に示す状態よりも第2の仕切壁27Aが支持ばね81の間にさらに深く挿入される。
【0065】
これにより、第1ばね片83は接点部83C以外の部分が挿抜補助突起28Aを摺動し、第1ばね片83の屈曲部83Bは挿抜補助突起28Aを乗り越える。挿抜補助突起28Aを乗り越えると、第1ばね片83は閉じる。そうすると、第1ばね片83において内側に突出する接点部83Cが、ヒューズバスバー42の第1接点部42Aと接触する。
【0066】
図10(a)、
図12(a)に挿抜補助突起28Bは図示されていないが、挿抜補助突起28Bと第2ばね片84の位置関係は、挿抜補助突起28Aと第1ばね片83の場合と同様である。
つまり、第2の仕切壁27Aが支持ばね81の間にさらに挿入されると、第2ばね片84は接点部84C以外の部分が挿抜補助突起28Bを摺動し、第2ばね片84の屈曲部84Bは挿抜補助突起28Bを乗り越える。挿抜補助突起28Bを乗り越えると、第2ばね片84は閉じる。そうすると、第2ばね片84において内側に突出する接点部84Cが、ヒューズバスバー42の第2接点部42Bと接触する。
【0067】
そして、
図10(a),
図12(a)に示す状態からレバー50をさらに回転させると、
図10(b),
図12(b)に示す嵌合位置の状態に至る。
図10(b),
図12(b)においては、
図10(a),
図12(a)に示す状態よりも第2の仕切壁27Aが支持ばね81の間にさらに深く挿入される。
【0068】
これにより、第1接点部42Aと第1ばね片83の接点部83Cが嵌合方向に摺動する。そうすると、第1接点部42Aに付着しうる接触表面上の絶縁物質を拭い取るワイピング動作が行われる。絶縁物質は、例えば、端子の酸化被膜やゴミである。
【0069】
図10(b)、
図12(b)に挿抜補助突起28Bは図示されていないが、挿抜補助突起28Bと第2ばね片84の位置関係は、挿抜補助突起28Aと第1ばね片83の場合と同様である。
つまり、第2の仕切壁27Aが支持ばね81の間にさらに挿入されると、第2接点部42Bと第2ばね片84の接点部84Cが嵌合方向に摺動する。そうすると、第2接点部42Bに付着しうる接触表面上の絶縁物質を拭い取るワイピング動作が行われる。
【0070】
以上のようにして、ヒューズバスバー42の第1接点部42Aが第1ばね片83の接点部83Cと接触し、ヒューズバスバー42の第2接点部42Bが第2ばね片84の接点部84Cと接触する。嵌合位置においては、ヒューズバスバー42の接触表面からは絶縁物質が拭い取られた状態で、ヒューズ部材40とクリップスプリング80Aの電気的接触が確立する。
【0071】
また、嵌合位置においては、
図12(b)に示すように、第1ばね片83でヒューズバスバー42を支持する位置と、第2ばね片84でヒューズバスバー42を支持する位置が高さ方向Zで異なっている。これにより、ヒューズバスバー42が高さ方向Zの複数点で支持ばね81に支持されるので、嵌合位置のヒューズ部材40が幅方向Yへの振れに強くなって安定しやすくなる。
【0072】
この嵌合位置の状態から、レバー50を水平方向に摺動させると、
図1(c)に示す回路作動位置に変化する。回路作動位置のカム突起73は、カム溝55の他端に位置している。回路作動位置においては、ヒューズバスバー42と支持ばね81の係合状態は変化せず、ヒューズ部材40とクリップスプリング80A,80Bを含む電気回路が通電状態になる。
なお、電気コネクタ1からヒューズ部材40を取り外すときには、上記の嵌合解除位置から嵌合位置までの動作を逆に行えばよい。この場合の動作の説明は省略する。
【0073】
[本実施形態の効果]
以下、本実施形態の電気コネクタ1が奏する効果を説明する。
(1) 本実施形態においては、レバーアセンブリ10とキャップアセンブリ60が嵌合するときに、第2の仕切壁27A,27Bが、ヒューズバスバー42に先立って支持ばね81の間に挿入される。第2の仕切壁27A,27Bには、挿抜補助突起28A,28Bが両面に設けられている。
【0074】
挿抜補助突起28A,28Bの位置は、長さ方向Xにおいて接点部83C,84Cの位置といずれもずれている。支持ばね81の第1ばね片83および第2ばね片84は、接点部83C,84C以外の部分が挿抜補助突起28A,28Bと接触する。この接触によって、支持ばね81の幅方向Yの間隔が弾性変形で押し広げられる。
第1ばね片83および第2ばね片84が挿抜補助突起28A,28Bを乗り越えると、第1ばね片83および第2ばね片84は閉じる。その後、レバーアセンブリ10がキャップアセンブリ60に対して嵌合方向に移動すると、接点部83C,84Cがヒューズバスバー42の表面を摺動する。
【0075】
挿抜補助突起28A,28Bは、嵌合方向において、嵌合時の接点部83C,84Cの位置よりも嵌合の始点側にずれた位置にそれぞれ配置される。嵌合時には、嵌合時の接点部83C,84Cよりも始点側に位置する挿抜補助突起28A,28Bを乗り越えた後に、ヒューズバスバー42と接点部83C,84Cが摺動する(
図10(b),
図12(b))。嵌合の始点側からヒューズバスバー42と接点部83C,84Cが摺動する構成と比べると、本実施形態によれば、ヒューズバスバー42と接点部83C,84Cの摺動する区間が短くなる。
【0076】
ヒューズバスバー42と接点部83C,84Cの摺動する区間が短くなると、ヒューズバスバー42の表面に施されためっきが接点部83C,84Cとの摺動で傷つくおそれも少なくなる。
以上のようにして、本実施形態によれば、嵌合時におけるヒューズバスバー42と接点部83C,84Cの接触による摩耗を低減できる。
【0077】
ヒューズバスバー42の摩耗が低減すると、ヒューズバスバー42と支持ばね81における挿抜の耐用回数が増加する。これにより、電気コネクタ1において部品の交換頻度が低下するので、電気コネクタ1の運用コストも低減される。
【0078】
(2) 本実施形態においては、支持ばね81が挿抜補助突起28A,28Bを乗り越えた後に、接点部83C,84Cがヒューズバスバー42の表面を摺動する。これにより、ヒューズバスバー42の表面から絶縁物質を拭い取るワイピング動作が、支持ばね81が挿抜補助突起28A,28Bと摺動する区間を除いた最小限の範囲で行われる。
本実施形態によれば、コンタクトを相手端子に対して摺動せずに接触させる特許文献1の構成と比べると、ヒューズバスバー42と支持ばね81の間で絶縁物質による接触不良のおそれが低減する。
【0079】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択することや、他の構成に適宜変更することが可能である。
【0080】
本発明は、挿抜補助突起28A,28Bをアウターハウジング20に設ける構成に限定されるものではない。例えば、支持ばね側に挿抜補助突起を設けてもよい。そして、支持ばねを受ける相手端子において嵌合時の接点部の位置よりも手前に挿抜補助突起を収容する凹部を設けてもよい。この変形例の構成においても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
この変形例の場合、挿抜補助突起は、支持ばねに曲げ加工またはプレス加工を施して支持ばねと一体に形成してもよい。あるいは、挿抜補助突起の部品を接着等によって支持ばねに後付けで固定してもよい。
【0081】
本発明の電気コネクタは、レバー50の操作を介して2つのハウジングを嵌合させる構成には限定されない。例えば、一方のハウジングに他方のハウジングを直接差し込んで接続する電気コネクタに本発明を適用してもよい。
【0082】
また、本発明において、支持ばね81の形状や、挿抜補助突起28A,28Bの配置は上記実施形態の構成に限定されない。
例えば、支持ばね81の支持片を一対のみにしてもよい。あるいは、支持ばね81の支持片を二対または四対以上にしてもよい。また、支持ばね81の支持片を複数対設けるときに、支持片の背の高さを高さ方向Yにおいて揃えてもよい。
【0083】
また、支持ばね81の第2ばね片84を1つの挿抜補助突起28Bで支持するようにしてもよい。このとき、第2ばね片84を支持する挿抜補助突起28BのX方向の幅を、第1ばね片83を支持する挿抜補助突起28AのX方向の幅より広くすることが好ましい。挿抜補助突起28Aよりも挿抜補助突起28BのX方向の幅を広くすると、背の高い第1ばね片83と比べて高さ方向Zに短い第2ばね片84の変形が容易となる。そのため、第2ばね片84を2つの挿抜補助突起28Bで支持する場合と同様に、第1ばね片83を変形させるのに必要な力で、第2ばね片84を十分に変形させることができる。