特許第6771009号(P6771009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771009
(24)【登録日】2020年9月30日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】共鳴励起下のキュービットの磁束制御
(51)【国際特許分類】
   H01L 39/22 20060101AFI20201012BHJP
   G06N 99/00 20190101ALI20201012BHJP
   B82Y 10/00 20110101ALI20201012BHJP
【FI】
   H01L39/22 K
   G06N99/00
   B82Y10/00ZAA
   H01L39/22 C
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-187270(P2018-187270)
(22)【出願日】2018年10月2日
(62)【分割の表示】特願2017-540149(P2017-540149)の分割
【原出願日】2016年2月4日
(65)【公開番号】特開2019-47126(P2019-47126A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】14/616,473
(32)【優先日】2015年2月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503178185
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NORTHROP GRUMMAN SYSTEMS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】メドフォード、ジェームズ アール.
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−165812(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0118024(US,A1)
【文献】 特開2012−064622(JP,A)
【文献】 特表2016−500886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 39/22
B82Y 10/00
G06N 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キュービットのY回転を実行するための方法であって、前記キュービットは、連続マイクロ波トーンに応答して前記キュービット内にラビ振動を生成し、前記キュービットのエネルギースペクトルの一部が印加された磁束に応答的であるように構成されている、方法において、
連続マイクロ波トーンを前記キュービットに供給するステップと、
所定の時間の間に前記キュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数から第1の所定の量だけ離調させるように前記キュービットに磁束パルスを供給するステップと、
前記所定の時間の間に前記キュービットのエネルギースペクトルを前記ラビ振動の周波数から第2の所定の量だけ離調させるように磁束パルスを調整するステップとを含み、前記第2の所定の量は、前記第1の所定の量の加法逆元である、方法。
【請求項2】
前記所定の時間は、
【数1】
に等しく、前記第1の所定の量は、
【数2】
に等しく、φはY回転の所望の角度であり、Ωは前記ラビ振動の周波数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の時間は、第1の所定の時間であり、方法は更に、第2の所定の時間の間に前記キュービットのエネルギースペクトルに関連するキュービット共鳴周波数をラビ振動の周波数に同調させるように磁束パルスを調整するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
磁束パルスが前記キュービットに供給された後、前記キュービットのエネルギースペクトルを前記ラビ振動の周波数から第2の所定の量だけ離調させるように磁束パルスが調整される前に前記キュービットのエネルギースペクトルを前記ラビ振動の周波数に同調させるように磁束パルスが調整される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の所定の時間は、
【数3】
に等しく、前記第1の所定の量は、
【数4】
に等しく、前記第2の所定の時間は、
【数5】
に等しく、φはY回転の所望の角度であり、Ωは前記ラビ振動の周波数である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
量子システムであって、
連続マイクロ波トーンを供給するように構成されたマイクロ波送信器と、
キュービットであって、該キュービットのエネルギースペクトルの一部が印加された磁束に応答するように構成され、連続マイクロ波トーンに応答してキュービット内にラビ振動を生成する誘導素子を有する前記キュービットと、
前記キュービットに磁束を印加するように構成された磁束源と、
システム制御であって、
前記キュービットに選択的に磁束を印加するように前記磁束源を制御して、所定の時間の間にキュービット共鳴周波数が、ラビ振動の周波数から第1の量だけ離調され、次に所定の時間の間に前記ラビ振動の周波数から第2の量だけ離調されるように、前記キュービットのエネルギースペクトルに関連する前記キュービット共鳴周波数を前記ラビ振動の周波数から選択的に対称的に離調させるように構成された前記システム制御と、を備える量子システム。
【請求項7】
前記システム制御は、前記所定の時間が、
【数6】
に等しくなるように構成され、φはY回転の所望の角度であり、Ωは前記ラビ振動の周波数である、請求項6に記載の量子システム。
【請求項8】
前記システム制御は、前記第1の量が、
【数7】
に等しくなるように構成され、φはY回転の所望の角度であり、Ωは前記ラビ振動の周波数である、請求項6に記載の量子システム。
【請求項9】
前記システム制御は、前記キュービット共鳴周波数を前記第1の量だけ離調させることと、前記キュービット共鳴周波数を前記第2の量だけ離調させることとの間に、前記キュービット共鳴周波数を前記ラビ振動の周波数に同調させるように構成される、請求項6に記載の量子システム。
【請求項10】
前記システム制御は、前記所定の時間が、
【数8】
に等しくなるように構成され、φはY回転の所望の角度であり、Ωは前記ラビ振動の周波数である、請求項9に記載の量子システム。
【請求項11】
前記システム制御は、前記第1の量が、
【数9】
に等しくなるように構成され、φはY回転の所望の角度であり、Ωは前記ラビ振動の周波数である、請求項9に記載の量子システム。
【請求項12】
前記所定の時間は、第1の所定の時間であり、前記システム制御は、第2の所定の時間の間に前記キュービットのエネルギースペクトルに関連する前記キュービット共鳴周波数をラビ振動の周波数に同調させるように前記キュービットへの磁束パルスを調整するように構成され、前記システム制御は、前記第2の所定の時間が、
【数10】
に等しくなるように構成され、Ωは前記ラビ振動の周波数である、請求項9に記載の量子システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に量子コンピューティングに関し、より具体的には、共鳴励起(resonant excitation)下のキュービット(qubit)の磁束制御に関する。
【背景技術】
【0002】
量子情報処理は、量子アルゴリズムを実施するためには多数の高密度のキュービットを必要とし、キュービットを動作させるための古典的な制御および読み出しハードウェアの量はさらに多くなる。超伝導キュービットの分野では、キュービットの制御および読み出しが可能な高密度極低温ハードウェアが必要とされている。コヒーレンス時間およびプロセス忠実度に関する現在の記録とトランスモン(transmon)を有するキュービットは、今のところ、大型の室温マイクロ波装置で制御される。
【発明の概要】
【0003】
一例において、キュービットの磁束制御のためのシステムが提供される。量子システムは、連続マイクロ波トーンを供給するように構成されたマイクロ波送信器と、キュービットであって、キュービットのエネルギースペクトルの一部が印加された磁束に応答するように構成されたキュービットとを含む。キュービットは、連続マイクロ波トーンに応答してキュービット内にラビ振動を生成する誘導素子をも有する。磁束源がキュービットに磁束を印加するように構成されている。
【0004】
別の例において、キュービットのX回転を実行するための方法が提供される。キュービットは、連続マイクロ波トーンに応答してキュービット内にラビ振動を生成し、キュービットのエネルギースペクトルの一部が印加された磁束に応答的であるように構成されている。連続マイクロ波トーンがキュービットに供給される。所定の時間の間にキュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数に同調させるようにキュービットに磁束パルスが供給される。所定の時間後にキュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数から離調させるように磁束パルスが調整される。
【0005】
さらに別の例において、キュービットのY回転を実行するための方法が提供される。キュービットは、連続マイクロ波トーンに応答してキュービット内にラビ振動を生成し、キュービットのエネルギースペクトルの一部が印加された磁束に応答的であるように構成されている。連続マイクロ波トーンがキュービットに供給される。所定の時間の間にキュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数から第1の所定の量だけ離調させるようにキュービットに磁束パルスが供給される。所定の時間の間にキュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数から第2の所定の量だけ離調させるようにキュービットへの磁束パルスが調整される。第2の所定の量は、第1の所定の量の加法逆元である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】少なくとも1つのキュービットの状態を制御するための量子システムを示す図。
図2図1の量子システムにおいて使用され得る一例のキュービットアセンブリ、特に、スプリット接合キュービットアセンブリを示す図。
図3】キュービットのX回転を行う方法を示す図。
図4】キュービットのY回転を行うための第1の方法を示す図。
図5】キュービットのY回転を行うための第2の方法を示す図。
図6図1図5に開示されたシステムおよび方法の実施例を実施することが可能なハードウェア構成要素の例示的なシステムを示す概略的なブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の特徴、目的、および利点は、図面と併せて以下に述べる詳細な説明からより明らかになるであろう。
一般に、位相変調及び振幅変調されたバーストのマイクロ波は、トランスモンキュービットを制御するために使用されてきた。これらのシステムは、高サンプリングレートの任意波形チャネルと、キュービット毎の一連の大型の室温マイクロ波コンポーネントとの2つを必要とする。提案されたシステムおよび方法は、従来の形状のマイクロ波バーストではなく、方形波パルスを作成することが可能な単一の波形チャネルを用いて超伝導キュービットの制御を可能にする。この制御方法は、極低温にてチップ上で制御信号を生成することができる単一磁束量子(SFQ:Single Flux Quantum)システムと互換性があり、キュービット制御ハードウェアのスケーラビリティを向上させる。従って、このシステムは、連続共鳴マイクロ波励起および準静的磁束パルスの使用により室温信号発生または高度なマイクロ波技術の必要性を排除して、単一磁束量子(SFQ)形式の磁束を用いた超伝導キュービットの単一キュービットの精密制御の直交、ユニバーサル制御を達成する。
【0008】
図1は、少なくとも1つのキュービット12の状態を制御するための量子システム10を示す。図示されたシステム10において、キュービット12は、キュービットのエネルギースペクトルの一部が、印加された磁束に応答的となるように構成される。具体的には、キュービットのエネルギースペクトルの少なくとも一部は、印加される磁束に線形的に依存しなければならない。そのようなキュービットの例には、磁束キュービットおよびトランスモンキュービットが含まれる。さらに、キュービット12は、連続マイクロ波トーン(continuous microwave tone)に応答してキュービット内でコヒーレントなラビ振動(Rabi oscillation)を生成する誘導素子(図示せず)を含む。この目的のために、システム10は、キュービットに連続マイクロ波トーンを供給するように構成されたマイクロ波送信器14をさらに含む。マイクロ波送信器14が活動状態にあるとき、既知の周波数を有するラビ振動がキュービット内に誘導される。マイクロ波送信器14は、システム10の極低温部分の外側に配置することができ、複数のキュービットに送信することが可能であることが理解されよう。
【0009】
図示されたシステム10は、成形されたマイクロ波バーストの代わりに磁束パルスを使用してキュービット12を制御することを可能にする。従って、システム10は、キュービットのエネルギースペクトルに関連するキュービット共鳴周波数がラビ振動の周波数に選択的に同調できるように、キュービットに選択的に磁束を印加するようにシステム制御(system control)18によって制御される磁束源16を含む。一実施形態では、磁束源16およびシステム制御18の一方または両方は、単一磁束量子(SFQ)論理回路として実施される。一般に、磁束源16は、キュービット12の基底状態と第1の励起状態との間の遷移エネルギー(例えば、付随する特性周波数)を調整する。従って、この遷移は、2つの直交する軸のうちの1つに沿ってキュービットの状態を回転させるように、ラビ周波数に対して調整することができる。実際には、磁束源16は、キュービットを有するシステムの極低温部分内に配置することができ、システム制御18はこの領域の外側に配置される。システム制御18は、汎用プロセッサ、専用ハードウェア、またはソフトウェアと専用ハードウェアとの組み合わせによって実行されるソフトウェアとして実施することができることは理解されよう。
【0010】
回転フレームにおいて、単一キュービットのハミルトニアンは、Hrf=hΩσ+hΔσzと書くことができ、ここで、hは、低減されたプランク定数であり、Ωは、連続波駆動トーンからのラビ振動の周波数であり、Δは、キュービット共鳴と駆動トーンとの間の周波数離調である。一例では、スプリット接合のトランスモンキュービットを使用して、キュービットの共鳴周波数が、キュービットの接合ループへの磁束の印加によって制御される。キュービットの共鳴周波数の変更によって、一定のマイクロ波トーンに対する離調が調整され、それによりΔが調整される。これは、従来のマイクロ波制御とは著しく異なり、マイクロ波トーンの連続波特性を用いて、既存の成形されたマイクロ波パルス方式とは対照的に、マイクロ波トーンを多くのキュービットに同時に印加することができる。個々のキュービットは、単一磁束量子回路のような小型の極低温回路を用いて制御することができる。
【0011】
常時オンのトーンの存在は、基底状態と第2の励起状態との間の2光子遷移のオフ共鳴励起と、第1の励起状態と第2の励起状態との間の単一光子遷移に起因する第2の励起状態の分布(population)が生じる。既存のマイクロ波バースト制御とは異なり、トーンは連続的であるため、マイクロ波バースト上のフーリエ側ピークによる共鳴励起は存在せず、そのスペクトルにはスパーが含まれていない。第2の励起状態の定常状態の分布は、ラビ振動の周波数、マイクロ波トーンの振幅、およびキュービット状態の非調和に依存する。分布は、所与の周波数と非調和に関して、信号振幅に直接比例し、かつより低いラビ振動の周波数に関してより低い。非調和の増加に伴って漏れが劇的に減少する。
【0012】
一実施形態では、システム制御18は、所定の期間の間にキュービット12の共鳴周波数をラビ振動の周波数に同調させるように構成される。キュービット12の遷移周波数がラビ振動の周波数に同調されると、キュービットはブロッホ球のX軸の周りを回転し、キュービットの状態が変化する。キュービットがラビ周波数に同調するための時間は、キュービット状態の制御されたX回転が達成されるように、回転の所望の角度に従って予め決定することができる。具体的には、この所定の時間は、ラビ振動の周波数に対するX回転の所望の角度の比に等しい。
【0013】
別の実施形態では、システム制御18は、キュービットが選択的に離調されるように、キュービット12の遷移周波数を調整するように構成される。具体的には、所定の時間の間にキュービット共鳴周波数をラビ振動の周波数から第1の量だけ離調させ、次に所定の時間の間にラビ振動の周波数から第1の量の加法逆元(additive inverse)である第2の量だけ離調させるように、離調が、ゼロ点の周りに対称的にパルス化される。これにより、ブロッホ球のY軸回りの回転が生じ、Y回転の量は、パルスの長さおよび偏向の量によって制御される。一実施形態では、所定の時間は、
【0014】
【数1】
によって決定され、φはY回転の所望の角度であり、Ωはラビ振動の周波数であり、離調の大きさは、
【0015】
【数2】
として選択することができる。
【0016】
さらに別の実施形態では、システム制御は、離調が遅延を有してゼロ点の周りに対称的にパルス化されるように、キュービット共鳴周波数を調整するように構成されて、第1の所定の時間の間にキュービット共鳴周波数をラビ振動の周波数から第1の量だけ離調させ、第2の所定の時間の間にラビ振動の周波数に同調させ、その後、第1の所定の時間の間にラビ振動の周波数から第1の量の加法逆元である第2の量だけ離調させるようにする。一例では、キュービットが離調するための時間は、
【0017】
【数3】
と等しく、φはY回転の所望の角度であり、Ωはラビ振動の周波数であり、離調の大きさは、
【0018】
【数4】
と等しく、キュービットがラビ周波数に同調するための時間は、
【0019】
【数5】
と等しい。
【0020】
図2は、図1の量子システムにおいて使用され得る一例のキュービットアセンブリ50、特に、スプリット接合トランスモンキュービットアセンブリを示す。しかしながら、これは排他的な例ではなく、受信された磁束に応答的なエネルギースペクトルの少なくとも一部を有する任意のキュービットは、少なくとも他の構成のトランスモンキュービット、磁束キュービット、および位相キュービットを含んで使用することができる。図示された同調可能なトランスモンアセンブリ50は、伝送線と回路接地との間の第1の経路上にキャパシタンスCを有する第1のキャパシタ52を含む。第2および第3のジョセフソン接合56,58は、伝送線と回路接地との間の第2の経路上に互いに並列に配置され、それぞれがインダクタンスαIを有する直流超伝導量子干渉デバイス(DC SQUID)60を形成する。ここで、αはキュービットアセンブリ50の非対称性として本明細書で参照されるゼロと1の間の数である。DC SQUIDは、第1のキャパシタ52と並列に配置される。第2のキャパシタ62は、伝送線と回路接地との間の第3の経路上に第1のジョセフソン接合およびDC SQUIDと並列に配置されている。
【0021】
同調可能なトランスモンキュービットアセンブリ50は、磁束パルスを受信してキュービットのエネルギースペクトルを調整する誘導素子(inductive element)64を含む。図示の実施形態では、磁束パルスがDC SQUID60に供給されるが、当業者であれば、同様の方法でパルスをキュービットアセンブリ50に印加することができることを理解するであろう。
【0022】
上記の構造的特徴および機能的特徴を考慮して、本発明の様々な態様による方法は、図3図5を参照してより良く理解されるであろう。説明の簡略化のために、図3図5の方法が連続的に実行されるものとして示され説明されているが、本発明によれば、いくつかの態様が、異なる順序で、および/または本明細書に示され記載されている他の態様と同時に生じ得る。さらに、本発明の一形態による方法を実施するために、示された特徴の全てが必要とされるわけではない。
【0023】
図3は、キュービットのX回転を実行するための方法100を示す。図示された方法100において、キュービットは、連続マイクロ波トーンに応答してキュービット内にラビ振動を生成するように構成される。さらに、キュービットのエネルギースペクトルの一部は、印加された磁束に応答的である。102において、キュービットにラビ振動を誘導するために、キュービットに連続マイクロ波トーンが供給される。104において、所定の時間の間にキュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数に同調するようにキュービットに磁束パルスが供給される。例えば、キュービットの基底状態から第1の励起状態への遷移周波数は、ラビ振動の周波数に同調される。106において、所定の時間後にキュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数から離調するように磁束パルスが調整される。一実施形態では、所定の時間は、ラビ振動の周波数に対するX回転の所望の角度の比に等しい。
【0024】
図4は、キュービットのY回転を実行するための第1の方法130を示す。図示された方法130では、キュービットは、連続マイクロ波トーンに応答してキュービット内にラビ振動を生成するように構成される。さらに、キュービットのエネルギースペクトルの一部は、印加された磁束に応答的である。方法は、対称的な離調を利用し、第1の離調をもたらす第1の磁束パルスの直後に、大きさおよび持続時間は等しいが反対方向に離調をもたらす第2の磁束パルスを供給する。132において、連続マイクロ波トーンがキュービットに供給される。134において、所定の時間の間にキュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数から第1の所定量だけ離調させるようにキュービットに磁束パルスが供給される。例えば、キュービットの基底状態から第1の励起状態への遷移周波数は、ラビ振動の周波数から、
【0025】
【数6】
に等しい時間の間に
【0026】
【数7】
に等しい所定の量だけ離調させることができる。ここで、φはY回転の所望の角度であり、Ωはラビ振動の周波数である。136において、同じ時間の間にキュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数から第1の所定量の加法逆元に等しい第2の所定量だけ離調させるようにキュービットへの磁束パルスが調整される。従って、以前に示された例では、エネルギースペクトルは、ラビ振動から、
【0027】
【数8】
に等しい時間の間に
【0028】
【数9】
の量だけ離調される。
【0029】
図5は、キュービットのY回転を行うための第2の方法150を示す。図示された方法150では、キュービットは、連続マイクロ波トーンに応答してキュービット内にラビ振動を生成するように構成される。さらに、キュービットのエネルギースペクトルの一部は、印加された磁束に応答的である。方法は、変更された対称的な離調を利用して、第1の離調をもたらす第1の磁束パルスの後であって、スペクトルがラビ周波数に同調される遅延の後に、大きさおよび持続時間は等しいが反対方向に離調をもたらす第2の磁束パルスが供給される。152において、連続マイクロ波トーンがキュービットに供給される。154において、第1の所定の時間の間にキュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数から第1の所定量だけ離調させるようにキュービットに磁束パルスが供給される。例えば、キュービットの基底状態から第1の励起状態への遷移周波数は、ラビ振動の周波数から、
【0030】
【数10】
に等しい時間の間に
【0031】
【数11】
に等しい所定の量だけ離調させることができる。ここで、φはY回転の所望の角度であり、Ωはラビ振動の周波数である。
【0032】
156において、キュービットへの磁束パルスは、キュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数に同調させるように調整される。エネルギースペクトルは、第2の所定時間の間にラビ周波数に同調させることができる。以前に示された例では、この第2の所定の時間は、
【0033】
【数12】
に等しい。158において、第1の所定の時間である同じ時間の間にキュービットのエネルギースペクトルをラビ振動の周波数から第1の所定量の加法逆元に等しい第2の所定量だけ離調させるようにキュービットへの磁束パルスが調整される。従って、以前に示された例では、エネルギースペクトルは、ラビ振動から、
【0034】
【数13】
に等しい時間の間に
【0035】
【数14】
の量だけ離調される。図4に示す方法130と比較して、この方法150は、離調ノイズ耐性の2倍の増加のために、回転角φにおいて2つの係数を取り扱う。
【0036】
図6は、図1図5に開示されたシステムおよび方法の例を実施することができる図1のシステム制御18等のハードウェアコンポーネントの例示的なシステム200を示す概略ブロック図である。システム200は、様々なシステムおよびサブシステムを含むことができる。システム200は、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ワークステーション、コンピュータシステム、アプライアンス、特定用途向け集積回路(ASIC)、サーバ、サーバブレードセンタ、サーバファームなどとすることができる。
【0037】
システム200は、システムバス202、処理ユニット204、システムメモリ206、メモリデバイス208,210、通信インタフェース212(例えば、ネットワークインタフェース)、通信リンク214、ディスプレイ216(例えば、ビデオ画面)、および入力デバイス218(例えば、キーボードおよび/またはマウス)を含む。システムバス202は、処理ユニット204およびシステムメモリ206と通信することができる。ハードディスクドライブ、サーバ、スタンドアロンデータベース、または他の不揮発性メモリなどの追加メモリデバイス208,210は、システムバス202と通信することができる。システムバス202は、処理ユニット204、メモリデバイス206〜210、通信インタフェース212、ディスプレイ216、および入力デバイス218を相互接続する。いくつかの例では、システムバス202はユニバーサルシリアルバス(USB)ポートのような追加のポート(図示せず)とも相互接続する。
【0038】
処理ユニット204は、コンピューティングデバイスとすることができ、かつ特定用途向け集積回路(ASIC)を含むことができる。処理ユニット204は、一組の命令を実行して、本明細書に開示された実施形態の動作を実施する。処理ユニットは処理コアを含むことができる。
【0039】
追加のメモリデバイス206,208および210は、データ、プログラム、命令、テキストまたはコンパイルされた形式のデータベースクエリ、およびコンピュータを動作させるために必要とされる任意の他の情報を格納することができる。メモリ206,208および210は、メモリカード、ディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、またはネットワークを介してアクセス可能なサーバなどのコンピュータ可読媒体(一体または取り外し可能)として実施することができる。特定の例では、メモリ206,208および210は、テキスト、画像、ビデオおよび/またはオーディオを含むことができ、その一部は人間に理解可能なフォーマットで利用可能である。
【0040】
追加的または代替的に、システム200は、システムバス202および通信リンク214を用いて通信することができる通信インタフェース212を介して外部データソースまたはクエリソースにアクセスすることができる。
【0041】
動作中、システム200は、量子コンピューティングシステムを監視し制御するためのシステム制御の1つ以上の部分を実施するように使用され得る。システム制御126を実施するためのコンピュータ実行可能ロジックは、特定の例に従って、1つまたは複数のシステムメモリ206およびメモリデバイス208,210上に存在する。処理ユニット204は、システムメモリ206およびメモリデバイス208,210から発行される1つまたは複数のコンピュータ実行可能命令を実行する。本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」という用語は、処理ユニット204に命令を提供することに関与する媒体を指し、かつ処理ユニット204に動作的に接続された単一の媒体または複数の非一時的媒体のいずれかを含むことができる。
【0042】
本発明は、例示的に開示されている。従って、本開示を通じて使用される用語は、限定的な意味ではなく例示として解釈されるべきである。当業者には本発明の微妙な変更が生じるであろうが、本明細書で保証される特許の範囲内に限定されることを意図しているのは、当該技術に対して寄与となる進歩の範囲内に合理的に含まれすべての実施形態であり、かつ添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の観点を除いて、その範囲は制限されない。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]キュービットのY回転を実行するための方法であって、前記キュービットは、連続マイクロ波トーンに応答して前記キュービット内にラビ振動を生成し、前記キュービットのエネルギースペクトルの一部が印加された磁束に応答的であるように構成されている、方法において、
連続マイクロ波トーンを前記キュービットに供給するステップと、
所定の時間の間に前記キュービットのエネルギースペクトルに関連するキュービット共鳴周波数をラビ振動の周波数から第1の所定の量だけ離調させるように前記キュービットに磁束パルスを供給するステップと、
前記所定の時間の間に前記キュービットのエネルギースペクトルに関連する前記キュービット共鳴周波数を前記ラビ振動の周波数から第2の所定の量だけ離調させるように磁束パルスを調整するステップと
を含み、前記第2の所定の量は、前記第1の所定の量の加法逆元である、方法。
[付記2]前記所定の時間は、
【数15】
に等しく、前記第1の所定の量は、
【数16】
に等しく、φはY回転の所望の角度であり、Ωは前記ラビ振動の周波数である、付記1に記載の方法。
[付記3]前記所定の時間は、第1の所定の時間であり、方法は更に、第2の所定の時間の間に前記キュービットのエネルギースペクトルに関連するキュービット共鳴周波数をラビ振動の周波数に同調させるように磁束パルスを調整するステップを含む、請求項13に記載の方法。
[付記4]磁束パルスが前記キュービットに供給された後、前記キュービットのエネルギースペクトルを前記ラビ振動の周波数から第2の所定の量だけ離調させるように磁束パルスが調整される前に前記キュービットのエネルギースペクトルを前記ラビ振動の周波数に同調させるように磁束パルスが調整される、付記3に記載の方法。
[付記5]前記第1の所定の時間は、
【数17】
に等しく、前記第1の所定の量は、
【数18】
に等しく、前記第2の所定の時間は、
【数19】
に等しく、φはY回転の所望の角度であり、Ωは前記ラビ振動の周波数である、付記3に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6