(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記裏面層、前記中間層および前記表面層の層厚み比は、裏面層/中間層/表面層=10/80/10〜40/20/40である請求項1に記載の鮮度保持包装体または容器。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る鮮度保持包装体または容器は、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種の特定化合物が、少なくとも内側の表面に0.002〜0.5g/m
2存在する。抗菌成分である前記特定化合物が鮮度保持包装体または容器の内側の表面に0.002〜0.5g/m
2存在することで、高い抗菌性を発現することができる。特に内容物として精肉又は鮮魚を入れた場合、高い抗菌性を発現するだけでなく、精肉又は鮮魚の色相の変化を大幅に抑制することができる。
【0022】
精肉、鮮魚は経時で色相が変化し、その商品価値が低下する。ここで、食品変敗における変色は、食品に含まれる成分自体の変化(変色)が原因となっていることが多いが、微生物(細菌や酵母、カビ)が生産する色素が変色の直接の原因となっているものも少なからず存在しており、微生物が生産する色素による食品変色(変敗)の事例により確認されている。
【0023】
また、精肉、鮮魚及び加工食品等の生鮮食品及び加工製品など鮮度が求められる商品は、プラスチックシートを真空成形して得られる容器等に入れられて流通している。これらの生鮮食品および加工製品は、腐敗して雑菌が増殖すると、臭いが悪化し、味覚が落ち、また衛生上の問題を生じるため、その商品価値が低下する。ここで、雑菌は精肉、鮮魚及び加工食品等の本体よりも、ドリップにより増殖する。そのため、ドリップ中の雑菌増殖を抑制することで、包装体または容器の内部の雰囲気を清浄に保ち、さらに内容物である精肉、鮮魚の色相の変化を抑制することが有効である。
【0024】
ここで、肉のきれいな赤色は、ミオグロビンというタンパク質が酸素と結合したオキシミオグロビンによるものであり、精肉、鮮魚にきれいな赤味を発色させるために、通常容器包装内に酸素を封入する。しかし、赤味を帯びたオキシミオグロビンは、乳酸菌、大腸菌から出る過酸化水素によりさらに酸化されるとメトミオグロビンに変化し、鮮やかな赤色は失われて褐色を帯び、やがては緑色に変化する。
【0025】
特許文献1から8に記載の発明では、精肉、鮮魚の褐色化を促進する過酸化水素を発生させる乳酸菌等に対し、十分に安定して高い抗菌性を得ることができない。しかし、本発明によれば、本発明に係る鮮度保持包装体または容器の内側の表面に、ドリップ、精肉、鮮魚が接することで、精肉、鮮魚の表面に存在する乳酸菌、大腸菌等の増殖が抑制され、過酸化水素の発生が抑制され、精肉、鮮魚の色相の変化が抑制される。
【0026】
なお、本発明において「鮮度保持包装体または容器」とは、包装体または容器底面に溜まるドリップ、内容物表面等の雑菌増殖を抑制することで、包装体または容器内部の臭い、味覚の低下を防ぎ、カット野菜、精肉、鮮魚本体、加工食品等の内容物の鮮度を保つ包装体または容器を示す。また、「内側の表面」とは、鮮度保持包装体または容器の、精肉、鮮魚等の内容物を入れる側の表面を示す。
【0027】
<特定化合物>
本発明に係る特定化合物は、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、グリセリンモノラウレートおよびジグリセリンモノラウレートからなる群から選択される少なくとも一種である。パルミチルジエタノールアミンは、炭素数16の長鎖アルキル基であるパルミチル基を有するアルキルジエタノールアミンである。ステアリルジエタノールアミンは、炭素数18の長鎖アルキル基であるステアリル基を有するアルキルジエタノールアミンである。グリセリンモノラウレートは、ラウリン酸(炭素数12)とグリセリンとのモノエステルである。ジグリセリンモノラウレートは、ラウリン酸(炭素数12)とジグリセリンとのモノエステルである。
【0028】
ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは、ミリスチルジエタノールアミンやラウリルジエタノールアミンに比べて融点が比較的高い。以下に、各アルキルジエタノールアミンの長鎖アルキル基の部分の炭素数と融点を示す。
【0029】
(アルキルジエタノールアミン;長鎖アルキル基の部分の炭素数;融点)
ステアリルジエタノールアミン;18個;51℃
パルミチルジエタノールアミン;16個;28℃
ミリスチルジエタノールアミン;14個;22〜23℃
ラウリルジエタノールアミン;12個;常温で液体。
【0030】
このため、例えば鮮度保持容器を真空成形する際、特に熱固定において、ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは比較的揮発しにくい。また、ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは、抗菌性および鮮度保持性に優れる。さらに、鮮度保持包装体又は容器を食品容器として用いた場合、ステアリルジエタノールアミンおよびパルミチルジエタノールアミンは、包装体又は容器内面に接触する内容物への移行が比較的遅く、安全性に優れており、さらにその性能を持続することができる。
【0031】
なお、本発明に係る鮮度保持包装体又は容器は、前記特定化合物以外に、前記特定化合物に類似する類似化合物を含有していてもよい。該類似化合物は、一般に特定化合物の合成、分離などの工程において、同時に合成されたり、分離が困難であったりする化合物である。前記特定化合物としてパルミチルジエタノールアミン(炭素数16)を用いる場合、類似化合物としてミリスチルジエタノールアミン(炭素数14)や、ステアリルジエタノールアミン(炭素数18)等の炭素数12〜20のアルキル基を有するアルキルジエタノールアミンが少量含まれてもよい。また、前記特定化合物としてステアリルジエタノールアミン(炭素数18)を用いる場合、類似化合物として炭素数16〜20のアルキル基を有するアルキルジエタノールアミンが少量含まれてもよい。また、特定化合物としてパルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミンを用いる場合には、これらの類似化合物のアミンの一部が脂肪族カルボン酸とエステルを形成した化合物が少量含まれてもよい。さらに、前記特定化合物としてグリセリンモノラウレートを用いる場合、類似化合物として炭素数が10、14等である高級直鎖脂肪族カルボン酸とグリセリンとのモノエステル等が少量含まれてもよい。また、前記特定化合物としてジグリセリンモノラウレートを用いる場合、類似化合物として炭素数が10、14等である高級脂肪族カルボン酸とジグリセリンとのモノエステル等が少量含まれてもよい。また、前記特定化合物としてグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノラウレートを用いる場合には、類似化合物として、グリセリンジラウレート、グリセリントリラウレート、ジグリセリンジラウレート、ジグリセリントリラウレート等、さらにはグリセリン部分がジグリセリン、ジグリセリン部分がトリグリセリンである化合物が少量含まれてもよい。また、前記類似化合物は、特定化合物100質量部に対して、50質量部以下含まれてもよく、40質量部以下含まれてもよいが、含まれないことが好ましい。
【0032】
<特定化合物の表面量、含有量>
本発明に係る鮮度保持包装体または容器は、少なくとも内容物と接触する内側の表面に特定化合物が0.002〜0.5g/m
2存在する。鮮度保持包装体または容器の内側の表面に特定化合物が0.002g/m
2以上存在することにより、十分な抗菌性を示す。特に、内容物が精肉または鮮魚である場合、精肉または鮮魚の色相の変化を十分に抑制することができる。また、鮮度保持包装体または容器の内側の表面に特定化合物が0.5g/m
2以下存在することにより、特定化合物の内容物への移行を十分に抑制することができる。本発明に係る鮮度保持包装体または容器は、少なくとも内側の表面に特定化合物が0.0025〜0.1g/m
2存在することが好ましく、0.003〜0.01g/m
2存在することがより好ましく、0.0035〜0.005g/m
2存在することがさらに好ましい。なお、特定化合物は鮮度保持包装体または容器の内側の表面に加えて、外側の表面に存在してもよい。また、鮮度保持包装体または容器の表面に存在する特定化合物の定量は、後述する方法により行う。
【0033】
特定化合物を鮮度保持包装体または容器の内側の表面に前記範囲の量で存在させる方法としては、鮮度保持包装体または容器中に特定化合物を含有させ、内側の表面に特定化合物をブリードアウトさせる方法が挙げられる。また、内側の表面に特定化合物を噴霧したり、特定化合物を含む溶液、懸濁液等を塗布したりするコート法が挙げられる。
【0034】
さらに、特定化合物が表面に0.002〜0.5g/m
2存在するフィルムまたはシートを製袋して包装体としても良い。また、本発明に係る鮮度保持容器においては、特定化合物が表面に0.002〜0.5g/m
2存在するフィルムまたはシートを鮮度保持容器の内側の表面に貼着してもよい。該フィルムまたは該シートの貼着方法としては、接着剤によって貼着してもよいし、鮮度保持容器の成形過程で溶融させることにより貼着してもよい。例えば、非結晶性ポリエチレンテレフタレート、またはエチレン系重合体およびスチレン系重合体からなる厚さ0.10mm〜0.80mmのシートの少なくとも一方の表面に、特定化合物が0.002〜0.5g/m
2存在するフィルムを、鮮度保持容器の内側の表面にポリエステル系接着剤で貼り合わせた後に真空圧空成形する方法が挙げられる。また、非結晶性ポリエチレンテレフタレートまたはスチレン系重合体に特定化合物を0.001〜3質量%添加し、厚さ0.10mm〜0.80mmのシートを成形した後、鮮度保持容器の内側の表面に接着剤で貼り合わせ、真空成形法または圧空成形法により成形する方法が挙げられる。
【0035】
鮮度保持包装体または容器中の特定化合物の含有量は、容易に特定化合物を内側の表面に本発明に係る範囲の量ブリードアウトさせることができる観点から、0.001〜3質量%が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましく、0.03〜1質量%がさらに好ましく、0.04〜0.6質量%が特に好ましく、0.05〜0.2質量%が最も好ましい。なお、該含有量は、鮮度保持包装体または容器全体に対する特定化合物の含有量を示す。例えば鮮度保持包装体または容器が複数層からなり、特定化合物を含む層と含まない層が存在する場合には、該含有量は鮮度保持包装体または容器全体としての平均値を示す。したがって、鮮度保持包装体または容器が2層以上からなる場合は、内側の表面に特定化合物が0.002〜0.5g/m
2存在すれば、少なくとも1層に特定化合物が含有されていればよく、必ずしもすべての層に特定化合物が含有されている必要はない。さらに、鮮度保持包装体または容器の内側の表面にフィルムまたはシートを貼着する場合においても、該フィルムまたは該シートの表面に特定化合物が0.002〜0.5g/m
2存在していればよい。該シートまたは該フィルムに特定化合物を含有させる場合には、該シートまたは該フィルム中の特定化合物の含有量は、0.001〜3質量%が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましく、0.03〜1質量%がさらに好ましく、0.04〜0.6質量%が特に好ましく、0.05〜0.2質量%が最も好ましい。
【0036】
<鮮度保持包装体または容器の材料>
本発明に係る鮮度保持包装体または容器の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紙、金属等を用いることができるが、成形加工の容易性の観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。該熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル・1−ペンテンなどのポリオレフィンが挙げられる。また、該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン等のスチレン系重合体、アイオノマー、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0037】
これらの中でも、本発明に係る鮮度保持包装体または容器の材料としては、スチレン系重合体、プロピレン系重合体、ポリエステルおよびエチレン系重合体からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。特に、鮮度保持包装体の材料としては、特定化合物のブリードアウトの観点から、エチレン系重合体またはプロピレン系重合体が好ましい。また、鮮度保持容器の材料としては、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法において、好適に容器に成形することができ、容器の形状安定性が高い観点から、スチレン系重合体、プロピレン系重合体、ポリエステルおよびエチレン系重合体からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。特に、ポリスチレン、ポリエステルが鮮度保持容器の剛性、透明性、成型加工性に優れるため好ましく、ポリスチレン、非結晶性ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。また、予め特定化合物を含む熱可塑性樹脂を用いてフィルムを成形し、ポリスチレン、ポリエステル等からなる基体となるシートに貼り合わせて鮮度保持容器を製造する場合には、該熱可塑性樹脂としてはエチレン系重合体を用いることが、真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法による容器成形時の追従性に優れるため好ましい。
【0038】
<スチレン系重合体>
本発明に係るスチレン系重合体は、ビニル芳香族化合物を単独重合、又はビニル芳香族化合物と、該ビニル芳香族化合物と共重合可能なモノマーとを共重合することにより得られるものが挙げられる。ビニル芳香族化合物と共重合可能なモノマーとしては、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0039】
スチレン系重合体としては、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体が好ましく、加工性の観点からポリスチレンがより好ましい。これらは目的に応じて単独で又は二種以上の混合物として用いることができる。さらに、耐衝撃性を改良できる観点から、ポリブタジエン等のエラストマーの存在下で重合して得られる耐衝撃性ポリスチレン(High Impact Polystyrene)がさらに好ましい。
【0040】
前記スチレン系重合体の密度は1.000〜1.010g/cm
3が好ましく、1.030〜1.080g/cm
3がより好ましい。重合度は、十分な強度を得られる観点から1000〜8000が好ましい。
【0041】
<ポリエステル>
ポリエステルは、ジオールとジカルボン酸との重縮合によって得られるポリマーであり、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、加工性の観点からポリエチレンテレフタレートがより好ましく、非結晶性ポリエチレンテレフタレートがさらに好ましい。ポリエステルの密度は1.20〜1.30g/cm
3が好ましく、1.22〜1.29g/cm
3がより好ましい。
【0042】
<ポリエチレンテレフタレート>
前記ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸および/またはそのエステル誘導体由来のジカルボン酸単位と、エチレングリコールおよび/またはそのエステル誘導体由来のジオール単位とを含む。
【0043】
ポリエチレンテレフタレートを構成するジカルボン酸単位の合計を100モル%とするとき、テレフタル酸単位の割合は80モル%以上であることが好ましく、85〜100モル%であることがより好ましい。テレフタル酸以外の他のジカルボン酸としては、例えば、フタル酸(オルソフタル酸)、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロへキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。また、これらの他のジカルボン酸は、そのエステル誘導体であってもよい。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。なお、他のジカルボン酸を用いる場合には、他のジカルボン酸としてはイソフタル酸が好ましい。
【0044】
また、ポリエチレンテレフタレートを構成するジオール単位の合計を100モル%とするとき、エチレングリコール単位の割合は80モル%以上であることが好ましく、85〜100モル%であることがより好ましい。エチレングリコール以外の他のジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族基を含むグリコール、ビスフェノール類、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオールなどが挙げられる。また、これらの他のジオールは、そのエステル誘導体であってもよい。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。なお、他のジオールを用いる場合には、他のジオールとしてはジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0045】
さらに、前記ポリエチレンテレフタレートは、本発明の目的を損なわない範囲であれば、3つ以上のカルボキシル基を有する多官能カルボン酸由来の単位、または3つ以上のヒドロキシ基を有する多官能アルコール由来の単位を含有してもよい。前記ポリエチレンテレフタレートは、例えば、トリメシン酸、無水ピロメリット酸などの多官能カルボン酸由来の単位、グリセリン、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能アルコール由来の単位を含有してもよい。また、前記ポリエチレンテレフタレートは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリグリコール由来の単位を含有してもよい。
【0046】
前記ポリエチレンテレフタレートは、実質的に線状である。このことは前記ポリエチレンテレフタレートが、o−クロロフェノールに溶解することによって確認される。
【0047】
前記ポリエチレンテレフタレートは、25℃、o−クロロフェノール中で測定される極限粘度[η]が、0.5〜1.0dl/gであることが好ましく、0.6〜0.95dl/gであることより好ましい。
【0048】
また、前記ポリエチレンテレフタレートの示差走査型熱量計(DSC、昇温速度10℃/分)で測定される融点は、成形後の結晶化による物性、色相変化が起こらない観点から、融点がない、即ち、非結晶性ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。また、ガラス転移温度(Tg)は、50〜120℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。
【0049】
前記ポリエチレンテレフタレートは、エステル化反応またはエステル交換反応、液相重縮合反応、次いで必要に応じて固相重合反応により製造される。また、前記ポリエチレンテレフタレートの代わりに、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミドなどの結晶性樹脂を任意に使用できる。
【0050】
<エチレン系重合体>
前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主要モノマーとし、それと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種との共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、そのケン化物及びアイオノマーが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体などのエチレンを主要モノマーとし、これと炭素数3から8のα−オレフィンの少なくとも1種との共重合体が挙げられる。これらの共重合体中のα−オレフィン単位の割合は、1〜15モル%であることが好ましい。
【0051】
また、前記エチレン系重合体としては、ポリエチレンの名称で製造・販売されているエチレンの重合体が挙げられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、LLDPEがより好ましい。LLDPEは、エチレンと、少量のプロピレン、ブテン−1、ヘプテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチル−ペンテン−1等との共重合体である。また、前記エチレン系重合体は、エチレンの単独重合体であってもよく、LLDPE等のエチレンを主体とする重合体であってもよい。
【0052】
前記エチレン系重合体の密度は0.910〜0.950g/cm
3が好ましく、0.920〜0.940g/cm
3がより好ましい。該密度が0.910g/cm
3以上であることにより、ヒートシール性が向上する。また、該密度が0.950g/cm
3以下であることにより、加工性および透明性が向上する。
【0053】
<プロピレン系重合体>
前記プロピレン系重合体としては、ポリプロピレンの名称で製造、販売されているプロピレン単独重合体(ホモPPとも呼ばれている)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(ランダムPPとも呼ばれている)、プロピレン単独重合体と、低結晶性または非晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体との混合物(ブロックPPとも呼ばれている)などのプロピレンを主成分とする結晶性の重合体が挙げられる。また、プロピレン系重合体は、分子量が異なるプロピレン単独重合体の混合物であってもよく、プロピレン単独重合体と、プロピレンとエチレン又は炭素数4から10のα−オレフィンとのランダム共重合体との混合物であってもよい。
【0054】
前記プロピレン系重合体としては、具体的には、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体などのプロピレンを主要モノマーとし、これとエチレン及び炭素数4から10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種との共重合体が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0055】
前記プロピレン系重合体の密度は、0.890〜0.930g/cm
3であることが好ましく、0.900〜0.920g/cm
3であることがより好ましい。また、前記プロピレン系重合体のMFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)は、0.5〜60g/10分が好ましく、0.5〜10g/10分がより好ましく、1〜5g/10分がさらに好ましい。
【0056】
真空または圧空成形時の追従性を保つため、前記プロピレン系重合体の融点(Tm)は125〜155℃が好ましく、130〜145℃が好ましい。
【0057】
<他の添加剤>
本発明に係る鮮度保持包装体または容器は、本発明の目的を損なわない範囲で、耐熱安定剤(酸化防止剤)、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の他、タルク、シリカ、珪藻土などの各種フィラー類を含んでもよい。
【0058】
耐熱安定剤としては、例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系酸化防止剤、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、置換ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系酸化防止剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、フェニルサルチレート、4−t−ブチルフェニルサリチレート等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0059】
帯電防止剤としては、例えば、アルキルアミンおよびその誘導体、高級アルコール、ピリジン誘導体、硫酸化油、石鹸類、オレフィンの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル類、脂肪酸エチルスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルナタレンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、琥珀酸エステルスルフォン酸塩、リン酸エステル塩、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトルのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0060】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、高級アルコール、流動パラフィン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0061】
紫外線吸収剤としては、例えば、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0062】
防曇剤としては、前記特定化合物を除く化合物であり、例えば、高級脂肪族アルコール類、グリセリン脂肪酸類、ジグリセリン脂肪酸類、これらのモノ又はジグリセリン脂肪酸の酸エステル類、高級脂肪族アミン類、高級脂肪酸エステル類、これらの混合物等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0063】
他の添加剤と、前記特定化合物の類似化合物との合計は、特定化合物100質量部に対して、50質量部以下含まれてもよく、40質量部以下含まれてもよく、30質量部以下含まれてもよい。
【0064】
<鮮度保持包装体または容器の構成>
本発明に係る鮮度保持包装体または容器は、単層から構成されていてもよく、2層以上の多層から構成されていてもよい。例えば、鮮度保持包装体または容器は、内側の表面を形成する裏面層、中間層および表面層の3層からなることができる。また、鮮度保持包装体または容器は、内側の表面を形成する裏面層、中間層および表面層の3層からなるフィルムまたはシートと、基体であるシートとが積層された構成とすることができる。各層の組成は、内側の表面に特定化合物が0.002〜0.5g/m
2存在すれば、同じであっても異なっていてもよい。
【0065】
前記3層からなる鮮度保持包装体または容器、或いは前記フィルムまたは前記シートにおいて、特定化合物は前記裏面層および前記中間層に含まれることが特定化合物のブリードアウトの観点から好ましい。前記裏面層、前記中間層および前記表面層の層厚み比は、裏面層/中間層/表面層=10/80/10〜40/20/40が好ましく、15/70/15〜30/40/30がより好ましい。鮮度保持包装体または容器の全体の厚みは、特定化合物のブリードアウトの観点及び得られる容器の強度等の物性から、100〜600μmが好ましく、150〜300μmがより好ましい。また、前記フィルムまたは前記シートの全体の厚みは、特定化合物のブリードアウトの観点及び包装体の物性から、10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましい。
【0066】
また、本発明に係る鮮度保持包装体または容器の少なくとも一方の表面の濡れ指数は35dyn以上であることが、抗菌性が向上する観点から好ましい。特に、鮮度保持包装体または容器の外側の表面の濡れ指数が35dyn以上であることが好ましい。該濡れ指数は36dyn以上であることがより好ましく、37dyn以上であることがさらに好ましく、38dyn以上であることが特に好ましい。該濡れ指数の上限は特に限定されないが、例えば50dyn以下とすることができる。また、本発明に係る鮮度保持包装体または容器が2層以上から構成されている場合、前記層間の少なくとも一方の表面の濡れ指数が35dyn以上であることが、層間の接着性の観点から好ましい。特に、前記層間の双方の表面の濡れ指数が35dyn以上であることがより好ましい。該濡れ指数は36dyn以上であることがより好ましく、37dyn以上であることがさらに好ましく、38dyn以上であることが特に好ましい。該濡れ指数の上限は特に限定されないが、例えば50dyn以下とすることができる。なお、前記濡れ指数は、各層を積層する前に和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液を用いて確認した値である。表面の濡れ指数を35dyn以上にする方法としては、該表面に対してコロナ処理を行う方法が好ましい。
【0067】
また、本発明に係る鮮度保持包装体または容器は、エチレン系重合体を含み、内側の表面から厚さ方向に向けて該エチレン系重合体の密度が大きくなることが好ましい。また、本発明に係る鮮度保持包装体または容器は、エチレン系重合体を含み、かつ内側の表面を形成する層を有し、該層内において、内側の表面から厚さ方向に向けて該エチレン系重合体の密度が大きくなることが好ましい。内側の表面から厚さ方向に向けてエチレン系重合体の密度を上げることにより、外側の表面側への特定化合物の移行を抑制し、内側の表面への特定化合物のブリードアウトを促進させることができる。前記鮮度保持包装体または容器、或いは前記層が、内側の表面を形成する裏面層、中間層、表面層の3層からなる場合、裏面層に含まれるエチレン系重合体の密度は、中間層および/または表面層に含まれる特定化合物が裏面層へ移行しやくすく、かつ例えば容器成形時にブロッキングしにくい観点から、0.880〜0.935g/cm
3が好ましく、0.900〜0.930g/cm
3がより好ましい。中間層および表面層に含まれるエチレン系重合体の密度は、中間層および/または表面層に含まれる特定化合物が裏面層へ移行しやくすく、かつ剛性が高すぎない観点から、0.910〜0.960g/cm
3が好ましく、0.920〜0.950g/cm
3がより好ましい。中間層及び表面層に含まれるエチレン系重合体の密度は、裏面層に含まれるエチレン系重合体の密度より0.005〜0.050g/cm
3高いことが好ましい。
【0068】
さらに、本発明に係る鮮度保持包装体または容器は、内側の表面から厚さ方向に向けて、全体の厚みに対して50から90%の範囲に前記特定化合物が含まれることが好ましい。すなわち、鮮度保持包装体または容器の本体の全体の厚みを100%として、内側の表面の位置を0%の位置、外側の表面の位置を100%の位置とするとき、50から90%の範囲に特定化合物が含まれることが好ましい。該範囲に特定化合物が含まれることにより、特定化合物が内側の表面に適度にブリードアウトし、抗菌性および鮮度保持性を発現することができる。該範囲は、65から90%がより好ましく、80から90%がさらに好ましい。該範囲に特定化合物が含まれるようにする方法としては、例えば本発明に係る鮮度保持包装体または容器を、内側の面と接する裏面層、中間層、外側の面と接する表面層の3層構造として、少なくとも中間層に特定化合物が含まれるようにする方法が挙げられる。また、中間層と表面層または裏面層とに特定化合物が含まれるようにする方法が挙げられる。しかしながら、特定化合物の円滑なブリードアウトによる効果的な抗菌性、鮮度保持性の発現の観点から、中間層および表面層に特定化合物が含まれるようにすることが好ましい。なお、該範囲にのみ特定化合物が含まれてもよく、該範囲以外にも特定化合物が含まれてもよい。
【0069】
本発明に係る鮮度保持包装体または容器は、抗菌性の観点から、JISZ2801に準じた抗菌試験を、大腸菌を用いて行う時、鮮度保持包装体または容器から試験片を切り出し、内容物と接する内側の表面同士の間に試験液を挟み測定を行い、24時間後の生菌数が1/100倍以下であることが好ましい。なお、測定の際には鮮度保持包装体または容器の表面の性状を保つためにアルコールによる拭き取りを行わない。
【0070】
<鮮度保持容器の製造方法>
本発明に係る鮮度保持容器の製造方法としては、例えば熱可塑性樹脂を主成分とする原料を溶融混練後、容器に成形することができる。特定化合物は溶融混練前に前記原料中に添加してもよいが、容器の成形後、容器の内側の表面に、特定化合物が0.002〜0.5g/m
2存在するように特定化合物を塗布してもよい。また、表面に特定化合物が0.002〜0.5g/m
2存在するシートまたはフィルムを、容器の内側の表面に接着剤等により貼着してもよい。なお、これらの方法は、容器の原料が熱可塑性樹脂の場合に限らず、熱硬化性樹脂、紙、金属等種々の材料からなる容器に適用することができる。
【0071】
本発明に係る鮮度保持容器において、容器への成形方法としては特に限定されない。例えば、鮮度保持容器の原料として熱可塑性樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂を溶融混練することにより、容器を構成するシートまたはフィルム(以下、「容器を構成するシートまたはフィルム」を「シート等」ということがある。)に成形する。溶融混練する方法としては、単軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー等を用いる方法が挙げられる。熱可塑性樹脂を連続的に溶融混練することで、厚み精度に優れたシート等を成形可能であり、生産効率も高い観点から、単軸押出機または二軸押出機を用いる方法が好ましい。また、多層のシート等を成形する場合には、単層のシート等を用いてドライラミネートによって多層のシート等を成形してもよい。また、押出ラミネートにより多層のシート等を成形してもよい。また、ドライラミネートおよび押出ラミネートを併用することにより多層のシート等を成形してもよい。しかしながら、生産効率の観点から押出ラミネートにより、多層のシート等を成形することが好ましい。なお、本明細書において、「多層」とは2層以上であることを示す。さらに、多層のシート等を成形する場合には、多層のシート等を構成する単層のシート等のラミネートする表面の濡れ指数が、層間剥離強度の安定化および向上の観点から、35dyn以上であることが好ましく、36dyn以上であることがより好ましく、37dyn以上であることがさらに好ましく、38dyn以上であることが特に好ましい。さらに、前記シート等は無延伸であってもよく、少なくとも一方向に延伸されていてもよい。前記シート等の全体の厚みは、容器に支障なく加工できれば特に限定されないが、加工容易性の観点から、100〜800μmが好ましく、150〜500μmがより好ましい。
【0072】
容器への成形方法としては、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プレス成形法、射出成形法、コンプレッション成形法、トランスファー成形法が成形安定性の観点から好ましく、得られる容器の品位が高く、生産効率が高い観点から、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プレス成形法がより好ましく、真空圧空成形法がさらに好ましい。
【0073】
また、容器の成形方法として、真空成形法、圧空成形法又は真空圧空成形法を用いる場合には、キャビティへの追従性の観点から、無延伸のシート等を用いることが好ましい。また、プラスチック成形用の汎用成形機を使用することができ、熱板または熱風を用いてシート等の表面温度を110〜150℃に予熱して、キャビティ温度を110〜150℃にしてキャビティに密着させることが好ましい。キャビティには、多数の細孔を設けてキャビティ内を減圧することで成形を行い、型の再現性の良好な容器を得ることができる。さらに、容器の成形方法として、真空成形法、圧空成形法又は真空圧空成形法を用いる場合には、プラグと称される押し込み装置を用いる、いわゆるプラグアシスト法を用いることにより、シート等の局所的な引き延ばしによる薄肉化を防止することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されない。本実施例における各評価は以下の方法により行った。
【0075】
(1)抗菌試験
JISZ2801に準じて抗菌試験を、大腸菌(Escherichia coli)を用いて行った。但し、鮮度保持容器の表面の状態を保つためにアルコールによるふき取りは行わなかった。
【0076】
1/500普通ブイヨン培地に大腸菌(Escherichia coli)を規定数量(前記抗菌試験で0.4ml用いたブイヨン)入れて4cm角のサンプル表面に滴下して、ポリエチレンフィルムとの間に挟み込んだ。35℃で24時間経過した後にサンプル表面を洗浄し、その普通ブイヨン培地を含む洗浄液を回収し、それを、普通寒天培地を用いて培養してコロニーの数をカウントした。
【0077】
即ち、顕微鏡下で菌の個数をカウントすることは困難なため、コロニーの数を目視によりカウントし、その1グラム(g)あたりのコロニーの数を生菌数CFU(colony forming unit)(単位[個/g])とした。また2枚のポリエチレンフィルムの間に挟み込んだサンプルをコントロール(Control)として、比較の基準とした。表1、2にはn=1から3の平均値も合わせて示した。但し、測定値のバラツキが10倍以上の場合には、JIS規格上平均値は計算できない。
【0078】
また、抗菌性のバラツキと、抗菌性能は以下の基準で評価した。
【0079】
(バラツキ)
なし:n=1〜3における最大値と最小値との比が10よりも小さい。
小:n=1〜3における最大値と最小値との比が10〜100の範囲内である。
大:n=1〜3における最大値と最小値との比が100よりも大きい。
【0080】
(抗菌性能)
◎:菌数が<10であり、事実上不検出である。
○:Controlとの比(実験結果/Control)が1/100以下である。
×:Controlとの比(実験結果/Control)が1/100より大きい。
【0081】
(2)鮮度保持包装体または容器表面のステアリルジエタノールアミンの量(g/m
2)
ステアリルジエタノールアミン(C18DEA)の表面量は以下の方法で求めた。23℃の環境下でサンプルの表面(A4大、0.06m
2)をジクロロメタン(20ml)で洗浄し、その洗浄液を回収し、濃縮定容し、シリル化した。その後、Aglient Technologies社製のGC/MSを用いてステアリルジエタノールアミンを定量して、サンプル表面のステアリルジエタノールアミンの量を求めた。なお、本発明においてステアリルジエタノールアミン以外の特定化合物を用いる場合にも、この方法により表面における特定化合物の定量を行う。
【0082】
[実施例1]
(無延伸ポリエチレン系フィルムの製造)
(1)中間層の材料
中間層の材料には、直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製、密度:0.94g/cm
3、MFR:4.0g/10分、融点:128℃)にステアリルジエタノールアミン(花王製)を添加した材料を用いた。該材料のステアリルジエタノールアミンの含有量は0.1質量%であった。
【0083】
(2)表面層の材料
表面層の材料には、直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製、密度:0.94g/cm
3、MFR:4.0g/10分、融点:128℃)に、シリカ(富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm))及びエルカ酸アミド(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753)を添加した材料を用いた。該材料のシリカ及びエルカ酸アミドの含有量は、それぞれ0.1質量%であった。
【0084】
(3)裏面層(内側の表面を形成する層)の材料
裏面層の材料には、直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製、密度:0.94g/cm
3、MFR:4.0g/10分、融点:119℃)に、ステアリルジエタノールアミン(花王製)、シリカ(富士シリシア化学社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm))及びエルカ酸アミド(チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名:ATMERSA1753)を添加した材料を用いた。該材料のステアリルジエタノールアミン、シリカ及びエルカ酸アミドの含有量は、それぞれ0.1質量%であった。
【0085】
(4)無延伸ポリエチレン系フィルムの成形
前記各材料を用いて、裏面層/中間層/表面層の3層キャストフィルムを層厚み比20/60/20で製造した。フィルムの成形は、押出機のダイス温度:200℃、チルロール温度:50℃の条件で行った。その後、得られたフィルムの表面層の表面をコロナ処理した。これにより、無延伸ポリエチレン系フィルムを得た。コロナ処理された表面の濡れ指数が38dyn以上であることを、和光純薬株式会社製の濡れ張力試験用混合液NO.38.0を用いて確認した。また、得られた無延伸ポリエチレン系フィルム全体の厚みは40μmであった。得られた無延伸ポリエチレン系フィルムに対して、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(鮮度保持容器の製造)
(1)ポリスチレンシートの製造
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:HF77、一般グレードポリスチレン、ISO1133 メルトマスフローレート:7.5(g/10分))を、シリンダーおよびダイス温度:200℃、チルロール温度:20℃の条件で成形し、厚み200μmのポリスチレンシートを得た。
【0087】
(2)ラミネート加工
前記無延伸ポリエチレン系フィルムの表面層側の表面と、前記ポリスチレンシートとをエステル系接着剤(商品名:タケラックA627、タケラックA65、三井化学社製)を用いて接着し、ラミネート加工を行った。エステル系接着剤には、タケラックA627(商品名、三井化学社製)とタケラックA65(商品名、三井化学社製)とを16/1の割合(質量比)で混合したものを用いた。これを溶剤としての酢酸エチルを用いて希釈し、塗工量が固形分として3g/m
2となるようにした。
【0088】
(3)真空成形
予熱ヒーター温度を300℃にし、前記ラミネート加工後のシートの表面温度が120℃に上昇したところで、成形を行った。予熱時間は20秒であった。またキャビティの設定温度は20℃、プラグの設定温度は20℃、成形時間(型内保持時間)は5秒であった。これにより、鮮度保持容器を得た。得られた鮮度保持容器に対して、前記評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2]
無延伸ポリエチレン系フィルム全体の厚みを50μmとした以外は実施例1と同様に無延伸ポリエチレン系フィルムおよび鮮度保持容器を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0090】
[比較例1]
無延伸ポリエチレン系フィルム全体の厚みを30μmとした以外は実施例1と同様に無延伸ポリエチレン系フィルムおよび鮮度保持容器を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表1の実施例1、2、比較例1に示されるように、厚みが30μm、40μm又は50μmの無延伸ポリエチレン系フィルムは抗菌性を有していた。また、比較例1において、ステアリルジエタノールアミンの表面量を測定したところ、0.0034g/m
2であり、0.002g/m
2よりも多く、特定化合物が十分にブリードアウトしていることが確認できた。
【0093】
また、表1の実施例1、2に示されるように、厚みが40μm又は50μmの無延伸ポリエチレン系フィルムをラミネート加工して得た鮮度保持容器の抗菌性は十分であった。また、ステアリルジエタノールアミンの表面量も0.0033g/m
2、0.0037g/m
2であり、0.002g/m
2よりも多かった。フィルムの厚みを厚くすることで、ラミネート加工時に特定化合物が表面層側に移行しても、十分な抗菌性が得られる量の特定化合物が内側の表面に残ったと推定される。
【0094】
一方、表1の比較例1に示されるように、厚みが30μmの無延伸ポリエチレン系フィルムをラミネート加工して得た鮮度保持容器は抗菌性が不十分であった。また、ステアリルジエタノールアミンの表面量は0.0019g/m
2であり、0.002g/m
2よりも少なかった。フィルムの状態では十分にブリードアウトしていた特定化合物が、ラミネート加工時に使用した溶剤により表面層側に移行したためと推定される。
【0095】
[実施例3]
(鮮度保持容器の製造)
(1)ポリスチレンシートの製造
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:HF77、一般グレードポリスチレン、ISO1133 メルトマスフローレート:7.5(g/10分))に対し、ステアリルジエタノールアミン(花王製)を0.1質量%添加した材料を、シリンダーおよびダイス温度:200℃、チルロール温度:20℃の条件で成形し、厚み200μmのポリスチレンシートを得た。
【0096】
(2)真空成形
予熱ヒーター温度を300℃にし、前記ポリスチレンシートの表面温度が120℃に上昇したところで、成形を行った。予熱時間は20秒であった。またキャビティの設定温度は20℃、プラグの設定温度は20℃、成形時間(型内保持時間)5秒であった。これにより、鮮度保持容器を得た。得られた鮮度保持容器に対して、前記評価を行った。結果を表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
表2に示されるように、実施例3において抗菌試験を行った結果、直接ポリスチレンにステアリルジエタノールアミンを練りこんだ材料を用いた厚み200μmの鮮度保持容器は抗菌性を有しており、ばらつきもほとんどなかった。また、ステアリルジエタノールアミンの表面量を測定したところ、0.0027g/m
2であり、0.002mg/m
2よりも多く、特定化合物であるステアリルジエタノールアミンが十分にブリードアウトして内側の表面に存在していることが確認された。
【0099】
[実施例4]
実施例1と同様の方法により作製した無延伸ポリエチレン系フィルムを用いて、裏面層を内面として、間口200mm、内寸200mm×300mmの鮮度保持包装体を作製した。
【0100】
[比較例2]
中間層の材料及び裏面層の材料にステアリルジエタノールアミンを添加せず、無延伸ポリエチレン系フィルム全体の厚みを50μmに変更した以外は、実施例1と同様に無延伸ポリエチレン系フィルムを作製した。該無延伸ポリエチレン系フィルムを用いて実施例4と同様に鮮度保持包装体を作製した。
【0101】
実施例4および比較例2において得られた鮮度保持包装体の物性を表3に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
実施例4および比較例2において得られた鮮度保持包装体を用いて、以下の実験1から3を行った。
【0104】
[実験1]
大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)及び乳酸桿菌(Lactrobacillus casei JCM 1134)を、それぞれNutrient Broth(NB)培地にて、35℃で24時間培養後、1/500NB培地を用いて希釈し、菌懸濁液を調製した。
【0105】
実施例4および比較例2において得られた鮮度保持包装体の内部に、それぞれの菌懸濁液(4mL)を注加し、菌懸濁液と鮮度保持包装体との接触面積が200cm
2を越えるようにして押し広げ、25℃で24時間静置した。菌懸濁液を回収し、滅菌リン酸緩衝生理食塩水を用いて段階希釈後、SCDLP寒天培地を用いた混釈培養(35℃、48時間)により、24時間後の生菌数(個/ml)を測定した。初期の生菌数(個/ml)は、菌懸濁液について同様の方法で測定した。結果を表4に示す。
【0106】
【表4】
【0107】
表4から明らかなように、乳酸桿菌または大腸菌を含む菌懸濁液を実施例4の鮮度保持包装体の内部に添加した場合、24時間後の生菌数は比較例2に対し大凡1/1000であり、菌数の増加が大幅に抑制された。
【0108】
[実験2]
冷凍牛肉を4℃で24時間静置して解凍した後、等量の滅菌蒸留水を注加し均質化した。その後、肉汁(肉汁原液)を採取し、肉汁原液と滅菌蒸留水とを用いて、肉汁原液の10倍および100倍希釈液を調製した。つぎに、肉汁原液の10倍および100倍希釈液に含まれる微生物の菌濃度が肉汁原液と同等になるように、肉汁原液の一部より遠心分離処理にて回収した微生物を、滅菌蒸留水にて2回菌体洗浄した後に、肉汁原液の10倍および100倍希釈液に添加した。
【0109】
調製された肉汁3種(肉汁原液、10倍希釈液、100倍希釈液)を、それぞれ実施例4および比較例2において得られた鮮度保持包装体の内部に5mLずつ注加し、肉汁と鮮度保持包装体との接触面積が200cm
2を越えるようにして押し広げ、24時間静置した。肉汁を回収し、滅菌リン酸緩衝生理食塩水を用いて段階希釈後、標準寒天培地を用いた混釈培養(35℃、48時間)により、24時間後の生菌数(個/ml)を測定した。初期の生菌数(個/ml)は、肉汁3種について同様の方法で測定した。結果を表5に示す。
【0110】
【表5】
【0111】
表5から明らかなように、肉汁原液、10倍希釈液および100倍希釈液の全てにおいて、実施例4の鮮度保持包装体の内部に添加した場合、24時間後のドリップ中の生菌数は比較例2に対し1/2〜1/5であり、菌数の増加が抑制された。ここで実験1に比べて実施例4と比較例2との差が小さい理由は、一般生菌には特定化合物の抗菌効果が得られない枯草菌が多く含まれているためと推定される。なお、枯草菌はいわゆる納豆菌とも呼ばれ、人体に害のない菌である。
【0112】
[実験3]
乳酸桿菌(Lactobacillus casei JCM1134)を、MRS寒天培地を用いて35℃で48時間培養した。菌体をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁後、遠心分離処理する菌体洗浄を2回行い、その後PBSを用いて希釈して菌懸濁液を調製した。該菌懸濁液を、市販の無菌牛脱繊維血液の原液、該原液の10倍および100倍希釈液(PBSを用いて調製)に、濃度が等しくなるように接種した。
【0113】
調製された血液3種(原液、10倍希釈液、100倍希釈液)を、それぞれ実施例4および比較例2において得られた鮮度保持包装体の内部に5mLずつ注加し、血液と鮮度保持包装体との接触面積が200cm
2を越えるようにして押し広げ、25℃で24時間静置した。血液を回収し、滅菌リン酸緩衝生理食塩水を用いて段階希釈後、MRS寒天培地を用いた混釈培養(35℃、48時間)により、24時間後の生菌数(個/ml)を測定した。初期の生菌数(個/ml)は、10倍希釈液について同様の方法で測定した。結果を表6に示す。また、24時間後の血液をシャーレに入れて並べて観察を行った。結果を
図1に示す。
【0114】
【表6】
【0115】
生菌数については、実施例4の方が比較例2よりも、原液、10倍希釈液、100倍希釈液のいずれにおいてもやや低いものの、大きな差はなかった。一方、表6および
図1に示される写真のように、10倍希釈液および100倍希釈液において、比較例2では実施例4と比べて濁りが発生した。実施例4では、鮮度保持包装体の内側の表面に所定量存在する特定化合物が、過酸化水素を発生する乳酸桿菌の増殖を抑制することで牛血の色相変化を抑制したと推定される。