特許第6771025号(P6771025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6771025流体の流れからのエネルギー変換のための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771025
(24)【登録日】2020年9月30日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】流体の流れからのエネルギー変換のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   F03D 5/00 20060101AFI20201012BHJP
   F03B 17/06 20060101ALI20201012BHJP
   F03B 13/26 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   F03D5/00
   F03B17/06
   F03B13/26
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-513259(P2018-513259)
(86)(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公表番号】特表2018-514708(P2018-514708A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】NL2016050353
(87)【国際公開番号】WO2016186498
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】2014817
(32)【優先日】2015年5月18日
(33)【優先権主張国】NL
(31)【優先権主張番号】2014816
(32)【優先日】2015年5月18日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】517405080
【氏名又は名称】シーカレント ホールディングス ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェンツェル、ユーリ
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0093644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 5/00
F03B 13/26
F03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れ(50)からのエネルギー変換のためのシステム(1)であって、流体駆動装置(200)と、テザー(300)およびベースステーション(400)とを備え、前記流体駆動装置(200)は前記テザー(300)に結合されており、前記テザー(300)は前記ベースステーション(400)に結合されており、前記流体駆動装置(200)は少なくとも2つの調節可能なベーン(240)である第1のベーン(255)および第2のベーン(256)を有しており、前記ベーンはお互いに独立して任意に調節可能であり、使用中および流体の流れ(50)を受ける間、前記第1のベーン(255)および前記第2のベーン(256)はお互いに追随した位置を占めるシステムにおいて、
a)各ベーン(240)は、前縁(246)および後縁(247)を有し、
b)前記システム(1)は仕事モードと引き戻しモードとを有し、
c)前記ベーン(240)がフレーム(220)に沿って一列に配置され、前記引き戻しモードにおいては前記第1のベーン(255)の前縁(246)が前記第1のベーン(255)に隣接する前記第2のベーン(256)の後縁(247)の方を向くこと
を特徴とするシステム。
【請求項2】
前記システム(1)が、ベーン位置決めシステム(260)を備えており、前記ベーン位置決めシステムが以下のものを有することを特徴とする請求項1に記載のシステム:
a)前記調節可能なベーン(240)の近傍の流体方向の見かけの流れを判定するための流体流れ方向表示センサ(261)と、
b)受信を行うように前記流体流れ方向表示センサ(261)と接続されたコントローラ(262)と、
c)受信を行うように前記コントローラ(262)と接続されたアクチュエータ(263)であって、前記調節可能なベーン(240)の近傍にある流体流れ方向表示センサ(261)によって測定される流体の見かけの流れの方向に依存する前記コントローラの制御動作によって引き起こされる流体の見かけの流れを参照して前記調節可能なベーン(240)の向きを変更するアクチュエータ。
【請求項3】
少なくとも1つの調節可能なベーン(240)が以下のものを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシステム:
a)本体(243)。この本体(243)には前方部(244)および後方部(245)が設けられており、前記後方部(245)は前記前方部(244)の先端部との比較において相対的に鋭く端部へ延びている。
b)前記前方部(244)の最前縁である前縁(246)。
c)前記後方部(245)の最後縁である後縁(247)。
d)前縁(246)と後縁(247)とを結ぶ仮想的直線の翼弦線(248)。
e)前記前縁(246)と前記後縁(247)とを結ぶ仮想的キャンバ線(249)。これは前記前縁(246)と前記後縁(247)との間で前記本体(243)の上面(250)および下面(251)から等しい距離に位置する任意の点を通り、前記前縁(246)よりも前記後縁(247)に近い点で前記翼弦線(248)と交差するように配置されている。
【請求項4】
少なくとも1つの調節可能なベーン(240)が第1の部分(241)および第2の部分(242)を有し、それによって両部分がそれぞれ互いに独立して調節可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
流体駆動装置(200)には、調整可能なベーン(240)のためのフレーム(220)が設けられており、フレーム(220)は本体(221)を備え、本体(221)は前方部(222)および後方部(223)を備え、前記後方部(223)は、前記前方部(222)の先端部との比較において相対的に鋭く端部へ延びていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ベースステーション(400)は、変換装置(410)と、前記変換装置(410)の接続のための手段を備えたベース構造体(450)とを備え、前記変換装置は水圧流体を変位させるための少なくとも1つの水圧シリンダ(410)を備えており、テザー(300)がピストンロッド(413)を介して前記水圧シリンダのピストン(412)に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ベースステーション(400)が、変換装置(410)と、前記変換装置(410)の接続のための手段を備えたベース構造体(450)とを備え、前記変換装置(410)が、テザー(300)が接続可能なピストンロッド(413)と、ピストンロッド回転制御システム(430)とを備えた水圧シリンダを備えており、ピストンロッド回転制御システムが以下のものを有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のシステム:
a)流体駆動装置(200)の向きを監視するための向きセンサ(271)と、
b)受信を行うように前記向きセンサ(271)に接続されたコントローラ(432)と、
c)受信を行うように前記コントローラ(432)に接続されていて、ピストンロッド(413)およびこれに連結されたテザー(300)が流体駆動装置(200)の向きに従うようにピストンロッド(413)を駆動するアクチュエータ(434)。
【請求項8】
前記ベースステーション(400)が、変換装置(410)と、前記変換装置(410)の接続のための手段を備えたベース構造体(450)とを備え、前記ベース構造体(450)が以下のものを有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のシステム:
a)輸送可能なエネルギーを伝達するための少なくとも1つの伝導路(700)に連結された固定内側体(451)と、
b)前記固定内側体(451)上に回転可能に取り付けられた外側体(452)であって、前記外側体(452)は、輸送可能なエネルギーを前記変換装置(410)とやりとりするための少なくとも1つの伝導路(700)と、前記輸送可能なエネルギーが前記固定内側体(451)へ自由に流出入可能に流れるよう配置されるように前記固定内側体(451)と連通する囲繞部(464)とが設けられている。
【請求項9】
前記ベースステーションが、脈動ダンパー(454)を備えたベース構造体(450)を有することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記ベースステーション(400)は係留手段(480)を備え、前記ベース構造体(450)は内側部(451)を備え、前記係留手段(480)は上側部(481)を備え、内側部(451)がこの上側部(481)の周りに嵌合することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記ベースステーション(400)は、輸送可能なエネルギーの輸送のための可撓性伝導路(700)を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
流体の流れ(50)からのエネルギー変換のための方法であって、流体駆動装置(200)、テザー(300)およびベースステーション(400)が設けられており、前記流体駆動装置(200)がテザー(300)に接続され、テザー(300)がベースステーション(400)に結合されていて、以下のステップを含む方法:
c)少なくとも2つの調節可能なベーン(240)である第1のベーン(255)および第2のベーン(256)を前記流体駆動装置(200)に設け、
d)仕事モードと引き戻しモードとを用意し、ここで前記仕事モード中および流体の流れ(50)を受ける間、前記第1のベーン(255)および前記第2のベーン(256)は互いに追随する位置を占め、前記第1のベーン(255)および前記第2のベーン(256)は流体の流れに対して所望の迎え角に配置されるようにし、
以下のステップを特徴とする:
e)調節可能なベーン(240)を有する流体駆動装置(200)を設け、ここでベーン(240)のそれぞれは前縁(246)と後縁(247)とを備えるものとし、
f)ベーン(240)をフレーム(220)に沿って一列に配置し、これにより前記ベーン(240)を、前記引き戻しモードの一部において第1のベーン(255)の前縁(246)が前記第1のベーン(255)に隣接する第2のベーン(256)の後縁(247)の方を向くように設定する。
【請求項13】
水圧シリンダを含む変換装置(410)を前記ベースステーション(400)に設け、前記テザーを前記水圧シリンダに接続して、前記水圧シリンダから前記水圧シリンダが部分を成す水圧システム内へと水圧流体を変位させるようにすることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
ピストンロッド回転システム(430)が設けられた水圧シリンダを備えた変換装置(410)を前記ベースステーション(400)に設けるステップと、前記テザー(300)を前記水圧シリンダのピストンロッド(413)に取り付けるステップと、流体駆動装置の向きを測定し、それに応じてテザー(300)における捻れおよび抗力の損失を防止するようにピストンロッド(413)を回転させることによって流体駆動装置(200)の動きにテザー(300)を合わせるステップと、を特徴とする請求項12または請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
ベースステーション(400)に、変換装置(410)およびベース構造体(450)を設け、ここでベース構造体は、固定内側体(451)および前記固定内側体(451)に回転可能に取り付けられた外側体(452)と、前記内側体(451)および前記外側体(452)と連通していて内側体(451)と外側本体(452)との間で輸送可能なエネルギーが自由に流れることができるようになっている囲繞部(464)とを有するものとし、これにより前記流体駆動装置(200)が、ベース構造体の周りを自由に回転し、また時間とともに変化する流体の流れの方向に追従するようにすることを特徴とする請求項12ないし請求項14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
輸送可能なエネルギーの輸送のための可撓性伝導路(700)を前記ベースステーション(400)に設けることを特徴とする請求項12ないし請求項15のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れから輸送可能なエネルギーへのエネルギー変換のためのシステムであって、テザーに接続された流体駆動装置を備え、テザーがベースステーションに結合されているものに関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年間で、人類の消費に係るエネルギー需要は顕著に増加しており、世界人口の増加によりエネルギー需要はさらに拡大すると予測されている。エネルギーは、物理学者の定義によれば、創造することも消滅させることもできない。しかし、エネルギーは異なる形態に変換されたり伝達されたりすることはある。その形態は、例えば機械的エネルギーであったり電気的エネルギーであったりする。現代においては、供給される機械的エネルギーおよび電気的エネルギーの大部分は、化石燃料の燃焼によるエネルギー変換を基礎としている。こうした化石燃料は数十億年前に生じたものであり、人類はこれらの化石燃料を数百年にわたって利用すると予測されている。ある時点で化石燃料が使い果たされてしまうという問題のほかに、化石燃料の燃焼が大気汚染と温室効果ガスの発生に大きく寄与していることが調査によって示されている。温室効果ガスの発生により、地球の表面温度は、地球上のほとんどの生態系に影響を及ぼす歴史的類推域を超える可能性があると予測されている。
【0003】
将来に向けて、貴重な化石資源を節約することが提案されており、化石燃料に完全に依存しているものはエネルギーの代替形態、好ましくは風力、太陽、潮汐エネルギーなどの再生可能エネルギーが、化石燃料の直接需要を低くするために、例えば、電力の発生に用いられる。
【0004】
再生可能エネルギーは、世界のエネルギー需要のための資源として認識されてきたが、再生可能エネルギーの性質上、取り組むべきいくつかの問題がある。その一つは、利用可能なエネルギーの量が限られていることである。さらに、再生可能エネルギーを得るために利用可能な場所の数は限られている。このことから、再生可能エネルギーが世界のエネルギー需要に対し大きく貢献しなければならないのであれば、利用可能な場所において可能な限り高い変換率で再生可能エネルギーの変換を行う必要があると結論づけることができる。さらなる課題は、再生可能エネルギーの価格が、市場が従来のエネルギーから再生可能エネルギーへの移行を実行できる程度のものでなければならないことである。これは、変換が費用対効果の高いものでなければならないという追加要件をもたらす。
【0005】
人類は流体の流れ、例えば風や流水からエネルギーの変換を行ってきた。流水からのエネルギー変換は、風からのエネルギー変換と多くの類似点がある。しかし違いもあり、水の密度は空気密度の約1000倍であり、一般に流水の速度は風の速度よりも小さく、潮流や湾岸流のような水の流れは風のものより予測性が高い。さらに、風と水の流れの速度プロファイルにも違いが見られる。例えば、潮流の流体の流れは均質ではなく、その流れはいくつかのプロセスの複雑な相互作用であることが知られている。海面での波動渦と海底によって形成された渦は、潮流の速度プロファイルに大きな影響を与え、こうした種類の流水域からのエネルギーを変換行うにあたっての実用上の問題を引き起こす。
【0006】
発明者ゲイリー・ディーン・ラグナー(Gary Dean Ragner)による2002年4月11日の特許文献1は、複数の翼カイトを直列に配置して、制御ラインおよび支持ラインによって制御ハウジングに取り付ける。制御ラインは、翼カイトの迎え角、ピッチ角、飛行方向、および飛行速度を制御するために長さを変えることができる。制御ラインの長さは地上ステーションから制御され、翼の方向を特定の飛行経路に従うように調節する。制御ラインおよび支持ラインは、制御ハウジング内の動力シャフトに巻かれてもいる。この既知のシステムの制御は複雑であり、長い制御ケーブルのためにシステムを制御することは困難である。それらを巻き取る必要があるため、ケーブルは激しい裂けや摩耗を受け、検査やメンテナンスの作業が頻繁に行われる。さらに、この既知のシステムが短い半径方向のターンを行うことができないため、このシステムは、数字の8または楕円形の軌道で動作し、大きなエネルギー漏れを起こす。また、翼カイトを直列させて制御するため、各翼カイトの迎え角を個別に調節することはできない。カイトの列が長いため、個々のカイトが受ける見かけの流れの方向が互いに異なるので、このことは不都合である。
【0007】
前述のシステムの他にも、エネルギーを変換することができる他のタイプのシステムが知られているが、あらゆる既知のシステムには多くの欠点がある:
a)既知のシステムの変換効率は低く、その結果、得られるエネルギーの大部分は変更のないままである。現在、この欠点を緩和する一般的な方法は、複数のシステムを直列に設置することである。第1のシステムの下流に設置されたシステムの機能は、単に第1のシステムの弱い性能を補うだけである。このようなひと繋がりのシステムを開発するコストは、一度に利用可能なエネルギーを変換できる単一システムの導入よりもはるかに高いことは言うまでもない。
b)既知のシステムは、変換されたエネルギーの変換および輸送中に著しい損失を原因とする低効率という問題点を抱える。ほとんどの場合、変換されたエネルギーは遠隔地で消費されるので、エネルギーの輸送中の損失はシステムの性能に大きな影響を与える。
c)既知のシステムで使用されている構成要素は、広範囲にわたって裂けや摩耗を受けたり、検査とメンテナンスが複雑で高価なシステムが設計されていたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/004090948A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、このシステムおよび他の既知のシステムの代替を提供することである。本発明のさらなる目的は、従来技術を改良し、相対的に効率的なエネルギー変換のためのシステムおよび方法を提供することである。本発明のさらに別の目的は、制御および維持が容易なエネルギー変換のためのシステムおよび方法を提供することである。
【0010】
以下の開示から明らかになる本発明のこれらの目的および他の目的および利点は、添付の特許請求の範囲のいずれか1つによるシステム、ベースステーション、および方法によって提供される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様では、流体の流れからのエネルギー変換のためのシステムであって、流体駆動装置と、テザーおよびベースステーションとを備え、前記流体駆動装置は前記テザーに結合されており、前記テザーは前記ベースステーションに結合されており、前記流体駆動装置は少なくとも2つの調節可能なベーンである第1のベーンおよび第2のベーンを有しており、使用中および流体の流れを受ける間、前記第1のベーンおよび前記第2のベーンはお互いに追随した位置を占めるシステムにおいて、
a)各ベーンは、前縁および後縁を有し、
b)前記システムは仕事モードと引き戻しモードとを有し、
c)前記ベーンがフレームに沿って一列に配置され、前記引き戻しモードにおいては前記第1のベーンの前縁が前記第1のベーンに隣接する前記第2のベーンの後縁の方を向くことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記ベーンはお互いに独立して任意に調節可能である。少なくとも2つの調節可能なベーンを用いることで、特に好ましい構成において、エネルギーは流体の流れから最大の伸びまでエネルギーを変換することができ、調節可能なベーンは、流体の見かけの流れの方向に対して個々に、適切な迎え角で流れを受ける。
【0013】
調節可能なベーンを最適な迎え角に配置するためには、システムが、好ましくは調節可能なベーンがベーン位置決めシステム備えていることが望ましく、このベーン位置決めシステムは以下のものを有する:前記調節可能なベーンの近傍の流体方向の見かけの流れを判定するための流体流れ方向表示センサと、受信を行うように前記流体流れ方向表示センサと接続されたコントローラと、受信を行うように前記コントローラと接続されたアクチュエータであって、前記調節可能なベーンの近傍にある流体流れ方向表示センサによって測定される流体の見かけの流れの方向に依存する前記コントローラの制御動作によって引き起こされる流体の見かけの流れを参照して前記調節可能なベーンの向きを変更するアクチュエータ。
【0014】
ベーン位置決めシステムがベーンの内側に位置することが好ましいが、流体駆動装置のフレームに一体化して設けてもよい。
【0015】
ベーン位置決めシステムの代替として、調節可能なベーンが以下のものを備えてもよい:本体。この本体には前方部および後方部が設けられており、前記後方部は前記前方部の先端部との比較において相対的に鋭く先端部へ延びている。前記前方部の最前縁である前縁。前記後方部の最後縁である後縁。前縁と後縁とを結ぶ仮想的直線の翼弦線。前記前縁と前記後縁とを結ぶ仮想的キャンバ線。これは前記前縁と前記後縁との間で前記本体の上面および下面から等しい距離に位置する任意の点を通り、前記前縁よりも前記後縁に近い点で前記翼弦線と交差するように配置されている。こうした自己位置決め式のベーンを用いると、特に、自己位置決め式のベーンが流体の見かけの流れに対して所望の迎え角に位置するように配置することによって、システムの変換率が最適化される。
【0016】
流体駆動装置を所定の経路に沿って操舵するためには、システムの流体駆動装置に少なくとも1つの調節可能なベーンを設け、それにより、少なくとも1つの調節可能なベーンが第1の部分および第2の部分を有し、それによって両部分がそれぞれ互いに独立して調節可能であることが好ましい。第1の部分と第2の部分は実質的に等しい寸法を有し、第1の部分と第2の部分は互いに一直線上に位置することが好ましい。
【0017】
これに関連して、流体駆動装置は操舵システムを備えることが好ましく、操舵システムは向き表示センサと、この向き表示センサと受信を行うように接続されたコントローラと、コントローラと受信を行うように接続されるアクチュエータであって、向き表示センサで測定されたフレームの向きに依存する前記コントローラの制御動作によって引き起こされる流体の流れを参照して調節可能なベーンの第1の部分と第2の部分の向きを変更するアクチュエータを有する。流体駆動装置のフレームまたはフレームの少なくとも一部が本体を有し、本体に前方部および後方部が設けられ、後方部が前方部の先端と比べて相対的に鋭く先端へ伸びていることが好適である。
【0018】
このような調節可能なベーン、フレームおよび操舵システムを用いることで、流体駆動装置を、流体の流れからのエネルギー変換が最大限に引き出され且つエネルギー損失が最小の予め定められた経路に沿って容易に案内することができ、特に、流体駆動装置はベーンの第1の部分と第2の部分の位置をお互いに変更するだけで短い半径の転回を行うことができる。
【0019】
本発明の別の態様では、システムのベースステーションは、変換装置と、前記変換装置の接続のための手段を備えたベース構造体とを備え、前記変換装置は水圧シリンダを備えている。流体駆動装置をベースステーションに接続するテザーは、次いで、ピストンロッドを介して水圧シリンダ内で移動可能なピストンに接続されてもよく、ピストンの移動により水圧シリンダが部分を成す水圧システム内へと水圧流体を変位させるようにすることができる。この水圧流体は、例えば、発電機を駆動する水圧モータを駆動するために使用することができ、あるいは水圧流体の変位に係るエネルギーを利用可能にするために使用することができる。
【0020】
テザーのねじれおよびシステム使用中の抗力によって生じるエネルギー損失を防止するために、変換装置は、テザーが接続可能なピストンロッドと、ピストンロッド回転制御システムとを備えた水圧シリンダを有しており、ピストンロッド回転制御システムは、流体駆動装置の向きを監視するための向きセンサと、受信を行うように前記向きセンサに接続されたコントローラと、受信を行うように前記コントローラに接続されていて、ピストンロッドおよびこれに連結されたテザーが流体駆動装置の向きに従うようにピストンロッドを駆動するアクチュエータとを有する。
【0021】
ピストンロッド回転制御システムのアクチュエータは、好ましくは、第1の側方部および第2の側方部を備え、第1の側方部はピストンロッドまたはピストンに取り付けられ、第2の側方部は、シリンダ底部またはシリンダバレルに、伸縮自在管を用いて接続される。これに代えて、ピストンロッド回転制御システムは、水圧シリンダバレルの外側に配置されたアクチュエータを備えてもよい。
【0022】
テザーを介してベースステーションから信号および電力を流体駆動装置に伝達するためには、水圧シリンダに中空のピストンロッドと内側部品とを含む回転可能な継手が設けられていることが好ましく、内側部品は中空ピストンロッドに取り付けられ、内側部品は、内側部品との間で輸送可能媒体を輸送するための伝導路の接続用の少なくとも1つのコネクタと、外側部品とを備え、外側部品は、内側部品上に回転可能に取り付けられ、外側部品は、外側部品との間で輸送可能媒体を輸送するための伝導路の接続用の少なくとも1つのコネクタと、内側部品と連通して輸送可能媒体が内側部品に自由に流れることができるようにする囲繞部が設けられている。外側部品を水圧シリンダバレルに対して固定位置に保持するために、外側部品は、伸縮自在管によってシリンダ底部またはシリンダバレルに接続されることが好ましい。
【0023】
本発明の別の態様では、システムのベースステーションは、変換装置と、変換装置の接続のための手段が設けられたベース構造体とを備え、ベース構造体が、輸送可能なエネルギーを伝達するための伝導路に連結された固定内側体と、前記固定内側体上に回転可能に取り付けられた外側体とを有し、前記外側体には、輸送可能なエネルギーを前記変換装置とやりとりするための伝導路と、前記輸送可能なエネルギーが前記固定内側体へ自由に流出入可能となるよう配置されるように前記固定内側体と連通する囲繞部とが設けられている。このようなベース構造体により、システムは、特に、流体駆動装置がベース構造体の周りを自由に回転することができることによって、その方向を時間の経過とともに変化させる流体の流れの内に配備することができ、それにより変換されたエネルギーを連続的に輸送することができ、このシステムは、流体の流れの方向が時間の経過と共に変化したときでも、稼働状態を維持することができる。
【0024】
ベースステーションがその一部を成す水圧システムにおけるピーク圧力を低減するためには、ベースユニットに脈動ダンパーを設けることが好ましい。脈動ダンパーは、チャンバの底部またはその近くに接続部が設けられたチャンバを備え、チャンバの上部がガスで満たされることが好ましい。
【0025】
ベースステーションが水没したベースステーションである場合、ベースステーションに係留手段が設けられ、前記ベース構造体は内側体を備え、前記係留手段は上側部を備え、内側体がこの上側部の周りに嵌合することが好ましい。これに関連して、ベースステーションは輸送可能なエネルギーを輸送するための可撓性伝導路を備えていることが好ましい。このようなタイプのエネルギー伝導路は、ベースステーションの移動を容易にするために望ましいものである。これは、水没したベースステーションを検査および保守のために水面に持ち上げるときに特に重要である。特にこの状況では、水没した伝導路が底部の上方に浮遊した状態に保つ浮力手段が設けられ、ベースステーションの一部が異なる位置に移動する間でも伝導路の取り扱いを容易にすることが好ましい。
【0026】
好ましい構成は、水圧シリンダと可撓性パイプまたはホースとを備えた変換装置を含むベースステーションであるが、変形装置は、力を輸送可能なエネルギーに変換することができる任意のタイプの装置、例えば電気ケーブルを含むエネルギー伝導路と組み合わせてケーブルスプールに結合される発電機でもよい。
【0027】
システムが流水を実体とする流体の流れに使用される場合、水没した流体駆動装置には浮力チャンバが設けられているのが好ましく、浮力チャンバは浮力物質を内包するベーンの閉じた部分である。流体駆動装置に浮力チャンバを設けることにより、流体駆動装置の浮力係数は、浮力物質を追加または放出することによって容易に調節することができる。特に、ある瞬間に流体の流れの速度がゼロであり、流体駆動装置の位置を能動的に制御する必要がある状況では、流体駆動装置に、浮力制御システムが設けられていることが好ましく、この浮力制御システムは、位置表示センサと、前記位置表示センサと受信可能に接続されたコントローラと、ポンプ装置に接続された少なくとも1つの浮力チャンバとを備え、ポンプ装置は、位置表示センサで測定された流体駆動装置の位置に依存する前記コントローラの制御動作によって引き起こされる、使用中において底部または水面に対する流体駆動装置の位置の変更のために前記コントローラと受信可能に接続されている。
【0028】
本発明はまた、流体の流れからのエネルギー変換のための方法としても実現され、この方法では、流体駆動装置、テザーおよびベースステーションが設けられており、前記流体駆動装置がテザーに接続され、テザーがベースステーションに結合されていて、以下のステップを含む:
a)少なくとも2つの調節可能なベーンである第1のベーンおよび第2のベーンを前記流体駆動装置に設け、
b)仕事モードと引き戻しモードとを用意し、ここで前記仕事モード中および流体の流れを受ける間、前記第1のベーンおよび前記第2のベーンは互いに追随する位置を占め、前記第1のベーンおよび前記第2のベーンは流体の流れに対して所望の迎え角に配置されるようにする。
【0029】
本発明において、この方法は、調節可能なベーンを有する流体駆動装置を設け、ここでベーンのそれぞれは前縁と後縁とを備えるものとするステップと、ベーンをフレームに沿って一列に配置し、これにより前記ベーンを、前記引き戻しモードの一部において第1のベーンの前縁が前記第1のベーンに隣接する第2のベーンの後縁の方を向くように設定するステップと、を特徴とする。
【0030】
本発明の方法の別の態様によれば、流体駆動装置は、第1の部分と第2の部分とを有する少なくとも1つの調節可能なベーンを備え、それにより、両方の部分が互いに独立して調節可能である。本発明の方法の1つの特定の態様は、引き戻しモード中の特定の瞬間に、ベーンの第1の部分および第2の部分が互いに予め定められた位置に設定され、流体の流れに対して流体駆動装置が最適な予め定められた経路に追随することを可能にする短い半径の転回を行うようにして、それにより流体の流れから最小のエネルギー漏れで最大のエネルギーが変換されるようにする。
【0031】
仕事モードおよび引き戻しモード中にベーンを好ましい位置に設定することにより、仕事モード中にシステムによって行われる仕事は、引き戻しモード中にシステムに供給される仕事よりも大きく、そうした正味出力が供給される。仕事モードから引き戻しモードへの切り替え、およびその逆の切り替えの制御は、ベーンの位置を変更することによって簡単に行うことができる。
【0032】
好ましくは、仕事モードでは、流体駆動装置のベースステーションへの距離は増加するが、引き戻しモードにあるときは流体駆動装置のベースステーションまでの距離は減少する。ベーンを仕事モードおよび引き戻しモードで適切な位置に設定することと組み合わせて、仕事モードおよび引き戻しモードを連続的かつ迅速に交替させることができる。
【0033】
本発明の別の態様によれば、この方法は、水圧シリンダを含む変換装置をベースステーションに設け、水圧シリンダのピストンにテザーを接続して、水圧流体を水圧シリンダから水圧シリンダが一部を成す水圧システムへと変位させるようにすることを特徴とする。
【0034】
本発明の別の態様によれば、この方法は、ピストンロッド回転システムが設けられた水圧シリンダを備えた変換装置を前記ベースステーションに設けるステップと、前記テザーを前記水圧シリンダのピストンロッドに取り付けるステップと、流体駆動装置の向きを測定し、それに応じてテザーにおける捻れおよび抗力の損失を防止するようにピストンロッドを回転させることによって流体駆動装置の動きにテザーを合わせるステップと、を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明の別の態様によれば、本発明の方法は、ベースステーションに、変換装置およびベース構造体を設け、ここでベース構造体は、固定内側体および前記固定内側体に回転可能に取り付けられた外側体と、前記内側体および前記外側体と連通していて内側体と外側本体との間で輸送可能なエネルギーが自由に流れることができるようになっている囲繞部とを有するものとし、これにより前記流体駆動装置が、ベース構造体の周りを自由に回転し、また時間とともに変化する流体の流れの方向に追従するようにすることを特徴とする。
【0036】
本方法の別の態様によれば、この方法は、輸送可能なエネルギーの輸送のための可撓性伝導路を前記ベースステーションに設けるようにすることを特徴とする。
【0037】
本発明のシステムおよび方法では、エネルギーが流体の流れから最大限に変換され、変換されたエネルギーがベースステーションから離れた場所に効率的に輸送される。離れた場所は、例えば、得られたエネルギーを電気エネルギーに変換するための補助設備を配置することができる人工島や自然島であり、電気エネルギーは、大きな損失なしに、これに限定するわけではないが特に直流電流で輸送することができる。さらに、電気エネルギーは、適切な電圧レベルを用意することによって、あるいは交流から直流または直流から交流に変換することによって、使用されている輸送手段にできるだけ適合させることが容易に可能である。
【0038】
以下、本発明に係るシステムの例示的な実施形態であって添付の特許請求の範囲を限定するものではない図面を参照して、本発明をさらに説明する。
図面において、同じ参照番号が適用される場合、これらの符号は同じ部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明によるエネルギー変換のためのシステムを示す。
図2】流体駆動装置の斜視図を示す。
図3】自己位置決めしているベーンの断面図を示す。
図4】引き戻しモードの間の流体駆動装置の斜視図および上面図を示す。
図5】ベースステーションの斜視図を示す。
図6】ベースステーションの断面図であり、水圧流体が変換装置から外されたときの流体流れの経路を示している。
図7】ピストンロッド回転制御システムを備えた変換装置を示す。
図8】回転可能な継手を備えた変形装置を示す。
図9】本発明によるシステムの流体駆動装置の典型的な軌道を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の説明において、Zは流体方向に対する水平方向の流れを規定し、Xは流体方向の流れに対して直交する水平方向を規定し、Yは流体方向の流れに対して直交する上下方向を規定する。
【0041】
図1は、エネルギーを流体の流れ50から輸送可能なエネルギーに変換するために用いられるシステムを、参照番号1で示している。システム1は、テザー300に接続された流体駆動装置200を備え、テザー300は、ベースステーション400に結合されている。ベースステーション400は、海、河川、湖などの底部40に位置する係留装置480に取り付けられているか、取り付け可能になっている。
【0042】
好ましくは、ベースステーション400には、少なくとも1つの水圧シリンダを含む変換装置410が設けられる。これに関連して、テザー300は、好ましくは、水圧シリンダ内で移動可能なピストン412に接続されており、ピストン412の移動により、水圧シリンダがその一部を成す水圧システム内で水圧流体を変位させる。言うまでもないが、接続されたテザー300および流体駆動装置200を有し並列に動作する複数の水圧シリンダがあってもよい。
【0043】
この、またはこれらの水圧シリンダは、この例示的な実施形態ではプラットフォーム800が配置されている離れた場所に吸いある流体を送るための伝導路700に接続可能である。水圧シリンダは、水圧エネルギーを電気エネルギーに変換するための水圧システム(図示せず)に接続可能であるか、または接続されていて、そのため必要な手段は、好ましくはプラットフォーム800上に配置される。
【0044】
伝導路700は、水圧流体を移送するための可撓性パイプまたはホースを含み、伝導路700には浮力手段710が設けられることが好ましい。
【0045】
水圧シリンダおよび可撓性パイプまたはホースが好ましい特徴であるが、変換装置410は、力を運搬可能エネルギーに変換することができる任意のタイプの装置、例えば電気ケーブルを含むエネルギー伝導路と組み合わせてケーブルスプールに結合される発電機であってもよい。
【0046】
次に図2を参照すると、流体駆動装置200の斜視図が示されており、この流体駆動装置には調節可能なベーンが設けられている。流体駆動装置200には少なくとも2つの調節可能なベーン240である第1のベーン255および第2のベーン256が設けられており、このベーン240はお互いに対して独立して任意に調節可能であり、使用中および流体の流れ50を受けているときには、第1のベーン255および第2のベーン256は、お互いに追随する位置を占める。ベーンがフレーム220に沿って一列に配置されていることが好ましいが、これらの構造によってベーンを連携して作動させることができる限り、調節可能なベーン240を互いに好ましい場所に位置させるような代替構成も可能である。
【0047】
調節可能なベーン240を流体の流れ50に対して所望の迎え角に配置するためには、システム全体、好ましくは調節可能なベーン240にベーン位置決めシステム260を設けることが好ましく、この位置決めシステムは流体流れ方向表示センサ261と、受信を行うように流体流れ方向表示センサ261に接続されたコントローラ262と、受信を行うようにコントローラに接続され調節可能なベーン240の向きを変更するアクチュエータ263を有しており、アクチュエータは流体流れ方向表示センサ261が測定した流体の見かけの流れに依存するコントローラの制御動作によって引き起こされる流体の見かけの流れを参照する。図示をわかりやすくするために、ベーン位置決めシステム260は1つだけ示している。
【0048】
流体駆動装置を予め定められた経路に沿って操舵するために、システム1の流体駆動装置200は、第1の部分241と第2の部分242とを有する少なくとも1つの調節可能なベーン240を備えていることが好ましく、両方の部分は互いに独立して調節可能である。第1の部分241と第2の部分242は実質的に等しい寸法を有し、第1の部分241と第2の部分242は互いに一直線に位置することが好ましい。
【0049】
これに関連して、流体駆動装置は、操舵システム270を備えており、操舵システムは向き表示センサ271と、受信を行うようにこの向き表示センサに接続されたコントローラ272と、受信を行うようにコントローラに接続されたアクチュエータ273とを有しており、アクチュエータは、向き表示センサ271で測定されたフレーム220の向きに依存するコントローラの制御動作によって引き起こされる流体の見かけ上の流れを参照して、調節可能なベーン240の第1の部分241および第2の部分242の向きを変更する。流体駆動装置のフレーム220またはフレーム220の少なくとも一部は、本体221を備え、本体221は前方部222および後方部223を備え、後方部223は、前方部222の先端との比較において相対的に鋭く端部へ延びていると好適である。
【0050】
好ましくは、水没した流体駆動装置200は、浮力チャンバ293を備えており、浮力チャンバ293は、浮力物質を内包するベーン240の囲繞部であることが好ましい。
【0051】
流体の流れの速度がゼロである場合に流体駆動装置の位置を制御するために、流体駆動装置200は浮力制御システム290を有しており、浮力制御システムは、位置表示センサ291と、受信を行うようにこの位置表示センサ291に接続されたコントローラ292と、ポンプ装置294に接続された少なくとも1つの浮力チャンバ293とを備えており、ポンプ装置294は、受信を行うようにコントローラに接続されており、位置表示センサ291で測定された流体駆動装置200の位置に依存するコントローラ292の制御動作によって、使用時に底部40または水面42に対して流体駆動装置200の位置を変更する。
【0052】
先に述べたベーン位置決めシステム260の代替として、流体駆動装置に自己位置決めをする調節可能なベーン240を設けてもよい。ここで図3を参照すると、本体243を含む調節可能なベーン240の断面図が示されており、本体243には、前方部244と後方部245とが設けられており、後方部245は、前方部244の先端部との比較において相対的に鋭く端部へ延びており、本体部は、前方部244の先端部である前縁246と、後方部245の最後端である後縁247と、前縁246と後縁247とを結ぶ仮想的直線の翼弦線248と、前縁246と後縁247とを結ぶ仮想的キャンバ線249と、を有し、この仮想的キャンバ線は前縁246と後縁247との間で本体243の上面250および下面251から等しい距離に位置する任意の点を通り、前縁246よりも後縁247に近い点で翼弦線248と交差し、ベーンが自己位置決めするように配置されている。
【0053】
システム1は、仕事モードおよび引き戻しモードを備えることが好ましい。ここで図4を参照すると、流体駆動装置200の斜視図および上面図が示されており、流体駆動装置は調節可能なベーン240を備え、ベーンのそれぞれは、前縁246および後縁247を備え、ベーン240は、引き戻しモードにおいて、第1のベーン255の前縁246は、第1のベーン255に隣接する第2のベーン256の後縁247の方を向いている。
【0054】
ここで図5および図6を参照すると、変換装置410と、変換装置410の接続を行うための手段が設けられたベース構造体450とを含む前述のベースステーション400の斜視図および断面図が示されており、ここで、ベース構造体450は、輸送可能なエネルギーを伝達するための少なくとも1つの伝導路700に連結された固定内側体451と、内側固定体451に回転可能に取り付けられた外側体452と、を有し、外側体452は輸送可能なエネルギーを変換装置410とやりとりするための少なくとも1つの伝導路700と、輸送可能なエネルギーが固定内側体451へ自由に流出入可能となるよう配置されるように前記固定内側体451と連通する囲繞部464とが設けられている。
【0055】
ベースステーション400には係留手段480が設けられていることが好ましい。これにより、ベース構造体450の内側部451が係留手段480の上側部481の周りに嵌合することが好適である。
【0056】
ベース構造体450に脈動ダンパー454が設けられていると好適であり、脈動ダンパー454は、チャンバ455の底部457またはその近傍に接続部460を備えたチャンバ455を有することが好ましく、チャンバ455の上部458には、脈動ダンパー454が一部を成す水圧システムにおけるピーク圧力を低減するためのガスが充填される。
【0057】
図6は、水圧流体が変換装置410からベースユニット450を介してプラットフォーム800へと動かされる場合の流体流路を示す。
【0058】
次に図7を参照すると、変換装置410が示されており、変換装置は、テザー300が接続可能なピストンロッド413と、流体駆動装置200の向きを監視する向きセンサ271を有するピストンロッド回転制御システム430と、受信を行うように向きセンサ271と接続されたコントローラ432と、受信を行うようにコントローラ432と接続されたアクチュエータ434とを備えており、アクチュエータは、ピストンロッド413が流体駆動装置200およびそこに接続されたテザー300の向きに追従するようにピストンロッド413を駆動する。アクチュエータ434は第1の側方部および第2の側方部を備え、第1の側方部はピストンロッド413またはピストン412に取り付けられ、第2の側方部は変換装置410のシリンダ底部414またはシリンダバレル411に、伸縮自在管436によって接続されることが好ましい。
【0059】
次に図8を参照すると、変換装置410が示されており、変換装置は中空のピストンロッド413と内側部品441とを含む回転可能な継手440を有する水圧シリンダを備えており、内部部品441は中空ピストンロッド413に取り付けられ、内側部品441は輸送可能媒体を内側部品441との間で輸送するための伝導路443の接続を行うための少なくとも1つのコネクタ442と、外側部品444とを備え、外側部品444が内側部品441に回転可能に取り付けられ、外側部品444には、輸送可能媒体を外側部品444との間で輸送するための伝導路(図示せず)の接続用の少なくとも1つのコネクタ445と、内側部品441と連通して輸送可能媒体が内側部品441に自由に流れることができるようにする囲繞部447が設けられている。外側部品444は、伸縮自在管436によってシリンダ底部414またはシリンダバレル411に接続されることが好ましい。
【0060】
図1および図2に戻ると、本発明のシステム1は、流体の流れ50からの発電のための方法を実行するのに特に適しており、流体駆動装置200には少なくとも2つの調節可能なベーンである第1のベーン255および第2のベーン256が設けられている。この方法は仕事モードと引き戻しモードを折衷させるものであり、仕事モードでは、ベーン240は流体の見かけの流れに対して第1の所定の位置に設定され、引き戻しモードではベーン220は第2の所定の位置に設定される。
【0061】
ベーン240を第1の所定の位置に配置すると、仕事モードの間、流体駆動装置200のベースステーション400までの距離が増加する。同様に、引き戻しモードでは、流体駆動装置200のベースステーション500までの距離が減少する。この方法は、好ましくは、仕事モードと引き戻しモードが交互に実行される。
【0062】
図9は、ベーン240が流体の流れ50に対して第1の所定の位置に設定された流体駆動装置200が辿る第1の軌道14を示しており、好ましくは、ベーン240がフレーム220に沿って一列に配列されており、仕事モードの間および流体の流れを受けるときは、第1のベーン255と第2のベーン256とが互いに追随する位置を占めており、第1のベーン255と第2のベーン256が流体の見かけの流れに対する所望の迎え角に位置付けられている。
【0063】
その結果、テザー300を介して変換装置410のピストン412と接続する流体駆動装置200は、ベースステーション400から離れるように徐々に距離を増加して移動する。対応するピストン412の移動は、変換装置410内の水圧流体が、最終的に例えばプラットフォーム800上に配置された水圧モータを駆動するために伝導路700内に伝播する。水圧モータは、電気エネルギーを発生するための発電機に接続されてもよい。
【0064】
流体駆動装置200が、ベースステーション400から離れた最大の偏位となり得る所定の地点に到達すると、ベーン240は、第2の所定の位置に設定され、それにより、図4にさらに示されるように、前縁246および後縁247を備えた少なくとも2つの調節可能なベーン240は、フレーム220に沿って一列に配置され、これにより、引き戻しモードでは、第1のベーン255の前縁246が、第1のベーンに隣接する第2のベーン256の後縁247の方を向く。引き戻しモードの一部の間、調節可能なベーン240の第1の部分241および第2の部分242は、流体駆動装置が短い半径の転回を行うことができる予め定められた位置に設定されることが好ましい。
【0065】
引き戻しモードの間に、ピストン412は、流体駆動装置200を元の位置に引き戻し、それにより、流体駆動装置200とベースステーション500との間の距離が、最短距離となり得る所定の距離に減少される。引き戻しモードの間、流体駆動装置200は、ベースステーション500に対する予め定められた距離に達するまでは軌跡15を辿り、ベーン220が第1の所定の位置に再び設定される時点で流体駆動装置200が仕事モードの第2の軌道16を辿ることができる。仕事モードの第1の軌道14から引き戻しモードの軌道15への移行と同様に、仕事モードの第2の軌道16は、一定時間で、流体駆動装置200の引き戻しモードのもう1つの軌道17に続く。軌道17はその完了後に仕事モードの軌道14に再び続き、流体駆動装置200の連続的な往復運動のプロセスを繰り返す。これに対応して、水圧シリンダ410のピストン412は、繰り返し行き戻りして、水圧シリンダ410に接続された伝導路700を含む水圧システムに対して水圧流体を繰り返し排出および受け入れすることにより、仕事モード中に行われる仕事は、引き戻しモード中に供給される仕事よりも大きい。
【0066】
以上の説明から、流体の流れからのエネルギー変換のための改良された方法およびシステムの多くの利点が明らかになる:
- このシステムは、流体の流れからの再生可能エネルギーの変換を信頼性がありコスト効率の良い方法で可能にし、複雑でメンテナンスが集中する設備の必要性をなくす。
- 変換されたエネルギーは最小損失で中央電力ステーションに輸送され、効率的に電気エネルギーに変換される。変換と輸送の損失が最小限に抑えられるので、最大量の再生可能エネルギーを消費に供することができる。
- このシステムの変換率は高く、流体の流れの運動エネルギーを最大限に、かつ一度に取り入れることができ、したがって追加の変換ユニットを直列に設置する必要がなくなる。
- 環境にやさしい水圧流体を使用しており、もしも運用しない場合には設備の全体を周囲に損傷を与えることなく取り除くことができるという特徴があり、このシステムは環境に非常にやさしい。
【0067】
したがって、本発明のシステムは、信頼性がありコスト効率の良い流体の流れからのエネルギー変換に使用でき、簡単に設置でき、環境に損傷を与えることなく簡単に取り除くことができ、困難な水中活動を必要とせずに検査および保守することができる。さらに、システムの流体駆動装置は、非常に操作が容易であり、エネルギー漏れを起こすことなく、終わることのない所定の軌道に沿って案内されることができる。さらなる利点は以下の通り:
- 水中土台の困難な建設を必要とすることなく、浅水域および深水域の水流からのクリーンエネルギーの発生を可能にする。
- 複雑な再設計を必要とせずに、任意の場所のローカル条件に合わせて適合可能な拡張性のあるシステムを提供する。
- エネルギー密度の低い流体の流れから費用対効果の高いエネルギー変換を可能にし、市場が負担できる原価で再生可能エネルギーの採取を行える場所の数を大きくする。
【0068】
以上、本発明による流体の流れからのエネルギー変換のためのシステムおよび方法の例示的な実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、この特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明から逸脱することなく様々に変形することが可能である。したがって、説明した例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲を厳密にこの形態に従って解釈するために使用されるべきではない。この実施形態はむしろ、添付の特許請求の範囲の文言をこうした例示的な実施形態に限定する意図なく説明することを目的としたものに過ぎない。したがって、本発明の保護の範囲は、添付の特許請求の範囲のみに従って解釈されるべきであり、この例示的な実施形態を用いて特許請求の範囲の文言に含まれ得る多義性が解消されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9