【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様では、流体の流れからのエネルギー変換のためのシステムであって、流体駆動装置と、テザーおよびベースステーションとを備え、前記流体駆動装
置は前記テザーに結合されており、前記テザーは前記ベースステーションに結合されており、前記流体駆動装置は少なくとも2つの調節可能なベーンである第1のベーンおよび第2のベーンを有しており、使用中および流体の流れを受ける間、前記第1のベーンおよび前記第2のベーンはお互いに追随した位置を占めるシステムにおいて、
a)各ベーンは、前縁および後縁を有し、
b)前記システムは仕事モードと引き戻しモードとを有し、
c)前記ベーン
がフレームに沿って一列に配置され、前記引き戻しモードにおいては前記第1のベーンの前縁が前記第1のベーンに隣接する前記第2のベーンの後縁の方を向くことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記ベーンはお互いに独立して任意に調節可能である。少なくとも2つの調節可能なベーンを用いることで、特に好ましい構成において、エネルギーは流体の流れから最大の伸びまでエネルギーを変換することができ、調節可能なベーンは、流体の見かけの流れの方向に対して個々に、適切な迎え角で流れを受ける。
【0013】
調節可能なベーンを最適な迎え角に配置するためには、システムが、好ましくは調節可能なベーンがベーン位置決めシステム備えていることが望ましく、このベーン位置決めシステムは以下のものを有する:前記調節可能なベーンの近傍の流体方向の見かけの流れを判定するための流体流れ方向表示センサと、受信を行うように前記流体流れ方向表示センサと接続されたコントローラと、受信を行うように前記コントローラと接続されたアクチュエータであって、前記調節可能なベーンの近傍にある流体流れ方向表示センサによって測定される流体の見かけの流れの方向に依存する前記コントローラの制御動作によって引き起こされる流体の見かけの流れを参照して前記調節可能なベーンの向きを変更するアクチュエータ。
【0014】
ベーン位置決めシステムがベーンの内側に位置することが好ましいが、流体駆動装置のフレームに一体化して設けてもよい。
【0015】
ベーン位置決めシステムの代替として、調節可能なベーンが以下のものを備えてもよい:本体。この本体には前方部および後方部が設けられており、前記後方部は前記前方部の先端部との比較において相対的に鋭く先端部へ延びている。前記前方部の最前縁である前縁。前記後方部の最後縁である後縁。前縁と後縁とを結ぶ仮想的直線の翼弦線。前記前縁と前記後縁とを結ぶ仮想的キャンバ線。これは前記前縁と前記後縁との間で前記本体の上面および下面から等しい距離に位置する任意の点を通り、前記前縁よりも前記後縁に近い点で前記翼弦線と交
差するように配置されている。こうした自己位置決め式のベーンを用いると、特に、自己位置決め式のベーンが流体の見かけの流れに対して所望の迎え角に位置するように配置することによって、システムの変換率が最適化される。
【0016】
流体駆動装置を所定の経路に沿って操舵するためには、システムの流体駆動装置に少なくとも1つの調節可能なベーンを設け、それにより、少なくとも1つの調節可能なベーンが第1の部分および第2の部分を有し、それによって両部分がそれぞれ互いに独立して調節可能であることが好ましい。第1の部分と第2の部分は実質的に等しい寸法を有し、第1の部分と第2の部分は互いに一直線上に位置することが好ましい。
【0017】
これに関連して、流体駆動装置は操舵システムを備えることが好ましく、操舵システムは向き表示センサと、この向き表示センサと受信を行うように接続されたコントローラと、コントローラと受信を行うように接続されるアクチュエータであって、向き表示センサで測定されたフレームの向きに依存する前記コントローラの制御動作によって引き起こされる流体の流れを参照して調節可能なベーンの第1の部分と第2の部分の向きを変更するアクチュエータを有する。流体駆動装置のフレームまたはフレームの少なくとも一部が本体を有し、本体に前方部および後方部が設けられ、後方部が前方部の先端と比べて相対的に鋭く先端へ伸びていることが好適である。
【0018】
このような調節可能なベーン、フレームおよび操舵システムを用いることで、流体駆動装置を、流体の流れからのエネルギー変換が最大限に引き出され且つエネルギー損失が最小の予め定められた経路に沿って容易に案内することができ、特に、流体駆動装置はベーンの第1の部分と第2の部分の位置をお互いに変更するだけで短い半径の転回を行うことができる。
【0019】
本発明の別の態様では、システムのベースステーションは、変換装置と、前記変換装置の接続のための手段を備えたベース構造体とを備え、前記変換装置は水圧シリンダを備えている。流体駆動装置をベースステーションに接続するテザーは、次いで、ピストンロッドを介して水圧シリンダ内で移動可能なピストンに接続されてもよく、ピストンの移動により水圧シリンダが部分を成す水圧システム内へと水圧流体を変位させるようにすることができる。この水圧流体は、例えば、発電機を駆動する水圧モータを駆動するために使用することができ、あるいは水圧流体の変位に係るエネルギーを利用可能にするために使用することができる。
【0020】
テザーのねじれおよびシステム使用中の抗力によって生じるエネルギー損失を防止するために、変換装置は、テザーが接続可能なピストンロッドと、ピストンロッド回転制御システムとを備えた水圧シリンダを有しており、ピストンロッド回転制御システムは、流体駆動装置の向きを監視するための向きセンサと、受信を行うように前記向きセンサに接続されたコントローラと、受信を行うように前記コントローラに接続されていて、ピストンロッドおよびこれに連結されたテザーが流体駆動装置の向きに従うようにピストンロッドを駆動するアクチュエータとを有する。
【0021】
ピストンロッド回転制御システムのアクチュエータは、好ましくは、第1の側方部および第2の側方部を備え、第1の側方部はピストンロッドまたはピストンに取り付けられ、第2の側方部は、シリンダ底部またはシリンダバレルに、伸縮自在管を用いて接続される。これに代えて、ピストンロッド回転制御システムは、水圧シリンダバレルの外側に配置されたアクチュエータを備えてもよい。
【0022】
テザーを介してベースステーションから信号および電力を流体駆動装置に伝達するためには、水圧シリンダに中空のピストンロッドと内側部品とを含む回転可能な継手が設けられていることが好ましく、内側部品は中空ピストンロッドに取り付けられ、内側部品は、内側部品との間で輸送可能媒体を輸送するための伝導路の接続用の少なくとも1つのコネクタと、外側部品とを備え、外側部品は、内側部品上に回転可能に取り付けられ、外側部品は、外側部品との間で輸送可能媒体を輸送するための伝導路の接続用の少なくとも1つのコネクタと、内側部品と連通して輸送可能媒体が内側部品に自由に流れることができるようにする囲繞部が設けられている。外側部品を水圧シリンダバレルに対して固定位置に保持するために、外側部品は、伸縮自在管によってシリンダ底部またはシリンダバレルに接続されることが好ましい。
【0023】
本発明の別の態様では、システムのベースステーションは、変換装置と、変換装置の接続のための手段が設けられたベース構造体とを備え、ベース構造体が、輸送可能なエネルギーを伝達するための伝導路に連結された固定内側体と、前記固定内側体上に回転可能に取り付けられた外側体とを有し、前記外側体には、輸送可能なエネルギーを前記変換装置とやりとりするための伝導路と、前記輸送可能なエネルギーが前記固定内側体へ自由に流出入可能となるよう配置されるように前記固定内側体と連通する囲繞部とが設けられている。このようなベース構造体により、システムは、特に、流体駆動装置がベース構造体の周りを自由に回転することができることによって、その方向を時間の経過とともに変化させる流体の流れの内に配備することができ、それにより変換されたエネルギーを連続的に輸送することができ、このシステムは、流体の流れの方向が時間の経過と共に変化したときでも、稼働状態を維持することができる。
【0024】
ベースステーションがその一部を成す水圧システムにおけるピーク圧力を低減するためには、ベースユニットに脈動ダンパーを設けることが好ましい。脈動ダンパーは、チャンバの底部またはその近くに接続部が設けられたチャンバを備え、チャンバの上部がガスで満たされることが好ましい。
【0025】
ベースステーションが水没したベースステーションである場合、ベースステーションに係留手段が設けられ、前記ベース構造体は内側体を備え、前記係留手段は上側部を備え、内側体がこの上側部の周りに嵌合することが好ましい。これに関連して、ベースステーションは輸送可能なエネルギーを輸送するための可撓性伝導路を備えていることが好ましい。このようなタイプのエネルギー伝導路は、ベースステーションの移動を容易にするために望ましいもの
である。これは、水没したベースステーションを検査および保守のために水面に持ち上げるときに特に重要である。特にこの状況では、水没した伝導路が底部の上方に浮遊した状態に保つ浮力手段が設けられ、ベースステーションの一部が異なる位置に移動する間でも伝導路の取り扱いを容易にすることが好ましい。
【0026】
好ましい構成は、水圧シリンダと可撓性パイプまたはホースとを備えた変換装置を含むベースステーションであるが、変形装置は、力を輸送可能なエネルギーに変換することができる任意のタイプの装置、例えば電気ケーブルを含むエネルギー伝導路と組み合わせてケーブルスプールに結合される発電機でもよい。
【0027】
システムが流水を実体とする流体の流れに使用される場合、水没した流体駆動装置には浮力チャンバが設けられているのが好ましく、浮力チャンバは浮力物質を内包するベーンの閉じた部分である。流体駆動装置に浮力チャンバを設けることにより、流体駆動装置の浮力係数は、浮力物質を追加または放出することによって容易に調節することができる。特に、ある瞬間に流体の流れの速度がゼロであり、流体駆動装置の位置を能動的に制御する必要がある状況では、流体駆動装置に、浮力制御システムが設けられていることが好ましく、この浮力制御システムは、位置表示センサと、前記位置表示センサと受信可能に接続されたコントローラと、ポンプ装置に接続された少なくとも1つの浮力チャンバとを備え、ポンプ装置は、位置表示センサで測定された流体駆動装置の位置に依存する前記コントローラの制御動作によって引き起こされる、使用中において底部または水面に対する流体駆動装置の位置の変更のために前記コントローラと受信可能に接続されている。
【0028】
本発明はまた、流体の流れからのエネルギー変換のための方法としても実現され、この方法では、流体駆動装置、テザーおよびベースステーションが設けられており、前記流体駆動装置がテザーに接続され、テザーがベースステーションに結合されていて、以下のステップを含む:
a)少なくとも2つの調節可能なベーンである第1のベーンおよび第2のベーンを前記流体駆動装置に設け、
b)仕事モードと引き戻しモードとを用意し、ここで前記仕事モード中および流体の流れを受ける間、前記第1のベーンおよび前記第2のベーンは互いに追随する位置を占め、前記第1のベーンおよび前記第2のベーンは流体の流れに対して所望の迎え角に配置されるようにする。
【0029】
本発明において、この方法は、調節可能なベーンを有する流体駆動装置を設け、ここでベーンのそれぞれは前縁と後縁とを備えるものとするステップと、ベーンをフレームに沿って一列に配置し、これにより前記ベーンを、前記引き戻しモードの一部において第1のベーンの前縁が前記第1のベーンに隣接する第2のベーンの後縁の方を向くように設定するステップと、を特徴とする。
【0030】
本発明の方法の別の態様によれば、流体駆動装置は、第1の部分と第2の部分とを有する少なくとも1つの調節可能なベーンを備え、それにより、両方の部分が互いに独立して調節可能である。本発明の方法の1つの特定の態様は、引き戻しモード中の特定の瞬間に、ベーンの第1の部分および第2の部分が互いに予め定められた位置に設定され、流体の流れに対して流体駆動装置が最適な予め定められた経路に追随することを可能にする短い半径の転回を行うようにして、それにより流体の流れから最小のエネルギー漏れで最大のエネルギーが変換されるようにする。
【0031】
仕事モードおよび引き戻しモード中にベーンを好ましい位置に設定することにより、仕事モード中にシステムによって行われる仕事は、引き戻しモード中にシステムに供給される仕事よりも大きく、そうした正味出力が供給される。仕事モードから引き戻しモードへの切り替え、およびその逆の切り替えの制御は、ベーンの位置を変更することによって簡単に行うことができる。
【0032】
好ましくは、仕事モードでは、流体駆動装置のベースステーションへの距離は増加するが、引き戻しモードにあるときは流体駆動装置のベースステーションまでの距離は減少する。ベーンを仕事モードおよび引き戻しモードで適切な位置に設定することと組み合わせて、仕事モードおよび引き戻しモードを連続的かつ迅速に交替させることができる。
【0033】
本発明の別の態様によれば、この方法は、水圧シリンダを含む変換装置をベースステーションに設け、水圧シリンダのピストンにテザーを接続して、水圧流体を水圧シリンダから水圧シリンダが一部を成す水圧システムへと変位させるようにすることを特徴とする。
【0034】
本発明の別の態様によれば、この方法は、ピストンロッド回転システムが設けられた水圧シリンダを備えた変換装置を前記ベースステーションに設けるステップと、前記テザーを前記水圧シリンダのピストンロッドに取り付けるステップと、流体駆動装置の向きを測定し、それに応じてテザーにおける捻れおよび抗力の損失を防止するようにピストンロッドを回転させることによって流体駆動装置の動きにテザーを合わせるステップと、を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明の別の態様によれば、本発明の方法は、ベースステーションに、変換装置およびベース構造体を設け、ここでベース構造体は、固定内側体および前記固定内側体に回転可能に取り付けられた外側体と、前記内側体および前記外側体と連通していて内側体と外側本体との間で輸送可能なエネルギーが自由に流れることができるようになっている囲繞部とを有するものとし、これにより前記流体駆動装置が、ベース構造体の周りを自由に回転し、また時間とともに変化する流体の流れの方向に追従するようにすることを特徴とする。
【0036】
本方法の別の態様によれば、この方法は、輸送可能なエネルギーの輸送のための可撓性伝導路を前記ベースステーションに設
けるようにすることを特徴とする。
【0037】
本発明のシステムおよび方法では、エネルギーが流体の流れから最大限に変換され、変換されたエネルギーがベースステーションから離れた場所に効率的に輸送される。離れた場所は、例えば、得られたエネルギーを電気エネルギーに変換するための補助設備を配置することができる人工島や自然島であり、電気エネルギーは、大きな損失なしに、これに限定するわけではないが特に直流電流で輸送することができる。さらに、電気エネルギーは、適切な電圧レベルを用意することによって、あるいは交流から直流または直流から交流に変換することによって、使用されている輸送手段にできるだけ適合させることが容易に可能である。
【0038】
以下、本発明に係るシステムの例示的な実施形態であって添付の特許請求の範囲を限定するものではない図面を参照して、本発明をさらに説明する。
図面において、同じ参照番号が適用される場合、これらの符号は同じ部分を指す。