【実施例】
【0022】
様々な材料からなる多孔体7を用いた本発明のシール部材1と、従来例および比較例のシール部材について、それぞれ遮音効果を測定した結果を以下に説明する。以下の全ての例において、特許文献5に準拠して作製したチューブ6はエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体からなり、非圧縮状態における吸水率は0.49%であり、非圧縮状態における比重は0.62である。そして、非圧縮状態における外径が19〜22mmで内径が15〜16mm程度の円筒に取付部が設けられた形状であり、チューブ全長は840mmである。測定時には、例えば
図5A,5Bに示す音響特性測定システムを用いて、前述したようにシール部材を30%圧縮状態に保持する。
【0023】
[従来例]
本発明のシール部材1を説明する前に、
図7A,7Bに示す、多孔体7を有しておらずチューブ6のみからなる従来のシール部材の遮音効果について説明する。
図7Aは非圧縮状態であり、
図7Bは30%圧縮状態(使用状態)である。多孔体を持たないシール部材による、様々な周波数の音に対する遮音量を表1、表2および
図8,12,14,18,21,24に示している。この結果を見ると、従来例では特に2000Hz以上の高周波数に対する遮音量が十分ではなく、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、50.7dBであった。
【0024】
【表1】
【0025】
[実施例1]
本発明の実施例1のシール部材1について説明する。このシール部材1は、
図4に示したものであり、チューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの正方形である多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料はポリウレタンフォーム(商品名:シールフレックス ESH(株式会社イノアックコーポレーション製))であり、非圧縮状態における吸水率は1400%であり、非圧縮状態におけるかさ密度は45kg/m
3である。また、25%圧縮応力が0.52N/cm
2であり、50%圧縮応力が0.72N/cm
2の材料である。シール部材1の使用状態における多孔体7の、チューブ6の長手方向に直交する断面における断面積は、チューブ6の中空部(内部空間)の断面積の60%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は60%であった。この材料からなる多孔体7がチューブ6内に挿入されたシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を、表1および
図8に示している。このシール部材1の遮音性は良好であり、特に2000Hz以上の高周波数に対する遮音量が従来例と比較して大きく改善しており、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも12.7dB向上した。
【0026】
[実施例2]
図9に示す本発明の実施例2のシール部材1では、チューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの正方形である多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料はポリウレタンフォーム(商品名:カラーフォームECS(株式会社イノアックコーポレーション製))であり、非圧縮状態における吸水率は2742%であり、非圧縮状態におけるかさ密度は22kg/m
3である。また、25%圧縮応力が0.33N/cm
2であり、50%圧縮応力が0.35N/cm
2の材料である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の60%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は60%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を表1および
図8に示している。このシール部材1の遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも9.8dB向上した。
【0027】
[実施例3]
図10に示す本発明の実施例3のシール部材1では、チューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの正方形である多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料はポリウレタンフォーム(商品名:カームフレックス F−2(株式会社イノアックコーポレーション製))であり、非圧縮状態における吸水率は2310%であり、非圧縮状態におけるかさ密度は25kg/m
3である。また、25%圧縮応力が0.48N/cm
2であり、50%圧縮応力が0.5N/cm
2の材料である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の60%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は60%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を表1および
図8に示している。このシール部材1の遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも9.9dB向上した。
【0028】
[実施例4]
図11に示す本発明の実施例4のシール部材1では、チューブ6の内部に、軟質ポリウレタンフォームからなる多孔体7が充填されている。この多孔体7は、発泡前の流体状態の材料をチューブ6の内部に注入した後に発泡させて非流動の固形状のポリウレタンフォームとして形成されたものである。チューブ6の内部は多孔体7によって完全に塞がれてはおらず、チューブ6の内壁の一部と多孔体7の外表面の一部との間に、空気保持空間8が存在する。この多孔体7を構成するポリウレタンフォームの発泡後の非圧縮状態における吸水率は665%であり、非圧縮状態におけるかさ密度は60kg/m
3である。また、25%圧縮応力が0.12N/cm
2であり、50%圧縮応力が0.18/cm
2の材料である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の89%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は89%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を表1および
図12に示している。このシール部材1によると、従来例と比べると良好な遮音性が得られ、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも10.7dB向上した。
【0029】
[実施例5]
図13に示す本発明の実施例5のシール部材1では、チューブ6の内部に、断面形状が2mm×20mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は、ポリプロピレンをメルトブローン法で加工して作製した不織布であり、非圧縮状態における吸水率は16%であり、非圧縮状態におけるかさ密度は31kg/m
3である。また、25%圧縮応力が測定下限以下(測定不可)で、50%圧縮応力が0.09N/cm
2の材料である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の40%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は40%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を表1および
図14に示している。このシール部材1の遮音性は良好であり、特に2000Hz以上の高周波数に対する遮音量が従来例と比較して大きく改善しており、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも12.4dB向上した。
【0030】
[実施例6]
図15に示す本発明の実施例6のシール部材1では、チューブ6の内部に、断面形状が2mm×6.5mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の9%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は9%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を表1および
図14に示している。このシール部材1の遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも9.1dB向上した。
【0031】
[実施例7]
図16に示す本発明の実施例7のシール部材1では、チューブ6の内部に、断面形状が8mm×13mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は不織布(商品名:タフネル オイルブロッター AR−65(三井化学株式会社製))であり、非圧縮状態における吸水率は203%であり、非圧縮状態におけるかさ密度は70kg/m
3である。また、25%圧縮応力が0.16N/cm
2であり、50%圧縮応力が2.2N/cm
2の材料である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の55%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は55%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を表1および
図14に示している。このシール部材1の遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも9.8dB向上した。
【0032】
[実施例8]
図17に示す本発明の実施例8のシール部材1では、チューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの正方形である多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は発泡ゴム(商品名:エプトシーラー No.685(日東電工株式会社製))であり、非圧縮状態における吸水率は169%であり、非圧縮状態におけるかさ密度は140kg/m
3である。また、25%圧縮応力が0.26N/cm
2であり、50%圧縮応力が0.54N/cm
2の材料である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブの中空部の断面積の60%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は60%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を表1および
図18に示している。このシール部材1の遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも12.0dB向上した。
【0033】
[実施例9]
図19に示す本発明の実施例9のシール部材1では、チューブ6の内部に、断面形状が10mm×15mmの長方形である多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は、特許文献6に準拠し、発泡剤の量を調整して、非圧縮状態における吸水率が46.8%、非圧縮状態におけるかさ密度が73kg/m
3になるように作製した発泡ゴム(EPTスポンジ(EPDMスポンジ))である。また、25%圧縮応力が0.06N/cm
2であり、50%圧縮応力が0.1N/cm
2の材料である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の80%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は80%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を表1および
図18に示している。このシール部材1の遮音性は良好であり、特に2000Hz以上の高周波数に対する遮音量が従来例と比較して大きく改善しており、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも14.4dB向上した。
【0034】
次に、本発明の実施例1〜9と対比するための比較例について説明する。
[比較例1]
図20に示す比較例1のシール部材では、チューブ6の内部に、断面形状が直径10mmの円形である多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は、特許文献6に準拠し、発泡剤の量を調整して、非圧縮状態における吸水率が0.8%、非圧縮状態におけるかさ密度は290kg/m
3になるように作製した発泡ゴム(EPTスポンジ(EPDMスポンジ))である。また、25%圧縮応力が4.4N/cm
2であり、50%圧縮応力が13.1N/cm
2の材料である。シール部材の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の65%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は65%であった。このシール部材の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を表1および
図21に示している。このシール部材によると、従来例のシール部材と同程度の遮音性しか得られず、実施例1〜9のシール部材1と比較すると特に2000Hz以上の高周波数に対する遮音量が不十分であり、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも0.5dBしか向上していない。
【0035】
[比較例2]
図22に示す比較例2のシール部材では、チューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの正方形である多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は発泡ゴム(CR(クロロプレインラバー)スポンジ角紐)であり、非圧縮状態における吸水率は1.6%であり、非圧縮状態におけるかさ密度は310kg/m
3である。また、25%圧縮応力が5.19N/cm
2であり、50%圧縮応力が13.2N/cm
2の材料である。シール部材の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の66%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は66%であった。このシール部材の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量を表1および
図21に示している。このシール部材によると、従来例のシール部材と同程度の遮音性しか得られず、実施例1〜9のシール部材1と比較すると特に2000Hz以上の高周波数に対する遮音量が不十分であり、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも2.0dB低下している。
【0036】
[比較例3]
図23に示す比較例3のシール部材1では、チューブ6の内部に、軟質のポリウレタンフォームからなる多孔体7が隙間なく充填されている。すなわち、この多孔体7は、発泡前の流体状態の材料をチューブ6の内部に注入した後に発泡させて非流動の固形状のポリウレタンフォームを形成したものである。チューブ6の内部は多孔体7によって完全に塞がれており、チューブ6の内壁と多孔体7の外表面との間に空気保持空間8は存在しない。この多孔体7を構成するポリウレタンフォームの発泡後の非圧縮状態における吸水率は1268%であり、非圧縮状態におけるかさ密度は56kg/m
3である。また、25%圧縮応力が0.54N/cm
2であり、50%圧縮応力が0.8/cm
2の材料である。シール部材の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブの中空部の断面積の100%であり、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は100%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性を表1および
図24に示しており、遮音性が不十分であり、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも3.9dB低下している。
【0037】
[比較例4]
図25に模式的に示す比較例4のシール部材1では、チューブ6の外側に、断面形状が10mm×10mmの長方形である多孔体7がチューブ6と並べて配置されている。この多孔体7を構成する材料は、実施例3の多孔体7と同じポリウレタンフォーム(商品名:カームフレックス F−2(株式会社イノアックコーポレーション製))であり、非圧縮状態における吸水率、非圧縮状態におけるかさ密度、25%圧縮応力、50%圧縮応力は全て実施例3の多孔体7と同じである。このシール部材1を、多孔体7が発音部側に位置するように配置した状態で30%圧縮し、様々な周波数の音に対する遮音量を測定した。チューブ6の外側に多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は0%であった。遮音量の測定結果を表1および
図24に示している。このシール部材1によると、従来例と同様に、特に2000Hz以上の高周波数に対する遮音量が不十分であり、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも0.4dBしか向上していない。
【0038】
[比較例5]
図26に模式的に示す比較例5では、比較例4のシール部材1を、多孔体7が発音部の反対側に位置するように配置した状態で30%圧縮し、様々な周波数の音に対する遮音量を測定した。チューブ6の外側に多孔体7が配置されているので、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は0%であった。遮音量の測定結果を表1および
図24に示している。このシール部材1によると、従来例と同様に、特に2000Hz以上の高周波数に対する遮音量が不十分であり、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも0.4dBしか向上していない。
【0039】
以上説明した実施例1〜9および比較例1〜3のシール部材は、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置された構成である。しかし、本発明者は、チューブ6の全長に亘って多孔体7を配置するのではなく、チューブ6の長さ方向において部分的にのみ多孔体7を配置した構成であっても、従来例のシール部材(
図7A,7B)に比べて優れた遮音効果を得ることができる場合があることを見出した。以下に説明する実施例10〜26および比較例6,7のチューブ6は、
図27B〜27Dに模式的に示すように、閉じたループ状ではなく両端が開口した中空の直線状または曲線状であり、その点を除いては実施例1〜9および比較例1〜5のシール部材のチューブ6と同じ断面寸法および同じ特性を有し同じ材料からなるものである。このような直線状または曲線状のチューブ6の両端部または一方の端部(片端部)に多孔体7が挿入された構成である実施例10〜26および比較例6,7のシール部材1の詳細と遮音性について、以下に説明する。
【0040】
[実施例10]
本発明の実施例10のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が2mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の20%であり、
図27Bに示すように、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ280mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は13.3%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも8.6dB向上した。その結果を表2に示している。
【0041】
【表2】
【0042】
[実施例11]
本発明の実施例11のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が2mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の20%であり、図示しないが、全長840mmのチューブ6に対して、一方の端部(片端部)から280mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は6.7%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも2.6dB向上した。その結果を表2に示している。
【0043】
[実施例12]
本発明の実施例12のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が2mm×20mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の40%であり、
図27Bに示すように、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ280mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は26.7%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも10.9dB向上した。その結果を表2に示している。
【0044】
[実施例13]
本発明の実施例13のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が2mm×5mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の10%であり、
図27Bに示すように、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ280mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は6.7%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも2.5dB向上した。その結果を表2に示している。
【0045】
[実施例14]
本発明の実施例14のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が2mm×2.5mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の5%であり、
図27Bに示すように、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ280mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は3.3%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも1.8dB向上した。その結果を表2に示している。
【0046】
[実施例15]
本発明の実施例15のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が2mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の20%であり、
図27Cに示すように、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ210mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は10%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも5.4dB向上した。その結果を表2に示している。
【0047】
[実施例16]
本発明の実施例16のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が2mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の20%であり、
図27Dに示すように、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ105mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は5%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも4.3dB向上した。その結果を表2に示している。
【0048】
[実施例17]
本発明の実施例17のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が2mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の20%であり、図示しないが、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ53mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は2.5%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも1.6dB向上した。その結果を表2に示している。
【0049】
[実施例18]
本発明の実施例18のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の60%であり、
図27Dに示すように、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ105mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は15%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも7.7dB向上した。その結果を表2に示している。
【0050】
[実施例19]
本発明の実施例19のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が8mm×13mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例6(
図15)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の55%であり、図示しないが、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ53mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は6.9%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも1.7dB向上した。その結果を表2に示している。
【0051】
[実施例20]
本発明の実施例20のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例1(
図4)と同じポリウレタンフォームである。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の60%であり、
図27Bに示すように、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ280mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は40%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも12.0dB向上した。その結果を表2に示している。
【0052】
[実施例21]
本発明の実施例21のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例1(
図4)と同じポリウレタンフォームである。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の60%であり、図示しないが、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ140mm以内の部分にのみ多孔体を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は20%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも9.3dB向上した。その結果を表2に示している。
【0053】
[実施例22]
本発明の実施例22のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例1(
図4)と同じポリウレタンフォームである。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の60%であり、図示しないが、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ53mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は7.5%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも8.4dB向上した。その結果を表2に示している。
【0054】
[実施例23]
本発明の実施例23のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例1(
図4)と同じポリウレタンフォームである。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の60%であり、図示しないが、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ18mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は2.5%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも2.1dB向上した。その結果を表2に示している。
【0055】
[実施例24]
本発明の実施例24のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例3(
図10)と同じポリウレタンフォームである。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の60%であり、図示しないが、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ53mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は7.5%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも4.0dB向上した。その結果を表2に示している。
【0056】
[実施例25]
本発明の実施例25のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例2(
図9)と同じポリウレタンフォームである。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の60%であり、図示しないが、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ53mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は7.5%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも2.8dB向上した。その結果を表2に示している。
【0057】
[実施例26]
本発明の実施例26のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が10mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例8(
図17)と同じ発泡ゴムである。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の60%であり、図示しないが、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ53mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は7.5%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と比べると良好で、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも6.6dB向上した。その結果を表2に示している。
【0058】
次に、本発明の実施例10〜26と対比するための比較例について説明する。
[比較例6]
比較例6のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が2mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の20%であり、図示しないが、全長840mmのチューブ6に対して、一方の端部(片端部)から53mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は1.3%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と同様に、特に2000Hz以上の高周波数に対する遮音量が不十分であり、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも0.4dBしか向上していない。その結果を表2に示している。
【0059】
[比較例7]
比較例7のシール部材1では、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6の内部に、断面形状が2mm×10mmの多孔体7が挿入されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。シール部材1の使用状態における多孔体7の断面積は、チューブ6の中空部の断面積の20%であり、図示しないが、全長840mmのチューブ6に対して、両端部からそれぞれ26mm以内の部分にのみ多孔体7を配置し、チューブ6の内容積に対する多孔体7の体積占有率は1.3%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音性は、従来例と同様に、特に2000Hz以上の高周波数に対する遮音量が不十分であり、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は、従来例よりも0.7dBしか向上していない。その結果を表2に示している。
【0060】
以上説明した通り、本発明の実施例1〜26によると、特に電気自動車やハイブリッド車に用いられる電気モータが発生する高周波ノイズの周波数(約2000Hz〜約16000Hz)の範囲において、優れた遮音性を発揮する。このように実施例1〜26によって優れた遮音性が得られるのは、多孔体7による吸音効果と、空気保持空間8内の空気による振動減衰とが共に働いた結果である。これに対し、多孔体が設けられていない従来例では、チューブ6内の空気による振動減衰効果はあるものの、多孔体7による吸音効果がないため、十分な遮音性が得られない。チューブ6内に空気保持空間が存在しない比較例3では、多孔体7による吸音効果はあるものの、チューブ6内の空気による振動減衰効果がないため、十分な遮音性が得られない。多孔体7がチューブ6の外側に位置する比較例4,5では、空気の振動が、開放空間に位置する多孔体7の側方を通って伝わっていくため、伝播する空気の振動のうちのごく一部にしか多孔体7の吸音効果が及ばず、十分な遮音性が得られない。
【0061】
また、チューブ6内に多孔体7と空気保持空間とが設けられているシール部材のうち、十分な遮音性が得られない比較例1,2は、多孔体の材料が適切で無かったと考えられる。すなわち、比較例1,2の材料について改めて検討すると、実施例1〜26に比べてかさ密度が高いことが判る。これは、多孔体7の密度が高いということは多孔体7の一定の断面積中の孔部の総量が少ないことを意味し、孔部が少ないと吸音効果が小さいことに起因する。従って、高い遮音性を実現するためには、多孔体7の密度が小さいことが好ましい。比較例1,2の遮音性が小さく、実施例7の遮音性は許容範囲内ではあることを考慮すると、かさ密度が150kg/m
3以下であることが好ましいと言える。ただし、かさ密度が小さすぎると多孔体7の材料強度が低下し、加工や取付けが困難になる可能性があるので、かさ密度は10kg/m
3以上であることが好ましい。
【0062】
多孔体7を構成する材料の吸水率に着目すると、吸水率が高いほど連続空孔が多く、吸水率が低すぎると連続空孔が少ないため高い遮音性を得られにくいと考えられる。実施例1〜26と比較例1,2の吸水率を対比すると、吸水率が1.6%以下では十分な遮音性が得られない可能性があると考えられる。さらに、より確実に十分な遮音性を得るためには、吸水率がおおよそ10%以上であることが好ましいと思われる。ただし、吸水率があまりにも高すぎると、隙間から進入した水の吸水により重量が重くなったり、連続空孔が塞がれて本発明のシール部材の本来の遮音性を得られなくなったりするため、吸水率は3000%以下であることが好ましい。
【0063】
多孔体7を構成する材料の特性の1つである圧縮応力に着目すると、優れた遮音性が得られたシール部材1の多孔体7の25%圧縮応力はおおよそ1N/cm
2以下であった。また、優れた遮音性が得られたシール部材1の多孔体7の50%圧縮応力はおおよそ2.5N/cm
2以下であった。
【0064】
以上説明したように、本発明のシール部材1において優れた遮音性を得るために好ましいのは、かさ密度が10kg/m
3以上150kg/m
3以下、吸水率が10%以上3000%以下、25%圧縮応力が1N/cm
2以下、50%圧縮応力が2.5N/cm
2以下という条件を満たすものである。ただし、これらの条件を全て満たしていなくても、これらの条件のうちの少なくとも1つを満たしていれば、遮音性の向上にある程度の効果が得られるため、本発明の範囲内に含まれる。
【0065】
以上、本発明のシール部材1の遮音性について説明したが、遮音性以外の特性について次に説明する。本発明のシール部材1の主な用途である乗物用ドアや建物用ドアは、前述したように軽量化が求められている。本発明のシール部材1のチューブ6は従来例と同様なものであり、このチューブ6内に挿入される多孔体7の分だけシール部材1の重量が増加する。従って、この多孔体7はできるだけ軽いことが好ましい。実施例1〜9および比較例1〜5のうちのほとんどは、多孔体7の断面積に大きな違いはないため、多孔体7の密度が小さいことが、シール部材1の重量の増大の抑制につながる。すなわち、前述したように、かさ密度を150kg/m
3以下に設定することが、シール部材1の重量の増加を抑制する上でも効果的である。前述したようにかさ密度を小さく設定することにより、重量をあまり大きくすることなく遮音性の向上が図れるという非常に優れた効果が得られる。従来のシール部材は、一般的に、遮音性が高いシール部材は重いという傾向があった。しかし、表1を見ると、本発明のシール部材は、遮音性の低い比較例1〜3よりも明らかに軽いにもかかわらず良好な遮音性を有しており、遮音性と軽量化の両立という、従来は困難であった格別の効果を実現している。
【0066】
また、本発明のシール部材1では、チューブ6の内部に挿入する多孔体7を防水チューブ等に予め挿入する必要がないため、シール部材1の製造工程が煩雑ではなく、部品点数が増えることもない。そして、多孔体7を、前述したように圧縮応力が小さい材料によって形成すると、多孔体7の取り付けや、シール部材1の使用時の圧縮が容易に行え、作業性が良好であるとともに、ドア本体2a,4aの外周縁部やドア枠3a,5aに小さな力で容易に密着可能であるため、シールの信頼性(耐熱性や耐候性)が良好である。
【0067】
本発明の実施例10〜26では、
図27Aに示すようにチューブ6の全長に亘って多孔体7を配置するのではなく、
図27B〜27Dに示すように、チューブ6の長さ方向において部分的にのみ多孔体7を挿入した構成でも、
図27Eに示すように多孔体を持たない従来のシール部材に比べて、遮音性向上の効果が得られることを示している。実施例10〜26では、チューブ6の全長に亘って多孔体7が配置されている実施例1〜9のシール部材1に匹敵する遮音性を実現しつつ、必要な多孔体7の量が少なくて済むとともに多孔体7の挿入動作が容易であるため製造コストを低く抑えられ、また、シール部材1の全体の重量を低く抑えられ、軽量化に伴う様々な効果に寄与する。ただし、比較例6,7では、チューブ6の内容積に対して多孔体7が占める割合(体積占有率)が小さすぎるため、多孔体7の吸音効果が及ばず、十分な遮音性が得られない。表2に示されている実施例1〜26および比較例1〜7の遮音性の改善量を見ると、多孔体7の体積占有率は2.5〜89%程度が好ましいと言える。また、実施例10〜26および比較例6,7の結果を見ると、遮音性の向上の効果を得るためには、チューブ6の長手方向において、多孔体7が少なくともチューブ6の全長の4%以上の範囲を占めるように配置されていることが好ましいことが判る。
【0068】
実施例10〜26では、
図27A〜27Eに示すような両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ6を用いているが、これは、
図28に示すような閉じたループ状のチューブ6の一部を構成するものであってもよい。
図28に示す例では、1対のチューブ部材6a,6bがコーナージョイント6cを介して接合されることにより、複合部材であるループ状のチューブ6が構成されている。この場合、1対のチューブ部材6a,6bの一方または両方が、前述したように長さ方向において部分的に多孔体7を挿入されることによって、実施例10〜26のような直線状または曲線状のシール部材1を構成することができる。
図1に示すような乗物用ドア2に用いられるシール部材1の場合、装着時に上部(天井側)に位置する上部チューブ部材6aと、下部(床側)に位置する下部チューブ部材6bとが接合されてループ状のチューブ6が構成されることが一般的であり、乗員の耳に近い位置に配置される上部チューブ部材6aにおいて、実施例10〜26のように多孔体7を少なくとも部分的に配置して遮音性を向上させることが特に好ましい。その場合、下部チューブ部材6bにも、少なくとも部分的に多孔体7を配置して遮音性を向上させてもよく、あるいは、乗員の耳から遠い下部チューブ部材6bには多孔体7を配置せず製造コストのさらなる抑制や軽量化を図ってもよい。
【0069】
コーナージョイント6cを介して他のチューブ部材(例えば下部チューブ部材6b)と接合されるチューブ部材(例えば上部チューブ部材6a)は、成形および接合工程の都合上、両端部が開口しているのが一般的である。従来は、このようなチューブ部材を含むシール部材は、チューブ部材の開口端部からの音漏れがあるために、高い遮音性を実現することが困難であった。これに対し、前述した実施例10〜26では、開口端部からの音漏れを多孔体7によって抑制している。表2を見ると、開口端部から、チューブ部材の全長の33%の距離の範囲内に多孔体7の少なくとも一部が存在している場合には、遮音性向上の効果が得られていることが判る。
【0070】
このように中空のチューブ6の内部に多孔体7を挿入することは、
図3に示すような閉じたループ状のシール部材1においても、
図28に示すような複合部材であるループ状のチューブ6の一部を構成する部分品である、両端開口の中空の直線状または曲線状のチューブ部材6aからなるシール部材1においても有効である。
【0071】
以上説明した本発明のシール部材1は、乗物用ドア本体や建物用ドア本体の外周縁部に取り付けられる構成に限られず、ドア枠の内側に取り付けられてもよい。また、本発明のシール部材1は、乗物用駆動装置、例えば自動車のガソリンエンジンや電気モータ等の格納部分の外周縁部に取り付けられて、筐体フレームとの間に挟みつけられて圧縮させられてシールするものであってもよい。さらに、電気製品等のシールが必要な様々な部材において利用することができ、その応用範囲は限定されない。
【0072】
[シール部材の製造方法]
次に、本発明のシール部材1の製造方法について説明する。この方法は、前述したように複数のチューブ部材6a,6b(部分品)がジョイント6cを介して接合されて構成された複合部材である中空のチューブ6の内部に多孔体7が配置された構成のシール部材1を製造するための方法である。
【0073】
通常、複合部材である中空のチューブ6を形成する場合、中空の部分品である複数のチューブ部材を、ジョイントを介して接合させる。一例としては、ジョイントの中空部分を形成するための棒状(円柱状)の中子の一端部に一方のチューブ部材を嵌め込み、中子の他端部に他方のチューブ部材を嵌め込む。そして、中子の外周を覆うように未加硫ゴム層または樹脂層を形成して、加熱加圧によりゴム層を加硫接着すること、または加熱加圧とその後の冷却加圧により樹脂層を固化させることによって、弾性変形可能な加硫ゴム層または樹脂層からなるジョイントを形成する。
【0074】
本発明では、ジョイント6cの形成およびチューブ部材6a,6bの接合に先だって、
図29A,29Bに示すように、チューブ部材6a,6bの内部に、前述した多孔体7を予め挿入しておく。そして、
図30に示す湾曲した棒状(円柱状)の中子16の両端部に、多孔体7が挿入されたチューブ部材6a,6bをそれぞれ嵌め込んで取り付ける(
図31)。この時、多孔体7が中子16に接していることが好ましい。それから、例えば、多孔体7が挿入されたチューブ部材6a,6bが取り付けられた中子16の外周に、未加硫ゴムシートまたは熱可塑性樹脂シートを巻き付ける。そして、
図32に示すように、チューブ部材6a,6bが取り付けられ未加硫ゴムシートまたは樹脂シートが巻かれた状態の中子16を、金型17のキャビティ17a内に配置する。
図33に模式的に示すように、金型17をプレス機18にセットして、加熱および加圧することによってゴムを加硫させて、または、加熱および加圧してその後に冷却および加圧することによって樹脂シートを熱溶着させて、加硫ゴム層または樹脂層からなるジョイント6cを形成する。ゴムを加硫してジョイント6cを形成する場合の加熱条件としては、例えば、170℃で15分加熱、180℃で8分加熱、または190℃で4分加熱などが挙げられる。熱可塑性樹脂を固化させてジョイント6cを形成する場合の加熱条件としては、200℃で予熱10分、加熱加圧5分、冷却加圧5分などが挙げられる。ジョイント6cが完成したら、
図34に示すように金型17から取り外す。そして、
図35に示すように、ジョイント6cを弾性変形させながら、金型に設けられた凸部(図示せず)等により予め形成されたジョイント6cのスリット部19から、あるいは、予めスリット部が形成されていない場合にはジョイント6cの一部を切り欠いてスリット部19を作製した後にそのスリット部19から、中子16を取り出す。このようにして、
図36に示すようにチューブ部材6a,6bがジョイント6cを介して接合された構成のチューブ6が完成する。
【0075】
他の例では、前述したように予め多孔体7が挿入されたチューブ部材6a,6bが取り付けられた中子16を、
図37に示す射出成形装置の金型20のキャビティ20a内に配置して、溶融した未加硫ゴムまたは樹脂をキャビティ20aに射出して、キャビティ20aの内部であって中子16の外側を溶融した未加硫ゴムまたは樹脂で満たす。そして、射出した未加硫ゴムまたは樹脂を加硫または固化させて、弾性変形可能な加硫ゴム層または樹脂層からなるジョイント6cを形成する。その後は、前述した工程と同様に、
図34〜35に示すように金型から取り外してジョイント6cのスリット部19から中子16を取り出すことにより、
図36に示すようにチューブ部材6a,6bがジョイント6cを介して接合された構成のチューブ6が完成する。
【0076】
以上説明した製造方法によると、金型17をプレス機にセットして加熱および加圧して未加硫ゴムシートまたは樹脂シートを加硫接着または熱溶着させる際、あるいは、金型20のキャビティ20aに溶融した未加硫ゴムまたは樹脂を射出して加硫または固化させる際に、
図38に示すように、多孔体7がチューブ6(チューブ部材6a,6bおよびジョイント6c)の内面に接合されて固定される。具体的には、加熱された金型17,20や溶融した未加硫ゴムまたは樹脂によって多孔体
7が融点以上の温度になった場合には、多孔体7の少なくとも一部がチューブ部材6a,6bおよびジョイント6cに熱溶着する。また、仮に多孔体7が融点以上の温度にならなくても、チューブ部材6a,6bおよびジョイント6cを構成するゴムまたは樹脂材料が軟化して多孔体7の孔部内に進入して加硫または固化することや、軟化した多孔体7とチューブ部材6a,6bおよびジョイント6cとがある程度の粘着力を持って密着した状態で共に加硫または固化することなどにより、多孔体7がチューブ部材6a,6bおよびジョイント6cの内面に接合されて固定される。このようにして、チューブ部材6a,6bとジョイント6cとから構成されたチューブ6の内部で多孔体7が固定されると、遮音性がより向上する。その理由の1つは、多孔体7が固定されて移動や振動を生じにくくなることによって、多孔体7の振動吸収効果が高まることである。また、中子16の取り出しのためのジョイント6cのスリット部19が遮音の妨げになる(音の伝達に寄与する)と考えられるが、スリット部19の近傍に多孔体7が固定されることにより、吸音作用が特に望まれる位置に多孔体7が確実に位置するため、効率良く遮音効果を得ることができる。
【0077】
接合前にチューブ部材6a,6b内の多孔体7が中子16に接していると、多孔体7が中子16によってチューブ部材6a,6bおよびジョイント6cに押しつけられた状態で加熱されるため、多孔体7がチューブ部材6a,6bおよびジョイント6cに接合しやすくなるので好ましい。また、チューブ部材6a,6bに挿入された時点では、多孔体7はチューブ部材6a,6bの内部に収まっていたとしても、加熱されて溶融または軟化した多孔体7は、チューブ部材6a,6bの内部からジョイント6cの内面に接する位置まで流動してジョイント6cの内面にも接合される可能性がある。ただし、多孔体7は、チューブ部材6a,6bのいずれか一方の内部にのみ挿入されていてもよく、また、ジョイント6cに接する位置に到達せずチューブ部材6a,6bの内面のみと接合してもよい。
【0078】
この製造方法によるもう1つの効果は、チューブ部材6a,6bがジョイント6cを介して接合した後の、中子16の取り出しが容易になることである。これは、チューブ部材6a,6bおよびジョイント6cの内面に比べて、ポリウレタンフォームに代表されるスポンジ材料や不織布等からなる多孔体7の方が摩擦が小さいため、スリット部19から中子16を取り出す際に、多孔体7との接触面を滑るようにして円滑に取り出すことが可能になるからである。
【0079】
以上説明したチューブ部材6a,6bおよびジョイント6cの材料としては、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などの合成ゴムや、オレフィン系熱可塑性エラストマー(例えば三井化学株式会社のミラストマー(商品名))等が一般的であるが、それらに限定されるわけではない。また、チューブ部材6a,6bとジョイント6cは同じ材料で形成されていてもよいが、異なる材料で形成されていてもよい。多孔体7は、前述した各実施形態のうちのいずれの材料から形成されていてもよい。ジョイント
6cは、
図28に示すような湾曲したコーナージョイントであってもよいが、湾曲していない直線的なジョイント(図示せず)であってもよい。
【0080】
次に、前述したシール部材の製造方法の効果を明確にするために、この製造方法で製造したシール部材の実施例と、比較例とを説明する。
【0081】
[実施例27]
本発明の実施例27のシール部材1は、全長840mmの直線状のチューブ部材6aに対して、両端部からそれぞれ210mm以内の部分にのみ、断面形状が10mm×10mmの多孔体7が挿入され、両端部にL字型のジョイント6cを介して、100mmのチューブ部材6bが結合されている。この多孔体7を構成する材料は実施例1(
図4)と同じポリウレタンフォームである。ジョイント6cは、多孔体7をチューブ部材6aに挿入した後、中子を介してチューブ部材6aと6bを連結させ、その中子の周りに加硫剤と発泡剤とを含む未加硫のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)シート状組成物を巻き付けて、プレス機で加熱および加圧することによりEPDMを加硫して作製した。この時に、多孔体7は、ジョイント6cの内面に接合されて固定されている。ジョイント6cを形成した後に、ジョイント6cの一部を切り欠いてスリット部19を作製し、そのスリット部19から中子16を取り出した。チューブ6aの内容積に対する多孔体7の体積占有率は30%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量は、4000Hzで51.9dB、5000Hzで59.8dB、6300Hzで63.5dB、8000Hzで67.3dB、10000Hzで54.7dBであり、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は62.6dBであった。その結果を表3に示している。なお、表3には、後述する比較例8(多孔体を含まないシール部材)を基準として判定した遮音効果の良否を示している。
【0082】
【表3】
【0083】
[実施例28]
本発明の実施例28のシール部材1は、全長840mmの直線状のチューブ部材6aに対して、両端部からそれぞれ210mm以内の部分にのみ、断面形状が2mm×10mmの多孔体7が挿入され、両端部にL字型のジョイント6cを介して、100mmのチューブ部材6bが結合されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。ジョイント6cは、多孔体7をチューブ部材6aに挿入した後、中子を介してチューブ部材6aと6bを連結させ、その中子の周りに加硫剤と発泡剤とを含む未加硫のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)シート状組成物を巻き付けて、プレス機で加熱および加圧することによりEPDMを加硫して作製した。この時に、多孔体7は、ジョイント6cの内面に接合されて固定されている。ジョイント6cを形成した後に、ジョイント6cの一部を切り欠いてスリット部19を作製し、そのスリット部19から中子16を取り出した。チューブ6aの内容積に対する多孔体7の体積占有率は10%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量は、4000Hzで42.1dB、5000Hzで50.1dB、6300Hzで55.7dB、8000Hzで61.2dB、10000Hzで57.1dBであり、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は56.7dBであった。その結果を表3に示している。
【0084】
[実施例29]
本発明の実施例29のシール部材1は、全長840mmの直線状のチューブ部材6aに対して、両端部からそれぞれ210mm以内の部分にのみ、断面形状が2mm×10mmの多孔体7が挿入され、両端部にL字型のジョイント6cを介して、100mmのチューブ部材6bが結合されている。この多孔体7を構成する材料は実施例5(
図13)と同じ不織布である。ジョイント6cは、多孔体7をチューブ部材6aに挿入した後、中子を介してチューブ部材6aと6bを連結させ、その中子の周りに熱可塑性エラストマー樹脂である三井化学株式会社のミラストマーS-450B(商品名)のシートを巻き付けて、プレス機で加熱および加圧し、続いて冷却および加圧することにより作製した。この時に、多孔体7は、ジョイント6cの内面に接合されて固定されている。ジョイント6cを形成した後に、ジョイント6cの一部を切り欠いてスリット部19を作製し、そのスリット部19から中子16を取り出した。チューブ6aの内容積に対する多孔体7の体積占有率は10%であった。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量は、4000Hzで44.6dB、5000Hzで53.1dB、6300Hzで56.6dB、8000Hzで58.6dB、10000Hzで56.8dBであり、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は55.8dBであった。その結果を表3に示している。
【0085】
[比較例8]
比較例8のシール部材1は、全長840mmの直線状のチューブ部材6aに対して、多孔体7を挿入することなく、両端部にL字型のジョイント6cを介して、100mmのチューブ部材6bが結合されている。ジョイント6cは、中子を介してチューブ部材6aと6bを連結させ、その中子の周りに加硫剤と発泡剤とを含む未加硫のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)シート状組成物を巻き付けて、プレス機で加熱および加圧することによりEPDMを加硫して作製した。ジョイントを形成した後に、ジョイント6cの一部を切り欠いてスリット部19を作製し、そのスリット部19から中子16を取り出した。このシール部材1の使用状態の、様々な周波数の音に対する遮音量は、4000Hzで38.4dB、5000Hzで44.3dB、6300Hzで46.6dB、8000Hzで50.2dB、10000Hzで50.6dBであり、4000Hz〜10000Hzの遮音量のデシベル平均値は47.7dBであった。その結果を表3に示している。
【0086】
以上説明した通り、本発明の方法で製造されたシール部材、すなわち実施例27〜29のシール部材によると、多孔体を含まない比較例8のシール部材に対し、4000Hz〜10000Hzの範囲において、優れた遮音性を発揮する結果が得られた。これは、スリット部19の近傍に多孔体7が固定されることにより、吸音作用が特に望まれる位置に多孔体7が確実に位置するため、効率良く遮音効果を得ることができるからであると考えられる。