(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一つの筐体に二つのフェルールを有する小型双心光コネクタが一端側に嵌合しかつ前記二つのフェルールの先端の接続端面が露出する一つの穴が他端側に形成された接続部品の前記穴に嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部から突出して一方の前記フェルールの接続端面に接触する清掃媒体とを備えた光コネクタ用清掃具であって、
前記嵌合部は、前記フェルールの軸線方向から見て前記二つのフェルールの中心どうしを結ぶ仮想の直線の中央を中心として180度回された姿勢である第1の姿勢と第2の姿勢とにおいてそれぞれ前記穴に嵌合する形状に形成され、
前記清掃媒体は、前記嵌合部が前記第1の姿勢で前記穴に嵌合している状態で前記二つのフェルールのうち一方の前記フェルールに接触し、かつ前記嵌合部が前記第2の姿勢で前記穴に嵌合している状態で他方の前記フェルールに接触し、
前記嵌合部は、前記穴の、前記二つのフェルールが並ぶ方向の全域にわたって収容される形状に形成され、
前記嵌合部の、前記二つのフェルールが並ぶ方向の一方の半部は、前記清掃媒体が突出し、前記二つのフェルールが並ぶ方向の他方の半部は、前記小型双心光コネクタとは異なる単芯光コネクタを接続するためのアダプタに嵌合する形状に形成されていることを特徴とする光コネクタ用清掃具。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な光コネクタ用清掃具は、作業者が手で把持して突出部をアダプタに挿入し、このアダプタ内に挿入された光コネクタの接続端面の汚れを突出部の先端に露出する清掃糸で拭き取るものが多い。従来の光コネクタ用清掃具が清掃の対象とする光コネクタは、単心コネクタである。この光コネクタ用清掃具には、アダプタへの挿入時に単心コネクタの接続端面と清掃糸との位置を一致させる挿入用ガイドが設けられている。
【0003】
図26に示す光コネクタ用清掃具1は、作業者(図示せず)が把持する把持部2と、把持部2に対して回転自在に組み付けられた突出部3と、突出部3の先端で露出する清掃媒体である清掃糸4と、清掃糸4の露出部とアダプタ5(
図27参照)の中に挿入された光コネクタ6の接続端面との位置合わせを補助するガイド7を備えている。清掃時には、
図27に示すように、光コネクタ用清掃具1の先端がアダプタ5内で光コネクタ6と接触する。
【0004】
アダプタ5に光コネクタ6を挿入すると、光コネクタ6の接続端面11は、アダプタ5のほぼ中央に位置する。このアダプタ5に光コネクタ用清掃具1を光コネクタ6とは反対側から挿入すると、アダプタ5に対してガイド7のサイズが適当に調整されているため、突出部3の先端が接続端面11と正対する。突出部3およびガイド7は、挿入方向にも長さが適当に調整されているため、接続端面11と突出部3とは清掃糸4を挟んで適切な圧力で接触するようになっている。
【0005】
把持部2の内部には、例えば特許文献1に記載されているように、清掃糸4が巻かれた清掃糸供給部(図示せず)や使用後の清掃糸4を巻き取る清掃糸収容部(図示せず)が設けられている。これらの清掃糸供給部や清掃糸収容部が作業者の清掃動作に合わせて清掃糸4を送り出す。このため、常に新しい清掃糸4が突出部3に現れることになる。
【0006】
ところで、送信・受信を行う装置においては、二本の光ファイバをペアにして使うことが多い。この種の装置においては、このペアの光ファイバを一体化した双心の光ファイバケーブルがよく使用される。このような双心の光ファイバケーブルのコネクタは、単心コネクタを二つ並べて互いに固定した形状になっている。単心コネクタを二つ並べる際の間隔は規格化されている。例えば
図28(A)に示すように、LCコネクタを二つ並べた構造のLC Duplexコネクタ12においては、LCコネクタ12aどうしの間隔が6.25 mmに規定されている(非特許文献1参照)。このLC Duplexコネクタ12と他のLC Duplexコネクタ12とを互いに接続するためには、
図28(B)に示すように、LC Duplexコネクタアダプタ13が使用される。
【0007】
このような双心の光ファイバケーブルのコネクタは、前述の単心光コネクタ用清掃具1を使って二つの光ファイバケーブルを各々に清掃することは可能である。近年では、この種の双心の光ファイバケーブルを効率よく清掃するために、双心光コネクタ用清掃具が提案されている(非特許文献2参照)。この双心光コネクタ用清掃具を
図29に示す。この双心光コネクタ用清掃具21は、一つの把持部22の内部に単心光コネクタ用清掃具の清掃機構(図示せず)が二組設けられている。これらの清掃機構は、それぞれガイド23と、このガイド23の先端から突出する突出部24とを有している。突出部24の先端に清掃糸25が露出している。
二つの突出部24,24は、双心の光ファイバケーブル用コネクタの規格化されている間隔に合わせた間隔で並べられている。
【0008】
昨今の光通信データ量の増大により光ファイバの使用量は飛躍的に増えており、場所を取らない光ファイバが求められている。それに伴い、光ファイバのインターフェースである光コネクタの小型化も進み、双心光コネクタは、これまでの単心コネクタを二つ並べた形から、より高密度に伝送装置上に配置できるように、コネクタの構造が一つの筐体から二つのフェルールが突き出した構造に変化している(非特許文献3参照)。
図30(A),(B)にその一例としてCSコネクタ31を示し、
図31(A),(B)にCSコネクタ用アダプタ32を示す。なお、規格ではCSコネクタ用アダプタは
図31に示したものを二つ並べて一つのアダプタとして構成されている。すなわち、一つのアダプタでCSコネクタ31を2本挿すことができる構造が採られているが、ここでは便宜的に1本のCSコネクタ31に対応したアダプタ32を示している。以下においては、一つの筐体から二つのフェルールが突出している構造の光コネクタを、CSコネクタ31を含めて単に「小型双心光コネクタ」という。
【0009】
CSコネクタ31(小型双心光コネクタ)は、
図30に示すように、アダプタ32に嵌合する筐体33と、この筐体33から突出する二つのフェルール34とを備えている。これらのフェルール34の先端に接続端面35が形成されている。アダプタ32は、
図31に示すように、CSコネクタ31の筐体33が嵌合する第1および第2の穴36,37と、第1の穴36と第2の穴37とを連通する連通孔38とを有している。フェルール34は連通孔38の中に挿入される。
アダプタ32の第1の穴36と第2の穴37とには、CSコネクタ31の筐体33に設けられている係合部39{
図30(B)参照}と係合する係合突起40が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明
の前提となる光コネクタ用清掃具とコネクタおよびアダプタの側面図である。
【
図2】
本発明の前提となる光コネクタ用清掃具と小型双心光コネクタとが挿入されたアダプタの断面図である。
【
図3】二つのフェルールどうしを結ぶ仮想の直線を説明するための図で、
図3(A)は小型双心光コネクタの正面図を示し、
図3(B)はアダプタの正面図を示す。
【
図4】アダプタに小型双心光コネクタが挿入された状態を示す正面図である。
【
図5】
本発明の前提となる嵌合部の構成を説明するための模式図である。
【
図6】第1の
参考例による光コネクタ用清掃具の要部を示す図で、
図6(A)は側面図、
図6(B)は正面図である。
【
図7】第1の姿勢の嵌合部がアダプタに嵌合している状態を示す断面図である。
【
図8】第2の姿勢の嵌合部がアダプタに嵌合している状態を示す断面図である。
【
図9】第2の
参考例による光コネクタ用清掃具の要部を示す図で、
図9(A)は側面図、
図9(B)は正面図である。
【
図10】第1の姿勢の嵌合部がアダプタに嵌合している状態を示す断面図である。
【
図11】第2の姿勢の嵌合部がアダプタに嵌合している状態を示す断面図である。
【
図12】
本発明に係る光コネクタ用清掃具の要部を示す図で、
図12(A)は側面図、
図12(B)は正面図である。
【
図13】第1の姿勢の嵌合部がアダプタに嵌合している状態を示す断面図である。
【
図14】第2の姿勢の嵌合部がアダプタに嵌合している状態を示す断面図である。
【
図16】嵌合部がLCコネクタ用アダプタに嵌合している状態を示す断面図である。
【
図17】
第3の参考例による光コネクタ用清掃具の要部を示す側面図である。
【
図19】光コネクタ用清掃具と光コネクタとが挿入されたキャップの断面図である。
【
図20】キャップに小型双心光コネクタの一部が挿入された状態を示す断面図である。
【
図21】光コネクタ用清掃具から外した状態のアタッチメントの側面図である。
【
図22】光コネクタ用清掃具に取付けられた状態のアタッチメントを示す図で、
図22(A)は側面図、
図22(B)は正面図である。
【
図23】アダプタに嵌合したアタッチメントの断面図で、
図23(A)は第1の姿勢を示し、
図23(B)は第2の姿勢を示す。
【
図24】光コネクタ用清掃具から取り外されたLCコネクタ用のアタッチメントの側面図である。
【
図25】光コネクタ用清掃具に取付けられたLCコネクタ用のアタッチメントを示す図で、
図25(A)は側面図、
図25(B)は正面図である。
【
図26】従来の光コネクタ用清掃具の側面図である。
【
図27】光コネクタ用清掃具と光コネクタとが挿入された従来のアダプタの断面図である。
【
図28】従来の二つの光コネクタどうしの間隔を説明するための図で、
図28(A)はLC Duplexコネクタの正面図、
図28(B)はLC Duplexコネクタアダプタの正面図である。
【
図31】CSコネクタ用アダプタを示す図で、
図31(A)は側面図、
図31(B)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る光コネクタ用清掃具の一実施の形態を
図1〜
図25によって詳細に説明する。これらの図において、
図26〜
図31によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。ここでは先ず、本発明の
前提となる技術を
図1〜
図5を参照して説明する。
この前提となる技術において小型双心光コネクタを説明するにあたってCSコネクタ31を用いるが、本発明に係る光コネクタ用清掃具は、CSコネクタ31を清掃するものに限定されることはなく、他の小型双心光コネクタであっても清掃することが可能なものである。
【0026】
(
前提となる技術の説明)
図1に示す光コネクタ用清掃具41は、
図26に示した従来の単心光コネクタ用清掃具1と同様な把持部42と、この把持部42から突出したガイド43と、このガイド43の先端部に設けられた嵌合部44と、この嵌合部44の先端に一部が露出する清掃媒体としての清掃糸45などを備えている。清掃糸45は、嵌合部内に設けられた突出部46の先端に露出している。
【0027】
この
前提となる技術による嵌合部44は、ガイド43に一体に形成されており、
図2に示すように、詳細は後述するがアダプタ32に嵌合するように形成されている。
図2は、アダプタ32を破断した状態で描いてあり、アダプタ32に嵌合部44と、CSコネクタ31(小型双心光コネクタ)とが嵌合している状態を示している。
アダプタ32が「接続部品」に相当する。
【0028】
把持部42の中には、従来の単心光コネクタ用清掃具1と同様の清掃機構(図示せず)が設けられている。この清掃機構は、
図2に示すように嵌合部44が例えばアダプタ32の第1の穴36に挿入されて押し付けられることによって、清掃糸45が嵌合部44の先端から突出してフェルール34の接続端面35に所定の押圧力で接触するように構成されている。清掃糸45は、この接触状態で清掃機構によって駆動され、突出端で折り返されて移動してフェルール34の接続端面35を清掃する。
【0029】
ここで嵌合部44の「小型双心光コネクタの清掃に適した形状」について、
図3〜
図5を参照して詳細に説明する。
図3(A)は、CSコネクタ31の正面図であり、
図3(B)は、CSコネクタ用のアダプタ32の正面図である。CSコネクタ31を含めて双心光コネクタの多くは、二つのフェルール34が線対称に配置されるような対称軸C1および対称軸C2に対して、言い換えれば二つのフェルール34の中心を結ぶ仮想の直線Lに対する垂直二等分線に対して、おおむね対称構造を採るように設計されている。
光コネクタ用清掃具41は、そのような小型双心光コネクタに対する清掃を想定して設計されている。上述した「小型双心光コネクタの清掃に適した形状」には、次の三つの特徴を有することが必要である。
【0030】
第1の特徴は、光コネクタ用清掃具41の嵌合部44をアダプタ32に挿入したときに、アダプタ32の内壁など構造体を利用して、清掃糸45がどちらか一方のフェルール34の接続端面と正対するように位置付けられることである。
第2の特徴は、奥行き方向の形状の特徴で、光コネクタ用清掃具41の嵌合部44をアダプタ32に挿入したときに、適切な圧力が清掃糸45に加えられることである。
【0031】
第3の特徴は、上述した対称軸C1および対称軸C2と、フェルール34の中心どうしを結ぶ仮想の直線Lとの交点となる対称中心P1,P2に対して、嵌合部44を180度回転させた時に、嵌合部44の先端から突出している清掃糸45がもう一方のフェルール34の接続端面35と正対するように位置付けられることである。第1〜第3の特徴のうち、第1の特徴と第2の特徴は、従来の単心光コネクタ用清掃具1でも求められる特徴であるが、
第3の特徴は、光コネクタ用清掃具41で求められる特徴である。
光コネクタ用清掃具41は、上述した第1〜第3の特徴を満たす形状の嵌合部44を有している。
【0032】
光コネクタ用清掃具41は、上述した第1の特徴を実現するために、嵌合部44の形状の一部がアダプタ32の形状とほぼ一致するように形成されている。すなわち、嵌合部44がアダプタ32の例えば第1の穴36に嵌合することにより、嵌合部先端に位置する清掃糸45がアダプタ32に対して縦方向および横方向に位置決めされ、この清掃糸45が一方のフェルール34の接続端面35と正対する。
【0033】
図4に、CSコネクタ31のアダプタ32を例に、コネクタの位置決めに有効な、アダプタ32の内壁形状を太線で示す。また、
図5に、
図4で示した太線に沿った形状を
有する嵌合部44の形状を示す。
図5中に二つ描かれているアダプタ32のうち、左側に位置するアダプタ32中に太線で示した形状が、図において左側の一方のフェルール34に正対するために必要な嵌合部44の輪郭の例である。
図5の右側のアダプタ32中に太線で示した形状が図において右側の他方のフェルール34に正対するために必要な嵌合部44の輪郭の例である。
【0034】
また、前述の第3の特徴を実現するためには、フェルール34の対称軸C1とフェルール34の中心を結ぶ仮想の直線Lとの交点を対称中心P2とした時、この対称中心P2に関して嵌合部44を180度回転させると、嵌合部44の先端に露出している清掃糸45が他方のフェルール34の接続端面35と正対する必要がある。そこで、この180度回転した状態において清掃糸45と他方のフェルール34の接続端面35が正対するよう、
図5の右側のアダプタ32中に太線で示した形状を180度回転させた形状も嵌合部44に適用してある。
【0035】
光コネクタ用清掃具41の清掃糸45が一方のフェルール34と正対するための形状47(
図5参照)と、他方のフェルール34に清掃糸45が正対するための形状48(
図5参照)とは、アダプタ32の対称軸C2を中心として線対称であるので、他方のフェルール34と清掃糸45が正対するための形状48を180度回転して、一方のフェルール34と清掃糸45とが正対するための形状47に重ねると、前述の第1および第3の特徴を有する形状49が得られる。この形状49は、形状47と、形状48を180度回した状態の形状との共通部分からなる形状である。
【0036】
光コネクタ用清掃具41の嵌合部44は、この第1の特徴と第3の特徴とを有する形状49が実現されるように形成されている。このため、嵌合部44は、フェルール34の軸線方向から見て二つのフェルール34の中心どうしを結ぶ仮想の直線Lの中央(対称中心P2)を中心として180度回された姿勢である第1の姿勢と第2の姿勢とにおいて、それぞれアダプタ32の第1および第2の穴36,37に嵌合する。清掃糸45は、嵌合部44が第1の姿勢で第1の穴36に嵌合している状態で二つのフェルール34のうち一方のフェルール34の接続端面35に接触し、かつ嵌合部44が第2の姿勢で第1の穴36に嵌合している状態で他方のフェルール34の接続端面35に接触する。
【0037】
さらに、光コネクタ用清掃具41は、前述の第2の特徴を実現するために、従来の単心光コネクタ用清掃具1と同様に、例えばアダプタ32内に挿入した際におおよそ一定の圧力が先端部の清掃糸45に加えられるように、長さ(挿入方向の寸法)が設計されている。なお、この挿入方向の寸法の設計については特許文献1に示すような従来の単心光コネクタ用清掃具1と同様であるから、ここにおいて詳細な説明は省略する。
【0038】
(具体的な
参考例)
次に、本発明
の前提となる技術の参考例を、CSコネクタ31を例に
図6〜
図8を参照して説明する。なお、具体的な
参考例を説明するにあたり用いる各図において、
図1〜
図5、
図26〜
図31で説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。これらの図においては、アダプタ内の嵌合部の位置を理解し易いように、アダプタに嵌合した嵌合部にはハッチングを施してある。
【0039】
(第1の
参考例)
図6(A)、(B)に第1の
参考例による光コネクタ用清掃具41の嵌合部44を 示す。この嵌合部44の断面形状は、前出の第1および第3の特徴となる形状49と同一の形状である。
図7に、第1の
参考例による光コネクタ用清掃具41について、嵌合部44をCSコネクタ用アダプタ32の第1または第2の穴36,37に挿入して、一方のフェルール(図左側)に清掃糸45を合わせた時の状態を示す。このときの嵌合部44の姿勢が第1の姿勢である。また、
図8に、第1の
参考例の光コネクタ用清掃具41について、アダプタ32の対称中心P2について180度回転させて第2の姿勢とした嵌合部44をCSコネクタ用アダプタ32の第1または第2の穴36,37に挿入して、他方のフェルール(図右側)に清掃糸45を合わせた時の状態を示す。
【0040】
この
第1の参考例においては、小型双心光コネクタのほぼ半分のサイズの
先端形状で光コネクタ用清掃具41の嵌合部44が実現される。すなわち、嵌合部44は、アダプタ32の第1または第2の穴36,37の、二つのフェルール34が並ぶ方向の半部のみに収容される形状に形成されている。この構成を採ることにより、嵌合部44を必要最小限のサイズに抑えることができる。
【0041】
また、
この光コネクタ用清掃具41は、清掃が必要なフェルール34だけを選択的に清掃することが可能である。
図29に示したような従来の双心光コネクタ用清掃具21では、一回の清掃で二つのフェルール34が同時に清掃されるために不具合が生じる。ここで、この不具合を例えばトランシーバーにつながっている双心光コネクタを例にして説明する。例えば、トランシーバーに接続されている双心光コネクタの送信側のフェルールと、受信側のフェルールとでは清掃の重要度が異なる場合がある。
【0042】
すなわち、送信側のフェルールの損失を少しでも減らすように清掃し、受信側のフェルールにおいては、トランシーバーが受信感度以上で受信できる程度に清掃すればよい場合がある。このような場合、従来の双心光コネクタ用清掃具21では、清掃の必要のない受信側のフェルールも清掃されてしまう。
第1の参考例による光コネクタ用清掃具41によれば、送信側のフェルールを重点的に清掃でき、必要のない清掃を避けることができる。
【0043】
(第2の
参考例)
光コネクタ用清掃具の嵌合部は、
図9(A)、(B)に示すように形成することができる。
図9(A),(B)に示す嵌合部51の形状は、前出の第1および第3の特徴となる形状49と、この形状49をアダプタ32の対称中心P2について180度回転した形状52とをアダプタ32の対称軸C2で繋げた形状である。
図10に、第1の姿勢とした嵌合部51をアダプタ32の第1または第2の穴36,37に挿入して、一方のフェルール(図左側)に清掃糸45を合わせた時の状態を示す。また、
図11には、
図10に示した第1の姿勢に対して対称中心P2を中心にして180度回転させて第2の姿勢とした嵌合部51をアダプタ32の第1または第2の穴36,37に挿入して、他方のフェルール(図右側)に清掃糸45を合わせた時の状態を示す。
【0044】
この第2の
参考例において、嵌合部51は小型双心光コネクタとほぼ同じサイズとなる。すなわち、嵌合部51は、アダプタ32の第1または第2の穴36,37の、二つのフェルール34が並ぶ方向の全域にわたって収容される形状に形成されている。この
参考例によれば、
図7および
図8で示した第1の
参考例の形態の嵌合部44よりサイズが大きくなるものの、アダプタ32内で位置決めする際に有効な箇所が2倍に増えるために位置合わせ精度が向上し、確実に清掃を行うことができ、清掃の信頼性が高くなる。
【0045】
(
本発明の実施の形態)
本発明に係る光コネクタ用清掃具の嵌合部は、
図12〜
図16に示すように構成することができる。
図12(A),(B)に
本発明の実施の形態による嵌合部53を示す。この嵌合部53の形状は、前出の
図5に示した第1および第3の特徴となる形状49と、LCコネクタ用アダプタ54{
図12(B)参照}の挿入口形状55の一部{
図7(B)参照}に合わせた形状56とを対称軸C2で繋げた形状である。LCコネクタ用アダプタ54が本発明でいう「単芯光コネクタを接続するためのアダプタ」に相当する。
【0046】
図13に、
本発明の実施の形態による嵌合部53を第1の姿勢としてアダプタ32に挿入して、一方のフェルール(図左側)に清掃糸45を合わせた時の状態を示す。また、
図14には、
本発明の実施の形態の嵌合部53を、アダプタ32の対称中心P2を中心にして第1の姿勢に対して180度回転させて第2の姿勢とし、この嵌合部53をアダプタ32に挿入して、他方のフェルール(図右側)に清掃糸45を合わせた時の状態を示す。
【0047】
図15は、LCコネクタ用アダプタ54の正面図である。このLCコネクタ用アダプタ54に
本発明の実施の形態による嵌合部53を挿入した状態を
図16に示す。嵌合部53の一部の形状56がLCコネクタ用アダプタ54の挿入口形状55と部分的に一致しているので、嵌合部53はLCコネクタ用アダプタ54に対しても位置決めされ、清掃糸45がLCコネクタ(図示せず)のフェルールの位置と一致する。
この実施の形態による光コネクタ用清掃具41によれば、小型双心光コネクタ(CSコネクタ31)だけでなく、別の単芯光コネクタ(LCコネクタ)も清掃することができる。
【0048】
(
第3の参考例)
上述した
各参考例および本発明の実施の形態は、本発明でいう「接続部品」をアダプタによって構成する例を示した。しかし、「接続部品」は、
図17〜
図20に示すように、光コネクタ用清掃具41に取付ける保護用キャップ61によって構成することができる。
図17に示す保護用キャップ61は、前出の
図9に示した嵌合部51の先端に露出している清掃糸45が保管時に汚れることを防ぐためのもので、嵌合部51に着脱可能に取付けられるキャップ本体62と、蓋63とによって構成されている。キャップ本体62と蓋63とは、ヒンジ64を介して互いに連結されている。なお、キャップは、嵌合部51に取付けられるものに限定されることはなく、例えば、
図6に示した嵌合部44や、
図12に示した嵌合部53など、その他の形状の嵌合部に取付けられるものでもよい。
【0049】
キャップ61は、嵌合部51の先端を覆ってこれを保護するほか、蓋63を外すことにより生じた第3の穴65(
図18参照)にCSコネクタ31やその他の小型双心光コネクタを挿入することにより、アダプタ32に挿入されていない単体の小型双心光コネクタに対する清掃を可能とするものである。キャップ61の断面を
図18に示す。キャップ本体62は、その一端側に形成された、小型双心光コネクタを嵌合状態で収容する第1の空間66と、他端側に開口した穴67によって形成されて光コネクタ用清掃具の嵌合部51を収容する第2の空間68と、第1の空間66と第2の空間68とを連通する、二つのフェルール34を挿入するための二つの連通孔69などを有している。
【0050】
キャップ61は、このキャップ61に挿入された光コネクタ用清掃具41と小型双心光コネクタとの相対位置が、
図10および
図11で示したアダプタ32に挿入された光コネクタ用清掃具41と小型双心光コネクタとの相対位置と等しくなるように設計されている。
図19に、キャップ61に光コネクタ用清掃具41とCSコネクタ31(小型双心光コネクタ)とを挿入した状態を示す。光コネクタ用清掃具41をキャップ本体62内に押し込むと、突出部46が嵌合部51から飛び出し、突出部46の先に露出した清掃糸45が適度な圧力で小型双心光コネクタのフェルール34の接続端面35に接触するようになっている。
【0051】
この
参考例によるキャップ61は、小型双心光コネクタを挿入した時にコネクタ先端を汚染しないための構造も有している。
図20にキャップ61にCSコネクタ31(小型双心光コネクタ)を挿入する例を示す。CSコネクタ31を挿入する第1の空間66の奥行きDは、CSコネクタ31の筐体33から突き出たフェルール34の長さより大きくとられる。この結果、
図20に示すように、CSコネクタ31が正しく挿入されていない状態では、フェルール34の先端がキャップ61に触れることはない。キャップ61の第3の穴65(コネクタ挿入口)は、CSコネクタ31のサイズに合わせているので、CSコネクタ31を挿入する位置に合わせると、二つのフェルール34の先端はキャップ61のフェルール34を挿入するための二つの連通孔69と各々正対する。よって、この状態でCSコネクタ31をキャップ61に挿入すると、フェルール34の先端はキャップ61のどこにも触れずに二つの連通孔69に収まる。このため、接続端面35が清掃前に汚されることを防ぐことができる。
【0052】
このように、
図17〜
図20に示す
第3の参考例で説明した光コネクタ用清掃具41のキャップ61を用いることにより、アダプタに挿入されていない単体の小型双心光コネクタに対しても清掃を行うことが可能になる。
【0053】
(
第4の参考例)
嵌合部は
図21〜
図25に示すように構成することができる。この
参考例による嵌合部は、光コネクタ用清掃具とは別体に形成されたアタッチメント71として構成されている。
図21にこの
参考例によるアタッチメント71と光コネクタ用清掃具72の先端部の構成を示す。
図21に示す光コネクタ用清掃具72は、
図1に示した光コネクタ用清掃具41とはガイド43の先端部の構成が異なり、その他の部分は同等に構成されている。
【0054】
この光コネクタ用清掃具72のガイド43の先端部43aは、図示していない把持部側となる基部43bより細く
形成されている。先端部43aは、CSコネクタ31用のアタッチメント71に形成された貫通孔73に嵌合状態で貫通される。この
参考例によるアタッチメント71は、
図9で示した嵌合部51と同等の形状に形成されており、このアタッチメント71をガイド43の先端部43aに装着することで、
図22(A)、(B)に示すように、アタッチメント71が
図9に示す嵌合部51と等価となる。
【0055】
すなわち、アタッチメント71は、
図9に示した嵌合部51と同等の嵌合部74と、嵌合部74に形成された貫通孔73とを有している。この嵌合部74は、CSコネクタ31(小型双心光コネクタ)用のアダプタ32や、
図17に示したキャップ61などの接続部品の穴に嵌合する。
【0056】
アタッチメント71の嵌合部74は、
図23(A),(B)に示すように、光コネクタ用清掃具72の軸線方向(小型双心光コネクタのフェルールの軸線方向)から見て二つのフェルールの中心どうしを結ぶ仮想の直線Lの中央(対称中心P2)を中心として180度回された姿勢である第1の姿勢と第2の姿勢とにおいて、それぞれアダプタ32(接続部品)の第1または第2の穴36,37に嵌合する形状に形成されている。ガイド43の先端部43aに露出した清掃糸45は、嵌合部74が第1の姿勢で第1または第2の穴36,37に嵌合している状態で二つのフェルールのうち一方のフェルールに接触する。また、この清掃糸45は、嵌合部74が第2の姿勢で第1または第2の穴36,37に嵌合している状態においては、他方のフェルールに接触する。
【0057】
また、この
参考例によるアタッチメントは、
図24に示すように、例えばLCコネクタに嵌合する形状に形成することができる。この
参考例によるアタッチメント81は、LCコネクタ用アダプタ54(
図25参照)の挿入口形状55の一部と一致する形状の嵌合部82と、光コネクタ用清掃具72の先端部43aが嵌合する貫通孔83とを有している。このため、LCコネクタ用アダプタ54にアタッチメント81を挿入することにより、清掃糸45がLCコネクタのフェルールと一致するように位置付けられる。
この
参考例によれば、光コネクタ用清掃具72を用いて、LCコネクタ用アダプタ54に挿入されたLCコネクタ(図示せず)の清掃が可能となる。
【0058】
このように光コネクタ用清掃具の嵌合部をアタッチメント71として構成することにより、コネクタの形状毎にアタッチメント71やアタッチメント81を用意でき、アタッチメントを取り替えることで一つの光コネクタ用清掃具72で複数種類の小型双心光コネクタを清掃することができる。