(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板ボートに積載される複数枚の基板にそれぞれ蒸着される薄膜の厚さを均一にできる基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る基板処理装置は、内部空間が形成される反応チューブと、複数枚の基板を多段に積載して内部空間に配置され、複数枚の基板がそれぞれ処理される複数の処理空間を仕切る基板ボートと、複数の処理空間に工程ガスを供給する工程ガス供給部と、工程ガスを各処理空間内において希釈する希釈ガスを供給する希釈ガス供給部とを備える。
【0008】
また、工程ガス供給部は、複数の処理空間にそれぞれ工程ガスを供給し、希釈ガス供給部は、複数の処理空間のうちの一部の処理空間に希釈ガスを供給してもよい。
【0009】
複数の処理空間は、複数枚の基板の積載方向に沿って、上部処理空間、中部処理空間及び下部処理空間にそれぞれ仕切られ、希釈ガス供給部は、上部処理空間及び下部処理空間のうちの少なくとも一方の処理空間に希釈ガスを供給してもよい。
【0010】
希釈ガス供給部は、上部処理空間に対応して上部希釈ガス供給孔が形成される上部希釈ガス供給部と、下部処理空間に対応して下部希釈ガス供給孔が形成される下部希釈ガス供給部とを備えていてもよい。
【0011】
基板処理装置は、工程ガス供給部と対向するように配置され、複数枚の基板の積載方向に沿って上下に延設される排気ダクトと、排気ダクトの下段と連通する排気ポートとを更に備え、工程ガス供給部は、複数枚の基板の積載方向に沿って上下に延設され、工程ガスは、工程ガス供給部の下端から上端へと流動して複数の処理空間をそれぞれ経た後、排気ダクトの上端から下端へと流動して排気ポートを介して排気されてもよい。
【0012】
基板ボートの上段部と下段部とにはそれぞれダミー(dummy)基板が積載され、複数の処理空間は、基板ボートの上段部と下段部との間に設けられてもよい。
【0013】
希釈ガス供給部は、工程ガスの供給方向に対して基板の上において互いに交差する方向に希釈ガスを供給してもよい。
【0014】
基板処理装置は、希釈ガス供給部と連結され、希釈ガス供給部から供給される希釈ガスの供給量を調節する制御部を更に備え、制御部は、下部希釈ガス供給部から供給される希釈ガスの供給量が上部希釈ガス供給部から供給される希釈ガスの供給量よりも多くなるように調節してもよい。
【0015】
基板処理装置は、反応チューブの外部に複数枚の基板の積載方向に沿って設けられ、複数の処理空間を加熱するヒータ部を更に備え、ヒータ部は、上部処理空間及び下部処理空間を中部処理空間よりも低い温度に加熱してもよい。
【0016】
また、本発明の実施形態に係る基板処理方法は、多段に配置された複数の処理空間に複数枚の基板をそれぞれ位置させるステップと、複数の処理空間に工程ガスを供給して、複数枚の基板の上に薄膜を成膜するステップとを含み、薄膜を成膜するステップは、工程ガスを各処理空間内において希釈する希釈ガスを供給するステップとを含む。
【0017】
薄膜を成膜するステップは、複数の処理空間に原料ガスを供給するステップと、複数の処理空間に残留する原料ガスをパージするステップと、複数の処理空間に反応ガスを供給するステップと、複数の処理空間に残留する反応ガスをパージするステップとを更に含み、希釈ガスを供給するステップは、少なくとも原料ガスを供給するステップと共に行われてもよい。
【0018】
複数の処理空間は、複数枚の基板の積載方向に沿って、上部処理空間、中部処理空間及び下部処理空間にそれぞれ仕切られ、希釈ガスを供給するステップは、上部処理空間及び下部処理空間のうちの少なくとも一方の処理空間に希釈ガスを供給してもよい。
【0019】
原料ガスをパージするステップ及び反応ガスをパージするステップにおいては、複数の処理空間を排気する間に、複数の処理空間へのパージガスの供給及び停止を複数回繰り返し行ってもよい。
【0020】
希釈ガス及びパージガスは、それぞれ原料ガス及び反応ガスに対して化学的に安定しているガスを含み、希釈ガスを供給するステップは、希釈ガスをパージガスとは異なる経路で処理空間に供給してもよい。
【0021】
反応ガスを供給するステップは、複数の処理空間に第1反応ガスと第2反応ガスとを同時に供給するステップと、複数の処理空間に第2反応ガスを単独で供給するステップとを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態に係る基板処理装置及び基板処理方法によれば、基板ボートにより仕切られる複数の処理空間に工程ガスと共に希釈ガスを供給して工程ガスの濃度を制御することができ、複数の処理空間のうちの一部の処理空間に希釈ガスを供給して処理空間別に工程ガスの濃度を調節することにより、積載される複数枚の基板に対して蒸着される薄膜の厚さをそれぞれ個別に制御することができる。
【0023】
すなわち、縦型の反応チューブ内において複数の処理空間の上部及び下部に形成される余分の内部空間に滞留する工程ガスの存在にも拘わらず、各処理空間に積載される基板に蒸着される薄膜の厚さを均一にすることができ、工程ガス供給部の下端から流入する工程ガスが複数の処理空間を経て内部空間の下部に位置する排気ポートを介して排出されるような流れを有する場合であっても、上部処理空間と下部処理空間とで蒸着される薄膜の厚さを中部処理空間に蒸着される薄膜の厚さと等しくすることができる。これのみならず、基板ボートの上段部と下段部とに処理のための基板とは異なる種類の基板が積載される場合であっても、処理される基板にそれぞれ均一な薄膜を成膜して、生産される薄膜及び薄膜付き基板の品質を向上させることができる。
【0024】
また、複数の処理空間のうち上部処理空間に希釈ガスを供給する上部希釈ガス供給部と、下部処理空間に希釈ガスを供給する下部希釈ガス供給部とをそれぞれ別々に配置して、上部処理空間と下部処理空間とに供給される工程ガスの濃度をそれぞれ個別に調節することができ、工程ガスの供給方向と希釈ガスの供給方向とを基板の上において交差させて、それぞれの基板の上に供給される工程ガスを希釈ガスと効率良く混合することができる。
【0025】
これらに加えて、原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)工程に伴う薄膜の蒸着に際し、工程ガスと共に希釈ガスを供給するに当たって、異種の反応ガスを供給する工程を、第1反応ガスと第2反応ガスとを混合して供給するステップと、第2反応ガスを独立して供給するステップとをこの順に行う。これにより、第1反応ガスから薄膜に含有される元素の含有量を有効に制御することができ、原料ガス又は反応ガスのパージステップにおいて複数の処理空間を排気する間に、複数の処理空間へのパージガスの供給及び停止を複数回繰り返し行って、これら複数の処理空間を速やかに減圧させることができる。その結果、各処理空間に残留する原料ガスを安定的なガスに有効に且つ十分に置き換えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態について詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に本発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。図中における同一の参照符号は、同一の構成要素を指し示す。
【0028】
図1は本発明の一実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す断面図であり、
図2は基板ボートに積載される複数枚の基板の位置に応じて蒸着される薄膜の厚さを示す図である。また、
図3は本発明の一実施形態に係る工程ガス供給部及び希釈ガス供給部の様子を示す正面図であり、
図4(a)、(b)は本発明の一実施形態に係る希釈ガスの供給方向を示す断面図である。
図5(a)、(b)は本発明の一実施形態に係る希釈ガスの供給量に応じて基板に蒸着される薄膜の相対厚さを示す図である。
【0029】
図1から
図5を参照すると、本発明の一実施形態に係る基板処理装置100は、内部空間が形成される反応チューブ120と、複数枚の基板10を多段に積載して内部空間に配置され、複数枚の基板10がそれぞれ処理される複数の処理空間を仕切る基板ボート130と、複数の処理空間に工程ガスを供給する工程ガス供給部141と、工程ガスを希釈する希釈ガスを供給する希釈ガス供給部145とを備える。
【0030】
反応チューブ120の外部には外部チューブ110が設けられてもよく、外部チューブ110は、基板10の処理工程が行われる反応チューブ120が収容可能な収容空間を有し、外部チューブ110の下部は開放されていてもよい。
【0031】
反応チューブ120は、外部チューブ110の収容空間に、外部チューブ110の内側面から離間して配置されてもよく、その内部に基板ボート130が搬入(loading)される内部空間を有してもよい。反応チューブ120は、円筒状に形成されてもよく、上部が閉鎖された状態で下部が開放されてもよい。従って、基板10の処理工程が行われる反応チューブ120の内部空間に搬入されるために、基板ボート130が昇降する場合に、反応チューブ120の下部の開口部を介して基板ボート130が反応チューブ120の収容空間に搬入(loading)されたり、搬出(unloading)されたりしてもよい。反応チューブ120の下部は、フランジ部125と連結されて支持されてもよい。反応チューブ120の構造と形状とはこれに何等限定されるものではなく、種々の構造と形状とを有するように形成可能である。
【0032】
一方、反応チューブ120は、セラミック、クォーツ(Quartz)、又はメタルにセラミックをコーティングした材料であってもよい。反応チューブ120の内部空間の一方の側には、工程ガス供給部141及び希釈ガス供給部145が配置され、一方の側と対向する他方の側には、排気ダクト150の排気口が配設されてもよい。従って、反応チューブ120内の残留ガスは、排気口を介して外部に排気可能である。
【0033】
基板ボート130は、バッチ式(batch type)により基板10の処理工程が実行されるために、複数枚の基板10が多段に上下方向に積載されてもよい。基板ボート130は、基板10の処理に際して反応チューブ120の内部空間に位置し、複数枚の基板10がそれぞれ処理される複数の処理空間を仕切る。すなわち、基板ボート130には、複数枚の基板10が多段に上下方向に積載され、基板ボート130に積載された複数枚の基板10により複数の処理空間が仕切られる。ここで、処理空間とは、基板10の処理工程がそれぞれ個別に行われる空間のことをいい、複数の処理空間には、工程ガス供給部141に形成される複数の工程ガス供給孔から、工程ガスがそれぞれ供給される。
【0034】
例えば、基板ボート130は、基板10が嵌合して積載可能なように複数本のロッド(rod)131に、スロット(slot)が多段に形成されてもよい。また、基板ボート130は、基板10の上側又は下側にアイソレーションプレート(Isolation Plate)(図示せず)がそれぞれ配置されて、基板10ごとにそれぞれ個別の処理空間を有するように構成されてもよい。ここで、アイソレーションプレート(図示せず)は、それぞれの基板10が処理される複数の処理空間を独立に仕切ってもよい。このとき、基板10は、アイソレーションプレート(図示せず)の上に形成された支持突起(図示せず)に支持されて積載されてもよく、複数本のロッド131に形成されたスロット、又は支持ティップ(図示せず)等の構成要素に嵌合したり、支持されて積載されたりしてもよい。基板ボート130がアイソレーションプレート(図示せず)を備える場合には、基板ボート130の各段(又は各層)に基板10の処理空間が独立に形成されるので、処理空間の間に干渉が起こることを防ぐことができる。
【0035】
一方、基板ボート130は、基板10の処理の際に、基板10の積載方向を回転軸として回転してもよい。また、ロッド131、アイソレーションプレート(図示せず)等、及び基板ボート130の素材としては、セラミック、クォーツ、又は合成クォーツ等が使用可能である。しかしながら、基板ボート130の構造と、形状及び素材とはこれに何等限定されるものではなく、種々に変更可能である。
【0036】
ペデスタル(pedestal)160は、基板ボート130の下段部と連結されて基板ボート130を支持してもよく、基板ボート130と共に昇降してもよく、基板10の処理に際して反応チューブ120の内部空間の下段部に収容されてもよい。ペデスタル160は、互いに離間して多段に配置される複数枚の熱遮断板161を備えていてもよい。複数枚の熱遮断板161は、複数本の支持棒162と連結されて多段に配置されてもよく、また、互いに離間していてもよい。更に、複数枚の熱遮断板161は、上下方向の伝熱を防ぐためのじゃま板(baffle plate)により構成されてもよい。また、熱遮断板161は、伝熱性が低い材料(例えば不透明な石英)により形成されてもよい。例えば、熱遮断板161は、円形状であってもよい。また、熱遮断板161は、複数本の支持棒162に上下方向に間隔を隔てて固定されてもよい。ペデスタル160は、複数枚の熱遮断板161を用いて、反応チューブ120の内部空間のうち基板ボート130が収容される処理領域からの伝熱を遮断してもよい。
【0037】
また、ペデスタル160は、上下方向に延設され、互いに離間して配置される複数本の支持棒162と、該複数本の支持棒162の上端及び下端をそれぞれ固定する上板163及び下板164と、複数枚の熱遮断板161の側面(又はペデスタル160の側面)を取り囲む側面カバー165とを更に備えていてもよい。複数本の支持棒162は、上下方向に延設されてもよく、水平方向に互いに離間して配置されてもよく、複数枚の熱遮断板161を支持してもよい。例えば、複数本の支持棒162は、4本であってもよく、上下方向に複数のスロットが形成されて、該複数のスロットに複数枚の熱遮断板161がそれぞれ嵌合して支持されてもよい。
【0038】
上板163は、複数本の支持棒162の上端を固定してもよく、基板ボート130と連結されてもよい。例えば、基板ボート130が上板163の上に置かれて支持(又は固定)されてもよい。下板164は、複数本の支持棒162の下端を固定してもよく、シャフト191と連結(又は接続)されてもよい。例えば、下板164と連結されたシャフト191の回転によりペデスタル160が回転しながら基板ボート130を回転させてもよい。ここで、複数本の支持棒162と、上板163及び下板164とがペデスタル160のフレーム(枠組)を構成してもよい。
【0039】
側面カバー165は、複数枚の熱遮断板161の側面(又はペデスタル160の側面)を取り囲むように形成されてもよく、上板163及び下板164の少なくとも一方と連結されて固定されてもよい。側面カバー165は、複数枚の熱遮断板161の間の空間に残留ガス等のガスが流動することを遮断することにより、断熱を通じて対流による伝熱を防ぐことができるだけでなく、残留ガスによるペデスタル160の内部の汚染を防ぐことができる。なお、側面カバー165が基板ボート130の周縁部(又は周り)よりも突出する場合には、反応チューブ120の内部に供給される工程ガスが基板10の上に達して反応できずに下部(反応チューブ120の側壁とペデスタル160の側面との間)に抜け出ることを抑えることができる。
【0040】
ペデスタル160は、複数枚の熱遮断板161を用いて輻射による伝熱だけではなく、伝導による伝熱を遮断することができ、側面カバー165を用いて対流による伝熱をも遮断することができる。従って、基板ボート130により仕切られる複数の処理空間からの伝熱(又は熱の流出)が、ペデスタル160によって遮断されるので、複数枚の基板10に対して安定的に且つ均一に基板10の処理が行われる。
【0041】
工程ガス供給部141は、反応チューブ120の内部空間の一方の側に配置されてもよく、また、反応チューブ120の内部に工程ガスを供給してもよい。ここで、工程ガス供給部141は、基板ボート130により仕切られる複数の処理空間ごとに工程ガスを供給し、供給された工程ガスは、複数の処理空間をそれぞれ経て排気ポート170に排気される構造を有する。ここで、工程ガスは、原料ガス、反応ガス及びパージガスを含んでいてもよい。このために、ガス供給部は、複数枚の基板10の積載方向に沿って上下に延びる原料ガス供給部142及び反応ガス供給部143、144を備えていてもよい。原料ガス供給部142及び反応ガス供給部143、144は、反応チューブ120の内部空間の一方の側に形成されるノズル収容空間に配置され、これにより、反応チューブ120の内部空間の体積を最小化させて基板10を処理するための工程ガスの使用量を最小化させるだけではなく、工程ガスを基板ボート130に積載された基板10の上の処理空間に集中させる。
【0042】
更に、工程ガス供給部141は、パージガスを供給するための別途のパージガス供給部を備えていてもよい。また、本発明の一実施形態に係る基板処理装置100においては、パージガスは、原料ガス供給部142又は反応ガス供給部143、144を介して供給されてもよい。すなわち、パージガスは、原料ガス供給部142又は反応ガス供給部143、144に原料ガス又は反応ガスが供給されない場合に、原料ガス供給部142又は反応ガス供給部143、144によって、それぞれの処理空間に供給されてもよい。工程ガスは、原料ガス供給部142及び反応ガス供給部143、144にそれぞれ形成された原料ガス供給孔142H及び反応ガス供給孔143H、144Hを介してそれぞれの処理空間に供給されてもよい。また、これらの原料ガス供給孔142H及び反応ガス供給孔143H、144Hは、それぞれが複数の処理空間に向くように、原料ガス供給部142の延在方向に沿って複数形成されて、複数の処理空間の全てに工程ガスが供給されるように形成されてもよい。
【0043】
より詳しくは、原料ガス供給部142及び反応ガス供給部143、144は、水平部と垂直部とを有する側面「L」字状のノズルにより形成されてもよい。ここで、水平部は、反応チューブ120の側壁を貫通して設けられてもよい。また、垂直部は、反応チューブ120の内部空間において基板ボート130に積載される基板10の積載方向に沿って上下に延設されてもよい。なお、原料ガス供給部142及び反応ガス供給部143、144は、基板10の外周に沿って所定の距離だけ離間して設けられてもよい。
【0044】
原料ガス供給部142及び反応ガス供給部143、144の各垂直部の側面には複数の処理空間にそれぞれ対応するように各処理空間(又は基板10)と対向して、原料ガス供給孔142H及び反応ガス供給孔143H、144Hが上部から下部にかけての全ての領域に設けられる。例えば、基板ボート130が65枚の基板10を積載する場合、処理空間は、基板ボート130によって65個に仕切られる。また、原料ガス供給部142及び反応ガス供給部の各垂直部側面には、原料ガス供給孔142H及び反応ガス供給孔143H、144Hがそれぞれの処理空間に向かって65個ずつ形成されてもよい。
【0045】
ここで、原料ガス供給孔142H及び反応ガス供給孔143H、144Hは、それぞれが複数枚の基板10のそれぞれの中心部に向かって原料ガス及び反応ガスを噴射するように形成されてもよい。また、原料ガス供給孔142H及び反応ガス供給孔143H、144Hは、それぞれが同じ開口面積を有し、等間隔に設けられてもよい。このような構成により、各基板10の中心部への原料ガス及び反応ガスの供給が促され、各基板10の上に供給される原料ガス及び反応ガスの流量及び流速を均一にでき、後述する希釈ガス供給部145から供給される希釈ガスの流量を容易に制御することが可能となる。
【0046】
希釈ガス供給部145は、工程ガス供給部141とは別途に設けられ、工程ガスを各処理空間内において希釈して、工程ガスの濃度を下げる希釈ガスを供給する。
【0047】
従来の基板処理装置の場合は、縦型の反応チューブ120内において、基板ボート130により仕切られる複数の処理空間の上部及び下部には余分の内部空間があり、このような余分の内部空間には工程ガスが滞留し易い。このため、上部に位置する処理空間に積載される基板10は、中央部に位置する処理空間に積載される基板10と比べて多量の工程ガスと接することになる。
【0048】
また、複数の処理空間に供給されて残留する工程ガスは、反応チューブ120の内部空間の下部において、該内部空間と連通して設けられる排気ポート170に排気される構造を有している。このため、複数の処理空間のうち上部に位置する処理空間には工程ガスが滞留する期間が長くなって、この上部に位置する処理空間に積載される基板10に蒸着される薄膜の厚さが増えてしまう。これのみならず、上述したように、原料ガス供給部142及び反応ガス供給部143、144は、複数枚の基板10の積載方向に沿って上下に延設されており、原料ガス供給部142及び反応ガス供給部143、144には、基板10の積載方向に沿って原料ガス供給孔142H及び反応ガス供給孔143H、144Hが設けられる。この場合に、原料ガス及び反応ガスは、原料ガス供給部142及び反応ガス供給部143、144の下端から供給されるため、複数の処理空間のうち下部に位置する処理空間には、原料ガス供給孔142H及び反応ガス供給孔143H、144Hから噴射される原料ガス及び反応ガスの供給量が増えてしまう。その結果、下部に位置する処理空間に積載される基板10もまた蒸着される薄膜の厚さが増えてしまう。
【0049】
このように、複数の処理空間にそれぞれ積載される複数枚の基板には、それぞれの位置の相違に伴う工程変数が生じる。
図2に破線で示すように、複数の処理空間のうち上部に位置する処理空間と下部に位置する処理空間とに積載される基板10には、中央部に位置する処理空間に積載される基板10と比べて相対的に薄膜が厚く蒸着されてしまう。
【0050】
これ以外にも、基板ボート130の上段部と下段部とは、均一な温度分布を保ち難くなる。すなわち、処理対象の基板10とは異なる種類の基板、例えばパターン形成の有無、及び形成度合いが異なるダミー(dummy)基板が配置される場合がある。これらのダミー基板の間に配置される処理基板10は、ダミー基板とは異なる性質を有するため、工程ガスの消費量に差異が生じる。例えば、パターン等により処理基板がダミー基板と比べて相対的に大きい表面積を有する場合に、処理基板10は、相対的に多くの量の工程ガスを費やしてしまう。従って、実質的な基板10の処理工程が行われる処理基板10が積載される複数の処理空間は、基板ボート130の上段部と下段部との間のいずれかの位置に設けられ、上部に位置する処理空間と下部に位置する処理空間とには、中央部に位置する処理空間と比べて多くの量の工程ガスが残留してしまう。これにより、上部に位置する処理空間及び下部に位置する処理空間に配置されるそれぞれの基板10には、中央部に位置する処理空間と比べて、薄膜が相対的に厚く蒸着される結果、処理が行われる複数枚の基板10に均一な厚さの薄膜を成膜し難いという不都合があった。
【0051】
従って、本発明の一実施形態に係る基板処理装置100は、工程ガスを供給する工程ガス供給部141とは別に、工程ガスを希釈する希釈ガスを供給する希釈ガス供給部145を備え ることにより、複数の処理空間にそれぞれ積載される基板10に蒸着される薄膜の厚さを均一に制御することができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る基板処理装置100は、工程ガス供給部141が複数の処理空間にそれぞれ工程ガスを供給し、希釈ガス供給部145が複数の処理空間のうちの一部の処理空間に希釈ガスを供給する。これにより、希釈ガスが供給される処理空間に積載された基板10の上に供給される工程ガスの濃度が低下する。このため、基板10の上に成膜される薄膜の厚さが減少して、複数の処理空間にそれぞれ積載される基板10に蒸着される薄膜の厚さを均一に制御することができる。
【0052】
ここで、複数の処理空間は、基板ボート130に積載される複数枚の基板10の積載方向に沿って、上部処理空間、中部処理空間及び下部処理空間にそれぞれ仕切られてもよい。すなわち、上部処理空間とは、複数枚の基板10の積載方向を沿う複数の処理空間のうち上段に位置する処理空間から下側に向かって順次に配列された所定の数の処理空間のことをいい、下部処理空間とは、複数枚の基板10の積載方向に沿う複数の処理空間のうち下段に位置する処理空間から上側に向かって順次に配列された所定の数の処理空間のことをいう。なお、中部処理空間とは、上部処理空間と下部処理空間との間に配置される所定の数の処理空間のことをいう。
【0053】
ここで、上部処理空間、中部処理空間及び下部処理空間に積載される基板10にそれぞれ蒸着される薄膜の厚さを均一に制御するために、中部処理空間に供給される工程ガスの濃度を上げる方法も考えられる。しかしながら、この場合、上部処理空間に積載される基板10に蒸着される薄膜の厚さと、下部処理空間に積載される基板10に蒸着される薄膜の厚さとをそれぞれ別々に制御し難いという不具合が生じる。従って、本発明の一実施形態に係る希釈ガス供給部145は、上部処理空間及び下部処理空間のうちの少なくとも一方の処理空間に希釈ガスを供給して、上部処理空間と下部処理空間とにそれぞれ蒸着される薄膜の厚さを別々に制御することができる。
【0054】
上部処理空間と下部処理空間とに工程ガスを希釈する希釈ガスを別々に供給するために、希釈ガス供給部145は、上部処理空間に対応して上部希釈ガス供給孔146Hが形成される上部希釈ガス供給部146と、下部処理空間に対応して下部希釈ガス供給孔147Hが形成される下部希釈ガス供給部147とを備えていてもよい。
【0055】
上部希釈ガス供給部146及び下部希釈ガス供給部147は、原料ガス供給部142及び反応ガス供給部143、144と同様に、水平部と垂直部とを有する側面「L」字状のノズルにより形成されてもよい。ここで、上部希釈ガス供給部146及び下部希釈ガス供給部147の各垂直部の側面には、それぞれ上部希釈ガス供給孔146H及び下部希釈ガス供給孔147Hが形成される。ここで、上部希釈ガス供給部146は、上部処理空間に対応する部位にのみ上部希釈ガス供給孔146Hが形成され、下部希釈ガス供給部147は、下部処理空間に対応する部位にのみ下部希釈ガス供給孔147Hが形成される。ここで、上部希釈ガス供給孔146H及び下部希釈ガス供給孔147Hは、上述したように、処理空間が65個に仕切られる場合は、例えば、10個〜15個の範囲内において形成されてもよい。
【0056】
上部希釈ガス供給部146及び下部希釈ガス供給部147の垂直部は、基板10の積載方向に沿って同じ長さを有するように延びてもよい。ここで、上部希釈ガス供給部146は、複数の処理空間にそれぞれ積載される複数枚の基板10のうち上部処理空間に配置される基板10に向かって希釈ガスを供給して、上部処理空間に供給される工程ガスを希釈する。一方、下部希釈ガス供給部147は、複数の処理空間にそれぞれ積載される複数枚の基板10のうち下部処理空間に配置される基板10に向かって希釈ガスを供給して、下部処理空間に供給される工程ガスを希釈する。ここで、上部希釈ガス供給部146は、中部処理空間及び下部処理空間に対応する区間には上部希釈ガス供給孔146Hが形成されず、下部希釈ガス供給ノズルは、上部処理空間及び中部処理空間に対応する区間には下部希釈ガス供給孔147Hが形成されない。
【0057】
ここで、上部希釈ガス供給部146と下部希釈ガス供給部147とは、工程ガス供給部141を間に挟んで両側にそれぞれ配置されてもよい。すなわち、工程ガス供給部141は、原料ガス供給部142と反応ガス供給部143、144とを備え、上部希釈ガス供給部146は、反応チューブ120の内部空間において基板10の外周に沿って工程ガス供給部141の一方の側に配置され、下部希釈ガス供給部147は、反応チューブ120の内部空間において基板10の外周に沿って工程ガス供給部141の一方の側とは反対の側である他方の側に配置されてもよい。このように、上部希釈ガス供給部146と下部希釈ガス供給部147とは、工程ガス供給部141を間に挟んで両側にそれぞれ配置する場合に、基板ボート130により仕切られる複数の処理空間がそれぞれ完全に独立に形成されない場合であっても、上部希釈ガス供給部146から供給される希釈ガスの流動と、下部希釈ガス供給部147から供給される希釈ガスの流動とが互いに影響を受けることを極力抑えることが可能となる。
図3には、工程ガス供給部141が原料ガス供給部142、第1反応ガス供給部143及び第2反応ガス供給部144を備え、工程ガス供給部141の両側に上部希釈ガス供給部146及び下部希釈ガス供給部147が配置される構造が例示されている。原料ガス供給部142及び反応ガス供給部143、144の数及び配置構造は、必要に応じて種々に変更可能であるということはいうまでもない。
【0058】
更に、上部希釈ガス供給孔146Hと下部希釈ガス供給孔147Hとは、希釈ガスの供給方向が、工程ガス供給孔、すなわち、原料ガス供給孔142H又は反応ガス供給孔143H、144Hから供給される工程ガスの供給方向と基板10の上において互いに交差するように、上部希釈ガス供給部146と下部希釈ガス供給部147とにそれぞれ形成されてもよい。すなわち、希釈ガス供給部145は、工程ガスの供給方向に対して基板10の上において互いに交差する方向に希釈ガスを供給して、基板10に薄膜を蒸着するための工程ガスを基板10上において希釈して提供してもよい。また、上述したように、基板ボート130は、基板10の中心部を軸として回転自在に設けられる。このとき、
図3に示すように、原料ガスと反応ガスとを複数の処理空間に積載される基板10の中心部Cをそれぞれ向くように供給し、希釈ガスを基板10の中心部Cを向くように供給して、工程ガスの供給方向と希釈ガスの供給方向とが基板10上において交差するように構成してもよい。ここで、
図4(a)は、上部希釈ガス供給部146から供給される希釈ガスと、原料ガス供給部142から供給される原料ガスとが上部処理空間に積載される基板10の中心部Cにおいて交差する様子を示す図である。これに対し、
図4(b)は、下部希釈ガス供給部147から供給される希釈ガスと、原料ガス供給部142から供給される原料ガスとが下部処理空間に積載される基板10の中心部Cにおいて交差する様子を示す図である。
【0059】
ここで、上部処理空間と下部処理空間とにおいて、希釈ガスの供給量に応じた薄膜の厚さの減少率は、
図5に示すように、差異があってもよい。すなわち、
図5は、基板ボート130に65枚の基板10を積載して、該65枚の基板10に対してそれぞれ形成される複数の処理空間を下端から#1,#2,…,#65の処理空間とし、下部希釈ガス供給ノズルから#1〜#11の処理空間に希釈ガスを供給し、下部希釈ガス供給ノズルから#52〜#65の処理空間に希釈ガスを供給したときに、希釈ガスの供給量に応じて基板10に蒸着される薄膜のそれぞれの相対厚さを示す図である。ここで、原料ガスとしては、ヘキサクロロジシラン(HCDS:Si
2Cl
6)ガスを用い、第1反応ガスとしてはアンモニア(NH
3)ガスを用い、第2反応ガスとしては酸素(O
2)ガスを用いる。このとき、原料ガスと反応ガスとは、それぞれ4L/minと5L/minの流量で供給する。なお、薄膜の相対厚さとは、希釈ガスを供給しなかった場合に蒸着される薄膜の厚さに対する、希釈ガスを供給した場合に蒸着される薄膜の厚さ比のことをいう。たとえ希釈ガスの供給位置にやや違いはあるとはいえ、
図4に示すように、上部処理空間において蒸着される薄膜は、希釈ガスの供給量が増えるにつれて厚さの減少率が格段に大きくなったのに対し、下部処理空間において蒸着される薄膜は、希釈ガスの供給量が増えるにつれて相対的に低い厚さ減少率を有する。これは、反応チューブ120の内部空間の下部、すなわち、排気ダクト150の下段に排気ポート170が位置することに起因しており、下部処理空間に供給される希釈ガスは、上部処理空間に供給される希釈ガスよりも速やかに排気ポート170に排気されるためであると推察される。従って、本発明の一実施形態に係る基板処理装置100は、希釈ガス供給部145と連結され、希釈ガス供給部145から供給される希釈ガスの供給量を調節する制御部(図示せず)を更に備える。この制御部は、下部希釈ガス供給部147から供給される希釈ガスの供給量が、上部希釈ガス供給部146から供給される希釈ガスの供給量よりも多くなるように調節することができる。ここで、制御部は、各ガスの供給量を調節する弁を備えていてもよく、これにより、希釈ガスの供給に伴い、相対的に低い厚さ減少率を有する下部処理空間に対して、上部処理空間と同様に蒸着される薄膜の厚さを制御して、
図2に実線で示すように、複数枚の基板に対して均一な厚さの薄膜を蒸着することが可能となる。
【0060】
排気ダクト150は、工程ガス供給部141及び希釈ガス供給部145が設けられる反応チューブ120の一方の側に対向する反応チューブ120の他方の側に、上下方向に延設されてもよい。また、排気ダクト150は、反応チューブ120の側壁に穿設された排気口と連通する内部流路を形成してもよい。また、排気ダクト150は、反応チューブ120と外部チューブ110との間の離間空間に工程ガス供給部141及び希釈ガス供給部145と対向して配置されてもよい。排気ダクト150は、反応チューブ120の他方の側に位置してもよく、反応チューブ120の側壁(例えば外壁)に設けられてもよく、反応チューブ120と外部チューブ110との間の離隔空間に配置されてもよい。このとき、排気ダクト150は、工程ガス供給部141及び希釈ガス供給部145と対向して(又は対称的に)配置してもよい。これにより、基板10の上に層流(Laminar Flow)を形成することができる。
【0061】
また、排気ダクト150は、上下方向に延設され、その内部に反応チューブ120の内部から流入した残留ガスが移動する内部流路が形成されてもよい。この内部流路は、反応チューブ120の側壁に穿設された排気口と連通されてもよい。ここで、排気口は、一つの開口又は複数の開口により構成されてもよい。排気口の形状としては、一つ以上の円形状、スリット(Slit)状、又は長孔状が挙げられる。
【0062】
例えば、排気ダクト150は、内部空間(すなわち内部流路)を有する四角筒状に形成されてもよい。このようにすると、排気口を介して複数の処理空間から流入する残留ガスが排気ダクト150の内部流路に沿って下側に移動することができる。ここで、排気ダクト150の下段部は、排気ポート170と連通(又は連結)されてもよい。すなわち、排気ポート170は、反応チューブ120の内部空間の下部において内部空間と連通して設けられる。これにより、排気ダクト150は、残留ガスが反応チューブ120と外部チューブ110との間の離隔空間に拡散されることを防ぎながら、排気ポート170に円滑に吸い込まれる(又は排気される)ように残留ガスを導く(又はガイドする)ことができる。
【0063】
更に、本発明の一実施形態に係る基板処理装置100は、反応チューブ120の外部に複数枚の基板の積載方向、すなわち、上下方向に沿って設けられ、複数の処理空間を加熱するヒータ部180を更に備えていてもよい。ここで、ヒータ部180は、ペデスタル160の収容領域の外側にまで延びてもよい。ヒータ部180は、反応チューブ120の外部に上下方向に延設されて反応チューブ120を加熱してもよい。ヒータ部180は、また、反応チューブ120又は外部チューブ110の側面及び上部を取り囲むように配置されてもよい。ここで、ヒータ部180は、反応チューブ120又は外部チューブ110に熱エネルギーを与えて、反応チューブ120の収容空間及び外部チューブ110の内部空間の少なくとも一方を加熱する役割を果たしてもよい。これにより、反応チューブ120の収容空間の温度を基板10の処理に適した温度に調節することができる。
【0064】
また、ヒータ部180は、ペデスタル160の収容領域の外側にまで延びてもよい。すなわち、ヒータ部180の少なくとも一部がペデスタル160の収容領域の外側に配設されてもよい。非加熱領域(又はヒータ部180が配設されない領域)に近い加熱領域(又はヒータ部180が配設される領域)は、たとえヒータ部180により加熱されたとしても、伝熱(又は熱の移動)による熱平衡(又は熱交換)により熱が奪われてしまい、他の加熱領域よりも温度が低くなる。すなわち、ヒータ部180の周縁部に対応する加熱領域は、ヒータ部180の中央部に対応する加熱領域よりも温度が低くなる。
【0065】
しかしながら、本発明の一実施形態においては、ヒータ部180をペデスタル160の収容領域の外側にまで延在させて、ヒータ部180の周縁部に対応する加熱領域をペデスタル160の収容領域に配置することにより、実質的な基板10の処理工程が行われる処理空間に、ヒータ部180の中央部に対応する加熱領域のみを配置することができる。これにより、複数の処理空間をより有効に加熱することが可能となる。
【0066】
ここで、ヒータ部180は、上部処理空間及び下部処理空間を中部処理空間よりも低い温度に加熱してもよい。すなわち、上述したように、上部処理空間及び下部処理空間に積載される基板10は、中部処理空間に積載される基板10と比べて、蒸着される薄膜の厚さが増えてしまうという問題があるため、本発明の一実施形態に係る基板処理装置100においては、上部処理空間及び下部処理空間に積載される基板10に蒸着される薄膜の厚さを減らすために、希釈ガス供給部145を介した希釈ガスの供給だけではなく、ヒータ部180を介して複数の処理空間の加熱の度合いをそれぞれ個別に制御して、各処理空間に積載される基板10に蒸着される薄膜の厚さを均一にすることができる。
【0067】
また、本発明の一実施形態に係る基板処理装置100は、互いに連通する上チャンバ190a及び下チャンバ190bを有するチャンバ190と、ペデスタル160の下板164と連結されるシャフト191と、シャフト191の下端と連結されてシャフト191を上下に移動させる昇降駆動部192と、シャフト191の下端と連結されてシャフト191を回転させる回転駆動部193と、シャフト191の上端と連結されて基板ボート130と共に昇降する支持板194と、反応チューブ120又は外部チューブ110と支持板194との間に配設される封止部材194aと、支持板194とシャフト191との間に配設される軸受け部材194bと、基板10がチャンバ190内に搬入される嵌合口195とを更に備えていてもよい。
【0068】
チャンバ190は、四角筒状又は円筒状に形成されてもよく、その内部に外部チューブ110及び内部の反応チューブ120が配置されてもよく、互いに連通する上チャンバ190a及び下チャンバ190bを有してもよい。
【0069】
シャフト191は、ペデスタル160の下板164と連結されてもよく、これにより、ペデスタル160及び基板ボート130の少なくとも一方を支持する役割を果たしてもよい。また、昇降駆動部192は、シャフト191の下端と連結されてシャフト191を上下に移動させてもよく、これを用いて基板ボート130を昇降させてもよい。ここで、回転駆動部193は、基板ボート130を回転させるようにシャフト191の下端と連結されてもよく、これにより、シャフト191を回転させてシャフト191を中心軸として基板ボート130を回転させてもよい。
【0070】
支持板194は、シャフト191の上端と連結されて基板ボート130と共に昇降してもよく、基板ボート130が反応チューブ120の収容空間に収容される際に、反応チューブ120の収容空間及び外部チューブ110の内部空間の少なくとも一方を外部から密閉させる役割を果たしてもよい。なお、封止部材194aは、支持板194と反応チューブ120との間、及び支持板194と外部チューブ110との間の少なくとも一方に配設されてもよく、反応チューブ120及び外部チューブ110の少なくとも一方の内部空間を密閉してもよい。
【0071】
軸受け部材194bは、支持板194とシャフト191との間に配設されてもよく、これにより、シャフト191が軸受け部材194bにより支持された状態で回転してもよい。
【0072】
嵌合口195は、チャンバ190の一方の側(例えば、下チャンバ190bの一方の側)に配設されてもよく、これにより、基板10が搬送チャンバ200から嵌合口195を介してチャンバ190内に搬入(loading)されてもよい。チャンバ190の嵌合口195に対応する搬送チャンバ200の一方の側には流入口210が形成されてもよく、流入口210と嵌合口195との間にはゲート弁250が配設されてもよい。これにより、搬送チャンバ200の内部及びチャンバ190の内部はゲート弁250により隔離可能であり、流入口210及び嵌合口195は、ゲート弁250により開閉可能である。
【0073】
以下、本発明の一実施形態に係る基板処理方法について説明する。本発明の一実施形態に係る基板処理方法について説明するに当たって、上述した基板処理装置100と重複する内容についての説明は省略する。
【0074】
図6は本発明の一実施形態に係る基板処理方法のガスの供給順序を示す図である。
【0075】
図6を参照すると、本発明の一実施形態に係る基板処理方法は、多段に配置された複数の処理空間に複数枚の基板10をそれぞれ配置するステップと、複数の処理空間に工程ガスを供給して、複数枚の基板10の上に薄膜を成膜するステップとを含み、薄膜を成膜するステップは、工程ガスを各処理空間内において希釈する希釈ガスを供給するステップを含む。
【0076】
まず、多段に配置された複数の処理空間に複数枚の基板10をそれぞれ配置するステップは、基板ボート130に複数枚の基板10を積載し、複数枚の基板10が積載された基板ボート130を反応チューブ120の内部空間に配置する。これにより、基板ボート130は、反応チューブ120の内部空間に位置し、複数の処理空間が仕切られる。ここで、処理空間は、各基板10に対する処理工程がそれぞれ個別に行われる空間を意味するということは、上述した通りである。
【0077】
薄膜を成膜するステップにおいては、複数の処理空間にそれぞれ工程ガスを供給して、複数枚の基板10の上に薄膜をそれぞれ成膜する。薄膜を成膜するステップは、これに何等制限されるものではなく、原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)工程により行われてもよい。この場合、薄膜を成膜するステップは、複数の処理空間に原料ガスを供給するステップと、複数の処理空間に残留する原料ガスをパージするステップと、複数の処理空間に反応ガスを供給するステップと、複数の処理空間に残留する反応ガスをパージするステップとを含んでいてもよい。
【0078】
ここでは、原料ガスとして、クロロシラン系ガス、例えばヘキサクロロジシラン(HCDS:Si
2Cl
6)ガスを用い、第1反応ガス及び第2反応ガスとして、アンモニア(NH
3)ガス及び酸素(O
2)ガスを用いる場合を例に採って説明する。
【0079】
複数の処理空間に原料ガスを供給するステップにおいては、原料ガス供給部142を介して複数の処理空間にそれぞれ原料ガスを供給する。このとき、原料ガス供給部142の両側に配置される第1反応ガス供給部143及び第2反応ガス供給部144からは、必要に応じて、原料ガスの供給の最中に窒素(N
2)ガス等の、化学的に安定しているガスが供給されてもよい。ここで、化学的に安定しているガスは、単原子又は分子の状態で反応性が非常に低いガスを意味し、不活性ガスを含んでいてもよい。
【0080】
本発明の一実施形態に係る基板処理方法は、薄膜を成膜するステップが希釈ガスを供給するステップを含み、ここで、希釈ガスを供給するステップにおいては、工程ガスとは別の経路で希釈ガスを供給するものの、工程ガスの供給ステップと希釈ガスの供給ステップとが同時に行われる。ここで、薄膜を成膜するステップが、原料ガスを供給するステップと、原料ガスをパージするステップと、反応ガスを供給するステップと、反応ガスをパージするステップとを含む場合に、希釈ガスを供給するステップは、少なくとも原料ガスを供給するステップと同時に行われてもよい。これは、処理空間内に積載される基板10に蒸着される薄膜の厚さは、主として原料ガスの供給により決定されるためであり、希釈ガスを供給するステップは、原料ガスを最小限で供給するステップと同時に行われてもよい。しかし、希釈ガスを供給するステップは、原料ガスを供給するステップの他に、原料ガスをパージするステップと、反応ガスを供給するステップと、反応ガスをパージするステップのうちの少なくとも一つのステップと同時に行われてもよい。この場合、上部処理空間及び下部処理空間のうちの少なくとも一方の処理空間の反応ガスの濃度を下げたり、パージ効率を向上させたりして、蒸着される薄膜の厚さを更に効率良く制御することが可能となる。ここで、希釈ガスとしては、原料ガス又は原料ガス及び反応ガスとの反応が起こらない、化学的に安定しているガスを使用可能であり、化学的に安定しているガスは、窒素(N
2)ガスを含んでいてもよい。このように、希釈ガスとして窒素(N
2)ガスを用いる場合に、原料ガス及び反応ガスと反応しないようにすることができる。これだけでなく、窒素(N)がドープされた酸化ケイ素(SiO
2)薄膜を蒸着するに当たっては、蒸着すべき薄膜に含まれる元素を希釈ガスとして用いることとなる。その結果、希釈ガスが、原料ガス又は反応ガスと微量に反応したり、基板10の上に吸着されたりする場合であっても、薄膜を構成する元素以外の不純物が薄膜に含まれることを防ぐことが可能となる。
【0081】
ここで、複数の処理空間は、基板ボート130に積載される複数枚の基板10の積載方向に沿って、上部処理空間、中部処理空間及び下部処理空間にそれぞれ仕切られてもよく、この場合、希釈ガスを供給するステップにおいては、上部処理空間及び下部処理空間のうちの少なくとも一方の処理空間に希釈ガスを供給して、上部処理空間と下部処理空間とに蒸着される薄膜の厚さをそれぞれ個別に制御することができるということは、上述した通りである。
【0082】
複数の処理空間に残留する原料ガスをパージするステップにおいては、原料ガス供給部142を介した原料ガスの供給を中断し、原料ガス供給部142と、第1反応ガス供給部143及び第2反応ガス供給部144とからパージガスを供給して、複数の処理空間に残留する原料ガスをパージする。すなわち、パージガスは、原料ガス供給部142と、第1反応ガス供給部143及び第2反応ガス供給部144とから供給され、上部希釈ガス供給部146及び下部希釈ガス供給部147のうちの少なくとも一方から供給される希釈ガスとは異なる供給経路を有する。従って、希釈ガスは、パージガスとは異なる経路で上部処理空間又は下部処理空間に供給される。これにより、工程ガスは、原料ガス、反応ガス又はパージガスの供給の有無とは関係なく、独立して希釈することが可能となる。
【0083】
ここで、原料ガスをパージするステップにおいては、複数の処理空間を排気する間に、複数の処理空間へのパージガスの供給及び停止を複数回繰り返し行ってもよい。すなわち、原料ガスをパージするステップは、反応チューブ120の内部空間を真空状態で形成するために、排気しながら複数の処理空間にパージガス、例えば窒素(N
2)ガス等の、化学的に安定しているガスの供給と停止とを交互に繰り返し行うことにより行われる。このように、原料ガスをパージするステップを複数の処理空間を排気する間に、複数の処理空間へのパージガスの供給及び停止を複数回繰り返し行うことにより、複数の処理空間は速やかに減圧が可能となり、複数の処理空間に残留する原料ガスは、化学的に安定しているガスに十分に置き換えることができる。
【0084】
複数の処理空間に反応ガスを供給するステップにおいては、反応ガス供給部からのパージガスの供給を中断し、反応ガス供給部を介して複数の処理空間にそれぞれ反応ガスを供給する。ここで、反応ガス供給部は、第1反応ガス供給部143及び第2反応ガス供給部144を備えていてもよい。この場合、複数の処理空間に反応ガスを供給するステップは、第1反応ガスを供給するステップと、残留する第1反応ガスをパージするステップと、第2反応ガスを供給するステップとを含んでいてもよい。本発明の一実施形態に係る基板処理方法における反応ガスを供給するステップは、複数の処理空間で互いに反応する第1反応ガス及び第2反応ガスを同時に供給するステップと、複数の処理空間に第2反応ガスを単独で供給するステップとを含んでいてもよい。上述したように、第1反応ガスとして、アンモニア(NH
3)ガスを用いる場合は、アンモニア(NH
3)ガスに含まれる窒素元素(N)は高い反応性を有するため、第1反応ガスを単独で供給する場合に、薄膜に含有される窒素元素(N)の含有量が不要に高くなってしまう。従って、アンモニア(NH
3)ガスを含む第1反応ガスを、酸素(O
2)ガスを含む第2反応ガスと同時に供給して、薄膜に含有される窒素元素(N)の含有量を制御することができる。また、上述したように、窒素元素(N)は高い反応性を有するため、アンモニア(NH
3)ガスを含む第1反応ガスを、酸素(O
2)ガスを含む第2反応ガスと同時に供給する場合であっても、薄膜には、高濃度の窒素元素(N)が含有される。従って、第1反応ガスと第2反応ガスとを同時に供給するステップの後に、第2反応ガスを単独で供給することにより、薄膜に含有される酸素元素(O)の含量を増やすことにより、薄膜の厚さの散布性を向上させて、基板上において均一な厚さの薄膜を蒸着することができる。ここでは、いうまでもなく、第1反応ガスと第2反応ガスとを同時に供給するステップと、第2反応ガスを単独で供給するステップとの間には、同時に供給された第1反応ガスと第2反応ガスをパージするステップが含まれていてもよい。この場合に、第1反応ガスと第2反応ガスとをパージするステップは、複数の処理空間を排気する間に、複数の処理空間へのパージガスの供給及び停止を複数回繰り返し行うことにより行われてもよいということは、上述した通りである。
【0085】
複数の処理空間に残留する反応ガスをパージするステップにおいては、反応ガス供給部143、144を介した反応ガスの供給を中断し、原料ガス供給部142と、第1反応ガス供給部143及び第2反応ガス供給部144からパージガスを供給して、複数の処理空間に残留する原料ガスをパージする。ここで、反応ガスをパージするステップは、複数の処理空間を排気する間に、複数の処理空間へのパージガスの供給及び停止を複数回繰り返し行うことにより行われてもよいということは、上述した通りである。上記の原料ガスを供給するステップと、原料ガスをパージするステップと、反応ガスを供給するステップと、反応ガスをパージするステップとは、これらを1サイクル(cycle)として、このサイクルを複数回繰り返し行うことにより、複数の処理空間にそれぞれ積載された基板10の上に窒素(N)がドープされた酸化ケイ素(SiO
2)薄膜を蒸着することが可能となる。
【0086】
このように、本発明の一実施形態に係る基板処理装置100及び基板処理方法によれば、基板ボート130により仕切られる複数の処理空間に工程ガスと共に希釈ガスを供給して、工程ガスの濃度を制御することができ、複数の処理空間のうちの一部の処理空間に希釈ガスを供給して、処理空間ごとに工程ガスの濃度を調節することにより、積載される複数枚の基板10に対して蒸着される薄膜の厚さをそれぞれ個別に制御することができる。
【0087】
すなわち、縦型の反応チューブ120内において、複数の処理空間の上部及び下部に形成される余分の内部空間に滞留する工程ガスの存在にも拘わらず、各処理空間に積載される基板10に蒸着される薄膜の厚さを均一にすることができる。さらに、工程ガス供給部141の下端から流入する工程ガスが複数の処理空間を経て内部空間の下部に位置する排気ポート170を介して排出されるような流れを有する場合であっても、上部処理空間と下部処理空間とに蒸着される薄膜の厚さを、中部処理空間に蒸着される薄膜の厚さに等しくできる。これのみならず、基板ボート130の上段部と下段部とに処理対象の基板10とは異なる基板が積載される場合であっても、処理対象の基板10にそれぞれ均一な薄膜が成膜され、生産される薄膜及び薄膜付き基板10の品質を向上させることができる。
【0088】
また、複数の処理空間のうち、上部処理空間に希釈ガスを供給する上部希釈ガス供給部146と、下部処理空間に希釈ガスを供給する下部希釈ガス供給部147とをそれぞれ別々に配置して、上部処理空間と下部処理空間とに供給される工程ガスの濃度をそれぞれ個別に調節することができる。その上、工程ガスの供給方向と希釈ガスの供給方向とを基板10上において交差させて、それぞれの基板10の上に供給される工程ガスを希釈ガスと効率良く混合することができる。
【0089】
これのみならず、原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)工程に伴う薄膜の蒸着に際して、異種の反応ガスを供給するに当たって、第1反応ガスと第2反応ガスとを混合して供給するステップと、第2反応ガスを独立して供給するステップとをこの順に行って、第1反応ガスから薄膜に含有される元素の含量を有効に制御することができる。この際、原料ガス又は反応ガスのパージステップにおいて、複数の処理空間を排気する間に、複数の処理空間へのパージガスの供給及び停止を複数回繰り返し行って、複数の処理空間を速やかに減圧し、各処理空間に残留する原料ガスを化学的に安定しているガスに有効に且つ十分に置き換えることができる。
【0090】
以上、本発明の好適な実施形態について特定の用語を用いて説明し且つ図示したが、これらの用語は、単に本発明を明確に説明するためのものに過ぎず、本発明の実施形態及び記述された用語は、次の特許請求範囲の技術的な思想及び範囲から逸脱することなく、種々の変更及び変化が加えられ得るということは自明である。このようにして変形された実施形態は、本発明の思想及び範囲から個別的に理解されてはならず、本発明の特許請求範囲内に属するものと見なすべきである。