特許第6771058号(P6771058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771058
(24)【登録日】2020年9月30日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】外科用クリップアプリケータ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/10 20060101AFI20201012BHJP
   A61B 17/128 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   A61B17/10
   A61B17/128
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-46238(P2019-46238)
(22)【出願日】2019年3月13日
(62)【分割の表示】特願2016-518484(P2016-518484)の分割
【原出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2019-130328(P2019-130328A)
(43)【公開日】2019年8月8日
【審査請求日】2019年4月12日
(31)【優先権主張番号】102013106277.6
(32)【優先日】2013年6月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ ピーター
【審査官】 北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−522468(JP,A)
【文献】 米国特許第04611595(US,A)
【文献】 特開2013−027722(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0153100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/128
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用クリップアプリケータ(1)であって、
別個のユニットとして形成されている個別クリップマガジン(4)と、
複数の異なるクリップマガジンから任意に選択される前記個別クリップマガジン(4)を、取り外し可能に取り付けるまたは締結することができる汎用ハンドグリップ(2)と、を備え、
前記個別クリップマガジン(4)は、
その遠位端部分にある圧着ヘッド/圧着器具(20、22)と、
前記圧着ヘッド/圧着器具(20、22)に対して近位に設けられたクリップ受取部分(48)と、
個別クリップを前記クリップ受取部分(48)から個別送り経路を介して前記圧着ヘッド/圧着器具に向かって搬送するためのクリップ前進装置(38)と、
前記個別送り経路を規定し、それによって前記クリップ前進装置(38)の搬送運動を制限する2つの制限止め具(42、44)を備えるコード化機構(20、24、26、38、42、44)であって、前記制限止め具(42、44)は、前記個別クリップマガジンに収容される前記クリップのタイプに応じて形成され、かつ、配置される、前記コード化機構と、
前記汎用ハンドグリップ(2)に前記クリップマガジン(4)を取り外し可能に係止又は拘束するように適合された、前記個別クリップマガジン(4)の近位端部分と、を備え、
前記汎用ハンドグリップ(2)は、一体化された力伝達ギア(54)を備えており、
前記一体化された力伝達ギア(54)は、
作動/入力部としての少なくとも1つの手で把持可能なハンドル(6、8)と、
前記個別クリップマガジン(4)に対する作動/搬送部としての結合要素(18)であって、前記個別クリップマガジン(4)が、前記個別クリップマガジン(4)の前記近位端部分によって前記汎用ハンドグリップ(2)に取り付けられて係止/拘束されたときに、前記クリップ前進装置(38)と相互接続されるように適合された前記結合要素(18)と、
前記クリップ前進装置(38)の搬送運動が、前記2つの制限止め具(42、44)の一方によって制限されているときに、前記力伝達ギア(54)内の前記少なくとも1つの手で把持可能なハンドルと前記結合要素(18)との間の力伝達を遮断するための摺動クラッチ(52)の形態である過負荷保護手段(50)と、を備える、
外科用クリップアプリケータ(1)。
【請求項2】
前記それぞれのクリップタイプに対して適合された前記送り経路が、前記現時点で取り付けられている個別クリップマガジン(4)に組み込まれ、かつ、収容される前記クリップタイプに応じて形成される前記コード化機構(20、24、26、38、42、44)によって規定されることを特徴とする、請求項1に記載の外科用クリップアプリケータ。
【請求項3】
前記汎用ハンドグリップ(2)の前記摺動クラッチ(52)が、前記クリップ受取部分(48)から前記個別送り経路を介して前記圧着ヘッド/圧着器具(20、22)に向かって個別クリップを搬送するために必要な力を超えるとともに、前記力伝達ギア(54)に過負荷をかける所定の作動力未満である滑り値を有するように、調整されることを特徴とする、請求項1または2に記載の外科用クリップアプリケータ。
【請求項4】
前記汎用ハンドグリップの前記摺動クラッチ(52)は、前記少なくとも1つのハンドルに加えられた圧縮力に応じて、前記少なくとも1つのハンドルと前記結合要素(18)との間の伝達力を遮断するように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の外科用クリップアプリケータ。
【請求項5】
前記コード化機構が、前記クリップ前進装置の長手方向において作用し、かつ、前記送り経路を少なくとも部分的に規定するように意図されている、前記2つの制限止め具(42、44)を備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の外科用クリップアプリケータ。
【請求項6】
前記コード化機構は、前記長手方向または前記クリップ前進装置の移動する方向において互いに間隔を開けて配置される2つの制限止め具(42、44)を備え、前記制限止め具の位置が、前記クリップ前進装置(38)の後方移動および/または前方移動により、前記クリップマガジン(4)から前記圧着ヘッド/圧着器具(20、22)に向かって厳密に1つのクリップを搬送することができるように、適用される前記クリップタイプに応じて適合されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の外科用クリップアプリケータ。
【請求項7】
前記クリップ前進装置(38)が、前記長手方向に移動可能であるように支持され、かつ、板の形態であるロッドであることを特徴とする、請求項5または6に記載の外科用クリップアプリケータ。
【請求項8】
前記クリップ前進装置(38)が、前記長手方向に移動可能であるように支持されるロッドであって、前記2つの制限止め具(42、44)が、切取部および/または曲げ部として前記ロッドに組み込まれていることを特徴とする、請求項5または6に記載の外科用クリップアプリケータ。
【請求項9】
前記圧着ヘッド/圧着器具(20、21)が、前記クリップ前進装置(38)の後方移動および/または前方移動を制限するために、前記クリップ前進装置(38)の前記2つの制限止め具(42、44)と接触するように適合されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の外科用クリップアプリケータ。
【請求項10】
前記汎用ハンドグリップ(2)が、再使用可能部品として設計されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の外科用クリップアプリケータ。
【請求項11】
前記個別クリップマガジン(4)が、使い捨て部品として設計されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の外科用クリップアプリケータ。
【請求項12】
前記汎用ハンドグリップ(2)および前記個別クリップマガジン(4)が、適用される前記クリップタイプに適合され、かつ、前記汎用ハンドグリップ(2)と現在使用されている前記個別クリップマガジン(4)を視覚化するように意図されている、色ベースのおよび/または記号ベースのコーディング(5a、5b)を備えることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の外科用クリップアプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用クリップアプリケータ、クリップアプリケータ用クリップマガジンおよびクリップマガジンを着脱可能に受け入れるハンドグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
クリップアプリケータは、たとえば、縫い目または脈管を閉鎖するために、患者の組織に組織クリップを固定する(適用する)外科用器具である。これにより、高額な縫合プロセスが回避され、それは、特に、外部からアクセスすることが困難である手術部位の場合に有利である。
【0003】
一般的なクリップアプリケータは、たとえば、独国実用新案第202011000755U1号明細書から公知である。この種のクリップアプリケータは、観血的手術および内視鏡手術において、好ましくはU字型またはV字型のクリップを適用しその後閉鎖することによって、手術しなければならない患者の組織構造を迅速にかつ確実に接続するために使用することができる。こうしたクリップアプリケータは、特に、患者の血管を短時間でかつ確実にはさみつけるために使用することができる。ここでは、形状に関してだけでなく、サイズおよび厚さも互いに異なり得る、種々のクリップタイプを使用することができる。
【0004】
開示内容が本明細書の主題に組み込まれる独国実用新案第202011000755U1号明細書に記載されているクリップアプリケータは、ハンドグリップ部を備え、そこに、一体化されたクリップ収納手段を有するクリップマガジンを着脱可能に締結することができる。この構成では、ハンドグリップ部は、再使用可能部品として数回使用されるように提供され、かつ、そのように対応して配置される。対照的に、クリップマガジンは、クリップマガジンのクリップ収納手段に収納されたクリップを使い切るまでのみの使い捨て部品として使用されるように提供され、かつ、そのように対応して配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クリップアプリケータは、比較的低コストで入手可能であり、クリップを適用して閉鎖する比較的安全な方法も可能にするが、クリップアプリケータの取扱いを改善することが望ましい。この要求は、このクリップアプリケータのハンドグリップ部が、同じデザイン、同じクリップタイプおよび同じクリップサイズのクリップマガジンとだけ、組み合わされるように提供されるという事実からもたらされる。言い換えれば、個別クリップマガジンを交換することができるにも関らず、1つの同じハンドグリップ部では1つのクリップタイプしか適用することができない。これは、手術室において、複数のさまざまなハンドグリップ部とともに複数の異なるクリップマガジンを常に利用できるようにしなければならず、ハンドグリップ部とクリップマガジンのいかなる組合せも、単一のクリップタイプにしか使用することができないことを意味する。しかしながら、これは、手術室の空間条件および明確さに関して不都合である。
【0006】
別の従来技術は、独国特許発明第4429084C1号明細書に記載されている。そこに記載されているクリップアプリケータは、同様に、クリップアプリケータの管状シャフトに横方向切取部を通して着脱可能に挿入することができるクリップマガジンの、比較的単純な交換を可能にする。ここでは、クリップマガジンは、使い捨て部品として設計されており、一方で、ハンドグリップ部とそれに締結することができる管状シャフトとは、再使用可能部品として構成されている。さらに、このクリップアプリケータは、たとえばシャフト長が互いに異なり得る様々な管状シャフトを単一のハンドグリップ部に締結する可能性を提供する。このクリップアプリケータは相対的に柔軟な取扱いを可能にするが、異なるクリップタイプの適用には、依然として、管状シャフトおよびクリップマガジンの両方を交換する必要がある。このため、最初に記載したタイプのクリップアプリケータの取扱いを改善することが依然として望ましい。
【0007】
さらに、米国特許第6599298B1号明細書は、ハンドグリップ部とそれに締結することができるクリップマガジンとを備え、それらがともに使い捨て部品として設計されている、クリップアプリケータを開示している。この構成では、クリップマガジンは、クリップアプリケータのシャフトに組み込まれ、シャフト長が異なることにより、異なる数のクリップを蓄えまたは収納し、必要な場合にそれらを適用することができる。しかしながら、このクリップアプリケータもまた、同じクリップアプリケータに異なるクリップタイプを適用する可能性は提供せず、そのため、上述した種類のクリップアプリケータの取扱いを改善する要求が残る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
独国実用新案第202011000755U1号明細書から始まり、本発明は、比較的低コストで入手可能であり、可能な限り単純な構造的手段を使用することによってその取扱いが改善される、外科用クリップアプリケータを提供するという目的に基づく。ここで、1つの目的は、異なるクリップタイプの使用の可能性という観点でクリップアプリケータの柔軟性を向上させることである。さらなる/別の目的は、あり得る最小限のコストで、使い捨て部品として設計されるクリップアプリケータの構成部品を提供することができるということである。
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を備えた汎用ハンドグリップ、請求項4の特徴を備えた個別クリップマガジンによるとともに、請求項9の特徴を備えた汎用ハンドグリップおよび個別クリップマガジンを含むクリップアプリケータによって達成される。本発明の有利なさらなる展開は従属請求項に提供されている。
【0010】
本発明の第1態様によれば、外科用クリップアプリケータの汎用ハンドグリップが提案され、それには、圧着ヘッドを備え、かつ、複数の異なるクリップマガジンから任意に選択することができる個別クリップマガジンを、汎用ハンドグリップおよびそれに締結された個別クリップマガジンが、個別クリップを圧着ヘッドにおいて圧着するとともに個別クリップを個別クリップマガジンのクリップ受取部分から個別送り経路を介して圧着ヘッドに向かって搬送するように機械的に相互作用するように、取り付けることができる。この目的で、汎用ハンドグリップは、作動/入力部としての少なくとも1つの手で把持可能なハンドル(ハンドルレバー、鋏ハンドル)と、個別クリップマガジンに対する作動/搬送部としての結合手段とを備える、一体化された力伝達ギアまたはリンケージを備えている。本発明によれば、作動/入力部と作動/搬送部との間に、現時点で取り付けられている個別クリップマガジンの個別送り経路と汎用ハンドグリップの作動/入力部の最大作動距離とのクリップ関連の差を補填、かつ、吸収する適合装置が設けられている。
【0011】
これにより、汎用ハンドグリップに対して、ある一定の最大作動距離/量を提供し、その一定の最大作動距離/量が、これに適したクリップの適用に対して好適である、機械的作動システムを備えることができる。相対的に小さい作動距離/量が必要なクリップを適用しなければならない状況が発生した場合、適合装置は、個別クリップマガジンによって規定される作動距離/量に対して最大作動距離/量の補填または吸収する。これにより、異なるクリップに対して汎用ハンドグリップを使用することも可能になる。
【0012】
適合装置が、好ましくは摺動クラッチまたは解除機構の形態でギアにおける力伝達を遮断する過負荷保護手段を備える場合、有利である。特に、摺動クラッチは、個別クリップをクリップ受取貯蔵部から個別送り経路を介して圧着ヘッドに向かって搬送するために必要な力を超えるとともに、力伝達ギアに過負荷をかける所定作動力未満である滑り値を有するように、調整することができる。このようにすると、力伝達ギアまたはリンケージに対していかなる変更(伝達比変更等)も行う必要がなく、それにより、汎用ハンドグリップの取扱いが全体として簡略化される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、外科用クリップアプリケータの汎用ハンドグリップに取り付けられるクリップアプリケータの個別クリップマガジンであって、圧着ヘッドと、クリップ受取部分と、汎用ハンドグリップの手動操作に応じて個別クリップをクリップ受取部分から個別送り経路を介して圧着ヘッドに向かって搬送するクリップ前進手段と、を備える個別クリップマガジンが提案される。ここでは、必要に応じて異なるクリップタイプに対して複数のクリップマガジンから選択することができる個別クリップマガジンは、適用されるクリップタイプに応じて形成される一体化されたコード化(coding)機構を備え、コード化機構により、少なくともそれぞれのクリップタイプに適合された送り経路が規定される。
【0014】
言い換えれば、コード化機構は、異なるクリップマガジンにおいて固定して組み込まれ、それにより、1つの汎用ハンドグリップで、異なるサイズ/取付長を有し、かつ/または異なるクリップタイプを備える、異なるクリップマガジンを使用することができる。これに関して、「送り経路」という用語は、個別クリップのクリップマガジンのクリップ受取部分/クリップ収納手段から圧着ヘッドに向かう搬送経路として理解されるべきである。
【0015】
それぞれのクリップタイプに適合された送り経路を規定するコード化機構がクリップマガジンに組み込まれているという事実により、単一の(汎用)ハンドグリップに複数の異なるクリップマガジンを(着脱可能に)締結し、必要に応じてそれらを交換し、各場合にそこに収納されたクリップを適用することが可能である。実質的にシャフト状の設計であるクリップマガジンは、異なるシャフト長を有してもよい。さらに、異なるクリップマガジンに異なるクリップタイプを蓄えてもよく、これらクリップタイプは、たとえばそれらの形状および/またはサイズおよび/または厚さに関して互いに異なる。これは、同じハンドグリップを維持しながら異なるクリップタイプを適用することができるように、単一の(汎用)ハンドグリップを(たとえば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の)複数の異なるクリップマガジンと結合することができることを意味する。
【0016】
したがって、本発明は、クリップアプリケータの取扱いおよび手術室における空間条件を有効に改善し、それは、単にクリップマガジンの適切な選択および交換により、単一のハンドグリップが、単にクリップマガジンを交換することにより、異なるクリップタイプを適用し異なるシャフト長のクリップアプリケータを実現することが可能になるためである。したがって、本発明はまた、手術室において収納されまたは利用可能でなければならない異なるクリップアプリケータの数も低減する。このように、本発明は、手術室における明確さの改善にも寄与する。
【0017】
さらに、それぞれのクリップマガジンに一体化されたコード化機構には、手術の後に滅菌しなければならない再使用可能なハンドグリップの数が低減するという有利な効果がある。
【0018】
好ましくは、コード化機構は、クリップ前進手段を備えており、クリップ前進手段は、クリップ前進手段の長手方向において作用し、かつ送り経路を少なくとも部分的に規定するように意図されている、少なくとも1つの制限止め具を備える。言い換えれば、クリップ前進手段は、コード化機構の第1の必須部であり、個別クリップの送り経路を確保する。例として、クリップ前進手段は、使用者によるハンドグリップの各手動操作とそれによってもたらされる長手方向の移動とにより、常に厳密に1つのクリップがクリップマガジンに蓄えられた複数のクリップから受け取られ、適用器具に向かってかつその中に搬送されるように、配置されまたは構成されるクリップ前進バーとして設計してもよい。特に、クリップ前進手段における少なくとも1つの制限止め具により、クリップ前進手段のハンドグリップのシャフトの長手方向における後方移動および/または前方移動を制限し、それにより、クリップマガジンからの単一クリップの把持と圧着ヘッドに向かうその搬送とを確保することができる。この場合、ハンドグリップ側の適合装置は、制限止め具とぶつかるときに有効になる。これは、ハンドルレバーの追加の作動が、摺動クラッチまたは対応する解除機構の場合に、この作動が個別クリップマガジンに伝達されることなく、可能になることを意味する。
【0019】
本発明の別の、独立したまたは追加の態様によれば、クリップ前進手段が、長手方向またはクリップ前進手段の移動する方向において互いに間隔を開けて配置される2つの制限止め具を備え、これら制限止め具の位置および/または距離が、適用されるクリップタイプに応じて適合され、それにより、送りユニットの後方移動および/または前方移動により、クリップマガジンから厳密に1つのクリップを取り上げ、それを厳密に圧着ヘッドに搬送することが可能になる。制限止め具の位置は、特に、適用されるクリップのサイズおよび/または厚さおよび/または形状とともに、場合によっては、クリップマガジンに収納されるクリップの数および/またはクリップマガジンのシャフト長によって決まる。
【0020】
このように比較的低コストで提供することができるクリップマガジンを提供するためには、少なくとも1つの制限止め具が、切取部および/または曲げ部としてクリップ前進手段に組み込まれる場合に、有利であることが分かった。例として、送りユニットは、シートメタル等から低コストで製造することができる種類のクリップ前進バーであってもよい。そして、少なくとも1つの制限止め具は、必要な場合は、シートメタルに打ち抜き加工をして折り曲げることができる。また、これに代えて、制限止め具が一体化されたプラスチック部品としてクリップ前進手段を実現することも考えられる。
【0021】
本発明の別の、場合によっては独立したまたは追加の態様によれば、クリップマガジンのコード化機構はまた、適用されるクリップタイプに適合されている圧着ヘッド(ジョー部)も備える。言い換えれば、それぞれのクリップタイプに意図的に適合された圧着ヘッドは、クリップの適用中にクリップを閉鎖する正確なプロセスを確保するために、クリップマガジンのコード化機構の必須部であり得る。これは、クリップ前進手段に形成された制限止め具の代わりとしてまたはそれに加えて、コード化機構はまた、適用されるクリップタイプに一致する圧着ヘッドも備えていてもよいことを意味する。これにより、(汎用)ハンドグリップ部のいかなる適合もなしに、確実にかつ安全に異なるクリップサイズ、厚さまたは形状を適用し閉鎖し、かつ/またはシャフト長を使用することができる。この場合、マガジン内に設けられかつ圧着ヘッドを開閉するように意図された機械的システムは、ハンドグリップを介して作動されるように、同様に対応して適合される。ここでは、圧着ヘッドに関連付けられかつマガジン内に設けられた機械的作動システムが、すべての異なるマガジンに対して一様な作動距離/量を必要とし、それにより、結合された汎用ハンドグリップによるそれらの作動が個別送り手段の場合と同様にいかなる適合装置も必要としない場合に、有利である。
【0022】
本発明の特に有利な実施形態では、圧着ヘッドは、開閉プロセスを制御する案内手段を備え、その位置および/または幾何学的形状は、適用されるクリップタイプにかつ/またはクリップマガジンのシャフト長に適合される。例として、案内手段は、比較的大型のクリップでの圧着ヘッドの閉鎖移動が比較的小型のクリップでの圧着ヘッドの閉鎖移動とは異なるように、圧着ヘッドに配置されまたは幾何学的に形成されてもよい。そして、圧着ヘッドに関連付けられかつマガジンに配置される機械的作動システムを標準化することができる。
【0023】
クリップマガジンの圧着ヘッドが、クリップ前進手段の後方移動および/または前方移動を制限するために、クリップ前進手段の少なくとも1つの制限止め具と接触するように適合される場合、有利であることが分かった。言い換えれば、クリップマガジンの圧着ヘッドおよびクリップマガジンのクリップ前進手段は、クリップマガジンから常に厳密に1つのクリップが取り出され、適用器具に向かって搬送されるという意味で、協働することができる。
【0024】
本発明のさらなる、場合によっては独立したまたは追加の態様により、ハンドグリップは、クリップマガジンのコード化機構と協働する上述した過負荷保護手段を備え、この過負荷保護手段は、ハンドグリップおよび/またはそれに締結されたクリップマガジンが、ハンドグリップの手動操作による過剰に高い作動力のために損傷してしまうのを防止する。これは、(機械的)過負荷保護手段がハンドグリップに固定して組み込まれているという措置により、汎用的に使用可能なハンドグリップ部の柔軟な取扱いがさらに改善されることを意味する。
【0025】
本発明の特に費用効率の高い実施形態では、ハンドグリップを再使用可能部品として設計してもよい。これは、異なるクリップマガジンと汎用的に使用することができるハンドグリップを、滅菌後に数回の手術において繰返し使用することができることを意味する。
【0026】
衛生上の理由で、複数のクリップマガジンの各々を使い捨て部品として形成してもよい。
【0027】
本発明のさらなる、場合によっては独立したまたは追加の態様により、ハンドグリップおよび/またはクリップマガジンは、適用されるクリップタイプに適合され、かつ汎用ハンドグリップと現時点で使用することができるクリップマガジンを視覚化するように意図されている、色ベースおよび/または記号ベースのコーディングを備えていてもよい。例として、クリップマガジンのハウジングを、特定のクリップタイプに関連する色で着色してもよい。クリップマガジンをそれとともに使用することができるハンドグリップに明確に関連付ける目的で、ハンドグリップに、対応して関連付け可能なカラーコード化手段を設けてもよい。クリップアプリケータの2つの結合可能な必須部のこのカラーコード化手段により、クリップアプリケータの特に直観的な使用が可能になる。
【0028】
要約すると、本発明により、外科用クリップアプリケータは、ハンドグリップとクリップマガジンとから構成される。クリップマガジンは、ハンドグリップとは別個でありかつ必要に応じてそれに着脱可能に締結し/取り付けることができる構成部品として製造され/提供され、ハンドグリップおよびそれに締結されるクリップマガジンは、個別クリップの適用のための器具を形成し、かつ個別クリップのクリップ収納手段からマガジンの圧着ヘッドに向かうクリップ搬送のための固定送り経路を画定するために協働する。本発明によれば、それぞれに異なるクリップタイプに対して複数の異なるクリップマガジンから必要に応じて選択することができるクリップマガジンは、適用されるクリップタイプに応じて実現される一体化されたコード化機構を備えており、このコード化機構は、少なくともそれぞれのクリップタイプに適合された送り経路を規定する。
【0029】
ハンドグリップは、クリップマガジンが少なくとも部分的に挿入され、必要な場合は適所にスナップ留めすることも可能である、一体化シャフトを備えていてもよい。複数のクリップマガジンの中の各クリップマガジンには、一定数のクリップを配置するかまたは蓄えてもよい。クリップ収納手段に収納される個別クリップの数は、およそ5個から40個のクリップ、好ましくは20個から30個のクリップであってもよい。複数のクリップマガジンの中の個別クリップマガジンは、サイズ(取付長)が異なるために異なる数のクリップを受け取ることができるという点で互いに異なる。個別クリップマガジンのさらに際立った特徴としては、それぞれのクリップマガジンに受け取ることができる、そこに収納される個別クリップのサイズ/幅、デザイン(U字型またはV字型)および厚さ(caliperまたはthickness)が挙げられる。例として、識別のためのこれらの異なるクリップは、「小型」、「中型」、「中大型」または「大型」と呼ぶことができる。複数のクリップマガジンの中のクリップマガジンはまた、達成されるそれらのシャフト長に関して、または、たとえば240mm、290mmまたは340mmとなり得るアプリケータ長全体に関しても異なっていてもよい。
【0030】
汎用ハンドグリップは、たとえば、サイズが「小型」の20個のクリップを保持し、組み合わされた、すなわち組み立てられた状態で、アプリケータ長が240mmになるクリップマガジンと組み合わされるように構成してもよい。同じハンドグリップを、サイズが「中型」の20個のクリップを保持し組み合わされた状態でアプリケータ長が240mmになるクリップマガジンと組み合わされるように構成してもよい。
【0031】
この組合せ方式によれば、少なくともかつ/またはたとえば、クリップアプリケータのアセンブリに対してそれぞれのクリップマガジンとの汎用ハンドグリップの以下の表で示す組合せが考えられる。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明について、以下に添付の図を参照して好ましい例示的な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ハンドグリップまたはハンドグリップ部とそれに締結することができるクリップマガジンとから構成された、本発明によるクリップアプリケータの上面斜視図を示す。
図2】クリップマガジンがハンドグリップ部に着脱可能に締結されている組立状態における、図1の発明によるクリップアプリケータの上面斜視図を示す。
図3】例示のために部分的に分解されている、本発明によるクリップマガジンの底面斜視図を示す。
図4】例示のために部分的に分解されている、本発明によるクリップマガジンの一部分の底面斜視図を示す。
図5】ハンドグリップ部とそれに締結されたクリップマガジンとから構成され、例示のために部分的に分解されている、本発明によるクリップアプリケータの側面斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
同一かまたは同様の構成要素には、一貫して同じ参照記号が与えられている。
【0036】
図1は、基本的に、本発明によるクリップアプリケータ(クリップアプリケータセット)1を上面斜視図で示し、クリップアプリケータ1は、汎用(再使用可能)ハンドグリップ2と複数の別個に選択可能な個別クリップマガジン(単回使用)とから構成されており、ここでは個別クリップマガジンから、個別クリップマガジン4が例示的に示されている。こうしたクリップアプリケータ1は、たとえば、観血的手術および/または内視鏡手術において、患者の組織構造を互いに迅速にかつ確実に接続するか、または患者の血管を短時間内でかつ確実にはさみつけるために使用することができる。
【0037】
以下の詳細な説明によるハンドグリップ2と、以下の詳細な説明による本質的にシャフト状のクリップマガジン4とは、基本的に、必要に応じて複数のクリップマガジンから選択されたクリップマガジン4をハンドグリップ2に着脱可能に締結することにより、このように合わせてクリップアプリケータ1を構成することができるように、各々が配置されている。例示のため、ハンドグリップ2およびクリップマガジン4は、ここでは互いに別個に示されている。
【0038】
複数のシャフト状クリップマガジンの中の各クリップマガジンは、規定された数のクリップを保持しまたは収納する。クリップマガジンは、通常、およそ5個から40個のクリップ、好ましくは20個から30個のクリップを収容する。しかしながら、複数のクリップマガジンの中の個別クリップマガジンは、サイズおよび全長が異なるため異なる数のクリップを収納することができるという点で互いに異なる。個別クリップマガジンのさらなる際立った特徴はまた、サイズ/幅、デザイン(U字型またはV字型)およびそれぞれのクリップマガジンに受け入れることができる個別クリップの厚さ(caliperまたはthickness)である。複数のクリップマガジンの中の異なるクリップマガジンはまた、それらの取付長、特にそれらのシャフト長に関して異なり得る。
【0039】
ハンドグリップ2に取り付けるための複数のクリップマガジンからの特定のクリップマガジン4の任意の選択または必要に基づく選択は、たとえば、具体的な場合ではステープルあるいはクリップによって閉鎖しなければならない組織の構造により、またはたとえば、はさみつけなければならない患者の血管のサイズによっても、決まり得る。使用者に対して、いずれのハンドグリップ2に対していずれのクリップマガジン4を使用することができるかという明確な指示を与えるために、ハンドグリップ2の少なくとも使用者に面する上側に、特定のクリップマガジン4に対して配置または構成されるハンドグリップ部品としてハンドグリップ2を識別する2つのマーク5aおよび5bが設けられている。この例示的な実施形態では、マーク5a、5bは、使用者/術者に対してハンドグリップ部の具体的な実施形態を直観的に示す、円形の色付きマークとして形成される。この例示的な実施形態では、汎用ハンドグリップ2は、クリップサイズ「小型」および/または「中型」が適用される最初に言及した「ハンドグリップモデル1」であり、それに応じて、2つの色付きマーク5a、5b、たとえば「小型」に対して黄色および「中型」に対して青色によって示されている。したがって、嵌合するクリップマガジン4の好ましくはプラスチック製のハウジングは、カラーマークによって、この例示的な実施形態では、クリップマガジン4に「小型」として収納されるかまたは蓄えられるクリップのタイプを識別するように黄色で、着色されるか、またはハウジングにそうしたカラーマークが設けられている。
【0040】
ハンドグリップの構造
図1および図5によれば、ハンドグリップ2は、作動ギア/リンケージ54を受け入れる中心ハウジング2aを備え、作動ギア/リンケージ54の遠位端部分には、術者、たとえば外科医によってクリップアプリケータ1を手動で操作するための操作要素として、2つの関節接続されたハンドルレバー/鋏ハンドル6および8が横方向に設けられており、それらは、中心ハウジング2aの両側のハンドルレバー6,8が近位方向に延在するように蝶番式に取り付けられている。ハンドルレバー6,8は、各々が手術を行っている医者の把持する手の解剖学的構造に対して構造的に適合され/近似されている、近位の自由端を有している。
【0041】
さらに、ハンドグリップ2は、(術者の視点から観た)その遠位端部にシャフト10が設けられており、シャフト10は、U字型断面を有し、ハウジング2aに単一部品として形成されるかまたはハウジング2aに一体的に接続され(材料結合)、シャフト内には、長手方向に移動可能なU字型スライダの形態の圧着引金装置または閉鎖装置12と、シャフト10に固定(溶接)されかつ長手方向中間部分においてU字型ハンドグリップシャフト10の基部から垂直に突出する、ボルトの形態の保持部14とが組み込まれている。
【0042】
閉鎖装置12および保持部14の正確な機能方法については、詳細に後述する。しかしながら、図1では、U字型スライダとして形成される閉鎖装置12の長手方向中間部分に、ボルト14が突出するスロット状凹部(切取部)15が設けられており、ハンドグリップシャフト10の長手方向におけるボルト14に対する閉鎖装置(U字型スライダ)12の相対移動を可能にすることが分かる。
【0043】
さらに、ハンドグリップ2のシャフト10の長さおよび幅は、実質的にシャフト状のクリップマガジン4を、ハンドグリップ2および適切に選択されたクリップマガジン4によって、組み立てられた状態でクリップアプリケータの全長が240mmから340mm、この例示的な実施形態では240mmの長さになるように、シャフト10に少なくとも部分的に挿入することができるように、規定されている。
【0044】
図1および図5によれば、外部から作動させることができるロック18が、長手方向に移動可能であるように、ハンドグリップ2のハウジング2aに支持されており、ロックの遠位縁部は、好ましくは、戻り止めラグまたは棚状突起を形成している。ここでは、ロック18は、ばね54(図1には図示しないが、図5を参照)によって遠位方向において係止位置に予め荷重がかけられている。
【0045】
ハンドルレバー6,8に面するハウジング2aの2つの面には、長手方向に延在するスロットが設けられており、そこでは、2つのハンドルレバー6,8をハンドグリップ2の作動ギア54と閉鎖装置12とに接続する2つのコンロッド(引張/圧力ロッド)56,58が挿入されている。この場合では、作動ギア54は、閉鎖装置12に対して長手方向に変位可能でありかつ後述する挿入されたクリップマガジン4のクリップ前進手段に対して意図された、好ましくはロック状ドッグユニットから構成されている。
【0046】
ドッグユニット54は、好ましくは、内部において長手方向にシフト可能であるように支持される入力要素を備えており、この入力要素に、2つのハンドルレバー6,8を作動ギア54に結合するようにコンロッド56各々が関節接続されている。内部摺動クラッチ52を介して、入力要素は、出力要素に作動的に接続されており、出力要素は、長手方向に相対的にシフト可能であるように支持され、その遠位端に、その時点で挿入されているクリップマガジン4のクリップ前進手段のためのラッチ/係合部分が設けられている。ここでは、ハンドルレバー6,8に入力要素を結合するコンロッド56は、実際には、2つのハンドルレバー6,8の鋏状圧縮により入力要素とこれによる出力要素とが(摺動クラッチ52を介して)ハウジング2a内で近位方向に移動するように、ハンドルレバー6,8から近位方向を向いている。
【0047】
このプロセスでは、上述した説明によるドッグユニット54全体が、ばねによってハウジングに保持され、それにより、近位位置(図2による加圧されたハンドルレバー)から遠位位置(図1による広げられたハンドルレバー)に向かって弾性的に移動することに留意するべきである。さらに、ハンドルレバー6,8に適用される作動力が、例示的な入出力要素摺動クラッチユニットに対応する適合装置(過負荷保護手段50)を介してラッチ/係合部分に伝達されて、所定の作動力を超過したときに力の流れを遮断し、かつこのようにハンドルレバー6,8を(いかなる力もなしに)動作不能にするため、ドッグユニット54の構造は異なる設計も有することができるという事実に留意されたい。
【0048】
さらなるコンロッド58により、両ハンドルレバー6,8は、いずれの場合も、ハンドグリップシャフト10に支持されたU字型スライダの形態の閉鎖装置12に結合される。これらの2つの追加のコンロッド58は、上述したコンロッド56に対して反対の向きを有し、それにより、U字型スライダ12は、2つのハンドルレバー6,8の鋏状圧縮時に遠位方向にシフトする。
【0049】
クリップマガジンの構造
図1および図4によるクリップマガジン4の各々はシャフト部分を有し、シャフト部分は、その寸法に関してハンドグリップ2のU字型シャフト10に挿入することができ、同時に、マガジン4のクリップ受入部分(クリップ収納手段)を形成する。クリップマガジン4をハンドグリップ2に着脱可能に締結/拘束する目的で、実質的にシャフト状のクリップマガジン4は取付装置16を備え、取付装置16は、シャフト部分の近位端に設けられ、ハンドグリップ2のシャフト10に(部分的に)挿入されるクリップマガジン4をハンドグリップ2に着脱可能に係止/拘束するために、ハンドグリップ2のロック(保持装置)18と協働する。
【0050】
図3および図4によれば、クリップマガジン4のシャフト部分の遠位端部分には、圧着器具22が設けられており、圧着器具22は、ハンドグリップ2と組み立てられたときにハンドグリップ2のシャフト10の遠位シャフト端部から突出する圧着ヘッド(ジョー部)20を備えている。圧着ヘッド20(以下、ジョー部とも呼ぶ)は、クリップアプリケータ1の遠位端部にクリップアプリケータ1の圧着器具/圧着機構22を合わせて形成するために、U字型スライダとして形成されるハンドグリップ2の閉鎖装置12と協働するように配置されている。
【0051】
U字型スライダとして形成された閉鎖装置12と協働するために、ジョー部20は(その長手方向に示すように)その左外側および右外側に、各々1つの(制御)案内手段24および26が設けられている。案内手段24,26および閉鎖装置12は、ジョー部20の開閉移動を合わせて規定するように各々が配置されている。ここでは、クリップマガジンおよび/またはクリップタイプに従って圧着ヘッド20に相対的に大きいまたは相対的に小さいジョー開口部が必要であるため、ジョー部20の案内手段24,26の位置および幾何学的形状は、特に、選択されたクリップマガジンおよび/または適用されるクリップタイプに応じて、複数のクリップマガジンの中の異なるクリップマガジンに対して個別に規定することができまたは規定されている。
【0052】
U字型スライダとして形成された閉鎖装置12が、ハンドグリップシャフト10におけるその長手方向移動中にジョー部20の案内手段24,26を少なくとも部分的に外部から囲み、それにより、U字型閉鎖装置12の2つの内面(図2には示さず)が、案内手段24,26と接触し、そのため、ジョー部20の開閉移動を規定または制御する場合に、圧着ヘッド/ジョー部20の開閉移動は発生する。このために、ジョー部20および閉鎖装置12は、各々、2つのハンドルレバー6,8が手動で操作された(圧縮された)場合に、U字型スライダとして形成された閉鎖装置12が、シャフト10の長手方向に保持部(ボルト)14によって固定されるジョー部20を囲むように配置または構成されている。これは、閉鎖装置12が(ハンドグリップ2の先に示したコンロッド56,58によるハンドルレバー6,8の操作時に)、閉鎖装置12がジョー部20の案内手段24,26を取り囲み、したがって、ジョー部20を強制的に閉鎖移動させるまで、クリップアプリケータ1の遠位方向において長手方向に、遠位方向にはるかに前方に移動するかまたは押されることを意味する。案内手段24,26の位置および/または形状によって規定されるかまたは制御される閉鎖装置12のこの移動により、ジョー部20は閉鎖され、ハンドルレバー6,8の操作の後、またはハンドルレバー6,8を解除することにより、再び開放される。開放移動は、U字型スライダとして形成された閉鎖装置12の(遠位から見た)後方移動によってもたらされる。
【0053】
図3は、クリップマガジン4の底面斜視図であり、例示のため部分的に分解されているか、またはより例示的な説明のためにそこから個別の構成部品が取り除かれている。
【0054】
図3において、圧着器具22は、実質的にフォークのように形成され、互いに平行な2つの分岐28および30を備えていることが分かる。遠位方向を指す圧着器具22の自由端において、圧着器具には2つのジョー部要素32および34が一体的に形成されており、そこに、上述した上記案内手段24,26が配置/形成され、それらがジョー部(圧着ヘッド)20を構成している。圧着器具22の近位端には、ハンドグリップ2の保持部(ボルト)14と噛合い協働するための締結開口部としての凹部36が設けられていることも分かる。この例示的な実施形態では、(シャフト10において適所にスナップ式に嵌められる)圧着器具22を、それがクリップマガジン4の長手方向にかつハンドグリップ部2のシャフト10の長手方向に移動することができないように、シャフト10に確実に固定するために、凹部36は、組み立てられた状態でハンドグリップ2の保持部14が係合する細長い孔として実施される。言い換えれば、圧着器具22の長手方向位置、したがってジョー部20の長手方向位置は、凹部36の保持部14との協働によって規定され、それにより、圧着器具22は、ハンドグリップ2のシャフト10に対してもクリップマガジン4の他の構成部品に対しても移動することができない。
【0055】
図3に示すクリップマガジン4はまた、分離されたクリップを受け入れかつ供給する(すなわち、搬送する)ためのクリップ前進バーの形態のクリップ前進手段38を備えている。クリップ前進手段38は、ジョー部20と協働するように配置され、クリップマガジン4の長手方向においてまたはハンドグリップ2のシャフト10の長手方向においてジョー部20に対してシフト可能に支持される。これは、送りユニット38が、クリップマガジン4から個別クリップを受け取り、シャフト10の遠位長手方向において前方へそれらを搬送する機能を有することを意味する。この目的で、クリップ前進手段38には、その遠位端に、個別クリップを受け取りかつ供給または搬送することができるクリップ舌状部(clip tongue)40が設けられている。
【0056】
クリップマガジン4から個別クリップを受け取るために、個別クリップがジョー部要素32、34に収納されるように(遠位から見て)その後方に配置されるため、クリップ前進手段38の(遠位から見た)後方移動が必要である。この理由で、次に受け取られかつジョー部20に向かってシャフト10の長手方向において前方に送られまたは搬送されるべきクリップの(遠位から見て)厳密に後方に配置されるように、クリップ前進手段38は後方移動を行わなければならない。一方、クリップ前進手段38によって受け取られたクリップを供給または搬送するために、受け取られたクリップをジョー部20に向かって、すなわちそのジョー部要素32、34の間の圧着器具22の分岐28、30に沿って移動させる(近位から見た)前方移動が必要である。
【0057】
クリップ前進手段38のこれらの2つの長手方向移動を簡単な方法で、すなわち(近位から見て)ジョー部20に向かって前方にかつ(近位から見て)クリップ受取部分(クリップ収納手段)に向かって後方に制限するために、クリップ前進手段38は、その長手方向において互いに間隔を開けて配置された2つの制限止め具42および44を備えている。制限止め具42、44は、それらが各々、クリップ前進手段38に対する長手方向位置が凹部36と係合する保持部14によって画定される圧着器具22と接触することができるような、形状および寸法である。これは、状況に応じて圧着器具22にぶつかる制限止め具42、44が、両長手方向においてクリップ前進手段38の長手方向移動を制限することを意味する。
【0058】
例示的な実施形態では、制限止め具42、44は、クリップ前進手段38との単一部品で打抜き部/曲げ部として実施される。2つの制限止め具42、44の間の長手方向における距離は、より詳細に後述するように、クリップ舌状部40が(クリップ前進手段38の(近位から見た)後方移動時、すなわち、クリップ送り手段38のクリップ受取移動の過程において)、クリップマガジン4から厳密に1つのクリップを取得するようなサイズであり、またはそのように選択されかつ規定される。図3は、近位の、すなわちクリップ前進手段に見られるような後方制限止め具44が、圧着器具22と静止して接触している状況または位置にある、クリップ前進手段38を示す。したがって、図3によれば、クリップ前進手段38は、個別クリップ46が、クリップ前進手段38のクリップ舌状部40によって、ジョー部20の遠位端に向かって、すなわち圧着器具22内に搬送されており、または圧着器具22内に配置されている状況又は位置で示されている。
【0059】
図3に示すクリップ前進手段38の位置は、挿入されたクリップを圧着するジョー部20のジョー32、34が閉鎖することができる位置では(まだ)ないことが明らかである。ジョー部要素32、34を閉鎖させるために、クリップ前進手段38の後方移動が予め必要であり、それにより、クリップ前進手段38は、図示する位置においてジョー部要素32、34の間に完全に留まらない。
【0060】
部分的に分解された状態でクリップマガジン4の一部の底面斜視図を示す図4において、クリップ前進手段38は、個別クリップ46をジョー部20(圧着器具22)に向かって供給しまたは進めるように、クリップマガジン4のクリップ収納部分48から個別クリップ46を受け取ることができる、別の状況/位置で示されている。クリップ収納部分48は、(遠位から見て)ジョー部要素32、34の後方に配置されており、それにより、個別クリップ46をジョー部要素32、34の間に搬送するために、個別クリップ46は、(遠位から見て)前方方向に供給または搬送されなければならないことが分かる。
【0061】
さらに、図4では、図示するクリップ受入位置にあるクリップ前進手段38は、遠位制限止め具42、すなわち、クリップ前進手段の前方の止め具42により圧着器具22に当接しており、それにより、クリップ受入移動がこの移動方向において制限されていることが分かる。クリップマガジン4に応じて寸法が決められかつそれに対応して規定される制限止め具42の位置決めにより、クリップマガジン4のクリップ収納手段48から常に単一のクリップ46のみが取得され、続くクリップ前進方向におけるクリップ送り移動において、圧着器具22の遠位端に向かって、すなわちジョー部要素32、34間にかつジョー部20内に搬送されることが確実になる。
【0062】
部分的に分解された状態でクリップアプリケータ1の側面斜視図を示す図5では、クリップアプリケータ1のハンドグリップ2は、摺動クラッチ52を含む一体化された過負荷保護手段50を備えていることを見ることができる。(摺動クラッチ52を含む)過負荷保護手段50は、ハンドグリップ2の機械的部品および/またはクリップマガジン4の機械的部品あるいはハウジング部品、または制限止め具42自体あるいはジョー部20が、前方制限止め具42が圧着器具22にぶつかった場合に術者の過剰に高い作動力によって損傷を受けるのを防止する。複数のクリップマガジンの中の異なるクリップマガジンに対するクリップマガジン4の制限止め具42、44の間の距離は、異なるように配置されるかまたは規定されるため、過負荷保護手段50はさらに、汎用ハンドグリップ2が、それぞれのハンドグリップ2および/またはそれぞれのクリップマガジン4の機械的部品または構成部品に、過剰に高い手動の作動力によって損傷を与えることなく、複数のクリップマガジンの中のいくつかのマガジンと協働することができる。
【0063】
クリップアプリケータ1の動作および実際の使用は、以下に記載するように進行することができる。
【0064】
図2は、組み立てられた、すなわち、クリップマガジン4が取付装置16および保持装置18の協働によって締結される作動状態にある、クリップアプリケータ1を側面斜視図で示す。
【0065】
(必要に応じて選択された)クリップマガジン4を汎用ハンドグリップ2に取り付けることによってクリップアプリケータ1を組み立てると、クリップアプリケータ1は作動状態にある。これは、この状態で、クリップマガジン4がハンドグリップシャフト10に挿入され、ロック18によって拘束されることを意味する。
【0066】
ハンドグリップ2の2つのハンドルレバー6および8の手動操作により、U字型スライダとして実現された閉鎖装置12が遠位方向において長手方向に変位するように、ハンドグリップ2の内部機械的作動システム54が起動する。閉鎖装置12のこの長手方向変位により、閉鎖装置12は、ジョー部20の案内手段24、26の上で押され、それにより、そのジョー部要素32、34は互いに向かって(すなわち、内側方向に)加圧され、したがって、圧着器具22が閉鎖される。
【0067】
一方で、ハンドグリップ2の内部機械的作動システム54はまた同時に、前方制限止め具42が固定された圧着器具22にぶつかり、場合によっては、過負荷保護手段50の摺動クラッチ52がトリガされるまで、クリップ前進手段38が、閉鎖装置12の移動方向に対して反対の長手方向移動で(近位方向に)シフトするように、駆動される。ハンドグリップ2の内部機械的作動システム54は、ジョー部要素32、34が再び、閉鎖装置12を押し戻すことによって互いから間隔が開けられ、これにより、圧着器具22が再度開放されるまで、クリップ前進手段38をこの位置で保持する。圧着器具22が開放されることにより、再びジョー部要素32、34の間に隙間が生成され、クリップ前進手段38は、内部機械的作動システム54によって(自動的に)解放され、次のクリップが、ジョー部要素32、34の間のクリップ舌状部40のばね式に支持された前方移動によって搬送され得る。
【0068】
要約すると、汎用ハンドグリップと、一体化された圧着ヘッドを有する個別クリップマガジンとを備え、個別クリップマガジンを汎用ハンドグリップに着脱可能に締結することができる、外科用クリップアプリケータが開示される。汎用ハンドグリップとそれに締結された個別クリップマガジンとは、クリップマガジンのクリップ受入部分から圧着ヘッドに向かう個別クリップのクリップ搬送用の送り経路を形成するために相互作用し、送り経路は、規定されるかまたは作動に対して個別に利用可能である。本発明によれば、個別クリップマガジンは、必要に応じて異なるクリップタイプに対して複数のクリップマガジンから選択することができ、クリップマガジンには、適用されるクリップタイプに応じて設計された一体化されたコード化機構を備え、コード化機構は、汎用ハンドグリップと相互作用して少なくともそれぞれのクリップタイプに適合された送り経路を規定する。
図1
図2
図3
図4
図5