特許第6771063号(P6771063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771063
(24)【登録日】2020年9月30日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/12 20060101AFI20201012BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C08F290/12
   G06F3/041 460
   G06F3/041 495
【請求項の数】3
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-71448(P2019-71448)
(22)【出願日】2019年4月3日
(62)【分割の表示】特願2014-53632(P2014-53632)の分割
【原出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2019-151846(P2019-151846A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2019年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 裕己
(72)【発明者】
【氏名】加原 浩二
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−285256(JP,A)
【文献】 特開2007−241247(JP,A)
【文献】 特開2009−161617(JP,A)
【文献】 特開2009−222752(JP,A)
【文献】 特表2010−515098(JP,A)
【文献】 特開2010−121042(JP,A)
【文献】 特開2011−148906(JP,A)
【文献】 特開2013−227485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F283/01
C08F290/00 − 290/14
C08F299/00 − 299/08
G03F 7/00 − 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂組成物により形成される硬化膜であって、
該硬化性樹脂組成物は、分散度(Mw/Mn)が2.0〜3.5であるアルカリ可溶性樹脂と、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物とを含み、
該アルカリ可溶性樹脂は、主鎖に環構造を有する重合体であり、N置換マレイミド系単量体単位、ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体単位、及び、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体単位からなる群より選択される少なくとも1種の単量体単位と、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル単位とを有し、二重結合当量が400〜1500であり、
無機微粒子の含有割合は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%中、3質量%以下であり、
該硬化膜は、80℃、95%RHの恒温恒湿条件下にて5Vの電圧をかけて行うイオンマイグレーション試験による抵抗値低下時間が、100時間以上であることを特徴とする硬化膜。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化膜を有することを特徴とする表示装置用部材。
【請求項3】
請求項1に記載の硬化膜を有することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びその用途に関する。より詳しくは、各種表示装置の構成部材等に有用な硬化性樹脂組成物、それを用いた硬化膜、表示装置用部材及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱や活性エネルギー線によって硬化しうる硬化性樹脂組成物は、例えば、液晶表示装置や固体撮像素子、タッチパネル式表示装置等に代表される各種表示装置の構成部材等への適用が種々検討されている。例えば、静電容量方式のタッチパネル式表示装置は、一般に、基板上にITO等の透明導電膜が形成され、更に透明導電膜を保護するための保護膜又は絶縁膜が形成された構造からなるが、保護膜や絶縁膜等の構成部材には、通常、透明導電膜との密着性や、耐久性及び表面硬度が高いことが求められている。また最近では、表示装置の高精細化に伴い、電気特性の向上も求められるようになっている。従来の硬化性樹脂組成物に関し、例えば、特許文献1には、2.5〜6.0の分散度を有するバインダーポリマーと、特定構造からなる光重合性化合物とを含有する感光性樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2には、分子量分布の狭いフォトレジスト用重合体の製造方法が開示されている。
【0003】
ところで、電気特性の指標として、銀又は銀合金からなる金属配線間の銀イオンのマイグレーションを評価する手法が知られている(例えば、特許文献3参照)。銀イオンのマイグレーションが抑制されていれば、金属配属間の絶縁信頼性に優れるといえるため、電気特性が良好か否かを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4900514号明細書
【特許文献2】特開2009−249425号公報
【特許文献3】特開2013−125797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、各種表示装置における保護膜や絶縁膜等に代表される硬化性樹脂組成物の硬化物には、優れた密着性や表面硬度を有するとともに、電気特性が良好であることが求められている。そして近年では、表示装置等の高精細化に伴い、使用される各部材に対しても更に高度な性能が強く要望されるようになりつつあるが、従来の樹脂組成物では、この高性能化の要望に充分に対応できないのが現状である。例えば、特許文献1に記載の組成物は、硬化物の表面硬度の点で工夫の余地がある。また、特許文献2には、分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜2.1と狭い重合体の製造方法が記載されているが、通常、分子量分布が非常に狭い重合体を得るには、合成時に特別な装置を用いたり滴下速度を速くしたりする等、製法面で改善の余地がある。特許文献2にはまた、比較例1及び2として、分子量分布(Mw/Mn)が2.2〜2.6の重合体を得た例が開示されているが、この重合体だけでは、表面硬度や電気特性等に優れる硬化物を得ることができない。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、良好な密着性及び電気特性を両立し、しかも充分な表面硬度及び透明性を有する硬化物を与えることができる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、このような硬化性樹脂組成物により形成される硬化膜、並びに、該硬化膜を有することで高精細化を実現し得る表示装置用部材及び表示装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、硬化性樹脂組成物について種々検討したところ、アルカリ可溶性樹脂と2官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物とを含む組成物とすれば、感光性及び硬化性に優れたものとなることに着目した。そして、アルカリ可溶性樹脂として、分散度(Mw/Mn)が所定範囲にある樹脂を必須に用い、かつ多官能(メタ)アクリレート化合物として、官能数が3官能以上の化合物を必須に用いると、適度な密度の硬化膜が得られることを見いだした。この硬化膜は、良好な密着性及び電気特性を両立することができるうえ、充分な表面硬度及び透明性も有する。また、このような硬化性樹脂組成物は、タッチパネル式表示装置やカラーフィルター等に使用される保護膜又は絶縁膜形成用の樹脂組成物として特に好適であり、これから形成される硬化膜、表示装置用部材及び表示装置は、近年の高精細化の要望に充分に対応できるほど電気特性に優れたものとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、分散度(Mw/Mn)が2.0〜3.5であるアルカリ可溶性樹脂と、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物とを含む硬化性樹脂組成物である。
本発明はまた、上記硬化性樹脂組成物により形成される硬化膜でもある。
本発明は更に、上記硬化膜を有する表示装置用部材でもある。
本発明はそして、上記硬化膜を有する表示装置でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も本発明の好ましい形態である。
【0009】
〔硬化性樹脂組成物〕
本発明の硬化性樹脂組成物(単に樹脂組成物とも称す)は、分散度(Mw/Mn)が2.0〜3.5であるアルカリ可溶性樹脂と、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物と、を含むものであるが、各含有成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。また、必要に応じ、更に他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。
以下では、分散度(Mw/Mn)が2.0〜3.5であるアルカリ可溶性樹脂を「アルカリ可溶性樹脂(i)」とも称し、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を「多官能(メタ)アクリレート化合物」とも称する。
【0010】
本明細書中、「固形分総量」とは、硬化物を形成する成分(硬化物の形成時に揮発する溶媒等を除く成分)の総量を意味する。具体的には、アルカリ可溶性樹脂と、多官能(メタ)アクリレート化合物と、更に他の重合性単量体、カップリング剤及び/又は無機微粒子を含む場合は該成分と、の合計質量を意味する。
【0011】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂として、分散度(Mw/Mn)が2.0〜3.5であるアルカリ可溶性樹脂(i)を少なくとも含む。このようなアルカリ可溶性樹脂の総量(アルカリ可溶性樹脂(i)と、必要に応じて更に含んでもよい他のアルカリ可溶性樹脂と、の合計量)は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対し、5質量%以上であることが好ましく、また、70質量%以下であることが好適である。このような範囲にあることで、本発明の効果をより顕著に奏することが可能となる。より好ましくは10〜65質量%、更に好ましくは15〜60質量%、特に好ましくは15〜50質量%である。
【0012】
上記アルカリ可溶性樹脂(i)は、アルカリ可溶性を示す樹脂(重合体)である。中でも、分子内に酸基を有する重合体(酸基含有重合体とも称す)であることが好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基、リン酸基、スルホン酸基等、アルカリ水と中和反応する官能基が挙げられ、これらの1種のみを有していてもよいし、2種以上有していてもよい。中でもカルボキシル基やカルボン酸無水物基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
【0013】
上記アルカリ可溶性樹脂(i)は、分散度(Mw/Mn)が2.0〜3.5を示すものである。分散度がこの範囲外であると、電気特性が良好なものとはならず、本発明の作用効果を発揮することができない。また、この上限値を超えると、樹脂組成物の保存安定性がより充分なものとならないこともある。分散度の下限値として好ましくは2.1以上、より好ましくは2.2以上、更に好ましくは2.3以上、特に好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.5以上である。また、分散度の上限値として好ましくは3.4以下、より好ましくは3.3以下、更に好ましくは3.2以下、特に好ましくは3.1以下、最も好ましくは3.0以下である。
本明細書中、分散度とは、分子量分布とも称し、「重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)」により求められる値を意味する。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0014】
上記アルカリ可溶性樹脂(i)はまた、重量平均分子量が7000以上であることが好ましく、より好ましくは1万以上である。理由は定かではないが、重量平均分子量が1万以上のものを用いると、現像時にパターンエッジ上に多官能(メタ)アクリレート化合物が残存することが充分に抑制されるため、パターンエッジが直角(四角)に近づく、すなわち現像性が著しく向上されることになる。また、このようなアルカリ可溶性樹脂(i)を用いると、硬化物の表面硬度がより向上され、しかも高温環境下に晒された後においても各種の優れた物性をより安定して発揮することもできる。更に好ましくは11000以上、特に好ましくは11500以上、最も好ましくは12000以上である。また、粘性等の観点から、25万以下であることが好ましい。より好ましくは10万以下、更に好ましくは5万以下、特に好ましくは3万以下、最も好ましくは2万以下である。
なお、上記アルカリ可溶性樹脂が高分子量である場合には、酸価が高い方が現像されやすくなる。
【0015】
上記アルカリ可溶性樹脂(i)の酸価(AV)としては特に限定されないが、例えば、20mgKOH/g以上、300mgKOH/g未満であることが好適である。これにより、より充分なアルカリ可溶性が発現され、現像性により優れる硬化物を得ることが可能になる。また、酸価が300mgKOH/g未満であると、アルカリ可溶性樹脂(i)の分散度をより制御することができる。より好ましくは30mgKOH/g以上、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。また、250mgKOH/g以下がより好ましく、更に好ましくは230mgKOH/g以下、特に好ましくは210mgKOH/g以下である。特に210mgKOH/g以下であると、硬化物の電気特性がより良好なものとなる。より一層好ましくは200mgKOH/g以下、最も好ましくは150mgKOH/g以下である。
本明細書中、重合体の酸価は、後述する実施例に記載の方法により重合体溶液の酸価を測定した後、溶液の酸価と溶液の固形分とから、固形分あたりの酸価を計算することで求めることができる。重合体溶液の固形分は、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0016】
上記アルカリ可溶性樹脂(i)は、硬化性向上の観点から、側鎖にエチレン性不飽和基(すなわち、二重結合)を有する重合体(これを「側鎖二重結合含有重合体」とも称す)であることが好ましい。より好ましくは、酸基及び重合性二重結合を有する単量体を含む単量体成分を重合して得られる重合体(ベースポリマーとも称す)に、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物を反応させて得られる重合体である。ここで使用される各単量体は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
【0017】
上記アルカリ可溶性樹脂(i)として特に好ましくは、主鎖に環構造を有する重合体である。アルカリ可溶性樹脂(i)として主鎖に環構造を有する重合体を用いると、耐熱性や表面硬度、密着性により優れ、また、例えば、高温暴露後の経時変化がより抑制されて各種物性をより一層安定して発現できる硬化物を得ることができる。このように上記分散度が2.0〜3.5であるアルカリ可溶性樹脂が、主鎖に環構造を有する重合体である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。したがって、上記ベースポリマーを形成する単量体成分は、酸基及び重合性二重結合を有する単量体とともに、重合体の主鎖骨格に環構造を導入し得る単量体を1種又は2種以上含むことが好適である。重合体の主鎖骨格に環構造を導入し得る単量体としては、例えば、分子内に二重結合含有環構造を有する単量体や、環化重合して環構造を主鎖に有する重合体を形成する単量体等が挙げられる。
【0018】
上記酸基及び重合性二重結合を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)等の不飽和基とカルボキシル基との間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物類;ライトエステルP−1M(共栄社化学製)等のリン酸基含有不飽和化合物;等が挙げられる。これらの中でも、汎用性、入手性等の観点から、カルボン酸系単量体(不飽和モノカルボン酸類、不飽和多価カルボン酸類、不飽和酸無水物類)を用いることが好適である。より好ましくは、反応性、アルカリ可溶性等の点で、不飽和モノカルボン酸類を用いることであり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸(すなわちアクリル酸及び/又はメタクリル酸)であり、このうち特に好ましくはメタクリル酸である。
【0019】
上記酸基及び重合性二重結合を有する単量体の含有割合は、例えば、上記ベースポリマー成分(ベースポリマーを形成する単量体成分)100質量%に対し、5質量%以上であることが好ましい。これにより、アルカリに対する溶解性がより充分となり、例えば、現像性が必要とされる用途に更に有用な硬化性樹脂組成物となる。また、高温暴露後においても硬化物の優れた外観や密着性等をより維持できる点で、85質量%以下であることが好ましい。より好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは15〜75質量%である。
【0020】
上記単量体成分は、上述した酸基及び重合性二重結合を有する単量体に加えて、その他のラジカル重合性単量体(他の単量体とも称す)を1種又は2種以上含むものであってもよい。
【0021】
上記他の単量体としては、例えば、上述したように、重合体の主鎖骨格に環構造を導入し得る単量体として、分子内に二重結合含有環構造を有する単量体や、環化重合して環構造を主鎖に有する重合体を形成する単量体等の1種又は2種以上が好適である。このような単量体としては、N置換マレイミド系単量体、ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体、及び、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好適である。このように上記アルカリ可溶性樹脂(i)が、N置換マレイミド系単量体単位、ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体単位、及び/又は、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体単位を有する重合体である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
【0022】
特にN置換マレイミド系単量体単位、及び/又は、ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体単位を含む樹脂は、耐熱性や分散性(例えば、色材分散性)、硬度等がより向上された硬化膜を与えることが可能になる。
上述の単量体単位を含む樹脂(重合体)とは、例えば、単量体の重合反応や架橋反応によって当該単量体由来の構成単位を含む樹脂を意味する。
【0023】
上記単量体成分において、N置換マレイミド系単量体としては、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、着色の少なさや分散性に優れる点で、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミドが好ましく、特にN−ベンジルマレイミドが好適である。
【0024】
上記N−ベンジルマレイミドとしては、例えば、ベンジルマレイミド;p−メチルベンジルマレイミド、p−ブチルベンジルマレイミド等のアルキル置換ベンジルマレイミド;p−ヒドロキシベンジルマレイミド等のフェノール性水酸基置換ベンジルマレイミド;o−クロロベンジルマレイミド、o−ジクロロベンジルマレイミド、p−ジクロロベンジルマレイミド等のハロゲン置換ベンジルマレイミド等が挙げられる。
【0025】
上記ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体としては、着色の少なさや分散性、工業的入手の容易さ等の観点から、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等を用いることが好適である。
【0026】
上記α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートとしては、例えば、α−アリルオキシメチルアクリル酸、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸i−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ネオペンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘプチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸カプリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸デシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メリシル等の鎖状飽和炭化水素基含有α−(アリルオキシメチル)アクリレートが好ましい。その他、アルキル−(α−メタリルオキシメチル)アクリレート系単量体等も好ましい。中でも、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(α−(アリルオキシメチル)メチルアクリレートとも称す)が特に好適である。
【0027】
上記α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートは、例えば、国際公開第2010/114077号パンフレットに開示されている製造方法により製造することができる。
【0028】
上記重合体の主鎖骨格に環構造を導入し得る単量体の含有割合(2種以上用いる場合はその合計の割合)は、例えば、上記ベースポリマー成分100質量%に対し、1〜40質量%であることが好ましい。この範囲にあると、耐熱性や分散性、表面硬度等がより向上された硬化膜を得ることが可能になる。中でも特に、N置換マレイミド系単量体、ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体、及び/又は、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの含有割合(2種以上用いる場合はその合計の割合)が、上記ベースポリマー成分(ベースポリマーを形成する単量体成分)100質量%に対して1〜40質量%であることが好ましい。これらの単量体成分に由来する主鎖環構造の含有量が増加すると、密着性が向上する傾向にある。また、N置換マレイミド系単量体の添加量をより増加させると、硬度の点でより優れる硬化物が得られ、ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体を用いることにより、耐熱着色性の点でより優れる硬化物が得られる。なお、N置換マレイミド系単量体の含有割合が多すぎると、現像速度がより適切なものとはならないことがある。
上記N置換マレイミド系単量体、ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体、及び/又は、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの含有割合としてより好ましくは2〜40質量%、更に好ましくは3〜35質量%である。
【0029】
上記他の単量体としてはまた、上述した単量体には該当しないその他の(メタ)アクリル酸エステル系単量体や、芳香族ビニル系単量体等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
上記その他の(メタ)アクリル酸エステル系単量体とは、ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体、及び、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート以外の(メタ)アクリル酸エステル系単量体を意味する。
具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル等の他、1,4−ジオキサスピロ[4,5]デカ−2−イルメタアクリル酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、アルコキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体の中でも、耐熱性が優れる点で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、アルコキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレートを用いることも好適である。より好ましくは、耐熱性、密着性、現像性が優れる点で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、及び/又は、アルコキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレートを用いることである。
【0032】
上記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、メトキシスチレン等が挙げられる。中でも、樹脂の耐熱着色性や耐熱分解性の点で、スチレン、ビニルトルエンが好適である。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び/又は芳香族ビニル系単量体の含有割合(2種以上用いる場合はその合計の割合)は、例えば、上記ベースポリマー成分100質量%に対し、1〜80質量%であることが好適である。この範囲にあると、耐熱着色性やアルカリ可溶性により優れる硬化物を得ることができる。より好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは10〜70質量%である。
【0034】
上記他の単量体としてはまた、例えば、特開2013−227485号公報〔0051〕に例示された、(メタ)アクリルアミド類;重合体分子鎖の片末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類;共役ジエン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;N−ビニル化合物類;不飽和イソシアネート類;等の1種又は2種以上を用いることもできる。その含有割合は、上記ベースポリマー成分100質量%中、20質量%以下とすることが好適である。
【0035】
ここで、硬化物の電気特性をより向上させる観点からは、上記アルカリ可溶性樹脂(i)は、水酸基等の親水性基を有しないことが好適である。したがって、上記アルカリ可溶性樹脂(i)を得るために共重合される単量体成分には、親水性基を有する単量体(例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル等)をできるだけ含まないことが好ましい。具体的には、親水性基を有する単量体の含有割合は、上記ベースポリマー成分100質量%中、20質量%以下とすることが好適である。より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0036】
上記単量体成分を重合する方法としては、バルク重合、溶液重合、乳化重合等の通常用いられる手法を用いることができ、目的、用途に応じて適宜選択すればよい。中でも、溶液重合が、工業的に有利で、分子量等の構造調整も容易であるため好適である。また、上記単量体成分の重合機構は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合等の機構に基づいた重合方法を用いることができるが、ラジカル重合機構に基づく重合方法が、工業的にも有利であるため好ましい。
【0037】
上記重合反応の好ましい形態は、特開2013−227485号公報〔0053〕〜〔0065〕に記載のとおりである。なお、重合時間は、1〜8時間が好ましく、より好ましくは1〜5時間、更に好ましくは2〜4時間である。
【0038】
上記アルカリ可溶性樹脂(i)は、上述したようにして得られるベースポリマーに、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物を反応させて得られる重合体であることが好適であるが、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物における重合性二重結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、メタリル基等が挙げられ、当該化合物として、これらの1種又は2種以上を有するものが好適である。中でも、反応性の点で、(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、酸基と結合し得る官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基等が挙げられ、当該化合物として、これらの1種又は2種以上を有するものが好適である。中でも、変成処理反応の速さ、耐熱性、分散性の点から、エポキシ基(グリシジル基を含む)が好ましい。
【0039】
上記酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、ビニルシクロヘキセンオキシド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。中でも、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(単量体)を用いることが好適である。
【0040】
上記酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物の使用量は、例えば、上記ベースポリマー成分(ベースポリマーを構成する単量体成分の総量)100質量部に対し、1〜50質量部とすることが好適である。より好ましくは5〜45質量部である。
【0041】
上記酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物の使用量(配合割合)はまた、ベースポリマーを構成する酸基及び重合性二重結合を有する単量体(これを「単量体x」とする)のカルボン酸に付加させた、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物(これを「化合物y」とする)の配合割合(質量%)、すなわち「{化合物yのモル量(mol)/単量体xのモル量(mol)}×{単量体xの配合割合(質量%)}」で求められ、50質量%以下となるように設定することが好適である。これにより、電気特性がより良好な硬化物を得ることができる。より好ましくは50質量%未満であり、これにより、電気特性及び耐光性により優れた硬化物を得ることができる。更に好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは35質量%以下である。また5質量%以上であることが好適である。より好ましくは7質量%以上である。
なお、例えば、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物(化合物y)としてGMA(メタクリル酸グリシジル)を用い、酸基及び重合性二重結合を有する単量体(単量体x)としてMAA(メタクリル酸)を用いた場合、上記でいう「酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物の配合割合(質量%)」とは、付加させたGMAをMAA質量換算した質量%を意味し、「{GMAのモル量(mol)/MAAのモル量(mol)}×MAA配合割合(質量%)」により求められる。この数値が、上記の好ましい範囲内にあることが好適である。
【0042】
上記アルカリ可溶性樹脂(i)は、例えば、上記ベースポリマー成分と、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物とを反応させる際に、該ベースポリマー成分の酸基(好ましくはカルボキシル基)の量を、該酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物の量より過剰にする方法;上記ベースポリマー成分と、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物とを反応させた後に、更に多塩基酸無水物基を有する化合物を反応させる方法;等の手法を用いて製造することが好ましい。
【0043】
上記ベースポリマー成分(好ましくはカルボキシル基を有する重合体)と、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物とを反応させる工程は、良好な反応速度を確保し、かつゲル化を防ぐために、50〜160℃の温度範囲で行うことが好ましい。より好ましくは70〜140℃、更に好ましくは90〜130℃である。また、反応速度を向上するために、触媒として、通常使用されるエステル化又はエステル交換用の塩基性触媒や酸性触媒を用いることができる。中でも、副反応が少なくなるため、塩基性触媒を用いることが好ましい。
【0044】
上記塩基性触媒としては、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等の3級アミン;テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;テトラメチル尿素等の尿素化合物;テトラメチルグアニジン等のアルキルグアニジン;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の3級ホスフィン;テトラフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩;等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、反応性、取扱い性やハロゲンフリー等の点で、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、テトラメチル尿素、トリフェニルホスフィンが好ましい。
【0045】
上記触媒の使用量は、上記ベースポリマー成分と、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合基を有する化合物との合計量100質量部に対し、0.01〜5質量部とすることが好ましい。より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0046】
上記ベースポリマー成分と、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物とを反応させる工程はまた、ゲル化を防ぐために、重合禁止剤を添加し、分子状酸素含有ガスの存在下で行うことが好ましい。分子状酸素含有ガスとしては、通常、窒素等の不活性ガスで希釈された空気又は酸素ガスが用いられ、反応容器内に吹き込まれる。
【0047】
上記重合禁止剤としては、通常使用されるラジカル重合性単量体用の重合禁止剤を用いることができ、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、メトキノン、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系禁止剤、有機酸銅塩やフェノチアジン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、低着色、重合防止能力等の点でフェノール系禁止剤が好ましく、入手性、経済性から、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、メトキノン、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノールがより好ましい。
【0048】
上記重合禁止剤の使用量としては、充分な重合防止効果の確保、及び、硬化性樹脂組成物としたときの硬化性等の観点から、上記ベースポリマー成分と、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物との合計量100質量部に対し、0.001〜1質量部であることが好ましい。より好ましくは0.01〜0.5質量部である。
【0049】
上記多塩基酸無水物基を有する化合物としては、例えば、無水コハク酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
上記アルカリ可溶性樹脂(i)は、エチレン性不飽和基の当量、すなわち二重結合当量が200〜1万であることが好ましい。これにより、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。中でも、電気特性向上の観点から、400〜5000であることがより好ましい。下限値として更に好ましくは450以上、特に好ましくは500以上であり、また、上限値としてより好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、特に好ましくは2000以下、最も好ましくは1500以下である。このように上記アルカリ可溶性樹脂(i)の二重結合当量が500〜1500である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0051】
二重結合当量とは、重合体の二重結合1molあたりの重合体溶液の固形分の質量(g)である。ここでいう重合体溶液の固形分の質量とは、上記ベースポリマー成分の質量と、酸基と結合し得る官能基及び重合性二重結合基を有する化合物の質量と、連鎖移動剤の質量とを合計したものである。重合体溶液の固形分の質量を重合体の二重結合量で除することにより、求めることが可能である。重合体の二重結合量は、投入した酸基と、結合し得る官能基及び重合性二重結合を有する化合物との量から求めることができる。
【0052】
上記硬化性樹脂組成物は、必要に応じ、更に、上記アルカリ可溶性樹脂(i)以外のアルカリ可溶性樹脂を1種又は2種以上含んでいてもよい。このようなアルカリ可溶性樹脂は特に限定されないが、例えば、側鎖にエチレン性不飽和基を有しない樹脂(重合体)(以下、「アルカリ可溶性樹脂(ii)」とも称す)が好ましく、当該樹脂を更に含むことが好適である。中でも、芳香族ビニル化合物と、無水マレイン酸誘導体及び/又はその加水分解物とを含む単量体成分を重合して得られる重合体(樹脂)であることがより好ましい。このようなアルカリ可溶性樹脂(ii)を含むことで、極めて電気特性に優れ、充分な密着性及び表面硬度を有する硬化物を与えるという本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる他、硬化物が耐光性にも優れたものとなる。
【0053】
上記アルカリ可溶性樹脂(ii)は、酸価(AV)が、例えば、20mgKOH/g以上、300mgKOH/g未満であることが好適である。これにより、より充分なアルカリ可溶性が発現され、現像性により優れる硬化物を得ることが可能になる。より好ましくは30mgKOH/g以上、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。また290mgKOH/g以下がより好ましい。
【0054】
上記アルカリ可溶性樹脂(ii)はまた、重量平均分子量が100以上であることが好ましい。これにより、表面硬度がより高い硬化物を得ることができる。より好ましくは1000以上、更に好ましくは5000以上である。また、粘性等の観点から、25万以下であることが好ましい。より好ましくは10万以下、更に好ましくは5万以下、特に好ましくは3万以下、最も好ましくは2万以下である。
【0055】
上記アルカリ可溶性樹脂(ii)は任意成分であるが、これを含む場合、その含有量は、上記アルカリ可溶性樹脂(i)100質量部に対し、90質量部以下であることが好適である。これにより、極めて電気特性に優れ、充分な密着性及び表面硬度を有する硬化物を与えるという本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる他、硬化物が耐光性にもより優れたものとなる。より好ましくは85質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。また、10質量部以上であることが好適であり、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。
【0056】
<多官能(メタ)アクリレート化合物>
上記硬化性樹脂組成物は、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物を含む。
3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物とは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であるが、このような化合物を含むことで、該樹脂組成物が感光性及び硬化性に優れたものとなり、高硬度の硬化膜を得ることが可能になる。
ここで、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基及び/又はアクリロイル基を意味するが、本発明では、反応性により優れる観点からアクリロイル基が好ましい。すなわち上記多官能(メタ)アクリレート化合物は、アクリロイル基を3個以上有する多官能アクリレート化合物であることが特に好適である。
【0057】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物の官能数は、3以上である。これにより、感光性及び硬化性が高められ、硬化物の硬度及び透明性を向上することができる。官能数として好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。また、硬化収縮をより抑制する観点から、10以下であることが好ましく、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
なお、官能数が少ない多官能(メタ)アクリレート化合物であっても、フルオレン骨格を有する化合物であれば、硬化物の硬度をより向上することができるため、好ましい。したがって、上記多官能(メタ)アクリレート化合物は、フルオレン骨格を有する多官能(メタ)アクリレート化合物であってもよい。
【0058】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物の分子量は特に限定されないが、取り扱いの観点から、例えば、2000以下が好適である。より好ましくは1000以下である。また、100以上が好適である。
【0059】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物としては特に限定されないが、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等。
【0060】
上記硬化性樹脂組成物において、多官能(メタ)アクリレート化合物の含有割合は、アルカリ可溶性樹脂の総量(アルカリ可溶性樹脂(i)と、必要に応じて更に含んでもよい他のアルカリ可溶性樹脂と、の合計量)100質量部に対し、120質量部以下であることが好適である。この範囲であると、電気特性により優れた硬化物(硬化膜)を得ることができる。より好ましくは110質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、より更に好ましくは90質量部以下、特に好ましくは80質量部以下、最も好ましくは70質量部以下である。また、現像性をより向上させる観点から、20質量部以上であることが好ましい。より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは35質量部以上、特に好ましくは40質量部以上である。
【0061】
<他の重合性単量体>
上記硬化性樹脂組成物はまた、必要に応じて、上記多官能(メタ)アクリレート化合物以外の重合性単量体(他の重合性単量体とも称す)を更に含んでもよい。重合性単量体とは、フリーラジカル、電磁波(例えば、赤外線、紫外線、X線等)、電子線等の活性エネルギー線の照射等により重合し得る、重合性不飽和結合(重合性不飽和基とも称す)を有する化合物であり、他の重合性単量体として好ましくはラジカル重合性単量体である。
【0062】
上記ラジカル重合性単量体としては、分子内にラジカル重合性不飽和基を1つ有する単官能性のラジカル重合性化合物と、2個以上有する多官能性のラジカル重合性化合物(ただし、上記多官能(メタ)アクリレート化合物に該当するものを除く)とに分類することができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
また上記ラジカル重合性単量体の分子量は特に限定されないが、取り扱いの観点から、例えば、2000以下が好適である。
【0063】
上記単官能性のラジカル重合性化合物としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系単量体;(メタ)アクリルアミド類;不飽和モノカルボン酸類;不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;芳香族ビニル系単量体;N置換マレイミド系単量体;共役ジエン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類;N−ビニル化合物類;不飽和イソシアネート類等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましい、すなわち言い換えれば、単官能(メタ)アクリレート化合物が好適である。
【0064】
上記単官能(メタ)アクリレート化合物としては、脂肪族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物や、芳香環(芳香族炭化水素基)を有する単官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられるが、その中でも前者が好ましく、特に、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基と、炭素数5〜24の脂肪族炭化水素基とを有する化合物が好適である。脂肪族炭化水素基として具体的には、脂肪族飽和炭化水素基(アルキル基)、及び、脂肪族不飽和炭化水素基(例えば、アルケニル基)が挙げられる。中でも、脂肪族飽和炭化水素基であると、本発明の作用効果をより充分に発揮することができるため好適である。具体的には、C2n+1で表される基(n=5〜24)であることが好ましい。
【0065】
上記脂肪族炭化水素基の炭素数は、5〜24であることが好適である。これにより、硬化物の表面硬度がより充分なものとなり、また、他の含有成分との相溶性にもより優れるものとなる。炭素数として好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。また、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
【0066】
上記脂肪族炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物として好ましくは、例えば、n−アミル(メタ)アクリレート、s−アミル(メタ)アクリレート、t−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレートとも称す)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデカニル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐鎖からなる脂肪族炭化水素基を有する化合物;イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の環状構造の脂肪族炭化水素基を有する化合物;等が挙げられる。中でも、上述した好ましい炭素数の脂肪族飽和炭化水素基を有する化合物がより好ましい。
【0067】
上記多官能性のラジカル重合性化合物としては、例えば、上述した不飽和多価カルボン酸類や不飽和酸無水物類の他、特開2013−227485号公報〔0097〕〜〔0098〕に例示された、2官能(メタ)アクリレート類;多官能ビニルエーテル化合物;ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート化合物;多官能アリルエーテル化合物;アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類;多官能アリル基含有イソシアヌレート類;多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;多官能芳香族ビニル類;等も挙げられる。
【0068】
上記硬化性樹脂組成物が、上述した任意成分である、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基と炭素数5〜24の脂肪族炭化水素基とを有する化合物を含む場合、その含有割合は、固形分総量100質量%中、3〜20質量%であることが好適である。これにより、硬化物の透明性がより向上され、かつ電気特性向上をより一層実現することができる。より好ましくは4質量%以上であり、また、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下である。
【0069】
上記1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基と炭素数5〜24の脂肪族炭化水素基とを有する化合物以外の他の重合性単量体の含有割合は、例えば、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%中、10質量%以下であることが好適である。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0070】
<光重合開始剤>
上記硬化性樹脂組成物はまた、光重合開始剤を含むことが好適である。これにより、上記樹脂組成物の感度や硬化性をより向上することが可能になる。このように上記硬化性樹脂組成物が更に光重合開始剤を含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。
【0071】
上記光重合開始剤として好ましくは、ラジカル重合性の光重合開始剤である。ラジカル重合性の光重合開始剤とは、電磁波や電子線等の活性エネルギー線の照射により重合開始ラジカルを発生させるものであり、通常使用されるものを1種又は2種以上使用することができる。また、必要に応じて、光増感剤や光ラジカル重合促進剤等を1種又は2種以上併用してもよい。光重合開始剤とともに、光増感剤及び/又は光ラジカル重合促進剤を併用することにより、感度や硬化性がより向上される。
【0072】
上記光重合開始剤として具体的には、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(「IRGACURE907」、BASF社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(「IRGACURE369」、BASF社製)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(「IRGACURE379」、BASF社製)等のアミノケトン系化合物;2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(「IRGACURE651」、BASF社製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(「DAROCUR MBF」、BASF社製)等のベンジルケタール系化合物;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(「IRGACURE184」、BASF社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(「DAROCUR1173」、BASF社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(「IRGACURE2959」、BASF社製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(「IRGACURE127」、BASF社製)、[1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン+ベンゾフェノン](「IRGACURE500」、BASF社製)等のハイドロケトン系化合物;等の他、特開2013−227485号公報〔0084〕〜〔0086〕に例示された、アルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン系化合物;チオキサントン系化合物;ハロメチル化トリアジン系化合物;ハロメチル化オキサジアゾール系化合物;ビイミダゾール系化合物;オキシムエステル系化合物;チタノセン系化合物;安息香酸エステル系化合物;アクリジン系化合物等;ホスフィンオキシド系化合物;オキシムエステル系化合物;等が挙げられる。
【0073】
上記光重合開始剤の中でも、アミノケトン系化合物(アミノケトン系重合開始剤とも称す)を少なくとも用いることが特に好適である。すなわち上記硬化性樹脂組成物は、更にアミノケトン系重合開始剤を含むことが好ましい。これにより、硬度及び現像性がより優れたものとなる。また、ハイドロケトン系化合物(ハイドロケトン系重合開始剤とも称す)や、ベンジルケタール系化合物(ベンジルケタール系重合開始剤とも称す)を用いることも好適である。
【0074】
上記光重合開始剤の含有量は、目的、用途等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量部に対し、2質量部以上であることが好適である。これにより、密着性により優れた硬化物を得ることができ、高温暴露後においても剥がれがより充分に抑制される。より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上である。また、光重合開始剤の分解物が与える影響や経済性等とのバランスを考慮すると、35質量部以下であることが好ましい。より好ましくは25質量部以下である。
【0075】
本発明ではまた、上述したように重合開始剤としてアミノケトン系重合開始剤を使用することが好適であるが、この場合、重合開始剤の総量(すなわちアミノケトン系重合開始剤及び他の重合開始剤の合計量)100質量%に対し、アミノケトン系重合開始剤が20質量%以上であることが好適である。より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上である。
【0076】
上記光重合開始剤と併用してもよい光増感剤や光ラジカル重合促進剤としては、例えば、特開2013−227485号公報〔0088〕に例示された、色素系化合物;ジアルキルアミノベンゼン系化合物;メルカプタン系水素供与体;等が挙げられる。また、上記光増感剤及び/又は光ラジカル重合促進剤の含有量(総量)は、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、硬化性、分解物が与える影響及び経済性のバランスの観点から、本発明の硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量部に対し、0.001〜20質量部であることが好ましい。より好ましくは0.01〜15質量部、更に好ましくは0.05〜10質量部である。
【0077】
<カップリング剤>
上記硬化性樹脂組成物はまた、カップリング剤を含むことが好適である。カップリング剤は、無機物の酸化表面と加水分解反応や縮合反応をすることによって結合するという性質を有するものであるが、この性質を利用して、例えばITO等が蒸着された基板等への密着性をより充分に発揮させることが可能になる。このように上記硬化性樹脂組成物が更にカップリング剤を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0078】
上記カップリング剤として具体的には、例えば、ビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアナート基等の反応性基を有するカップリング剤が好適である。中でも、反応性基としてビニル基、(メタ)アクリロイル基及び/又はエポキシ基を有するものが好ましい。より好ましくは(メタ)アクリロイル基である。また、中心金属として、例えば、ケイ素、ジルコニア、チタン及び/又はアルミニウム等を含むものが好適であり、中でも、ケイ素を中心金属として有するものが好ましく、より好ましくはシランカップリング剤である。シランカップリング剤を用いることにより、硬化物の密着性及び表面硬度をより充分なものとすることができる。
【0079】
上記シランカップリング剤の中でも、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤が特に好ましく、これにより、樹脂組成物の保存安定性がより良好となる。また、密着性もより向上することになる。
なお、ケイ素以外の金属を中心金属として有するカップリング剤としては、例えば、ジルコアルミネート系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0080】
上記シランカップリング剤としては、上述した反応性基の1種又は2種以上と、アルコキシシラン基(−Si(OR3−n(R;ORは、加水分解性基を表し、Rは炭化水素基であることが好適である。Rは、炭化水素基を表す。nは、0、1又は2である。)とを有する化合物であることが好適である。中でも、ビニル基、(メタ)アクリロイル基及び/又はエポキシ基を有するシランカップリング剤を用いることが好適であり、これにより、高温暴露後にも変色や着色、クラック等の外観の経時変化がなく、より充分な表面硬度及び密着性を有する硬化物を得ることが可能になる。
【0081】
上記ビニル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0082】
上記(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0083】
上記エポキシ基を有するシランカップリング剤として具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0084】
上記アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0085】
上記イソシアナート基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0086】
上記硬化性樹脂組成物において、カップリング剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%中、3質量%以上であることが好適である。3質量%以上含むことで、高温暴露後においてもより充分な密着性及び表面硬度を有することができる。より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。また、硬化性樹脂組成物の保存安定性等の観点から、30質量%以下であることが好適である。より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0087】
<フッ素系添加剤>
上記硬化性樹脂組成物はまた、硬化性をより一層向上させる観点から、1種又は2種以上のフッ素系添加剤(フッ素添加剤とも称す)を含んでもよい。なお、フッ素系添加剤は、レベリング剤としての機能も有する。
【0088】
上記フッ素系添加剤とは、構造中にフッ素原子を有する化合物であり、例えば、通常、フッ素系界面活性剤又はフッ素系表面改質剤等として使用されている化合物を用いることができる。
【0089】
上記フッ素系添加剤は、硬化性樹脂組成物中で成分分離しないことが好ましい観点から、各種有機溶媒(例えば、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等)への溶解性が高いものがより好ましく使用される。具体的には、例えば、HLB値(親水性親油性バランス)が、0〜16の範囲にあるものが好適である。HLB値としてより好ましくは1〜13である。
なお、HLB値は、例えば、グリフィン法、デイビス法で求められる。
【0090】
上記フッ素系添加剤は更に、フッ素系添加剤の総量100質量%中に、フッ素を0.01〜80質量%含むものが好適である。フッ素含有量は、例えば、イオンクロマトグラフ法にて定量することができる。
【0091】
上記フッ素系添加剤としてはまた、ノニオン性やアニオン性のもの等が存在するが、樹脂との分散性等の観点から、ノニオン性のものが好適である。
【0092】
上記フッ素系添加剤として具体的には、例えば、パーフルオロブタンスルホン酸塩(メガファックF−114)、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩(メガファックF−410)、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(メガファックF−444、EXP・TF−2066)、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル(メガファックEXP・TF−2148)、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル型アミン中和物(メガファックEXP・TF−2149)、含フッ素基・親水性基含有オリゴマー(メガファックF−430、EXP・TF−1540)、含フッ素基・親油性基含有オリゴマー(メガファックF−552、F−554、F−558、F−561、R−41)、含フッ素基・親水性基・親油性基含有オリゴマー(メガファックF−477、F−553、F−555、F−556、F−557、F−559、F−562、R−40、EXP・TF−1760)、含フッ素基・親水性基・親油性基・UV反応性基含有オリゴマー(メガファックRS−72−K、RS−75、RS−76−E、RS−76−NS、RS−77)等が挙げられる(いずれもDIC社製)。中でも、親油性基を含む化合物(含フッ素基・親油性基含有オリゴマー、含フッ素基・親水性基・親油性基含有オリゴマー、含フッ素基・親水性基・親油性基・UV反応性基含有オリゴマー)が好適である。
【0093】
上記フッ素系添加剤の含有量は、目的、用途等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量部に対し、0.05〜10質量部であることが好ましい。より好ましくは0.05質量部以上であり、また、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下、特に好ましくは3質量部以下である。
【0094】
<溶剤>
上記硬化性樹脂組成物はまた、溶剤を含むことが好適である。溶剤は、希釈剤等として好ましく使用される。すなわち具体的には、粘度を下げ取扱い性を向上する;乾燥により塗膜を形成する;色材の分散媒とする;等のために好適に使用されるものであり、硬化性樹脂組成物中の各含有成分を溶解又は分散することができる、低粘度の有機溶媒である。
【0095】
上記溶剤としては、通常使用するものを1種又は2種以上使用することができ、目的、用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル類の他、特開2013−227485号公報〔0092〕に例示された、モノアルコール類;グリコール類;環状エーテル類;グリコールモノエーテル類;グリコールエーテル類;アルキルエステル類;ケトン類;芳香族炭化水素類;脂肪族炭化水素類;アミド類;等が挙げられる。
【0096】
上記溶剤の使用量は、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、本発明の硬化性樹脂組成物の総量100質量%中に、10〜90質量%含まれるようにすることが好ましい。より好ましくは20〜80質量%、特に好ましくは40〜80質量%、最も好ましくは60〜80質量%である。
【0097】
上記硬化性樹脂組成物は更に、それが適用される各用途の要求特性に応じて、例えば、色材(着色剤とも称す);分散剤;耐熱向上剤;レベリング剤;現像助剤;フィラー;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール等の熱硬化性樹脂;多官能チオール化合物等の硬化助剤;可塑剤;重合禁止剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;艶消し剤;消泡剤;帯電防止剤;スリップ剤;表面改質剤;揺変化剤;揺変助剤;キノンジアジド化合物;多価フェノール化合物;カチオン重合性化合物;酸発生剤;等の1種又は2種以上を含んでいてもよい。例えば、上記硬化性樹脂組成物をカラーフィルター用途に使用する場合には、色材を含むことが好ましい。
【0098】
なお、電気特性向上をより一層図る観点からは、本発明の硬化性樹脂組成物は、シリカ微粒子等の無機微粒子をできるだけ含まないことが好適である。具体的には、無機微粒子の含有割合が、硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%中、3質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0質量%、すなわち無機微粒子を実質的に含まないことである。
【0099】
<硬化性樹脂組成物の製造方法>
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、上述した含有成分を、各種の混合機や分散機を用いて混合分散することによって調製することができる。分散工程及び混合工程は、特に限定されず、通常の手法により行えばよい。また、通常行われる他の工程を更に含むものであってもよい。上記硬化性樹脂組成物が色材を含む場合は、色材の分散処理工程を経て製造することが好適である。
【0100】
〔硬化膜〕
次に、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成される硬化膜について説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー光線を照射(露光)することにより、硬化膜を形成することができる。具体的には、例えば、基板(基材とも称す)上に上記硬化性樹脂組成物を塗布して乾燥させ、その塗布面に活性エネルギー光線を照射(露光)することにより、硬化膜を形成することが好ましい。このように上記硬化性樹脂組成物により形成される硬化膜もまた、本発明の1つである。また、上記硬化性樹脂組成物は、レジスト材料として好適に用いられることから、上記硬化性樹脂組成物により形成される硬化膜がレジスト硬化膜である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0101】
上記硬化膜は、イオンマイグレーション試験による抵抗値低下時間が100時間以上となるものであることが好適である。このような硬化膜を用いることにより、表示装置用部材等の電気特性がより向上される。抵抗値低下時間としてより好ましくは150時間以上、更に好ましくは200時間以上、特に好ましくは250時間以上である。
イオンマイグレーション試験は、後述する実施例に記載の方法により行うことができる。
【0102】
ここで、電気特性が良好な硬化膜を有する表示装置用部材では、例えば、静電容量式のタッチパネルを有する表示装置画面をタッチ入力する際の高精細化が可能となる。静電容量式のタッチパネルとは、タッチパネルのウインドウにユーザの指が接触すると、指とタッチパネルの(透明)電極との間でキャパシタンスが形成され、これに伴う静電容量の変化によってタッチされた位置を検出するものである。したがって、硬化膜が形成された様々な部分の電気特性を向上させることで表示装置の高性能化を図ることができる。
【0103】
上記硬化性樹脂組成物を塗布する基板(基材とも称す)としては、特に限定されず、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス基板;ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスルホン、環状オレフィンの開環重合体やその水素添加物等の熱可塑性樹脂からなるシート又はフィルム;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂からなるシート又はフィルム;アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板;セラミック基板;光電変換素子を有する半導体基板;表面に色材層を備えるガラス基板(LCD用カラーフィルター)等の各種材料から構成される部材;等が挙げられる。中でも、耐熱性の点から、ガラス基板や、プラスチック基板の中でも耐熱性樹脂からなるシート又はフィルムが好ましい。また、上記基板は透明基板であることが好適である。
【0104】
また上記基板には、必要に応じてコロナ放電処理、オゾン処理、シランカップリング剤等による薬品処理等を行ってもよいし、上記基板の両面又は片面に、ガスバリヤー層や保護膜等の無機成分又は有機成分の塗布膜を形成してもよい。また、硬化膜を表示装置用部材に用いる場合には、上記基板にITO等の電極を形成することが好適である。なお、本発明の硬化膜は、基板だけでなく、ITO膜等の電極との密着性にも優れるものである。
【0105】
上記硬化性樹脂組成物を基板に塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、スピン塗布、スリット塗布、ロール塗布、流延塗布等が挙げられ、いずれの方法も好ましく用いることができる。
【0106】
上記基板に塗布した後の塗膜の乾燥は、例えば、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等を用いて行うことができる。乾燥条件は、含まれる溶媒成分の沸点、硬化成分の種類、膜厚、乾燥機の性能等に応じて適宜選択されるが、通常、50〜150℃の温度で、10秒〜300秒間行うことが好適である。
【0107】
上記活性エネルギー光線の光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプ等のランプ光源、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、半導体レーザー等のレーザー光源等が使用される。また、露光機の方式としては、プロキシミティー方式、ミラープロジェクション方式、ステッパー方式が挙げられるが、プロキシミティー方式が好ましく用いられる。
なお、活性エネルギー光線の照射工程では、用途によっては、所定のマスクパターンを介して活性エネルギー光線を照射することとしてもよい。この場合、露光部が硬化し、硬化部が現像液に対して不溶化又は難溶化されることになる。
【0108】
また必要に応じて、上記活性エネルギー光線の照射工程後に、現像液によって現像処理し、未露光部を除去しパターンを形成する工程(現像工程とも称す)を行ってもよい。これによって、パターン化された硬化膜を得ることができる。
上記現像工程における現像処理は、通常、10〜50℃の現像温度で、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法で行うことができる。なお、現像液としてアルカリ性水溶液を用いる場合には、現像後、水で洗浄することが好ましい。
【0109】
上記現像液は、本発明の硬化性樹脂組成物を溶解するものであれば特に限定されないが、通常、有機溶媒やアルカリ性水溶液が用いられ、これらの混合物を用いてもよい。
上記現像液として好適な有機溶媒としては、例えば、エーテル系溶媒やアルコール系溶媒等が挙げられる。具体的には、例えば、ジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、トリエチレングリコールジアルキルエーテル類、アルキルフェニルエーテル類、アラルキルフェニルエーテル類、ジ芳香族エーテル類、イソプロパノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0110】
上記アルカリ性水溶液には、アルカリ剤の他、必要に応じ、界面活性剤、有機溶媒、緩衝剤、染料、顔料等を含有させることができる。この場合の有機溶媒としては、上述した現像液として好適な有機溶媒等が挙げられる。アルカリ剤としては、例えば、特開2013−227485号公報〔0164〕に例示された、無機のアルカリ剤;アミン類;等の1種又は2種以上を使用することができ、界面活性剤としては、例えば、特開2013−227485号公報〔0165〕に例示された、ノニオン系界面活性剤;アニオン性界面活性剤;両性界面活性剤等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0111】
更に必要に応じて、後硬化工程(ポストベイク又は後処理工程とも称す)を行ってもよい。後硬化工程とは、例えば、高圧水銀灯等の光源を使用して、例えば0.5〜5J/cmの光量で露光する工程の他、後加熱する工程(熱処理工程とも称す)等が挙げられる。このような後処理を行うことにより、パターン化された硬化膜の硬度及び密着性を更に強固なものとすることが可能になる。
【0112】
上述した後処理工程の中でも好ましくは、後者の熱処理工程であり、その際の温度は、60℃以上とすることが好適である。この温度範囲で熱処理工程を行うことで、反応性化合物が分解され、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。このように上記硬化膜が60℃以上の温度で熱処理されてなる形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。熱処理の温度としてより好ましくは80℃以上であり、また、300℃以下とすることが好ましい。また、熱処理時間は特に限定されないが、例えば、10秒〜300分間であることが好ましい。
【0113】
〔硬化性樹脂組成物の用途等〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、極めて電気特性に優れ、充分な密着性及び表面硬度を有し、しかも透明性も高い硬化物(硬化膜)を与えるものである。したがって、このような硬化性樹脂組成物から形成される硬化物(硬化膜)は、例えば、液晶表示装置や固体撮像素子、タッチパネル式表示装置等の各種表示装置の構成部材の他、インキ、印刷版、プリント配線板、半導体素子、フォトレジスト等、各種の光学部材や電機・電子機器等の種々様々な用途に好ましく使用される。中でも、液晶表示装置や固体撮像素子等に用いられるカラーフィルターや、タッチパネル式表示装置に用いることが好適であり、特に、上記硬化性樹脂組成物を用いて、これら各種表示装置における保護膜(カラーフィルター用保護膜、タッチパネル式表示装置用保護膜等)や、絶縁膜(タッチパネル式表示装置用絶縁膜等)を形成することが好適である。これにより、近年の高性能化の要望に充分に対応できる程度に各種表示装置の表示品位や撮像品位の信頼性を充分に高めることができる。このように上記硬化性樹脂組成物が保護膜又は絶縁膜形成用の硬化性樹脂組成物である形態、上記硬化膜が保護膜又は絶縁膜である形態、及び、上記硬化膜がタッチパネル用硬化膜である形態もまた、本発明の好適な形態に含まれる。また、上記硬化性樹脂組成物により形成される硬化膜、該硬化膜を有する表示装置用部材及び該硬化膜を有する表示装置は、本発明に含まれる。
【0114】
本発明の表示装置用部材及び表示装置は、上記硬化膜を有するが、更に、他の構成部材等を1種又は2種以上有するものであってもよい。上記硬化性樹脂組成物により形成される硬化膜は、安定して基板等に対する密着性に優れ、かつ高硬度であるうえ、電気特性が良好なものである。したがって、各種表示装置における保護膜や絶縁膜として非常に有用である。表示装置としては特に限定されないが、例えば、液晶表示装置、固体撮像素子、タッチパネル式表示装置等が好適である。タッチパネル式表示装置としては、特に、静電容量方式のものが好ましい。
【0115】
なお、上記表示装置用部材は、上記硬化膜から構成されるフィルム状の単層又は多層の部材であってもよいし、該単層又は多層の部材に更に他の層が組み合わされた部材であってもよいし、また、上記硬化膜を構成中に含む部材(例えば、カラーフィルター等)であってもよい。
【発明の効果】
【0116】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述のような構成であるので、良好な密着性及び電気特性を両立でき、しかも充分な表面硬度及び透明性を有する硬化物を与えることができる。したがって、このような硬化性樹脂組成物により形成される硬化膜を有する表示装置用部材及び表示装置は、光学分野や電機・電子分野で非常に有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0117】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を、それぞれ意味するものとする。
以下の合成例や調製例等において、各種物性等は以下のようにして測定した。
【0118】
〔樹脂溶液(アルカリ可溶性樹脂)の物性〕
<重量平均分子量、数平均分子量及び分散度>
ポリスチレンを標準物質とし、テトラヒドロフランを溶離液として、HLC−8220GPC(東ソー社製)、カラム TSKgel SuperHZM−M(東ソー社製)によるGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法にて、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した。測定されたMw及びMnの値から、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0119】
<固形分濃度 NV>
重合体溶液をアルミカップに約0.3g量り取り、アセトン約1gを加えて溶解させた後、常温で自然乾燥させた。そして、熱風乾燥機(エスペック社製、商品名「PHH−101」)を用い、140℃で3時間乾燥した後、デシケータ内で放冷し、質量を測定した。その質量減少量から、重合体溶液の固形分濃度(NV、質量%)を計算した。
【0120】
<酸価 AV>
樹脂溶液1.5gを精秤し、アセトン90g/水10g混合溶媒に溶解し、0.1規定のKOH水溶液を滴定液として用いて、自動滴定装置(平沼産業社製、商品名「COM−555」)により、樹脂溶液の酸価を測定し、溶液の酸価と溶液の固形分から固形分1g当たりの酸価を求めた。
【0121】
〔塗膜(硬化膜)物性〕
1、ITO基板に対する物性
ガラスに、厚み30nmでITO(Indium Tin Oxide)が蒸着されたITO基板を用意した。このITO基板に得られた樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、加熱処理(80℃3分間)した後、2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナ(TOPCON社製、商品名「TME−150RNS」)によって60mJ/cm(365nm照度換算)の露光量で露光を行い、加熱処理(230℃30分間)を行った。この得られた塗布膜を用いて、下記のように、初期物性評価(碁盤目試験、鉛筆硬度試験、膜色評価試験)及び耐光性評価を行った。
【0122】
(1)碁盤目試験(密着性評価)
JIS−K5400−8.5(1990年)に準じて試験を行い、下記基準で評価した。
○:JIS規格で10点。
△:JIS規格で4〜8点。
×:JIS規格で0〜2点。
【0123】
(2)鉛筆硬度試験(硬度評価)
JIS−K5600−5−4(1999年)に準じて試験を行ったが、すべて荷重は、旧JIS版のJIS−K5400(1990年)の500gで行い、傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆を硬度(表面硬度)の値とした。
なお、3H>2H>H>F>HB>B>2B>3B>4Bの順に硬度が低下する。
【0124】
(3)膜色評価試験
上記で得た塗布膜(厚さ1.5μmの硬化膜)について、目視で色を評価した。具体的には、下記基準で評価した。
○:硬化膜が無色透明である。
△:硬化膜が薄い白色である。
×:硬化膜が白濁している。
【0125】
(4)耐光性試験
上記で得た塗布膜(厚さ1.5μmの硬化膜)について、キセノンウェザーメーター(X75SC スガ試験機製)を用いてガラス面からUVが当たる方向に機械にセットし、60W/m(300〜400nm積算光量)、BPT63℃、50%RHで30h照射したものを、JIS−K5400−8.5(1990年)に準じて試験を行い、上記(1)の碁盤目試験(密着性評価)の基準同様に評価を行った。
【0126】
2、電気特性(イオンマイグレーション試験)
無アルカリガラスを用いて、イオンスパッタリング装置(オートファインコーターJFC−1600:JEOL製)によりL/S=10mm/1mmのAPC合金を蒸着し、簡易配線を備える金属配線付きガラス基板を製作した。
次に、得られたガラス基板を用いて、各調製例で得られた樹脂組成物をスピンコート法により塗布し加熱処理(80℃3分間)した後、端部1cmをマスクし、2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナ(TOPCON社製、商品名「TME−150RNS」)によって60mJ/cm(365nm照度換算)の露光量で露光を行い、アルカリ現像後、加熱処理(230℃30分間)を行い、金属配線付き絶縁基板を得た。
次に、得られた金属配線付き絶縁基板の、アルカリ現像してむき出した金属部分に、銀ペースト(藤倉化成製XA−910)を用いて150℃30分間硬化することで、マイグレーション装置との配線をつないだ。
この評価サンプルを用いて、80℃95%RHの恒温恒湿条件下にて5Vの電圧を一定時間かけ、抵抗値が低下する時間(h)を、イオンマイグレーション装置(MIG−87:IMV社製)を用いて測定した。
【0127】
〔樹脂溶液の合成〕
まず、樹脂溶液B(No.B−1〜B−12)の合成を行った。
【0128】
合成例1(B−1の合成)
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)456部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、滴下系1としてベンジルマレイミド(BzMI)30部、メタクリル酸(MAA)180部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)90部、PGME30部、パーブチルO(商品名、日本油脂社製)6部、滴下系2としてn−ドデシルメルカプタン(n−DM)9部、PGME71部をそれぞれ3時間かけて連続的に供給した。その後30分90℃を保持した後、温度を115℃まで昇温し、1.5時間重合を継続した。
次いで、この反応液にメタクリル酸グリシジル(GMA)99部、触媒としてトリエチルアミン(TEA)1.2部、重合禁止剤としてアンテージW−400(商品名、川口化学工業社製)0.6部を追加し、窒素及び酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら、110℃2時間、115℃4時間反応を継続することで、二重結合当量588g/当量の樹脂溶液B−1を得た。
得られた樹脂溶液B−1について、各種物性(重量平均分子量Mw、固形分濃度NV、固形分当たりの酸価AV、及び、分散度)を測定した。結果を表1に示す。
【0129】
合成例2(B−2の合成)
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)185部、PGME185部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、滴下系1としてBzMI25部、MAA143部、CHA83部、PGMEA13部、PGME13部、パーブチルOを5部、滴下系2としてn−DMを11部、PGMEA34部、PGME34部をそれぞれ3時間かけて連続的に供給した。その後30分90℃を保持した後、温度を115℃まで昇温し、1.5時間重合を継続した。次いで、この反応液にGMA124部、触媒としてTEA1.1部、重合禁止剤としてアンテージW−400を0.6部追加し、窒素及び酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら、110℃2時間、115℃7時間反応を継続することで、二重結合当量444g/当量の樹脂溶液B−2を得た。
得られた樹脂溶液B−2について、合成例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0130】
合成例3(B−3の合成)
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、PGMEA90部、PGME90部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、滴下系1として、MAA60部、CHA76部、パーブチルOを2.7部、滴下系2としてn−DMを5.7部、PGMEA37部、PGME37部をそれぞれ3時間かけて連続的に供給した。その後30分90℃を保持した後、温度を115℃まで昇温し、1.5時間重合を継続した。
次いで、この反応液にGMA45部、触媒としてTEA0.5部、重合禁止剤としてアンテージW−400を0.3部追加し、窒素及び酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら、110℃2時間、115℃4時間反応を継続することで、二重結合当量593g/当量の樹脂溶液B−3を得た。
得られた樹脂溶液B−3について、合成例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0131】
合成例4(B−4の合成)
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、PGMEA382部、PGME95部を仕込み、窒素雰囲気下にて樹脂組成物90℃に昇温した後、滴下系1としてBzMI12部、MAA74部、CHA170部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)45部、PGMEA10部、PGME2部、パーブチルOを6部、滴下系2としてn−DMを12部、PGMEA54部、PGME14部をそれぞれ3時間かけて連続的に供給した。その後30分90℃を保持した後、温度を115℃まで昇温し、1.5時間重合を継続した。
次いで、この反応液にGMA25部、触媒としてTEA1.0部、重合禁止剤としてアンテージW−400を0.5部追加し、窒素及び酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら、110℃2時間、115℃3時間反応を継続することで、二重結合当量1941g/当量の樹脂溶液B−4を得た。
得られた樹脂溶液B−4について、合成例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0132】
合成例5(B−5の合成)
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、PGME460部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、滴下系1としてBzMI30部、MAA249部、CHA21部、PGME30部、パーブチルOを6部、滴下系2としてn−DMを13部、PGME67部をそれぞれ3時間かけて連続的に供給した。その後30分90℃を保持した後、温度を115℃まで昇温し、1.5時間重合を継続した。
次いで、この反応液にPGME125部、GMA248部、触媒としてTEA1.6部、重合禁止剤としてアンテージW−400を0.8部追加し、窒素及び酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら、110℃2時間、115℃10時間反応を継続することで、二重結合当量323g/当量の樹脂溶液B−5を得た。
得られた樹脂溶液B−5について、合成例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0133】
合成例6(B−6の合成)
反応槽として冷却管付きのセパラブルフラスコに、PGMEA921部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、滴下系1としてジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート(MD)102部、MAA182部、ベンジルメタクリレート(BzMA)175部、メチルメタクリレート(MMA)51部、パーブチルOを10.2部、滴下系2としてn−DMを16.8部、PGMEA44部をそれぞれ150分かけて連続的に供給した。その後60分90℃を保持した後、温度を110℃まで昇温し、3時間重合を継続した。
次いで、この反応液にGMA210部、触媒としてTEA2.2部、重合禁止剤としてアンテージW−400を0.2部、PGMEA119部追加し、窒素及び酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら、110℃2時間、115℃4時間反応を継続することで、二重結合当量490g/当量の樹脂溶液B−6を得た。
得られた樹脂溶液B−6について、合成例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0134】
合成例7(B−7の合成)
反応槽として冷却管付きのセパラブルフラスコに、PGMEA921部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、滴下系1としてα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AMA)102部、MAA182部、BzMA175部、MMA51部、パーブチルOを10.2部、滴下系2としてn−DMを16.8部、PGMEA44部をそれぞれ150分かけて連続的に供給した。その後60分90℃を保持した後、温度を110℃まで昇温し、3時間重合を継続した。
次いで、この反応液にGMA210部、触媒としてTEA2.2部、重合禁止剤としてアンテージW−400を0.2部、PGMEA119部追加し、窒素及び酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら、110℃2時間、115℃4時間反応を継続することで、二重結合当量490g/当量の樹脂溶液B−7を得た。
得られた樹脂溶液B−7について、合成例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0135】
合成例8(B−8の合成)
反応槽としての冷却管付きセパラブルフラスコに、PGMEA154部、PGME38部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、滴下系1としてBzMI51部、MAA34部、CHA85部、PGMEA41部、PGME10部、パーブチルOを3.4部、滴下系2としてn−DMを7.3部、PGMEA58部、PGME15部をそれぞれ3時間かけて連続的に供給した。その後30分90℃を保持した後、温度を115℃まで昇温し、1.5時間重合を継続した。
次いで、この反応液にPGMEA38部、PGME10部、GMA28部、触媒としてTEA0.6部、重合禁止剤としてアンテージW−400を0.3部追加し、窒素及び酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら、110℃2時間、115℃7時間反応を継続することで、二重結合当量1045g/当量の樹脂溶液B−8を得た。
得られた樹脂溶液B−8について、合成例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0136】
合成例9〜12(B−9〜B−12の合成)
ベースポリマーを構成するモノマーの種類及びその配合割合、並びに、付加させるGMAの配合割合を、表1のように変更したこと、また溶媒をPGMEAのみに変更したこと以外は、合成例1とほぼ同様の手順で樹脂溶液B−9〜B−12を各々得た。
得られた樹脂溶液について合成例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0137】
表1に、樹脂溶液B−1〜B−12の詳細を示す。
なお、表1中のベースポリマーを構成する各モノマーの数値は、モノマー総量を100質量%としたときの各モノマーの配合割合(質量%)を記載した。また、当該ベースポリマーに付加するGMAの数値は、酸基及び重合性二重結合を有する単量体(合成例1〜10では、MAAが該当する。)のカルボン酸分に、付加させたGMAをMAA質量換算した質量%として記載しており、「GMAのMAA質量換算での配合割合(質量%)={GMAのモル量(mol)/MAAのモル量(mol)}×MAA配合割合(質量%)」により求められる。例えば、合成例1(B−1)では、ベースポリマー(100質量%)中、MAAは60質量%であり、この60質量%(2091mmol)のMAAに、696mmolのGMAを付加させたことで、当該GMAの配合割合を「20」と規定した。
【0138】
【表1】
【0139】
表1における略称は以下の通りである。
BzMI:ベンジルマレイミド
CHMI:N−シクロヘキシルマレイミド
MD:ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート
AMA:α−アリルオキシメチルアクリレート
CHA:シクロヘキシルアクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
STMA:ステアリルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
AV:酸価
Mw:最終的に得られた重合体の重量平均分子量
NV:固形分濃度
【0140】
〔樹脂組成物の調製及び塗膜の評価試験〕

調製例1(樹脂組成物b−1)
固形分換算で、樹脂溶液B−9を25部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)35部、イソボルニルアクリレート(IB−XA)10部、SMA17352を20部、カップリング剤としてKBM503を10部、光重合開始剤としてIRGACURE907を20部、フッ素添加剤としてF−554を0.2部、重合禁止剤としてアンテージW−400を0.5部、更に希釈溶媒(PGMEA)を固形分濃度25%となるように加え、攪拌することで樹脂組成物b−1を得た。
得られた樹脂組成物b−1について、上述した評価方法に従って、塗布膜(硬化膜)の物性を評価した。結果を表2に示す。
【0141】
調製例2〜6
表2に示す配合比率で当該表に示す原料を用い、調製例1と同様の操作にて各樹脂組成物b−2〜b−6を各々得た。得られた樹脂組成物の各々について、上述した評価方法に従って塗布膜の物性を評価した。結果を表2に示す。
【0142】
【表2】
【0143】
表2における略称は以下の通りである。表2中の各原料の配合量は、固形分量である。なお、表2では希釈溶媒(PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を用いたことを省略している。
SMA17352:スチレン/無水マレイン酸共重合体(GPCによるMw=7000、スチレン/無水マレイン酸モル比=1/1)(商品名、川原油化社製)
SMA2625:スチレン/無水マレイン酸共重合体(GPCによるMw=9000、スチレン/無水マレイン酸モル比=2/1)(商品名、川原油化社製)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名、共栄社化学社製)
A−9300:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(商品名、新中村化学工業社製)
IB−XA:イソボルニルアクリレート(商品名「ライトアクリレートIB−XA」、共栄社化学社製
NBAC−ST:酢酸ブチル分散シリカゾル(商品名、日産化学工業社製)
KBM503:2−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名、信越シリコーン社製)
IRGACURE907:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
F−554:含フッ素基・親油性基含有オリゴマー(ノニオン性、商品名「メガファックF−554」、DIC社製)
アンテージW−400:フェノール系酸化防止剤(商品名、川口化学工業社製)
【0144】
表2より、以下のことが確認された。
調製例1〜3で得た樹脂組成物b−1〜b−3は、いずれも、分散度(Mw/Mn)が2.0〜3.5であるアルカリ可溶性樹脂と、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物とを含むのに対し、調製例4〜5で得た樹脂組成物b−4〜b−5は、分散度が当該範囲外となるアルカリ可溶性樹脂を使用している。このような相違の下、両者から得た塗布膜の物性結果を対比すると、樹脂組成物b−1〜b−3から得た塗布膜では、樹脂組成物b−4〜b−5から得た塗布膜に比較して、電気特性の評価指標となる抵抗値低下時間が著しく長いことが確認された。また、樹脂組成物b−1〜b−3から得た塗布膜は、透明性や密着性、表面硬度の点でも充分なレベルにあることが分かった。したがって、本発明の構成からなる硬化性樹脂組成物は、極めて電気特性に優れ、充分な密着性、表面硬度及び透明性を有する硬化物を与えることができることが確認された。また、樹脂組成物b−1〜b−3から得た塗布膜と、調製例6の樹脂組成物b−6から得た塗布膜との比較によれば、電気特性の観点からは、樹脂組成物中に無機微粒子をできるだけ含まないこと(上述したように、好ましくは、樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。)が好適であると分かった。また、表面硬度の点では無機微粒子が少量含まれることで良好となり、密着性も維持できていた。
なお、上記では示していないが、重合性単量体として単官能又は2官能の(メタ)アクリレート化合物のみを用いた場合には、他の条件が同じであっても、塗布膜(硬化膜)の表面硬度は、樹脂組成物b−1〜b−3、b−6から得た塗布膜に比べて、充分とはならかった。