特許第6771097号(P6771097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771097
(24)【登録日】2020年9月30日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】アビバクタムの簡便な調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/08 20060101AFI20201012BHJP
   C07B 57/00 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 31/439 20060101ALN20201012BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   C07D471/08
   C07B57/00 350
   !A61K31/439
   !A61P31/04
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-513997(P2019-513997)
(86)(22)【出願日】2018年3月6日
(65)【公表番号】特表2020-506160(P2020-506160A)
(43)【公表日】2020年2月27日
(86)【国際出願番号】CN2018078073
(87)【国際公開番号】WO2019127903
(87)【国際公開日】20190704
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】201711418424.X
(32)【優先日】2017年12月25日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519016251
【氏名又は名称】新発薬業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】戚 聿新
(72)【発明者】
【氏名】王 保林
(72)【発明者】
【氏名】徐 欣
(72)【発明者】
【氏名】鞠 立柱
(72)【発明者】
【氏名】李 新発
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第107417686(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106866668(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106831772(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106749242(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106699756(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106565712(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105801579(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105753867(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105061425(CN,A)
【文献】 特表2016−510062(JP,A)
【文献】 特表2014−517027(JP,A)
【文献】 特表2013−507346(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086241(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0165533(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、トルエンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである溶媒aの中で、式II化合物を、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせであるアルカリaの触媒作用にてО−保護基を有するヒドロキシルアミン塩酸塩と縮合反応させることにより式III化合物を調製するという工程(1)と、
【化1】
(そのうち、式II化合物と式III化合物に示されるRは同じであり、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、n−ブチル、イソブチル、ベンジルからなる群より選ばれた1種であり、式III化合物に示されるPGはメトキシメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリルからなる群より選ばれた1種である。)
濃硫酸、酢酸エチル、シュウ酸水和物の存在にて、式III化合物を還元剤により還元させ、キラル分割することにより式IV化合物を得るという工程(2)と、
【化2】
(そのうち、式IV化合物に示されるR、PGは式III化合物に示されるR、PGと同じ意味を有する。)
水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、トルエンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである溶媒bの中で式IV化合物を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムからなる群より選ばれた1種又は2種の組み合わせであるアルカリbの存在にて加水分解させることにより式V化合物を得るという工程(3)と、
【化3】
(そのうち、式V化合物に示されるPGは式IV化合物に示されるPGと同じ意味を有する。)
ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メトキシシクロペンタン、トルエンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである溶媒c、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせであるアルカリc及び触媒の存在にて、式V化合物をホスゲン、トリホスゲン又はジホスゲンと環状尿素化させ、酸塩化物とした後、アンモニアとアミド化させることにより式VI化合物を得るという工程(4)と、
【化4】
(そのうち、式VI化合物に示されるPGは式V化合物に示されるPGと同じ意味を有する。)
水、イソプロパノール、イソブタノール、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、イソブチルメチルケトンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである溶媒dの中で、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンからなる群より選ばれた1種であるアルカリdの触媒作用にて、保護基を脱する試薬により式VI化合物における保護基を脱し、硫酸エステル化し、テトラブチルアンモニウム化により塩を生成して式VII化合物を得るという工程(5)と、
【化5】
化合物VIIにイオン交換を行うことによりアビバクタムを調製して得るという工程(6)とを含む
ことを特徴とするアビバクタムの調製方法。
【請求項2】
前記工程(1)において、前記О−保護基を有するヒドロキシルアミン塩酸塩はメトキシメチルヒドロキシルアミン塩酸塩、ベンジルオキシメチルヒドロキシルアミン塩酸塩、t−ブチルジメチルシリルヒドロキシルアミン塩酸塩、t−ブチルジフェニルシリルヒドロキシルアミン塩酸塩、トリエチルシリルヒドロキシルアミン塩酸塩又はトリイソプロピルシリルヒドロキシルアミン塩酸塩であり、前記О−保護基を有するヒドロキシルアミン塩酸塩と式II化合物とのモル比が0.9〜1.5:1であるという条件(A)と、
前記溶媒aと式II化合物との質量比が3〜15:1であるという条件(B)と、
前記アルカリaと式II化合物との質量比が0.5〜1.5:1であるという条件(C)とを含む
請求項1に記載のアビバクタムの調製方法。
【請求項3】
工程(1)における前記縮合反応の温度が30〜80℃である
請求項1に記載のアビバクタムの調製方法。
【請求項4】
工程(2)における前記濃硫酸は質量分率が95〜98%の硫酸であり、前記濃硫酸と式III化合物とのモル比が(3.0〜6.0):1であり、前記濃硫酸は質量分率が98%の硫酸である
請求項1に記載のアビバクタムの調製方法。
【請求項5】
工程(2)において、前記酢酸エチルと式III化合物との質量比が5〜20:1であるという条件(A)と、
前記還元剤は水素化ホウ素ナトリウム、トリシアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、トリプロピオニルオキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、トリシアノ水素化ホウ素カリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素カリウム又はトリプロピオニルオキシ水素化ホウ素カリウムであり、前記還元剤と式III化合物とのモル比が2.0〜4.0:1であるという条件(B)と、
前記還元反応の温度が(−30)〜(−10)℃であるという条件(C)とを含む
請求項1に記載のアビバクタムの調製方法。
【請求項6】
工程(3)において、前記溶媒bと式IV化合物との質量比が3〜12:1であるという条件(A)と、
前記アルカリbと式IV化合物とのモル比が1.5〜4.0:1であるという条件(B)と、
前記加水分解する温度が10〜100℃であるという条件(C)とを含む
請求項1に記載のアビバクタムの調製方法。
【請求項7】
工程(4)において、前記溶媒cと式V化合物との質量比が4〜30:1であるという条件(A)と、
前記アルカリcと式V化合物とのモル比が3.0〜8.0:1であるという条件(B)と、
前記触媒はN,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせであり、前記触媒の質量は式V化合物の質量の0.1〜5.0%であるという条件(C)と、
前記トリホスゲン、ジホスゲン又はホスゲンと式V化合物とのモル比が0.6〜5.0:1であり、前記ジホスゲンと式V化合物とのモル比が1.0〜2.5:1であるという条件(D)と、
前記アンモニアはアンモニアガス、アンモニアガスのアルコール溶液、アンモニアガスのテトラヒドロフラン溶液、アンモニアガスのアセトニトリル溶液、アンモニア水からなる群より選ばれた1種であり、前記アンモニアガスのアルコール溶液、アンモニアガスのテトラヒドロフラン溶液、アンモニアガスのアセトニトリル溶液又はアンモニア水におけるアンモニアガスの質量濃度が5〜20%であるという条件(E)と、
前記アンモニアと式V化合物とのモル比が1.0〜6.0:1であるという条件(F)と、
前記環状尿素化、塩化アシル化及びアミド化の温度はいずれも−20〜60℃であるという条件(G)とを含む
請求項1に記載のアビバクタムの調製方法。
【請求項8】
工程(5)において、前記溶媒dと式VI化合物との質量比が4〜20:1であるという条件(A)と、
前記アルカリdと式VI化合物とのモル比が0.2〜0.7:1であるという条件(B)と、
式VI化合物におけるPGはシリル保護基ではない場合、保護基を脱する試薬が三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄−トリエチルアミン錯体、三酸化硫黄−ピリジン錯体からなる群より選ばれた1種であり、式VI化合物におけるPGはシリルを含む保護基である場合、保護基を脱する試薬がフルオロテトラブチルアンモニウムであり、前記保護基を脱する試薬と式VI化合物とのモル比が1.0〜3.0:1であるという条件(C)と、
前記硫酸エステル化するための試薬が三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄−トリエチルアミン錯体、三酸化硫黄−ピリジン錯体からなる群より選ばれた1種であり、前記硫酸エステル化するための試薬と式VI化合物とのモル比が1.0〜3.0:1であるという条件(D)と、
前記テトラブチルアンモニウム化により塩を生成するための試薬はテトラブチル酢酸アンモニウム又はフルオロテトラブチルアンモニウムであり、前記テトラブチルアンモニウム化により塩を生成するための試薬と式VI化合物とのモル比が0.5〜2:1であるという条件(E)とを含む
請求項1に記載のアビバクタムの調製方法。
【請求項9】
工程(5)における前記保護基を脱することと、硫酸エステル化することとテトラブチルアンモニウム化により塩を生成することとは「ワンポット方法」により行われ、反応温度はいずれも0〜60℃である
請求項1に記載のアビバクタムの調製方法。
【請求項10】
工程(6)において、前記イオン交換を行うための試薬は2−エチルヘキサン酸ナトリウムであり、前記イオン交換を行うための試薬と式VII化合物とのモル比が1.5〜3.0:1であるという条件(A)と、
前記イオン交換の反応温度が0〜50℃であるという条件(B)とを含む
請求項1に記載のアビバクタムの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アビバクタムの簡便な調製方法に関し、医薬生化学の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
アビバクタム(I)はジアザビシクロオクタノン化合物の非β−ラクタム系抑制剤に属する。アビバクタムはA型(ESBLとKPCを含む)とC型のβ−ラクタマーゼを抑制することができる。アビバクタムは各種のセファロスポリンとカルバペネム系抗生物質とともに用いる場合、広域スペクトル抗菌活性を有し、特に、基質特異性拡張型β−ラクタマーゼを含む大腸菌とクレブス肺炎桿菌、過剰なAmpC酵素を含む大腸菌及びAmpCと基質特異性拡張型β−ラクタマーゼを同時に含む大腸菌に対する活性が顕著である。アビバクタム(I)はCAS番号が1192491−61−4であり、化学名が[(1R,2S,5R)−2−(アミノカルボニル)−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]硫酸ナトリウムであり、構造式が下記の式Iのように示される。
【0003】
【化1】
【0004】
既存のアビバクタムの合成技術は主に二種の中間体に関連し、即ち上記式VIIで示される中間体の(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド及び上記式VIIIで示される中間体の5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩である。
【0005】
先行技術において、特許文献1〜7には、いずれも(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VII)を中間体としてアビバクタム(I)を調製することが提案されている。化合物VIIはそれぞれの還元剤(例えば水素ガス、トリエチルシラン、ギ酸ナトリウム、ヒドラジン水和物)によりパラジウム−カーボンの触媒作用にてベンジルを脱し、三酸化硫黄錯化合物により硫酸エステル化し、アンモニウム塩化し、イオン交換によりアビバクタム(I)を調製し、反応経路1に示される。
【0006】
【化2】
反応経路1
【0007】
当該方法では、水素化分解によりベンジルを脱することにより生じる中間生成物である(2S,5R)−6−ヒドロキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミドは安定性が劣り、触媒被毒が生じやすく、使用するパラジウム−カーボン触媒の量が大きく(基質の質量の10%)、コストダウンには有利ではなく、工業的操作性が低い。
【0008】
一、中間体である(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VII)の合成
【0009】
文献で提案されている中間体である(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VII)に関する調製方法はばらつきがあるが、アミド化が先で環状尿素化が後とする順序と環状尿素化が先でアミド化が後とする順序によって主に二種の反応経路に分けられ、反応経路2に示される。
【0010】
【化3】
反応経路2
【0011】
そのうち、特許文献1〜2にはアミド化が先で環状尿素化が後とする反応経路を用いることが開示されており、5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩(VIII)を原料とし、アンモニアガスのメタノール溶液又はアンモニア水のアルコール溶液によりアミド化させ、濾過してシュウ酸アンモニウムを除去し、メタノールでシュウ酸アンモニウム濾過ケークを洗浄し、得られたメタノール溶液を濃縮し、トルエンで生成物を抽出し、好適な溶媒で再結晶し、収率が68〜99%である(2S,5R)−5−ベンジルオキシアミノピペリジン−2−ホルムアミドを得る。得られた(2S,5R)−5−ベンジルオキシアミノピペリジン−2−ホルムアミドのピペリジン環のアミノを9−フルオレニルクロロギ酸メチル(FMОC−Cl)により保護し、カルボニルジイミダゾールを用いてベンジルオキシアミノとカルボニル化させ、ジエチルアミンでピペリジン環の保護基を脱し、環状尿素化して収率が90%で且つ総収率が61.2〜89.1%である(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミドを得る。そのうち、アミド化反応後の処理が煩雑であり、環状尿素化に用いられる保護剤である9−フルオレニルクロロギ酸メチルが高価なだけでなく、9−フルオレニルクロロギ酸メチルとカルボニルジイミダゾールがカルボニル基を一つのみ供給するため、反応する原子は経済性が劣り、環境への保護にもコストダウンにも有利ではない。また、(2S,5R)−5−ベンジルオキシアミノピペリジン−2−ホルムアミドを利用し、ピペリジン環のアミノへの保護なしにトリホスゲン、カルボニルジイミダゾールと直接に環状尿素化するのは収率が低い(50〜56%)ため、産業上の価値がない。
【0012】
また、特許文献1、6〜11には、いずれも環状尿素化が先でアミド化が後とする方法が開示されており、5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩(VIII)を原料とし、トリホスゲン−有機アルカリ、カルボニルジイミダゾール又は他のカルボニル化試薬により環状尿素化させ、水酸化リチウム水溶液などのアルカリ性条件下にてエステル基への加水分解により(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ギ酸を得、トリメチル塩化アセチル又は他の試薬によりカルボキシル基を酸無水物に活性化させ、アンモニア水によりアミド化させて総収率が34.5〜65.5%である(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VII)を得る。環状尿素化されて得られた(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ギ酸エステルは活性が低く、アンモニアガスのメタノール溶液を直接に用いてアミド化することが不可能であるため、エステル基をカルボキシル基に加水分解してからカルボキシル基を酸無水物に活性化させない限り、その後有効にアミド化することができない。この操作手順が煩雑であり、原子は経済性が劣り、環境への保護にも産業上の生産にも有利ではない。
【0013】
二、中間体である5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩(VIII)の合成
特許文献12〜13には5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩(VIII)の合成が開示されおり、反応経路3に示される。その発明は、N(窒素原子)が保護されたL−ピログルタミン酸エステルを出発原料とし、トリメチルスルフォキソニウム・アイオダイドにより開環して炭素鎖を形成し、ベンジルオキシアミンによりカルボニル基をイミンに転換し、酸性化条件下にて保護基を脱し、アルカリ性条件下にて閉環し、最後に還元剤により還元し、キラル分割により製品である5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩を得る。当該方法に用いられる原料であるN(窒素原子)が保護されたL−ピログルタミン酸エステル、トリメチルスルフォキソニウム・アイオダイド及びメチルスルホン酸は価格が高く、ジメチルスルホキシドが溶媒として用いられ、後処理において大量な廃水が生じるため、環境に優しくないだけでなく、総収率も比較的低い(59%)。
【0014】
【化4】
反応経路3
【0015】
特許文献14には5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステル(VIIIフリー体)の別な合成方法(反応経路4を参照)が開示され、その発明は同様にN(窒素原子)が保護されたL−ピログルタミン酸エステルを出発原料とし、トリメチルスルフォキソニウム・アイオダイドにより開環して炭素鎖を形成するものである。異なるのは特許文献14においてまずイリジウムの触媒により閉環し、カルボニル基をキラル還元させることによりS−配置のアルコールを得、次にN−ベンジルオキシ−2−ニトロフェニルスルホンアミドによりSN2配置反転が実現するとともにヒドロキシがアミノに転換される;まず水酸化リチウムとチオグリコール酸の作用下にて2−ニトロフェニルスルホンクロリド基を脱し、次にトリフルオロ酢酸によりN(窒素原子)を保護する保護基を脱して製品VIIIフリー体を得ることである。当該方法は操作が煩雑で且つ高価なイリジウムの触媒と特殊な臭いにおいを有するチオグリコール酸が用いられるものであるため、廃水の量が大きく、総収率が15%のみである。
【0016】
【化5】
反応経路4
【0017】
以上より、アビバクタムを合成するための中間体である5R−ベンジルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩(VIII)、中間体である(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VII)は合成経路が長く、出発原料の価格が高く、高価なパラジウム−カーボン触媒を大量に使用する必要があり、「三廃」の排出量が大きく、原子の利用率が低く、環境に優しくなく、操作が煩雑で工業的な製造に有利ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】CN103649051A
【特許文献2】CN105294690A
【特許文献3】CN106866668A
【特許文献4】WО2012086241
【特許文献5】US8148540
【特許文献6】US9284273
【特許文献7】US9567335
【特許文献8】CN102834395A
【特許文献9】CN103328476A
【特許文献10】CN106279163A
【特許文献11】CN106565712A
【特許文献12】米国特許出願US2010197928
【特許文献13】米国特許出願US2013012712
【特許文献14】米国特許出願US20140275001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、前記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、アビバクタムに関する簡便な調製方法を提供する。本発明は調製工程が簡単であり、経路が簡便であり、取り扱いやすく、出発原料の価格が低く、高価なパラジウム−カーボン触媒の使用が不要であるため、コストが低い。また、「三廃」の排出量が少なく、原子の利用率が高く、経済的で環境に優しく、且つ各工程の収率が高く、アビバクタムの工業的生産に有利である。
【0020】
本明細書で用いられる用語「式II化合物」は、ピペリジン−5−オン−2S−ギ酸エステルを指す;
本明細書で用いられる用語「式III化合物」は、5−置換化オキシイミノピペリジン−2S−ギ酸エステルを指し、構造式において曲線で示されるものはキラル構造の二種を代表する混合物である;
本明細書で用いられる用語「式IV化合物」は、5R−置換化オキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩を指す;
本明細書で用いられる用語「式V化合物」は、5R−置換化オキシアミノピペリジン−2S−ギ酸を指す;
本明細書で用いられる用語「式VI化合物」は、(2S,5R)−6−置換化オキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミドを指す;
本明細書で用いられる用語「式VII化合物」は、{[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニルテトラn−ブチルアンモニウム塩を指し、その構造式に示される「−Bu」はn−ブチルを指す。
【0021】
本明細書で用いられる化合物の番号は構造式の番号と完全に一致しており、いずれも同じ化合物を指す。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願に係る発明は以下のとおりである。
溶媒aの中で式II化合物をアルカリaの触媒作用にてО−保護基を有するヒドロキシルアミン塩酸塩と縮合反応させることにより式III化合物を調製するという工程(1)と、
【0023】
【化6】
【0024】
(そのうち、式II化合物と式III化合物に示されるRは同じであり、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、n−ブチル、イソブチル、ベンジルからなる群より選ばれた1種であり、式III化合物に示されるPGはメトキシメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリルからなる群より選ばれた1種である。)
【0025】
濃硫酸、酢酸エチルの存在にて、式III化合物を還元剤により還元させ、キラル分割することにより式IV化合物を得るという工程(2)と、
【0026】
【化7】
【0027】
(そのうち、式IV化合物に示されるR、PGは式III化合物に示されるR、PGと同じ意味を有する。)
【0028】
溶媒bの中で式IV化合物をアルカリbの存在にて加水分解させることにより式V化合物を得るという工程(3)と、
【0029】
【化8】
【0030】
(そのうち、式V化合物に示されるPGは式IV化合物に示されるPGと同じ意味を有する。)
【0031】
溶媒c、アルカリc及び触媒の存在にて、式V化合物をホスゲン、トリホスゲン又はジホスゲンと環状尿素化させ、塩化アシル化させた後、アンモニアとアミド化させることにより式VI化合物を得るという工程(4)と、
【0032】
【化9】
【0033】
(そのうち、式VI化合物に示されるPGは式V化合物に示されるPGと同じ意味を有する。)
【0034】
溶媒dの中で、アルカリdの触媒作用にて、保護基を脱する試薬により式VI化合物における保護基を脱し、硫酸エステル化し、テトラブチルアンモニウム化により塩を生成して式VII化合物を得るという工程(5)と、
【0035】
【化10】
【0036】
化合物VIIにイオン交換を行うことによりアビバクタムを調製して得るという工程(6)とを含むアビバクタムの調製方法。
【0037】
本発明において、好ましくは、工程(1)における前記О−保護基を有するヒドロキシルアミン塩酸塩はメトキシメチルヒドロキシルアミン塩酸塩、ベンジルオキシメチルヒドロキシルアミン塩酸塩、t−ブチルジメチルシリルヒドロキシルアミン塩酸塩、t−ブチルジフェニルシリルヒドロキシルアミン塩酸塩、トリエチルシリルヒドロキシルアミン塩酸塩又はトリイソプロピルシリルヒドロキシルアミン塩酸塩である;前記О−保護基を有するヒドロキシルアミン塩酸塩と式II化合物とのモル比が0.9〜1.5:1である。
【0038】
本発明において、好ましくは、工程(1)における前記溶媒aはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、トルエンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒aと式II化合物との質量比が3〜15:1である;好ましくは、前記溶媒aと式II化合物との質量比が6〜10:1である。
【0039】
本発明において、好ましくは、工程(1)における前記アルカリaは無機アルカリ又は有機アルカリである;好ましくは、前記無機アルカリは炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせであり、前記有機アルカリはトリエチルアミン、トリn−ブチルアミンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記アルカリaと式II化合物との質量比が0.5〜1.5:1である。
【0040】
本発明において、好ましくは、工程(1)における前記縮合反応の温度が30〜80℃である;好ましくは、前記縮合反応の温度が30〜60℃である。反応時間が2〜5時間である。
【0041】
本発明において、好ましくは、工程(2)における前記濃硫酸は質量分率が95〜98%の硫酸であり、前記濃硫酸と式III化合物とのモル比が(3.0〜6.0):1である;好ましくは、前記濃硫酸は質量分率が98%の硫酸である。本発明において、還元の選択性を高めるように濃硫酸を用いて基質と結合して塩を生成する。
【0042】
本発明において、好ましくは、工程(2)における酢酸エチルと式III化合物との質量比が5〜20:1である;好ましくは、酢酸エチルと式III化合物との質量比が10〜14:1である。本発明では、後処理する際に水相との層化を行うのに都合がよいために酢酸エチルを用い、且つ得られた生成物の式IV化合物は酢酸エチルでの溶解度が比較的大きい。
【0043】
本発明において、好ましくは、工程(2)における還元剤は水素化ホウ素ナトリウム、トリシアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、トリプロピオニルオキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、トリシアノ水素化ホウ素カリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素カリウム又はトリプロピオニルオキシ水素化ホウ素カリウムである;前記還元剤と式III化合物とのモル比が2.0〜4.0:1である。
【0044】
本発明において、好ましくは、工程(2)における前記還元反応の温度が(−30)〜(−10)℃である。反応時間が2〜8時間である。
【0045】
本発明において、工程(2)における前記キラル分割する方法は先行技術に従って行えばよいである。
【0046】
本発明において、好ましくは、工程(3)における前記溶媒bは水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、トルエンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒bと式IV化合物との質量比が3〜12:1である;前記溶媒bと式IV化合物との質量比が3〜6:1である。
【0047】
本発明において、好ましくは、工程(3)における前記アルカリbは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムからなる群より選ばれた1種又は2種の組み合わせである;前記アルカリbと式IV化合物とのモル比が1.5〜4.0:1である。
【0048】
本発明において、好ましくは、工程(3)における前記加水分解する温度が10〜100℃である;好ましくは、前記加水分解する温度が20〜50℃である。反応時間が2〜7時間である。
【0049】
本発明において、好ましくは、工程(4)における前記溶媒cはジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メトキシシクロペンタン、トルエンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒cと式V化合物との質量比が4〜30:1である;好ましくは、前記溶媒cと式V化合物との質量比が18〜30:1である。
【0050】
本発明において、好ましくは、工程(4)における前記アルカリcはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記アルカリcと式V化合物とのモル比が3.0〜8.0:1である。
【0051】
本発明において、好ましくは、工程(4)における前記触媒はN,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記触媒の質量は式V化合物の質量の0.1〜5.0%である。
【0052】
本発明において、好ましくは、工程(4)における前記トリホスゲン、ジホスゲン又はホスゲンと式V化合物とのモル比が0.6〜5.0:1である;好ましくは、前記トリホスゲンと式V化合物とのモル比が1.2〜2.0:1であり、前記ジホスゲンと式V化合物とのモル比が1.0〜2.5:1であり、前記ホスゲンと式V化合物とのモル比が2.0〜4.0:1である。
【0053】
本発明において、好ましくは、工程(4)における前記アンモニアはアンモニアガス、アンモニアガスのアルコール溶液、アンモニアガスのテトラヒドロフラン溶液、アンモニアガスのアセトニトリル溶液、アンモニア水からなる群より選ばれた1種である;前記アンモニアガスのアルコール溶液、アンモニアガスのテトラヒドロフラン溶液、アンモニアガスのアセトニトリル溶液又はアンモニア水におけるアンモニアガスの質量濃度が5〜20%である。
【0054】
本発明において、好ましくは、工程(4)における前記アンモニアと式V化合物とのモル比が1.0〜6.0:1である。
【0055】
本発明において、好ましくは、工程(4)における前記環状尿素化、塩化アシル化及びアミド化の温度はいずれも−20〜60℃である;好ましくは、前記環状尿素化、塩化アシル化及びアミド化の温度はいずれも10〜30℃である。反応時間はいずれも1〜8時間である。
【0056】
本発明において、好ましくは、工程(5)における前記溶媒dは水、イソプロパノール、イソブタノール、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、イソブチルメチルケトンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の組み合わせである;前記溶媒dと式VI化合物との質量比が4〜20:1である;好ましくは、前記溶媒dと式VI化合物との質量比が4〜8:1である。
【0057】
本発明において、好ましくは、工程(5)における前記アルカリdはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンからなる群より選ばれた1種である;前記アルカリdと式VI化合物とのモル比が0.2〜0.7:1である。
【0058】
本発明において、好ましくは、工程(5)において、式VI化合物におけるPGはシリル保護基ではない場合、保護基を脱する試薬が三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄−トリエチルアミン錯体、三酸化硫黄−ピリジン錯体からなる群より選ばれた1種である;式VI化合物におけるPGはシリルを含む保護基である場合、保護基を脱する試薬がフルオロテトラブチルアンモニウムである;前記保護基を脱する試薬と式VI化合物とのモル比が1.0〜3.0:1である。
【0059】
本発明において、好ましくは、工程(5)における前記硫酸エステル化するための試薬が三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体、三酸化硫黄−トリエチルアミン錯体、三酸化硫黄−ピリジン錯体からなる群より選ばれた1種である;前記硫酸エステル化するための試薬と式VI化合物とのモル比が1.0〜3.0:1である。
【0060】
本発明において、好ましくは、工程(5)における前記テトラブチルアンモニウム化により塩を生成するための試薬はテトラブチル酢酸アンモニウム又はフルオロテトラブチルアンモニウムである;前記テトラブチルアンモニウム化により塩を生成するための試薬と式VI化合物とのモル比が0.5〜2:1である。
【0061】
本発明において、好ましくは、工程(5)における前記保護基を脱することと、硫酸エステル化することとテトラブチルアンモニウム化により塩を生成することとは「ワンポット方法(one-pot method)」により行われ、反応温度はいずれも0〜60℃である;好ましくは、前記反応温度はいずれも10〜30℃である。反応時間はいずれも1〜8時間である。
【0062】
本発明において、好ましくは、工程(6)において、前記イオン交換を行うための試薬は2−エチルヘキサン酸ナトリウムであり、前記イオン交換を行うための試薬と式VII化合物とのモル比が1.5〜3.0:1である。
【0063】
本発明において、好ましくは、工程(6)における前記イオン交換の反応温度が0〜50℃である;好ましくは、前記イオン交換の反応温度が10〜40℃である。反応時間が1〜5時間である。
【0064】
本発明において、工程(6)における前記イオン交換の方法は先行技術に従って行えばよいである。
【0065】
本発明において、ピペリジン−5−オン−2S−ギ酸エステルIIを原料とし、アルカリ性試薬の存在にてО−保護基を有するヒドロキシルアミン塩酸塩と縮合反応させることにより式III化合物の5−置換化オキシイミノピペリジン−2S−ギ酸エステルを調製し、当該式III化合物を還元し、キラル分割することにより式IV化合物の5R−置換化オキシアミノピペリジン−2S−ギ酸エステルシュウ酸塩を得、式IV化合物をアルカリ性の条件にて加水分解することにより式V化合物の5R−置換化オキシアミノピペリジン−2S−ギ酸を得、式V化合物を、溶媒、アルカリ及び触媒の存在にて「ワンポット方法(one-pot method)」によりホスゲン、トリホスゲン又はジホスゲンと環状尿素化させ、塩化アシル化させ、アミド化させることにより式VI化合物の(2S,5R)−6−置換化オキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミドを得、式VI化合物における保護基を脱し、硫酸エステル化させ、テトラブチルアンモニウム化させて塩を生成することにより式VII化合物の{[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニルテトラn−ブチルアンモニウム塩を得、式VII化合物にイオン交換を行うことによりアビバクタム(I)を調製して得、反応経路は以下のように示される。
【0066】
【化11】
反応経路5
【発明の効果】
【0067】
1、本発明は、О−保護基がベンジルではないヒドロキシルアミン塩酸塩を用い、酸性化の条件にて得られた中間体の(2S,5R)−6−置換化オキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミドに関する脱保護、硫酸エステル化及びテトラブチルアンモニウム塩化による塩生成は「ワンポット方法(one-pot method)」により完成するものであるため、工程が簡単で且つ保護基を脱するための試薬と硫酸エステル化するための試薬は同種であってもよく、さらにコストダウンが実現できる。また、本発明は、ベンジルではない保護基を脱する簡便な方法を用いるものであるため、高価なトリメチルスルフォキソニウム・アイオダイド、9−フルオレニルクロロギ酸メチル(FMОC−Cl)、カルボニルジイミダゾール及び10%パラジウム−カーボン触媒などの原料を用いる必要がなく、重金属の残存を減少し、製品の質を高め、さらにコストダウンが実現できる。
【0068】
2、本発明に係る調製方法の工程(2)において特定濃度を有する濃硫酸を選択して用い、基質との結合により塩を形成するため、還元反応の選択性を高めるのに都合がよい。また、本発明に係る調製方法の工程(4)において設計された「ワンポット方法(one-pot method)」(つまり環状尿素化反応、塩化アシル化反応及びアミド化反応は「ワンポット方法(one-pot method)」により完成する)を利用するため、工程が簡単で且つ伝統的な方法におけるアミド化後の処理の煩雑性、環状尿素化するための保護試薬の価格が高いこと、及び反応する原子の経済性が劣ることなどの問題点を回避できる。
【0069】
3、アビバクタムに関する伝統的な調製方法に比べて、本発明に係るアビバクタムの調製方法は調製工程が簡単であり、経路が簡便であり、取り扱いやすく、出発原料の価格が低く、高価なパラジウム−カーボン触媒の使用が不要であるため、コストが低い。また、「三廃」の排出量が少なく、原子の利用率が高く、経済的で環境に優しく、且つ各工程の収率が高く、アビバクタムの工業的生産に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】実施例1の工程(2)における得られた5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸メチルシュウ酸塩(IV)のH−NMRスペクトルチャート
図2】実施例1の工程(3)における得られた5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸(V)のH−NMRスペクトルチャート
図3】実施例1の工程(4)における得られた(2S,5R)−6−メトキシメチルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI)のH−NMRスペクトルチャート
図4】実施例1の工程(5)における得られた{[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニルテトラn−ブチルアンモニウム塩(VII)のH−NMRスペクトルチャート
図5】実施例1の工程(6)における得られたアビバクタム(I)のH−NMRスペクトルチャート
図6】実施例1の工程(6)における得られたアビバクタム(I)の13C−NMRスペクトルチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
以下、実施例に基づいて本発明を詳しく説明するが、これらの実施例に限定されていない。
【0072】
特に断らない限り、実施例で記載される「%」はいずれも質量百分率を意味するものとする。
【0073】
用いられる原料であるピペリジン−5−オン−2S−ギ酸エステル、メトキシメチルヒドロキシルアミン塩酸塩及びt−ブチルジメチルシリルヒドロキシルアミン塩酸塩は済南勤思医薬科技有限公司から購入できる。
【0074】
ガスクロマトグラフ又は液体クロマトグラフにより反応過程と製品純度をモニターし、キラルカラム(ES−OVS、150mm×4.6mm、アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies))が配置される液体クロマトグラフにより光学純度(面積比%)を検測し、収率と純度のe.e%値を算出する。
【0075】
<実施例1:アビバクタム(I)の調製>
工程(1):5−メトキシメチルオキシイミノピペリジン−2S−ギ酸メチル(III)の調製
攪拌機、温度計及び還流凝縮管が取り付けられる500mLの四つ口フラスコに1,2−ジクロロエタン200g、ピペリジン−5−オン−2S−ギ酸メチル23.5g(0.15モル)、メトキシメチルヒドロキシルアミン塩酸塩20.5g(0.18モル)、トリエチルアミン25gをそれぞれ加え、40〜45℃にて攪拌しながら4時間反応させる。20〜25℃まで冷却し、水100gを加え、層化し、それぞれ50gの1,2−ジクロロエタンを用いて水層を2回抽出し、有機相を合わせ、それぞれ25gの飽和食塩水を用いて2回洗浄する。有機相から溶媒を回収した後、減圧蒸留により薄い黄色い液体の5−メトキシメチルオキシイミノピペリジン−2S−ギ酸メチル31.3gを得、そのGC純度が99.8%であり、収率が96.5%である。
【0076】
工程(2):5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸メチルシュウ酸塩(IV)の調製
攪拌機、温度計が取り付けられる500mLの四つ口フラスコに酢酸エチル200gを加え、工程(1)で調製された5−メトキシメチルオキシイミノピペリジン−2S−ギ酸メチル17.3g(0.08モル)を加え、冷却し、−20℃にて質量分率が98%の濃硫酸40.3g(0.4モル)を滴下し、滴下終了後、1時間攪拌する。−20℃にてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム38.0g(0.18モル)を加え、−20℃〜−15℃にて5時間攪拌する。温度を10℃以下に維持し、反応混合物をゆっくりと10%アンモニア水200gに加え、層化し、それぞれ25gの飽和食塩水を用いて有機相を2回洗浄する。有機相を濃縮して溶媒を回収した後、得られた残り物に酢酸エチル80g、メタノール40g、シュウ酸二水和物11.5g(0.09モル)を加え、45℃まで加熱し、1時間攪拌した後、冷却し、ろ過する。まず、酢酸エチル/メタノール(2:1)混合液60gを用いて濾過ケークを洗浄し、次に酢酸エチル50gを用いて洗浄する。真空乾燥させて光学異性体である5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸メチルシュウ酸塩15.8gを得、そのキラルHPLC純度が99.7%であり、収率が64.0%である。
【0077】
得られた製品の核磁気共鳴データはH−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.39 (m, 1H), 1.64(m, 1H), 1.85(m, 1H), 2.12 (m, 1H), 2.62 (t, 1H), 3.06 (m, 1H), 3.36 (d, 1H), 3.74(s, 3H), 3.93 (q, 1H), 4.58(s, 2H), 7.26−7.38(m, 5H)である。
【0078】
H−NMRスペクトルチャートは図1に示される。
【0079】
工程(3):5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸(V)の調製
攪拌機、温度計が取り付けられる500mLの四つ口フラスコに工程(2)の方法により調製された5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸メチルシュウ酸塩30.8g(0.1モル)、水50g、メタノール100g、20wt%の水酸化ナトリウム水溶液70g(0.35モル)を加え、30〜35℃にて攪拌しながら3時間反応させ、加水分解反応終了後、0〜5℃まで冷却し、酢酸を用いてpHを3.5〜3.0とし、ろ過し、乾燥させて薄い黄色い粉末の固体である5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸18.6gを得、そのHPLC純度が99.8%であり、収率が91.2%である。
【0080】
得られた製品の核磁気共鳴データはH−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.25 (m, 1H), 1.44(m, 1H), 1.79(m, 1H), 2.10 (m, 1H), 3.02 (m, 1H), 3.07(br, 1H), 3.21 (d, 1H), 4.57(s, 2H), 6.75(s, 1H), 7.29−7.34(m, 5H)である。
【0081】
H−NMRスペクトルチャートは図2に示される。
【0082】
工程(4):(2S,5R)−6−メトキシメチルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI)の調製
攪拌機、温度計が取り付けられる500mLの四つ口フラスコにテトラヒドロフラン200g、工程(3)の方法により調製された5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸10.2g(0.05モル)、ジイソプロピルエチルアミン50g、N,N−ジメチルホルムアミド0.1gを加え、冷却し、−10〜0℃にてトリホスゲン23.8g(0.08モル)とテトラヒドロフラン80gの混合溶液を滴加し、滴加終了後、10〜20℃にて攪拌しながら4時間反応させる。10〜20℃の間でアンモニアガス4.0〜4.5gを通気させ、15〜20℃の間で攪拌しながら3時間反応させ、反応液を氷水の混合物300gに注ぎ、層化し、ジクロロメタンを用いてそれぞれ50gの水層を2回抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウムを用いて毎回に20gで2回洗浄し、得られた有機相から溶媒を回収した後、(2S,5R)−6−メトキシメチルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド10.7gを得、その液相純度が99.8%であり、収率が93.5%であり、融点が169.1〜170.0℃であり、比旋光度[α]20Dが−26.2°(c=0.5、MeОH)である。
【0083】
得られた製品の核磁気共鳴データはH−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.63 (m, 2H), 1.84(m, 1H), 2.06(m, 1H), 2.90 (s, 2H), 3.62 (br, 1H), 3.68 (d, 1H), 4.94 (q, 1H), 4.58(s, 2H), 7.28−7.46(m, 5H)である。
【0084】
H−NMRスペクトルチャートは図3に示される。
【0085】
工程(5):{[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニルテトラn−ブチルアンモニウム塩(VII)の調製
攪拌機、温度計が取り付けられる500mLの四つ口フラスコにイソプロパノール100g、水2.0g、工程(4)の方法により調製された(2S,5R)−6−メトキシメチルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド23.0g(0.1モル)、トリエチルアミン5.0g、テトラブチル酢酸アンモニウム36.0g(0.12モル)を加え、10〜15℃にて三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体46.5g(0.25モル)を加え、15〜20℃の間で攪拌しながら4時間反応させ、反応液をジクロロメタン150gと氷水混合物150gに注ぎ、酢酸を加えて系のpHを3.5〜2.5とし、層化し、ジクロロメタンを用いてそれぞれ50gの水層を2回洗浄する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウムを用いて毎回に20gで2回洗浄し、得られた有機相から溶媒を回収した後、ジクロロメタン−メチルイソブチルケトン(体積比1:3)を用いて残り物を再結晶し、{[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニルテトラn−ブチルアンモニウム塩46.3gを得、その液相純度が99.9%であり、収率が91.5%であり、比旋光度[α]20Dが−29.4°(c=0.5、HО)である。
【0086】
得られた製品の核磁気共鳴データはH−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:0.97(t, 12H), 1.42(m, 8H), 1.64 (m, 9H), 1.84(m, 1H), 2.12(m, 1H), 2.35 (m, 1H), 2.83(d, 1H), 3.27(m, 9H), 3.89 (d, 1H), 4.30 (s, 1H), 5.83(s, 1H), 6.66(s, 1H)である。
【0087】
H−NMRスペクトルチャートは図4に示される。
【0088】
工程(6):アビバクタム(I)の調製
攪拌機、温度計が取り付けられる500mLの四つ口フラスコにエタノール(2wt%の水)260g、{[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニルテトラn−ブチルアンモニウム塩50.6g(0.1モル)を加え、20〜25℃にて攪拌しながら溶解させる。
【0089】
予め2−エチルヘキサン酸ナトリウム33.2g(0.2モル)をエタノール280.0gに溶解させて溶液を調製する。20〜25℃にて該溶液を上記系に滴加で加え、白い固体が析出し、滴加終了後、20〜25℃にて3時間攪拌する。吸引ろ過し、エタノール100gで洗浄し、アビバクタム(I)26.2gを得、その液相純度が99.9%であり、収率が91.5%であり、比旋光度[α]20Dが−54.4°(c=0.5、HО)である。
【0090】
得られた製品の核磁気共鳴データはH−NMR(400MHz,DO)δ:1.69 (m,1H),1.83(m,1H),1.96(m,1H),2.10 (m, 1H),3.00 (d,1H),3.22 (d,1H),3.96 (d,1H), 4.09 (q, 1H)。
13C−NMR(400MHz,DO)δ:174.64, 169.39, 60.26, 59.76, 47.13, 19.80, 18.02である。
【0091】
H−NMRスペクトルチャートは図5に示され、13C−NMRスペクトルチャートは図6に示される。
【0092】
<実施例2:アビバクタム(I)の調製>
工程(1):5−t−ブチルジメチルシリルオキシイミノピペリジン−2S−ギ酸メチル(III)の調製
攪拌機、温度計及び還流凝縮管が取り付けられる500mLの四つ口フラスコにジクロロメタン200g、ピペリジン−5−オン−2S−ギ酸メチル23.5g(0.15モル)、t−ブチルジメチルシリルヒドロキシルアミン塩酸塩36.5g(0.2モル)、トリエチルアミン25gをそれぞれ加え、38〜40℃にて攪拌しながら5時間反応させる。20〜25℃まで冷却し、水100gを加え、層化し、それぞれ50gのジクロロメタンを用いて水層を2回抽出し、有機相を合わせ、それぞれ25gの飽和食塩水を用いて2回洗浄する。有機相から溶媒を回収した後、減圧蒸留により薄い黄色い液体の5−t−ブチルジメチルシリルオキシイミノピペリジン−2S−ギ酸メチル41.0gを得、そのGC純度が99.9%であり、収率が95.6%である。
【0093】
工程(2):5R−t−ブチルジメチルシリルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸メチルシュウ酸塩(IV)の調製
攪拌機、温度計が取り付けられる500mLの四つ口フラスコに酢酸エチル250gを加え、工程(1)で調製された5−t−ブチルジメチルシリルオキシイミノピペリジン−2S−ギ酸メチル22.9g(0.08モル)を加え、冷却し、−20℃にて質量分率が98%の濃硫酸40.3g(0.4モル)を滴下し、滴下終了後、1時間攪拌する。−20℃にてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム38.0g(0.18モル)を加え、−20℃〜−15℃にて5時間攪拌する。温度を10℃以下に維持し、反応混合物をゆっくりと10%アンモニア水200gに加え、層化し、それぞれ25gの飽和食塩水を用いて有機相を2回洗浄する。有機相を濃縮して溶媒を回収した後、得られた残り物に酢酸エチル80g、メタノール40g、シュウ酸二水和物11.5g(0.09モル)を加え、45℃まで加熱し、1時間攪拌した後、冷却し、ろ過する。まず、酢酸エチル/メタノール(2:1)混合液60gを用いて濾過ケークを洗浄し、次に酢酸エチル50gを用いて洗浄する。真空乾燥させて光学異性体である5R−t−ブチルジメチルシリルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸メチルシュウ酸塩19.7gを得、そのキラルHPLC純度が99.8%であり、収率が65.3%である。
【0094】
工程(3):5R−t−ブチルジメチルシリルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸(V)の調製
攪拌機、温度計が取り付けられる500mLの四つ口フラスコに工程(2)の方法により調製された5R−t−ブチルジメチルシリルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸メチルシュウ酸塩37.8g(0.1モル)、水50g、エタノール100g、20wt%の水酸化ナトリウム水溶液70g(0.35モル)を加え、20〜25℃にて攪拌しながら4時間反応させ、加水分解反応終了後、0〜5℃まで冷却し、酢酸を用いてpHを3.5〜3.0とし、ろ過し、乾燥させて薄い黄色い粉末の固体である5R−t−ブチルジメチルシリルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸25.3gを得、そのHPLC純度が99.9%であり、収率が92.3%である。
【0095】
工程(4):(2S,5R)−6−t−ブチルジメチルシリルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI)の調製
攪拌機、温度計が取り付けられる500mLの四つ口フラスコにアセトニトリル200g、工程(3)の方法により調製された5R−t−ブチルジメチルシリルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸13.7g(0.05モル)、ジイソプロピルエチルアミン45g、N,N−ジメチルホルムアミド0.1gを加え、冷却し、−10〜0℃にてジホスゲン23.8g(0.12モル)とアセトニトリル80gの混合溶液を滴加し、滴加終了後、10〜20℃にて攪拌しながら4時間反応させる。10〜20℃の間で10wt%のアンモニアガスのアセトニトリル溶液40gを滴下し、15〜20℃の間で攪拌しながら4時間反応させ、反応液を氷水の混合物300gに注ぎ、層化し、ジクロロメタンを用いてそれぞれ50gの水層を2回抽出する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウムを用いて毎回に20gで2回洗浄し、得られた有機相から溶媒を回収した後、(2S,5R)−6−t−ブチルジメチルシリルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド13.8gを得、その液相純度が99.9%であり、収率が92.1%である。
【0096】
工程(5):{[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニルテトラn−ブチルアンモニウム塩(VII)の調製
攪拌機、温度計が取り付けられる500mLの四つ口フラスコにイソプロパノール120g、水2.0g、工程(4)の方法により調製された(2S,5R)−6−t−ブチルジメチルシリルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド30.0g(0.1モル)、トリエチルアミン5.5g、フルオロテトラブチルアンモニウム39.0g(0.15モル)を加え、10〜15℃にて三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体22.5g(0.12モル)を加え、15〜20℃の間で攪拌しながら5時間反応させ、反応液をジクロロメタン150gと氷水混合物100gに注ぎ、酢酸を加えて系のpHを3.5〜2.5とし、層化し、ジクロロメタンを用いてそれぞれ50gの水層を2回洗浄する。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウムを用いて毎回に20gで2回洗浄し、得られた有機相から溶媒を回収した後、ジクロロメタン−メチルイソブチルケトン(体積比1:3)を用いて残り物を再結晶し、{[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニルテトラn−ブチルアンモニウム塩47.1gを得、その液相純度が99.9%であり、収率が93.1%であり、比旋光度[α]20Dが−29.4°(c=0.5、HО)である。
【0097】
工程(6):アビバクタム(I)の調製
攪拌機、温度計が取り付けられる500mLの四つ口フラスコに98%エタノール(2wt%の水)260g、{[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニルテトラn−ブチルアンモニウム塩50.6g(0.1モル)を加え、20〜30℃にて攪拌しながら溶解させる。
【0098】
また、2−エチルヘキサン酸ナトリウム33.2g(0.2モル)をエタノール280.0gに溶解させて溶液を調製する。20〜30℃にて該溶液を上記系に滴加で加え、白い固体が析出し、滴加終了後、20〜30℃にて3時間攪拌する。吸引ろ過し、エタノール100gで洗浄し、アビバクタム(I)25.9gを得、その液相純度が99.8%であり、収率が90.2%である。
【0099】
<比較例1>
アビバクタムの調製方法であって、以下の工程を含む。
工程(1):5−メトキシメチルオキシイミノピペリジン−2S−ギ酸メチル(III)の調製
実施例1の工程(1)のように実施するが、異なるのは縮合反応の条件が20〜25℃にて攪拌しながら8時間反応させることであり、他の工程は実施例1に一致し、薄い黄色い液体の5−メトキシメチルオキシイミノピペリジン−2S−ギ酸メチル24.5gを得、そのGC純度が99.2%であり、収率が75.5%である。
これから分かるように、縮合反応の温度は目標生成物の収率に影響を大きく与える。
【0100】
工程(2):5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸メチルシュウ酸塩(IV
実施例1の工程(2)のように実施するが、異なるのは質量濃度が98%の濃硫酸の滴加量が20.0(0.2モル)であり、−20℃にてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム38.0g(0.18モル)を加え、−20℃〜−15℃にて攪拌しながら5時間反応させた後、温度を10℃以下に維持し、反応混合物をゆっくりと10%アンモニア水100gに加えることである。他の条件は実施例1に一致し、光学異性の5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸メチルシュウ酸塩8.8gを得、そのキラルHPLC純度が98.3%であり、収率が35.5%である。
これから分かるように、濃硫酸の使用量は還元反応の選択性に影響を与え、生成物の収率と純度に比較的大きい影響を与える。
【0101】
工程(3):5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸(V)の調製
実施例1の工程(3)のように実施するが、異なるのは加水分解の条件が70〜75℃にて攪拌しながら3時間反応させることである。他の条件は実施例1に一致し、薄い黄色い粉末固体の5R−メトキシメチルオキシアミノピペリジン−2S−ギ酸17.4gを得、そのHPLC純度が98.6%であり、収率が85.5%である。
【0102】
工程(4):(2S,5R)−6−メトキシメチルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド(VI)の調製
実施例1の工程(4)のように実施するが、異なるのはトリホスゲンの滴加量が14.9g(0.05モル)であることである。他の条件は実施例1に一致し、(2S,5R)−6−メトキシメチルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−2−ホルムアミド9.8gを得、その液相純度が99.0%であり、収率が85.6%である。
【0103】
工程(5):{[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニルテトラn−ブチルアンモニウム塩(VII)の調製
実施例1の工程(5)のように実施するが、異なるのは、32〜35℃にて三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体28.0g(0.15モル)を加え、32〜35℃の間で攪拌しながら4時間反応させることである。他の条件は実施例1に一致し、{[(2S,5R)−2−アルバモイル−7−オキソ−1,6−ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イル]オキシ}スルホニルテトラn−ブチルアンモニウム塩40.3gを得、その液相純度が99.9%であり、収率が79.6%である。
これから分かるように、保護基を脱すること、硫酸エステル化すること及びテトラブチルアンモニウム化による塩生成は生成物の収率に影響を大きく与える。
【0104】
工程(6):アビバクタム(I)の調製
実施例1の工程(6)のように実施するが、異なるのは、イオン交換反応の条件が40〜45℃にて3時間攪拌することである。他の条件は実施例1に一致し、アビバクタム(I)26.0gを得、その液相濃度が99.1%であり、収率が90.8%である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6