(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は本発明の第1実施形態におけるメンブレンスイッチ1の接点部を示す断面図、
図2は
図1のII-II線に沿った断面図、
図3は
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【0026】
図1〜
図3に示すように、本実施形態におけるメンブレンスイッチ1は、上側電極シート10と、下側電極シート20と、粘着層50と、押圧部材としてのラバードーム60と、を備えている。上側電極シート10は、上側基材11と、上側電極12と、上側絶縁層30と、を備えている。また、下側電極シート20は、下側基材21と、下側電極22と、下側絶縁層40と、を備えている。
【0027】
このメンブレンスイッチ1では、上側電極シート10の上側基材11の下面111に上側絶縁層30が形成され、下側電極シート20の下側基材21の上面211に下側絶縁層40が形成されており、上側絶縁層30と下側絶縁層40とが粘着層50を介して貼り合わせられている。また、ラバードーム60は上側電極シート10の上側基材11の上面に取り付けられている。
【0028】
このメンブレンスイッチ1では、操作者によって所定の押圧力がラバードーム60を介して上側電極シート10に印加され、上下の電極12,22(後述)が相互に接触して、当該電極12,22が導通する。上下の電極12,22は、引出配線13,23を介して外部回路(不図示)に接続されており、上下の電極12,22が導通することで、外部回路が操作者の押圧操作を検出する。本実施形態では、この外部回路が操作者の押圧操作を検出した際の押圧力を「ON荷重」と称する。
【0029】
なお、メンブレンスイッチ1による操作者の押圧操作の検出は、特に上述に限定されない。例えば、押圧力に応じた上下の電極12,22の接触面積(接触状態)の変化に伴って増減する回路抵抗値に基づいて、操作者の押圧操作を検出してもよい。本実施形態における「メンブレンスイッチ1」が本発明における「スイッチ」の一例に相当する。
【0030】
上側電極シート10の上側基材11は、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の可撓性を有する絶縁性材料から構成されている。上側基材11の厚さは、メンブレンスイッチ1の薄型化の観点から、20〜100μmの範囲で設定されており、20〜75μmの範囲で設定されていることが好ましい。本実施形態では、上側基材11の厚さは、50μmに設定されている。
【0031】
上側電極12は、銀ペーストや銅ペーストやカーボンペースト等の導電性ペーストを、上側基材11の下面111上に印刷して硬化させることにより形成されている。なお、上側電極12は、複層で構成されていてもよい。上側電極12を形成する印刷方法としては、スクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法等を例示することができる。この上側電極12は、例えば、2〜20μm程度の厚さを有している。
【0032】
この上側電極12には、上側引出配線13が接続されている。この上側引出配線13は、透過平面視(メンブレンスイッチ1を上方又は下方(当該メンブレンスイッチ1の法線方向)から透過して見た場合の平面視。
図2参照。)において、上側絶縁層30の開口31の外側に導出しており、上側電極12は、この上側引出配線13を介して外部回路と接続される。
【0033】
上側引出配線13は、上側電極12と同様に、銀ペーストや銅ペーストやカーボンペースト等の導電性ペーストを、上側基材11の下面111上に印刷して硬化させることにより形成されている。上側電極12を形成する印刷方法としては、スクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法等を例示することができる。上側電極12と上側引出配線13を、一体的に形成してもよいし、個別に形成してもよい。この上側引出配線13は、例えば、2〜20μm程度の厚さを有している。
【0034】
上側電極12は、後述の上下の絶縁層30,40の開口部31,41(後述)よりも小さい径の円形状の外形を有している。また、上側電極12は、上下の開口部31,41に対応する位置に設けられており、具体的には、当該上側電極12の中心と上下の開口部31,41の中心とが実質的に一致している。
【0035】
なお、本明細書において、「中心」とは、平面形状における重心に相当する点を示す。因みに、上側電極12の形状は、特に上述に限定されない。例えば、上側電極12の外形が、矩形状、メッシュ状又は櫛歯状等であってもよい。
【0036】
本実施形態における「上側電極シート10」が本発明における「第1の電極シート」の一例に相当し、本実施形態における「上側基材11」が本発明における「第1の基材」の一例に相当し、本実施形態における「上側電極12」が本発明における「第1の電極」の一例に相当する。
【0037】
上側絶縁層30は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等のUV硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等のレジスト材料を、上側基材11の下面111上に印刷して硬化させることにより形成されている。上側絶縁層30を形成する印刷方法としては、スクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法等を例示することができる。この上側絶縁層30は、上側引出配線13及び上側ベース部16(後述)を覆いつつ、接着材等を介さずに上側基材11の下面111上に直接形成されている。
【0038】
上側絶縁層30の厚さは、メンブレンスイッチ1の薄型化及び剛性を高くする観点から、5〜50μmの範囲で設定されており、10〜30μmの範囲で設定されていることが好ましい。本実施形態では、上側絶縁層30の厚さは、15μmに設定されており、上側基材11の厚さよりも小さく設定されている。本実施形態では、上側絶縁層30の膜厚の精度を向上させる観点から、上記レジスト材料として、UV硬化性樹脂を用い、上側基材11の下面111上に印刷したUV硬化性樹脂をUV硬化処理により硬化させることによって、上側絶縁層30を形成している。なお、本実施形態における「上側絶縁層30の厚さ」とは、上側ベース部16(後述)によって盛り上がっている部分を除いた上側絶縁層30において平坦な部分の厚さである。
【0039】
上側絶縁層30の剛性は、粘着層50の剛性よりも高く設定されている。なお、本実施形態における「剛性」とは、部材の厚み方向に加えられる力に対する当該部材の変形のしづらさの度合いのことを指す。
【0040】
この上側絶縁層30には、上下の電極12,22よりも大径の円形状の開口部31が形成されている。この開口部31は、上側電極12を囲繞するように設けられており、具体的には、上側電極12の中心と開口部31の中心とが実質的に一致している。この開口部31の径としては、特に限定しないが、メンブレンスイッチ1のON荷重を安定させる観点から、5mm以下であることが好ましい。ただし、ON荷重が上がりすぎないために、1mm以上であることが好ましい。
【0041】
なお、開口部31の形状は、円形状に限定されず、例えば、矩形状等であってもよい。本実施形態における「上側絶縁層30」が本発明における「第1のスペーサ」の一例に相当し、本実施形態における「開口部31」が本発明における「第2の開口部」の一例に相当する。
【0042】
さらに、本実施形態における上側電極シート10は、上側基板11と上側絶縁層30との間に介在する上側ベース部(土台)16を備えている。この上側ベース部16は、
図2に示すように、上側電極12を囲んでいると共に、上側引出配線13に対応する箇所にスリット部161を持つ円環形状を有している。スリット部161は、円環形状の径方向に沿って延在しており、長手方向に沿って延在する円環形状を分断している。上側引出配線13は、このスリット部161を通過することで、透過平面視において、上側絶縁層30の開口31の外側に導出している。この上側ベース部16は、透過平面視において、粘着層50の開口51の縁部53(後述)と重なる領域を包含するように配置されている。この上側ベース部16によって、上側絶縁層30の開口31の縁部32が当該上側絶縁層30の他の部分と比較して下側電極シート20に向かって盛り上がっている。
【0043】
なお、上側ベース部16の環状形状は、真円形に特に限定されず、例えば、楕円、三角形、矩形、多角形等であってもよい。また、上側ベース部16が上側引出配線13との干渉を回避しつつ粘着層50の開口51の縁部53の少なくとも一部と重なる(粘着層50の開口51の周縁の少なくとも一部と重なる)ように配置されていれば、上側ベース部16の形状は、スリット部161を有する環状形状に限定されない。例えば、上側ベース部16の形状が、間欠的な環状形状(環状に並べられた複数の島部から構成される形状など)であってもよい。
【0044】
この上側ベース部16は、銀ペーストや銅ペーストやカーボンペースト等の導電性ペーストを、上側基材11の下面111上に印刷して硬化させることにより形成されており、接着材等を介さずに上側基材11の下面111上に直接形成されている。上側ベース部16を形成する印刷方法としては、スクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法等を例示することができる。上述のように、上側ベース部16を覆う上側絶縁層30は印刷法によって上側基材11の下面111に形成されているので、上側ベース部16と上側絶縁層30との間(すなわち上側絶縁層30内における上側ベース部16の周囲)には空隙が形成されておらず、上側ベース部16の側面(端面)全体に上側絶縁層30が接触している。
【0045】
なお、この上側ベース部16を構成する材料は、上記のような導電性材料に限定されず、例えば、樹脂材料等の電気的に絶縁性を有する材料で構成してもよい。しかしながら、上側電極12や上側引出配線13と同一の工程で形成することが好ましく、この場合には、上側ベース部16を構成する材料の組成は、上側引出配線13を構成する材料の組成と同一となる。また、上側ベース部16の剛性が、上側絶縁層30の剛性よりも高く設定されていることが好ましい。
【0046】
上側ベース部16の厚さは、特に限定されないが、上側引出配線13の厚さと実質的に同一であることが好ましい。これにより、上側ベース部16のスリット部161に対応する箇所で、基材11,21の表面に凹みや盛り上がりが生じるのを抑制することができる。本実施形態では、上側ベース部16は、2〜20μm程度の厚さを有している。
【0047】
また、上側ベース部16の厚さと下側ベース部26(後述)の厚さが、下記の(3)式を満たしていることが好ましい。これにより、ベース部16,26に対応する箇所で、基材11,21の表面に凹みや盛り上がりが生じるのを抑制することができる。
【0048】
1/2×ta≦tb+tc≦ta … (3)
【0049】
但し、上記の(3)式において、taは、粘着材50の厚さであり、
図1に示すように、開口51の縁部53を除いた平坦な部分での粘着材50の厚さである。また、tbは、上側ベース部16の厚さであり、tcは、下側ベース部26の厚さである。なお、上記の(3)式において、taの下限値をtcの半分に設定した理由は、粘着材のダレに起因して電極シートの接点部に生じる凹みの深さが、当該粘着材の厚さの半分以上であることに基づくものである。
【0050】
下側電極シート20の下側基材21は、上側基材11と同様、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の可撓性を有する絶縁性材料から構成されている。この下側基材21の厚さは、メンブレンスイッチ1の薄型化の観点から、20〜100μmの範囲で設定されており、20〜75μmの範囲で設定されていることが好ましい。本実施形態では、下側基材21の厚さは、50μmに設定されている。
【0051】
下側電極22は、上側電極12と同様、銀ペーストや銅ペーストやカーボンペースト等の導電性ペーストを、下側基材21の上面211上に印刷して硬化させることにより形成されている。なお、下側電極22も、複層で構成されていてもよい。下側電極22を形成する方法としては、上述した上側電極12を形成する方法と同様の方法を例示することができる。この下側電極22は、例えば、2〜20μm程度の厚さを有している。
【0052】
また、上側電極12と同様、下側電極22には、下側引出配線23が接続されている。この下側引出配線23は、透過平面視(
図3参照)において、下側絶縁層40の開口41の外側に導出しており、下側電極22は、この下側引出配線23を介して外部回路と接続されている。
【0053】
下側引出配線23は、下側電極22と同様に、銀ペーストや銅ペーストやカーボンペースト等の導電性ペーストを、下側基材21の上面211上に印刷して硬化させることにより形成されている。下側電極22を形成する印刷方法としては、スクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法等を例示することができる。下側電極22と下側引出配線23とは、一体的に形成してもよいし、個別に形成してもよい。この下側引出配線23は、例えば、2〜20μm程度の厚さを有している。
【0054】
下側電極22は、後述の上下の絶縁層30,40の開口部31,41よりも小さい径の円形状の外形を有している。この下側電極22は、内部空間Sを介して上側電極12に対向する位置に設けられており、具体的には、下側電極22の中心と上側電極12の中心とが実質的に一致している。なお、下側電極22の形状は、特に上述に限定されない。例えば、下側電極22の外形が、矩形状、メッシュ状又は櫛歯状等であってもよい。
【0055】
本実施形態における「下側電極シート20」が本発明における「第2の電極シート」の一例に相当し、本実施形態における「下側基材21」が本発明における「第2の基材」の一例に相当し、本実施形態における「下側電極22」が本発明における「第2の電極」の一例に相当する。
【0056】
下側絶縁層40は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等のUV硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等のレジスト材料を、下側基材21の上面211上に印刷して硬化させることにより形成されている。下側絶縁層40を形成する印刷方法としては、上側絶縁層30と同様、スクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法等を例示することができる。この下側絶縁層40は、下側引出配線23及び下側ベース部26(後述)を覆いつつ、接着材等を介さずに下側基材21の上面211上に直接形成されている。
【0057】
下側絶縁層40の厚さは、メンブレンスイッチ1の薄型化及び剛性を高くする観点から、5〜50μmの範囲で設定されており、10〜30μmの範囲で設定されていることが好ましい。本実施形態では、下側絶縁層40の厚さは、15μmに設定されており、下側基材21の厚さよりも小さく設定されている。また、下側絶縁層40の剛性は、粘着層50の剛性よりも高く設定されている。本実施形態では、下側絶縁層40の膜厚の精度を向上させる観点から、上記レジスト材料として、UV硬化性樹脂を用い、下側基材21の上面211上に印刷したUV硬化性樹脂をUV硬化処理により硬化させることによって、下側絶縁層40を形成している。なお、本実施形態における「下側絶縁層40の厚さ」とは、下側ベース部26(後述)によって盛り上がっている部分を除いた下側絶縁層40において平坦な部分の厚さである。
【0058】
この下側絶縁層40には、上下の電極12,22よりも大径の円形状の開口部41が形成されている。この開口部41は、下側電極22を囲繞するように設けられており、具体的には、下側電極22の中心と開口部41の中心とが実質的に一致している。この開口部41の径としては、特に限定しないが、メンブレンスイッチ1のON荷重を安定させる観点から、5mm以下であることが好ましい。ただし、ON荷重が上がりすぎないために、1mm以上であることが好ましい。
【0059】
なお、開口部41の形状は、円形状に限定されず、例えば、矩形状等であってもよい。本実施形態における「下側絶縁層40」が本発明における「第2のスペーサ」の一例に相当し、本実施形態における「開口部41」が本発明における「第3の開口部」の一例に相当する。
【0060】
さらに、本実施形態における下側電極シート20は、下側基板21と下側絶縁層40との間に介在する下側ベース部(土台)26を備えている。この下側ベース部26は、
図3に示すように、下側電極22を囲んでいると共に、下側引出配線23に対応する箇所にスリット部261を持つ円環形状を有している。スリット部261は、円環形状の径方向に沿って延在しており、長手方向に沿って延在する円環形状を分断している。下側引出配線23は、このスリット部261を通過することで、透過平面視において、下側絶縁層40の開口41の外側に導出している。この下側ベース部26は、透過平面視において、粘着層50の開口51の縁部53(後述)と重なる領域を包含するように配置されており、この下側ベース部26によって、下側絶縁層40の開口41の縁部42が当該下側絶縁層40の他の部分と比較して上側電極シート10に向かって盛り上がっている。
【0061】
なお、下側ベース部26の環状形状は、真円形に特に限定されず、例えば、楕円、三角形、矩形、多角形等であってもよい。また、下側ベース部26が下側引出配線23との干渉を回避しつつ粘着層50の開口51の縁部53の少なくとも一部と重なる(粘着層50の開口51の周縁の少なくとも一部と重なる)ように配置されていれば、下側ベース部26の形状は、スリット部261を有する環状形状に限定されず、例えば、間欠的な環状形状(例えば、環状に並べられた複数の島部から構成される形状)であってもよい。
【0062】
この下側ベース部26は、銀ペーストや銅ペーストやカーボンペースト等の導電性ペーストを、下側基材21の上面211上に印刷して硬化させることにより形成されており、接着材等を介さずに下側基材21の上面211上に直接形成されている。下側ベース部26を形成する印刷方法としては、スクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法等を例示することができる。上述のように、下側ベース部26を覆う上側絶縁層40は印刷法によって下側基材21の上面211に形成されているので、下側ベース部26と下側絶縁層40との間(すなわち下側絶縁層40内における下側ベース部26の周囲)には空隙が形成されておらず、下側ベース部26の側面(端面)全体に下側絶縁層40が接触している。
【0063】
この下側ベース部26を構成する材料は、上記のような導電性材料に限定されず、例えば、樹脂材料等の電気的に絶縁性を有する材料で構成してもよい。しかしながら、下側電極22や下側引出配線23と同一の工程で形成することが好ましく、この場合には、下側ベース部26を構成する材料の組成は、下側引出配線23を構成する材料の組成と同一となる。また、下側ベース部26の剛性が、下側絶縁層40の剛性よりも高く設定されていることが好ましい。
【0064】
下側ベース部26の厚さは、特に限定されないが、下側引出配線23の厚さと実質的に同一であることが好ましい。これにより、下側ベース部26のスリット部261に対応する箇所で、基材11,21の表面に凹みや盛り上がりが生じるのを抑制することができる。本実施形態では、下側ベース部26は、2〜20μm程度の厚さを有している。
【0065】
また、上側ベース部16の厚さと下側ベース部26の厚さが、上記の(3)式を満たしていることが好ましい。これにより、ベース部16,26に対応する箇所で、基材11,21の表面に凹みや盛り上がりが生じるのを抑制することができる。なお、特に図示しないが、上側ベース部16の頂点と下側ベース部26の頂点とが相互に接触していてもよい。
【0066】
粘着層50は、上側絶縁層30と下側絶縁層40との間に介在しており、これらを粘着(接着)する機能を有している。このような粘着層50は、樹脂材料を含むものであることが好ましく、添加剤等をさらに含んでもよい。このような粘着層50を構成する樹脂材料としては、メンブレンスイッチ1の感圧性に応じて適宜選択して用いることができ、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を例示することができる。
【0067】
粘着層50の厚さは、メンブレンスイッチ1の薄型化の観点から、5〜50μmの範囲で設定されており、10〜30μmの範囲で設定されていることが好ましい。また、粘着層50の厚さが上記の(3)式を満たしていることが好ましい。これにより、ベース部16,26に対応する箇所で、基材11,21の表面に凹みや盛り上がりが生じるのを抑制することができる。本実施形態では、粘着層50の厚さは、15μmに設定されており、上側基材11の厚さよりも小さく且つ下側基材21の厚さよりも小さく設定されている。
【0068】
なお、熱可塑性樹脂としては、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、エチレン・酢酸ビニル樹脂(EVA:Ethylene-Vinyl Acetate)、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、α−オレフィン樹脂等を例示することができる。熱硬化性樹脂としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を例示することができる。
【0069】
本実施形態の粘着層50は、開口部51と、エアーベント52とを有している。この粘着層50は、開口部51とエアーベント52とを除いて、上側絶縁層30と下側絶縁層40との間の略全面に一様に形成されている。
【0070】
開口部51は、上下の電極12,22に対応して円形状の外形を有している。この開口部51は、粘着層50を鉛直方向(Z方向)に貫通し、当該粘着層50の両方の主面上で開口する貫通孔である。
【0071】
開口部51は、上下の電極12,22に対応する位置に設けられており、具体的には、当該上下の電極12,22の中心と開口部51の中心とが実質的に一致している。結果として、本実施形態では、開口部31,41,51の中心同士が実質的に一致している。
【0072】
エアーベント52は、上側絶縁層30と下側絶縁層40との間に形成されている。このエアーベント52は、上下の電極12,22の周囲の内部空間S(すなわち、開口部31〜51)と外部空間とを連通する貫通孔である。
【0073】
本実施形態では、このエアーベント52によって、操作者の押圧操作に応じた内部空間S内の空気の吸排気が行えるようになっている。すなわち、操作者により押圧力が印加されるとエアーベント52から内部空間S内の空気を排出し、操作者による押圧力が開放されるとエアーベント52から内部空間S内に空気を取り込む。このように、内部空間Sを密封しないことで、操作者に違和感を与えないようにすることができる。
【0074】
このような粘着層50は、特に限定しないが、例えば、当該粘着層50を構成する粘着材料をグラビアコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、グラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法等の公知の方法を用いて、下側絶縁層40上に塗布・乾燥等させることで形成することができる。本実施形態では、粘着層50は、スクリーン印刷法等の印刷技術を用いることにより形成されている。
【0075】
なお、本実施形態では、粘着層50を下側絶縁層40上に形成し、その後に、上側絶縁層30を粘着層50上に載置して、粘着層50を挟んだ上側絶縁層30と下側絶縁層40とをラミネート加工により貼り合せる。しかし、これは必須ではなく、粘着層50を上側絶縁層30上に形成し、その後に、下側絶縁層40を粘着層50上に載置して、粘着層50を挟んだ上側絶縁層30と下側絶縁層40とをラミネート加工により貼り合せてもよい。
【0076】
なお、上下の絶縁層30,40の一方の全面に粘着材料を塗布した後に、当該粘着材料にマスクを積層してパターニングすることで、粘着層50に開口部51及びエアーベント52を形成してもよい。或いは、上下の絶縁層30,40の一方の全面に粘着材料を塗布した後に、当該粘着材料を部分的に削り取ることで、粘着層50に開口部51及びエアーベント52を形成してもよい。或いは、上下の絶縁層30,40の一方に選択的に粘着材料を塗布することで、粘着層50に第3の開口部51及びエアーベント52を形成してもよい。
【0077】
本実施形態では、上側電極シート10と下側電極シート20とが意図せず接着してスイッチング性を低下させるのを抑制する観点から、粘着層50の開口部51の外形は、絶縁層30,40の開口部31,41の外形よりも大きくなっている。
【0078】
具体的には、
図2に示すように、粘着層50の開口部51の径D
1が上側絶縁層30の開口部31の径D
2よりも大きくなっている。特に、本実施形態では、粘着層50の開口部51の径D
1は、上側絶縁層30の開口部31の径D
2よりも0.4〜1.0mm大きくなっている。
【0079】
同様に、
図3に示すように、粘着層50の開口部51の径D
1が下側絶縁層40の開口部41の径D
3よりも大きくなっている。特に、本実施形態では、粘着層50の開口部51の径D
1は、下側絶縁層40の開口部41の径D
3よりも0.4〜1.0mm大きくなっている。
【0080】
ここで、径D
1と径D
2,D
3との差が0.4mm未満であったり、1.0mmより大きい場合には、ON荷重にバラつきが生じ、粘着層50が粘着層として要求される機能を十分に発揮することができない場合がある。なお、粘着層50の開口部51の径D
1は、絶縁層30,40の開口部31,41の径D
2,D
3よりも大きければよい。
【0081】
なお、本実施形態では、上側絶縁層30の開口部31の径D
2と、下側絶縁層40の開口部41の径D
3とが実質的に同一となっているが、特にこれに限定されない。また、粘着層50の開口部51の形状も、特に上述に限定されない。例えば、粘着層50の開口部51が矩形状等であってもよい。
【0082】
上側絶縁層30と粘着層50と下側絶縁層40との厚さは、その合計が上側基材11又は下側基材21の厚さよりも小さくなるように設定されている。本実施形態における「粘着層50」が本発明における「粘着材」の一例に相当し、本実施形態における「開口部51」が本発明における「第1の開口部」の一例に相当する。
【0083】
図1に示すように、ラバードーム60は、上側電極シート10の上側基材11の上面に取り付けられている。このラバードーム60は、当該ラバードーム60の上方に上下動可能な状態で設けられるキートップを介して押圧力が伝達された際、当該キートップを元の位置に復帰させるために設けられるゴム材料等からなる弾性部材である。
【0084】
ラバードーム60は、上側電極シート10の上側基材11から離間する側に向かって突出するドーム状の本体部61と、当該本体部61の縁部から外側に向かって拡がる取付部62と、から構成されている。
【0085】
なお、本実施形態では、ラバードーム60は、上側電極シート10の上側基材11の上面に直接取り付けられているが、特にこれに限定されない。例えば、特に図示しないが、上側電極シート10の上側基材11の上面に、PET等から構成される支持部材を設け、当該支持部材を介してラバードーム60を上側電極シート10の上側基材11に取り付けてもよい。また、ラバードーム60は、メンブレンスイッチ1の押圧操作を補助する押圧部材としての機能を有する。この押圧部材としては、ラバードームに限らず、メタルドームでもよく、あるいは、キートップの下面に設けられる突起でもよい。また、この押圧部材を設けることは必須ではない。
【0086】
取付部62は、本体部61の全周に亘って形成された環状の部材であり、上側電極シート10の上側基材11の上面に密着している。本体部61の外形及び取付部62の外形は、平面視において、円形状とされている。また、本体部61の中心(頂部)と取付部62の中心とは、実質的に一致するようにラバードーム60が形成されている。
【0087】
図4は、比較例におけるメンブレンスイッチの押圧操作時の状態を示す断面図である。なお、比較例の説明では、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付すと共に第1実施形態でした説明を援用する。
【0088】
図4に示すように、比較例におけるメンブレンスイッチ1Bは、上側電極シート10と、下側電極シート20と、スペーサ30Bと、上側粘着層40Bと、下側粘着層50Bと、ラバードーム60とを備えている。このメンブレンスイッチ1Bでは、上側電極シート10と下側電極シート20との間にスペーサ30Bが設けられ、スペーサ30Bの上面と上側電極シート10の下面とが上側粘着層40Bにより粘着され、スペーサ30Bの下面と下側電極シート20の上面とが下側粘着層50Bにより粘着されている。なお、この比較例では、上側電極シート10は上側絶縁層30を備えておらず、下側電極シート20も下側絶縁層40を備えていない。
【0089】
スペーサ30Bは、PETフィルムである。このスペーサ30Bには、上下の電極12、22に対応して開口部31Bが形成されている。一方、上側粘着層40Bには、上下の電極12、22に対応して開口部41Bが形成され、下側粘着層50Bには、上下の電極12、22に対応して開口部51Bが形成されている。開口部41Bの周縁は、開口部31Bの周縁に対して外側に位置している。また、開口部51Bの周縁も、開口部31Bの周縁に対して外側に位置している。
【0090】
ここで、上側粘着層40Bを形成する際に粘着材料が流動性を有しているため、上側粘着層40Bの縁部43Bにダレが生じてしまう。その結果、この縁部43Bと上側電極シート10の上側基材11との間には、隙間が形成されている。このため、押圧力がラバードーム60を介して上側基材11に印加されて、上側基材11が凹んだ際、上側基材11が上側粘着層40Bの縁部43Bに接触し、上側粘着層40Bの縁部43Bの粘着力が、上側基材11に作用し、上側基材11の弾性変形状態からの復元力に対して抵抗する。
【0091】
同様に、下側粘着層50Bを形成する際に粘着材料が流動性を有していることにより、下側粘着層50Bの縁部53Bにもダレが生じている。その結果、この縁部53Bと下側電極シート20の下側基材21との間には、隙間が形成されている。そして、メンブレンスイッチ1の下側電極シート20がキーボート装置等の筐体に対して強固に固定されていない場合には、上側基材11への押圧力の印加に伴って、上側電極シート10のみならず、下側粘着層50Bの縁部53Bもスペーサ30Bと接触し、下側粘着層50Bの縁部53Bの粘着力が、下側基材21の弾性変形状態からの復元力に対して抵抗する。
【0092】
この比較例では、メンブレンスイッチ1Bの薄型化を図るために、電極シート10,20の基材11,21が薄く設定されており、当該基材11,21自体の剛性が低くなっている。したがって、押圧力が上側基材11に印加された際、上側基材11の上側粘着層40Bの縁部43Bに対向する部分が曲がり易くなっている。また、下側基材21がキーボード装置等の筐体に強固に固定されていない場合には、下側基材21の下側粘着層50Bの縁部53Bに対応する部分も曲がり易くなっている。このため、粘着層40B,50Bの縁部43B,53Bの粘着力が、基材11,21の弾性変形状態からの復元力を上回り、基材11,21が粘着層40B,50Bの縁部43B,53Bの形状に倣った状態で接着した状態(すなわち、上側電極シート10の接点部が凹んだ状態)が維持されてしまう。
【0093】
これに対し、本実施形態では、本実施形態に係るメンブレンスイッチ1では、上側基材11の下面111上における上側電極12の周囲に上側絶縁層30が形成され、上側電極12の周囲において、上側基材11と上側絶縁層30とが一体となっていることにより、上側基材11が上側絶縁層30により補強されている。これにより、押圧力がラバードーム60を介して上側基材11に印加された際、上側基材11の上側電極12が設けられた部分は凹むのに対して、上側基材11と上側絶縁層30とが一体となった部分は曲がり難くなっている。
【0094】
同様に、下側基材21の上面211上における下側電極22の周囲に下側絶縁層40が形成され、下側電極22の周囲において、下側基材21と下側絶縁層40とが一体となっていることにより、下側基材21が下側絶縁層40により補強されている。これにより、下側基材21がキーボード装置等の筐体に強固に固定されていない場合であっても、押圧力がラバードーム60を介して上側基材11に印加された際、下側基材21において下側電極22が設けられた部分は凹むのに対して、下側基材21と下側絶縁層40とが一体となった部分が曲がり難くなっている。
【0095】
このため、たとえ粘着層50の縁部53にダレが生じていたとしても、基材11,21及び絶縁層30,40の弾性変形状態からの復元力が、粘着層50の縁部53の粘着力を上回る。このため、基材11,21が粘着層50の縁部53の形状に倣った状態で接着した状態(すなわち、電極シート10,20の接点部が凹んだ状態)が維持されることを防止でき、ON状態が維持されることを防止することができる。
【0096】
そもそも、本実施形態では、上側ベース部16が、透過平面視において、粘着層50の開口51の縁部53と重なる領域を包含するように配置されており、この上側ベース部16によって、上側絶縁層30が上側ベース部16に対応する部分で当該上側絶縁層30の他の部分と比較して下側電極シート20に向かって盛り上がっている。同様に、下側ベース部26は、透過平面視において、粘着層50の開口51の縁部53と重なる領域を包含するように配置されており、この下側ベース部26によって、下側絶縁層40が下側ベース部26に対応する部分で当該下側絶縁層40の他の部分と比較して上側電極シート10に向かって盛り上がっている。
【0097】
本実施形態では、こうしたベース部16,26による粘着層50の盛り上がりにより、粘着材のダレを相殺することができるので、メンブレンスイッチ1の押圧操作がされた後に、基材11,21が粘着層50の縁部53の形状に倣った状態で接着した状態(すなわち、電極シート10,20の接点部が凹んだ状態)が維持されることを抑制することができる。
【0098】
また、本実施形態におけるメンブレンスイッチ1では、比較例におけるメンブレンスイッチ1Bと比較して薄型化を図ることができる。
【0099】
すなわち、本実施形態では、上側絶縁層30を上側電極シート10に印刷して硬化させることにより形成し、下側絶縁層40を下側電極シート20に印刷して硬化させることにより形成する。ここで、上側絶縁層30及び下側絶縁層40を印刷法により形成することで、比較例のPETフィルムからなるスペーサ30Bと比較して、上側絶縁層30及び下側絶縁層40を薄くできる。また、本実施形態では、粘着層50を1層形成するのに対して、比較例では上下の粘着層40B、50Bを形成する。これにより、本実施形態では、粘着剤の厚さを、比較例と比較して小さくでき、本実施形態におけるメンブレンスイッチ1では、比較例におけるメンブレンスイッチ1Bと比較して薄型化を図ることができる。
【0100】
特に、本実施形態では、上側絶縁層30の厚さと、粘着層50の厚さと、下側絶縁層40の厚さとの合計が、上側基材11又は下側基材21の厚さよりも小さくなるように設定されている。このため、メンブレンスイッチ1の薄型化を可能にすると共に、上側電極シート10や下側電極シート20の接点部に生じる凹みを抑制することができる。
【0101】
図5は本発明の第1実施形態に係るメンブレンスイッチ1を示す平面図であり、
図6は本発明の第1実施形態に係るメンブレンスイッチ1を示す分解斜視図である。なお、
図5及び
図6では、メンブレンスイッチ100を下側電極シート20側から見た場合を示している。
【0102】
図5及び
図6に示すように、メンブレンスイッチ1は、上側電極12と下側電極22とからなる電極対2を複数備える。また、メンブレンスイッチ1は、上側基材11の一辺に設けられ、複数の上側引出配線13が形成された上側テール部14と、下側基材21の一辺に設けられ、複数の下側引出配線23が形成された下側テール部24と、を備えている。
【0103】
上側引出配線13は、一列に並んだ複数の上側電極12を接続し、上側テール部14の先端まで延びている。ここで、複数の上側引出配線13は、2本の上側引出配線13と残りの1本の上側引出配線13とが相互に交差するように配線されている。そのため、2本の上側引出配線13と残りの1本の上側引出配線13とが相互に交差する2箇所の交差点には、ジャンパ部15が設けられている。このジャンパ部15の詳細構成については後述する。
【0104】
これに対し、下側引出配線23は、一列に並んだ複数の下側電極22を接続し、下側テール部24の先端まで延びるように配線されている。複数の下側引出配線23は、相互に交差しないように配線されている。そのため、下側引出配線23はジャンパ部を備えていない。
【0105】
上側絶縁層30は、上側引出配線13を被覆するように、上側基材11に対して直接的且つ一体的に形成されている。本実施形態では、開口部31と対向する位置を除いて、上側基材11上に形成された上側引出配線13が、上側絶縁層30によって被覆されている。
【0106】
なお、上側テール部14上の上側引出配線13は、上側絶縁層30により被覆されてもよく、上側絶縁層30とは別に、上側テール部14上に形成された他の絶縁層により被覆されていてもよい。また、上側基材11上の上側引出配線13が、上側基材11の全域に亘って上側絶縁層30により被覆されることは必須ではなく、上側基材11上の上側引出配線13の一部が、他の絶縁材料により被覆されていてもよい。
【0107】
下側絶縁層40も、下側引出配線23を被覆するように、下側基材21に対して直接的且つ一体的に形成されている。本実施形態では、第2の開口部41と対向する位置を除いて、下側基材21上の下側引出配線23が、下側絶縁層40によって被覆されている。
【0108】
なお、下側テール部24上の下側引出配線23は、下側絶縁層40により被覆されていてもよく、下側絶縁層40とは別に下側テール部24上に形成された他の絶縁材料により被覆されていてもよい。また、下側基材21上の下側引出配線23が、下側基材21の全域に亘って下側絶縁層40により被覆されていることは必須ではなく、下側基材21上の下側引出配線23の一部が、他の絶縁材料により被覆されていてもよい。
【0109】
図7は
図5の部分拡大図のVII-VII線に沿った断面図である。
【0110】
図5の拡大図及び
図7に示すように、1本の上側引出配線13は、上側基材11の一辺に沿って延びる直線部131を備え、残りの2本の上側引出配線13は、直線部131と交差する直線部132を備える。直線部132は、上側基材11上においては、直線部131と交差しないように第1の本体部1321と第2の本体部1322とに分断されている。この第1の本体部1321の端部と、第2の本体部1322の端部とがジャンパ部15により接続されている。
【0111】
上側絶縁層30は、一対のジャンパ開口部33,33を備えている。一方のジャンパ開口部33は、第1の本体部1321の端部に対向する位置に形成されている。この第1の本体部1321の端部は、透過平面視において当該端部とジャンパ開口部33とが相互に重なり合うことで、上側絶縁層30から露出している。
【0112】
同様に、他方のジャンパ開口部33は、第2の本体部1322の端部に対向する位置に形成されている。この第2の本体部1322の端部は、透過平面視において当該端部とジャンパ開口部33とが相互に重なり合うことで、上側絶縁層30から露出している。
【0113】
ジャンパ部15は、上側基材11上の直線部131を跨ぐように形成されており、一対のジャンパ接続部15Aと、一対のジャンパ接続部15Aを接続するジャンパ配線部15Bとを備えている。それぞれのジャンパ接続部15Aは、ジャンパ開口部33内に充填されており、第1の本体部1321の端部に接続されていると共に第2の本体部1322の端部に接続されている。
【0114】
このジャンパ部15は、銀ペーストや銅ペーストやカーボンペースト等の導電性ペーストを印刷して硬化させることにより形成されている。ジャンパ部15を形成する印刷方法としては、スクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法等を例示することができる。
【0115】
本実施形態では、上側絶縁層30上に、ジャンパ部15に対応する領域にジャンパ絶縁層70が形成されている。これに対し、ジャンバ部15の周囲においては、上側絶縁層30と粘着層50との間に絶縁層は介在しておらず、上側絶縁層30と粘着層50とが直接接触している。
【0116】
このジャンパ絶縁層70は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等のレジスト材料を、上側絶縁層30上に塗布して硬化させることにより形成されている。ジャンパ配線部15Bは、このジャンパ絶縁層70上に形成されている。なお、特に図示しないが、ジャンパ絶縁層70を形成せずに、上側絶縁層30上にジャンパ配線部15Bを形成してもよい。
【0117】
このように、本実施形態では、ジャンパ部15と上側基材11の上面とにより区画される空間には、上側絶縁層30を構成する絶縁材料と、ジャンパ絶縁層70を構成する絶縁材料と、が充填されている。これにより、相互に交差する直線部131とジャンパ部15との間の電気絶縁性を確実に確保することができる。
【0118】
さらに、本実施形態では、粘着層50においてジャンパ配線部15Bに対応する部分に、当該粘着層50を上下方向に貫通する開口部54が形成されている。ジャンパ配線部15Bは、この開口部54内に入り込んでおり、粘着層50とジャンパ配線部15Bとが重ならないように構成されている。これにより、上側基材11とジャンパ絶縁層70とが重なり合う位置においても、上側基材11を平らに構成することができる。
【0119】
特に、メンブレンスイッチの外縁近傍にジャンパ部が配置されている場合には、粘着層がジャンパ部による高低差に追従できず、当該ジャンパ部の周囲に空隙が形成され、当該空隙がメンブレンスイッチの外側と連通してしまうことがある。このような場合には、メンブレンスイッチの防水性能が劣ってしまうおそれがある。
【0120】
これに対し、本実施形態では、ジャンパ配線部15Aが粘着層50の開口部54内に入り込んでいるので、ジャンパ部15による粘着層50の高低差が低減される。このため、ジャンパ部15の周囲での空隙の発生が抑制されるので、メンブレンスイッチ1の防水性能の向上を図ることができる。
【0121】
また、特に限定されないが、ジャンパ配線部15Bの厚さtdとジャンパ絶縁層70の厚さteの合計は、粘着材の厚さtaと実質的に同一となっていることが好ましい(td+te=ta)。これにより、上側基材11とジャンパ絶縁層70とが重なり合う位置においても、上側基材11を一層平らに構成することができる。
【0122】
なお、
図8に示すように、上側基材11において直線部131とジャンパ部15とが相互に交差する部分を、上側絶縁層30とは別の被覆層80で覆ってもよい。
図8は本発明の第2実施形態におけるメンブレンスイッチのジャンパ構造を示す図である。この被覆層80は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等のレジスト材料を、上側基板11上に塗布して硬化させることにより形成されている。この場合には、ジャンパ開口部33は、当該被覆層80と上側絶縁層30との境界に設けられている。
【0123】
これに対し、
図7に示す実施形態では、被覆部80に相当する部分を構成する材料の組成は、上側絶縁層30を構成する材料の組成と同一となっている。すなわち、被覆部80に相当する部分が、上側絶縁層30と一体的に形成され、上側絶縁層30の一部を構成している。そして、このように一体形成された上側絶縁層30において本体部1321,1322の端部に対向する位置に、ジャンパ開口部33が形成されている。
【0124】
以上のように、本実施形態では、基材11,21に形成されたベース部16,26によって、絶縁層30,40の開口31,41の縁部32,42が盛り上がっている。こうした盛り上がりにより、粘着材のダレを相殺することができるので、メンブレンスイッチ1の押圧操作がされた後に、基材11,21が粘着層50の縁部53の形状に倣った状態で接着した状態(すなわち、電極シート10,20の接点部が凹んだ状態)が維持されることを抑制することができる。
【0125】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0126】
ベース部16,26は、上下の基板11,21の少なくとも一方に設けられていればよい。
図9は本発明の第3実施形態におけるメンブレンスイッチ接点部を示す断面図である。例えば、
図9に示すように、上側基板11のみに上側ベース部16を設けて、下側基板21には下側ベース部26を設けなくてもよい。或いは、特に図示しないが、上側基板11には上側ベース部16を設けずに、下側基板21のみに下側ベース部26を設けてもよい。
【0127】
例えば、上側基板11のみに上側ベース部16を形成する場合には、当該上側ベース部11の厚さが、以下の(4)式を満たしていることが好ましい。これにより、上側ベース部16に対応する箇所で、基材11,21の表面に凹みや盛り上がりが生じるのを抑制することができる。
【0128】
1/2×ta≦tb≦ta … (4)
【0129】
但し、上記の(4)式において、taは、粘着層50の厚さであり、tbは、上側ベース部16の厚さである。
【0130】
絶縁層30,40も、上下の基板11,21の少なくとも一方に設けられていればよい。
図10は、本発明の第4実施形態におけるメンブレンスイッチの接点部を示す断面図である。例えば、
図10に示すように、上側基板11のみに上側絶縁層30を設けて、下側基板21には下側絶縁層40を設けなくてもよい。この場合には、上側電極シート10の上側絶縁層30の下面と、下側電極シート20の下側基板21の上面とが粘着層50により粘着される。或いは、特に図示しないが、上側基板11に上側絶縁層30を設けずに、下側基板21のみに下側絶縁層40を設けてもよい。
【0131】
また、上記の第1実施形態では、上側電極シート10がジャンパ部15を備えている例について説明したが、下側引出配線23が相互に交差している場合には、下側電極シート20がジャンパ部を備えてもよい。或いは、上側電極シート10がジャンパ部15を備えていると共に、下側電極シート20がジャンパ部を備えてもよい。