(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771105
(24)【登録日】2020年9月30日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】フィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムおよびその動作方法。
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20201012BHJP
【FI】
G06N20/00
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-532041(P2019-532041)
(86)(22)【出願日】2017年9月30日
(65)【公表番号】特表2020-504374(P2020-504374A)
(43)【公表日】2020年2月6日
(86)【国際出願番号】CN2017104988
(87)【国際公開番号】WO2018120963
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2019年6月14日
(31)【優先権主張番号】201611252003.X
(32)【優先日】2016年12月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】594196624
【氏名又は名称】山東大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】許 宏吉
(72)【発明者】
【氏名】元 輝
(72)【発明者】
【氏名】周 英明
(72)【発明者】
【氏名】李 恬闊
(72)【発明者】
【氏名】房 海騰
(72)【発明者】
【氏名】潘 玲玲
(72)【発明者】
【氏名】孫 君鳳
(72)【発明者】
【氏名】杜 保臻
【審査官】
山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第105654134(CN,A)
【文献】
特開2011−069601(JP,A)
【文献】
特開2013−015271(JP,A)
【文献】
特表2004−533660(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0262556(US,A1)
【文献】
特開2013−089018(JP,A)
【文献】
特表2005−535200(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/014076(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0299298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリジナルコンテキスト情報収集モジュール、コンテキスト融合モジュール、コンテキスト推論モジュール、コンテキストアプリケーションモジュール、およびユーザモジュールを含むフィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムにおいて、
前記オリジナルコンテキスト情報収集モジュールは前記コンテキスト融合モジュールに接続され、前記コンテキスト融合モジュール、前記コンテキスト推論モジュール、前記コンテキストアプリケーションモジュール、および前記ユーザモジュールは周期的に順番に接続されることと;
前記オリジナルコンテキスト情報収集モジュールは、異なる情報ソースから異なる方法でオリジナルコンテキスト情報を収集するように構成されている。オリジナルコンテキスト情報は、異なるセンサから収集されたオリジナルデータを指すことと;
前記コンテキスト融合モジュールは、オリジナルコンテキスト情報に対して融合処理を実行し、前記コンテキスト推論モジュールによって使用可能な一次コンテキスト情報を抽出するように構成されることと;
前記コンテキストアプリケーションモジュールは、高度なコンテキスト情報を利用して、対応するアプリケーションまたはデバイスを調整して、ユーザに適切なサービスを提供することと;
前記ユーザモジュールは、ユーザからの明示的または暗示的なフィードバックを抽出し、定量的な評価の後、各種類のコンテキスト情報の精度に関する判断情報に変換し、主客観的重み管理ユニットに送り、様々なコンテキスト情報の主観的および客観的重み寄与率を最適化することと;
前記明示的フィードバックは、ユーザが積極的に行うフィードバックの動作を指し、前記暗示的フィードバックは、ユーザ表情認識およびユーザ行動分析を通じて前記コンテキストアウェアネスシステムによって間接的に推論されたユーザデータを指すこと;とを含み、
前記コンテキスト融合モジュールは、逐次接続されたコンテキスト情報前処理ユニット、主客観的重み管理ユニット、およびコンテキスト情報融合ユニットを含むフィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムにおいて、
前記コンテキスト情報前処理ユニットは、オリジナルコンテキスト情報をデータモデル化し、モデル化モードは「感知タイプ+感知情報」であり、オリジナルコンテキスト情報を分類し、平均化法、最小二乗法、最尤推定法、またはカルマンフィルタ方法により、同類コンテキスト情報に対して欠損値処理と融合操作を実行することと;
主客観的重み管理ユニットは、システムの感知したイベントタイプに従って、重みを割り当てる必要があるコンテキスト情報の種類を識別し、Delphiアルゴリズム、巡回スコアリング法、二項係数法、および階層分析法を含む主観的重み付けアルゴリズムを使用することによって各種類のコンテキスト情報の主観的重みを計算し、そして、主成分分析法、変動係数法、エントロピー重み付け法、多目的計画法を含む客観的重み付けアルゴリズムによって、様々な種類のコンテキスト情報の客観的重みを計算し、ユーザフィードバックの評価に従って、情報を定量化し、動的に各タイプのコンテキスト情報の主観的重みと客観的重みの寄与率を計算し、最後に寄与率に従って様々なコンテキスト情報の主観的および客観的重みを得ることと;
前記コンテキスト情報融合ユニットは、前記主客観的重み管理ユニットによって与えられた各種類のコンテキスト情報および主客観的重みを、ニューラルネットワークに基づく融合アルゴリズム、カルマンフィルタに基づく融合アルゴリズム、ファジィ理論に基づく融合アルゴリズム、およびDempster−Shafer理論に基づく融合アルゴリズムを含む情報融合アルゴリズムと組み合わせて一次コンテキスト情報を得ること;とを含み、更に、
前記コンテキスト推論モジュールは、順次接続された決定管理ユニットとコンテキスト情報推論ユニットとを含むフィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムにおいて、
前記決定管理ユニットは、一次コンテキスト情報のタイプ及び感知されたイベントのタイプに従って適切な推論方法を選択し、複数の情報融合アルゴリズムの結果に異なる重みを割り当て、推論精度を改善することと;
前記コンテキスト情報推論ユニットは、前記決定管理ユニットから与えられたオントロジー推論方法、規則に基づく推論方法、証拠に基づく推論方法、およびベイジアンネットワークに基づく推論方法が含む推論方法に従って、前記コンテキスト情報融合ユニットの異なる融合アルゴリズムによって生成された一次コンテキスト情報を推論し、前記コンテキストアプリケーションモジュールによって直接使用されることができる高度なコンテキスト情報を獲得すること;とを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記フィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムを動作させる方法は、特徴が以下のステップである;
S01:オリジナルコンテキスト情報収集;
各種類のセンサからオリジナルコンテキスト情報を取得する、
S02:コンテキスト情報モデリング;
前記コンテキスト情報前処理ユニットは、オリジナルコンテキスト情報をデータモデル化し、モデル化モードは「感知タイプ+感知情報」である、
S03:コンテキスト情報分類融合;
前記コンテキスト
情報前処理ユニットは、オリジナルコンテキスト情報を分類し、すなわち同じ属性を表すコンテキスト情報を同類のオリジナルコンテキスト情報に分類し、同類のオリジナルコンテキスト情報の間で、平均化法、最小二乗法、最尤推定法またはカルマンフィルタ方法によって欠損値処理と融合動作を行う、
S04:アウェアネスに必要なコンテキスト情報の種類の確認;
前記主客観的重み管理ユニットは、システムの感知したイベントの種類と各種類コンテキスト情報と該イベントとの相関関係に応じて重み付けが必要なコンテキスト情報の種類を確認し、重み付けが必要なコンテキスト情報の種類数をnとする、
S05:各種類コンテキスト情報の主観的な重みの計算;
Wo
iはi番目のコンテキスト情報の
客観的重み値を表す、
S07:フィードバックがあるかどうかの判断;
主客観的重み管理ユニットは、ユーザモジュールからのユーザフィードバックがあるかどうかを判断し、そうであればステップS08を実行し、そうでなければステップS09を実行する、
S08:寄与率の計算;
前記主客観的重み管理ユニットは、ユーザフィードバックの評価に応じて主観的および客観的重みの寄与率を算出し、主観的重みの寄与率はαであり、客観的重みの寄与率は1−αであり、計算式は式(I)の通りである
【数1】
(I)
(式(I)において、T
iはユーザによって生成されたフィードバックの総数である;R
iは、ユーザフィードバックの場合に、ユーザフィードバックと一致する、i番目のコンテキスト情報の融合推論によって得られる結果の数である)、
S09:主客観的な重みの合成;
前記主客観的重み管理ユニットは、寄与率に応じて、各コンテキスト情報の主観的重みと客観的重みとを合成し、各コンテキスト情報の主客観的重み値を求め、合成式は式(II)に示す通りであり、
【数2】
(II)
S10:マルチアルゴリズムコンテキスト情報融合;
前記コンテキスト情報融合ユニットは、前記主客観的重みを組み合わせ、異なるコンテキスト情報融合アルゴリズムを使用し、複数の種類のコンテキスト情報をそれぞれ融合し、各情報融合アルゴリズムはシステムのすべての感知結果の可能性を示すために使用される確率ベクトルを取得する。これらの同一または異なる確率ベクトルは、コンテキスト情報推論のための一次コンテキスト情報として使用される、
S11:コンテキスト情報の推論;
前記
コンテキスト推論モジュールは、前記決定管理ユニットによって与えられた推論アルゴリズムを用いてステップS10で得られた一次コンテキスト情報を推論し、対応する推論アルゴリズムによって、いくつかの同一または異なる確率ベクトルを推論して最終感知結果、すなわち前記コンテキストアプリケーションモジュールで利用可能な高度なコンテキスト情報を取得する、
S12:コンテキストアプリケーション;
高度なコンテキスト情報を受信した後、前記コンテキストアプリケーションモジュールは対応するアプリケーションまたは装置を調整してユーザに適切なサービスを提供する、
S13:ユーザフィードバック;
前記ユーザモジュールは、コンテキストアプリケーションの使用中のユーザによるシステムの調整、またはシステムの使用中のユーザの行動を、ユーザの明示的なフィードバックまたは暗示的なフィードバックとして記録する、
S14:評価定量化;
前記ユーザモジュールは、ユーザ明示的フィードバックまたは暗示的フィードバックを抽出し、各種類のコンテキスト情報の精度を表示する判断情報に変換し、前記主観的重み及び客観的重みのそれぞれの寄与率を最適化するために情報を前記主客観的重み管理ユニットに送信する、
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムおよびその作業方法に関し、コンテキストアウェアネスの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2016年12月30日に出願され、「フィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムおよびその動作方法」と題する特許文献1に対する優先権を出張する。
【0003】
無線センサネットワーク、ヒューマン-コンピュータインタラクションおよびインテリジェントコンピューティング技術の大規模な応用により、「透明な」インタラクションをユーザに提供することを目的としたコンテキストアウェアネス技術が急速に発展してきました。コンテキストアウェアネスシステムは、コンピューティングシステムをデイバス中心から人間中心に変換することに実現し、該コンピューティングシステムは、興味のあるコンテキスト情報を自動的に収集し、アプリケーションコンテキストの変更を認識し、収集されたコンテキスト情報に従って能動的に関連アプリケーションサービスをユーザに提供することができる。
無線センサネットワーク技術はますます成熟してきており、計算能力を有する多数のマイクロプロセッサノードからなる無線センサネットワークを使用して、いつでもどこでも様々な情報を取得することができる。現在のアプリケーションに関連するコンテキスト情報を正確かつ定量的に収集することに加えて、コンテキストアウェアネスシステムは、大量の情報に基づいて効率的なおよびインテリジェントな、そして個別化されたサービスを作ることもできる。
【0004】
一般に、異なる種類のコンテキスト情報は、同じイベントの状況や状態を反映することができる、しかし、システムによって感知されるイベントには異なる影響を与える。コンテキストアウェアネスシステムの最終的な目的は、ユーザ向けのパーソナライズサービスを提供することである。システム推論と融合の過程において様々なコンテキスト情報がユーザに異なる影響を与えること、すなわち異なる重みを反映して、システムがコンテキスト情報の推論と融合過程においてユーザの個人的な好みを反映することを必要とする。したがって、推論と融合過程における異なる種類のコンテキスト情報の違いと意思決定への影響の程度をどのように反映させるか、および感知精度を向上させるためにユーザフィードバックに従ってシステムを動的に調整する方法は、コンテキストアウェアネス技術の大きな課題である。
さらに、近年、研究者はコンテキスト獲得、コンテキスト処理、コンテキスト分布およびコンテキストアプリケーションの分野で多くの研究を行ってきたが、多くの研究作業は特定のアプリケーションシナリオに基づいており、システムアーキテクチャと応用論理は密接に関連している。それは複数のシステム間の接続性と相互運用性を妨げ、システムの拡張と再利用には不利である。
【0005】
要約すると、既存のコンテキストアウェアネスシステムは完璧ではなく、それほどインテリジェントではなく、アプリケーションドメインによって制限されているものもある。既存の問題を改善することに基づいて、パーソナライズサービスをより正確かつインテリジェントにユーザに提供する方法は、コンテキストアウェアネスの分野における研究の焦点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国仮特許出願第201611252003.X号
【発明の概要】
【0007】
既存技術の欠点を考慮して、フィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムとその作業方法が提供される。
【0008】
コンテキストアウェアネスシステムは、大量の異なる種類のオリジナルコンテキスト情報を処理した後に最終決定情報が取得される。通常、異なるタイプのコンテキスト情報は、同じイベントの状況や状態を反映することができる、しかし、システムによって感知されるイベントには異なる影響を与える。更に、ユーザにサービスを提供するとき、システムは、ユーザの主観的な嗜好情報を十分に考慮し、そして「人向け」を達成するべきである。フィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムはユーザの嗜好情報と様々なコンテキスト情報の意思決定に対する客観的影響の両方を考慮する。そして、コンテキスト情報融合推論過程における異なる感知事象によって適切なコンテキスト情報タイプを選択し、異なる重み係数が異なる種類のコンテキスト情報に割り当てられる。同時に、メカニズムはユーザのフィードバック情報に基づいて各タイプのコンテキスト情報の主観的重みと客観的重みの寄与率を動的に更新して最適化し、次に様々なコンテキスト情報の主客観的重み、すなわち主観的重みと客観的重みの最適組合せ値を取得し、コンテキストアウェアネスシステムの知能と正確性を改善し、パーソナライズされたサービスをユーザに提供することができる。
【0009】
オリジナルコンテキスト情報は多様で、必然的に異種のデータが存在する。類似コンテキスト情報はある程度類似しており、簡約および併合がより容易であり、まず類似コンテキスト情報の融合を実行し、次に動的に主客観的重み情報を結合して複数の異種コンテキスト情報の融合を実行し、正確な感知結果をより効率的に生み出すことができる。
【0010】
オリジナルコンテキスト情報収集モジュール、コンテキスト融合モジュール、コンテキスト推論モジュール、コンテキストアプリケーションモジュール、およびユーザモジュールを含むフィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムにおいて、前記オリジナルコンテキスト情報収集モジュールは前記コンテキスト融合モジュールに接続され、前記コンテキスト融合モジュール、前記コンテキスト推論モジュール、前記コンテキストアプリケーションモジュール、および前記ユーザモジュールは周期的に順番に接続される。
【0011】
前記オリジナルコンテキスト情報収集モジュールは、異なる情報ソースから異なる方法でオリジナルコンテキスト情報を収集するように構成されている。ここで、オリジナルコンテキスト情報は、異なるセンサから収集された生データを指す。
【0012】
前記コンテキスト融合モジュールは、オリジナルコンテキスト情報に対して融合処理を実行し、前記コンテキスト推論モジュールによって使用可能な一次コンテキスト情報を抽出するように構成される。
【0013】
前記コンテキストアプリケーションモジュールは、高度なコンテキスト情報を利用して、対応するアプリケーションまたはデバイスを調整して、ユーザに適切なサービスを提供する。
【0014】
前記ユーザモジュールは、ユーザからの明示的または暗示的なフィードバックを抽出し、定量的な評価の後、各種類のコンテキスト情報の精度に関する判断情報に変換し、主客観的重み管理ユニットに送り、様々なコンテキスト情報の主観的および客観的重み寄与率を最適化する。
【0015】
前記明示的フィードバックは、ユーザが積極的に行うフィードバックの動作を指し、例え満足度評価メカニズムを使用して収集されたユーザデータであり、前記暗示的フィードバックは、ユーザ表情認識およびユーザ行動分析を通じて前記コンテキストアウェアネスシステムによって間接的に推論されたユーザデータを指す。
【0016】
前記コンテキスト融合モジュールは、逐次接続されたコンテキスト情報前処理ユニット、主客観的重み管理ユニット、およびコンテキスト情報融合ユニットを含む。
【0017】
前記コンテキスト情報前処理ユニットは、オリジナルコンテキスト情報をデータモデル化し、モデル化モードは「感知タイプ+感知情報」であり、オリジナルコンテキスト情報を分類し、平均化法、最小二乗法、最尤推定法、またはカルマンフィルタ方法により、同類コンテキスト情報に対して欠損値処理と融合操作を実行する。
【0018】
主客観的重み管理ユニットは、システムの感知したイベントタイプに従って、重みを割り当てる必要があるコンテキスト情報の種類を識別し、Delphiアルゴリズム、巡回スコアリング法、二項係数法、および階層分析法(Analytic Hierarchy Process,AHP)を含む主観的重み付けアルゴリズムを使用することによって各種類のコンテキスト情報の主観的重みを計算し、そして、主成分分析法(Principal Components Analysis,PCA)、変動係数法、エントロピー重み付け法、多目的計画法を含む客観的重み付けアルゴリズムによって、様々な種類のコンテキスト情報の客観的重みを計算し、ユーザフィードバックの評価に従って、情報を定量化し、動的に各タイプのコンテキスト情報の主観的重みと客観的重みの寄与率を計算し、最後に寄与率に従って様々なコンテキスト情報の主観的および客観的重みを得る。
【0019】
前記コンテキスト情報融合ユニットは、前記主観的目的重み管理ユニットによって与えられた各種類のコンテキスト情報および主客観的重みを、ニューラルネットワークに基づく融合アルゴリズム、カルマンフィルタに基づく融合アルゴリズム、ファジィ理論に基づく融合アルゴリズム、およびDempster−Shafer理論に基づく融合アルゴリズムを含む情報融合アルゴリズムと組み合わせて一次コンテキスト情報を得る。
【0020】
前記コンテキスト推論モジュールは、順次接続された決定管理ユニットとコンテキスト情報推論ユニットとを含む。
【0021】
前記決定管理ユニットは、一次コンテキスト情報のタイプ及び感知されたイベントのタイプに従って適切な推論方法を選択し、複数の情報融合アルゴリズムの結果に異なる重みを割り当て、推論精度を改善する。
【0022】
前記コンテキスト情報推論ユニットは、前記決定管理ユニットから与えられたオントロジー推論方法、規則に基づく推論方法、証拠に基づく推論方法、およびベイジアンネットワークに基づく推論方法が含む推論方法に従って、前記コンテキスト情報融合ユニットの異なる融合アルゴリズムによって生成された一次コンテキスト情報を推論し、前記コンテキストアプリケーションモジュールによって直接使用されることができる高度なコンテキスト情報を獲得する。
【0023】
前記コンテキストアウェアネスシステムを動作させる方法は、特徴が以下のステップである:
S01:オリジナルコンテキスト情報収集
各種類のセンサからオリジナルコンテキスト情報を取得する。
【0024】
S02:コンテキスト情報モデリング
前記コンテキスト情報前処理ユニットは、オリジナルコンテキスト情報をデータモデル化し、モデル化モードは「感知タイプ+感知情報」である。
【0025】
S03:コンテキスト情報分類融合
前記コンテキスト前処理ユニットは、オリジナルコンテキスト情報を分類し、すなわち同じ属性を表すコンテキスト情報を同類のオリジナルコンテキスト情報に分類し、同類のオリジナルコンテキスト情報の間で、平均化法、最小二乗法、最尤推定法またはカルマンフィルタ方法によって欠損値処理と融合動作を行う。
【0026】
S04:アウェアネスに必要なコンテキスト情報の種類を確認する
前記主客観的重み管理ユニットは、システムの感知したイベントの種類と各種類コンテキスト情報と該イベントとの相関関係に応じて重み付けが必要なコンテキスト情報の種類を確認し、重み付けが必要なコンテキスト情報の種類数をnとする。
【0029】
S07:フィードバックがあるかどうかを判断する
主客観的重み管理ユニットは、ユーザモジュールからのユーザフィードバックがあるかどうかを判断し、そうであればステップS08を実行し、そうでなければステップS09を実行する。
【0030】
S08:寄与率を計算する
前記主客観的重み管理ユニットは、ユーザフィードバックの評価に応じて主観的および客観的重みの寄与率を算出し、主観的重みの寄与率はαであり、客観的重みの寄与率は1−αであり、計算式は式(I)の通りである。
【0032】
式(I)において、T
iはユーザによって生成されたフィードバックの総数である;R
iは、ユーザフィードバックの場合に、ユーザフィードバックと一致する、i番目のコンテキスト情報の融合推論によって得られる結果の数である。
【0033】
S09:主客観的な重みを合成する
前記主客観的重み管理ユニットは、寄与率に応じて、各コンテキスト情報の主観的重みと客観的重みとを合成し、各コンテキスト情報の主客観的重み値を求め、合成式は式(II)に示す通りである。
【0036】
S10:マルチアルゴリズムコンテキスト情報融合
前記コンテキスト情報融合ユニットは、前記主客観的重みを組み合わせ、異なるコンテキスト情報融合アルゴリズムを使用し、複数の種類のコンテキスト情報をそれぞれ融合し、各情報融合アルゴリズムはシステムのすべての感知結果の可能性を示すために使用される確率ベクトルを取得する。これらの同一または異なる確率ベクトルは、コンテキスト情報推論のための一次コンテキスト情報として使用される。
【0037】
S11:コンテキスト情報の推論
前記推論モジュールは、前記決定管理ユニットによって与えられた推論アルゴリズムを用いてステップS10で得られた一次コンテキスト情報を推論し、対応する推論アルゴリズムによって、いくつかの同一または異なる確率ベクトルを推論して最終感知結果、すなわち前記コンテキストアプリケーションモジュールで利用可能な高度なコンテキスト情報を取得する。
【0038】
S12:コンテキストアプリケーション
高度なコンテキスト情報を受信した後、前記コンテキストアプリケーションモジュールは対応するアプリケーションまたは装置を調整してユーザに適切なサービスを提供する。
【0039】
S13:ユーザフィードバック
前記ユーザモジュールは、コンテキストアプリケーションの使用中のユーザによるシステムの調整、またはシステムの使用中のユーザの行動を、ユーザの明示的なフィードバックまたは暗示的なフィードバックとして記録する。
【0040】
S14:評価定量化
前記ユーザモジュールは、ユーザ明示的フィードバックまたは暗示的フィードバックを抽出し、各種類のコンテキスト情報の精度を表示する判断情報に変換し、前記主観的重み及び客観的重みのそれぞれの寄与率を最適化するために情報を前記主客観的重み管理ユニットに送信する。
【0041】
異なるタイプのコンテキスト情報は、同じイベントの状況や状態を反映することができる、しかし、システムによって検出精度への影響を与える。更に、ユーザにサービスを提供すつとき、システムは、ユーザの主観的な嗜好情報を十分に考慮し、そして「人向け」を達成するべきである。フィードバックに基づく自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムはユーザの嗜好情報と様々なコンテキスト情報の意思決定に対する客観的影響の両方を考慮し、コンテキスト情報融合推論過程における異なる感知事象に対する適切なコンテキスト情報タイプを選択し、異なる重み係数が異なる種類のコンテキスト情報に割り当てられる。コンテキスト情報の融合推論の効率と正確性を向上させ、よりスマートでパーソナライズされたサービスをユーザに提供できる。
【0042】
フィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムはユーザのフィードバック情報に基づいて、情報を定量化し、各タイプのコンテキスト情報の主観的重みと客観的重みの寄与率を動的に更新して最適化し、次に様々なコンテキスト情報の主客観的重み、すなわち主観的重みと客観的重みの最適組合せ値を取得し、コンテキストアウェアネスシステムの知能と正確性を改善し、パーソナライズされたサービスをユーザに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】フィードバックに基づく自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムの構造フレームを詳細に示す説明図
【
図2】フィードバックに基づく自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムの作業フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の詳細な説明は、本開示の実施形態および該実施形態を実施できる方法を説明している。本開示を実行するのに最良の形態を開示したが、当業者は、本開示を実行または実施するために他の実施形態も可能である。
【0045】
図1に示すように、オリジナルコンテキスト情報収集モジュール、コンテキスト融合モジュール、コンテキスト推論モジュール、コンテキストアプリケーションモジュール、およびユーザモジュールを含む実施の形態1としてフィードバックベースの自己適応主客観的重みコンテキストアウェアネスシステムが提供される。
【0046】
オリジナルコンテキスト情報収集モジュールはコンテキスト融合モジュールに接続され、コンテキスト融合モジュール、コンテキスト推論モジュール、前コンテキストアプリケーションモジュール、およびユーザモジュールは周期的に順番に接続される。
オリジナルコンテキスト情報収集モジュールは、異なる情報ソースから異なる方法でオリジナルコンテキスト情報を収集するように構成されている。ここで、オリジナルコンテキスト情報は、異なるセンサから収集された生データを指す。コンテキスト融合モジュールは、オリジナルコンテキスト情報に対して融合処理を実行し、コンテキスト推論モジュールによって使用可能な一次コンテキスト情報を抽出するように構成される。コンテキストアプリケーションモジュールは、高度なコンテキスト情報を利用して、対応するアプリケーションまたはデバイスを調整して、ユーザに適切なサービスを提供する。ユーザモジュールは、ユーザからの明示的または暗示的なフィードバックを抽出し、定量的な評価の後、各種類のコンテキスト情報の精度に関する判断情報に変換し、主客観的重み管理ユニットに送り、様々なコンテキスト情報の主観的および客観的重み寄与率を最適化する。明示的フィードバックは、ユーザが積極的に行うフィードバックの動作を指し、例え満足度評価メカニズムを使用して収集されたユーザデータであり、暗示的フィードバックは、ユーザ表情認識およびユーザ行動分析を通じて前記コンテキストアウェアネスシステムによって間接的に推論されたユーザデータを指す。
【0047】
コンテキスト融合モジュールは、逐次接続されたコンテキスト情報前処理ユニット、主客観的重み管理ユニット、およびコンテキスト情報融合ユニットを含む。
コンテキスト情報前処理ユニットは、オリジナルコンテキスト情報をデータモデル化し、モデル化モードは「感知タイプ+感知情報」であり、オリジナルコンテキスト情報を分類し、平均化法、最小二乗法、最尤推定法、またはカルマンフィルタ方法により、同類コンテキスト情報に対して欠損値処理と融合操作を実行する。
【0048】
主客観的重み管理ユニットは、システムの感知したイベントタイプに従って、重みを割り当てる必要があるコンテキスト情報の種類を識別し、Delphiアルゴリズム、巡回スコアリング法、二項係数法、および階層分析法(Analytic Hierarchy Process,AHP)を含む主観的重み付けアルゴリズムを使用することによって各種類のコンテキスト情報の主観的重みを計算し、そして、主成分分析法(Principal Components Analysis,PCA)、変動係数法、エントロピー重み付け法、多目的計画法を含む客観的重み付けアルゴリズムによって、様々な種類のコンテキスト情報の客観的重みを計算し、ユーザフィードバックの評価に従って、情報を定量化し、動的に各タイプのコンテキスト情報の主観的重みと客観的重みの寄与率を計算し、最後に寄与率に従って様々なコンテキスト情報の主観的および客観的重みを得る。
【0049】
コンテキスト情報融合ユニットは、主観的目的重み管理ユニットによって与えられた各種類のコンテキスト情報および主客観的重みを、ニューラルネットワークに基づく融合アルゴリズム、カルマンフィルタに基づく融合アルゴリズム、ファジィ理論に基づく融合アルゴリズム、およびDempster−Shafer理論に基づく融合アルゴリズムを含む情報融合アルゴリズムと組み合わせて一次コンテキスト情報を得る。
コンテキスト推論モジュールは、順次接続された決定管理ユニットとコンテキスト情報推論ユニットとを含む。
【0050】
決定管理ユニットは、一次コンテキスト情報のタイプ及び感知されたイベントのタイプに従って適切な推論方法を選択し、複数の情報融合アルゴリズムの結果に異なる重みを割り当て、推論精度を改善する。
コンテキスト情報推論ユニットは、前記決定管理ユニットから与えられたオントロジー推論方法、規則に基づく推論方法、証拠に基づく推論方法、およびベイジアンネットワークに基づく推論方法が含む推論方法に従って、コンテキスト情報融合ユニットの異なる融合アルゴリズムによって生成された一次コンテキスト情報を推論し、コンテキストアプリケーションモジュールによって直接使用されることができる高度なコンテキスト情報を獲得する。
【0051】
実施の形態1で説明したコンテキストアウェアネスシステムの工作方法は、
図2に示すように、コンテキストアウェアコンピューティングの場面であるスマートフィットネスシステムを例としたものである。体重、身長、心拍数、酸素飽和度などのコンテキスト情報はI
w、I
h、I
r、I
oとして表されます。これら4種類のコンテキスト情報を収集することによって、ユーザは最終的に適切な運動強度のフィットネスプログラム提案を与えられる。この場合、最後の推奨事項は、強度の弱いプロジェクト、強度の中程度のプロジェクト、および強度の高いプロジェクトの3つである。手順は以下の通りである:
【0052】
S01:オリジナルコンテキスト情報収集
得られたオリジナルコンテキスト情報は、1セットの体重情報I
w、2セットの身長情報I
h1とI
h2、2セットの心拍数情報I
r1とI
r2、および1セットの血中酸素飽和度情報I
oを有する。
【0053】
S02:コンテキスト情報モデリング
モデル化されたコンテキスト情報は、I
w=「感知タイプ-体重」+「感知情報-70kg」、I
h1=「感知タイプ-身長」+「感知情報-180cm」、I
h2=「感知タイプ-身長」+「感知情報-180cm」、I
r1=「感知タイプ-心拍数」+「感知情報-70/分」、I
r2=「感知タイプ-心拍数」+「感知情報-72/分」、I
o=「感知タイプ-血中酸素飽和度」+「感知情報-95%」である。
【0054】
S03:コンテキスト情報分類融合
2セットの身長情報I
h1、I
h2を処理した後、1セットのデータI
hを取得し、2セットの心拍数情報I
r1、I
r2を処理して1セットのデータI
rを取得し、データは欠落せず、データ量は少なく、融合アルゴリズムは平均法を選択する。
【0055】
S04:アウェアネスに必要なコンテキスト情報の種類を確認する
感知されたイベントタイプは、ユーザに妥当な運動強度フィットネスプログラムを提供し、身長情報が無視されることを確認し、割り当てられる必要があるコンテキスト情報のタイプは体重、心拍数、血中酸素飽和度であり、コンテキスト情報タイプの総数は3である。
【0058】
S07:フィードバックがあるかどうかを判断する
ユーザからのフィードバック情報、すなわち、システムによって提案されたフィットネスプログラムが自分に適しているかどうかのフィードバック情報があるかどうかを判断する。フィードバック情報を受信すると、ステップS08が実行され、フィードバック情報が受信されない場合、ステップS09が実行される。
【0059】
S08:寄与率を計算する
n=3、初期の主観的重み寄与率αは0.5であり、ユーザがフィードバックを与えると、式(I)に従って主観的重み寄与率αおよび客観的重み寄与率1−αが算出される。式(I)は下の通りである。
【0064】
S10:マルチアルゴリズムコンテキスト情報融合
最終的な主観的および客観的重みベクトルを組み合わせることで、4つの異なるコンテキスト融合アルゴリズム(ニューラルネットワークベースの融合アルゴリズム、カルマンフィルタベースの融合アルゴリズム、ファジー理論ベースの融合アルゴリズムおよびDS証拠ベースの融合アルゴリズム)が使用され、3つのコンテキスト情報I
w、I
r、I
oを融合して、各アルゴリズムは確率ベクトルで表される提案を取得する。例えば、1番目のアルゴリズムの融合結果は、ユーザが弱い強度のプロジェクト、中程度の強度のプロジェクト、またはより高い強度のプロジェクトに適している確率は、(0.6、0.3、0.1)であり、合計4つの同一または異なる確率ベクトルが得られる。
【0065】
S11:コンテキスト情報の推論
ステップS10で得られた4つの確率ベクトルは、決定管理ユニットによって与えられた推論アルゴリズムによって推論され、最後に最終的な提案が与えられる。例えば、ユーザは中強度フィットネスプログラムに適している。
【0066】
S12:コンテキストアプリケーション
システムは、ステップS11で提示された提案に従って、中強度フィットネスプログラムの種類および関連する予防措置を自動的に画面に表示する。
【0067】
S13:ユーザフィードバック
ユーザがシステムによって与えられたフィットネス提案を見て中強度フィットネスプログラムを選択するとき、ユーザフィードバック情報はコンテキストアエラネスシステムの推論結果と一致すると考えられる。
【0068】
S14:評価定量化
ユーザモジュールは、ユーザのフィードバック回数およびユーザのフィードバックと一致する推論結果の回数を動的に保存し、主観的重みおよび客観的重みの寄与率を動的に更新するために情報を主客観的重み管理ユニットに送信する。
【0069】
以上に説明したのは、本開示の好ましい実施形態のみであり、本開示の保護範囲は、これらに限定されない。本分野に熟知している技術者が本開示に開示される技術的範囲内に容易に想到できる変更や置換は、いずれも本開示の保護範囲内に含まれる。従って、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲に記載された権利範囲を準拠する。