(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771112
(24)【登録日】2020年9月30日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】歯照明デバイス
(51)【国際特許分類】
A61C 19/06 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
A61C19/06 Z
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-552493(P2019-552493)
(86)(22)【出願日】2018年3月21日
(65)【公表番号】特表2020-511277(P2020-511277A)
(43)【公表日】2020年4月16日
(86)【国際出願番号】EP2018057096
(87)【国際公開番号】WO2018177832
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年9月24日
(31)【優先権主張番号】62/476,916
(32)【優先日】2017年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】17174209.1
(32)【優先日】2017年6月2日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】フェルムーレン,オラフ トーマス ヨハン アントニー
(72)【発明者】
【氏名】ブルーメン,パスカル ジャン アンリ
【審査官】
小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−536097(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0134576(US,A1)
【文献】
国際公開第2006/020128(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0271415(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0145813(US,A1)
【文献】
特開2009−259703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの歯の照明のためのマウスピースであって、
第1の光源及び第2の光源と、
前記第1の光源からの光を受光するように配置される第1のレンズ及び前記第2の光源からの光を受光するように配置される第2のレンズとを含み、
前記第1のレンズ及び前記第2のレンズは、前記受光する光を前記歯の頬側に投射するように配置され、前記第1のレンズ及び前記第2のレンズの各々は、前記受光する光の強度分布を、前記歯の歯列弓に沿ってそれぞれの前記光源の光軸の両側で非対称に変更するように成形される、非対称に成形された屈折面を有し、前記第1のレンズからの光及び前記第2のレンズからの光は、前記歯列弓に沿って前記歯の前記頬側で少なくとも部分的にオーバーラップすることを特徴とする、
マウスピース。
【請求項2】
距離部材を更に含み、該距離部材は、使用中に、該距離部材によって定められるような前記第1及び第2のレンズと前記歯の前記頬側との間の距離を確立するよう、前記ユーザの口領域の一部と接触するよう配置される、請求項1に記載のマウスピース。
【請求項3】
前記距離部材は、当該マウスピースが使用されるときに前記第1及び第2の光源が前記ユーザの顔の前に位置するように配置される、請求項2に記載のマウスピース。
【請求項4】
前記第1及び第2の光源は、当該マウスピースが使用されるときに、顔面正中線の両側に配置され、前記顔面正中線は、前記ユーザの左右の中切歯の間の線を定める、請求項1に記載のマウスピース。
【請求項5】
前記第1及び第2のレンズは、前記顔面正中線における前記歯の前記頬側での前記投射される光の強度が前記第1及び第2の光源からの光で構成されるよう、前記受光する光を投射するように配置される、請求項4に記載のマウスピース。
【請求項6】
前記第1及び第2のレンズは、前記顔面正中線から離れるある距離にある前記歯の前記頬側の一部が前記第1及び第2の光源のうちの一方からの光によってのみ照らされるよう、前記受光する光を投射するように配置される、請求項4に記載のマウスピース。
【請求項7】
前記第1及び第2のレンズは、前記第1及び第2の光源の各光源からの投射される光の強度が歯列弓に沿って前記顔面正中線に向かって徐々に減少するよう、前記受光する光を投射するように配置される、請求項4に記載のマウスピース。
【請求項8】
第3の光源と、該第3の光源からの光を受光するように配置される第3のレンズとを含み、前記第3の光源は、前記受光する光を前記歯の前記頬側に投射するよう、前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間に配置され、前記第3のレンズは、対称に成形された屈折面を有する、請求項1に記載のマウスピース。
【請求項9】
前記第1、第2及び第3のレンズは、前記第1及び第3の光源からの前記歯の前記頬側での前記投射される光の強度が前記歯列弓の第1の部分でオーバーラップするよう並びに前記第2及び第3の光源からの前記歯の前記頬側での前記投射される光の強度が前記歯列弓の異なる第2の部分でオーバーラップするよう、前記第1、第2及び第3の光源からの光を投射するように配置される、請求項8に記載のマウスピース。
【請求項10】
壁構造を備えるハウジングを含み、該壁構造の端領域は、前記ユーザの歯肉と接触するように構成される接触部分を含む、請求項1に記載のマウスピース。
【請求項11】
シーリング構造を含み、該シーリング構造は、前記歯の前記頬側及び前記シーリング構造によって定められる空間内に塗布される歯科物質を保持するように構成され、前記シーリング構造は、前記接触部分を含む、請求項10に記載のマウスピース。
【請求項12】
前記ハウジングは、前記接触部分と前記少なくとも1つの光源との間で前記壁構造に配置される少なくとも1つの貫通穴を含む、請求項10に記載のマウスピース。
【請求項13】
前記ハウジングに接続される保持部材を含み、該保持部材は、前記ユーザが、前記歯のうちの1つ又はそれよりも多くの歯の咬合面を介して前記保持部材に加えられる力によって当該マウスピースを保持することを可能にする、ように構成される、請求項10乃至12のいずれか1項に記載のマウスピース。
【請求項14】
当該マウスピースの咬合平面に対して垂直な方向において前記投射される光の伸張を調整するように構成される調整可能なダイヤフラムを含む、請求項1に記載のマウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯照明デバイス(teeth illumination devices)に関し、歯ホワイトニングデバイス(歯白化デバイス)(teeth whitening devices)のような口腔ケアデバイス(oral care)又は衛生デバイス(hygiene devices)に関する。
【背景技術】
【0002】
歯ホワイトニングデバイスのような口腔ケアデバイスは、歯を照らすために光を使用する。ホワイトニングゲル又はワニスと組み合わせにおける歯ホワイトニング、消毒UV光の使用による歯垢若しくは細菌衛生又は他の目的を含む様々な目的のために、光を使用することができる。
【0003】
国際公開第2016/066370A1号は、歯ホワイトニングの脈絡において歯に光を適用するスマート照明システムを開示している。これは特に光硬化性ホワイトニングワニスを提供される歯に関する。システムは、光生成ユニットと、光パターン化ユニットと、口撮像ユニットと、口画像感知ユニットと、画像処理及び制御ユニットとを含み、画像処理及び制御ユニットが口画像感知ユニットから得られる情報に基づいて光パターン化ユニットを調整するのを可能にするように構成される。そのようにすることによって、光生成ユニットが光を放射するのを可能にする前に、歯ホワイトニングを補助するために放射される光が軟組織に影響を与えないことを保証することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯での均一な光強度の生成を向上させることができる、代替的に又は追加的に、歯の加熱を減少させることができる、口腔デバイスを達成することが有利である。本発明は、独立項に定義される。従属項は、有利な実施形態を定義する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの懸念の1以上(1つ又はそれよりも多くの)に対処するために、本発明の第1の態様において、ユーザの歯の照明のためのマウスピースであって、
第1の光源及び第2の光源と、
第1の光源からの光を受光するように配置される第1のレンズ及び第2の光源からの光を受光するように配置される第2のレンズとを含み、
第1のレンズ及び第2のレンズは、受光する光を歯の頬側に投射するように配置され、第1のレンズ及び前記第2のレンズの各々は、受光する光の強度分布を、歯の歯列弓に沿ってそれぞれの光源の光軸の両側で非対称に変更するように成形される、非対称に成形された屈折面を有する、
マウスピースが提示される。
【0006】
有利には、レンズの非対称に成形された屈折面は、レンズの光軸の左側及び右側で異なる強度プロファイルを達成することを可能にする。このようにして、両方の光源から光を受光するオーバーラップの範囲を確立することができる。更に、非対称に成形された屈折面は、歯における均一な強度分布を達成するために、所望の強度分布を達成するようフリーフォームレンズ(freeform lenses)として任意に成形されてよい。
【0007】
レンズは、受光する光の強度が、歯の歯列弓に沿って光源の光軸の反対側で、即ち、マウスピースの咬合平面(occlusal plane)内で、投射光(投射される光)(projected light)に非対称に修正されるという意味で非対称である。
【0008】
有利なことに、投射レンズ(projection lenses)の使用は、光源、例えば、発光ダイオードを、歯からある距離に配置することを可能にする。従って、光源からの放射熱は、歯付近に配置される光源と比較して、より少ない歯及び歯肉の加熱を引き起こす。より低い加熱は、不快感を引き起こしたり或いは歯の歯髄室内の歯髄を損傷させたりさえし得る熱を発生せずに、より高い光強度を使用することを可能にする。
【0009】
マウスピースは、2以上(2つ又はそれよりも多く)の光源と、2以上の関連するレンズとを含んでよいことが理解されよう。実用的な理由から、2以上のレンズは、単一の材料から成形された或いは形作られた一体成形体の形態であってよい。従って、単一のレンズ構成要素として形成される2以上のレンズは、2以上の別個のレンズと同等であることが理解されよう。
【0010】
ある実施形態によれば、マウスピースは、距離部材を含み、距離部材は、使用中に、距離部材によって定められるような第1及び第2のレンズと歯の頬側との間の距離を確立するよう、ユーザの口領域の一部と接触するように配置される。有利なことに、距離部材は、レンズから歯までの距離が、レンズが生成するように設計される所望の強度プロファイルを得るために必要とされるレンズの最適な投射距離に近いことを保証する。
【0011】
ある実施形態によれば、距離部材は、マウスピースが使用されるときに第1及び第2の光源がユーザの顔の前に位置するように配置される。有利なことには、顔からの光源の分離の故に、歯及び口領域の加熱は、光源が歯により近くに配置される解決策と比較して低減される。
【0012】
ある実施形態によれば、第1及び第2の光源は、マウスピースが使用されるときに顔面正中線の両側に配置され、顔面正中線は、ユーザの左右の中切歯の間の線を定める。有利なことには、光源を顔の正中線の左右に配置することによって、より多くの数の歯を均一な光で照らすことができる。
【0013】
ある実施形態によれば、第1及び第2のレンズは、顔面正中線における歯の頬側での投射される光の強度が第1及び第2の光源からの光で構成されるよう、受光する光を投射するように配置される。有利なことには、歯範囲の一部で両方の光源からの光を組み合わせることによって、1つの光源から別の光源への歯照明の移行を円滑にすることができる。
【0014】
ある実施形態によれば、第1及び第2のレンズは、顔面正中線から離れるある距離にある歯の頬側の一部が第1及び第2の光源のうちの一方からの光によってのみ照らされるよう、受光する光を投射するように配置される。有利なことには、非対称照明の故に、歯列弓の左側及び右側を、均一に成形された光によって個別に照らすことができる。
【0015】
ある実施形態によれば、第1及び第2のレンズは、第1及び第2の光源の各光源からの投射される光の強度が歯列弓に沿って顔面正中線に向かって徐々に減少するよう、受光する光を投射するように配置される。有利なことには、光強度が漸進的な減少の故に、2つの隣接する光源からの光を組み合わせて、実質的に均一又は一定な光強度を生成することができる。
【0016】
ある実施形態によれば、マウスピースは、第3の光源と、第3の光源からの光を受光するように配置される第3のレンズとを含み、第3の光源は、受光する光を歯の頬側に投射するよう、第1のレンズと第2のレンズとの間に配置され、第3のレンズは、対称に成形された屈折面を有する。有利なことに、第3の光源の使用は、より高い光強度を生成すること、均一な光でより多くの歯を照らすこと、及び投射光の均一性を向上させることのうちの1以上を容易にすることがある。
【0017】
ある実施形態によれば、第1、第2及び第3のレンズは、第1及び第3の光源からの歯の頬側での投射される光の強度が歯列弓の第1の部分でオーバーラップするよう並びに前記第2及び第3の光源からの歯の頬側での投射される光の強度が歯列弓の異なる第2の部分でオーバーラップするよう、第1、第2及び第3の光源からの光を投射するように配置される。
【0018】
ある実施形態によれば、マウスピースは、壁構造を備えるハウジングを含み、壁構造の端領域は、ユーザの歯肉と接触するように構成される接触部分を含む。有利なことに、接触部分を備える壁構造は、均一な強度を得るために歯とレンズとの間の最適な距離を達成することができるよう、口領域とレンズとの間の固定的な距離を提供する。
【0019】
壁構造は、少なくとも部分的に空の内部を備えるチューブ又は漏斗形状の壁を形成することがある。壁構造は、対流冷却を提供する開口部を有してよい。壁構造は、グリッド又は他の開放構造の形態を有してよい。壁構造は、シェル、ピン、バー、メッシュ面、又はそれらの組み合わせによって、及びシリコーン、プラスチック、金属、又は他の類似の材料のような材料から形成されてよい。
【0020】
有利なことには、壁形状構造は、マウスピースの開放構造を可能にする。開放構造は、有利には、例えば、ホワイトニング目的のために、歯の上のワニス物質と共に使用されてよい。何故ならば、ワニス物質は、歯ゲルを所定の場所に保持するために必要とされることがあるシーリング構造を必要としないからである。更に、開放構造は、熱放散を向上させるので、より高い強度レベルが達成されることがある。
【0021】
ある実施形態によれば、マウスピースは、シーリング構造を含み、シーリング構造は、歯の頬側及びシーリング構造によって定められる空間内に塗布される歯科物質を保持するように構成され、シーリング構造は、接触部分を含む。有利なことに、シーリング構造は、歯とマウスピースの透明窓との間の所定の場所に歯科物質を保持するのを助けるように設計される。例えば、マウスピースは、歯ホワイトニングマウスピースであってよく、歯科物質は、歯ホワイトニングゲルであってよい。
【0022】
ある実施形態によれば、ハウジングは、接触部分と少なくとも1つの光源との間で壁に配置される少なくとも1つの貫通穴を含む。有利なことに、ハウジングにある穴は、熱放散を向上させる。
【0023】
ある実施形態によれば、ハウジングに接続される保持部材を含み、保持部材は、ユーザが、歯のうちの1つ又はそれよりも多くの歯の咬合面を介して保持部材に加えられる力によってマウスピースを保持することを可能にする。有利なことに、保持部材は、歯のみの使用によってマウスピースを保持することを可能にするので、ユーザは照明プロセス中に自由に手を使用できる。
【0024】
ある実施形態によれば、マウスピースの咬合平面に対して垂直な方向において投射される光の伸張を調整するように構成される調整可能なダイヤフラムを含む。有利なことに、ダイヤフラムは、投射された光が実質的に歯肉を照らさずに歯のみを照らすような調整を可能にする。
【0025】
本発明の第2の態様は、歯照明のための第1の態様に従ったマウスピースの使用に関し、この使用は、
マウスピースの一部がユーザの口領域の一部と接触して、第1及び第2のレンズとユーザの頬側との間でマウスピースによって定められる距離を確立するように、マウスピースを配置するステップと、
第1及び第2のレンズによってユーザの歯に投射される光によって歯を照らすステップとを含む。
【0026】
本発明のある実施形態は、例えば、歯ホワイトニングのための、歯の照明のためのマウスピースに関する。マウスピースは、歯に光を非対称に投射するように成形される少なくとも2つのフリーフォームレンズで構成される。レンズは、関連する光源と1対1に配置される。レンズは、少なくとも2つのレンズからの非対称光が歯の領域を覆って、例えば、第1及び第2の中切歯を横断して結合するように、成形される。歯列弓に亘る均一な照明を達成するために、レンズは、減少する強度の組み合わせを結合して減少する強度がオーバーラップする範囲に亘って均一な強度を生成するよう、歯列弓の左側及び右側で均一な強度分布を有し且つ中切歯間の顔面正中線に向かって減少する強度を有する光を投射することがある。
【0027】
一般的に、本発明の様々な態様は、本発明の範囲内で可能な任意の方法において組み合わせられてよく、結合されてよい。本発明のこれらの及び他の態様、構成及び/又は利点は、以下に記載する実施形態から明らかであり、それらを参照して解明される。
【0028】
図面を参照して、ほんの一例として、本発明の実施形態を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】歯照明デバイスとしての使用のためのマウスピースのある実施形態の異なる図を例示している。
【
図1B】歯照明デバイスとしての使用のためのマウスピースのある実施形態の異なる図を例示している。
【
図1C】歯照明デバイスとしての使用のためのマウスピースのある実施形態の異なる図を例示している。
【
図2A】マウスピースにおいて使用されるレンズ及びレンズによって歯列弓に透過される光線の断面図を示している。
【
図2B】それぞれの左右のレンズによって歯列弓の左側及び右側に投射された光の左右の強度プロファイルを示している。
【
図3】咬合平面と平行な平面におけるレンズの断面図における非対称形状の屈折面を示している。
【
図4】中実な光学的に透明な部分を備えるハウジングを含むマウスピースのある実施形態を例示している。
【
図5】調整可能なダイヤフラムを含むマウスピースのある実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1A、
図1B及び
図1Cは、歯照明デバイス(teeth illumination device)としての使用のためのマウスピース100のある実施形態を例示している。ユーザの歯は、歯ホワイトニング(teeth whitening)、歯垢もしくは細菌衛生、又は他の口腔衛生もしくはケア用途のために照らされてよい。マウスピースは、家庭使用のための消費者製品又は専門家によって使用されるべき専門製品であってよく、両方の場合において、ユーザ、即ち、家庭ユーザ又は患者は、デバイスから照明を受ける人である。
【0031】
マウスピースは、異なる図面、即ち、
図1Aにおける頂面図、
図1Bにおける開口に向かって見られた斜視図、及び
図1Cにおける正面図に例示されている。
【0032】
図1Aに示すマウスピースの実施形態は、第1及び第2の光源101a−101bと、それぞれの第1及び第2の光源101a−101bからの光を歯110の頬側111に投射するように配置された第1及び第2おレンズ102a−102bとを含む。よって、第1のレンズ102aは、第1の光源101aからの光を受光して投射するように配置され、第2のレンズ102bは、第2の光源101bからの光を受光して投射するように配置される。第1の光源101a及び第1のレンズ102aは、顔面正中線120(facial midline)の一方の側(例えば、顔面正中線の左側)に配置されてよく、第2の光源101b及び第2のレンズ102bは、顔面正中線120の反対側(例えば、顔面正中線の右側)に配置されてよい。
【0033】
顔面正中線120は、図示のように、左右の切歯間の線を定める。便宜上、顔面正中線120は、マウスピースが使用されるときに並びにマウスピースの配置の許容差が考慮されるときに、顔面正中線120と実質的に同一直線上にある、描写されるようなマウスピース100の中心線も定める。中心線120は、
図1Cに示すように、咬合平面130(occlusal plane)内に配置されてよい。咬合平面130は、マウスピースが使用されるときに歯の咬合平面に対応する、マウスピースの平面を定める。
【0034】
マウスピース100の他の実施形態を他の数の光源及びレンズで構成することができる。例えば、マウスピース100は、顔面正中線120の両側に配置される2つの光源101a〜101bと、顔面正中線120で中心化された、並びに両方の光源101から光を受光してその光を歯に投射するように配置された、1つのレンズとを有してよい。別の例において、マウスピース100は、顔面正中線120で中心化された、並びに光を受光してその光を歯110に投射するように配置された、1つの光源及び1つのレンズのみを有する。好ましい実施形態は、歯列弓の左側及び右側の均一な照明を向上させるために、2以上(2つ又はそれよりも多く)の光源及び関連するレンズを含む。
【0035】
レンズ102a〜102bは、光源101a〜101bから受光する光の強度分布を、マウスピースの咬合平面130においてそれぞれの光源の光軸121の両側で非対称に変更するように成形された、非対称に成形された屈折面を有する。例えば、レンズは、歯列弓の少なくとも一部に沿って、例えば、第2小臼歯110eから側切歯110b(lateral incisor)に均一な強度分布を達成するよう、強度分布を修正するように成形されてよい。
【0036】
強度分布の変化(change of intensity distribution)とは、光源101aのうちの1つの遠視野強度分布(far field intensity distribution)が、関連するレンズ102aによって、異なる遠視野強度分布に非対称に修正されることを意味する。相対的に、球面レンズ又は非球面レンズのような対称レンズは、光軸121に対して対称な強度分布を修正する。
【0037】
レンズ102a〜102bは、顔面正中線120における歯110の頬側111での投射光(投射される光)(projected light)の強度が第1及び第2の光源からの光によって提供されるように、強度分布を修正するように非対称に成形されてよい。加えて、レンズは、顔面正中線120から離間したある距離にある歯110の頬側111(例えば、第2小臼歯110eから側切歯110bまでのような歯列弓の片側の歯)の一部が第1及び第2の光源101a−101bのうちの1つからの光によってのみ照らされるように、投射光を成形するように配置されてよい。
【0038】
中切歯110a上に均一な強度を提供するためには、第1及び第2のレンズ102a−102bからの光が、中切歯110aの少なくとも一部の上でオーバーラップする (重なり合う)ことが必要である。オーバーラップに亘る均一な強度は、第1及び第2の光源の各光源からの投射光の強度が歯列弓に沿って顔面正中線120に向かって並びに顔面正中線120を越えて徐々に減少するように光を投射するよう、第1及び第2のレンズを配置することによって達成されることがある。
【0039】
図2Aは、咬合平面130と平行な平面における第1及び第2のレンズ102a−102bの断面図を示している。
図2Aは、レンズによって歯110の歯列弓201の一部に投射された光線を示している。図示のように、両方のレンズ102a−102bからの光線は、顔面正中線を含む歯列弓201の一部を照らす。例えば、レンズ102a−102bは、左右の中切歯110aの両方に光を投射することがある。第1のレンズ102aからの光線の一部は、両方の光源101a−101bによって照らされる歯列弓201の中央部分の左側にある歯列弓の一部を照らすに過ぎず、第2のレンズ102bからの光線の一部は、歯列弓の中央部分の右側にある歯列弓201の一部を照らすに過ぎない。
【0040】
図2Bは、それぞれの左右のレンズ102a−102bによって左側(L)及び右側(R)の歯の側(dental sides)に投射された光の左右の強度Iプロファイル202、203を示している。図示のように、強度Iは、歯列弓の中央部分(C)から離れる歯の側(L、R)に沿って一定又は実質的に一定である。更に、レンズ102a−102bの各々から投射される光の強度Iは、歯列弓の一方の側から、顔面正中線120を横断して、顔面正中線120から離れたある距離にある歯列弓の他方の側でのゼロ又は実質的にゼロの強度まで徐々に減少する。歯列弓の中央部分(C)で、2つのレンズ102a−102bからの投射光の強度Iは、左右の歯の側での投射光の強度Iと同じ又は実質的に同じ強度に増加させる。
【0041】
レンズは、中央部分C上の強度Iを直線的に又は他のプロファイル形状に従って変化させるように構成されてよい。
【0042】
実際には、歯列弓の左側、中央及び右側に沿って一定な強度Iを達成することは可能でない。従って、実際には、強度は、歯列弓に沿って、例えば、+/−10%の帯域内で変化することがある。歯ホワイトニング用途において、強度の変動(ばらつき)は、ホワイトニング効果の明らかに眼に見える変動を避けるために、十分小さくなければならない。
【0043】
図3は、咬合平面130と平行な平面における第2の光源101b及び第2のレンズ102bの断面図を示している。
図3は、レンズ102bが非対称に成形された屈折面301を有することを示している。この例において、レンズは、光軸121の右側で受光した全ての光線が光軸から離れるよう右方向に曲げられるのに対し、光軸121の左側で受光した幾つかの光線が光軸に向かって右方向に曲げられるように、非対称に成形される。このようにして、非対称形状の屈折面301は、所望の強度プロファイル202、203を生成するように構成される。
【0044】
レンズ102a−102bは、他の方法で構成されてよい。例えば、各レンズは、1以上(1つ又はそれよりも多く)の非対称に成形された屈折面を有してよい。加えて、レンズの入力屈折面は、出力面の代わりに非対称に成形されてよい。
【0045】
図1を再び参照すると、光源101a、101bは、発光光源(LED)であってよいが、他の光源が使用されてもよい。レンズ102a、102bは、ガラス、ポリカーボネート、又は他のプラスチック材料のような、透明材料から作られる。
【0046】
マウスピース100は、
図1Aの点線109によって主に例示される距離部材109を含む。距離部材109の機能は、第1及び第2のレンズ102a−102bと歯110の頬側111との間の距離を確立することである。距離部材によって定められる距離を確立する目的は、レンズ102a−102bが歯から正しい距離を有することを保証することである。レンズ102a−102bは、それらが特定の場所を有することにより、歯に対して特定の距離を有するときに、所望の強度プロファイル202、203を提供するように設計されるので、そのような距離部材を備えるマウスピース100を構成することが有利である。距離部材は、マウスピースが使用されるときに、ユーザの口領域の一部に接触するように意図される。口領域の一部は、歯肉、歯、又はその他であることがあってよい。
【0047】
図1は、マウスピース100が使用されるときに、上歯及び下歯の対の噛合面(bite surfaces)(咬合面(occlusal surfaces))の間に配置されるように意図された、例えば、平坦なプラスチック形状の噛合バー131(bite-bar)を含む構造103の形態の、距離部材109を示している。例えば、噛合バー131は、距離部材109が使用されるときに明確に定められた距離が確立されるよう、上下の第2小臼歯110eの噛合面の間に配置されるように意図されてよい。
【0048】
距離部材109として機能することに加えて或いは代えて、構造103は、保持部材108を具現してよく、保持部材108は、ユーザが、歯のうちの1以上の歯、即ち、上下の第2小臼歯110eの咬合面を介して、保持部材108の一部、例えば、噛合バー131に加えられる力によって、マウスピースを保持することを可能にする機能を有する。構造103は、ハウジング105に、例えば、遠位端領域に接続される。
【0049】
図1は、マウスピース101が壁構造を備えるハウジング105を含むことを示している。壁構造は、漏斗又はチューブの形状、例えば、接触部分104によって囲まれた開口を備える近位端領域と、光源101a−101b及びレンズ102a−102bを固定するために内部的に閉じられるか或いはテーパが付けられてよく且つ構成されてよい遠位端領域とを有する形状を有してよい。接触部分104は、ユーザの歯肉又は他の口領域に接触するように構成される。
【0050】
ハウジング105は、接触部分104が口領域に接触するときに、接触部分104と共に、第1及び第2のレンズ102a−102bと歯110の頬側111との間に明確に定められた距離を確立するので、距離部材109は、接触部分104と共にハウジング105によって具現されてよい。明らかに、距離部材109として機能するハウジング105は、保持部材108及び/又は距離部材109として機能する構造103と組み合わせられてよい。
【0051】
一般的に、距離部材109は、マウスピースが使用されるときに、第1及び第2の光源101a−102b並びに第1及び第2のレンズ102a−102bがユーザの顔の前に位置するように配置される。従って、マウスピース100は、口領域から特定の距離に位置する光源101a−101bを備えて構成される。
【0052】
図1Bに示すように、ハウジング105は、接触部分104と少なくとも1つの光源101aとの間の壁に配置される少なくとも1つの貫通穴開口150を備えて構成されてよい。穴は、光源からの排熱に起因する熱増加を減少させることができるよう、マウスピース100のチャンバに換気を提供する。
【0053】
図1、
図2A及び
図2Bとの関係において記載した実施形態は、2つの光源と、2つの関連するレンズとを含む。(例示しない)別の実施形態によれば、マウスピースは、追加的な第3の光源及び第3の光源からの光を受光するように配置される第3のレンズを備えて構成されてよい。例えば、第3の光源及び第3のレンズは、歯110の頬側111に光を投射するために、第1のレンズと第2のレンズとの間に配置されてよい。例えば、第3の光源及び第3のレンズは、第1及び第2のレンズ102a−102b及び光源101a−101bと同一平面内で、例えば、マウスピースが使用されるときに咬合平面130と実質的に平行な平面上で、マウスピースの中心線120上に配置されてよい。
【0054】
第3のレンズは、顔面正中線120に対して対称的に中央の歯、例えば、中切歯110aを照らすために、対称的に成形された屈折面を有してよい。
【0055】
この実施形態によれば、第1、第2、及び第3のレンズは、第1及び第3の光源からの歯110の頬側111での投射光の強度が歯列弓の第1の部分でオーバーラップするよう並びに第2及び第3の光源からの歯110の頬側111での投射光の強度が歯列弓の異なる第2の部分でオーバーラップするよう、第1、第2、及び第3の光源からの光を投射するように配置されてよい。例えば、第1及び第3の光源からの光は、顔面正中線120の左側に位置する歯列弓の範囲でオーバーラップしてよく、第1及び第3の光源からの光は、顔面正中線120の右側に位置する歯列弓の範囲でオーバーラップしてよい。好ましくは、オーバーラップする範囲及び1つのレンズからの光によってのみ照らされる範囲での光の強度は、上述の意味において実質的に一定でなければならない。
【0056】
マウスピース100は、シーリング構造を含んでよく、シーリング構造は、歯110の頬側111及び封止構造によって定められる空間内で塗布される歯科物質を保持する機能を有する。例えば、歯科物質は、歯110又はシーリング構造の表面に塗布されるホワイトニングゲルの形態であってよい。
【0057】
ある実施形態によれば、シーリング構造は、接触部分104を含む。例えば、接触部分104は、上下の歯肉と上下の歯肉の間の移行部にある歯と接触するように配置されるリム(rim)、例えば、閉じた環状リムを構成してよい。
【0058】
図4は、繰り返される参照番号によって例示するように、
図1のマウスピースの構成と均等の構成を有するマウスピース100の実施形態を例示している。
図4のマウスピースのハウジング105は、中実な光学的に透明な部分401(solid optically transparent part)を更に含む。中実な光学的に透明な部分401は、接触部分104と中実な光学的に透明な部分401との間にある距離があるように、接触部分104の背後に配置される。中実な光学的に透明な部分は、光源からの光を歯に向かって透過させるように配置される。
【0059】
中実な光学的に透明な部分401は、ハウジングの側壁の間に延びる壁、例えば、例示のように点線に沿って延びる壁の形態であってよい。壁は薄くてよく、或いは、例えば、レンズ102a−102bまで延びてよい。代替的に、中実な光学的に透明な部分401は、例えば、光源101a−101b及び/又はレンズ102a−102bが中実な光学的に透明な部分401内に埋め込まれるよう、ハウジング105のより大きな部分を満たしてよい。
【0060】
接触部分104と中実な光学的に透明な部分401との間の距離によって作られる空間は、塗布される歯科物質を収容するために使用されてよい。従って、シーリング構造の空間は、光学的に透明な部分401、接触部分104、及び歯110の頬側111によって定められてよい。
【0061】
図1Bに示す少なくとも1つの貫通穴150は、
図4のマウスピースのハウジング105の壁構造に、例えば、光学的に透明な部分401と光源101との間のハウジング105の壁に形成されてもよい。
【0062】
図5は、咬合平面130に対して垂直な平面における断面図において調整可能なダイヤフラム510を含むマウスピース100のある実施形態を示している。便宜上、マウスピース100の全ての構成要素は示されていない。ダイヤフラム510は、不透明又は半透明であり、光線がユーザの歯肉501、502に接触するのを防止する。レンズ102a−102bの設計は、幾つかの光線が咬合平面130に対して大きな角度で透過され、従って、歯肉の照明及び加熱を引き起こす場合があることをもたらす。加熱に伴う不快感を防止するために、歯110の頬側111に当たる光線以外の光線を遮断することができる。ダイヤフラム510は、固定的な開口、即ち、上方ダイヤフラム部分と下方ダイヤフラム部分との間に固定的な距離を備える開口を有してよい。代替的に、ダイヤフラム510は、開口の調整可能なサイズ、即ち、上方ダイヤフラム部分と下方ダイヤフラム部分との間の調整可能な距離を提供するよう調整可能であってよい。従って、ダイヤフラム510は、マウスピースの咬合平面に対して垂直な方向における投射光の伸張、即ち、高さを調整するように構成されてよい。このようにして、ダイヤフラムは、個人の歯及び歯肉に従って適合させられる(fitted)ことがある。
【0063】
図面及び前述の記述において本発明を詳細に例示し且つ記載したが、そのような例示及び記述は、例示的又は説明的であると考えられるべきであり、限定的であると考えられてならない。即ち、本発明は、開示の実施形態に限定されない。当業者は、請求項の発明を実施する際に、図面、本開示、及び添付の請求項の研究から、開示の実施形態に対する他の変形を理解して実施することができる。請求項おいて、「含む」という用語は、他の要素又はステップを排除せず、単数形の表現は、複数を排除しない。請求項中の如何なる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されてならない。