(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外部廊下は、前記第1の住戸の住空間に隣接する第1の外壁と、前記第2の住戸の住空間に隣接し、かつ、前記第1の外壁に対面する第2の外壁と、前記第1および第2の外壁に交差する第3の外壁とに面しており、
前記レールは、前記第1および第2の外壁間に架け渡され、前記接合位置に前記隔壁を保持するための第1レール部と、前記第1レール部に交差し、前記分断位置に前記隔壁を保持するための第2レール部とを含み、
前記第1レール部と前記第2レール部とがT字状に形成されている、請求項2に記載の集合住宅。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
<実施の形態1>
図1を参照して、本実施の形態に係る集合住宅1について説明する。
【0020】
集合住宅1は、互いに隣接して配置された2つの住戸11,12を備えている。住戸11,12の住空間20,30は、それぞれ独立している。すなわち、住戸11の玄関(玄関扉21)、住戸12の玄関(玄関扉31)が、個別に設けられている。なお、「住空間」とは、玄関扉よりも奥に位置する空間であり、住空間には、室内空間だけでなく、ベランダ(バルコニーを含む)やテラスなど半屋外空間も含まれる。
【0021】
(2住戸の玄関前空間の構成例)
住戸11,12の玄関扉21,31は、集合住宅1の共用空間に含まれる外部廊下90を挟んで、対面状態で配置されている。住戸11,12それぞれの玄関前空間21a,31aは、外部廊下90の一部を構成している。
【0022】
外部廊下90は、たとえば階段室の踊り場であり、住戸11の住空間20に隣接する外壁91と、住戸12の住空間30に隣接し、かつ、外壁91に対面する外壁92と、外壁91,92に交差する外壁93とに面している。本実施の形態では、外壁91に住戸11の玄関扉21が設けられ、外壁92に玄関扉31が設けられている。つまり、玄関扉21,31は、互いに対面している。外部廊下90は、外壁93の反対側において、外部階段に隣接している。
【0023】
外部廊下90には、居住者の希望に合わせて位置変更可能な隔壁6が配置されている。具体的には、隔壁6は、住戸11の玄関前空間21aと住戸12の玄関前空間31aとを分断する分断位置と、これらの空間21a,31aを一体化された空間として接合する接合位置とに位置変更可能である。隔壁6が接合位置に位置する場合、玄関前空間21a,31aは、2住戸で共有する共有玄関ポーチ(共有空間)を構成する。隔壁6が分断位置に位置する場合、玄関前空間21a,31aは、各戸専用の玄関ポーチ(独立空間)を構成する。
【0024】
接合位置において、隔壁6は、玄関前空間21a,31aの一方または双方の側部(外部階段側の側部)に配置される。具体的には、両住戸11,12の玄関扉21,31よりも階段側の位置に、外壁91,92と交差する方向に沿って(外壁93と略平行となるように)配置される。分断位置において、隔壁6は、玄関前空間21a,31aの境界部に配置される。具体的には、住戸11の玄関扉21と住戸12の玄関扉31との間に、外壁93と交差する方向に沿って(外壁91,92と略平行となるように)配置される。
【0025】
隔壁6は、たとえば2つのパネル部材60により構成される。この場合のパネル部材60の配置パターン例を
図2〜
図4に示す。
【0026】
図2には、接合位置におけるパネル部材60の第1の配置パターンが示されている。第1の配置パターンでは、2つのパネル部材60が、互いに離れて配置されている。より具体的には、一方のパネル部材60が外壁91際に配置され、他方のパネル部材60が外壁92際に配置されている。この場合、パネル部材60間に外部(階段側)から共有玄関ポーチ51への通路が形成される。なお、パネル部材60と外壁91,92とは、隣接または近接して配置される。
【0027】
図3には、接合位置におけるパネル部材60の第2の配置パターンが示されている。第2の配置パターンでは、外壁91際にパネル部材60が配置されておらず、2つのパネル部材60が、外壁92側に並べて配置されている。つまり、パネル部材60は、互いに隣接または近接して配置される。この場合、パネル部材60と外壁91との間に、外部から共有玄関ポーチ51への通路が形成される。なお、第2の配置パターンにおいては、想像線で示すように、2つのパネル部材60が、外壁91側に並べて配置されてもよい。また、この配置パターンにおいても、パネル部材60と外壁91または92とは、隣接または近接して配置される。
【0028】
第1および第2の配置パターンのようにパネル部材60を配置することで、住戸11,12の玄関前空間21a,31aを、共有玄関ポーチ51として機能させることができる。これにより、互いに隣接する住戸11,12をリンクさせ、二世帯住宅化することができる。一方で、住戸11,12の住空間20,30は独立しているため、互いのプライバシーを保護することができる。
【0029】
また、1フロアに2つの住戸11,12のみが配置される構成の場合、1フロア全てを親子二世帯で専有できる。したがって、住戸11,12の居住者は、集合住宅でありながら、一戸建ての二世帯住宅に住んでいるような感覚を味わうことができる。
【0030】
さらに、共有玄関ポーチ51前に共有扉はなく、共有玄関ポーチ51は外部に開放された空間である。したがって、共有扉を開閉する煩わしさがない。また、共有玄関ポーチ51が閉空間となっていないため、明るい印象を与えることができる。
【0031】
図4には、分断位置におけるパネル部材60の配置パターンが示されている。分断位置においては、2つのパネル部材60が、互いに対面する玄関扉21,31間に並べて配置されている。パネル部材60は、外壁93に交差する方向に沿って、互いに隣接または近接して配置されている。パネル部材60と外壁93とは、近接していなくてもよい。分断位置においては、外部から玄関前空間21aへの通路と、外部から玄関前空間31aへの通路とは、個別に形成される。
【0032】
図4に示す配置パターンのようにパネル部材60を配置することで、住戸11,12の玄関前空間21a,31aは分断され、互いに独立した玄関ポーチとして機能させることができる。これにより、互いに隣接する住戸11,12を単世帯プランとして提供することができる。また、玄関扉21,31が対面状態で配置されていたとしても、玄関扉21,31の前方にはパネル部材60が設置されているため、玄関扉21,31を開放した際に向かいの住人に室内空間(住空間)を覗かれる心配がなく、安心して居住することができる。
【0033】
分断位置における2つのパネル部材60間の間隔は、たとえば50mm程度である。この間隔は、接合位置の第2パターンにおけるパネル部材60間の間隔以下であることが望ましい。
【0034】
(パネル部材の構成例)
図5は、パネル部材60の構成例を示す図である。
図5を参照して、パネル部材60は、上下方向に延びる一対の支柱61と、支柱62間に固定された下側パネル62および上側パネル63とを含む。上側パネル63には、複数のパンチ孔が形成されている。これにより、上側パネル63に、(フック等を用いて)プランターなどの装飾物を引掛けることがでる。したがって、パネル部材60を、隔壁としてだけでなく、植物の展示や、傘などの日用品の引掛けに用いることができ、実用性を高めることができる。
【0035】
支柱61の上端部には、外部廊下90の天井90bに設置されたレール70に係合する係合部66が設けられている。支柱61の下端部には、外部廊下90の床90aに突っ張り固定される脚部64が設けられている。脚部64は、支柱61本体からの引き出し量を調整可能であり、床90aに押し付けて固定される。レール70に沿ってパネル部材60を移動させる場合には、脚部64を床90aから浮かせて、パネル部材60を吊下げ状態とする。
【0036】
図6には、パネル部材60の他の構成例が示されている。
図6(A)は、パネル部材60の正面図であり、
図6(B)は、パネル部材60の側面図である。なお、
図6(A)の矢印A1は、パネル部材60の横幅方向およびレール70の長さ方向を示し、
図6(B)の矢印A2は、パネル部材60の厚み方向を示している。
【0037】
図6に示すパネル部材60は、
図5に示した下側パネル62に代えて、消火器スペース65を含む。消火器スペース65は、支柱61に連結され、消火器を載置するための載置板65aを有する。このように、集合住宅1に必要な消火器スペース65を、パネル部材60に含ませることもできる。
【0038】
(レールの構成例)
パネル部材60は、外部廊下90の天井90bに設置されたレール70によって移動可能に保持されている。レール70は、パネル部材60(隔壁6)の位置を、接合位置と分断位置とに位置決めするための位置決め部材として機能する。
【0039】
図7を参照して、レール70は、たとえば、外壁91,92間に架け渡される第1レール部71と、第1レール部71に交差する第2レール部72とを含む。第1レール部71は、パネル部材60を接合位置に保持可能であり、第2レール部72は、パネル部材60を分断位置に保持可能である。第1レール部71と第2レール部72とはT字状に形成されている。なお、第1レール部71は、外壁91,92との間に隙間を有していてもよい。
【0040】
具体的には、第1レール部71は、パネル部材60の横幅寸法の4倍以上の長さを有しており、4つの保持位置71a〜71dにパネル部材60を保持可能である。第1レール部71の両端に位置する保持位置71aと保持位置71dとにパネル部材60が保持された場合、パネル部材60は、
図2に示した第1の配置パターンの接合位置に位置する。第1レール部71の保持位置71cと保持位置71dとにパネル部材60が保持された場合、パネル部材60は、
図3に示した第2の配置パターンの接合位置に位置する。
【0041】
このように、レール70の第1レール部71は、接合位置の第1の配置パターンと、接合位置の第2の配置パターンとのいずれかを選択的に位置決め可能である。なお、保持位置71aと保持位置71bとにパネル部材60が保持された場合、パネル部材60は、
図3の想像線で示す配置パターンの接合位置に位置する。
【0042】
第2レール部72は、パネル部材60の横幅寸法の2倍以上の長さを有しており、2つの保持位置72a,72bにパネル部材60を保持可能である。保持位置72aと保持位置72bとにパネル部材60が保持された場合、パネル部材60は
図4に示す分断位置に位置する。
【0043】
このように、外部廊下90の天井90bにレール70を設置することで、パネル部材60の位置決めを容易に行うことができる。すなわち、住戸11,12の玄関前空間21a,31aを、簡単に、共有空間としたり、独立空間としたりすることができる。その結果、それぞれの住空間20,30の間取りを変えなくても、住戸11,12を、二世帯プランと単世帯プランとに切り替えることができる。したがって、集合住宅1のこのような構成は、入居者が流動的に入れ替わる賃貸専用の集合住宅である場合に、特に効果的である。
【0044】
パネル部材60とレール70との固定構造の一例を
図8に示す。
図8に示されるように、パネル部材60の係合部66は、レール70(第1および第2レール部71,72)の被係合部74に係合する。被係合部74は、レール70の長さ方向に沿って延在する。これにより、パネル部材60はレール70に保持される。
【0045】
パネル部材60の係合部66は、たとえば、パネル部材60の厚み方向に沿って延在する板状部材により構成される。この場合、レール70の被係合部74は、たとえば、係合部66の両端部を下方から支持する一対の内側フランジ部により構成される。
【0046】
パネル部材60の係合部66の両端部には、貫通孔が設けられている。各レール部の被係合部74(一対の内側フランジ部)には、パネル部材60が上記した保持位置に位置する場合に係合部66の貫通孔に対応する位置に、貫通孔が設けられている。パネル部材60は、係合部66の貫通孔と被係合部74の貫通孔とに挿通された締結部材(たとえばボルト)75によって、レール70に固定される。これにより、レール70に沿ったパネル部材60の移動が規制される。
【0047】
このように、レール70の被係合部74に貫通孔が設けられることで、パネル部材60を接合位置あるいは分断位置に位置させる際の位置決めをより正確に行うことができる。なお、パネル部材60のレール70への固定方法は、貫通孔と締結部材75以外の手段を利用した固定方法であってもよい。
【0048】
本実施の形態では、レール70によってパネル部材60をそれぞれの配置パターンに容易に移動させ、所定の位置に容易に固定することができる。また、レール70は、床90aには設けられていない。そのため、外部廊下90の美観を維持することができるとともに、居住者が歩行の際にレール70につまずいたりする危険がない。
【0049】
なお、住戸11,12の販売または賃貸前においては、入居者が先入観を持たないように、
図9に示す初期位置に2つのパネル部材60(隔壁6)が配置できるようになっていてることが望ましい。初期位置は、少なくとも、玄関扉21,31よりも外壁93(行き止まりの壁)側の位置であり、望ましくは外壁93付近の位置である。
【0050】
そのため、レール70は、
図7に示すように、第2レール部72に交差し、外壁93に沿って配置される第3レール部73を含んでいる。第3レール部73は第1レール部71と略平行に配置され、レール70全体としては略H字状に形成されている。本実施の形態では、第3レール部73の長さは、第1レール部71よりも短い。第3レール部73は、パネル部材60の横幅寸法の2倍以上の長さを有していればよい。
【0051】
第3レール部73は、2つの保持位置73a,73bにパネル部材60を保持可能である。保持位置73aと保持位置73bとにパネル部材60が保持および固定された場合、パネル部材60は
図7に示す初期位置に位置する。なお、住戸11,12の販売または賃貸前に限らず、住戸11,12の一方が空き家の場合においても、パネル部材60を初期位置に配置してもよい。このようにすることで、他方の住戸の玄関前空間を、一方の住戸(空き家)の玄関前空間も含めた広い空間として使用でき、かつ、明るく開放的な空間とすることができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、玄関扉21,31は、互いに対面する外壁91,92に設けられることとしたが、行き止まりの外壁93に並べて設けられていてもよい。つまり、玄関扉21,31は、同じ方向を向いて配置されていてもよい。このような場合においても、パネル部材60を
図2または
図3の位置に配置することで、共有玄関ポーチ51を形成し、パネル部材60を
図4の位置に配置することで、両住戸の玄関前空間21a,31aを独立した空間として分断することもできる。この場合、初期位置は、外壁91,92のいずれか一方に沿う位置であってもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、外部廊下90の天井90bに固定されたレール70によって、パネル部材60の位置を位置決めすることとしたが、レール70以外の部材によって隔壁6の位置を位置決めしてもよい。つまり、隔壁6の位置を、分断位置と接合位置とに位置決めするための位置決め部材は、レールに限定されない。たとえば、パネル部材60に、支柱61の上端部から上方に突出する突出部(図示せず)を設け、パネル部材60が接合位置および分断位置それぞれに配置された状態において、パネル部材60の突出部を受け入れる受け入れ部(図示せず)が、外部廊下90の天井90bに設けられていてもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、隔壁6が2つのパネル部材60で構成されることとしたが、3つ以上のパネル部材60で構成されてもよい。あるいは、
図2に示した接合位置の第1の配置パターンは実現できないが、隔壁6が、1つのパネル部材60で構成されてもよい。
【0055】
<実施の形態2>
上記実施の形態1では、互いに隣接する2住戸の玄関前空間を共有空間とすることで、2住戸をリンクさせて二世帯住宅化する構成について説明した。本実施の形態では、玄関前空間だけでなく、2住戸の住空間の一部を共有空間とすることで、2住戸をリンクさせる構成について説明する。
【0056】
図10を参照して、本実施の形態に係る集合住宅1Aは、同一フロアにおいて互いに隣接する3つの住戸11,12,13を含む。住戸11〜13は、直線状に延びる外部廊下90に沿って、列をなして並んでいる。本実施の形態では、住戸11の一方側に住戸12が隣接し、住戸11の他方側に住戸13が隣接している。中央の住戸11は、両隣に隣接する住戸12,13よりも広い。住戸12,13の広さは同程度であってもよい。住戸11の広さは、住戸12,13の広さの1.5倍以上であり、2倍程度であることが望ましい。
【0057】
住戸11の住空間20、住戸12の住空間30、および住戸13の住空間40は、それぞれ独立している。すなわち、住戸11の玄関(玄関扉21)、住戸12の玄関(玄関扉31)、および住戸13の玄関(玄関扉41)が、個別に設けられている。
図10の例において、住戸11〜13のベランダ22,32,42は、それぞれの住空間20,30,40に含まれる。
【0058】
図10には、住戸11〜13のうち、一方側の2住戸11,12がリンクされた状態が示されている。すなわち、住戸11,12の住空間20,30、および、住戸11,12の玄関前空間21a,31aがリンクした状態が示されている。
【0059】
住戸11,12の住空間20,30のリンク形態の一例について説明する。
図10に示されるように、住戸11のベランダ22と住戸13のベランダ42との境界位置に仕切り壁82が設けられているが、住戸11のベランダ22と住戸12のベランダ32との境界位置には仕切り壁がない。住戸11のベランダ22と住戸13のベランダ42とは、仕切り壁82によって分離されている。そのため、住戸13のベランダ42は、住戸11の世帯と共有されることのない専有空間となっている。
【0060】
これに対し、住戸11,12のベランダ22,32は、住戸11,12それぞれの世帯が共有可能な共有ベランダ52として構成されている。これにより、住戸11,12それぞれの世帯が共有ベランダ52を自由に行き来できる。したがって、本実施の形態によれば、住戸11,12に親子二世帯が居住した場合、互いのプライバシーを保護しつつ、適度に親子間や親孫間で交流することができる。なお、住戸12のベランダ32の一方側の端縁、および、住戸13の他方側の端縁には、固定の仕切り壁81が設けられている。
【0061】
住戸11が住戸12よりも広いため、広い方の住戸11は人数の多い子世帯に適しており、狭い方の住戸12は人数の少ない親世帯に適している。親世帯の住戸12のベランダ32の奥行き寸法は、子世帯の住戸11のベランダ22の奥行き寸法よりも大きい。つまり、ベランダ22,32の手摺部(屋外側端部)の延在方向に直交する方向の長さが、ベランダ32の方がベランダ22よりも長く、親世帯のベランダ32は屋内側に入り込んでいる。この場合、共有ベランダ52のうちの一部(親世帯のベランダ32)を、二世代あるいは三世代の交流スペースとすることができる。
【0062】
次に、集合住宅1Aにおける住戸11,12の玄関前空間21a,31aのリンク形態について説明する。
図10に示されるように、集合住宅1Aにおいては、住戸11の外部廊下90に面する外壁94は、両隣の住戸12,13の外部廊下90に面する外壁95,96よりも奥まっている。すなわち、外壁94、外壁94と外壁95とに交差する外壁97、および、外壁94と外壁96とに交差する外壁98によって、三方が囲まれたアルコープが形成されている。
【0063】
住戸11の玄関扉21は、アルコープの正面の外壁94に設けられている。住戸12の玄関扉31は、アルコープの一方の側面の外壁97に設けられている。住戸13の玄関扉41は、アルコープの他方の側面の外壁98に設けられている。このように、3つの住戸11〜13それぞれの玄関前空間21a,31a,41aは、共通のアルコープ内に形成されている。
【0064】
図10において、住戸11の玄関前空間21aと住戸12の玄関前空間31aとが、隔壁6によって一体化され、共有玄関ポーチ51を形成している。隔壁6は、住戸11の玄関前空間21aの他方側(住戸13側)の側部に配置されている。隔壁6もまた、複数のパネル部材60によって構成されている。
【0065】
たとえば、隔壁6は、外壁94に交差するように配置されたパネル部材60aと、パネル部材60aに交差し、外壁94と略平行に配置されたパネル部材60bとで構成されている。この場合、隔壁6は、パネル部材60a,60bによって略L字状に形成される。なお、隔壁6は、少なくとも、3住戸に共通のアルコープを2つの空間に仕切るパネル部材60aを有していればよい(I字状であってもよい)。
【0066】
本実施の形態では、住戸11,12の玄関前空間21a,31aをリンクする隔壁6によって、住戸11の玄関前空間21a(共有玄関ポーチ51)と他方側の住戸13の玄関前空間41aとが分断される。すなわち、外部廊下90のアルコープに、このような隔壁6を配置することで、住戸11と住戸12との関連性を高め、逆に、住戸11と住戸13との関連性を遮断することができる。
【0067】
また、本実施の形態では、住戸12の玄関前空間31aの側部にも、外部廊下90の手摺部に沿って隔壁6Aが設けられている。隔壁6Aは、平面視において隔壁6のパネル部材60bと略同じライン上に配置されている。そのため、住戸11側の隔壁6と住戸12側の隔壁6Aとによって、住戸11の玄関前空間21aと住戸12の玄関前空間31aとが、より一体的になる。
【0068】
なお、住戸13の玄関前空間41aの側部にも、外部廊下90の手摺部に沿って隔壁6Aが設けられていてもよい。住戸13の玄関前空間41a、および、住戸12の玄関前空間31aに配置された隔壁6Aは、移動不能に固定されていてもよい。
【0069】
このように、
図10に示す集合住宅1Aにおいては、住戸11,12の住空間20,30のうち、半屋外空間であるベランダ22,32を共有スペースとし、かつ、住戸11,12の玄関前空間21a,31aを適度に囲うことで、両世帯の間のコミュニケーションを可能としている。
【0070】
図11には、住戸11〜13のうち、他方側の2住戸11,13がリンクされた状態が示されている。すなわち、住戸11,13の住空間20,40、および、住戸11,13の玄関前空間21a,41aがリンクした状態が示されている。
【0071】
図11に示されるように、住戸11のベランダ22と住戸12のベランダ32との境界位置に仕切り壁82が設けられているが、住戸11のベランダ22と住戸13のベランダ42との境界位置には仕切り壁がない。つまり、
図11の例では、共有ベランダ52が、住戸11のベランダ22と住戸13のベランダ42とによって構成されている。
【0072】
また、
図11では、隔壁6が、住戸11の玄関前空間21aの他方側(住戸13側)ではなく一方側(住戸12側)に配置されている。これにより、住戸11の玄関前空間21aと住戸13の玄関前空間41aとが、隔壁6によって一体化され、共有玄関ポーチ51を形成している。また、この隔壁6によって、住戸11の玄関前空間21a(共有玄関ポーチ51)と一方側の住戸12の玄関前空間31aとが分断される。
【0073】
図11の配置パターンにおいても、隔壁6は略L字状に形成され、たとえば、外壁94に交差するように配置されるパネル部材60cと、パネル部材60cに交差し、外壁94と略平行に配置されるパネル部材60dとで構成される。
【0074】
本実施の形態においても、隔壁6の位置を、
図10の配置パターンと
図11の配置パターンとに切り替えるために、外部廊下90の天井に、位置決め部材としてのレールが設けられていることが望ましい。レールによって、隔壁6の位置を、
図10の配置パターンのように、住戸11の玄関前空間21aと住戸12の玄関前空間31aとを接合し、かつ、住戸11の玄関前空間21aと住戸13の玄関前空間41aとを分断する位置に位置決めすることができる。また、隔壁6の位置を、
図11の配置パターンのように、住戸11の玄関前空間21aと住戸13の玄関前空間41aとを接合し、かつ、住戸11の玄関前空間21aと住戸12の玄関前空間31aとを分断する位置にも位置決めすることができる。
【0075】
図10および
図11では、仕切り壁82および隔壁6を利用して、中央の住戸11とその隣の住戸12または13とを二世帯プランとする例を示したが、仕切り壁82および隔壁6を利用して、3つの住戸11〜13全てを単世帯プランとすることもできる。つまり、3つの住戸11〜13の住空間20,30,40および玄関前空間21a,31a,41aを、それぞれ、共有スペース(共有部)をもたない、完全に独立した住戸とすることができる。
【0076】
具体的には、住戸11のベランダ22と住戸12のベランダ32との境界位置、および、住戸11のベランダ22と住戸13のベランダ42との境界位置の双方に、仕切り壁82を設けることで、ベランダ22,32,42を、それぞれ、住戸11,12,13の専有空間とすることができる。同様に、住戸11の玄関前空間21aの両側部(すなわち、玄関前空間21a,31aの境界位置、および、玄関前空間21a,41aの境界位置)に、隔壁6を設けることで、玄関前空間21a,31a,41aを、それぞれ、独立した玄関ポーチとすることができる。
【0077】
この場合の隔壁6の配置例を
図12に示す。
図12において、住戸12側の隔壁6は、たとえば、
図11に示したパネル部材60cによって構成され、住戸13側の隔壁6は、たとえば、
図10に示したパネル部材60aによって構成される。このような場合、アルコープ上の天井に、略U字(コの字)形状のレール70(
図12の想像線)を設置することで、共通の(たとえば2つの)パネル部材60によって、
図11〜
図12全ての配置パターンを実現することができる。
【0078】
上述のように、住戸11,12,13をそれぞれ単世帯プランとすることもできるため、本実施の形態においても、住戸11の両隣の住戸12,13に完全に無関係の世帯が居住したとしても、各世帯は支障なく通常の生活を送ることができる。住戸12,13は住戸11よりも狭いため、入居者が流動的である。したがって、状況が変わり、子世帯が親世帯との近居を望むようになれば、住戸12,13のいずれかの世帯が退去したチャンスに親世帯を呼び寄せることで、引っ越しすることなく希望を叶えることができる。
【0079】
複数の住戸においてこのような親子近居を可能とするためには、3つの住戸11〜13を1ユニットとし、複数のユニットが設けられていることが望ましい。1フロアの総面積が大きい場合には、同一フロアにおいて、住戸11〜13と同じ並び方で配置された他の3つの住戸が連続して設けられていてもよい。たとえば
図13では、外部廊下90に沿って、住戸ユニット10A,10B,10Cが一列に配置されている。各住戸ユニットは、一方側から順に、住戸12(
図13では「2」)、住戸11(
図13では「1」)、および住戸13(
図13では「3」)を含んでいる。
【0080】
あるいは、大小2つの住戸を1ユニットとし、複数のユニットを集合住宅1内に設けてもよい。
図13に示すように、外部廊下90は、アルコープを含まない一般的な直線状の共用廊下であってもよい。
【0081】
なお、上記した仕切り壁82および隔壁6の移動、あるいは、取付け/取り外しは、管理会社等、集合住宅1の管理・運営に関わる業者のみが可能であるものとする。隔壁6は、レール70によって移動可能に保持されているため、基本的に、隔壁6(パネル部材60)自体の取り外し作業は不要である。そのため、隔壁6を収納しておくスペースを別途準備しなくてもよい。
【0082】
バルコニーの仕切り壁82についても、分断位置と接合位置とに切り替え可能であることが望ましい。
図14には、互いに隣接する住戸11,12のベランダ22,32の境界位置に配置された仕切り壁82が示されている。仕切り壁82は、開閉扉のように、回動可能に取り付けられている。
【0083】
具体的には、仕切り壁82の幅方向一方端部に蝶番83が固定されており、この蝶番83が、取付け下地85を介して、ベランダに面する外壁98に取り付けられている。仕切り壁82の幅方向他方端部には、略Z形状の止め金具84が固定されている。この止め金具84は、分断位置において、ベランダの屋外側端部に位置する腰壁(または手摺等)99に固定された取付け下地86に対し、ビス固定される。つまり、仕切り壁82としての扉が閉じられた状態である。これにより、住戸11のベランダ22と住戸12のベランダ32とが独立した空間として仕切られる。
【0084】
一方、止め金具84は、接合位置において、ベランダに面する外壁98に固定された取付け下地87に対し、ビス固定される。つまり、仕切り壁82としての扉が開けられた状態である。これにより、仕切り壁82は、外壁98に沿って退避した状態となり、ベランダ22,32を共有ベランダとすることができる。
【0085】
なお、実施の形態2では、互いに隣接するベランダを共有ベランダ52に切り替えることで、互いに隣接する住空間をリンクさせる構成を示したが、いずれか一方の住戸の室内空間の一部を共有空間に切り替え可能としてもよい。
【0086】
以上説明した実施の形態1の集合住宅1の構成と、実施の形態2の集合住宅1Aの構成とを、適宜組み合わせてもよい。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。