特許第6771176号(P6771176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771176
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】耐カビ消臭剤
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/014 20060101AFI20201012BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20201012BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20201012BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   A61L9/014
   A01P3/00
   A01N59/00 B
   E04F13/14 101
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-34557(P2016-34557)
(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-154860(P2016-154860A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2019年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-34634(P2015-34634)
(32)【優先日】2015年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・平成26年12月28日 竜山石塗り壁材発表会(加古川市野口町長砂49−5 野口公民館)にて、岸本和樹及び岸本憲征が、岸本和樹及び岸本憲征の発明した流紋岩質溶結凝灰岩を含む耐カビ消臭剤に関する発表会案内文書、説明資料及びチラシの配布並びに発表したことにより公開 ・平成26年12月28日 神戸新聞社に、岸本和樹及び岸本憲征が、岸本和樹及び岸本憲征の発明した流紋岩質溶結凝灰岩を含む耐カビ消臭剤に関する発表会案内文書をファクシミリにて送信したことにより公開 ・平成27年 1月24日 神戸新聞朝刊にて、神戸新聞社が、岸本和樹及び岸本憲征の発明した流紋岩質溶結凝灰岩を含む耐カビ消臭剤に関する記事を掲載したことにより公開 ・平成27年 1月24日 日本建築仕上材工業会に、岸本和樹が、岸本和樹及び岸本憲征の発明した流紋岩質溶結凝灰岩を含む耐カビ消臭剤に関するチラシを提出したことにより公開 ・平成27年 1月24日 株式会社松下石材店に、岸本和樹が、岸本和樹及び岸本憲征の発明した流紋岩質溶結凝灰岩を含む耐カビ消臭剤に関する説明資料及びチラシを配布したことにより公開
(73)【特許権者】
【識別番号】514274410
【氏名又は名称】株式会社ケープラン
(74)【代理人】
【識別番号】100161942
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨 みどり
(72)【発明者】
【氏名】岸本和樹
(72)【発明者】
【氏名】岸本憲征
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−167803(JP,A)
【文献】 特開平09−206551(JP,A)
【文献】 特開昭60−033247(JP,A)
【文献】 特開2004−323641(JP,A)
【文献】 特開平07−108168(JP,A)
【文献】 特開2012−017217(JP,A)
【文献】 特開2002−295143(JP,A)
【文献】 特開2006−043621(JP,A)
【文献】 特開2000−327315(JP,A)
【文献】 実開昭60−109630(JP,U)
【文献】 特開平10−084767(JP,A)
【文献】 特開平10−225619(JP,A)
【文献】 特開2001−058318(JP,A)
【文献】 特開2004−187924(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/045660(WO,A1)
【文献】 特開2005−201586(JP,A)
【文献】 日本物理学会誌,白勢 祐次郎,2013年 3月 5日,第68巻3月増刊号(通巻759号),154
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 59/00
A01P 3/00
A61L 9/01
B01D 53/56
B01J 20/02
C04B 35/00
C09D 7/61
E04F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
兵庫県高砂市から兵庫県加西市に分布する流紋岩質溶結凝灰岩を含む、耐カビ消臭剤。
【請求項2】
さらにチタンアパタイトを含む、請求項1に記載の耐カビ消臭剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の耐カビ消臭剤を含む、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐カビ消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
流紋岩質溶結凝灰岩の粉砕物が、調湿性に優れていることが知られている(非特許文献1)。特許文献1には、流紋岩質溶結凝灰岩の粉砕物を含む調湿性に優れた塗り壁剤組成物が開示されている。しかしながら、流紋岩質溶結凝灰岩について、調湿性以外の特性については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2014−218882号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】筑波大学「科学の芽」2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、流紋岩質溶結凝灰岩を含み、耐カビ性が高く、優れた消臭効果を有した耐カビ消臭剤、ならびに、この耐カビ消臭剤を含む成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、流紋岩質溶結凝灰岩を含むことで、耐カビ性が高く、さらに優れた消臭効果を有する耐カビ消臭剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の耐カビ消臭剤は、兵庫県高砂市から兵庫県加西市に分布する流紋岩質溶結凝灰岩を含んでいる。好ましくは、さらに、チタンアパタイトを含んでいてもよい。
また、本発明の成形体は上記耐カビ消臭剤を含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流紋岩質溶結凝灰岩を含むことで、耐カビ性が高く、さらに優れた消臭効果を有する耐カビ消臭剤、ならびに該耐カビ消臭剤を含む、耐カビ性が高く、さらには優れた消臭効果を有する成形体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例の耐カビ消臭剤として竜山石の粉末を塗布したパーティクルボードの表面に、黒カビが繁殖した状態を示す写真である。
図2】実施例の耐カビ消臭剤として竜山石の粉末を塗布したパーティクルボードに繁殖した黒カビを拭き取った結果を示す写真である。
図3】比較例のパーティクルボードの表面に、黒カビが繁殖した状態を示す写真である。
図4】比較例のパーティクルボードに繁殖した黒カビを拭き取った結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.耐カビ消臭剤
本発明の耐カビ消臭剤は、流紋岩質溶結凝灰岩を含んでおり、耐カビ性が高く、さらに、優れた消臭効果を有する。消臭効果としては、ボンド、接着剤等に含まれるホルムアルデヒド等の有機物や、アンモニア等の臭い、ペット臭を速やかに消臭する。本発明の耐カビ消臭剤は、臭い成分の消臭に使用後に放置しても臭いが再分散されることがなく、臭いを分解すると考えられる。また、本明細書において、耐カビ性とは、カビの定着性が低く、カビが表面部分に発生した場合でも、カビが根付かずに容易に除去することが可能な性質を示す。さらに、本発明の耐カビ消臭剤は、防カビ性も有している。
【0011】
流紋岩質溶結凝灰岩の含有量は、耐カビ消臭剤全量中5〜100質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましく、20〜100質量%であることがより好ましい。流紋岩質溶結凝灰岩の含有量がこのような範囲であれば、耐カビ性および消臭性により優れた耐カビ消臭剤とすることができる。
本発明の耐カビ消臭剤は、固体を含む液状であってもよく、スラリー状であってもよく、固体であってもよい。また、任意の温度で焼成して製造されていてもよい。
【0012】
1−1 流紋岩質溶結凝灰岩
本発明の耐カビ消臭剤に含まれる流紋岩質溶結凝灰岩としては、竜山石、長石、高室石などと称される兵庫県高砂市から兵庫県加西市に分布する流紋岩質溶結凝灰岩である
【0013】
本発明の耐カビ消臭剤に含まれる流紋岩質溶結凝灰岩は、そのまま使用してもよいし、粉砕物として利用してもよい。粉砕物としては、数mm〜数cm角であってもよく、なかでも、粒径が1300μm以下(例えば0.001〜1300μm)が好ましい。より好ましくは1000μm以下である。流紋岩質溶結凝灰岩の粉砕物の粒径がこのような範囲である場合に、より消臭性が高くなる。
【0014】
1−2 他の成分
本発明の耐カビ消臭剤には、必要に応じて、添加物や溶媒が含有されていてもよい。
【0015】
1−2−1 添加物
本発明の耐カビ消臭剤に含有される添加剤としては、特に限定されず、種々の添加物を添加できる。具体的には、例えば、メチルセルロース(水溶性、非水溶性は問わない);セルロースファイバー;セルロースナノファイバー;水溶性ペーパー;アクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニル系樹脂、ラテックス、SBR(スチレン−ブタジエン−ラテックス)系樹脂などの樹脂;アクリル−スチレン系樹脂、アクリル−シリコン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂などの樹脂を主体にして変性してなる変性樹脂;石膏、セメント、石灰、水ガラスなどの無機物質などが挙げられる。中でもメチルセルロースおよびセルロースファイバー、セルロースナノファイバーが、環境面で優れている。また、樹脂バインダーを用いた場合には強度に優れる。このため、洗面所や浴室等の湿気の多い場所の壁材などの構成材として使用できる。また、酸化チタン等の顔料、セラミックパウダー、セピオライト、ベントナイト等の消臭剤、硬化促進剤などの公知の添加物を使用できる。
また、本発明の耐カビ消臭剤には、チタンアパタイトを添加してもよい。チタンアパタイトを添加することにより、耐カビ消臭の機能に加えて、空気浄化、水浄化、汚れ分解、抗菌、殺菌等の機能を付与することができる。チタンアパタイトの添加量は、流紋岩質溶結凝灰岩100質量部に対し、例えば0.1〜100質量部、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは1〜10質量部とすることができる。
【0016】
1−2−2 溶媒
本発明の耐カビ消臭剤は、必要に応じて、溶媒を含んでいてもよい。本発明の耐カビ消臭剤に含まれていてもよい溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、水;ヘプタン、ヘキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、エチルベンゼンなどの炭化水素類;エタノール、エチルアルコール、エチレングリコールなどのアルコール類;2−メトキシエタノールなどのエーテル類;酢酸メチルなどのエステル;アセトンなどのケトン類などが挙げられる。中でも水溶性溶媒が好ましく、水が自然に優しい溶媒としてより好ましい。水としては、中性である精製水が好ましく使用できる。なお、中性である精製水に竜山石等の流紋岩質溶結凝灰岩の粉砕物を加えると、組成物は弱アルカリ性となり、耐カビ性、防カビ性、防菌作用を呈する。
【0017】
溶媒の含有量としては、流紋岩質溶結凝灰岩と上記添加物の総質量を1とした場合に、質量比で0.1〜20とすることができる。
【0018】
2.成形体
本発明の成形体は、本発明の耐カビ消臭剤を含む。本発明の成形体は、耐カビ消臭効果を有する。本発明の成形体は、流紋岩質溶結凝灰岩を切り出し、適宜の形に削って製造してもよい。また、流紋岩質溶結凝灰岩の粉砕物(粉末)と適宜のバインダーとを混合して、好ましくはプレス(圧着)して、成形し、乾燥および/または焼結することにより製造してもよい。また、パーティクルボード等の適宜の基板に、本発明の耐カビ消臭剤を含むスラリーを塗布後、乾燥し、塗膜としてもよい。
本発明の成形体は、耐カビ消臭効果に優れた、内壁用や外壁用の壁材・レンガ・タイル、外壁用のサイディング(建物の外壁に使用する耐水・耐候性に富む板状材)等としても好ましく使用できる。
【0019】
2−1 含有量
本発明の成形体に含まれる耐カビ消臭剤の含有量は、成形体全量中5〜100質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましく、20〜100質量%であることがさらに好ましい。耐カビ消臭剤の含有量がこのような範囲であれば、耐カビ性および消臭性がより高い成形体とすることができる。
【0020】
2−2 バインダー
本発明の成形体の製造に使用できるバインダーとしては、特に限定されず、公知のバインダーを使用できる。具体的には、メチルセルロース(水溶性、非水溶性は問わない);セルロースファイバー;セルロースナノファイバー;水溶性ペーパー;アクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系、ラテックス、SBR(スチレン−ブタジエン−ラテックス)樹脂系などの樹脂バインダー;アクリル−スチレン樹脂系、アクリル−シリコン樹脂系、エチレン−酢酸ビニル樹脂系などの、バインダーに使用される樹脂を主体にして変性してなる変性樹脂バインダー;石膏、セメント、石灰、水ガラスなどの無機バインダーなどが挙げられる。中でもメチルセルロースおよびセルロースファイバー、セルロースナノファイバーが、環境面で優れている。また、樹脂バインダーを用いた成形体は、耐カビ並びに防カビ、消臭効果を有すると共に、強度や耐水性に優れる。このため、洗面所や浴室等の湿気が多く、カビの発生しやすい場所の壁材等として使用できる。さらに、本発明の成形体では、使用した樹脂等からの臭いを消臭できる。
【0021】
バインダーの含有量は、例えば、メチルセルロースおよびセルロースファイバー、セルロースナノファイバーは、流紋岩質溶結凝灰岩100質量部に対して0.5〜200質量部程度使用するのが好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。アクリル樹脂エマルジョンは、流紋岩質溶結凝灰岩100質量部に対して1〜200質量部程度使用するのが好ましい。バインダー使用時には、上記の溶媒を使用できる。
【0022】
流紋岩質溶結凝灰岩は、カルシウムやマグネシウム等のミネラル成分を含み、抗菌作用、マイナスイオン発生作用なども有する。流紋岩質溶結凝灰岩ならびにそれを含む成形体は入浴剤などとしても使用できる。
また、本発明の成形体にチタンアパタイトを含ませることにより、耐カビ消臭の機能に加えて、空気浄化、水浄化、汚れ分解、抗菌、殺菌等の機能を付与することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0024】
(1)消臭性評価
[実施例1]
竜山石の粉末(粒径250μm以下)100gと、非水溶性メチルセルロース3gと、水100gを混合し、パーティクルボード(30cm角)の片面に塗布し、塗膜を形成した。
上記塗膜を形成したパーティクルボードの塗膜形成面の中央付近に、蓋をした2Lの空ペットボトルを蓋部分が上になるように長手方向を垂直に載置した。上記塗膜を形成したパーティクルボードと空ペットボトルとを、上記空ペットボトルの蓋部分を頂点とし上記ボードを底面とした略ピラミッド状に覆って密封できるように、ポリエチレン袋をセットした。アンモニア水溶液[株式会社金冠堂製キンカン(登録商標)]0.15mLを上記ポリエチレン袋中に滴下して密封した。滴下30分後、2時間後、6時間後および10時間後のポリエチレン袋内のアンモニア濃度を、アンモニア検知管(株式会社ガステック製、No.3D)を使用して測定した。その結果、ポリエチレン袋内のアンモニア濃度はそれぞれ0ppmであった。
【0025】
[実施例2]
実施例1で使用した塗膜を形成したパーティクルボードをそのまま用いて、実施例1を行った2日後に、再度、実施例1と同様にして実験を行い、アンモニア水溶液を滴下30分後、2時間後、6時間後および10時間後の容器内のアンモニア濃度を測定した。その結果、ポリエチレン袋内のアンモニア濃度はそれぞれ0ppmであった。
【0026】
[比較例1]
上記塗膜を形成しなかった以外は実施例1と同様にして実験を行い、アンモニア水溶液を滴下30分後、2時間後、6時間後および10時間後のポリエチレン袋内のアンモニア濃度を測定した。その結果、30分後は200ppm、2時間後以降はアンモニア検知管の測定上限である500ppmを上回った。
【0027】
[実施例3]
竜山石の粉末(粒径250μm以下)100gとアクリル樹脂エマルジョン(トーヨーマテラン株式会社製、タイル接着剤)5gと水20gを混合し、ボール状にした後に乾燥して、成形体を得た。
得られた成形体を200cm×350cm×250cmの水槽に入れ、アンモニア水溶液[株式会社金冠堂製キンカン(登録商標)]0.04mLを滴下し、ポリエチレン袋で密封した。滴下10時間後の容器内のアンモニア濃度を、アンモニア検知管を使用して測定した。その結果、水槽中のアンモニア濃度は0ppmであった。
【0028】
[実施例4]
竜山石の粉末(粒径250μm以下)100gとアクリル樹脂エマルジョン(フジワラ科学株式会社製)10gと水20〜40gを混合し、直径6cmの円筒形の容器に充填し、乾燥して、直径5.5cmで高さ約1cmの円柱状の成形体2個を得た。
得られた成形体2個を200cm×350cm×250cmの水槽に入れ、アンモニア水溶液[株式会社金冠堂製キンカン(登録商標)]0.04mLを滴下し、ポリエチレン袋で密封した。滴下10時間後の容器内のアンモニア濃度を、アンモニア検知管を使用して測定した。その結果、水槽中のアンモニア濃度は0ppmであった。
【0029】
[実施例5]
実施例4において、アクリル樹脂エマルジョンの量を20gに変更した以外は、実施例4と同様にして実験を行った。その結果、アンモニア水溶液滴下10時間後の水槽中のアンモニア濃度は0ppmであった。
【0030】
[実施例6]
実施例4において、アクリル樹脂エマルジョンの量を30gに変更した以外は、実施例4と同様にして実験を行った。その結果、アンモニア水溶液滴下10時間後の水槽中のアンモニア濃度は0ppmであった。
【0031】
<吸水性実験>
実施例4〜6で得られた成形体に霧吹きで水をかけたところ瞬時に吸うことはなかったが表面に水がにじみ少しずつではあるが水分は吸収していた。アクリル樹脂エマルジョンの量が10gの成形体の方が水分の吸収がやや早く、アクリル樹脂エマルジョンの量が20g、30gの成形体ではほぼ同じぐらいであった。
【0032】
<成形体の強度>
実施例3〜6で得られた成形体は、強度にも優れていた。特に、実施例4〜6で得られた成形体は、サイディング・レンガ・タイル等の建材用組成物として十分使用できる強度を有していた。
【0033】
[実施例7]
実施例3における、竜山石の粉末とアクリル樹脂エマルジョンと水からなる成形体を、竜山石の青石原板100gに変更した以外は、実施例3と同様にして実験を行った。その結果、アンモニア水溶液滴下10時間後の水槽中のアンモニア濃度は20ppmであった。
【0034】
[比較例2]
水槽中に成形体を入れない以外は実施例3〜6と同様にして実験を行った。その結果、アンモニア水溶液滴下10時間後の水槽中のアンモニア濃度は25ppmであった。
【0035】
[実施例8]
床面積約25mの部屋の床全面に床コンパネを2枚重ね貼りし、仕上げに樹脂床材とクッションフロアを半々に貼り付けた。床材用接着剤は、東リ株式会社製エコAR600を使用した。さらに、部屋の壁面および天井に、接着剤でパーティクルボードを貼り付けた。接着剤は、ホルムアルデヒド法規制対象外のFフォースター品を使用した。
施工2、3、4、5日後に、室内のホルムアルデヒド濃度をホルムアルデヒド検知管(株式会社ガステック製、No.91D)で調べた結果、何れも2ppmであった。
その後、壁面および天井のパーティクルボードに竜山石粉末(粒径250μm以下)を含むスラリー[塗り壁材、竜山石含有量500g/m、バインダー:非水溶性メチルセルロース(竜山石100gに対し3g)]を塗布し、塗り壁を形成した。塗り壁形成1日後に、室内のホルムアルデヒド濃度をホルムアルデヒド検知管で調べた結果、0ppmであった。
【0036】
[実施例9]
竜山石の粉末(粒径500μm以下)100gとチタンアパタイト(太平化学産業株式会社製)3gを、非水溶性メチルセルロース3g及び水100gと混合した。この混合液は、分離することなく、均一に混ざっていた。この混合液をパーティクルボード(30cm角)の片面にコテで塗布し、塗膜を形成した。塗膜は、ひび割れすることなく、きれいな塗り壁となった。この塗り壁は、優れた消臭効果ならびに耐カビ性を有し、霧吹きで水をかけたところ、十分な吸水性を有していた。さらに、空気浄化、水浄化、汚れ分解、抗菌、殺菌等の機能を付与できた。
【0037】
実施例1〜9に示すように、流紋岩質溶結凝灰岩を含むことで、アンモニアやホルムアルデヒドといった臭いを吸収する、優れた消臭効果を有した耐カビ消臭剤とすることが出来た。ペット臭についても同様である。実施例1に示すように、本発明の耐カビ防臭剤では、30分後〜長時間経過後も消臭効果が持続され、驚異的な消臭効果、臭い分解効果が判明した。また、実施例2に示すように、本発明の耐カビ消臭剤は大量の臭いの消臭が可能であり、消臭効果が持続する。このため、臭いを分解していると考えられる。さらに、実施例3〜6に示すように、流紋岩質溶結凝灰岩粉末にポリマー系の接着剤を混合して成形体にした場合でも、臭いを吸収する効果が実証された。
【0038】
(2)耐カビ性評価
[実施例10]
竜山石の粉末を塗布したパーティクルボードの表面に米と黒カビを配置し、水30gが入ったコップに入れて、湿度が50〜80%以上となる状態で樹脂製フィルムで密封し、21日間放置した。この結果、図1に示すように、表面に黒カビが繁殖した。
繁殖した黒カビをティッシュペーパーで拭き取り、表面の状態を目視で確認した。図2に示すように、黒カビを簡単に拭き取ることができた。
【0039】
[比較例3]
竜山石の粉末を塗布したパーティクルボードに代えて、何も塗布していないパーティクルボードとした以外は、実施例10と同様にして、パーティクルボードの表面に米と黒カビを配置し21日間放置した。この結果、図3に示すように、表面に黒カビが繁殖した。
繁殖した黒カビをティッシュペーパーで拭き取り、表面の状態を目視で確認した。図4に示すように、黒カビが定着していたため拭き取ることが出来なかった。
【0040】
実施例10に示すように、流紋岩質溶結凝灰岩を含むことで、耐カビ性の高い耐カビ消臭剤とすることが出来た。また、竜山石の粉末自体には、カビは発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の耐カビ消臭剤は、耐カビ性が高く、優れた消臭効果を有した耐カビ消臭剤として使用できる。また、本発明の成形体によれば、カビの定着性が低く、耐カビ性に優れ、かつ優れた消臭効果を有する成形体を提供できる。

図1
図2
図3
図4