特許第6771177号(P6771177)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771177
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】薬液注入工法の施工管理方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   E02D3/12 101
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-40675(P2016-40675)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-155506(P2017-155506A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年12月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】秋本 哲平
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−291452(JP,A)
【文献】 特開昭59−122618(JP,A)
【文献】 特開2007−051481(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0161540(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/092854(WO,A1)
【文献】 特開平02−217514(JP,A)
【文献】 社団法人日本グラウト協会,新訂 正しい薬液注入工法,日刊建設工業新聞社,2007年 5月14日,初版,PP.306−307、表6.12−2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良しようとする砂質地盤中に互いに間隔を置いて多数の注入位置を設定し、該注入位置より砂質地盤に所定量の地盤固化用のシリカ系溶液型薬液を放射状に注入し、注入位置を中心にして砂質地盤空隙内に前記シリカ系溶液型薬液を浸透させた薬液浸透域を形成した後、その注入位置より前記砂質地盤に前記シリカ系溶液型薬液と混合され難い海水、食塩水、高濃度酸素水又は着色水からなる薬液浸透域拡張液を放射状に注入し、該注入位置を中心に前記シリカ系溶液型薬液を押し出して前記薬液浸透域を拡張させるとともに、該薬液浸透域内に薬液浸透域拡張液が砂質地盤空隙に浸透した拡張液浸透域を形成することにより、前記各薬液浸透域が互いに連続して固化してなる外殻固化体を形成し、且つ、該外殻固化体内に前記各拡張液浸透域が互いに独立して散在せしめる薬液注入工法の施工管理方法において、
前記シリカ系溶液型薬液及び前記薬液浸透域拡張液を注入する注入位置の周囲であって、前記薬液浸透域の拡張予定半径より外側に前記薬液浸透域拡張液を検知する拡張液検知手段を配置しておき、
該拡張液検知手段が前記薬液浸透域拡張液を検知した際には、前記薬液浸透域拡張液が前記薬液浸透域から漏れ出したと判断し、その判断に基づきシリカ系溶液型薬液及び薬液浸透域拡張液の注入を管理することを特徴とする薬液注入工法の施工管理方法。
【請求項2】
前記砂質地盤中に互いに間隔を置いて削孔された複数の薬液注入孔にその孔軸方向に互いに間隔をおいて各注入位置を設け、前記シリカ系溶液型薬液及び前記薬液浸透域拡張液の注入作業を互いに隣り合う薬液注入孔で交互に行うようにし、且つ、一方の薬液注入孔において前記シリカ系溶液型薬液及び前記薬液浸透域拡張液の注入作業を行い、他方の薬液注入孔に前記拡張液検知手段を設けておく請求項1に記載の薬液注入工法の施工管理方法。
【請求項3】
前記薬液浸透域拡張液には、海水又は食塩水を使用し、
前記拡張液検知手段は、電気伝導度又は塩分濃度を計測する計測器を備え、該計測器により計測された前記薬液浸透域拡張液注入前後の電気伝導度差又は塩分濃度差に基づき薬液浸透域拡張液を検知する請求項1又は2に記載の薬液注入工法の施工管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として砂質地盤の液状化防止を目的とした薬液注入工法の施工管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、砂質地盤の液状化防止工法には、薬液を低圧で地盤内に注入し、地盤固化用の薬液を地盤空隙に浸透させることにより地盤強度を高める薬液注入工法(浸透固化処理工法ともいう)が知られている。
【0003】
この薬液注入工法は、周辺への影響が少なく、地表面の隆起も抑制することができ、また、既設構造物下の地盤改良にも適していることから近年需要が高まっている。
【0004】
一方、薬液注入工法は、高価な薬液を使用し、その薬液費が施工費用の約7割を占めることから、施工費用が嵩むという課題があり、この課題を解決するものとして、薬液使用量を抑えて施工費用の低減を実現する工法(以下、シェル型浸透固化処理工法という)も開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
このシェル型浸透固化処理工法では、所定の注入位置より地盤に所定量の地盤固化用の薬液を注入し、注入位置を中心にして地盤空隙内に薬液を浸透させた薬液浸透域を形成した後、その注入位置より地盤に海水等の薬液浸透域拡張液を注入し薬液を外向きに押し出すことによって、注入位置を中心に薬液浸透域を拡張させるとともに、薬液浸透域内に薬液浸透域拡張液が地盤空隙に浸透した拡張液浸透域を形成することで、各薬液浸透域が互いに連続して固化してなる外殻固化体を形成するとともに、外殻固化体内に各拡張液浸透域が閉じられた状態で散在するようにし、それによって拡張液浸透域を設けた分、薬液の使用量を低減できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−291452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の如きシェル型浸透固化処理工法では、外殻固化体内に各拡張液浸透域がそれぞれ閉じられた状態に形成されることが重要であるため、施工の途中段階及び施工後に薬液浸透域内に拡張液浸透域が閉じられた状態に形成されるよう施工管理することが望ましいが、従来、拡張液浸透域が閉じられた状態にあるかを確認する方法が確立されていなかった。
【0008】
一方、改良地盤の品質を確認する方法としては、改良地盤をボーリングマシン等によって削孔し、この削孔を通して標準貫入試験、貫入コーン試験等を実施することによって外殻固化体の存在を確認する方法が考えられる。
【0009】
しかしながら、このような品質管理方法では、施工の段階で薬液浸透域内に拡張液浸透域が正常に形成されているかを確認できないため、施工段階で支障が生じた際に対処することができないという問題があった。
【0010】
また、このような品質管理方法を実施すると、せっかく外殻固化体内に各拡張液浸透域が閉じられた状態にあっても、削孔により外殻固化体を破壊し、外殻固化体内に各拡張液浸透域が閉じられた状態を損なうという問題があった。
【0011】
さらに、この品質管理方法では、薬液注入用削孔の他に品質管理用の削孔を必要とし、その分の削孔作業に手間を要することから、その分工期の長期化及び施工費用の増大を招くという問題があった。
【0012】
さらにまた、品質管理用の削孔は、その本数も制限されることから、改良地盤の状態を断片的にしか把握できないという問題もあった。
【0013】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、シェル型浸透固化処理工法において、外殻固化体を破壊することなくその状態を把握でき、且つ、施工中の状態をリアルタイムで管理することができる薬液注入工法の施工管理方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、改良しようとする砂質地盤中に互いに間隔を置いて多数の注入位置を設定し、該注入位置より砂質地盤に所定量の地盤固化用のシリカ系溶液型薬液を放射状に注入し、注入位置を中心にして砂質地盤空隙内に前記シリカ系溶液型薬液を浸透させた薬液浸透域を形成した後、その注入位置より前記砂質地盤に前記シリカ系溶液型薬液と混合され難い海水、食塩水、高濃度酸素水又は着色水からなる薬液浸透域拡張液を放射状に注入し、該注入位置を中心に前記シリカ系溶液型薬液を押し出して前記薬液浸透域を拡張させるとともに、該薬液浸透域内に薬液浸透域拡張液が砂質地盤空隙に浸透した拡張液浸透域を形成することにより、前記各薬液浸透域が互いに連続して固化してなる外殻固化体を形成し、且つ、該外殻固化体内に前記各拡張液浸透域が互いに独立して散在せしめる薬液注入工法の施工管理方法において、前記シリカ系溶液型薬液及び前記薬液浸透域拡張液を注入する注入位置の周囲であって、前記薬液浸透域の拡張予定半径より外側に前記薬液浸透域拡張液を検知する拡張液検知手段を配置しておき、該拡張液検知手段が前記薬液浸透域拡張液を検知した際には、前記薬液浸透域拡張液が前記薬液浸透域から漏れ出したと判断し、その判断に基づきシリカ系溶液型薬液及び薬液浸透域拡張液の注入を管理することことにある。
【0015】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記砂質地盤中に互いに間隔を置いて削孔された複数の薬液注入孔にその孔軸方向に互いに間隔をおいて各注入位置を設け、前記シリカ系溶液型薬液及び前記薬液浸透域拡張液の注入作業を互いに隣り合う薬液注入孔で交互に行うようにし、且つ、一方の薬液注入孔において前記シリカ系溶液型薬液及び前記薬液浸透域拡張液の注入作業を行い、他方の薬液注入孔に前記拡張液検知手段を設けておくことにある。
【0016】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記薬液浸透域拡張液には、海水又は食塩水を使用し、前記拡張液検知手段は、電気伝導度又は塩分濃度を計測する計測器を備え、該計測器により計測された前記薬液浸透域拡張液注入前後の電気伝導度差又は塩分濃度差に基づき薬液浸透域拡張液を検知することにある。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る薬液注入工法の施工管理方法は、上述したように、改良しようとする砂質地盤中に互いに間隔を置いて多数の注入位置を設定し、該注入位置より砂質地盤に所定量の地盤固化用のシリカ系溶液型薬液を放射状に注入し、注入位置を中心にして砂質地盤空隙内に前記シリカ系溶液型薬液を浸透させた薬液浸透域を形成した後、その注入位置より前記砂質地盤に前記シリカ系溶液型薬液と混合され難い海水、食塩水、高濃度酸素水又は着色水からなる薬液浸透域拡張液を放射状に注入し、該注入位置を中心に前記シリカ系溶液型薬液を押し出して前記薬液浸透域を拡張させるとともに、該薬液浸透域内に薬液浸透域拡張液が砂質地盤空隙に浸透した拡張液浸透域を形成することにより、前記各薬液浸透域が互いに連続して固化してなる外殻固化体を形成し、且つ、該外殻固化体内に前記各拡張液浸透域が互いに独立して散在せしめる薬液注入工法の施工管理方法において、前記シリカ系溶液型薬液及び前記薬液浸透域拡張液を注入する注入位置の周囲であって、前記薬液浸透域の拡張予定半径より外側に前記薬液浸透域拡張液を検知する拡張液検知手段を配置しておき、該拡張液検知手段が前記薬液浸透域拡張液を検知した際には、前記薬液浸透域拡張液が前記薬液浸透域から漏れ出したと判断し、その判断に基づきシリカ系溶液型薬液及び薬液浸透域拡張液の注入を管理することにより、施工段階において注入位置毎の施工状態を客観的に把握することができ、施工後に改良地盤をボーリングマシン等によって削孔する必要がなく、その分の工期短縮及び費用の削減を図ることができる。
【0018】
また、本発明において、前記砂質地盤中に互いに間隔を置いて削孔された複数の薬液注入孔にその孔軸方向に互いに間隔をおいて各注入位置を設け、前記シリカ系溶液型薬液及び前記薬液浸透域拡張液の注入作業を互いに隣り合う薬液注入孔で交互に行うようにし、且つ、一方の薬液注入孔において前記シリカ系溶液型薬液及び前記薬液浸透域拡張液の注入作業を行い、他方の薬液注入孔に前記拡張液検知手段を設けておくことにより、拡張液検知手段を設置するための削孔を別途必要とせず、効率よく作業を行うことができる。
【0019】
更に、本発明において、前記薬液浸透域拡張液には、海水又は食塩水を使用し、前記拡張液検知手段は、電気伝導度又は塩分濃度を計測する計測器を備え、該計測器により計測された前記薬液浸透域拡張液注入前後の電気伝導度差又は塩分濃度差に基づき薬液浸透域拡張液を検知することにより、簡便な構成で確実に拡張液を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るシェル型浸透固化処理工法により改良された地盤の一例を示す断面図である。
図2】(a)は同上のシェル型浸透固化処理工法における薬液注入孔の配置を示す平面図、(b)は同縦断面図である。
図3】(a)〜(c)は本発明に係る薬液注入工法の施工管理方法の各段階の状態を示す図であって、上段は薬液注入孔の配置を示す平面図、下段は同縦断面図である。
図4】同上の施工管理方法の原理を説明するための概略断面図である。
図5】シェル型浸透固化処理工法における注入作業の状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る薬液注入工法の施工管理方法の実施態様を図1図5に示した実施例に基づいて説明する。
【0022】
図1は薬液注入工法(シェル型浸透固化処理工法ともいう)による改良地盤の一例を示し、図2図5はシェル型浸透固化処理工法による地盤改良の各工程の状態を示している。
【0023】
このシェル型固化処理工法は、互いに間隔を置いた各注入位置1,1...より地盤2に所定量の地盤固化用の薬液を注入し、注入位置1を中心にして地盤2空隙内に薬液を浸透させた薬液浸透域3を形成した後、その注入位置1より地盤2に薬液浸透域拡張液を注入し、注入位置1を中心に薬液浸透域3を拡張させるとともに、薬液浸透域3内に薬液浸透域拡張液が地盤2空隙に浸透した拡張液浸透域4を形成することにより、図1に示すように、各薬液浸透域3が互いに連続して固化してなる外殻固化体5を形成し、且つ、外殻固化体5内に各拡張液浸透域4を互いに独立して散在せしめたものである。
【0024】
尚、薬液には、シリカ系溶液型薬液が使用でき、所謂「水ガラス」製造用の原料であるNa2O/nSiO2又はK2O/nSiO2とその硬化剤である無機塩類、有機塩類、金属酸化物、金属水酸化物、無機酸、有機酸、酸性塩、塩基性塩等とを組み合わせて調製したものを使用している。
【0025】
一方、薬液浸透域拡張液には、上記の薬液とは成分又は性状が異なり、且つ、薬液と混合されにくい廉価な液体を使用し、例えば、海水、食塩水、高濃度酸素水、着色水等を使用することができる。
【0026】
本発明の施工管理方法は、各注入位置1,1...における薬液及び薬液浸透域拡張液の注入作業において、外殻固化体5内に各拡張液浸透域4が閉じられた状態に形成されるように施工管理するものであり、薬液及び薬液浸透域拡張液を注入する注入位置の周囲であって、薬液浸透域3の拡張予定半径rより外側に拡張液検知手段を配置しておき、拡張液検知手段が薬液浸透域拡張液を検知した際には、薬液浸透域拡張液が薬液浸透域3から漏れ出したと判断し、その判断に基づき薬液及び薬液浸透域拡張液の注入を管理するようになっている。
【0027】
本発明では、まず、薬液及び薬液浸透域拡張液の注入作業に先立ち、図2に示すように、改良予定地盤2の表面より前後左右に一定間隔を隔て、多数の薬液注入孔6a,6b...を平面視格子状配置又は千鳥状配置に多数穿孔し、各薬液注入孔6a,6b...においてその孔軸方向に所定間隔を置いて複数の注入位置1,1...を設定する。
【0028】
尚、本実施例では、便宜上、改良予定地盤2全体に必要な薬液注入孔6a,6b...を平面視格子状配置に全て削孔した後に薬液注入作業を行う場合を例に説明する。
【0029】
次に、図3(a)に示すように、初めに薬液及び薬液浸透域拡張液の注入を行う薬液注入孔6a,6a...にストレーナ7を挿入すると共に、その薬液注入孔6aと互いに隣り合う薬液注入孔6b,6b...内に拡張液検知手段を構成する計測器8を設置し、計測器8の位置調整を行う。
【0030】
ストレーナ7には、図4に示すように、中心部分に注入液流路10が形成され、注入液流路10に連通した注液ノズル11,11が外周の所定位置に開口され、その注液ノズル11,11を挟む上下の位置にパッカー12,12が備えられている。
【0031】
このパッカー12,12は、内部に水などの液体を注入することにより膨張し、ストレーナ7の外周と薬液注入孔6a,6b...の内周面との間の隙間を液密状態に閉鎖するものであり、ノズル11位置を所定の注入位置1の高さになるようにストレーナ7を挿入した後、パッカー12,12に注水して膨張させ、ノズル11上下のストレーナ7外周隙間を閉鎖させ、この状態で加圧送液装置13から注入液を注入することよって液体がパッカー12,12間の薬液注入孔6a,6b...の全内周面から注入位置1,1...を中心に注入液が地盤2中の隙間に放射状に浸透していき球状の薬液浸透域3が形成されるようになっている。
【0032】
計測器8は、薬液浸透域拡張液の成分又は性状を考慮して適宜選択し、例えば、薬液浸透域拡張液が海水又は食塩水の場合には、塩分濃度計又は電気伝導度計を使用する。尚、本実施例では、薬液浸透域拡張液に海水を使用し、計測器8には、電気伝導度計(電気伝導率計)を使用している。
【0033】
計測器8は、センサ等の計測部8aを、薬液注入を行う一方の薬液注入孔6a,6a...と互いに隣り合う他方の各薬液注入孔6b,6b...内に設置し、計測した計測データ(本実施例では電気伝導度データ)がケーブル8bを通して計測器本体8cに随時送信されることにより、注入位置1,1...の周囲であって薬液浸透域3の拡張予定半径rより外側位置の電気伝導度等をリアルタイムで計測するようになっている。尚、計測部8aの設置深さは、注入位置1,1...に可能な限り近い深さとすることが好ましい。
【0034】
拡張液検知手段は、特に図示しないが、計測器8で計測された薬液注入前及び薬液浸透域拡張液の注入開始前の薬液注入前データ及び拡張液注入前データを記録する記録部と、薬液注入前データ及び拡張液注入前データとリアルタイムデータとを比較してその電気伝導度差や塩分濃度差等が所定の値を超えると拡張液を検知する検知判定部とを備え、検知部が拡張液を検知した際には、薬液浸透域拡張液が薬液浸透域3から漏れ出したと判断するようになっている。
【0035】
尚、拡張液検知手段には、コンピュータ機器等を使用し、拡張液の検知及び薬液浸透域拡張液が薬液浸透域3から漏れ出したとの判断を自動的に行うようにすることが好ましいが、計測器8からのデータに基づき作業員が拡張液の検知及び薬液浸透域拡張液が薬液浸透域3から漏れ出したとの判断をしてもよい。
【0036】
そして、薬液注入孔6a,6a...の注入位置1で予め設定した所定量の地盤固化用の薬液注入を開始すると、図5(a)に示すように、地盤2中の空隙に注入位置1を中心にして球形に薬液が浸透した薬液浸透域3が形成される。
【0037】
通常、この段階では、未だ対象となる拡張液が注入されていない状態にあるので、検知判定部では、薬液浸透液拡張液が検知されず、正常と判断する。
【0038】
ついで同じストレーナ7を使用して薬液浸透域拡張液を注入すると、図5(b)に示すように、地盤2空隙に薬液浸透域拡張液が浸透して拡張液浸透域4が注入位置1を中心にして形成され、この拡張液によって薬液が半径方向に押し出され、中心部に拡張液を閉じ込めた状態に球形殻状の薬液浸透域3が形成される。
【0039】
その際、図4に示すように、薬液浸透域3の一部が球形殻状を成さず、薬液浸透域3内に拡張液が閉じ込められない状態にある場合には、注入した海水等の薬液浸透域拡張液が薬液浸透域3の外側の地盤2空隙内にまで浸透する。
【0040】
よって、計測器8で計測された薬液浸透域3の拡張予定半径rより外側位置のリアルタイムデータが変化するので、そのリアルタイムデータと薬液注入前データ及び拡張液注入前データとを比較して、検知判定部では、薬液浸透域拡張液を検知し、薬液浸透域拡張液が薬液浸透域3から漏れ出したと判断する。
【0041】
そして、薬液浸透域拡張液が薬液浸透域3から漏れ出したと判断した場合では、薬液浸透域拡張液の注入作業を中止し、薬液注入量、薬液注入圧、薬液注入速度等の各作業条件を再調整し、上述した一連の薬液注入作業及び拡張液注入作業を行う。
【0042】
一方、正常に薬液浸透域3内に拡張液が閉じ込められた状態にあれば、計測器8のリアルタイムデータは、拡張液の影響を受けないので薬液注入前データ及び拡張液注入前データと比較して大きな変動がなく、検知判定部では、薬液浸透液拡張液が検知されず、正常と判断する。
【0043】
次に、図3(b)に示すように、初めに作業を行った薬液注入孔6a,6a...よりストレーナ7を除去するとともに、他方の薬液注入孔6b,6b...より計測器8を除去し、他方の薬液注入孔6b,6b...にストレーナ7を挿入するとともに、計測器8を一方の薬液注入孔6a,6a...内に設置し、他方の薬液注入孔6b,6b...の注入位置1,1...においても、薬液注入作業及び拡張液注入作業を行う。
【0044】
その場合、一方の薬液注入孔6a,6aには、既に最下段の注入位置1を中心に薬液浸透域3及び拡張液浸透域4が形成され、互いに隣り合う他方の薬液注入孔6b,6b...より孔が浅くなっている。
【0045】
そこで、計測器8の計測部8aを一方の薬液注入孔6a,6a...の最下部に設置することによって、図3(a)に示す場合と同様に注入位置1を中心とした薬液浸透域3の拡張予定半径rより外側位置のリアルタイムデータを計測できるようになっている。
【0046】
そして、図3(a)〜(c)に示すように、注入位置1,1...毎に薬液浸透域3の拡張予定半径rより外側位置のリアルタイムデータを計測しつつ、薬液及び拡張用液の注入を行い、予定改良地盤2全域に亘って薬液注入を行うことにより、各注入位置1,1...を中心にした各注入位置が一体化して固化した外殻固化体5が形成され、且つ、外殻固化体5内に各拡張液浸透域4が互いに独立して散在する改良地盤が形成される。
【0047】
この改良地盤は、施工の各段階において注入位置1,1...毎に薬液浸透域3の拡張予定半径rより外側位置のリアルタイムデータを計測しつつ、薬液及び拡張用液の注入を行い、薬液浸透域拡張液が薬液浸透域3から漏れ出したと判断した場合では、薬液浸透域拡張液の注入作業を中止し、薬液注入量、薬液注入圧、薬液注入速度等の各作業条件を再調整し、上述した一連の薬液注入作業及び拡張液注入作業を行うので、改良地盤2施工後に改良地盤2をボーリングマシン等によって削孔し、この削孔を通して標準貫入試験、貫入コーン試験等を実施することによって外殻固化体5の存在を確認する工程を省くことができ、その分の工期短縮及び費用の削減を図ることができる。
【0048】
また、本発明方法では、検査用の削孔により外殻固化体5を破壊することがなく、外殻固化体5内に各拡張液浸透域4が閉じられた状態を損なうことがなく、また、注入位置1,1...毎に施工を管理するので、改良地盤2全体の状態を客観的に把握できるようになっている。
【0049】
尚、上述の実施例では、地盤2に対し上下方向に向けた薬液注入孔6a,6b...を平面視格子状に配置した場合について説明したが、薬液注入孔の態様はこれに限定されず、地表面から斜め方向に向けて削孔されたものであってもよい。
【0050】
また、上述の実施例では、最下段の注入位置から順次、薬液及び薬液浸透域拡張液の注入作業を互いに隣り合う薬液注入孔で交互に行うようにした例について説明したが、薬液及び薬液浸透域拡張液の注入作業の手順はこれに限定されず、例えば、計測器の位置を調整しつつ薬液注入孔1本毎に最下段から最上段まで連続して作業を行ってもよい。
【0051】
更に、上述の実施例では、隣り合う薬液注入孔の全てに計測器を設置し、薬液注入時に注入位置の全周方向でリアルタイムデータ(電気伝導度又は塩分濃度)を計測したが、地下水流の下流側等を集中的に計測するようにしてもよい。
【0052】
更にまた、上述の実施例では、電気伝導度計又は塩分濃度計からなる計測器を有する拡張液検知手段を例に説明したが、拡張液検知手段の態様はこれに限定されず、使用する薬液浸透域拡張液の特徴に合わせて、pHセンサ、酸素濃度計、カラーセンサ等を使用したものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 注入位置
2 地盤
3 薬液浸透域
4 拡張液浸透域
5 外殻固化体
6a,6b 薬液注入孔
7 ストレーナ
8 計測器
10 注入液流路
11 注液ノズル
12 パッカー
13 加圧送液装置
図1
図2
図3
図4
図5