特許第6771184号(P6771184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771184
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】符号化装置、符号化方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/29 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   H03M13/29
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-173099(P2016-173099)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-42035(P2018-42035A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年3月26日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、総務省、「非直交アクセス方式に基づく大容量データ通信および高信頼・低遅延制御通信の創出」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】落合 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松峯 利樹
【審査官】 北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/032335(WO,A1)
【文献】 特表2002−523915(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0199145(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0349801(US,A1)
【文献】 C. Liva(他3名),Short low-rate non-binary turbo codes,2012 7th International Symposium on Turbo Codes and Iterative Information Processing (ISTC),米国,IEEE,2012年 8月,pp.41-45
【文献】 W. Abd-Alaziz(他2名),Non-binary turbo codes on additive impulsive noise channels,2016 10th International Symposium on Communication Systems, Networks and Digital Signal Processing (CSNDSP),米国,IEEE,2016年 6月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/00−13/53
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素数の整数乗の要素数の有限体の要素の一部に対応付けられる符号アルファベット数の送信対象データを取得するデータ取得部と、
再帰構造を有する第1の符号化部であって、前記データ取得部が取得した前記送信対象データに対して、前記有限体の要素を係数とする畳込み演算による符号化を行う第1の符号化部と、
前記データ取得部が取得した前記送信対象データをインタリーブするインタリーバと、
再帰構造を有する第2の符号化部であって、前記インタリーバがインタリーブした前記送信対象データに対して前記符号化を行う第2の符号化部と、
前記第1の符号化部の出力の符号アルファベット数と、前記第2の符号化部の出力の符号アルファベット数とを乗算した符号アルファベット数の符号語にて送信を行う送信部と、
を備え、
前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの出力の符号アルファベット数、及び、前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの各メモリの状態数が、いずれも前記有限体の全要素数である、符号化装置。
【請求項2】
データ取得部が、素数の整数乗の要素数の有限体の要素の一部に対応付けられる符号アルファベット数の送信対象データを取得することと、
再帰構造を有する第1の符号化部が、前記データ取得部が取得した前記送信対象データに対して、前記有限体の要素を係数とする畳込み演算による符号化を行うことと、
インタリーバが、前記送信対象データをインタリーブすることと、
再帰構造を有する第2の符号化部が、インタリーブされた前記送信対象データに対して前記符号化を行うことと、
送信部が、前記第1の符号化部の出力の符号アルファベット数と、前記第2の符号化部の出力の符号アルファベット数とを乗算した符号アルファベット数の符号語にて送信を行うことと、
を含み、
前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの出力の符号アルファベット数、及び、前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの各メモリの状態数が、いずれも前記有限体の全要素数である、符号化方法。
【請求項3】
コンピュータを、
素数の整数乗の要素数の有限体の要素の一部に対応付けられる符号アルファベット数の送信対象データを取得するデータ取得部、
再帰構造を有する第1の符号化部であって、前記データ取得部が取得した前記送信対象データに対して、前記有限体の要素を係数とする畳込み演算による符号化を行う第1の符号化部、
前記データ取得部が取得した前記送信対象データをインタリーブするインタリーバ、
再帰構造を有する第2の符号化部であって、前記インタリーバがインタリーブした前記送信対象データに対して前記符号化を行う第2の符号化部、および、
前記第1の符号化部の出力の符号アルファベット数と、前記第2の符号化部の出力の符号アルファベット数とを乗算した符号アルファベット数の符号語にて送信を行う送信部
として動作させるためのプログラムであって、
前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの出力の符号アルファベット数、及び、前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの各メモリの状態数が、いずれも前記有限体の全要素数である、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号化装置、符号化方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
誤り訂正符号の1つに畳込み符号があり、この畳込み符号に関連して幾つかの技術が提案されている。
例えば、非特許文献1では、格子構造を有する符号アルファベットを対象とする再帰型畳込み格子符号(Recursive Convolutional Lattice Code(s);RCLC)を行う符号化装置を並列に配置して、ターボシグナル符号(Turbo Signal Code(s))と呼ばれる符号化を行う技術が提案されている。
【0003】
非特許文献1に記載の技術を用いれば、比較的容易に直交振幅変調を用いて通信を行うことができる。かつ、非特許文献1に記載の技術を用いれば、復号側でターボ復号(Turbo Decode(s))と類似の反復復号を行うことができ、これによって比較的高精度に復号を行うことができる。このように、非特許文献1に記載の技術によれば、直交振幅変調を用いて通信を行い、かつ、比較的高い誤り訂正能力を得ることができ、これによって優れた特性(比較的高い伝送路容量)を得られる。一方で、非特許文献1に記載の技術では、符号化の演算が有限環上で定義されていたが、より高い誤り訂正能力を得るためには、集合の性質から四則演算が定義される有限体上での演算が好ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Patrick Mitran, and Hideki Ochiai、「Parallel Concatenated Convolutional Lattice Codes With Constrained States」、IEEE Transactions On Communications、2015年4月、第63巻、第4号、p.1081−1090
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通信量を向上させる観点から、誤り訂正能力が高く、かつ、伝送効率が良いことが望ましい。
本発明は、誤り訂正能力が高く、かつ、伝送効率のより高い通信が可能な符号化装置、符号化方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、符号化装置は、素数の整数乗の要素数の有限体の要素の一部に対応付けられる符号アルファベット数の送信対象データを取得するデータ取得部と、再帰構造を有する第1の符号化部であって、前記データ取得部が取得した前記送信対象データに対して、前記有限体の要素を係数とする畳込み演算による符号化を行う第1の符号化部と、前記データ取得部が取得した前記送信対象データをインタリーブするインタリーバと、再帰構造を有する第2の符号化部であって、前記インタリーバがインタリーブした前記送信対象データに対して前記符号化を行う第2の符号化部と、前記第1の符号化部の出力の符号アルファベット数と、前記第2の符号化部の出力の符号アルファベット数とを乗算した符号アルファベット数の符号語にて送信を行う送信部と、を備え、前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの出力の符号アルファベット数、及び、前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの各メモリの状態数が、いずれも前記有限体の全要素数である。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、符号化方法は、データ取得部が、素数の整数乗の要素数の有限体の要素の一部に対応付けられる符号アルファベット数の送信対象データを取得することと、再帰構造を有する第1の符号化部が、前記データ取得部が取得した前記送信対象データに対して、前記有限体の要素を係数とする畳込み演算による符号化を行うことと、インタリーバが、前記送信対象データをインタリーブすることと、再帰構造を有する第2の符号化部が、インタリーブされた前記送信対象データに対して前記符号化を行うことと、送信部が、前記第1の符号化部の出力の符号アルファベット数と、前記第2の符号化部の出力の符号アルファベット数とを乗算した符号アルファベット数の符号語にて送信を行うことと、を含み、前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの出力の符号アルファベット数、及び、前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの各メモリの状態数が、いずれも前記有限体の全要素数である。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、コンピュータを、素数の整数乗の要素数の有限体の要素の一部に対応付けられる符号アルファベット数の送信対象データを取得するデータ取得部、再帰構造を有する第1の符号化部であって、前記データ取得部が取得した前記送信対象データに対して、前記有限体の要素を係数とする畳込み演算による符号化を行う第1の符号化部、前記データ取得部が取得した前記送信対象データをインタリーブするインタリーバ、再帰構造を有する第2の符号化部であって、前記インタリーバがインタリーブした前記送信対象データに対して前記符号化を行う第2の符号化部、および、前記第1の符号化部の出力の符号アルファベット数と、前記第2の符号化部の出力の符号アルファベット数とを乗算した符号アルファベット数の符号語にて送信を行う送信部として動作させるためのプログラムであって、前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの出力の符号アルファベット数、及び、前記第1の符号化部および前記第2の符号化部のそれぞれの各メモリの状態数が、いずれも前記有限体の全要素数である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誤り訂正能力が高く、かつ、伝送効率のより高い通信が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る符号化装置の機能構成の例を示す概略ブロック図である。
図2】同実施形態に係る符号化部の構成例を示す説明図である。
図3】同実施形態にてパンクチャリングを適用した符号化装置の機能構成の例を示す概略ブロック図である。
図4】同実施形態に係る符号化部の第1の具体例を示す説明図である。
図5】同実施形態におけるシミュレーション結果の第1例を示すグラフである。
図6】同実施形態に係る符号化部の第2の具体例を示す説明図である。
図7】同実施形態におけるシミュレーション結果の第2例を示すグラフである。
図8】同実施形態におけるパンクチャリング行列の例を示す説明図である。
図9】同実施形態におけるパンクチャリングを含むシミュレーション結果の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の一実施形態に係る符号化装置の機能構成の例を示す概略ブロック図である。図1に示すように、符号化装置100は、データ取得部110と、インタリーバ120と、2つの符号化部130と、送信部140とを備える。
【0012】
符号化装置100は、符号アルファベット数mの送信対象データを取得して符号化し、シンボル数aの信号にて送信する。ここで、m、qはいずれも正整数、aは素数であり、m<aである。
データ取得部110は、送信対象のデータを取得する。特に、データ取得部110は、符号アルファベット数mの送信対象データを取得する。そして、データ取得部110は、送信対象データのm個の符号アルファベットを、要素数aの有限体(ガロア体)GF(a)の要素のうちm個の要素に一対一写像する。この写像により、データ取得部110は、GF(a)の要素のうちm個の要素を符号アルファベットとする送信対象データを取得する。そして、データ取得部110は、GF(a)の要素のうちm個の要素を符号アルファベットとする送信対象データを符号化部130及びインタリーバ120へ出力する。
このように、データ取得部110は、有限体GF(a)の要素の一部に対応付けられる符号アルファベット数mの送信対象データを取得する。
【0013】
ここで、GF(a)は、αを原始元として{0,1,α,α,・・・,αx−2}と表される。但し、x=2である。データ取得部110が、送信対象データのm個のアルファベットを、{0,1,α,α,・・・,αm−2}のように0からαm−2までのm個の要素に順に対応するようにしてもよいが、これに限らない。データ取得部110が、送信対象データのm個のアルファベットを一対一写像する要素は、{0,1,α,α,・・・,αx−2}のうち任意のm個の要素でよい。
以下では、符号化部130が、要素数2の有限体GF(2)を用いて符号化を行う場合を例に説明する。但し、符号化部130が符号化に用いる有限体は、GF(2)に限らず、上記のようにaを素数としてGF(a)でよい。
【0014】
インタリーバ120は、データ取得部110が有限体GF(2)の要素に写像した送信対象データをシンボル単位でインタリーブする。すなわち、インタリーバ120は、データ取得部110が有限体GF(2)の要素に写像した送信対象データをシンボル単位で並び替える。インタリーバ120が行うインタリーブは、ターボ符号におけるインタリーブと同様、反復復号を可能にするためのものである。インタリーバ120が行うインタリーブの方法として、例えばS−ランダムインタリーブなど公知の方法を用いることができる。
【0015】
符号化部130は、再帰構造を有し、かつ、有限体GF(2)の要素を係数とする畳込み演算による符号化を行う。符号化部130への入力の符号アルファベットが上記の有限体GF(2)の一部であるのに対し、符号化部130からの出力の符号アルファベットは、有限体GF(2)の全要素である。また、符号化部130が畳込み演算に用いるメモリには、有限体GF(2)のいずれかの要素が格納される。従って、符号化部130が畳込み演算に用いるメモリの各々の状態数は、有限体GF(2)の全要素数である。
【0016】
以下では、2つの符号化部130を区別する場合、図1に示すように符号130−1、130−2を用いる。符号化部130−1は、データ取得部110が取得した送信対象データ(インタリーブされておらず、かつ、有限体GF(2)の要素で表されている送信対象データ)に対して符号化を行う。一方、符号化部130−2は、インタリーバ120がインタリーブした送信対象データに対して符号化を行う。符号化部130−1は、第1の符号化部の例に該当する。符号化部130−2は、第2の符号化部の例に該当する。
【0017】
送信部140は、符号化部130−1からの出力及び符号化部130−2からの出力を、1つの符号化部130の出力の符号アルファベット数の2乗の符号アルファベット数の符号語にて送信を行う。すなわち、送信部140は、符号化部130−1の出力の符号アルファベット数と、符号化部130−2の出力の符号アルファベット数を乗算した符号アルファベット数の符号語にて送信を行う。
例えば、送信部140は、符号化部130−1からの符号アルファベット数2の出力と、符号化部130−1からの符号アルファベット数2の出力とを、22q−QAMにて送信する。
【0018】
図2は、符号化部130の構成例を示す説明図である。図2の例で、符号化部130は、シフトレジスタ131と、再帰的畳込み演算部132aと、非再帰的畳込み演算部132bとを備える。再帰的畳込み演算部132aと、非再帰的畳込み演算部132bとの組み合わせを、畳込み演算部132と称する。
図2の例で、再帰的畳込み演算部132aは、P個の乗算器M1〜M1と、2つの加算器A1〜A1とを備える。非再帰的畳込み演算部132bは、P+1個の乗算器M2〜M2と、1つの加算器A2とを備える。これら乗算器M1〜M1、M2〜M2の各々が行う乗算、及び、加算器A1〜A1、A22が行う加算は、いずれも有限体GF(2)上で定義される。従って、畳込み演算部132が行う演算は、いずれも有限体GF(2)で閉じている。
【0019】
また、シフトレジスタ131は、P個のメモリR1〜R1を備えている。従って、符号化部130が行う畳込み演算の拘束長Kは、K=P+1である。メモリR1〜R1は、加算器A1が算出した値の時系列をP回分記憶する。メモリR1は、加算器A1がp回前に算出した値を記憶する。ここで、pは、1≦p≦Pの正整数である。図2では、加算器A1がp回前に算出した値をxi−pと表記している。
【0020】
乗算器M1(pは、1≦p≦Pの正整数)は、メモリR1の値(xi−p)に係数hを乗算する。また、乗算器M2は、加算器A1の出力に係数fを乗算する。乗算器M2(pは、1≦p≦Pの正整数)は、メモリR1の値(xi−p)に係数fを乗算する。係数h〜h、f〜fのいずれも、有限体GF(2)のいずれかの要素の値を取る。
かかる構成により、再帰的畳込み演算部132aは、畳込み演算を行って演算結果を入力シンボルuに加算する。また、非再帰的畳込み演算部132bは、畳込み演算を行って演算結果を出力シンボルcとして出力する。
【0021】
符号化部130への入力シンボルuの取り得る値が有限体GF(2)のうちのm個の要素であるのに対し、出力シンボルcの取り得る値が有限体GF(2)の全ての要素となるように、係数h〜h、f〜fの値が定められる。そのために、係数h〜hのうち少なくともいずれか1つの値は0以外に設定される。また、係数f〜fのうち少なくともいずれか1つの値は0以外に設定される。
【0022】
このように、符号化部130への入力シンボルuの取り得る値が有限体GF(2)のうちのm個の要素であるのに対し、出力シンボルcの取り得る値が有限体GF(2)の全ての要素である。これにより、入力1シンボルに対して出力が1シンボルであっても冗長度が付加され、符号化利得を得ることができる。
【0023】
ここで、伝送レートrを式(1)のように定義すると、符号化部130による畳込み符号は伝送レート1(r=1)である。
【0024】
【数1】
【0025】
また、入力シンボルの要素数をm=2とすると、1出力シンボルあたりの送信ビット数はr×pビットとなる。また、符号化部130による符号化の復号に必要となるトレリスの状態数は、(2=2q×Pとなる。
【0026】
また、図1に示す符号化部130を並列接続した構成で、符号化部130−1、130−2のいずれでも、上述したように符号化利得が得られる。このため、図1に示す並列接続構成全体での並列連接符号化にて、一般的なターボ符号の場合のような組織的な要素(組織シンボル)の送信は不要である。2つの符号化部130の並列接続後の全体のレートは、r=1/2となる。一般的なターボ符号の場合の伝送レートが1/3であるのに対し、符号化装置100では伝送レートが改善している。
【0027】
なお、図1に示す符号化装置100の構成に、さらにパンクチャリングを適用するようにしてもよい。ここでいうパンクチャリングは、出力される符号語シンボルを周期的に省略する(削除する)処理である。
図3は、パンクチャリングを適用した符号化装置の機能構成の例を示す概略ブロック図である。図3に示すように、符号化装置200は、データ取得部110と、インタリーバ120と、2つの符号化部130と、デインタリーバ250と、パンクチャリング処理部260と、送信部140とを備える。図3の各部のうち、図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(110、120、130、130−1、130−2、140)を付して説明を省略する。
図3に示す符号化装置200の構成では、図1に示す符号化装置100構成に加えてさらにデインタリーバ250とパンクチャリング処理部260とを備えている。
【0028】
デインタリーバ250は、インタリーバ120が行ったインタリーブに対するデインタリーブを行う。すなわち、デインタリーバ250は、インタリーバ120が行ったインタリーブと逆の変換を行う。
パンクチャリング処理部260は、符号化部130−1からの出力、デインタリーバ250からの出力のうちいずれか一方又は両方に対してパンクチャリングを行う。すなわち、パンクチャリング処理部260は、符号化部130−1から出力された符号語シンボル、及び、デインタリーバ250から出力された符号語シンボルのうちいずれか一方又は両方を周期的に省略する処理を行う。
【0029】
なお、図3の符号化装置200のように送信側でパンクチャリングの前にデインタリーブを行うことは必須ではなく、受信側でデインタリーブを行うようにしてもよい。一方、送信側でパンクチャリングの前にデインタリーブを行うことで、デインタリーブ後の状態において符号語シンボルの省略が周期的になる。これにより、デインタリーブによる受信側での復号成功率の低下が小さくて済む。
パンクチャリング処理部260が行うパンクチャリングは、式(2)に例示されるパンクチャリング行列によって示される。
【0030】
【数2】
【0031】
パンクチャリング行列の各行は、1つの符号化部に対応する。式(2)の例では、パンクチャリング行列Pの上側の行が符号化部130−1に対応し、下側の行が符号化部130−2に対応する。
また、パンクチャリング行列の要素「0」は符号語シンボルを省略することを示し、要素「1」は符号語シンボルを省略しないことを示す。式(2)の例の場合、上側の行の要素は「1」、「1」であることから、パンクチャリング処理部260は、符号化部130−1が出力する符号語シンボルを全て送信部140へ出力する。一方、下側の行の要素は「1」、「0」であることから、符号化装置200は、符号化部130−2が出力する符号語シンボルを1つおきに送信部140へ出力する。この場合、パンクチャリングによって伝送レートがr=1/2からr=2/3へと向上する。
なお、パンクチャリング行列の列数はパンクチャリング周期と呼ばれTで表される。式(2)に示されるパンクチャリング行列の場合、パンクチャリング周期はT=2である。
【0032】
次に、符号化のシミュレーション結果について説明する。シミュレーションでは、有限体GF(2)の要素のうち、最初のmシンボル{0,1,・・・αm−2}を入力符号アルファベットとする。ここで、m=2(pは正整数)である。従って、各入力シンボルはpビットの情報を有している。
符号化装置(符号化装置100又は200)に入力する情報として、シンボル長1024、2048、及び、4096の3つの情報を用い、それぞれについてシミュレーションを行う。符号化装置は、レートr=1/2で符号化を行うため、出力シンボル長は2048、4096、及び、8192となる。
【0033】
出力シンボルは、2点からなるユークリッド空間上の信号点である。以下では、簡単のため、伝送方式として1次元のPAM(Pulse Amplitude Modulation)を用いており、従って、1次元当たりの周波数利用効率(情報レート)にて評価を行う。但し、符号化装置が用いる伝送方式は1次元のPAMに限らずいろいろな伝送方式とすることができる。例えば、PAMを2次元平面(複素平面)へ割り当てる(すなわち、伝送方式としてQAM(Quadrature Amplitude Modulation)を用いる)ことで、周波数効率を2倍にすることができる。
【0034】
また、出力シンボル長は2048、4096の各々に対し、インタリーバにはスプレッド値22、32、45のSランダムインタリーバを用いている。また、符号化部130については、メモリ数1(P=1、従って拘束長2)としている。
復号には通常の2元ターボ符号の復号と同様に、符号のトレリス構造を用いたBCJRアルゴリズムを用いる。但し、メトリックの計算は有限体GF(2)で行う必要がある。なお、ここではP=1なので、復号に用いるトレリスの状態数は2である。
符号化部130の乗算器に用いる係数については、可能な全ての係数の組み合わせについてシミュレーションを行って全解探索し、誤り率が最も小さくなる係数の組み合わせを用いた。
【0035】
なお、トレリスの終端処理に関しては、最終状態を4回繰り返し送信することで行う。従って、符号化部を並列接続した構成では、合計で8シンボルを追加で送信することによる終端処理を行う。この終端処理によって、ブロック長は2056、4054、8200となる。
以下、図4及び図5を参照して説明するシミュレーションと、図6及び図7を参照して説明するシミュレーションでは、パンクチャリングを行っていない。一方、図8及び図9を参照して説明するシミュレーションでは、パンクチャリングを行っている。
【0036】
図4は、符号化部130の第1の具体例を示す説明図である。図4に示す符号化部130は、図2に示す符号化部130の具体例であり、図4の各部のうち図2の各部に対応する部分には同一の符号(130、131、132、132a、132b、R1、M1、M2、M2、A1、A2)を付している。
【0037】
図4の例で、再帰的畳込み演算部132aでは、乗算器M1がメモリR1の値に係数αを乗算する。加算器A1は、乗算器M1からの出力を入力シンボルuに加算する。メモリR1は、加算器A1からの出力の前回値を記憶する。
非再帰的畳込み演算部132bでは、乗算器M2が加算器A1からの出力に係数α(=1)を乗算する。乗算器M2は、メモリR1の値に係数αを乗算する。加算器A2は、乗算器M2の出力と乗算器M2の出力とを加算する。乗算器M2の出力が、符号化部130の出力cとなる。
【0038】
図4の例では、入力はm=4のシンボル(p=2ビット)であり、入力の符号アルファベットは{0,1,α,α}である。符号化部130は、この入力シンボルをGF(8)上の出力シンボル(q=3)に変換する。出力の符号アルファベットは{0,1,α,α,・・・,α}である。符号化装置100は、出力の符号アルファベットを8−PAM変調にマッピングする。各トレリスの状態数は8である。
図4に示す係数は、原始多項式g(x)=x+x+1とした場合に、拘束長2において最も良い結果を示した係数である。
図4の例では、終端処理のシンボルを除くと次元当たりの周波数利用効率は、p/2=1(bit/dimension)である。
【0039】
図5は、シミュレーション結果の第1例を示すグラフである。図5の横軸は信号対雑音比(Signal-To-Noise Ratio;SNR)[単位:デシベル(dB)]を示す。縦軸は、フレーム誤り率(FER)を示す。図5は、図4に示す構成の符号化部130を用いた通信のシミュレーションにおける信号対雑音比とフレーム誤り率との関係を示している。
線L11は、周波数利用効率1bit/dimension、かつ、8−PAM信号点配置を用いた場合の信号点拘束下の通信路容量を示す。線L21は、ブロック長2048でのフレーム誤り率を示す。線L22は、ブロック長4096でのフレーム誤り率を示す。線L23は、ブロック長8192でのフレーム誤り率を示す。
【0040】
線L23に示されるように、ブロック長8200において限界(線L11)から0.75デシベル離れた信号対雑音比でフレーム誤り率10−2を達成可能である。また、通常のターボ符号と同様、エラーフロアが観察されるが、これはフレーム誤り率10−2を下回っている。
また、線L21及びL22に示されるように、入力シンボル長が比較的短い場合でも良好なフレーム誤り率を得られている。
【0041】
図6は、符号化部130の第2の具体例を示す説明図である。図6に示す符号化部130は、図4の場合と構成は同様であり、乗算器が用いる係数の値が異なっている。図6の構成では、乗算器M1、M2、M2の係数が、それぞれα、α、α(=1)に設定されている。
図6の例では、入力はm=8のシンボル(p=3ビット)であり、入力の符号アルファベットは{0,1,α,α,・・・,α}である。符号化部130は、この入力シンボルをGF(16)上の出力シンボル(q=4)に変換する。出力の符号アルファベットは{0,1,α,α,・・・,α14}である。符号化装置100は、出力の符号アルファベットを16−PAM変調にマッピングする。
図6に示す係数は、原始多項式g(x)=x+x+1とした場合に、拘束長2において最も良い結果を示した係数である。
図6の例では、終端処理のシンボルを除くと次元当たりの周波数利用効率は、p/2=1.5(bit/dimension)である。
【0042】
図7は、シミュレーション結果の第2例を示すグラフである。図7の横軸は信号対雑音比[単位:dB]を示す。縦軸は、フレーム誤り率を示す。図7は、図6に示す構成の符号化部130を用いた通信のシミュレーションにおける信号対雑音比とフレーム誤り率との関係を示している。
線L31は、周波数利用効率1.5bit/dimension、かつ、16−PAM信号点配置を用いた場合の信号点拘束下の通信路容量を示す。線L41は、ブロック長2048でのフレーム誤り率を示す。線L42は、ブロック長4096でのフレーム誤り率を示す。線L43は、ブロック長8192でのフレーム誤り率を示す。
【0043】
線L43に示されるように、ブロック長8200において限界(線L31)から0.9デシベル離れた信号対雑音比でフレーム誤り率10−2を達成可能である。また、通常のターボ符号と同様、エラーフロアが観察されるが、これはフレーム誤り率10−2を下回っている。
また、線L41及びL42に示されるように、入力シンボル長が比較的短い場合でも良好なフレーム誤り率を得られている。
【0044】
図8は、パンクチャリング行列の例を示す説明図である。図8及び図9を参照して説明するシミュレーションでは、符号化装置200にて図4の構成の符号化部130を用いて、パンクチャリングを含むシミュレーションを行った。図8に示す2通りのパンクチャリングそれぞれについてシミュレーションを行った。
図8の行L51に示すパンクチャリング(伝送レート2/3、周波数利用効率1.3bit/dimension)では、送信シンボル数3072である。行L52に示すパンクチャリング(伝送レート4/5、周波数利用効率1.6bit/dimension)では、送信シンボル数2560である。
【0045】
図9は、パンクチャリングを含むシミュレーション結果の例を示すグラフである。図9の横軸は信号対雑音比[単位:dB]を示す。縦軸は、フレーム誤り率を示す。
線L61は、パンクチャリングを行わない場合(伝送レート1、周波数利用効率1bit/dimension、8−PAM)の場合の信号点拘束下の通信路容量を示す。この場合の出力シンボル数は4096である。
線L62は、行L51のパンクチャリング(伝送レート2/3、周波数利用効率1.3bit/dimension、8−PAM)の場合の信号点拘束下の通信路容量を示す。
線L63は、行L52のパンクチャリング(伝送レート4/5、周波数利用効率1.6bit/dimension、8−PAM)の場合の信号点拘束下の通信路容量を示す。
【0046】
線L71は、パンクチャリングを行わない場合のフレーム誤り率を示す。線L72は、行L51のパンクチャリングを行った場合のフレーム誤り率を示す。線L73は、行L52のパンクチャリングを行った場合のフレーム誤り率を示す。
いずれの場合も良好な結果を得られており、パンクチャリングの適用により誤り率特性を劣化させずに伝送レートを容易に変更することができる。いずれの場合も、限界(線L61、L62、L63)から1デシベル以内でフレーム誤り率10−2となっている。
このように、パンクチャリングを行う場合についても良好な結果を得られた。
【0047】
以上のように、データ取得部110は、有限体の要素の一部に対応付けられる符号アルファベット数の送信対象データを取得する。符号化部130は、再帰構造を有し、かつ、前記有限体の要素を係数とする畳込み演算による符号化を行う。そして、符号化部130の出力の符号アルファベット数、及び、符号化部130の各メモリの状態数が、いずれも有限体の全要素数である。
これにより、符号化部130が行う符号化では、入力1シンボルに対して出力が1シンボルであっても冗長度が付加され、符号化利得を得ることができる。この符号化利得により、符号化部130を用いて反復復号のための符号化の構成とした場合に、組織的な要素の送信が不要である。反復復号可能な点で、誤り訂正能力が高く、組織的な要素の送信が不要な点で伝送効率が高い。
このように符号化装置100及び200によれば、誤り訂正能力が高く、かつ、伝送効率のより高い通信が可能である。
【0048】
ここで、出願人は、先の出願(特願2016−130872号)において、2元シンボルを入力として2元以上であるL元のシンボルを出力する畳込み演算を用いた符号化を行う第一符号化部と、第一符号化部が出力したL元のシンボルの系列をL次の正方行列の要素の系列に変換する変換部と、L次の正方行列の要素の系列をインタリーブするインタリーバと、インタリーバによってインタリーブされた要素を入力としてL次の正方行列の要素を出力する畳込み演算を行い、畳込み演算の出力を畳込み演算の入力側ヘフィードバックする符号化を行う第二符号化部と、を備える符号化装置を提案した。
先の出願に係る符号化装置では2元シンボルを入力とする符号化を行う点で、伝送効率のさらなる向上の余地がある。
これに対して、本実施形態に係る符号化装置では、非2元シンボルを用いて優れた伝送効率を得ることができる。また、本実施形態に係る符号化装置では、符号化部がフィードバックの構造を備えることで、符号化部を並列に連接した構成にて高い誤り訂正能力を有するという効果を得られる。
【0049】
また、2元のターボ符号やLDPC符号は、十分に長い符号長が十分に長い場合にはシャノン限界に近接する強力な誤り訂正符号であるが、中程度から短い符号長の場合の誤り率特性は優れていない。さらに、周波数利用効率を改善するために多値の信号点からなる変調方式を用いる場合は、2元の符号をどのように多値変調にマッピングするかにその誤り率特性が大きく依存する。
これに対して、本実施形態に係る符号化装置が用いる非2元シンボル(多元シンボル)では、図5及び図7を参照して説明したように符号長(入力シンボル長)が長い場合のみでなく、比較的短い場合にも優れた誤り訂正能力を有するという効果を得られる。
【0050】
また、符号化部130−1は、データ取得部110が取得した送信対象データに対して符号化を行う。インタリーバ120は、データ取得部110が取得した送信対象データをインタリーブする。符号化部130−2は、インタリーバ120がインタリーブした送信対象データに対して符号化を行う。
これにより、復号側反復復号を行うことができ、かつ、反復復号のために組織的な要素の送信が不要である。反復復号可能な点で、誤り訂正能力が高く、組織的な要素の送信が不要な点で伝送効率が高い。
このように符号化装置100及び200によれば、誤り訂正能力が高く、かつ、伝送効率のより高い通信が可能である。
【0051】
また、送信部140は、符号化部130−1の出力の符号アルファベット数と、符号化部130−2の出力の符号アルファベット数を乗算した符号アルファベット数の符号語にて送信を行う送信部を備える。
これにより、符号化装置100及び200によれば、符号化部130−1及び130−2からの出力を比較的容易に送信シンボルに対応付けることができる。
【0052】
なお、符号化装置100又は200が行う演算及び制御の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することで各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0053】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0054】
100、200 符号化装置
110 データ取得部
120 インタリーバ
130 符号化部
140 送信部
250 デインタリーバ
260 パンクチャリング処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9