(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記錠本体の前記係合部材固定部の下方に突設部が形成され、前記突設部は、閉蓋操作時に前記受枠の内周部に当接することによって前記錠本体を回動させながら前記蓋本体を閉蓋位置にガイドする、請求項1から8のいずれかに記載の地下構造物用蓋の施錠構造。
前記錠本体の下部に支持部が形成され、前記支持部は、前記蓋本体を前記受枠から地表面側に引き出したときに前記突設部とともに地表面に当接する、請求項9に記載の地下構造物用蓋の施錠構造。
前記錠は、前記受枠の内周部に形成した係止部に係合して前記蓋本体が周方向に位置ズレすることを規制する位置ズレ規制部を備える、請求項1から10のいずれかに記載の地下構造物用蓋の施錠構造。
【背景技術】
【0003】
地下構造物用蓋は、マンホール等の地下構造物の上端に設置される受枠と、これに支持される蓋本体とから構成され、蓋本体の下面の一端側に、受枠に対して蓋本体を開閉可能に連結するための蝶番構造を備えるとともに、蓋本体の下面の他端側に施錠構造を備えたものが一般的である。この施錠構造は、ゴミなどの不法投棄や地下構造物内への不法侵入を防止し、また、地下構造物内で発生した揚圧による開蓋を防止するために設けられ、その基本構造は、蓋本体の下面に錠を揺動自在に取り付け、この錠に一体的に形成した係合突起を、受枠の内周部に形成した錠座に係合させることで施錠するようにしたものが最も一般的である(例えば特許文献1)。
【0004】
ところで近年、集中豪雨の発生頻度が増えてきており、管渠への急激な雨水の流入等による地下構造物の内圧上昇に対し、圧力解放をしながら、蓋本体の外れを防止する性能(以下、この性能を「圧力解放耐揚圧性能」という。)を有する地下構造物用蓋の必要性がより高まっている。
【0005】
この圧力解放耐揚圧性能を有する地下構造物用蓋は、概ね次の作動原理により、地下構造物内で発生した内圧(揚圧)を解放して蓋本体の外れを防止する。
(1)地下構造物内に発生した内圧が蓋本体の受枠への食い込み力以下の場合、蓋本体の受枠への食い込み力で内圧を押さえ込む。
(2)内圧が蓋本体の受枠への食い込み力を超えた場合、例えば蝶番構造と施錠構造とによって、蓋本体が受枠に対して浮上しろに相当する一定高さだけ浮上した状態で係止し、浮上したことによって生じた蓋と受枠の隙間から内圧を解放する。
(3)蝶番構造または施錠構造のいずれかが破壊し蓋本体の開放を防止できなくなる耐揚圧荷重強さ(以下、単に「耐揚圧荷重強さ」という。)までは、この状態を持続し、内圧がなくなると蓋本体は元の状態にもどる。
(4)内圧が耐揚圧荷重強さを超えた場合は、錠(施錠構造)が破壊され、蓋本体が開放し内圧を解放する。
【0006】
このような作動原理に基づく圧力解放耐揚圧性能の発揮を担保するため、地下構造物用蓋の内圧に対する耐揚圧荷重強さには、上限値および下限値が規定されている(例えば「日本下水道協会規格(JSWAS)下水道用鋳鉄製マンホールふた(G−4)」)。すなわち、前記作動原理に基づくと、耐揚圧荷重強さは、蓋本体の受枠への食い込み力の最大値(推定60kN)を上回る必要があり、この点から下限値が規定されている。また、地下構造物用蓋が受枠ごと飛散しないように、耐揚圧荷重強さは、受枠を地下構造物に緊結する緊結ボルトの保証強度(106kN程度)を上回らないようにする必要があり、この点から上限値が規定されている。そして、前記(4)のように、内圧が耐揚圧荷重強さを超えた場合は、蝶番構造より先に施錠構造が破壊されるようにするため、施錠構造の破壊強さは蝶番構造の破壊強さより弱くする必要がある。蝶番構造が先に破壊すると、蓋本体が受枠から完全に外れて飛散するおそれがあるからである。
【0007】
このように、施錠構造の破壊強さは、耐揚圧荷重強さの上限値と下限値との間の適切な範囲(以下、「所定の耐揚圧荷重強さの範囲」という。)にコントロールする必要があるところ、従来の施錠構造では、そのコントロールが難しいという問題があった。すなわち、従来の施錠構造では前述のとおり、錠に一体的に形成した係合突起を受枠の内周部に形成した錠座に係合させるようにしているから、通常、錠自体が破壊することはなく、施錠構造の破壊は錠の蓋本体への取付け部分で生じさせるようにしていた。しかし、錠の蓋本体への取付け部分においては、どうしても製造上、寸法や品質(強さ)のばらつきが避けられないから、施錠構造の破壊強さをコントロールすることは難しい。また、施錠構造の破壊強さをコントロールすることができたとしても、結局、施錠構造は錠の蓋本体への取付け部分において破壊するから、施錠構造が破壊すると蓋本体から錠が外れ、地下構造物内に落下するなどして、その錠を再利用することはできない。さらに、錠の蓋本体への取付け部分において、錠自体ではなく、蓋本体の錠取付け部が破壊することもあり、そうなると蓋本体を取り替えなければならなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、地下構造物内で発生した内圧によって破壊する破壊強さを容易にコントロールすることができ、また、破壊しても施錠構造を構成する部材の再利用が可能となる、地下構造物用蓋の施錠構造およびその施錠構造を備えた地下構造物用蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、「蓋本体の下面に錠を揺動自在に取り付け、前記蓋本体を支持する受枠の内周部に前記錠を施錠可能とした地下構造物用蓋の施錠構造において、前記錠は、前記受枠の内周部に形成した錠座に係合する係合部材と
、錠本体とを備え
、前記係合部材は、前記錠本体に設けた係合部材固定部に対して着脱可能かつ回動できないように固定されていることを特徴とする地下構造物用蓋の施錠構造」が提供される。
【0011】
このように本発明の施錠構造では、錠本体に係合部材を着脱可能に固定し、この係合部材を受枠の錠座に係合させるようにしている。すなわち、係合部材は錠本体とは別体であるから、独立して製造することができ、施錠構造の破壊強さを容易かつ精密にコントロールすることができる。そして、施錠構造の破壊強さをコントロールすることで、地下構造物内に耐揚圧荷重強さを超える内圧が発生したとき、常に施錠構造が蝶番構造より先に破壊(破断)するようにすることができる。これにより、所定の耐揚圧荷重強さの範囲で施錠構造を破壊するようコントロールすることができる。
【0012】
なお、本発明において、「着脱可能に固定する」とは、着脱可能ではあるが、回動、進退等の動作はできないように固定するということである。
【0013】
本発明の施錠構造において係合部材は、係合部材固定部に対して固定部材を介して着脱可能
かつ回動できないように固定することができる。この場合、固定部材は係合部材と別体としても一体としてもよい。また、係合部材は、受枠の内周部に形成した錠座に係合する係合ピンとすることもできる。
【0014】
これらの係合ピンまたは固定部材は中空にすることができ、また、係合ピンまたは固定部材には切欠きを形成することができる。このように係合ピンまたは固定部材を中空にしたり、切欠きを形成したりすることで、所定の耐揚圧荷重強さの範囲で施錠構造を破壊するよう確実に係合部材(係合ピン)または固定部材を破壊(破断)させることができる。すなわち本発明の施錠構造では、常に係合部材または固定部材が蝶番構造より先に破壊し、しかも係合部材または固定部材は錠本体に着脱可能であるから、破壊した係合部材または固定部材のみを交換すれば施錠構造を再生させることができ、錠本体の再利用が可能となる。また、施錠構造の破壊に伴い蓋本体が破壊することもないから、蓋本体を取り替える必要がない。
【0015】
また、本発明の施錠構造では、錠本体の前記係合部材固定部の下方に突設部を形成し、この突設部が、閉蓋操作時に受枠の内周部に当接することによって錠本体を回動させながら蓋本体を閉蓋位置にガイドするようにすることができる。これにより、スムーズに閉蓋することができる。
【0016】
さらに錠本体の下部に支持部を形成し、この支持部が、蓋本体を受枠から地表面側に引き出したときに前記突設部とともに地表面に当接するようにすることができる。これにより、蓋本体を引き出して地表面に置いた状態において、錠本体が、錠取付け部と突設部と支持部との3点でバランスよく支持されるため、錠本体および蓋本体の姿勢を安定させることができ、不意に蓋本体が受枠側に滑り込むことなどを防止できる。また、通常、施錠構造は蓋本体の開口部(バール孔)の下方に設けられるので、前述のように蓋本体を引き出して地表面に置いた状態において錠本体および蓋本体の姿勢が安定していると、蓋本体の開閉に使用したバールを蓋本体の開口部から抜き取ったり、再び挿入したりする作業を容易に行うことができる。
【0017】
また、本発明の施錠構造において錠は、受枠の内周部に形成した係止部に係合して前記蓋本体が周方向に位置ズレすることを規制する位置ズレ規制部を備えることができる。これにより、とくに蓋本体が浮上した状態のときに、車両が通過した場合であっても、蓋本体が周方向に位置ズレして受枠の錠座から外れることを防止することができる。
【0018】
そして、本発明の他の観点によれば、前述の本発明の施錠構造を備えた地下構造物用蓋が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、所定の耐揚圧荷重強さの範囲で施錠構造が破壊するよう施錠構造の破壊強さをコントロールすることができる。したがって、前述の圧力解放耐揚圧性能をいかんなく発揮することができる。また、施錠構造が破壊しても、その主要部材である錠本体は再利用することができ、さらに施錠構造の破壊に伴い蓋本体が破壊することもないので、蓋本体を取り替える必要もない。したがって、地下構造物用蓋の維持管理コストの低減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施例による施錠構造を適用した地下構造物用蓋の断面図である。
【
図2】
図1の施錠構造部分を拡大した部分断面図である。
【
図3A】
図1の施錠構造を構成する錠を示す正面図である。
【
図3C】
図1の施錠構造を構成する錠を示す背面図である。
【
図3D】
図1の施錠構造を構成する錠を正面側から見た斜視図である。
【
図3E】
図1の施錠構造を構成する錠を背面側から見た斜視図である。
【
図4】
図1の地下構造物用蓋において蓋本体が浮上した状態を示す断面図である。
【
図5】
図1の施錠構造の開錠動作を示す部分断面図である。
【
図6】
図1の地下構造物用蓋において蓋本体を地表面に引き出した状態を示す部分断面図である。
【
図7】
図1の施錠構造の閉蓋操作時の動作を示す部分断面図である。
【
図8A】
図1の施錠構造において係合ピンの固定構造例を示す説明図である。
【
図9】本発明の第2実施例による施錠構造を蓋本体裏面側から見た斜視図である。
【
図10A】本発明の第2実施例による施錠構造を構成する錠を示す斜視図である。
【
図10B】本発明の第2実施例による施錠構造を構成する錠を示す側面図である。
【
図10C】本発明の第2実施例による施錠構造を構成する錠を示す分解斜視図である。
【
図11】
図9における受枠の要部を示す斜視図である。
【
図12】本発明の第3実施例による施錠構造を蓋本体裏面側から見た斜視図である。
【
図13A】本発明の第3実施例による施錠構造を構成する錠を示す斜視図である。
【
図13B】本発明の第3実施例による施錠構造を構成する錠を示す側面図である。
【
図13C】本発明の第3実施例による施錠構造を構成する錠を示す分解斜視図である。
【
図15】本発明の第4実施例による施錠構造を蓋本体裏面側から見た斜視図である。
【
図16A】本発明の第4実施例による施錠構造を構成する錠を示す斜視図である。
【
図16B】本発明の第4実施例による施錠構造を構成する錠を示す側面図である。
【
図16C】本発明の第4実施例による施錠構造を構成する錠を示す分解斜視図である。
【
図18A】本発明の第4実施例において蓋本体が浮上した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例による施錠構造を適用した地下構造物用蓋の断面図である。同図に示す地下構造物用蓋は、マンホール等の地下構造物(図示せず)の上端に設置される受枠10と、この受枠10の内周部に支持される丸型(円形)の蓋本体20とから構成され、蓋本体20の上面が地表面と面一をなすように設置される。
【0023】
また、蓋本体20は、その下面の一端側に設けられた蝶番構造30により受枠10に対して開閉可能に連結されており、他端側に形成されたバール孔21の下側近傍に設けられる施錠構造40により受枠10と係合可能とされ、意図しない不意の開蓋が防止されている。
【0024】
まず、蝶番構造30について説明すると、蓋本体20の下面の一端側周縁部に設けられた蝶番取付け部22に略「S」の字形状の蝶番部材31がその上端の支持軸(図示せず)によって揺動自在に連結されている。この蝶番部材31の下部には、ボール状の抜け防止用突起部31aが形成されている。一方、受枠10の内周部には、中心に向けて水平状に環状の蝶番座32が上方向に傾動可能に設けられており、蝶番構造30は、この蝶番座32に蝶番部材31が挿通され、蝶番部材31と蝶番座32が連結されることによって構成されている。
【0025】
このように蝶番座32内に蝶番部材31を挿通した蝶番構造30によって蓋本体20と受枠10とが連結されており、開蓋時には蓋本体20の水平旋回または垂直反転の一連の作業を行うことが可能となっている。
【0026】
次に、施錠構造40について説明する。
【0027】
図2は、
図1の施錠構造40部分を拡大した部分断面図である。施錠構造40は、蓋本体20の下面の他端側に形成されたバール孔21の下側近傍に揺動自在に取り付けられた錠50が、受枠10の内周部に形成した錠座11に係合することによって、その施錠機能を発揮する。
【0029】
錠50は、錠本体51と、この錠本体51に着脱可能に固定された係合部材としての係合ピン52とからなる。また、錠本体51には閉塞部材60が取り付けられている。
【0030】
錠本体51には、その両側部51a,51aの上端外側にそれぞれ支持軸51b,51bが側方に突出して形成されている。そして、この支持軸51b,51bを、蓋本体20の下面にバール孔21を挟むように設けられた錠取付け部(図示せず)に回転可能に連結することで、錠本体51(錠50)が蓋本体20の半径方向に揺動自在となっている。
【0031】
また、錠本体51には、係合部材固定部としてのピン取付け部51c,51cが外方(受枠10側)に突出して形成されている。そして、このピン取付け部51c,51c間に係合ピン52が着脱可能に固定されている。具体的には係合ピン52は、その両端部をピン取付け部51c,51cの貫通孔に挿通させ、スナップリング53,53を装着することで、ピン取付け部51c,51c間に着脱可能に固定されている。本実施例の施錠構造40においては、この係合ピン52が受枠10の錠座11に係合する。
【0032】
係合ピン52は、前述のとおり地下構造物内に耐揚圧荷重強さを超える内圧が発生したとき、施錠構造40において常に蝶番構造30より先に破壊(破断)するように、また、所定の耐揚圧荷重強さの範囲で施錠構造40が破壊するように、その破壊強さが設定されている。また、本実施例では、前記破壊強さで係合ピン52が確実に破壊するように、係合ピン52は中空としたうえで、外周に切欠き52aを形成している。さらに本実施例では、地下構造物用蓋が設置される腐食環境下でも安定して所定の破壊強さを維持できるように、係合ピン52の材質は、耐食性を有する材質、具体的にはステンレス鋼としている。なお、錠本体51の材質は通常、球状黒鉛鋳鉄であり、鋳込みにより製造されるため、その破壊強さを精密にコントロールすることは難しい。これに対して、係合ピン52は錠本体51とは別体であるから、独立して製造することができ、その破壊強さを容易かつ精密にコントロールできる。
【0033】
錠本体51の説明に戻ると、錠本体51には、ピン取付け部51c,51cからそれぞれ下方に延出して突設部51d,51dが形成され、この突設部51d,51dの内方(蓋本体20中心側)位置には、錠本体51の下部から下方に延出して支持部51e,51eが形成されている。これら突設部51d,51dおよび支持部51e,51eの作用については後で説明する。
【0034】
一方、閉塞部材60は、錠本体51に押下可能に取り付けられて、蓋本体20のバール孔21およびその下方に形成した筒状部23を開閉可能に閉塞するためのもので、バール孔21の直下に位置する第1閉塞部61と、筒状部23(空間部)に嵌入する第2閉塞部62と、筒状部23の周縁下面に当接する第3閉塞部63と、第2閉塞部62の下面から下方に延出して設けられた支持軸64とからなる。また、第3閉塞部63には、筒状部23の周縁下面に当接する位置に弾性シール材63aが設けられている。この弾性シール材63aが筒状部23の周縁下面に当接して密着することで、蓋本体のバール孔21およびその下方に形成した筒状部23を確実に閉塞することができる。
【0035】
閉塞部材60の支持軸64は、弾性部材としてのコイルばね65を介して、錠本体51のばね座51fに設けたガイド孔に挿入されている。これにより、閉塞部材60は、錠本体51に押下可能に取り付けられている。また、閉塞部材60の支持軸64の下端にはストッパ66が取り付けられている。このストッパ66は、ばね座51fの下方に設けたスリット部51g内に位置し、ばね座51fの下面に当接することで、閉塞部材60が上方に抜け出すことを防止する。
【0036】
なお、本発明の施錠構造において閉塞部材60は必須の構成ではないので、省略可能である。
【0037】
以下、施錠構造40の動作を説明する。
【0038】
受枠10に蓋本体20を支持した通常の閉蓋状態は、
図1および
図2に示すとおりで、施錠構造40を構成する錠50の係合ピン52が、受枠10の錠座11の下方に、浮上しろに相当する所定の間隔をおいて位置している。また、蓋本体20は、所定の食い込み力をもって受枠10に支持されており、地下構造物内に内圧が発生したとしても、その内圧が蓋本体20の食い込み力以下であれば、蓋本体20は浮上することなく、その内圧を押さえ込む。
【0039】
内圧が蓋本体20の食い込み力を超えると、蓋本体20は受枠10から離れて浮上する。
図4は、この浮上状態を示す断面図である。同図に示すように浮上状態では、錠50の係合ピン52が受枠10の錠座11に係合するとともに、蝶番構造30側の蓋本体20の下面に設けた浮上ロック部材70が受枠10の浮上ロック座12に係合する。これにより、蓋本体20は、一定高さの浮上しろhをもって浮上した状態で受枠10に係止し、この浮上した蓋本体20と受枠10との隙間から内圧が解放される。耐揚圧荷重強さまでは、この状態を持続し、内圧がなくなると蓋本体20は元の閉蓋状態(
図1および
図2)にもどる。
【0040】
一方、内圧が耐揚圧荷重強さを超えた場合、錠50の係合ピン52が破壊し、蓋本体20が開放して内圧が解放される。すなわち、本実施例において耐揚圧荷重強さは、錠本体とは別体である係合ピン52の破壊強さをコントロールすることで調整できるので、内圧が耐揚圧荷重強さを超えたら、蝶番構造30よりも、常に係合ピン52が先に破壊するように設定することができる。これより、蝶番構造30が施錠構造40より先に破壊することなく、また、所定の耐揚圧荷重強さの範囲で施錠構造40が破壊することで、前述の圧力解放耐揚圧性能がいかんなく発揮される。
【0041】
また、係合ピン52が破壊したとしても、係合ピン52は錠本体51に着脱可能であるから、係合ピン52のみを交換すれば、その他の施錠構造40を構成する部材は再利用することができ、さらに蓋本体20および受枠10は破壊しないのでこれらを取り替える必要がない。
【0042】
続いて、施錠構造40の開錠動作を説明する。
【0043】
図5は、施錠構造40の開錠動作を示す部分断面図である。開錠の際は、
図5(a)に示すように、バール80の略T字状の先端部を蓋本体20のバール孔21から挿入し、そのまま閉塞部材60を押し下げるようにして、バール80の先端部をバール孔21下方の筒状部23まで押し込む。この状態で、バール80を90°回転させる。このとき、閉塞部材60の第1閉塞部61の上面は傾斜面となっているから、バール80を回転させた後、バール80の先端部を第1閉塞部61上面の傾斜面上を手前方向に移動させる。これにより錠本体51には、閉塞部材60を介して下方に向かう力が作用する。その結果、
図5(b)に示すように錠本体51が受枠10から離れる方向に回動し、施錠構造40の係合ピン52が受枠10の錠座11から離隔して開錠される。そして、この
図5(b)の状態から、そのままバール80を使用して、てこの原理により蓋本体20の食い込みを解除し、続いて、バール80を斜め上方に引き上げると、蓋本体20を地表面に引き出すことができる。
【0044】
図6は、蓋本体20を地表面に引き出した状態を示す部分断面図である。同図に示すように蓋本体20を地表面GLに引き出した状態では、錠本体51の突設部51dと支持部51eがともに地表面GLに当接する。さらに錠本体51の支持軸51bは蓋本体20の錠取付け部で支持されている。このように、錠本体51は、地表面GL上で、錠取付け部(支持軸51b)と突設部51dと支持部51eとの3点でバランスよく支持されるため錠本体51の姿勢が安定し、蓋本体20の姿勢も安定する。したがって、不意に錠本体51が蓋本体20の中心側に傾き蓋本体20が受枠10側に滑り込み、勝手に閉蓋されることなどを防止できる。また、蓋本体20を地表面GLに引き出した状態において錠本体51および蓋本体20の姿勢が安定していると、
図5に示したようなバール80を蓋本体20のバール孔21から抜き取ったり、再び挿入したりする作業を容易に行うことができる。なお、
図6に示す蓋本体20を地表面GLに引き出した状態における錠本体51の姿勢は、
図1および
図2に示した閉蓋状態における錠本体の姿勢に比べ、少し蓋本体20の半径方向外方に回動した姿勢となっている。
【0045】
次に、閉蓋操作時の施錠構造40の動作について説明する。
図7は、閉蓋操作時の施錠構造40の動作を示す部分断面図である。なお、
図7において、
図5で示したバールは省略している。
【0046】
閉蓋操作は、蓋本体20を水平旋回または垂直反転させることにより開蓋した後、再び
図6の状態にしてから行う。すなわち、
図6の状態からバール孔21に挿入したバールを使用して蓋本体20を持ち上げ、受枠10に向けてゆっくりと滑り込ませる。また、バールを使用せずに閉蓋することもあり、このとき、
図7の(a)および(b)に示すように、錠本体51のピン取付け部51cの下方に形成した突設部51dが、受枠10の内周部に当接することによって錠本体51は中心側に回動しながら蓋本体10を閉蓋位置にガイドする。これにより、スムーズに閉蓋することができ、閉蓋後、錠本体51は、
図1および
図2の施錠状態に自動的に復帰する。
【0047】
以上のように本実施例の施錠構造40は、係合ピン52を錠本体51のピン取付け部51cに着脱可能に固定したことを特徴とするが、この係合ピン52の固定構造(取付構造)はとくに限定されず、例えば
図8A〜Hの構造とすることができる。
【0048】
図8Aは、前述の本実施例で採用した固定構造であり、スナップリング53を使用したものである。
図8Bはスナップリング53に替えてスプリングピン54を使用したものである。
図8Cは係合ピン52の基端部に鍔部52bを設けるとともに先端部にネジ部52cを設け、ナット55をネジ部52cに螺合するようにしたものである。
図8Dはナット55の替わりにボルト56を使用し、このボルト56を係合ピン52の先端部の内周に設けたネジ部に螺合するようにしたものである。
図8Eは、2本のボルト56,56を使用し、これらを係合ピン52の両端部の内周に設けたネジ部に螺合するようにしたものである。
図8Fは、係合ピン52の先端部のネジ部52cを直接、ピン取付け部51cに螺合するようにしたものである。
図8Gは、係合ピン52の両端部を接着面52d,52dとして接着剤を塗布した後、それぞれピン取付け部51c,51cに接着により着脱可能に固定するようにしたものである。
図8Hは、ピン取付け部51c,51cにそれぞれセットボルト57,57を螺合させることにより、係合ピン52の両端部をピン取付け部51c,51cに着脱可能に固定するようにしたものである。その他、様々な固定構造を採りうることは当業者に自明である。
【0049】
また、前述の実施例では、係合ピン52を中空とし、その外周に切欠き52aを形成したが、これに限定されるものではない。すなわち本実施例では、係合ピン52の破壊強さをコントロールできれば、係合ピン52は、いかなる形状であってもよい。また、切欠き52aを形成する場合であっても、その切欠きの形状および個数等にとくに制限はない。
【0050】
(第2実施例)
図9は、本発明の第2実施例による施錠構造を蓋本体裏面側から見た斜視図である。
図10A〜Cは、本実施例の施錠構造を構成する錠50を示し、
図10Aは斜視図、
図10Bは側面図、
図10Cは分解斜視図である。また、
図11は、
図9における受枠10の要部を示す斜視図である。
【0051】
本実施例の錠50は、第1実施例の錠50に位置ズレ規制部58を追加したものである。その他の構成は、第1実施例の錠50と実質同一である。
【0052】
本実施例において位置ズレ規制部58は、錠本体51の両側部51a,51aからそれぞれ外方(受枠10側)に突き出して対をなすように設けられており、この一対の位置ズレ規制部58,58が、受枠10内周部の錠座11近傍に形成した係止部13に係合して蓋本体20が周方向に位置ズレすることを規制する。すなわち
図9の閉蓋状態および浮上状態では、一対の位置ズレ規制部58,58の間に受枠10の係止部13が位置する。したがって、蓋本体20が周方向に位置ズレしようとしても、一対の位置ズレ規制部58,58の一方の内側面が受枠10の係止部13に当接するので、蓋本体20の周方向の位置ズレが規制される。
【0053】
なお、通常の閉蓋状態では、蓋本体20は所定の食い込み力をもって受枠10に支持されているから蓋本体20の周方向の位置ズレは起こりにくいが、蓋本体20が浮上した浮上状態では、蓋本体20は受枠10から離れるから、蓋本体20に車両通行等の何らかの外力が作用すると容易に周方向に位置ズレすることがある。すなわち、位置ズレ規制部58は、とくに蓋本体20が浮上した浮上状態において、その蓋本体20の周方向の位置ズレ防止に有効である。
【0054】
(第3実施例)
図12は、本発明の第3実施例による施錠構造を蓋本体裏面側から見た斜視図である。
図13A〜Cは、本実施例の施錠構造を構成する錠50を示し、
図13Aは斜視図、
図13Bは側面図、
図13Cは分解斜視図である。また、
図14は、
図12における受枠10の要部を示す斜視図である。
【0055】
本実施例の錠50は、第1実施例の錠50において係合ピン52の形状を変更したものである。その他の構成は、第1実施例の錠50と実質同一である。
【0056】
本実施例の係合ピン52は、ピン本体部52Aとピン固定部52Bとこれらを繋ぐ連結部52Cとからなり、ピン固定部52Bが錠本体51のピン取付け部51c,51c間にボルト59aおよびナット59bによって着脱可能に固定されている。このピン本体部52Aには切欠き52a,52aが形成され、切欠き52aより両端側に係合部52D,52Dが形成されている。ピン本体部52Aは中空とすることもできる。そして、係合部52D,52Dが受枠10の錠座11に係合する。
【0057】
また、本実施例の係合ピン52において、ピン本体部52Aの両端の係合部52D,52Dは位置ズレ規制部となる。すなわち、
図12の閉蓋状態および浮上状態では、受枠10の内周部に形成した一対の係止部13,13(
図14参照)の間にピン本体部52Aが位置する。したがって、蓋本体20が周方向に位置ズレしようとしても、ピン本体部52Aの両端の係合部52Dの一方が一対の係止部13,13の一方に当接するので、蓋本体20の周方向の位置ズレが規制される。さらに、本実施例の浮上状態では、受枠10の錠座11にピン本体部52Aの両端の係合部52D,52Dが係合することとなり、切欠き52a,52a付近でせん断される。このため、本実施例においては耐揚圧荷重強さを切欠き52aの形状により容易にコントロールすることができる。
【0058】
(第4実施例)
図15は、本発明の第4実施例による施錠構造を蓋本体裏面側から見た斜視図である。
図16A〜Cは、本実施例の施錠構造を構成する錠50を示し、
図16Aは斜視図、
図16Bは側面図、
図16Cは分解斜視図である。
図17は、
図15における受枠10の要部を示す斜視図である。
図18A,Bは、本実施例において蓋本体が浮上した状態を示す断面図である。
【0059】
本実施例の錠50は、係合部材として係合ピン52に替えて係合爪90を備えるものである。その他の構成は、第1実施例の錠50と実質同一である。
【0060】
本実施例の係合爪90は、係合部材固定部としてのピン取付け部51c,51c間に固定部材としての固定ピン100を介して着脱可能に固定されている。また、係合爪90は、外方(受枠10側)に突出する係合部91を有し、この係合部91が受枠10の錠座11に係合する。さらに係合爪90は、その中央付近に固定ピン100を挿通する係合孔92を有するとともに、その内方(蓋本体20中心側)に水平方向に形成した係合凹部93を有する。そして、係合爪90は、固定ピン100を係合孔92およびピン取付け部51c,51cに挿通させ、この固定ピン100の両端部にそれぞれボルト101を螺合することで、ピン取付け部51c,51c間に着脱可能に固定される。このとき、
図18Bに示すように、係合爪90の水平方向の係合凹部93が錠本体51の水平方向の係合凸部51hと嵌合するので、係合爪90は固定ピン100周りに回動することなく確実に固定される。
【0061】
本実施例では、
図18A,Bに示すように、蓋本体20が浮上すると係合爪90の係合部91が受枠10の錠座11に係合する。係合爪90の係合部91は前述のとおり外方(受枠10側)に突出するように形成できるので、これを受枠10の錠座11に係合させるようにすることで、これまでの第1〜第3実施例に比べ、錠座11の受枠内方(受枠10中心側)への突出量を小さくすることができ、受枠10の有効内径を大きくすることができ、地下構造物内への作業者の出入りの際に錠座11が引っ掛かることを防ぐことができる。
【0062】
本実施例では、地下構造物内に耐揚圧荷重強さを超える内圧が発生した場合、固定ピン100が破壊(破断)する。すなわち、固定ピン100は、地下構造物内に耐揚圧荷重強さを超える内圧が発生したとき、施錠構造において常に蝶番構造より先に破壊(破断)するように、また、所定の耐揚圧荷重強さの範囲で施錠構造が破壊するように、その破壊強さが設定されている。また本実施例では、前記破壊強さで固定ピン100が確実に破壊するように、固定ピン100は中空としたうえで、外周に切欠き100aを形成している。なお、切欠き100aは、この切欠き100aの位置で固定ピン100が確実に破壊するように形成するものであるから、固定ピン100を係合爪90の係合孔92に挿通したときに、係合孔92内ではなく係合孔92から露出する位置に形成する。
【0063】
本実施例では、
図18Bに示すように、係合爪90の係合部91が受枠10の錠座11に係合する係合箇所の直下に固定ピン100が位置するようにしている。これにより、係合爪90の係合部91が受枠10の錠座11に係合したときに係合爪90に作用する下向きの力が固定ピン100に直接的に伝わり、固定ピン100が前記破壊強さで確実に破壊する。
【0064】
本実施例では、地下構造物用蓋が設置される腐食環境下でも安定して所定の破壊強さを維持できるように、固定ピン100の材質は、耐食性を有する材質、具体的にはステンレス鋼としている。この固定ピン100は錠本体51とは別体であるから、独立して製造することができ、その破壊強さを容易かつ精密にコントロールできる。
【0065】
本実施例では、係合爪90の係合部91の両端部が位置ズレ規制部となる。すなわち、
図15の閉蓋状態および
図18A,Bの浮上状態では、受枠10の内周部に形成した一対の係止部13,13(
図17参照)の間に係合爪90の係合部91が位置する。したがって、蓋本体20が周方向に位置ズレしようとしても、この係合部91の両端部の一方が一対の係止部13,13の一方に当接するので、蓋本体20の周方向の位置ズレが規制される。
【0066】
なお、本実施例では、固定ピン100をボルト101によってピン取付け部51c,51cに固定するようにしたが、固定ピン100の固定構造はこれに限定されず、例えば
図8A〜Hに示した係合ピン52の固定構造と同様の固定構造を採用することもできる。また、本実施例では、固定部材としての固定ピン100は係合部材としての係合爪90と別体に設けたが、固定部材は係合部材と一体に設けることもできる。この場合、係合部材と一体に設けた固定部材を中空にしたり、切欠きを形成したりすることができる。