(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二工程において、前記第一射出口と前記第二射出口から、それぞれ前記保持ピンの突出方向に沿う向きに成形材料が射出される請求項1又は2に記載の車両用部材の製造方法。
前記樹脂としての被覆部材が、柱形状の本体部と、車両に配設されている被取付け部材に取付け可能な取付け部とを有しているとともに、前記本体部が、前記取付け部に比して薄肉とされており、
前記第一射出口が、前記本体部を成形するキャビティ部分に成形材料を射出するとともに、前記第二射出口よりも多くの成形材料を射出可能である請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜
図9を参照して説明する。各図には、本体部としての荷重作用部の軸方向H(車両取付け前における荷重の入力方向)を示す矢印と木材の年輪の軸心方向Aを示す矢印を適宜図示する。また
図2及び
図9に、車両の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示するとともに、
図5〜
図8に、射出成形機の上下方向を示す矢線を図示する。なお
図5〜
図8は、木材に対する各射出口の配置関係をわかりやすく図示するため、各射出口の位置を便宜的に示した射出成形機の模式的な断面図である。
【0016】
[実施形態1]
図1の車両用部材2は、車両衝突時の衝撃荷重を吸収する衝撃吸収部材として用いられる部材であり、木材6と、木材6を樹脂で一体的に被覆する被覆部材4とを有している(各部材の詳細は後述)。この車両用部材2は、
図2を参照して、後述するバンパリインフォース2rと左右のサイドメンバ4r,6rとの間に介装することができる。そして車両衝突時にバンパリインフォース2rにかかる衝撃荷重Fを左右の車両用部材2で受け止め、さらに被覆部材4内の木材6が圧縮しつつ潰れる(圧壊する)ことで衝撃荷重Fを吸収する。この種の車両用部材2では、衝撃荷重Fを十分に受け止めるべく木材6を所望の形状とし、さらにこの木材6を極力破損させることなく、後述する射出成形機30のキャビティ38内において木材6を包むように樹脂(被覆部材4)を被覆して成形することが望まれる。そこで本実施形態では、後述する射出成形機30と製造工程によって、所望の形状を備えた木材6の破損を極力回避しつつ、木材6を包むように樹脂を被覆して成形することとした。以下、各構成について詳述する。
【0017】
[被覆部材・荷重作用部]
被覆部材4は、
図1及び
図3を参照して、車両用部材2の外形をなすとともに、後述の木材6を樹脂で一体的に被覆する部材である。この被覆部材4は、荷重作用部10と取付け部12を有しており、
図2に示すように本発明の被取付け部材である後述のサイドメンバ4r,6rに取付けることができる。荷重作用部10は、本発明の「本体部」に相当する略四角柱形状の部位である。そして荷重作用部10は、その内部に後述の木材6を配置しているとともに、略四角形の入力端面10aと、四つの本体側面10bを有している。入力端面10aは、荷重作用部の軸方向Hに直交して配置されている面であり、荷重作用部の軸方向Hにおける一端に配置されている。また各本体側面10bは、入力端面10aの各辺から軸方向Hに延長している面である。
【0018】
そして本実施形態では、後述する車両用部材2の車両への取付けの際に、荷重作用部の軸方向Hを、荷重の入力方向となる前後方向に一致させた状態とする。すなわち車両取付け前の車両用部材2の段階においては、この荷重作用部の軸方向Hを、後述の木材6に対する荷重の入力方向とみなすことができる。そして後述の車両衝突時においては、被覆部材4の入力端面10aから衝撃荷重が入力され、この入力された衝撃荷重によって各本体側面10bが後述の木材6とともに荷重作用部の軸方向Hに潰れ変形する。
【0019】
[取付け部]
取付け部12は、後述する各サイドメンバ4r,6rに取付け可能な部位であり、荷重作用部10の入力端面10aとは反対側である被覆部材4の他端に一体的に設けられている。この取付け部12は、略四角形とされたフランジ形状の部位であり、荷重作用部10の各本体側面10bから外方(
図1のL方向とW方向)に延出している。また取付け部12の四隅には締結孔12Hがそれぞれ設けられており、各締結孔12Hには、
図2に示す締結具としてのボルト材BMを挿通できる。そして
図3を参照して、取付け部12の厚み寸法T1は、荷重作用部10の厚み寸法T2と同一でもよいが、各サイドメンバ4r,6rに対する取付け安定性向上の観点から荷重作用部10の厚み寸法T2よりも大きいことが望ましい。
【0020】
ここで被覆部材4を構成する樹脂として、射出成形の可能な熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができる。この種の熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)、ナイロン(ポリアミド)等のポリエステル樹脂、プロピレン−エチレン共重合体、ポリスチレン樹脂、芳香族ビニル系単量体と低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体、テレフタル酸−エチレングリコール−シクロヘキサンジメタノール共重合体、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル樹脂を例示することができる。また熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂を例示することができる。そして熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂は単独で使用することができ、また二種以上を混合して使用することもできる。
【0021】
[木材]
木材6は、
図1及び
図3を参照して、車両用部材2の芯となる部材であり、車両衝突時にかかる衝撃荷重によって荷重の入力方向である荷重作用部の軸方向Hに圧壊することができる。この木材6は、
図3を参照して、横断面形状(W×L方向の断面形状)が略四角形の角柱形状(所望の形状の一例)に形成されており、一端面20aと、四つの側面20bと、他端面20cを有している。一端面20aは、荷重作用部10の入力端面10a側に配置されている面であり、衝撃荷重が入力される側の面である。また各側面20bは、一端面20aの各辺から軸方向Hに延びている面である。そして他端面20cは、一端面20aとは反対の木材6の端部に位置する面である。この他端面20cの中心には、
図4を参照して、
図5に示す後述の射出成形機30の保持ピン33を挿嵌可能な挿嵌孔20Hが設けられている。この挿嵌孔20Hは、略円筒形状をなす孔部(非貫通孔)であり、後述の保持ピン33の長さ寸法と略同一の奥行き寸法を有している。
【0022】
そして木材6は、
図3を参照して、荷重作用部10の樹脂で一体化され且つ被覆された状態で荷重作用部10内に配置されている。このため木材6の高さ寸法(軸方向Hの寸法)と長さ寸法(L方向の寸法)と幅寸法(W方向の寸法)とが、それぞれ荷重作用部10の対応する寸法よりも若干小さな寸法に設定されている。そして木材6は、被覆部材4内に配置された状態においては、年輪22の軸心方向Aが荷重作用部の軸方向Hとほぼ一致するように適切に配置されている。このように被覆部材4内に木材6が適切に配置されることで、車両衝突時における衝撃荷重よりも小さい荷重がかかった場合、この低荷重を木材6が圧壊することなく十分に受け止めることができる。
【0023】
この種の木材6は、スギやヒノキやマツなどの針葉樹、ケヤキやブナなどの広葉樹から採取することが可能であるが、相対的に年輪22がはっきりしている針葉樹から採取することが望ましい。ここで木材6の密度は特に限定しないが、例えば密度0.2g/cm
3〜1.0g/cm
3の木材6を用いることができる。特に車両用部材2を衝撃吸収部材として使用する場合には、衝撃吸収性能に優れる低密度の木材6を用いることが好ましく、例えば密度0.2g/cm
3〜0.6g/cm
3の木材6を好適に用いることができる。なお相対的に高密度の木材6を用いる場合には、木材6の横断面積を小さくして圧壊しやすくすることで所望の衝撃吸収性能を得ることができる。
【0024】
ここで木材6の含水率は、所望の衝撃吸収性能を備える限り特に限定しないが、典型的に含水率を5〜16%の範囲に調整することができ、概ね10%を目安とすることが望ましく、概ね8%に設定することがより好ましい。なお木材6の含水率を概ね8%〜10%とする方法として、室温約30度且つ湿度約90%の室内に木材6を予め決められた時間だけ載置する方法を例示できる。また木材6の含水率を測定する方法として、上記の手法で乾燥させた木材6の重量と、乾燥前の木材6の重量との差から含水率を測定する方法を例示できる。
【0025】
[射出成形機]
本実施形態では、
図5に示す射出成形機30を用いて、後述する第一工程と第二工程によって車両用部材2を製造する。この射出成形機30は、コア型32と、キャビ型34と、キャビティ38と、
図6に示す複数の射出口(第一射出口41a〜41c,第二射出口42a,42b)を有している。そして所定位置に固定されているコア型32に対して、キャビ型34を下方に移動させることにより、両型32,34を型閉じ状態とすることができる。さらに型閉じ状態とされたコア型32とキャビ型34の間に、後述するキャビティ38が形成されることとなる。
【0026】
[コア型(保持ピン)]
コア型32は、
図5を参照して、床面等に設置された平板状の成形型であり、略平坦とされたコア側閉合面32aと、保持ピン33を有している。この保持ピン33は、後述する第一工程時において木材6が挿嵌される部材であり、コア側閉合面32aから上方に向けて起立している。また保持ピン33の周面は、上端である先端部から射出成形機側であるコア側閉合面32aに向かって次第に大径となるテーパ形状とされており、保持ピン33の先端部側は、
図3に示す木材6の挿嵌孔20Hに挿入可能とされている。そして保持ピン33は、下部側に向かうにつれて次第に径大となっているため、挿嵌孔20Hに適度に挿嵌可能であるが下端の根元までは挿嵌できない構成とされている。
【0027】
[キャビ型]
キャビ型34は、
図5を参照して、コア型32に対して昇降可能に設置された直方体状の成形型であり、コア側閉合面32aに閉じ合されるキャビ側閉合面34aと、キャビ側閉合面34aに設けられた凹状の成形凹部35とを有している。この成形凹部35は、
図6に示すように被覆部材に倣った形状の凹部であり、上側(奥側)をなす第一部位36と、下側(開口側)をなす第二部位37に区分けできる。第一部位36は、
図3に示す荷重作用部10を成形するキャビティ部分となる箇所である。この第一部位36は、
図5を参照して、奥側上面36aと四つの奥側周面36bとで囲まれている略四角柱形状の空間部である(
図5では、便宜上、二つの奥側周面のみ図示する)。奥側上面36aは、成形凹部35の底をなしている略四角形の面であり、各奥側周面36bは、奥側上面36aの各辺から下方に延長している面である。また第二部位37は、
図3に示す取付け部12を成形するキャビティ部分となる箇所である。この第二部位37は、
図5を参照して、開口側上面37aと四つの開口側周面37bとで囲まれている空間部であり、第一部位36よりも幅広で且つ短尺な略四角柱形状をなしている(
図5では、便宜上、二つの開口側周面のみ図示する)。開口側上面37aは、奥側上面36aに平行に配置されている四角形の面であり、各開口側周面37bは、開口側上面37aの各辺から下方に延長している面である。
【0028】
[キャビティ]
キャビティ38は、
図5及び
図7を参照して、荷重作用部の軸方向Hを上下に向けた被覆部材4の成形空間となる部位であり、コア型32のコア側閉合面32aと成形凹部35の間に形成される。このキャビティ38には、コア側閉合面32aから起立している保持ピン33が上下方向に突出配置されており、この保持ピン33には、後述するように木材6が挿嵌された状態となる。そしてキャビティ38内に配置される木材6を挟んで、第一部位36の奥側上面36aが木材6の上端側(木材の一端面20a側)に配置され、第二部位37の開口側上面37aが木材6の下端側(木材の他端面20c側)に配置される。すなわち本実施形態では、第一部位36の奥側上面36aが、本発明の「保持ピンの突出方向(本実施形態では上下方向)における木材の一端側」に配置される。また第二部位37の開口側上面37aが、本発明の「木材の一端側と木材を挟んで反対側である木材の他端側」に配置される。
【0029】
[第一射出口]
複数の射出口(第一射出口41a〜41c,第二射出口42a,42b)は、
図6を参照して、それぞれキャビ型34側に設けられているゲートであり、キャビティ38内に成形材料を射出することができる。第一射出口41a〜41dは、第一部位36の奥側上面36aに開口しており、後述する第二工程においてキャビティ38内の木材6の上端側に配置される。これら各第一射出口41a〜41dは、それぞれキャビ型34内の対応する第一ランナ51a〜51dを介してスプル50に連通している。各第一ランナ51a〜51dは、キャビ型34内でスプル50に対して上方視で十字状をなすように配置されているとともに、下方に向けて延長する端部側で対応する第一射出口41a〜41dにそれぞれ連通している。そして各第一射出口41a〜41dは、キャビティ38内の木材6の外周(例えば側面20b)より外側にオフセットした奥側上面36aの四隅に分かれて設けられており、上下方向において木材6に重ならないように配置されている。さらに
図6に示す各第一射出口41a〜41cは、各々、
図5に示すように第一の成形材料WM1を下方に向けて射出できる(
図5では、便宜上、各射出口の一部のみ図示するとともに、各成形材料を示す符号WM1,WM2を、各成形材料の射出方向を示す矢線に付す)。
【0030】
[第二射出口]
また一対の第二射出口42a,42bは、
図5及び
図6を参照して、第二部位37の開口側上面37aに開口しており、後述する第二工程においてキャビティ38内の木材6の下端側に配置される。これら各第二射出口42a,42bは、それぞれキャビ型34内の対応する第二ランナ52a,52bを介してスプル50に連通している。各第二ランナ52a,52bは、キャビ型34内でスプル50を挟んで対称となるように配置されているとともに、下方に向けて延長する端部側で対応する第二射出口42a,42bにそれぞれ連通している。そして各第二射出口42a,42bも、キャビティ38内の木材6の外周(例えば側面20b)より外側にオフセットした位置である開口側上面37a部分に分かれて設けられている。さらに各第二射出口42a,42bも、各々、
図5に示すように第二の成形材料WM2を下方に向けて射出することができる。
【0031】
[第一工程]
第一工程では、
図5及び
図7を参照して、木材6を、キャビティ38内に突出配置される射出成形機30の保持ピン33に挿嵌して、キャビティ38内に浮かせた状態(フロート状態)で保持する。本実施形態では、コア型32とキャビ型34の閉じ合わせに先立って、木材の年輪22の軸心方向Aを上下方向に向けながら、木材6の他端面20cに設けた挿嵌孔20Hに保持ピン33を挿嵌する。このとき木材6の挿嵌孔20Hに、テーパ状をなす保持ピン33を先端部側から挿入しつつ、挿入不能となる位置まで押し込んでいく。こうして木材6の挿嵌孔20Hにテーパ状の保持ピン33を押し込んで挿嵌することにより、保持ピン33に木材6をしっかりと挿嵌しておくことができる。そして保持ピン33に挿嵌された木材6は、木材の年輪22の軸心方向Aを荷重作用部の軸方向H(上下方向)に沿わせた状態で保持されている。また木材6の各側面20bが、保持ピン33の突出方向である上下方向に沿って配置される。つぎにコア型32とキャビ型34を型閉じしてキャビティ38を形成しつつ、このキャビティ38内に、保持ピン33に保持された木材6を配置する。この状態の木材6は、保持ピン33の先端部側に挿嵌されることで、キャビティ38を囲む型の面(36a,36b,37a,37b)から離れて浮いたフロート状態でキャビティ38の第一部位36側に保持される。
【0032】
[第二工程]
第二工程では、
図5〜
図7を参照して、木材6の上端側に配置されている各第一射出口41a〜41dと、木材6の下端側に配置されている各第二射出口42a,42bとが、それぞれ木材6の外周より外側にオフセットした位置からキャビティ38内に成形材料(WM1,WM2)を射出する。本実施形態では、各第一射出口41a〜41dが、上下方向において木材6の外周(例えば側面20b)より外側にオフセットした奥側上面36aの四隅に配置されている。このため第一の成形材料WM1が、木材6に直接当たることなく各第一射出口41a〜41dから下方に射出されることとなる。このとき第一の成形材料WM1を、保持ピン33の突出方向(上下方向)に沿うように下方に射出することで、射出された第一の成形材料WM1によって、保持ピン33に対して木材6が過度に揺動することを極力回避することができる。また同様に各第二射出口42a,42bも、木材6の外周より外側にオフセットした開口側上面37a部分に配置されている。このため第二の成形材料WM2も、木材6に直接当たることなく各第二射出口42a,42bから下方に射出されることとなる。このように木材6を避けながら各成形材料WM1,WM2を射出することにより、各成形材料WM1,WM2の射出圧によって木材6が過度に変形することを極力回避することができる。
【0033】
そして各第一射出口41a〜41dから射出された第一の成形材料WM1と、各第二射出口42a,42bから射出された第二の成形材料WM2を、
図7に示すように木材6の各側面20bで合流させる。ここで木材6の各側面20bは、木材6の一端面20aと他端面20cの間に配置されて上下方向に延長している。例えば各成形材料WM1,WM2の射出条件(射出圧や射出量等)を調整することにより、木材6の側面20bで合流するように各成形材料WM1,WM2を対応する射出口から射出することができる。
【0034】
このように各射出口41a〜41d,42a,42bから、木材6の側面20bで合流するように上下にバランスよく各成形材料WM1,WM2を射出することで、保持ピン33に対する木材6の過度の浮き沈みが極力回避される。すなわち典型的な射出成形の条件下においては、木材6が保持ピン33にしっかり挿嵌されていたとしても、各成形材料WM1,WM2の射出圧や流動圧等によってどうしても木材6の浮き沈みが生じてしまう。そこで上述のように各成形材料WM1,WM2のバランスをとることで、木材6が、下方側の第二の成形材料WM2に押されて保持ピン33から過度に浮き上がろうとする動きを、上方側の第一の成形材料WM1にて抑えておくことができる。また逆に木材6が、上方側の第一の成形材料WM1に押されて保持ピン33に向けて過度に沈み込もうとする動きを、下方側の第二の成形材料WM2にて抑えておくことができる。こうしてキャビティ38内で木材6が過度に浮き沈みしない条件で射出成形を行うことにより、木材6が適切なフロート状態で維持されて、
図7に示すように、うまく木材6を包むように樹脂製の被覆部材4を成形することができる。こうして成形された被覆部材4には、木材6の側面20bに対応する部分に、各成形材料WM1,WM2の合流箇所であるウェルドラインWLが形成されることとなる。
【0035】
ところで各成形材料WM1,WM2の射出条件(射出圧や射出量等)は、上述の条件を満たす範囲で適宜設定可能であり、各成形材料WM1,WM2の射出条件を意識的に異ならせることもできる。例えば本実施形態では、
図3に示す相対的に薄肉な荷重作用部10を適切に成形するため、各第一射出口41a〜41dから射出される第一の成形材料WM1の射出総量を相対的に多くすることが望ましい。すなわち
図3に示す荷重作用部10は、
図7に示すように第一部位36側のキャビティ部分で成形されるのであるが、このキャビティ部分は、荷重作用部の厚み寸法に応じて第二部位37よりも狭小となっている。そこで第一の成形材料WM1の射出総量を相対的に多くしておくことで、第一部位36側のキャビティ部分に第一の成形材料WM1を十分に行き渡らせることができる。こうして第一部位36側のキャビティ部分が相対的に狭小であっても、第一の成形材料WM1の射出総量を相対的に多くすることで、第一の成形材料WM1の供給不足による荷重作用部10の成形不良を極力回避できる。
【0036】
こうして本実施形態では、保持ピン33で保持されている木材6を中心に被覆部材4を成形することにより、木材6を包むように樹脂を被覆して成形することができる。そしてコア型32とキャビ型34を型開きして、被覆部材4と木材6を保持ピン33から抜き外すことで、
図1〜
図4に示す車両用部材2を得ることができる。なお
図4を参照して、取付け部12の裏面には、保持ピン33の配置位置に対応する箇所に貫通孔が形成され、この貫通孔から、木材6の挿嵌孔20Hが露出している。そこで取付け部12裏面の貫通孔を蓋としての他部材で覆うなどして、被覆部材4からの木材6の露出を完全に阻止することができるが、木材6の過度の露出がないならば貫通孔を残しておくこともできる。例えば本実施形態では、
図2を参照して、取付け部12裏面が後述する前フランジ部5rに覆われるため、木材6が貫通孔を通じて外部に過度に露出しない構成である。すなわち前フランジ部5rが蓋の役目を果たすため、取付け部12裏面の貫通孔をそのまま残しておくこともできる。
【0037】
[変形例]
ここで射出成形機の構成は、上述の構成のほか、各種の構成を取り得る。例えば本変形例においては、
図8を参照して、コア型32のコア側閉合面32aに、複数の保持ピン(実施形態1の保持ピン33,第一補助保持ピン33a,第二補助保持ピン33b)が設けられている。これら第一補助保持ピン33aと第二補助保持ピン33bは、保持ピン33に比して短尺である以外は保持ピン33と略同一の構成を有している。そしてコア型32のコア側閉合面32aには、第一補助保持ピン33aと第二補助保持ピン33bが、保持ピン33の軸方向外側にそれぞれ配置されており、本変形例では保持ピン33を挟んで対称状に配置されている。そして第一工程において、木材6が、保持ピン33に対して挿嵌されて保持されている状態で、さらに保持ピン33の外側に配置されている第一補助保持ピン33a及び第二補助保持ピン33bに保持されている。このとき第一補助保持ピン33aと第二補助保持ピン33bは、木材6の対応する別の挿嵌孔21Hに挿嵌することができる。こうして本変形例では、保持ピン33を基点とした木材6の回転が別の保持ピン33a,33bによって規制されるため、キャビティ38内において木材6をより適切な状態で保持しておくことができる。
【0038】
[車両用部材の取付け作業]
図2を参照して、車両用部材2を、バンパリインフォース2rと左右のサイドメンバ4r,6rとの間に取付ける。このとき車両用部材2を、荷重作用部の軸方向Hが車両取付け時の荷重の入力方向である前後方向に一致するように、バンパリインフォース2rと左右のサイドメンバ4r,6rとの間にそれぞれ介装する。
【0039】
ここでバンパリインフォース2rは、車両前方において車幅方向である左右方向に延長している板状又は角柱状の部材である。また左右のサイドメンバ4r,6rは、車両裏面において車幅方向に適宜の間隔をあけて配置されている角柱状の部材であり、バンパリインフォース2rの後方で車両前後方向に延長している。そして右側のサイドメンバ4rの前端には前フランジ部5rが設けられており、左側のサイドメンバ6rの前端にも同様に前フランジ部7rが設けられている。これら各前フランジ部5r,7rは、前方視で略矩形の平板状の部位であり、取付け部12の裏面に対面状に配置することができる。さらに各前フランジ部5r,7rには、取付け部12の各締結孔12Hに対応する位置に締結孔(図示省略)が設けられている。
【0040】
そこで右側のサイドメンバ4rの前フランジ部5rに車両用部材2の取付け部12をあてがいながら、前フランジ部5rの締結孔と取付け部12の締結孔12Hを位置合わせする。こうして位置合された各締結孔に、締結具としてのボルト材BMを挿通して締結することにより、右側のサイドメンバ4rの前端に車両用部材2をスムーズ且つ安定的に取付けることができる。また同様の手順によって、左側のサイドメンバ6rの前フランジ部7rにも別の車両用部材2の取付け部12を締結固定して、左側のサイドメンバ6rの前端に別の車両用部材2を取付ける。そして左右の車両用部材2の前側を、バンパリインフォース2rの後面に固定することにより、バンパリインフォース2rと左右のサイドメンバ4r,6rとの間に車両用部材2をそれぞれ介装することができる。なお荷重作用部10側を中空のクラッシュボックス(図示省略)内に配置し、このクラッシュボックスを、バンパリインフォース2rの後面に固定することもできる。
【0041】
[車両用部材の挙動]
図2を参照して、車両衝突時にバンパリインフォース2rにかかる衝撃荷重Fを左右の車両用部材2で受け止め、さらに被覆部材4内の木材6が、荷重作用部の軸方向Hに圧壊することで衝撃荷重Fを吸収する。このとき木材6が、
図3に示すように年輪22の軸心方向Aが、荷重の入力方向である荷重作用部の軸方向Hに沿うように適切に荷重作用部10の内部に配置されているため、衝撃荷重Fを十分に受け止めてこの衝撃荷重Fを適切に吸収することができる。さらにフランジ形状の取付け部12が、荷重作用部10の各本体側面10bから外方に延出しつつ、対応する前フランジ部5r,7rに固定されている。こうしてフランジ形状の取付け部12によって各サイドメンバ4r,6rに対する取付け安定性を向上させたことにより、衝撃荷重Fによって荷重作用部10と木材6が転倒する(例えば
図2の上下・左右方向に傾く)ことを好適に回避することができる。このため車両衝突時において、被覆部材4内の木材6を、荷重作用部の軸方向Hに略真っ直ぐに圧縮しつつ潰れさせることができる。
【0042】
以上説明したとおり本実施形態では、第一工程において、木材6を、保持ピン33に挿嵌しつつキャビティ38内にフロート状態で保持しておく。このとき木材6を屈曲させておく必要がないことから、木材6の形状選択の自由度を高めることができる。また第一工程において、テーパ形状を備えた保持ピン33に木材6をしっかりと挿嵌しておくことができる。また変形例のように特定の保持ピン33を基点とした木材6の回転を別の保持ピン33a,33bによって規制することで、キャビティ38内において木材6をより適切な状態で保持しておくことができる。
【0043】
また第二工程において、木材6の外周より外側にオフセットした位置から各成形材料WM1,WM2を射出することにより、各成形材料WM1,WM2の射出圧によって木材6が過度に変形することを極力回避することができる。さらにキャビティ38の適所に配置されている第一射出口41a〜41dと第二射出口42a,42bとから、木材6の側面20bで合流するようにバランスよくキャビティ38内に各成形材料WM1,WM2が射出されるため、保持ピン33に対する木材6の過度の浮き沈みが極力回避される。このとき各成形材料WM1,WM2の射出方向と保持ピン33の突出方向とを合わせたことにより、射出された各成形材料WM1,WM2によって、保持ピン33に対して木材6が過度に揺動することを極力阻止することができる。そして本実施形態では、被覆部材4の荷重作用部10側に配置されている第一射出口41a〜41dから相対的に多くの各成形材料WM1,WM2を射出することができる。こうすることで相対的に薄肉とされている荷重作用部10の成形不良の発生を好適に回避することができる。このため本実施形態によれば、所望の形状を備えた木材6の破損を極力回避しつつ、射出成形機30のキャビティ38内において木材6を包むように樹脂を被覆して成形することができる。そして相対的に軽い樹脂製の被覆部材4で木材6を被覆することにより、使用環境の変化による木材6の性能劣化を極力回避しつつ、さらに車両用部材2を軽量化することができる。
【0044】
[実施形態2]
実施形態2では、実施形態1の構成部材とほぼ同一の基本構成を備える構成については、対応する符号を付す等して詳細な説明を省略する。実施形態2では、
図9を参照して、サイドドアDM内に車両用部材2Aを配設するとともに、この車両用部材2Aを、車両衝突時の衝撃荷重Fを伝達する荷重伝達部材として用いる点が実施形態1と異なっている。この車両用部材2Aは、後述するように、荷重作用部の軸方向Hが左右方向を向いた状態でサイドドアDM内に配置される。
【0045】
車両用部材2Aは、被覆部材4と木材6を有している。被覆部材4は、四角柱形状の荷重作用部10と、荷重作用部10の外周面(本体側面)から外方に延出するフランジ形状の取付け部12を有し、取付け部12は、荷重作用部10の軸方向Hにおける中央(
図9で左右方向における中央)に設けられている。この荷重作用部10の左端は、上側が庇状に左方に突出しており、後述するインパクトビーム8dの上方側にあてがっておくことができる。また木材6は、荷重作用部10内に配置された状態においては、実施形態1と同様に図示しない年輪の軸心方向が荷重作用部の軸方向Hとほぼ一致するように配置されている。そして車両用部材2を荷重伝達部材として用いる場合には、荷重伝達性能に優れる高密度の木材6を用いることが好ましく、例えば密度0.6g/cm
3〜1.0g/cm
3の木材6を好適に用いることができる。なお相対的に低密度の木材6を用いる場合には、木材6の横断面積を大きくして高強度とすることで所望の荷重伝達性能を得ることができる。
【0046】
またサイドドアDMは、車体の後部左面に設けられており、車外側のアウタパネル2dと、車内側のインナパネル4dと、車室側のドアトリム6dを備えている。これらアウタパネル2dとインナパネル4dとドアトリム6dはそれぞれ左右方向に適宜の間隔で離間しており、アウタパネル2dとインナパネル4dの間には、インパクトビーム8dが取付けられている。このインパクトビーム8dは前後方向に延長するパイプ材であり、図示しない車室内の座席を前後に横断するように配置されてサイドドアDMに固定されている。またドアトリム6dの内側には、リインフォース10dが設けられており、このリインフォース10dは、図示しない座席に対応する位置に配置されている。
【0047】
本実施形態では、車両用部材2Aを、荷重作用部の軸方向Hが車両取付け時の「荷重の入力方向」である左右方向に一致するようにサイドドアDM内に配設する。すなわち荷重作用部10を、荷重作用部の軸方向Hを左右方向に向けながらインナパネル4dに設けられている貫通孔に挿通して、インパクトビーム8dとリインフォース10dの間に配置する。この状態で、本発明の被取付け部材に相当するインナパネル4dに設けられている平板状の取付け部位5dに、車両用部材2Aの取付け部12を締結固定する。そして衝突体(図示省略)がサイドドアDMのアウタパネル2dに衝突した場合には、インパクトビーム8dによってサイドドアDMの車室内側方向への変形を抑制できると共に、荷重伝達部材としての車両用部材2Aによって衝突荷重をドアトリム6d内側のリインフォース10dに伝達できるようになっている。そして本実施形態においても、木材6が、年輪の軸心方向が荷重作用部の軸方向Hに沿うように適切に配置されているため、衝撃荷重Fを十分に受け止めてこの衝撃荷重Fを適切に伝達することができる。
【0048】
以下、本実施形態を試験例に基づいて説明するが、本発明は試験例に限定されない。各実施例では、使用目的別に、後述の[表1]に示す構成の四角柱形状の木材を使用し、木材の含水率は概ね10%に設定した。また木材の密度と圧縮荷重を算出する方法として、「JISZ2101:2009 木材の試験方法」を用いた。また
図5に示す射出成形機を用いて、上述の第一工程と第二工程によって被覆部材(樹脂:ポリプロピレン、荷重作用部の板厚:1.5mm、取付け部の板厚:4mm)を成形しつつ各木材に一体化して、各実施例の車両用部材を製造した。このとき成形材料を加熱するシリンダの設定温度を220℃に設定し、各射出口の射出圧を20MPaに設定し、保圧を20MPaに設定し、冷却時間を45秒に設定した。
【0049】
[荷重伝達部材の衝撃試験]
本試験では、実施例2と実施例3の車両用部材に、荷重作用部の軸方向から80kgのインパクターを時速4.4kmでぶつけた。そして各車両用部材の破壊の有無を目視で確認した。このとき車両用部材の外形形状がほとんど変化せず木材の圧壊がないと判断した場合には、車両用部材の破壊がないとして「○」と評価した。また車両用部材に潰れが発生して木材が圧壊していると判断した場合には、車両用部材が破壊されているとして「×」と評価した。
【0052】
[結果及び考察]
実施例1の車両用部材では、木材の横断面積を適切に設定することにより、衝撃吸収部材として適切な圧縮荷重(必要荷重±10kNの圧縮荷重)を得ることができた。この結果は、所望の形状を備えた木材の破損を極力回避しつつ、射出成形機のキャビティ内において木材を包むように樹脂を被覆して成形したために得られたものであると考えられる。なお車両用部材の圧縮荷重が必要荷重を大きく超えてしまうと、後ろにある部材(例えば
図2に示すサイドメンバ4r,6r)が変形してしまうので、衝撃吸収部材としての役割を果たせなくなってしまう。このため衝撃吸収部材として用いる車両用部材では、圧縮荷重が必要荷重に近い値を取るように横断面積を決めておく必要がある。
【0053】
また実施例2及び実施例3の車両用部材においても、木材の横断面積を適切に設定することにより、荷重伝達部材として適切な圧縮荷重(必要荷重を大きく超える圧縮荷重)を得ることができた。すなわち実施例2及び実施例3の車両用部材では、車両用部材自身が壊れることなく、他部材(例えば
図9に示すリインフォース10d)へ荷重を伝播させることが役割であるため、必要荷重に対して大きな圧縮荷重がでるように木材の横断面積を決める必要がある。そして実施例2及び実施例3の車両用部材は、いずれも衝撃試験の評価が「○」であったため、荷重伝達部材として好適に使用可能であることが実証された。
【0054】
本実施形態の車両用部材の製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、射出成形機30の構成(形状,寸法,型閉じ方向,構成型など)を例示したが、射出成形機の構成を限定する趣旨ではない。例えばコア型とキャビ型は、上下方向のほか、左右方向や前後方向に閉じ合わせることができる。また被覆部材の形状に合わせて、コア型とキャビ型と中間型を閉じ合わせる構成の射出成形機を用いることができる。
【0055】
また本実施形態では、保持ピン33の構成(形状,寸法,配設数,配設位置など)を例示したが、保持ピンの構成を限定する趣旨ではない。例えば保持ピンは、射出成形機を構成する各種の型(コア型とキャビ型等)の少なくとも一つの型に設けることができる。またコア型とキャビ型の少なくとも一方の型に複数又は単数の保持ピンを設けることができ、補助保持ピンを単数又は3以上設けることもできる。また保持ピンは、木材を保持可能であればよく、必ずしも周面をテーパ状とする必要はない。例えば保持ピンは、円錐状のほか、角錐状や円柱状や角柱状などの各種の形状を取ることができ、例えば上方視で十字状をなすような板形状とすることもできる。また保持ピン(補助保持ピン)の先端部を尖らせるなどして木材に刺通すこともでき、この場合には、木材の挿嵌孔を省略することもできる。そして複数の保持ピンを設ける場合には、最も木材の保持性能の高い保持ピンを選択し、この保持ピンの突出方向に応じて各射出口を設けることができる。なお保持ピンの突出方向が左右方向の場合には、木材の右方と左方にそれぞれ射出口を設け、突出方向が前後方向の場合には、木材の前方と後方にそれぞれ射出口を設けることができる。
【0056】
また本実施形態では、第一射出口41a〜41dと第二射出口42a,42bの構成(形状,寸法,配設数,配設位置など)を例示したが、各射出口の構成を限定する趣旨ではない。第一射出口と第二射出口の配置位置は、キャビティ内の木材の外周より外側にオフセットした位置に配置されていればよい。例えば第一射出口(複数の第一射出口を設ける場合にはその少なくとも一つ)を各奥側周面部分に設け、木材の外周より外側にオフセットした位置(例えば木材の一端面の上方位置)に配置することができる。また同様に第二射出口を開口側周面部分に設け、木材の外周より外側にオフセットした位置(例えば木材の他端面の下方位置)に配置することができる。そして第一の成形材料と第二の成形材料は、木材の側面における適宜の位置で合流させることができ、必ずしも上下方向における側面の中央で合流させる必要はない。また各射出口の少なくとも一つを、コア型に設けることができる。また第二射出口を、第一射出口よりも多く設置することもできる。また各射出口は、対応する面で開口させる構成のほか、対応する面から突出して配置されていてもよく、対応する面に設けた孔部内に配置されていてもよい。
【0057】
また本実施形態では、突出ピンに対する木材の過度の浮き沈みを極力回避する構成を例示したが、突出ピンに対する木材の過度の傾倒を極力回避する構成とすることもできる。例えば
図7に示す射出成形機を横向きに配置して、左右方向に突出した突出ピンに木材を挿嵌しておく。この状態でキャビティ内に成形材料を射出し、第一射出口及び第二射出口から射出した成形材料を、本発明の「木材の側面」に相当する一端面と他端面で合流させる。こうすることでキャビティ内における保持ピンに対する木材の過度の傾倒を極力回避することができる。
【0058】
また本実施形態では、車両用部材2,2Aの構成(形状,寸法,配設位置,配設数,使用目的など)を例示したが、同部材の構成を限定する趣旨ではない。例えば本実施形態の車両用部材の製造方法は、衝撃吸収部材や荷重伝達部材として使用される車両用部材のほか、各種の目的(例えば意匠性向上のため)に使用される車両用部材の製造に用いることができる。そして車両用部材の配設箇所として、バンパリインフォースとサイドメンバの間やサイドドアの内部を例示したが、車両用部材は、その使用目的に応じて、車両前部、車両側部、車両後部、車両裏面、車室内部などの各種の車両部分に配設できる。
【0059】
また本実施形態では、本体部としての四角柱形状の荷重作用部10とフランジ形状の取付け部12を例示したが、これら各部の構成(形状,寸法,形成箇所など)を限定する趣旨ではない。例えば本体部は、車両用部材の使用目的と木材の外形形状に応じて、四角柱形状のほかにも各種の柱形状を取り得るとともに、必ずしも木材の外形形状に倣った形状とする必要はなく、また柱形状以外の形状も取り得る。また取付け部は、フランジ形状のほか、縦断面が略U字状やL字状等の板状などの各種の形状を取り得る。また取付け部を、荷重作用部の外周面から適宜の方向(例えばW方向とL方向の少なくとも一つの方向)に延出させておくことができる。さらにフランジ形状の取付け部を、荷重作用部の軸方向に向けて延出させておくことができ、この場合の荷重作用部の外周面として、入力端面と、入力端部と反対側の底面を例示できる。また被取付け部材に対する取付け部の取付け手法は、締結のほか、接着や係止や挿嵌などの各種の手法を取り得る。例えば取付け部にJ字状のフック部位や矢尻状の突出部位を設け、このフック部位を被取付け部材に係止したり、突出部位を被取付け部材の孔部に挿嵌したりすることができる。また取付け部は、荷重作用部の適宜の位置に設けることができ、例えば一対の取付け部の間に荷重作用部を設けることもできる。また荷重作用部の少なくとも一部の厚み寸法が取付け部の厚み寸法よりも大きくなっていてもよい。
【0060】
また本実施形態では、木材6の構成(形状,寸法,配置位置,配置数など)を例示したが、木材の構成を限定する趣旨ではない。例えば木材は、車両用部材の使用目的に応じて、四角柱形状のほか、各種の柱形状や筒形状や板形状などの各種形状を取り得る。すなわち木材の所望の形状は、車両用部材の使用目的に応じて適宜設定することができる。また複数の木材を、荷重作用部内に配置しておくことができる。また荷重作用部内における木材の年輪の軸心方向は、車両取付け時の荷重の入力方向に合わせて適宜設定することができ、必ずしも荷重作用部の軸方向に合わせて設定する必要はない。
【0061】
また車両用部材の構成や配設位置に応じて、被取付け部材を適宜設定することができる。ここで被取付け部材に、取付け部裏面の貫通孔(保持ピンが原因の成形痕である貫通孔)に挿通又は挿入可能な位置決め凸部を設けておくことができる。そして車両用部材と被取付け部材の締結等に先立って、位置決め凸部を貫通孔に挿通することにより、被取付け部材に対して車両用部材を適切に位置決めしておくことができる。この場合には、保持ピンと補助保持ピンなどで車両用部材に複数の貫通孔を設けておき、被取付け部材に対応する複数の位置決め凸部を設けることで、被取付け部材に対して車両用部材を更に適切に位置決めしておくことができる。