(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動制御部は、前記先端軸駆動機構の駆動により生じる前記多関節ロボットの振動を打ち消す方向に、前記多関節ロボットを駆動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶接装置。
前記駆動制御部は、前記先端軸駆動機構の駆動により生じる前記多関節ロボットの振動を打ち消す方向に、前記多関節ロボットを駆動することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の溶接装置の制御方法。
前記エンドエフェクタは、溶接トーチであって、先端軸に消耗式電極の先端部が配置されることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載の溶接装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<溶接装置の全体構成>
図1は溶接装置100の概略的な全体構成図である。
本構成の溶接装置100は、複数の駆動軸を有する多関節ロボット11と、制御装置13と、溶接電源15と、制御装置13に接続される教示コントローラ17とを備える。多関節ロボット11の最先端駆動軸19には、先端軸駆動機構としての2軸ウィーバー21が設けられる。この2軸ウィーバー21は、エンドエフェクタである溶接トーチ23を含んで構成される。
【0015】
多関節ロボット11の最先端駆動軸19と溶接トーチ23との間に設けられた2軸ウィーバー21は、詳細を後述する溶接トーチ23の先端軸を、最先端駆動軸19に対して相対移動させる第1駆動部と第2駆動部とを有する。これら第1軸駆動部と第2軸駆動部の少なくとも一方を駆動することで、溶接トーチ23のウィービング動作が行われる。
【0016】
制御装置13は、教示コントローラ17から入力された教示データに基づいて、多関節ロボット11と2軸ウィーバー21を駆動して、溶接トーチ23の先端軸を移動させる。この制御装置13は、図示はしないが、CPUがROM、RAM、ハードディスク等に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより、溶接装置100の各部の制御が行われる。
【0017】
溶接トーチ23の先端軸には、フラックス入りワイヤ、ソリッドワイヤ等の消耗式電極である溶接ワイヤ25が、制御装置13からの指令により、図示しないワイヤ送給装置から繰り出されることで供給される。また、溶接電源15は、図示しないパワーケーブルにより溶接トーチ23、及びワークWの母材と接続され、制御装置13からの指令によって、パワーケーブルを通じて各部に溶接電流が供給される。また、溶接トーチ23の内部には、図示しないガス供給部からシールドガスが供給される。
【0018】
制御装置13は、溶接ワイヤ25の先端部とワークWとの間に溶接電源15からの溶接電流を供給して、シールドガス雰囲気にされた溶接トーチ23の先端軸にアークを発生させる。そして、アークが発生した溶接トーチ23を、予め教示した軌跡通りに移動させる。これによりワークWが溶接される。
【0019】
次に、上記構成の溶接装置100における各部の構成について、更に詳細に説明する。
<多関節ロボット>
図2は多関節ロボットの一例を示す外観斜視図である。
本構成の溶接装置100に用いる多関節ロボット11は、例えば、一般的な6つの駆動軸を有する6軸ロボットが用いられる。図示例では、回転方向J1〜J6に駆動可能な多関節ロボットを示している。また、6軸ロボットの以外にも、例えば7軸ロボットや、他の多軸ロボットであってもよい。以下、多関節ロボットを「ロボット」と略称する。
【0020】
ロボット11の回転方向J6に駆動する最先端駆動軸19と、溶接トーチ23との間には、上記の2軸ウィーバー21が取り付けられる。ロボット11の回転方向J1〜J6に駆動する各駆動軸は、それぞれ図示しないサーボモータ等の駆動モータにより駆動される。これら駆動モータには、それぞれ
図1に示す通信線27を通じて制御装置13からの駆動信号が入力される。
【0021】
<2軸ウィーバー>
図3は
図2に示す2軸ウィーバー21の拡大図である。
一例として示す2軸ウィーバー21は、溶接トーチ23の先端軸23aを、先端軸23aに直交する平面Pa内において、第1軸方向であるX軸方向に駆動する第1軸駆動部31と、先端軸23a及びX方向に直交する第2軸方向であるY方向に駆動する第2軸駆動部33とを有する。つまり、2軸ウィーバー21は、互いに直交するX,Y方向に溶接トーチ23を移動自在に支持する。
【0022】
第1軸駆動部31と第2軸駆動部33は、溶接トーチ23の先端軸23aの基準位置を中心として、平面Pa上で互いに直交する2方向に溶接トーチ23の先端軸23aを駆動する。第1軸駆動部31は、第2軸駆動部33をX方向となる移動方向J7に移動させる直動スライドユニットを有する。第2軸駆動部33は、溶接トーチ23を支持するトーチ基部35を、軸37を中心に回転方向J8へ回転自在に支持する回転ユニットを有する。これらの直動スライドユニットと回転ユニットは、それぞれ図示しないサーボモータ等の駆動モータにより駆動される。
【0023】
第1軸駆動部31と第2軸駆動部33の各駆動用モータには、ロボット11の各駆動軸の場合と同様に、J7の直動と、J8の回転動の駆動信号が、それぞれ通信線27を通じて制御装置13から入力される。
【0024】
上記構成の2軸ウィーバー21は、X方向に関しては直動、Y方向に関しては回転動により移動させる構成であるが、これに限らない。例えば、X方向及びY方向を共に直動により移動させる構成としてもよく、X方向及びY方向を共に回転動により移動させる構成としてもよい。回転動により移動させる構成は、装置の設計がしやすく、軸摺動部のシール性を容易に高められる。また、直動により移動させる構成は、トーチ先端が大きく移動してもワークからの高さがずれないため、ウィービング動作により溶接性状にばらつきが生じにくくなる。
【0025】
更に、溶接トーチ23には、図示しないガス供給装置からシールドガスが供給され、溶接時における溶接トーチ23の大気の巻き込みが防止される。また、溶接トーチ23には、図示しないワイヤ送給装置から溶接ワイヤ25が送給される。なお、最先端駆動軸19にはアーク点調整棒39が着脱自在に装着される。このアーク点調整棒39は、その先端部39aが溶接位置の位置合わせ等に用いられ、溶接時には取り外される。
【0026】
<制御装置の構成と作用>
次に、制御装置の構成と、制御装置によるウィービング動作を伴った溶接方法について説明する。
図1に示す制御装置13は、教示コントローラ17から入力された入力情報に基づいて、ロボット11及び2軸ウィーバー21を駆動する駆動制御部41を備える。以下、駆動制御部41によるウィービング動作を伴った溶接トーチ23の移動動作について説明する。なお、制御装置13は、駆動制御部41の他にも、溶接トーチ23に溶接ワイヤ25を送給するワイヤ送給制御部、溶接トーチ23にシールドガスを供給するガス供給制御部、溶接電源15からの溶接電流を制御する電流制御部等を備えるが、ここでは説明を省略する。
【0027】
図4は駆動制御部41によってロボット11及び2軸ウィーバー21を駆動する制御ブロック図である。
駆動制御部41は、ロボット11が有する駆動方向J1〜J6の駆動軸に対する各駆動モータ、及び2軸ウィーバー21の第1軸駆動部31、第2軸駆動部33の各駆動モータに駆動信号を出力して、溶接トーチ23の位置と姿勢を変更する。
【0028】
そのため、駆動制御部41は、溶接トーチ23の先端軸の移動軌跡を演算により求める移動軌跡演算部43と、ロボット11及び2軸ウィーバー21を駆動する駆動部44とを備える。駆動部44は、ロボット11を駆動して溶接トーチ23をウィービング動作を含まない溶接ラインに沿って移動させる主方向駆動部45と、2軸ウィーバー21を駆動して溶接トーチ23をウィービング動作させるウィービング駆動部47と、を含んで構成される。また、駆動制御部41は、
図1に示す教示コントローラ17により入力された溶接条件等の教示データを読み込む入出力部49と、読み込んだ教示データや演算した移動軌跡を記憶する記憶部51と、を更に備える。
【0029】
教示コントローラ17は、
図1に示す通信線55を通じて駆動制御部41と接続される。オペレータは、教示コントローラ17を操作して、ロボット11と2軸ウィーバー21を駆動し、溶接トーチ23の先端軸を溶接ポイントとなる位置にセットする。このとき、
図3に示すように、アーク点調整棒39を最先端駆動軸19に装着することで溶接ポイントが容易に確認可能となる。
【0030】
そして、オペレータが、所望の溶接ラインに沿った複数点の溶接ポイントを登録することで、溶接トーチ23の動作経路が決定される。つまり、教示コントローラ17を用いてロボット11を動作させ、溶接ラインをPTP制御(Point-to-point control)により決定する。教示コントローラ17には、上記のようなオペレータからの入力によって、溶接ラインの位置情報、移動速度、ウィービング動作の周期等の情報を含む教示データが生成される。この生成された教示データは、教示コントローラ17から駆動制御部41に送信され、入出力部49を介して記憶部51に記憶される。
【0031】
移動軌跡演算部43は、記憶部51の教示データを参照して、溶接トーチ23の先端軸の動作経路を複数の駆動ステップに分割する。ここで、駆動ステップとは、ロボット11や2軸ウィーバー21を同期制御する駆動タイミングの間隔であるが、その他にも、任意に定めたタイミングであってもよい。
【0032】
そして、移動軌跡演算部43は、上記の動作経路にウィービング動作による移動分を重畳させることで、実際の溶接時における溶接トーチ23の先端軸の移動軌跡を求める。ウィービング動作による移動分は、例えば
図5に示すように、所定の一定間隔tの駆動ステップ毎に、シフト量としてΔSが設定される。図示例では、サイン波形のウィービング動作を例示している。ウィービング移動分ΔSは、所望のウィービング動作の1周期を適宜な間隔で分割し、この分割した1間隔を単位駆動ステップとして、各駆動ステップにおけるウィービング動作の大きさを演算により求めて設定される。
【0033】
本構成の溶接装置100においては、溶接トーチ23のウィービング動作を形成するウィービング移動分ΔSに関しては、2軸ウィーバー21を駆動し、溶接ラインに沿った主方向移動分に関してはロボット11を駆動して溶接トーチ23を移動させる。この駆動によれば、溶接トーチ23をウィービング動作させながら溶接ラインに沿って溶接する場合に、ウィービング動作を2軸ウィーバー21のみで行うことになる。よって、ロボット11の駆動軸には、上記のウィービング周波数の振動が重畳されず、ロボット11の駆動によりウィービング動作させる場合と比較して共振現象が生じにくくなる。その結果、ロボット11の固有振動数に制限されずに様々なウィービングパターンの動作が可能となり、高精度、且つ、高周波数のウィービング制御が行える。
【0034】
ところで、溶接ラインに沿って溶接トーチ23を移動させると、溶接場所によってはウィービング動作の振幅のうち、少なくとも一部の領域で2軸ウィーバー21による溶接トーチ23の移動が不能になる場合が起こり得る。
【0035】
図6は溶接トーチ23がトーチ周囲の部材と干渉する場合の一例を示す説明図である。ワークWの開先61の幅Ws内において溶接トーチ23をウィービング動作させる場合、例えば、
図3に示す2軸ウィーバー21の第1軸駆動部31を駆動して溶接トーチ23をウィービングさせると、開先61に隣接する壁部63に溶接トーチ23が干渉することになる。
【0036】
その場合には、溶接トーチ23のウィービング動作の一部を、2軸ウィーバー21に代えてロボット11の駆動軸を駆動することで、壁部63との干渉を回避させる。
【0037】
つまり、
図5に示すように、主移動方向への主方向移動分ΔLと、ウィービング動作となる主移動方向に直交する方向へのウィービング移動分ΔSとを合成した移動軌跡Ptに沿って溶接トーチ23を移動させる際、移動軌跡Ptの途中に干渉発生領域65が存在することがある。その場合、2軸ウィーバー21の駆動による移動分が干渉発生領域65に入らないようにする。
【0038】
移動軌跡Ptが干渉発生領域65内に到達した場合、2軸ウィーバー21を、干渉発生領域65に入らない限界のシフト量を移動限界ΔS1として駆動する。そして、移動軌跡Ptの移動限界ΔS1を超えたシフト量を移動補完量ΔS2として、この移動補完量ΔS2をロボット11の駆動軸を駆動することで、溶接トーチ23の姿勢を変更しながら移動させる。
【0039】
上記の駆動によれば、溶接トーチ23がトーチ周囲の部材と干渉する領域においては、2軸ウィーバー21とロボット11の駆動軸とを協働させることで、溶接トーチ23の姿勢が変更され、他の部材との干渉が回避される。よって、干渉発生領域65においても、連続したウィービング動作が行える。
【0040】
具体的には、移動軌跡演算部43により求めた移動軌跡におけるウィービング移動分ΔSが、溶接トーチ23の干渉発生領域65を含まない2軸ウィーバー21による移動可能範囲にあるかを判定する。ウィービング移動分ΔSが移動可能範囲にある場合には、ウィービング駆動部47は、2軸ウィーバー21へウィービング移動分ΔSに応じた駆動信号を出力して、溶接トーチ23の先端軸をウィービング方向に移動させる。また、主方向駆動部45は、ロボット11の駆動軸に、主方向移動分ΔLに応じた駆動信号を出力して、溶接トーチ23の先端軸を溶接ラインに沿って移動させる。これにより、溶接トーチ23は、ウィービング方向と溶接ライン方向との移動が合成された移動軌跡Ptに沿って移動する。
【0041】
一方、ウィービング移動分ΔSが移動可能範囲を超える場合には、ウィービング駆動部47は、ウィービング移動分ΔSのうち移動可能範囲の移動限界ΔS1を超えた移動補完量ΔS2を求め、2軸ウィーバー21に、移動限界ΔS1まで移動させる駆動信号を出力する。これにより、溶接トーチ23の先端軸は、移動限界ΔS1まで移動する。これとともに、ウィービング駆動部47は、ロボット11が有する少なくともいずれかの駆動軸を、移動補完量ΔS2に応じて駆動するためのウィービング駆動信号を主方向駆動部45に出力する。
【0042】
主方向駆動部45は、入力されたウィービング駆動信号に基づいて、溶接トーチ23の先端軸をウィービング動作させる動作と、ロボット11の駆動軸を主方向移動分ΔLに応じて移動させる動作と、を統合した合成駆動信号をロボット11に出力する。つまり、ロボット11は、上記のウィービング駆動部47からのウィービング駆動信号による駆動と、主方向移動分ΔLの駆動とを統合した合成駆動信号により駆動される。その結果、溶接トーチ23は、ウィービング方向と溶接ライン方向との移動が合成された移動軌跡Ptに沿って移動する。
【0043】
<ウィービング制御の一例>
次に、上記の基本手順によって、溶接トーチ23の先端軸をウィービング動作させながら溶接ラインに沿って移動させるウィービング制御の一例について、
図7に基づいて説明する。
【0044】
図7はウィービング制御方法の手順を示すフローチャートである。
まず、ワークの溶接開始点と溶接終了点までのウィービングを含まない溶接ラインを、前述した教示コントローラ17を用いて決定する。決定した溶接ラインの全移動パスを、駆動ステップ毎に分割する。そして、分割された単位駆動ステップ当たりの溶接ラインに沿った主方向への移動回数、及び主方向移動量を計算する(S1)。なお、移動回数や移動距離は、予め教示したポイント(位置)、ウィービング方法、溶接トーチ23の移動速度や移動周期等の情報を基にして求める。
【0045】
また、ウィービング1周期の分割点と、各分割点におけるシフト量、即ち、
図5に示されるウィービング移動分ΔSを計算する(S2)。
【0046】
次に、S1で求めた主方向移動量と、S2で求めたシフト量から、ウィービング動作を含む溶接トーチ23の移動軌跡を演算により求める(S3)。この移動軌跡の演算では、溶接開始点から溶接終了点までの全溶接ラインに対して、駆動ステップ毎に主方向移動量とシフト量とが求められる。
【0047】
駆動ステップ毎に求めたシフト量から、2軸ウィーバー21を駆動して溶接トーチ23を移動させる場合の、移動目標位置を求める(S4)。この移動目標位置は、ロボット11の各駆動軸を駆動させずに、2軸ウィーバー21の駆動のみで移動させた場合の、2軸ウィーバー21の移動目標位置又は移動目標角度である。
【0048】
そして、求めた移動目標位置が、2軸ウィーバー21の移動可能範囲に含まれているかを判定する(S5)。移動目標位置が2軸ウィーバー21の駆動域でカバーできる場合は、移動目標位置まで2軸ウィーバー21を駆動する(S6)。
【0049】
一方、求めた移動目標位置が、2軸ウィーバー21の移動可能範囲を超えている場合は、2軸ウィーバー21の移動可能範囲を超えた部分を
図5に示される移動補完量ΔS2として算出する(S7)。この移動補完量をロボット11の駆動軸で移動させるための、ロボット11の移動目標位置を求める。求めた移動補完量を補うための移動目標位置と、ロボット11の駆動軸が主方向移動するための移動目標位置とを合成した、ロボット11の合成移動目標位置を求める(S8)。そして、求めた合成移動目標位置にロボット11を駆動する。また、2軸ウィーバー21は、移動限界まで駆動する(S9)。これにより、溶接トーチ23は、溶接ラインに沿った主方向への移動と、ウィービング動作のための移動が同時に行われ、移動軌跡に沿った移動先へ送られる。
【0050】
以上のS3〜S6又はS9までの処理を、最終地点である溶接終了点まで繰り返す(S10)。このウィービング制御によって、複雑なウィービングパターンであっても、周囲部材と干渉を生じることなく行える。特に、1〜10Hz、振幅2〜10mmのサイン波形を高精度に実現できる。また、10Hz以上の高い周波数のウィービング動作であっても高精度で実現可能となる。
【0051】
図8(A)、(B),(C)は各種のウィービングパターンを示す模式図である。
上記のウィービングパターンは、
図8(A)に示すサイン波形であったが、これに限らない。例えば、
図8(B)に示すループ状、
図8(C)に示す三角波状、等の各種のパターンを採用できる。ウィービングパターンをループ状や三角波状とする場合には、2軸ウィーバー21の第1軸駆動部31と第2軸駆動部33とを同時に駆動すればよい。いずれの場合でも、ウィービング動作は基本的に2軸ウィーバー21だけで行い、ロボット11の各駆動軸は、2軸ウィーバー21だけではウィービング動作が行えない場合のみ、補助的にウィービング動作に用いる。
【0052】
<ロボット11の他の駆動例>
上記のウィービング制御においては、ロボット11の各駆動軸は、主に主方向移動のために駆動される。その際、ロボット11の各駆動軸を、2軸ウィーバー21がウィービング動作する際に生じる振動を打ち消す方向に動作させることが好ましい。
【0053】
例えば、2軸ウィーバー21が一方向に往復運動される場合に、この往復運動の方向変換するタイミングで、ロボット11の駆動軸を発生する慣性力の逆向きに駆動する。すると、2軸ウィーバー21の往復運動により発生する慣性力が相殺され、ロボット11本体の振動が抑制される。これにより、精度の良いウィービング動作が可能となる。
【0054】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
例えば、先端軸駆動機構は、2軸ウィーバーに限らず、1軸ウィーバーであってもよく、回転駆動型のウィーバーであってもよい。更に、他の駆動軸を備えた3軸以上の駆動軸を有するウィーバーであってもよい。
また、上記の溶接装置は、エンドエフェクタとして溶接トーチを備えた構成を例示したが、これに限らない。例えば、エンドエフェクタとしてスラグを除去するスラグチッパー備えたスラグ除去装置、ガウジングトーチを備えたガウジング装置、レーザーセンサを備えた計測装置であってもよい。更に、レーザー溶接用トーチを備えたレーザ溶接装置、スポット溶接用ガンを備えたスポット溶接装置であってもよい。
【0055】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 複数の駆動軸を有する多関節ロボットと、
前記多関節ロボットに支持されるエンドエフェクタと、
前記多関節ロボットの最先端駆動軸と前記エンドエフェクタとの間に設けられ、前記エンドエフェクタをウィービング動作させる先端軸駆動機構と、
前記多関節ロボット及び前記先端軸駆動機構を駆動する駆動制御部と、
を備え、
前記先端軸駆動機構は、前記エンドエフェクタの先端軸に直交する第1軸方向に駆動する第1軸駆動部と、前記先端軸及び前記第1軸方向に直交する第2軸方向に駆動する第2軸駆動部とを有することを特徴とする溶接装置。
この溶接装置によれば、エンドエフェクタをウィービング動作させながら溶接ラインに沿って溶接する場合に、ウィービング動作を先端軸駆動機構のみで行える。よって、多関節ロボットの駆動軸には、上記のウィービング周波数の振動が重畳されず、多関節ロボットの駆動によりウィービング動作させる場合と比較して共振現象が生じにくくなる。その結果、多関節ロボットの固有振動数に制限されずに様々なウィービングパターンの動作が可能となり、高精度、且つ、高周波数のウィービング制御が行える。
【0056】
(2) 複数の駆動軸を有する多関節ロボットと、
前記多関節ロボットに支持されるエンドエフェクタと、
前記多関節ロボットの最先端駆動軸と前記エンドエフェクタとの間に設けられ、前記エンドエフェクタをウィービング動作させる先端軸駆動機構と、
前記多関節ロボット及び前記先端軸駆動機構を駆動する駆動制御部と、
を備え、
前記駆動制御部は、
前記多関節ロボットを駆動して、前記エンドエフェクタを溶接ラインに沿って移動させる主方向駆動部と、
前記先端軸駆動機構によるウィービング動作が前記エンドエフェクタの移動可能範囲である場合には、前記先端軸駆動機構を駆動して前記ウィービング動作を行い、前記先端軸駆動機構によるウィービング動作が前記移動可能範囲を超える場合には、前記ウィービング動作のウィービング移動分のうち前記移動可能範囲の移動限界を超える移動補完量を求め、前記先端軸駆動機構を前記移動限界まで駆動するとともに、前記多関節ロボットが有する少なくともいずれかの駆動軸を前記移動補完量に応じて駆動することで、前記ウィービング動作を行うウィービング駆動部と、
を有することを特徴とする溶接装置。
この溶接装置によれば、エンドエフェクタが周囲の部材と干渉する移動可能範囲外の領域においては、先端軸駆動機構と多関節ロボットの駆動軸とを協働させることで、エンドエフェクタの姿勢が変更され、エンドエフェクタと他の部材との干渉が回避される。よって、エンドエフェクタの移動可能範囲外の干渉が発生する領域においても、連続したウィービング動作が行える。
【0057】
(3) 前記駆動制御部は、前記先端軸駆動機構の駆動により生じる前記多関節ロボットの振動を打ち消す方向に、前記多関節ロボットを駆動することを特徴とする(1)又は(2)に記載の溶接装置。
この溶接装置によれば、先端軸駆動機構の往復運動により発生する慣性力が相殺され、多関節ロボット本体の振動が抑制される。これにより、精度の良いウィービング動作が可能となる。
【0058】
(4) 前記エンドエフェクタは、溶接トーチであって、先端軸に消耗式電極の先端部が配置されることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の溶接装置。
この溶接装置によれば、MIG溶接、MAG溶接等のアーク溶接により、良好なウィービングビードが得られる。
【0059】
(5) 複数の駆動軸を有する多関節ロボットと、
前記多関節ロボットに支持されるエンドエフェクタと、
前記多関節ロボットの最先端駆動軸と前記エンドエフェクタとの間に設けられ、前記エンドエフェクタをウィービング動作させる先端軸駆動機構と、
前記多関節ロボット及び前記先端軸駆動機構を駆動する駆動制御部と、
を備える溶接装置を用い、
先端軸駆動機構を駆動して、前記エンドエフェクタの先端軸を、前記先端軸に直交する第1軸方向、及び、前記先端軸と前記第1軸方向に直交する第2軸方向に移動させることを特徴とする溶接装置の制御方法。
(6) 複数の駆動軸を有する多関節ロボットと、
前記多関節ロボットに支持されるエンドエフェクタと、
前記多関節ロボットの最先端駆動軸と前記エンドエフェクタとの間に設けられ、前記エンドエフェクタをウィービング動作させる先端軸駆動機構と、
前記多関節ロボット及び前記先端軸駆動機構を駆動する駆動制御部と、
を備える溶接装置を用い、
前記多関節ロボットと前記先端軸駆動機構とを駆動して、前記エンドエフェクタを溶接ラインに沿ってウィービング動作させる際に、
前記先端軸駆動機構によるウィービング動作が前記エンドエフェクタの移動可能範囲である場合には、前記先端軸駆動機構を駆動して前記ウィービング動作を行い、前記先端軸駆動機構によるウィービング動作が前記移動可能範囲を超える場合には、前記ウィービング動作のウィービング移動分のうち前記移動可能範囲の移動限界を超える移動補完量を求め、前記先端軸駆動機構を前記移動限界まで駆動するとともに、前記多関節ロボットが有する少なくともいずれかの駆動軸を前記移動補完量に応じて駆動することで、前記ウィービング動作を行うことを特徴とする溶接装置の制御方法。
【0060】
(7) 前記エンドエフェクタを溶接ラインに沿ってウィービング動作させる移動軌跡を演算して求め、
求めた移動軌跡を複数の駆動ステップに分割し、
前記駆動ステップ毎に前記エンドエフェクタを溶接ラインに沿って移動させる主方向移動分と、溶接ラインの各位置でウィービング動作を行うためのウィービング移動分とを求めておき、
前記駆動ステップ毎の前記ウィービング移動分が、前記先端軸駆動機構による前記エンドエフェクタの移動可能範囲にある場合には、前記先端軸駆動機構を当該駆動ステップの前記ウィービング移動分に応じて駆動し、前記ウィービング移動分が前記移動可能範囲を超える場合には、当該駆動ステップの前記ウィービング移動分のうち前記移動可能範囲の移動限界を超える移動補完量を求め、前記先端軸駆動機構を前記移動限界まで駆動するとともに、前記多関節ロボットが有する少なくともいずれかの駆動軸を前記移動補完量に応じて駆動することで、前記エンドエフェクタをウィービング動作させることを、
前記駆動ステップの数だけ繰り返すことを特徴とする(6)に記載の溶接装置の制御方法。
【0061】
(8) 前記駆動制御部は、前記先端軸駆動機構の駆動により生じる前記多関節ロボットの振動を打ち消す方向に、前記多関節ロボットを駆動することを特徴とする(5)乃至(7)のいずれか一つに記載の溶接装置の制御方法。
(9) 前記エンドエフェクタは、溶接トーチであって、先端軸に消耗式電極の先端部が配置されることを特徴とする(5)乃至(8)のいずれか一つに記載の溶接装置の制御方法。