特許第6771294号(P6771294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6771294両面丸編地及び両面丸編地を用いてなる衣料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771294
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】両面丸編地及び両面丸編地を用いてなる衣料
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/00 20060101AFI20201012BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20201012BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20201012BHJP
【FI】
   D04B1/00 A
   D04B1/00 B
   A41D13/00 115
   A41D31/00 502D
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-56204(P2016-56204)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-172054(P2017-172054A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597052053
【氏名又は名称】ミツカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100149560
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 雅哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161621
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 祥子
(72)【発明者】
【氏名】鈴間 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐平
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏志
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−256945(JP,A)
【文献】 実開昭61−024486(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/00−1/28
A41D 13/00
A41D 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維及び/又は短繊維を用いて編立てられる両面丸編地であって、
N本(N≧2)の糸で同一編み目を形成する多重ニット編み目を備え、該多重ニット編み目を形成する前記N本の糸のうち1本以上、(N−1)本以下の糸と前記多重ニット編み目を有する面においてタック編み目で連結し、前記多重ニット編み目を有する面と異なる面の側においてニット編み目を形成するリブ糸を有し、かつコーティング及びラミネートがされていないことを特徴とする両面丸編地。
【請求項2】
前記多重ニット編み目を有する面において、全編み目に対する前記多重ニット編み目の割合が20%〜100%の範囲内である請求項1に記載の両面丸編地。
【請求項3】
前記リブ糸が前記多重ニット編み目を形成する糸と異なる素材からなる請求項1又は2に記載の両面丸編地。
【請求項4】
前記両面丸編地の片面が起毛加工されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の両面丸編地。
【請求項5】
前記片面が起毛加工された両面丸編地の嵩高性が6.00cm/g以上である請求項4に記載の両面丸編地。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の両面丸編地を用いてなる衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面丸編地及び両面丸編地を用いてなる衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
高い伸縮性を有する丸編地は、衣料用の生地として広く使用されている。特に、生地にボリューム感があり、物性的に安定している両面丸編地(ダブル丸編地)は、スポーツウエアや作業着等の、体を動かすときに着用する衣料に適している。両面丸編地で厚みを出すためには、タック編み目を有するリブ糸で表裏をつなぐ必要がある。しかし、このような両面丸編地は、タック編み目を構成する裏面の糸がニット編み目の隙間から表面に出る構造となるため、スナッギングが起こりやすい。
【0003】
そこで、スナッギングを抑制するために表面層の編密度を高くし、編糸の平均繊度が30〜115デシテックスで、表面層側でタック編目、裏面層側でニット編目を形成するリブ糸を有し、全体の厚みが0.5〜1.2mmのダブル丸編地が開発されている(例えば、特許文献1)。しかし、このダブル丸編地は、高級感のある外観と強度の高さを両立させることを目的としている。このため、この素材は軽量化という点では十分ではなかった。
【0004】
一方、シングル丸編地は、軽量で伸縮性に富むという特長を有している。しかし、シングル丸編地は、洗濯や乾燥による寸法変化が大きく、型崩れを起こしやすいという問題点がある。そこで、寸法変化を小さく抑えて型崩れを防止するとともに、洗濯や乾燥の後も高い伸縮性を維持できるシングル丸編地が開発されている(例えば、特許文献2)。このようなシングル丸編地は、抗スナッグ性にも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−214408号公報
【特許文献2】特開2011−102458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された生地はあくまでもシングル丸編地であるため、嵩高性が低く膨らみ感に欠け、生地としての強度も十分ではない。このように、抗スナッグ性に優れるとともに、嵩高性、強度、及び軽量性を兼ね備えた生地を製造することは、極めて困難であった。
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであって、高い抗スナッグ性を有するとともに、嵩高性が大きく、生地としての膨らみ感と強度を備えた両面丸編地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る両面丸編地は、長繊維及び/又は短繊維を用いて編立てられる両面丸編地であって、N本(N≧2)の糸で同一編み目を形成する多重ニット編み目を備え、該多重ニット編み目を形成する前記N本の糸のうち1本以上、(N−1)本以下の糸と前記多重ニット編み目を有する面においてタック編み目で連結し、前記多重ニット編み目を有する面と異なる面の側においてニット編み目を形成するリブ糸を有し、かつコーティング及びラミネートがされていないことを特徴とする。
【0009】
前記多重ニット編み目を有する面において、全編み目に対する前記多重ニット編み目の割合が20%〜100%の範囲内であることが好ましい。
【0010】
前記リブ糸が前記多重ニット編み目を形成する糸と異なる素材からなることが好ましい。
【0011】
前記両面丸編地の片面が起毛加工されていることが好ましい。
【0012】
前記片面が起毛加工された両面丸編地の嵩高性が6.00cm/g以上であることが好ましい。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る衣料は、上述したいずれかの両面丸編地を用いてなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る両面丸編地は、多重ニット編み目を形成する糸のうち一部の糸にのみタック編み目が引っ掛かる生地組織を有している。このような両面丸編地は、タック編み目が表面に出ない構造となる。このため、タック編み目が表面において引っ掛かることがない。よって、本発明によれば、高い抗スナッグ性を有するとともに、嵩高性が大きく、生地としての膨らみ感と強度を備えた両面丸編地が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の実施例1、2及び3に係る両面丸編地の断面の概略を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態の実施例4及び5に係る両面丸編地の断面の概略を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態の実施例6に係る両面丸編地の断面の概略を示す模式図である。
図4】比較例1及び2の両面丸編地の断面の概略を示す模式図である。
図5】比較例3の両面丸編地の断面の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る両面丸編地は、N本(N≧2)の糸で同一編み目を形成する多重ニット編み目を備え、多重ニット編み目を形成する前記N本の糸のうち1本以上、(N−1)本以下の糸とタック編み目で連結したリブ糸を有し、かつコーティング及びラミネートがされていない両面丸編地である。
【0018】
より具体的には、本実施形態の両面丸編地は、例えば、多重ニット編み目として二重編み目を有し、二重編み目のうち片方にのみタック編み目が引っ掛かる構造を有している。これによって、タック編み目が表面に出ない両面丸編地とすることができ、タック編み目が表面において引っ掛かることがない。この結果、スナッギングが起こりにくくなり、高い抗スナッグ性を有する編地となる。また、前記編構造とすることで、及び、生地にコーティングやラミネート加工を施さないことで嵩高性が大きくなり、膨らみ感と強度を備えた両面丸編地となる。ここでいうコーティングとはナイフコーター等により生地の片面にポリウレタンやアクリル等の樹脂層を形成したものであり、ラミネートとは生地の片面にグラビアロール等により接着樹脂を塗布後、前記接着樹脂により生地とポリウレタン等の樹脂膜を貼り合わせたものをいう。
【0019】
両面丸編地は、多重ニット編み目を有する面において、全編み目に対する多重ニット編み目の割合が20%〜100%の範囲であることが好ましい。両面丸編地において、多重ニット編み目の割合が20%以上であることで、両面丸編地の厚みが出しやすくなる。さらに、全編み目に対する多重ニット編み目の割合が25%以上、50%以下であることがより好ましい。多重ニット編み目の割合が25%〜50%の範囲内であることにより、生産性がより向上する。
【0020】
また、本実施形態の両面丸編地は、リブ糸が多重ニット編み目を形成する糸とは異なる素材とすることができる。リブ糸は多重ニット編み目の全ての糸にはタック編み目で連結していないため、多重ニット編み目側から見た面にリブ糸が見えることはない。そのため、リブ糸として、多重ニット編み目を形成する糸の素材とは異なる素材からなる糸を使用することができる。
【0021】
例えば、多重ニット編み目にナイロンを使用し、リブ糸にカチオン可染ポリエステルを使用してそれぞれ別の色に染色した場合、多重ニット編み目面はナイロンの色、リブ糸面はカチオン可染ポリエステルの色しか見えない。このため、染め分けしてリバーシブル素材とすることができる。このように、リブ糸として多重ニット編み目を形成する糸とは異なる素材からなる糸を用いることで、バリエーションに富んだ両面丸編地とすることができる。
【0022】
両面丸編地には長繊維及び/又は短繊維が用いられるが、特に好ましくは合成繊維が用いられる。合成繊維としては、合成繊維マルチフィラメント糸条が用いられることが好ましく、合成繊維の中でも強度の高いポリエステル繊維やポリアミド繊維が用いられることが好ましい。また、表面層の糸条として合成繊維マルチフィラメント糸条が使用されることで、スナッギングやピリングが起こりにくくなる。この時、表面層に使用される繊維の単繊維繊度は、0.6〜8dtexの範囲内であることが好ましい。
【0023】
合成繊維マルチフィラメント糸条としては、製糸工程後、特に高次の糸加工がされていないストレートヤーンである生糸や、高次の糸加工がされた仮撚り加工糸や空気混繊糸、空気交絡糸等が使用される。特に、厚み(膨らみ感)を重視する場合は、仮撚り加工糸が使用されることが好ましい。
【0024】
表面層をなす編糸の平均繊度は、15〜350dtexの範囲内であることが好ましい。平均繊度が15dtexより細くなると引っ掛かりやすく耐久性の悪いものとなり、350dtexより太くなると衣料とした時に重くなってしまう。また、用途に応じて表面層をなす編糸の平均繊度は好ましく選択される。具体的には、アウター用途であれば70〜350dtex、ミドラー用途であれば40〜160dtex、インナー用途であれば15〜80dtexの範囲内であることが好ましい。その理由は、編糸は外側(アウター側)に用いられるほど耐久性が必要となるからである。
【0025】
さらに、両面丸編地に嵩高性を求める場合、リブ糸の繊度が、表面層をなす編糸のうちタック編み目が引っ掛かっていない糸の平均繊度以上であることが好ましい。本実施形態の両面丸編地の編み目は、表面層をなす編糸よりもリブ糸の方がルーズな編み目となる。このためリブ糸の方が厚みに寄与する割合が高く、嵩高性を出しやすくなる。通常の両面丸編地であれば、リブ糸の繊度が表面層をなす編糸の繊度以上であるとタック編み目が表面層のニット編み目の隙間から出てきてしまう。このため、リブ糸の繊度が大きいと、スナッギングが起こりやすくなってしまう。しかし、本実施形態の両面丸編地であれば、リブ糸は表面層をなす全ての糸にはタック編み目と連結しておらず、リブ糸を太くしても表面層にリブ糸が出てこない。よって、抗スナッグ性が悪くなりにくい編地となる。
【0026】
ただし、リブ糸の繊度が表面層をなす編糸の平均繊度の5倍以上になると表面層に凹凸ができやすくなり、外観品位を損なうため好ましくない。また、リブ糸に合成繊維マルチフィラメント糸条を使用する場合、単繊維繊度は0.3〜4dtexの範囲内であることが好ましい。リブ糸は両面丸編地を衣類とした場合に肌面に表れる糸であるため、単繊維繊度が4dtexを越えると肌触りが悪くなる可能性が高い。一方、単繊維繊度が0.3dtex未満になると、両面丸編地の製造が難しくなる。
【0027】
本実施形態の両面丸編地は、編機と編み条件を所望の条件等に適合させて製編された後、染色加工においてもウェル数とコース数の最終調整を行うことができ、目的の編密度に仕上げられる。
【0028】
前記編機は、ダブル丸編機であればよく、特に限定されないが、目的の編密度を得るには、22ゲージ以上のダブル丸編機が好ましく、28ゲージ以上であることがより好ましい。
【0029】
前記染色加工は、従来から知られている染色方法により行うことができる。また、染色段階での付帯加工は、撥水加工、防汚加工、吸水加工、抗菌加工、消臭加工、防臭加工、難燃加工等がある。これらの付帯加工は、目的とする狙いに応じて適宜付与されることが好ましい。
【0030】
本実施形態の両面丸編地は、JIS L 1018−2013 8.17.1 A法による破裂強さが0.5MPa以上であることが好ましい。破裂強さが0.5MPaより低くなると、アウター用の衣料としたときに破れやすいものとなってしまう。
【0031】
本実施形態に係る両面丸編地は、片面が起毛加工されていることが好ましい。両面丸編地の片面が起毛加工されることで、より嵩高な生地となる。特に、多重ニット編み目でない面は糸が余り易い状態になっているため、起毛加工されることで厚みが増しやすく、嵩高な生地となる。
【0032】
片面に起毛加工された両面丸編地の厚みは、用途に応じて好ましく調整される。両面丸編地の厚みは、アウター用途であれば2.00〜4.00mm、スウェットのようなミドラー用途であれば1.30〜2.60mm、インナー用途であれば1.00〜1.50mmの範囲内に調製されることが好ましい。厚みは、編機のゲージ、編み組織、リブ糸の繊度・編み目長を変えることで調整される。
【0033】
片面に起毛加工した両面丸編地は、嵩高性が6.00cm/g以上であることが好ましく、7.00cm/g以上であることがより好ましく、8.00cm/g以上であることがさらに好ましい。通常、両面丸編地の生地が軽くなるにつれ、衣料にしたときに頼りなくなってしまう。しかし、両面丸編地の嵩高性を6.00cm/g以上とすることで、生地を軽くしても厚みを保つことができる。また、嵩高性を6.00cm/g以上とすることで、本実施形態の両面丸編地は、保温性を有する衣料の生地に適したものとなる。嵩高性の上限は、15.00cm/g程度である。
【0034】
本実施形態に係る衣料は、上述した特性を有する両面丸編地を用いた衣料である。これらの両面丸編地は、多重編み目を形成する糸のうち、一部の糸のみにタック編み目が引っ掛かる構造を有している。これによってスナッギングが起こりにくくなり、高い抗スナッグ性を有する衣料となる。また、嵩高性が大きく、膨らみ感があり、かつ強度を備えた衣料が得られる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明に係る実施例について図面を参照しつつさらに詳しく説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。なお、実施例における各物性値は、下記の方法により測定した。
【0036】
(1)抗スナッグ性
両面丸編地の表面側の抗スナッグ性を、JIS L 1096−2013のスナッグ試験A法(ICI形メース試験機法)により測定した。
【0037】
(2)厚み
JIS L 1096−2013に準じて、試験片の厚さを測定した。測定には、ダイアルシックネスゲージ((株)尾崎製作所 製「型式 H−30」)を用いた。
【0038】
(3)破裂強度
JIS L 1018−2013 8.17.1 A法(ミューレン形法)に基づき破裂強度(MPa)を測定した。
【0039】
(4)目付
JIS L 1096−2013に基づき、試験片の単位面積あたりの質量(g/m2)を測定した。
【0040】
(5)嵩高性
(2)に示した厚みの方法で測定した厚みと、(4)に示した目付の方法で測定した目付の値を元に下記計算式にしたがって算出した。
K = H / M × 1000
K:嵩高性(cm/g)
H:厚み(mm)
M:目付(g/m
【0041】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係る両面丸編地10の概略断面を示す模式図である。後述する実施例2及び3に係る両面丸編地も、両面丸編地10と同様の概略断面を有している。図1に示されるように、実施例1に係る両面丸編地10は、リブ糸11と編み糸12、13から構成されている。両面丸編地10は、編み糸12が針位置a1〜a8でニット編み目14を、編み糸13が針位置a1、a3、a5、a7で二重ニット編み目15を形成し、ニット編み目14と二重ニット編み目15が含まれた構造を有している。また、リブ糸11が針位置b1〜b7でニット編み目を、針位置a1、a3、a5、a7でタック編み目16を形成し、タック編み目16が編み糸13のみに引っ掛かった構造を有している。
【0042】
実施例1では、リブ糸11としてポリエステル84dtex、72フィラメントの仮撚加工糸を、編み糸12としてポリエステル84dtex、36フィラメントの仮撚加工糸を、編み糸13としてポリエステル33dtex、12フィラメントの仮撚加工糸を用いた。
【0043】
これらのリブ糸11、編み糸12、13を22ゲージのダブル丸編機に給糸して、図1に示される両面丸編地10を1コース編成した。さらに、編み糸12が針位置a1〜a8でニット編み目14に相当するニット編み目を、編み糸13が針位置a2、a4、a6、a8で二重ニット編み目15に相当する二重ニット編み目を、リブ糸11が針位置b1〜b7でニット編み目を、針位置a2、a4、a6、a8でタック編み目16に相当するタック編み目を有する1コースを形成した。これらを合わせた合計2コースで、1完全編組織の両面丸編地を編成した。
【0044】
このようにして得られた生地を通常の染色加工法に従い精練、染色、ヒートセットし、目付200g/mの編地を得た。
【0045】
実施例1に係る両面丸編地10は、このような構成を有するため、タック編み目16が表面に出ない。このため、タック編み目16が表面において引っ掛かることがなく、抗スナッグ性に優れている。また、両面丸編地10は、ダブルニット編地であることから、厚みを容易に出すことができる。さらに、ダブルニット編地であることから、生地としての強度にも優れたものとなる。本実施例1に係る両面丸編地10を評価した結果を、表1に示す。
【0046】
[実施例2]
上記実施例1に係る両面丸編地10を起毛加工してヒートセットし、目付200g/mの本実施例2に係る両面丸編地を得た。実施例2に係る両面丸編地を評価した結果を表1に示す。
【0047】
[実施例3]
さらに、上記実施例1に係る両面丸編地において、リブ糸11をカチオン可染ポリエステル84dtex、72フィラメントの仮撚加工糸に、編み糸12をナイロン78dtex、48フィラメントの仮撚加工糸に、編み糸13をナイロン44dtex、36フィラメントの仮撚加工糸に変更し、22ゲージのダブル丸編機に給糸して、両面丸編地を編成した。
【0048】
このようにして得られた生地を通常の染色加工法に従い精練、染色、ヒートセットし、起毛加工、ヒートセットし、目付206g/mの実施例3に係る両面丸編地を得た。このとき、ナイロンとカチオン可染ポリエステルは別の色で染色加工したが、二重ニット編み目15側の面はナイロンの色、リブ糸11側の面はカチオン可染ポリエステルの色しか見えず、染め分けされたリバーシブル素材となった。実施例3に係る両面丸編地10を評価した結果を、表1に示す。
【0049】
[実施例4]
図2は、実施例4に係る両面丸編地20の概略断面を示す模式図である。後述する実施例5に係る両面丸編地も、両面丸編地20と同様の概略断面を有している。図2に示されるように、実施例4に係る両面丸編地20は、リブ糸21と、編み糸22及び23から構成されている。両面丸編地20は、編み糸22が針位置c1〜c8でニット編み目24を、編み糸23が針位置c1、c3、c5、c7で二重ニット編み目25を形成し、ニット編み目24と二重ニット編み目25が含まれた構造となっている。また、リブ糸21が針位置d2、d4、d6、d8でニット編み目を、針位置c1、c3、c5、c7でタック編み目26を形成し、タック編み目26が編み糸23のみに引っ掛かった構造となっている。
【0050】
本実施例4では、リブ糸21としてポリエステル110dtex、96フィラメントの仮撚加工糸を、編み糸22として表側にポリエステル84dtex、36フィラメントの仮撚加工糸、裏側にポリウレタン33dtexを、編み糸23としてポリエステル33dtex、12フィラメントの仮撚加工糸を用いた。
【0051】
これらのリブ糸21、編み糸22及び編み糸23を22ゲージのダブル丸編機に給糸して、図2に示される両面丸編地20を1コース編成した。さらに、編み糸22が針位置c1〜c8でニット編み目24に相当するニット編み目を、編み糸23が針位置c2、c4、c6、c8で二重ニット編み目25に相当する二重ニット編み目を形成し、リブ糸21が針位置d1、d3、d5、d7でニット編み目を、針位置c2、c4、c6、c8でタック編み目26に相当するタック編み目を形成した1コースを有する1コースを形成した。これらを合わせた合計2コースで、1完全編組織の両面丸編地を編成した。
【0052】
このようにして得られた生地を通常の染色加工法に従い精練、染色、ヒートセットし、起毛加工、ヒートセットし目付258g/mの編地を得た。実施例4に係る両面丸編地20を評価した結果を、表1に示す。
【0053】
[実施例5]
実施例5では、図2におけるリブ糸21としてポリエステル84dtex、72フィラメントの仮撚加工糸を、編み糸22としてポリエステル84dtex、36フィラメントの仮撚加工糸を、編み糸23としてポリエステル33dtex、12フィラメントの仮撚加工糸を用いた。
【0054】
これらのリブ糸21、編み糸22、編み糸23を28ゲージのダブル丸編機に給糸して、図2に示される両面丸編地20に相当する両面丸編地を1コース編成した。また、編み糸22が針位置c1〜c8でニット編み目を形成した両面丸編地を1コース編成した。さらに、編み糸22が針位置c1〜c8でニット編み目を、編み糸23が針位置c2、c4、c6、c8でニット編み目を、リブ糸21が針位置d1、d3、d5、d7でニット編み目を、針位置d2、d4、d6、d8でタック編み目を形成した両面丸編地を1コース編成した。また、編み糸22がc1〜c8でニット編み目を形成した1コースを編成した。これらを合わせた合計4コースで、1完全編組織の両面丸編地を編成した。
【0055】
このようにして得られた生地を通常の染色加工法に従い精練、染色、ヒートセットし、起毛加工、ヒートセットし目付180g/mの編地を得た。本実施例5に係る両面丸編地を評価した結果を、表1に示す。
【0056】
[実施例6]
図3は、実施例6に係る両面丸編地30の概略断面を示す模式図である。図3に示されるように、実施例6に係る両面丸編地30は、リブ糸31a、31bと、編み糸32及び33から構成されている。両面丸編地30は、編み糸32及び33が針位置e1〜e8で二重ニット編み目34を形成し、二重ニット編み目34のみの構造となっている。また、リブ糸31aが針位置f1、f3、f5、f7でニット編み目を、針位置e2、e4、e6、e8でタック編み目36を形成し、リブ糸31bが針位置f2、f4、f6、f8でニット編み目を、針位置e1、e3、e5、e7でタック編み目36を形成し、タック編み目36が編み糸33のみに引っ掛かった構造となっている。
【0057】
実施例6では、編み糸32としてポリエステル84dtex、36フィラメントの仮撚加工糸を、編み糸33としてポリエステル33dtex、12フィラメントの仮撚加工糸を、リブ糸31a、31bとしてポリエステル84dtex、72フィラメントの仮撚加工糸を用いた。
【0058】
これらのリブ糸31a、31b、編み糸32及び33を22ゲージのダブル丸編機に給糸して、両面丸編地30を1コース編成した合計1コースで1完全編組織の両面丸編地を編成した。
【0059】
このようにして得られた生地を通常の染色加工法に従い精練、染色、ヒートセットし、起毛加工、ヒートセットし目付232g/mの両面丸編地を得た。本実施例6に係る両面丸編地30を評価した結果を、表1に示す。
【0060】
[比較例1]
図4は、比較例1の両面丸編地110の概略断面を示す模式図である。図4に示されるように、比較例1の両面丸編地110は、リブ糸111と、編み糸113から構成されている。両面丸編地110は、編み糸113が針位置g1〜g8でニット編み目115を形成し、ニット編み目115のみの構造となり、リブ糸111が針位置h1〜h7でニット編み目を、針位置g1、g3、g5、g7でタック編み目116を形成し、タック編み目116が編み糸113に引っ掛かった構造となっている。
【0061】
比較例1では、編み糸113としてポリエステル84dtex、36フィラメントの仮撚加工糸を、リブ糸111としてポリエステル110dtex、96フィラメントの仮撚加工糸を用いた。これらのリブ糸111及び編み糸113を22ゲージのダブル丸編機に給糸して、図4に示される両面丸編地110を2コース編成した。また、編み糸113が針位置g1〜g8でニット編み目115に対応するニット編み目を形成し、リブ糸111が針位置h1〜h7でニット編み目を、針位置g2、g4、g6、g8でタック編み目116に対応するタック編み目を形成した1コースを2回繰り返して2コースを編成した。これらの合計4コースで、1完全編組織のハニカム組織の両面丸編地を編成した。
【0062】
このようにして得られた生地を通常の染色加工法に従い精練、染色、ヒートセットし、目付204g/mの編地を得た。比較例1の両面丸編地110を評価した結果を、表1に示す。
【0063】
[比較例2]
比較例2では、比較例1の両面丸編地110を起毛加工してヒートセットし、目付200g/mの編地を得た。比較例2の両面丸編地を評価した結果を、表1に示す。
【0064】
[比較例3]
図5は、比較例3のシングル丸編地120の概略断面を示す模式図である。図5に示されるように、比較例3のシングル丸編地120は、インレイ糸121と、編み糸122及び123とから構成されている。シングル丸編地120は、編み糸122及び123が針位置i1〜i8で二重ニット編み目124を形成し、二重ニット編み目124のみの構造となっている。インレイ糸121が針位置i1、i4、i7でタック編み目126を形成し、タック編み目126が編み糸123のみに引っ掛かった構造となっている。
【0065】
比較例3では、編み糸122としてポリエステル84dtex、72フィラメントの仮撚加工糸を、編み糸123としてポリエステル84dtex、72フィラメントの仮撚加工糸を、インレイ糸121としてポリエステル167dtex、144フィラメントの仮撚加工糸を用いた。
【0066】
これらの編み糸122及び123、インレイ糸121を28ゲージのシングル丸編機に給糸して、編み糸122及び123が針位置i1〜i8で二重ニット編み目124に相当する二重ニット編み目を、インレイ糸121が針位置i2、i5、i8でタック編み目126に相当するタック編み目を有する1コースを編成した。さらに、編み糸122及び123が針位置i1〜i8で二重ニット編み目124に相当する二重ニット編み目を、インレイ糸121が針位置i3、i6でタック編み目126に相当するタック編み目を有する1コースを編成した。これらの2コースに図5に示される構成を合わせた合計3コースで、1完全編組織の裏毛組織のシングル丸編地を編成した。
【0067】
このようにして得られた生地を通常の染色加工法に従い精練、染色、ヒートセットし、起毛加工、ヒートセットし目付219g/mの編地を得た。比較例3のシングル丸編地120を評価した結果を、表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、本発明は上記の実施形態及び実施例によって限定されるものではない。
【0070】
すなわち、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施形態及び実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る両面丸編地は、高い抗スナッグ性を有し、嵩高性が大きく、生地としての膨らみ感と強度を備えているため、アウター等の衣服に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10、20、30、110 両面丸編地
11、21、31a、31b、111 リブ糸
12、13、22、23、32、33、113、122、123 編み糸
14、24、115 ニット編み目
15、25、34、124 二重ニット編み目
16、26、36、116、126 タック編み目
120 シングル丸編地
121 インレイ糸
a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、a8、b1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、c1、c2、c3、c4、c5、c6、c7、c8、d1、d2、d3、d4、d5、d6、d7、d8、e1、e2、e3、e4、e5、e6、e7、e8、f1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8、g1、g2、g3、g4、g5、g6、g7、g8、h1、h2、h3、h4、h5、h6、h7、i1、i2、i3、i4、i5、i6、i7、i8 針位置
図1
図2
図3
図4
図5