特許第6771295号(P6771295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771295
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】離床センサおよび離床状態判定装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/05 20060101AFI20201012BHJP
   A47C 21/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   A61G7/05
   A47C21/00
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-59890(P2016-59890)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-169881(P2017-169881A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】711007530
【氏名又は名称】高井 拓夫
(73)【特許権者】
【識別番号】307016180
【氏名又は名称】地方独立行政法人鳥取県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】高井 拓夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智一
【審査官】 小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−541929(JP,A)
【文献】 特開2013−235313(JP,A)
【文献】 特開2015−154926(JP,A)
【文献】 特開平10−014889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/05
A47C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の有無を検出する静電容量式の離床センサであって、
正負一対の電極で形成される第1の静電容量電極と、
該第1の静電容量電極に近接して設けられ正負一対の電極で形成される第2の静電容量電極と、からなり、
前記第1の静電容量電極は第1の基材に配設され、
前記第2の静電容量電極は第2の基材に配設され、
前記第1の基材と前記第2の基材との間にスペーサが配置されており、
前記第1の静電容量電極と前記第2の静電容量電極とは取り付け面において重なるように設けられ、
前記第1の静電容量電極と前記第2の静電容量電極の前記身体までの距離の差による静電容量の差に応じて前記身体の存在の検出信号を出力することを特徴とする離床センサ。
【請求項2】
前記第1の静電容量電極と前記第2の静電容量電極の各々片方の電極に共通の交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、
前記第1の静電容量電極に給電された印加電圧を整流する第1の整流部と、
前記第2の静電容量電極に給電された印加電圧を整流する第2の整流部と、
前記第1の整流部の電位と前記第2の整流部の電位の高低を比較する比較部と、
前記身体が所定の距離遠ざかると前記第1の整流部の電位が前記第2の整流部の電位より高くなり、身体が所定の距離近づくと前記第1の整流部の電位が前記第2の整流部の電位より低くなるようにインピーダンスを設定された電位差部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の離床センサ。
【請求項3】
正負一対の電極で形成される第1の静電容量電極と、前記第1の静電容量電極に近接して設けられ正負一対の電極で形成される第2の静電容量電極と、を備え、前記第1の静電容量電極は第1の基材に配設され、前記第2の静電容量電極は第2の基材に配設され、前記第1の基材と前記第2の基材との間にスペーサが配置されており、前記第1の静電容量電極と前記第2の静電容量電極とは取り付け面において重なるように設けられ、前記第1の静電容量電極と前記第2の静電容量電極の身体までの距離の差による静電容量の差に応じて身体の存在の有無を検出する検出信号を出力する静電容量素子が、複数の検出領域毎に設置された離床センサと、
複数の検出領域毎に設置された前記静電容量素子からの前記検出信号に基づいて離床状態を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする離床状態判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離床センサおよび離床状態判定装置に関し、詳しくは、寝具上の身体の有無を検出する静電容量式の離床センサであって、第1の静電容量電極と第2の静電容量電極の身体までの距離の差による静電容量の差に応じて身体の存在や状態の検出信号を出力する離床センサおよび離床状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自立歩行困難な被看護者はベッドから転落したり、自力で車椅子に移動しようとしてあるいは単独歩行しようとして転倒したりする事故が発生することがある。また、徘徊して行方不明になったり、診察時間に離床していてその時に診察できなかったりすることがある。また、正常な寝返りをしていなかったり、苦しむときなどに異常な身体の移動をしていたり、全く動いていなかったりすることを気付くのが遅れることがある。これらの事故防止、徘徊防止や病状の早期発見などのために、従来より、種々のセンサを用いて身体の有無を検出し離床を判定する装置が考えられた。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2015−8921号公報)に開示されるような荷重の有無を検出するセンサを寝床に配設して寝ているときの荷重を検出する装置、特許文献2(特開2015−126803号公報)に開示されるような荷重の有無を検出するセンサをベッドの傍の床などに配設して足の接地による離床を検出する装置、特許文献3(特開2012−45296号公報)に開示されるような静電容量式センサを寝床のマットに配設して寝ているときの身体の存在を検出する装置、特許文献4(特開2015−146856号公報)に開示されるような対象物からの反射光に応じて対象物を検出する光電センサや、反射板で反射される反射光の有無に応じて対象物を検出するビームセンサや、対象物が発する熱に応じて対象物を検出する熱線センサや、超音波信号の反射の有無に応じて対象物を検出する超音波センサなどの非接触検出センサによって離床を検出する装置、タグセンサ(ICタグ)などのセンシング素子を被看護者に携帯させて離床を検出する装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−8921号公報
【特許文献2】特開2015−126803号公報
【特許文献3】特開2012−45296号公報
【特許文献4】特開2015−146856号公報
【特許文献5】特開2013−235313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の身体を検出するセンサは、離床状態を判定するためのセンサとしては種々の問題があった。荷重センサや静電容量センサが寝具の中や下に配設されると被看護者によって温度や湿度が変化する。このために荷重センサや静電容量センサの感度が変化して誤作動する。
【0006】
また、荷重センサや静電容量センサがマットの下に配設されると、センサと人体との距離が大きく離間して感度が低下すると共に、種々の厚さのマットがあるので、この温度や湿度の変化やマットの厚みの違いによる影響は大きい。
【0007】
また、体重の違い、体温の違い、体脂肪率の違いや発汗の度合いの違いなど、体質の違いが荷重センサや静電容量センサの感度に影響を及ぼし、誤作動や感度低下の要因となるので、いかなる体質にも対応しなければならないという課題がある。
【0008】
また、静電容量センサは、姿勢検出に使用する場合、例えば、胸部、腰部、臀部、足部など複数領域に配設されることになるが、静電容量センサが近接するために相互干渉による誤作動が生ずるという問題がある。
【0009】
また、荷重センサをベッドの傍の床などに配設して足の接地による離床を検出する装置においては、ベッドや椅子の足の重圧による断線・破損、看護者や見舞い者などの被看護者以外が踏むことによる誤判定の問題があり、また、このような装置においては、ベッドからの落下防止や病状の早期発見はできないという問題がある。
【0010】
また、離床センサおよび離床状態検出装置の誤作動は看護においては重大な問題である。看護者に余分な作業等の負担を強いることから誤判定する装置は敬遠されていて、使用を取りやめる看護・介護施設もある。
【0011】
光電センサ、ビームセンサ、熱線センサや超音波センサなどの非接触検出センサは高額であることから普及が望めないという問題がある。タグセンサ(ICタグ)などのセンシング素子は、これを携帯させる被看護者に束縛感・違和感を与えるという問題がある。
【0012】
このような離床センサおよび離床状態検出装置としての特有の問題を解決するために、発明者の先願である特許文献5(特開2013−235313号公報)から派生した技術でもって、本発明は、温度・湿度の変化や相互干渉による誤作動を低減し、人体から離間したマットの下に設置されても良いように非接触検知距離を伸ばし、被看護者が携帯しなくてもよく、安価な離床センサおよび離床状態判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の離床センサは、身体の有無を検出する静電容量式の離床センサであって、正負一対の電極で形成される第1の静電容量電極と、該第1の静電容量電極に近接して設けられ正負一対の電極で形成される第2の静電容量電極と、からなり、前記第1の静電容量電極と前記第2の静電容量電極の前記身体までの距離の差による静電容量の差に応じて前記身体の有無の検出信号を出力することを特徴とする。
【0014】
2つの電極に身体までの距離の差があるとその静電容量に差が生じる。本発明は一方の静電容量電極を検出用とし、近接した他方の静電容量電極を基準用として、同じ環境の静電容量の差に応じて前記身体の有無の検出信号を出力する。このために、一方の静電容量電極の静電容量が温度・湿度などで変化しても他方も同様に温度・湿度などで変化するので、静電容量の差は温度・湿度などの変化の影響を受けない。また、静電容量は身体の体質によっても変化するが、本発明の離床センサは体質が変わっても両方の静電容量電極の静電容量が共に変化するので、体質の変化の影響を受けない。このように、環境や身体の体質の影響が少ないので寝具上の身体の有無を高感度で検出することができる。したがって、本発明の離床センサを身体と離間するマットの下に設置することができる。また、本発明の離床センサは安価な静電容量式センサなので、光電センサ、ビームセンサ、熱線センサや超音波センサなどの非接触検出センサと比較して廉価である。また、タグセンサのように被看護者が携帯するものではないので、被看護者に携帯による束縛感・違和感を与えることがない。
【0015】
また、本発明の離床センサにおいては、前記第1の静電容量電極は第1の基材に配設され、前記第2の静電容量電極は第2の基材に配設され、前記第1の基材と前記第2の基材との間にスペーサが配置されており、前記第1の静電容量電極と前記第2の静電容量電極とは取り付け面において重なるように設けられることが好ましい。
【0016】
これにより、スペーサの厚みで第1の静電容量電極と第2の静電容量電極の静電容量の差を調整することができる。特に、離床センサが折り曲げ可能なベッドに設置されたり、洗浄を要求されたりするときは柔軟性が必要であり、このときは一般的な厚み1.6mmの堅いガラスエポキシなどのプリント基板ではなくてFPC(フレキシブルプリント回路基板)が好ましい。しかしながら、FPCは厚みが0.3mm程度と薄いために第1の静電容量電極と第2の静電容量電極の静電容量の差が小さい。そこで、スペーサを挿入することで第1の静電容量電極と第2の静電容量電極の離間距離を大きくすることができる。このスペーサは適度な誘電率が必要であり、柔軟性に優れている方がよい。
【0017】
また、本発明の離床センサにおいては、前記第1の静電容量電極側の表面から前記第2の静電容量電極側の表面まで貫通する通気口を設けることが好ましい。これにより、湿度差や温度差などの環境の影響を低減させる。また、マットの湿度上昇を低減させることができる。
【0018】
また、本発明の離床センサにおいては、前記第1の静電容量電極と前記第2の静電容量電極の各々片方の電極に共通の交流電圧を印加する交流電圧印加手段と、前記第1の静電容量電極に給電された印加電圧を整流する第1の整流部と、前記第2の静電容量電極に給電された印加電圧を整流する第2の整流部と、前記第1の整流部の電位と前記第2の整流部の電位の高低を比較する比較部と、前記身体が所定の距離遠ざかると前記第1の整流部の電位が前記第2の整流部の電位より高くなり、身体が所定の距離近づくと前記第1の整流部の電位が前記第2の整流部の電位より低くなるようにインピーダンスを設定された電位差部と、を備えることが好ましい。
【0019】
これにより、電位差部のインピーダンスを調整することで離床状態検出の感度を容易に調節することができる。また、電位差部を設けることは容易であり、たとえば、第2の整流部に抵抗を一つ設けても良く、前記第1の静電容量電極への印加電圧とは異なる電圧を第2の静電容量電極に印加しても良い。
【0020】
また、本発明の離床状態判定装置においては、正負一対の電極で形成される第1の静電容量電極と、前記第1の静電容量電極に近接して設けられ正負一対の電極で形成される第2の静電容量電極と、を備え、前記第1の静電容量電極は第1の基材に配設され、前記第2の静電容量電極は第2の基材に配設され、前記第1の基材と前記第2の基材との間にスペーサが配置されており、前記第1の静電容量電極と前記第2の静電容量電極とは取り付け面において重なるように設けられ、前記第1の静電容量電極と前記第2の静電容量電極の身体までの距離の差による静電容量の差に応じて身体の存在の有無を検出する検出信号を出力する静電容量素子が、複数の検出領域毎に設置された離床センサと、複数の検出領域毎に設置された前記静電容量素子からの前記検出信号に基づいて離床状態を判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0021】
これにより、検出領域毎の検出に基づいて種々の離床状態を判定することができる。例えば、寝返り、起き上がり、離床前の姿勢、離床状態、無動などの判定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1Aは第1実施形態の離床状態判定装置の要部の構成を示す平面図であり、図1B図1Aの正面図である。
図2図2Aは第1実施形態の離床センサの要部の構成を示すブロック図であり、図2B図2Aの回路図である。
図3図3Aは第1実施形態の離床センサの要部の動作を示す図であり、図3Bは離床センサのコンパレータへの入力電圧を示すグラフである。
図4図4は第2実施形態の離床センサの動作の要部を示す図である。
図5図5は第3実施形態の離床センサの動作の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0024】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態の離床状態判定装置100を図1図3を用いて説明する。離床状態判定装置100は離床センサ101と判定部20からなる。離床センサ101のプラグMと判定部20のソケットFによって離床センサ101は判定部20から着脱可能になっている。図1Bに示すように、離床センサ101はシート状であり、ベッド50の台50aとマット50bの間に敷かれており、マット50b上の身体(被看護者)Bの有無を検出する。判定部20は離床センサ101からの検出信号に基づいて離床状態を判定し、その結果を警報等種々の方法で報知する。
【0025】
図3Aに示すように、離床センサ101の1つの静電容量素子101aは、第1の静電容量電極である正極1a(+)負極1b(−)一対の電極からなる検出用電極1と、第2の静電容量電極である正極2a(+)負極2b(−)一対の電極からなる基準用電極2と、検出用電極1が配設される第1の基材3と、基準用電極2が配設される第2の基材4と、検出用電極1と基準用電極2を所定の距離離間させるスペーサ5と、離床センサ101の両面を水などから保護する第1の保護シート6、第2の保護シート7からなり、身体B側から順に第1の保護シート6、検出用電極1、第1の基材3、スペーサ5、第2の基材4、基準用電極2、第2の保護シート7と重ねられている。
【0026】
第1の基材3と第2の基材4は柔らかな絶縁性のシートであって、FPCの基材である。なお、検出用電極1が形成された第1の基材3と基準用電極2が形成された第2の基材4は別体ではなく1枚のFPCを折り曲げたものであってもよい。
【0027】
スペーサ5はゴムのような柔軟性と断熱性と適度な誘電率がある材質であることが好ましい。また、図3Aに示すように、検出用電極1(正極1aと負極1b)と基準用電極2(正極2aと負極2b)は取り付け面に垂直な方向に重なって、同位置となるように設けられる。
【0028】
このように、静電容量素子101aは、第1の保護シート6、検出用電極1、第1の基材3、スペーサ5、第2の基材4、基準用電極2、第2の保護シート7により形成される。そして図1Aに示すように、この静電容量素子101aは、検出領域となる胸部(M1)とその左右(L1、R1)、腰部(M2)とその左右(L2、R2)、臀部(M3)とその左右(L3、R3)、足部(M4)とその左右(L4、R4)の12箇所の領域101bにそれぞれ設置されている。
【0029】
これらの領域別の身体Bの有無によって判定部20は、在床の状態(寝返り、起き上がり、離床前の姿勢、離床状態、無動など)を判定することができる。例えば、臀部の左領域L3か臀部の右領域R3のみ「有」であれば身体Bがベッド50に座っている状態であり離床するかもしれないとして注意の信号を看護・介護室へ出力する。これにより、本発明の離床状態判定装置100は、身体Bについての、褥瘡(床ずれ)防止のための寝返り監視、離床防止のための離床前の姿勢監視、徘徊防止や診察遂行のための離床状態監視や病状の早期発見のための無動監視を行うことができる。
【0030】
そして図1Aに示すように、離床センサ101は判定部20と電気的に接続するためのプラグPを端部に備えている。離床センサ101は柔らかく防水性があるシート状のものなので、腰部や足部が屈曲するベッド50にも取り付けることができ、回路の部分を密閉すると身体Bからの汗の耐久性が向上し、洗浄することもできる。
【0031】
図2Aのブロック図に示すように、離床センサ101は高周波を発生する高周波発生部8と、高周波発生部8から発生された高周波電圧を検出用電極1に給電する第1のインピーダンス素子9と、高周波発生部8から発生された高周波電圧を基準用電極2に給電する第2のインピーダンス素子10と、検出用電極1に給電された印加電圧を整流する第1の整流部11と、基準用電極2に給電された印加電圧を整流する第2の整流部12とマット50b上に身体Bが無い状態で第1の整流部11経由の出力電圧が第2の整流部12経由の出力電圧よりも高くなるように電位差を付加する電位差部13と、電位差部13から出力される第1の整流部11経由の出力電圧と電位差部13から出力される第2の整流部12経由の出力電圧を比較してこれを離床状態判定結果として出力する比較部14を備えている。
【0032】
図2B図1の簡略な回路図である。高周波発生部8は一例としてインバーターを用いたCR発振回路である。発振周波数は概ね100KHzから数MHzの広い範囲内で最適な周波数を設定すればよく、身体Bと検出用電極1との検出距離すなわちマット50bの厚み、検出用電極1及び基準用電極2の形状や寸法、検出用電極1及び基準用電極2間の物質(第1の基材3、第2の基材4、スペーサ5)の誘電率、また第1の整流素子6や第2の整流素子7の定数により適宜決定すればよい。正確な発振周波数であったり、予め定められた高周波電圧等であったりする必要は無く、離床センサ101の仕様に合わせ適宜に決定すればよい。第1のインピーダンス素子9と第2のインピーダンス素子10はインピーダンスの値が等しい。したがって、検出用電極1と基準用電極2には等しい高周波電圧が給電される。また、連続的に高周波を発生する必要は無く、消費電力を抑えるため間欠的に高周波電圧を出力してもよい。
【0033】
図2Bの第1の検出用電極1は、身体Bが検出されていない状態での浮遊容量を模式的に図示する非動作容量素子1fと身体Bが検出されて増加する浮遊容量を図示する動作コンデンサ1nを備えている。同様に、第1の基準用電極2は、身体Bが検出されていない状態での浮遊容量を模式的に図示する非動作容量素子2fと身体Bが検出されて増加する浮遊容量を図示する動作容量素子2nを備えている。
【0034】
図2Bの第1の整流部11と第2の整流部12は同じ値の素子で構成され、それぞれ検出用電極1の出力用の抵抗素子11a、基準用電極2の出力用の抵抗素子12aと、半端整流を行う整流素子11b、12bと、平滑を行う抵抗素子11c、12cおよび容量素子11d、12dと、ノイズ防止のための二段目の平滑を行う抵抗素子11e、12eおよび容量素子11f、12fを備えている。
【0035】
図2Bの電位差部13は、第1の整流部11の出力側には何も設けずに、第2の整流部12の出力側とGNDの間に抵抗素子13aを備えている。これにより、非動作状態で第1の整流部11経由の出力電圧が第2の整流部12経由の出力電圧よりも所定値だけ高くなる。比較部14は比較素子14aを備え、比較素子14aの−側入力端子に第1の整流部11の出力が入力され、比較素子14aの+側入力端子に第2の整流部12の出力が抵抗素子13aを介して入力される。したがって、非動作状態では+側入力端子の電圧よりも−側入力端子の電圧が高くなるので比較素子14aは低レベル信号(以降、低レベル信号をLと記し、高信号をHと記す。)を出力する。L信号は身体を検出していないという判定の信号であり、信号Hは身体を検出したという判定の信号である。
【0036】
次に第1実施形態の離床センサ101の動作の概要を説明する。まず、身体Bが離床していて離床センサ101が身体Bを検出していない非動作状態について説明する。図2Bにおいて、高周波発生部8は所定の周波数で発振し、値の等しい第1インピーダンス素子9、第2インピーダンス素子10をそれぞれ介して検出用電極1と基準用電極2の各電極で構成された浮遊容量の給電点1c、2cへ給電される。
【0037】
なお、図2Bに記載の動作容量素子1nと動作容量素子2nは身体Bの検出による浮遊容量を図示するものであり、非動作時には存在しないためにここでは無視する。ここで、検出用電極1と基準用電極2の各電極形状はほぼ等しく形成され、各電極が離床センサ101の同じ箇所の至近距離で形成されているので、検出用電極1の非動作容量素子1fの浮遊容量と基準用電極2の非動作容量素子2fの浮遊容量はほぼ等しくなる。よって給電点1c、2cで観測される各印加電圧波形は、各インピーダンス素子9、10と検出用電極1と基準用電極2の各電極で構成された非動作容量素子1f、2fの浮遊容量との積分波形であり、各印加電圧の波形は概ね等しくなる。
【0038】
このようにして第1の整流部11と第2の整流部12に概ね等しい電圧が入力される。第1の整流部11と第2の整流部12は同じ値の同じ素子の構成となっているので、第1の整流部11と第2の整流部12の出力電圧11g、12gがほぼ等しくなる。もし、このまま第1の整流部11と第2の整流部12の出力電圧11g、12gを比較部14の比較素子14aに入力させると非動作時の比較素子14aの出力をLまたはHに固定することが困難となる。そこで、第2の整流部12の出力電圧を電位差部13の抵抗素子13aで所定値低下させてから比較素子14aの+側入力端子に入力させることによって、図3Bに示すように、非動作時の比較素子14aの出力をLに固定することができるようになる。この抵抗素子13aによる電圧差をV1とする。
【0039】
次に、身体Bが存床していて離床センサ101が身体Bを検出している動作状態について説明する。図2Bに記載の動作容量素子である1nと2nは身体Bの検出による浮遊容量であり、これは数1の数式で表される。
【数1】
【0040】
数式(数1)より、静電容量Cは誘電率εと電極面積Sが一定であれば電極の間隔dに反比例する。これにより、図3Aに示すとおり、身体Bが離床センサ101に接近した場合、検出用電極1の負極1b(−)から身体Bを中継し正極1a(+)にいたる距離は、1da+1dbであるのに対し、基準用電極2の負極2b(−)から身体Bを中継し正極2a(+)にいたる距離は、2da+2dbとなる。このことから、身体Bが離床センサ101に接近した場合には、見かけ上の電極間隔が短い検出用電極1に付加される身体Bの浮遊容量1nの方が、見かけ上の電極間隔の長い基準用電極2に付加される身体Bの浮遊容量2nよりも大きいことが分かる。静電容量Cを電極の間隔dに反比例させるべく電極面積Sを一定にするために、検出用電極1の面積と基準用電極2の面積は等しい。
【0041】
以上により、第1実施形態の離床センサ101に身体Bが接近した場合、検出用電極1の容量1fに身体Bの浮遊容量1nが付加され、基準用電極2の容量2fに身体Bの浮遊容量2nが付加される。この時、検出用電極1側に付加される身体Bの浮遊容量1nが基準用電極2に付加される身体Bの浮遊容量2nより大きいため、高周波電圧を各電極に給電する各インピーダンス素子9、10の電流値は共に増加するが、基準用電極2側の高周波電流増加分より検出用電極1側に流れる高周波電流増加分の方が多くなり、第1のインピーダンス素子9によって給電される給電点1cの高周波電圧の印加電圧は、第2のインピーダンス素子10によって給電される給電点2cの高周波電圧の印加電圧より低くなる。この結果、第1の整流部11の出力電圧は第2の整流部12の出力電圧より低くなる。
【0042】
離床センサ101に身体Bが接近する分、比較素子14aに入力される検出用電極1側の電圧が基準用電極2側の電圧より低下するが、この電圧差をV2とする。一方、前述のとおり、離床センサ101に身体Bが接近しない非動作状態では、電位差部13の抵抗素子13aによって比較素子14aに入力される検出用電極1側の電圧は基準用電極2側の電圧よりもV1だけ高く設定されている。V1は一定であるが、V2は離床センサ101に身体Bが近づくにしたがって大きくなる。そして、離床センサ101に身体Bが所定距離以上近づくとV2>V1になって、比較素子14aの出力がLからHに反転する。すなわち、V1は離床センサ101の検出の閾値である。
【0043】
図3Bは静電容量が高い体質Xと低い体質Yの身体Bが離床センサ101に接近していない非動作の状態から、離床センサ101に身体Bが所定距離以上近づいてV2>V1の動作状態になったときの比較部14への入力電圧を示したグラフである。
【0044】
非動作状態では、身体Bの接近による静電容量が無いために高い体質Xと低い体質Yの両方共、検出用電極1側の比較素子14aへの入力電圧(X1、Y1)が基準用電極2の入力電圧(X2、Y2)よりもV1の分だけ高くなっている。
【0045】
動作状態では、体質Yよりも体質Xの方が身体Bの接近による静電容量が大きいので、比較素子14aへの入力電圧が体質Y(Y1、Y2)よりも体質X(X1、X2)の方が低くなる。しかしながら、近接している検出用電極1と基準用電極2はいずれも体質の影響を等しく受けるのでV2>V1となって、体質Hと体質Lのいずれも検出用電極1側の比較部14への入力電圧(X1、Y1)が基準用電極2の入力電圧(X2、Y2)よりも低くなって、比較素子14aの出力がLからHに反転する。
【0046】
このように本発明の離床センサ101は一方の静電容量電極1を検出用とし、近接した他方の静電容量電極2を基準用として、同じ環境の静電容量の差に応じて前記身体の存在の検出信号を出力している。このために、一方の静電容量電極1の静電容量が温度・湿度などで変化しても他方の静電容量電極2も同様に温度・湿度などで変化するので、身体Bの検出において、温度・湿度などの変化の影響を受けない。また、静電容量は身体Bの体質や体調によっても変化するが、本発明の離床センサ101は体質や体調が変わっても両方の静電容量電極1、2の静電容量が共に変化するので、体質や体調の変化の影響を受けない。このように、環境や身体Bの体質や体調の影響が少ないので寝具上の身体Bの有無を高感度で検出することができる。
【0047】
したがって、本発明の離床センサ101を身体Bと離間するマット50bの下に設置することができるし、布団等を置くことで少し持ち上げられた足を検出することもできる。また、本発明の離床センサ101は安価な静電容量式センサなので、光電センサ、ビームセンサ、熱線センサや超音波センサなどの非接触検出センサと比較して廉価である。また、タグセンサのように被看護者が携帯するものではないので、身体Bに携帯による束縛感・違和感を与えることがない。
【0048】
また、離床センサ101は検出用電極1と基準用電極2が取り付け面に垂直な方向に重なって設けられているので、身体Bがどの方向から近づいても均等に検出することができる。また、この重なりにより周囲に隣接する静電容量電極の影響をキャンセルするので、相互干渉による誤作動を低減することができる。
【0049】
また、離床センサ101はスペーサ5が第1の基材3と第2の基材4の間に設けられている。そして、このスペーサ5の厚みで第1の静電容量電極と第2の静電容量電極の静電容量の差を調整することができる。離床センサ101が折り曲げ可能なベッド50に設置されたり、洗浄を要求されたりするときは柔軟性が必要となる。このとき基材は、厚み1.6mmの堅いガラスエポキシなどのプリント基板ではなくて柔軟性のあるFPC(フレキシブルプリント回路基板)でなければならない。しかしながら、FPCは厚みが0.3mm程度と薄いために第1の静電容量電極と第2の静電容量電極の静電容量の差が小さい。そこで、スペーサ5を挿入することで第1の静電容量電極と第2の静電容量電極の離間距離を大きくすることができる。
【0050】
なお、上述の実施形態では第1の基材3とスペーサ5と第2の基材4はそれぞれ別体であったが、本発明は別体に限定するものではない。例えば、本発明は、検出用電極1と基準用電極2との離間距離を十分確保できる厚みのゴムなどの弾性体を用いて、第1の基材3とスペーサ5と第2の基材4を一体にしてもよい。そして、本発明は、この弾性体の表面に導電性フィルムなどによるパターンで検出用電極1と基準用電極2を形成することで離床センサ101を構成することもできる。このような一体の基材を用いることで、本発明は、離床センサ101の製造コストを削減することができる。
【0051】
また、上述の実施形態では図2A図2Bに示す出力用電極1と基準用電極2の出力はそれぞれ第1の整流部11、第2の整流部12を介して比較部14に入力されたが、本発明は第1の整流部11と第2の整流部12を必須の構成要件とするものではなく、出力用電極1と基準用電極2の波型出力が整流せずに比較部14に入力されても比較部14はレベルを比較することができる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の離床センサ101Aを、図4を用いて説明する。図4は第1実施形態の離床センサ101における図2Aに対応する。第2実施形態の離床センサ101Aにおいては、第1実施形態の離床センサ101と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与して説明を省略し、第1実施形態の離床センサ101と構成が近似する部分については参照符号に添え字「A」を付して相違点のみ記す。
【0053】
第2実施形態の離床センサ101Aは検出用電極1に給電された印加電圧と基準用電極2に給電された印加電圧をゲート回路15によって切り替え、同じ第1の整流部16に入力させる。マイクロプロセッサ17(MPU)は、第1の整流部16から出力される検出用電極1側の電圧と基準用電極2側の電圧を比較して、その結果の信号LまたはHを出力する。また、ゲート回路15の切り替えを行う。さらに複数(n)の静電容量素子101aについてこれらの処理を、ゲート回路15を切り替えながら行う。このようにしてマイクロプロセッサ17が複数の処理を行うので、部品点数や出力の本数の削減と信頼性の向上を図ることができる。
【0054】
第1実施形態の第1インピーダンス9と第2インピーダンス10は同じ値のインピーダンスであったが、第2実施形態の第1インピーダンス9Aと第2インピーダンス10Aは異なる値のインピーダンスである。このインピーダンスの差のために、離床センサ101Aに身体Bが接近しない非動作状態では、検出用電極1側の第1整流部16の出力電圧が基準用電極2側の第1整流部16の出力電圧よりもV1だけ高くなっている。すなわち、第2実施形態の第1インピーダンス9Aと第2インピーダンス10Aが第1実施形態の電位差部13の役割をしている。
【0055】
本発明は、電位差部13によって離床センサ101の検出の閾値となる電位差V1を生じさせている。電位差部13を設ける方法は、第1実施形態では抵抗素子13aの追加であり、第2実施形態では第1インピーダンス9と第2インピーダンス10の値を異ならせる方法であり、いずれも容易な方法である。本発明はこれらの方法に限定するものではなく、検出用電極1側の第1整流部16の出力電圧が基準用電極2側の第1整流部16の出力電圧よりも所定値V1だけ高くなればよいので、たとえば、第1実施形態をベースにするのであれば、第1の整流部11と第2の整流部12の素子の値を異ならせてもよい。
【0056】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の離床センサ101Bを、図5を用いて説明する。図5は第1実施形態の離床センサ101における図3Aに対応する。第3実施形態の離床センサ101Bにおいては、第1実施形態の離床センサ101と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与して説明を省略し、第1実施形態の離床センサ101と構成が近似する部分については参照符号に添え字「B」を付して相違点のみ記す。
【0057】
図5に示すように、第3実施形態の離床センサ101Bは第1の保護シート6Bの露出面6a(検出用電極1側の表面)から第7の保護シート7Bの露出面7a(基準用電極2側の表面)まで貫通する通気口18を複数設ける。この通気口18は離床センサ101Bを貫通するものであり、図5に示すように、正極1aB、2aBや負極1bB、2bB中に設けることができ、電極が無い場所に設けることもできる。通気口18を正極1aB、2aBや負極1bB、2bB中に設ける方法として、この電極をメッシュ形状にしてもよい。離床センサ101Bの両面の空気がこの通気口18を抜けることができるので、離床センサ101Bの両面の温度や湿度などの環境が近くなり、離床センサ101Bの表裏の環境の相違による誤動作を低減することができる。また、マット50bの湿度上昇を低減させることができる。
【0058】
上述の実施形態の離床状態判定装置100はベッド50に使用されたが、本発明はベッド50での使用に限定するものではなく、例えば、畳に敷かれた布団などに適用することもできる。また、身体Bは被看護者であったが、在床状態の観察が必要な乳児や幼児、また場合によっては健常者であっても良い。
【符号の説明】
【0059】
100:離床状態判定装置
101:離床センサ
101b:静電容量素子の領域
1:検出用電極
1f:検出用電極の非動作容量素子
1n:検出用電極の動作容量素子
2:基準用電極
2f:基準用電極の非動作容量素子
2n:基準用電極の動作容量素子
3:第1の基材
4:第2の基材
5:スペーサ
6:第1の保護シート
7:第2の保護シート
9:第1のインピーダンス素子
10:第2のインピーダンス素子
11:第1の整流部
12: 第2の整流部
13:電位差部
14:比較部
15:ゲート回路
18:通気口
20:判定部
50b:ベッドのマット
M:プラグ
F:ソケット
図1
図2
図3
図4
図5