特許第6771296号(P6771296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6771296-水熱ガス化反応器および廃水処理方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771296
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】水熱ガス化反応器および廃水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/74 20060101AFI20201012BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20201012BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C02F1/74 101
   B01J23/755 M
   C02F1/58 J
   C02F1/58 K
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-60695(P2016-60695)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-170370(P2017-170370A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391018592
【氏名又は名称】月島環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大庭 博司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 繁信
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 健一
(72)【発明者】
【氏名】松本 信行
(72)【発明者】
【氏名】安達 太起夫
(72)【発明者】
【氏名】久保 大樹
(72)【発明者】
【氏名】田屋舘 利夫
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−272644(JP,A)
【文献】 特開2005−220387(JP,A)
【文献】 特開平08−192192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/70 − 1/78
C02F 1/58
C10J 1/00 − 3/86
B01J 23/755
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を活性成分とする粒状触媒を充填してなり、金属塩溶解有機廃水に含まれる有機成分を分解する触媒充填塔を備えた水熱ガス化反応器であって、
金属塩溶解有機廃水をpH5以上9未満に調整し、生成する固形成分を除去する第一pH調整部及び/または、金属塩溶解有機廃水をpH9以上13.5未満に調整し、生成する固形成分を除去する第二pH調整部を備え、
前記第一pH調整部及び/または前記第二pH調整部を経由した金属塩溶解有機廃水を前記触媒充填塔に供給する、廃水供給部を備え
前記第二pH調整部が、金属塩溶解有機廃水に炭酸塩を添加する炭酸塩添加部または重炭酸塩を添加する炭酸水素塩添加部を備えた水熱ガス化反応器。
【請求項2】
前記第一pH調整部が、金属塩溶解有機廃水にアルカリ金属の水酸化物を添加する塩基添加部または強酸を添加する酸添加部と、生成した固形成分を除去する固液分離部とを備える請求項1に記載の水熱ガス化反応器。
【請求項3】
前記第二pH調整部が、金属塩溶解有機廃水にアルカリ金属の水酸化物を添加する塩基添加部と、生成した固形成分を除去する固液分離部とを備える請求項1または2に記載の水熱ガス化反応器。
【請求項4】
前記第一pH調整部及び前記第二pH調整部が、金属塩溶解有機廃水を前記第一pH調整部、前記第二pH調整部の順に流通させるように配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の水熱ガス化反応器。
【請求項5】
前記粒状触媒が、担体に金属ニッケルを担持してなる見掛密度0.5〜10g/cm3の触媒である請求項1〜4のいずれか一項に記載の水熱ガス化反応器。
【請求項6】
前記触媒充填塔が、内部を250℃〜350℃に加熱する加熱部を備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の水熱ガス化反応器。
【請求項7】
金属を活性成分とする粒状触媒を充填された触媒充填塔を用いて金属塩溶解有機廃水に含まれる有機成分を水熱ガス化処理する廃水処理法であって、
金属塩溶解有機廃水をpH5以上9未満に調整して、生成する固形成分を除去する第一工程と、前記第一工程にてpHが5以上9未満に調整された金属塩溶解有機廃水をpH9以上13.5未満に調整すること及び前記金属塩溶解有機廃水に炭酸ナトリウムを添加することにより、生成する固形成分を除去する第二工程とを行い、pH9以上13.5未満に調整された金属塩溶解有機廃水を前記触媒充填塔に供給する廃水処理方法。
【請求項8】
前記第二工程において、水酸化ナトリウムを添加した後に炭酸ナトリウムを添加して、金属塩溶解有機廃水をpH9以上13.5未満に調整する請求項7に記載の廃水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属を活性成分とする粒状触媒を充填してなり、金属塩溶解有機廃水(以下単に廃水と称する場合がある)に含まれる有機成分を分解する触媒充填塔を備えた水熱ガス化反応器、および、水熱ガス化反応器に用いる廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水熱ガス化とは、温度200〜350℃程度、圧力5〜15MPaG程度の高温高圧条件下で廃水中の有機物をメタンなどのガスに転換する技術である。従来、水熱ガス化反応器は、触媒を固定化した触媒充填塔に廃水を流通自在に構成したものが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−272644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような水熱ガス化反応を行う場合に、触媒充填塔に廃水を供給する廃水管や、触媒充填塔で得られた気液混相流となった廃水を排出する排出管等に固形成分が堆積する現象がみられる場合がある。
【0005】
このような固形成分が堆積すると、廃水の流路が閉塞して廃水が流れなくなるとともに、配管や触媒充填等の内圧が上昇するため、それらの耐圧以上の内圧がかかってしまう恐れがあり運転を止める必要がある等の問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記実情に鑑み、廃水に含まれる有機成分を分解する触媒充填塔を水熱ガス化反応器として用いる場合に、廃水の流路の閉塞を防止できる水熱ガス化反応器および廃水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明の水熱ガス化反応器の特徴構成は、金属を活性成分とする粒状触媒を充填してなり、金属塩溶解有機廃水に含まれる有機成分を分解する触媒充填塔を備えた水熱ガス化反応器であって、
金属塩溶解有機廃水をpH5以上9未満に調整し、生成する固形成分を除去する第一pH調整部及び/または、金属塩溶解有機廃水をpH9以上13.5未満に調整し、生成する固形成分を除去する第二pH調整部を備え、
前記第一pH調整部及び/または前記第二pH調整部を経由した金属塩溶解有機廃水を前記触媒充填塔に供給する、廃水供給部を備え
前記第二pH調整部が、金属塩溶解有機廃水に炭酸塩を添加する炭酸塩添加部または重炭酸塩を添加する炭酸水素塩添加部を備えた点にある。
【0008】
〔作用効果1〕
本発明者らは鋭意研究の結果、廃水管等に堆積する固形成分が、炭酸カルシウムやアルミナのような金属塩由来成分であることを明らかにし、また、触媒充填塔の入口側で堆積する成分には炭酸カルシウムが多く含まれ、触媒充填塔の出口側で堆積する成分には、アルミナが多く含まれていることを明らかにした。
【0009】
これらの堆積物は、廃水が触媒充填塔に供給される段階でpHが高くなった際に加熱されることで析出しやすくなったカルシウムや、水熱ガス化反応により発生する炭酸ガスでpHが低下した際に析出しやすくなったアルミニウムが、廃水管等の流速の低下する部分に沈殿付着することにより生じたものと考えられ、次第に堆積し流路を閉塞するものであると考えられる。
【0010】
そこで、第一pH調整部を設けることにより、廃水を中性側のpH5以上9未満に保持して固形成分を生成することができ、この固形成分は主にアルミニウム等の廃水中に含まれる金属成分となっているため、この固形成分を除去すると、主にアルミニウムを効率よく除去することができる。すなわち、アルミニウムはpH5以上9未満程度で水酸化アルミニウムとして沈殿するから、固形成分の除去により廃水中からアルミニウム成分を除去することができる。
ここで、アルミニウム成分は触媒充填塔入口側ではpHが高くアルミン酸塩等として十分溶解しているために析出しにくいが、水熱ガス化反応により発生する炭酸ガスでpHが低下し中性付近になることにより、触媒充填塔の出口側では、アルミニウム成分が堆積するものと推定できる。
これにより、生成した固形成分(特にアルミニウム成分)が流路を閉塞したり粒状触媒を充填した触媒充填塔を閉塞したりする問題を抑制して、配管や触媒充填塔の内圧が高くなるような問題を抑制することができる。
なお、他の金属成分で同様の挙動を示すものについても除去できるものと推定できる。
【0011】
また、第二pH調整部を設けることにより、廃水をpH9以上13.5未満に保持して固形成分を生成することができ、この固形成分は主に鉄やカルシウム等の廃水中に含まれる金属成分となっているため、この固形成分を除去すると、主に鉄やカルシウム等を効率よく除去することができる。すなわち、カルシウムはpH9以上13.5未満において、溶存の炭酸ガス等と相まって炭酸カルシウムとして沈殿するから、廃水中からカルシウム成分を除去することができる。
ここで、従来カルシウム成分が触媒充填塔の入口側で堆積するのは、強アルカリ条件となった触媒充填塔入口側で徐々に炭酸塩化し、加熱されることでさらに炭酸塩化が進行することによると推定される。
つまり、第二pH調整部では、積極的にカルシウム成分を析出させて除去することができる。これにより、生成した固形成分(特にカルシウム成分)が流路を閉塞したり粒状触媒を充填した触媒充填塔を閉塞したりする問題を抑制して、廃水の供給圧が高くなるような問題を抑制することができる。
なお、他の金属成分で同様の挙動を示すものについても除去できるものと推定できる。
また、pHを調整する場合に、pHを低下させる必要があることも想定されるが、このような場合、酸を添加して調整すればよい。このような場合に用いられる酸としては、強酸が好ましく、たとえば、硫酸が用いられる。
更に、pH9においては、カルシウム成分を炭酸カルシウムとして析出させられる。そのため、廃水に炭酸ナトリウムを添加する炭酸塩添加部を有すると、廃水中に炭酸塩が十分に存在する状況下で、カルシウム成分を析出させることができ、例えば水酸化物として析出させる場合(pH13.5以上)に比べて、低いpH(9以上13.5未満)でカルシウム成分を析出させられるようになる。したがって、安価で取り扱い容易な炭酸ナトリウムにより、温和な条件で種々の金属成分(特にカルシウム)を析出させられるようになる。また、pH13.5以上になると、炭酸カルシウムが再溶解するおそれがあるため、pH9以上13.5未満とする。
【0012】
これらの第一pH調整部及び第二pH調整部を経由した廃水を触媒充填塔に供給する廃水供給部を備えることにより、供給される廃水中においては、特にアルミニウムやカルシウムといった、析出堆積して配管等を閉塞するおそれを生じる成分が、ともに減少したものとなっている。そのため、廃水の流路が閉塞して廃水が流れなかったり、配管や触媒充填等の内圧が上昇するため、それらの耐圧以上の内圧がかかる恐れがあり運転を止める必要が生じたりする等の問題を解消することができる。また、廃水中の成分が予め判明している場合は、第一pH調整部または第二pH調整部のいずれか一方を用いることでも対応する金属成分の除去を行うことができる。
【0013】
〔構成2〕
また、前記第一pH調整部が、金属塩溶解有機廃水にアルカリ金属の水酸化物を添加する塩基添加部または強酸を添加する酸添加部と、生成した固形成分を除去する固液分離部とを備えてもよい。
【0014】
〔作用効果2〕
廃水として、酸性のものを用いる場合には、第一pH調整部としては、アルカリを添加することにより、pHを5以上9未満に調整することができる。また、アルカリ金属の水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが例示でき、これらは反応性が十分に高く、取り扱いにも熟練を要しない点から好適である。
【0015】
塩基の添加により生成した固形成分は、固液分離部において分離することができ、これにより廃水中のアルミニウムを除去することができ、水熱ガス化反応時に流路が閉塞するなどの問題が生じる虞を大きく低減することができる。
【0016】
〔構成3〕
また、前記第二pH調整部が、金属塩溶解有機廃水にアルカリ金属の水酸化物を添加する塩基添加部と、生成した固形成分を除去する固液分離部とを備えてもよい。
【0017】
〔作用効果3〕
廃水として、中性〜酸性のものを用いる場合には、第二pH調整部としては、塩基を添加することによりpH9以上13.5未満に調整することができる。また、アルカリ金属の水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが例示でき、汎用的かつ安価であり、反応性が十分に高く、取り扱いにも熟練を要しない点から好適である。
【0018】
また、本発明に係る水熱ガス化反応器は、上記のように、廃水に炭酸ナトリウムを添加する炭酸塩添加部を有しており、廃水中に炭酸塩が十分に存在する状況下で、カルシウム成分を析出させることができ、水酸化物として析出させる場合(pH13.5以上)に比べて、低いpH(9以上13.5未満)でカルシウム成分を析出させられるようになって、塩基添加部からの水酸化ナトリウム添加量を低減することができる。したがって、水酸化ナトリウムよりも安価で取り扱い容易な炭酸ナトリウムによりより温和な条件で種々の金属成分(特にカルシウム)を析出させられるようになる。また、アルカリを添加した後に炭酸塩を添加することにより炭酸塩の不必要な分解(たとえば廃水中に残留する酸との反応による分解)を抑制できる利点もある。
【0019】
アルカリ及び炭酸塩の添加により生成した固形成分は、固液分離部において分離することができ、これにより廃水中の種々の金属(特にカルシウム)を除去することができ、水熱ガス化反応時に流路が閉塞するなどの問題が生じる虞を大きく低減することができる。
【0020】
〔構成4〕
また、前記第一pH調整部及び前記第二pH調整部が、金属塩溶解有機廃水を前記第一pH調整部、前記第二pH調整部の順に流通させるように配置されていることが望ましい。
【0021】
〔作用効果4〕
廃水として、酸性のものを用いる場合には、pHの調整により中性領域のpH5以上9未満を経てpHが9以上13未満の強アルカリ領域に達するため、第一pH調整部、第二pH調整部の順に流通され、それぞれのpH調整部にて析出した固形成分が除去されることが望ましい。
【0022】
ただし、廃水は種々の処理段階における各工程に起因して液性がアルカリ性に偏っている場合も考えられ、このような場合には、廃水を第二pH調整部、第一pH調整部の順に流通させるように配置されていても構わない場合もあることも付記しておく。なお、触媒反応塔の入口を高pHにする必要がある場合は、廃水が第一pH調整部、第二pH調整部の順に流通され、それぞれのpH調整部にて析出した固形成分が除去されることで、さらに追加のアルカリを添加することなく、触媒塔入口pHの条件を満たすことが多く、やはり、廃水が第一pH調整部、第二pH調整部の順に流通されることが効率よく処理を行う上で好ましい。
さらに、廃水の性状によっては、第一pH調整部または第二pH調整部で,固形物が発生しない場合があるが、このような場合には、固形物が発生するpH調整槽のみを配置すればよい。
【0023】
〔構成5〕
また、前記粒状触媒が、担体に金属ニッケルを担持してなる見掛密度0.5〜10g/cm3の触媒であってもよい。
【0024】
〔作用効果5〕
粒状触媒として、担体に金属を担持してなる見掛密度0.5〜10g/cm3の触媒を用いると、粒状触媒の流動に伴う流動触媒同士の摩擦等に対する機械強度を高くすることができる。また、粒状触媒は、見掛密度を0.5〜10g/cm3としておくことにより、水を主成分とする流体に容易に流動させられる。粒状触媒の見掛密度の範囲は、0.5〜2g/cm3であることがより好ましく、0.9〜1.2g/cm3であることがさらに好ましい。
【0025】
〔構成6〕
また、前記触媒充填塔が、内部を250℃〜350℃に加熱する加熱部を備えてもよい。
【0026】
〔作用効果6〕
上記構成によると、粒状触媒は、たとえば、メタノール等に代表される被処理物(有機物)をより効率的に水熱ガス化反応により処理することができ、被処理物を含有する流体を効率良く清浄化することができる。
【0027】
〔構成7〕
また、本発明の廃水処理方法の特徴構成は、金属を活性成分とする粒状触媒を充填された触媒充填塔を用いて金属塩溶解有機廃水に含まれる有機成分を水熱ガス化処理する廃水処理法であって、
金属塩溶解有機廃水をpH5以上9未満に調整して、生成する固形成分を除去する第一工程と、前記第一工程にてpHが5以上9未満に調整された金属塩溶解有機廃水をpH9以上13.5未満に調整すること及び前記金属塩溶解有機廃水に炭酸ナトリウムを添加することにより、生成する固形成分を除去する第二工程とを行い、pH9以上13.5未満に調整された金属塩溶解有機廃水を前記触媒充填塔に供給する点にある。
【0028】
〔作用効果7〕
第一工程により、廃水を中性側のpH5以上9未満に保持して固形成分を生成することができ、この固形成分は主にアルミニウム等の廃水中に含まれる金属成分となっているため、この固形成分を除去すると、主にアルミニウムを効率よく除去することができる。すなわち、アルミニウムはpH5以上9未満程度で水酸化アルミニウムとして沈殿するから、固形成分の除去により廃水中からアルミニウム成分を除去することができる。
【0029】
また、第二工程において、第一工程にてpHが5以上9未満に調整された廃水をpH9以上13.5未満に保持すること及び金属塩溶解有機廃水に炭酸ナトリウムを添加することにより、固形成分を生成することができ、この固形成分は主に鉄やカルシウム等の廃水中に含まれる金属成分となっているため、この固形成分を除去すると、主に鉄やカルシウム等を効率よく除去することができる。すなわち、カルシウムはpH9以上13.5未満において、溶存の炭酸ガス等と相まって炭酸カルシウムとして沈殿するから、廃水中からカルシウム成分を除去することができる。

【0030】
そのため、供給される廃水中には、特にアルミニウムやカルシウムといった、析出堆積して配管等を閉塞するおそれを生じる成分を、ともに減少したものとなっている。そのため、廃水の流路が閉塞して廃水が流れなかったり、配管や触媒充填等の内圧が上昇するため、それらの耐圧以上の内圧がかかってしまう恐れがあり運転を止める必要があったりする等の問題を解消することができる。
【0031】
〔構成8〕
また、上記廃水処理方法の前記第二工程において、水酸化ナトリウムを添加した後に炭酸ナトリウムを添加して、金属塩溶解有機廃水をpH9以上13.5未満に調整することが好ましい。
【0032】
〔作用効果8〕
水酸化ナトリウムを添加した後に炭酸ナトリウムを添加すると、pHの高くなった状態の廃水に炭酸ナトリウムを添加することになるから、pH9以上13.5未満に調整するために消費される炭酸ナトリウムの使用量を低減できるとともに、炭酸ナトリウムの不必要な分解反応を抑制できる。
【発明の効果】
【0033】
したがって、廃水に含まれる有機成分を分解する触媒充填塔を水熱ガス化反応器として用いる場合に、廃水の流路の閉塞を防止できる水熱ガス化反応器及び廃水処理方法を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】水熱ガス化反応器の概略図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明の実施形態に係る水熱ガス化反応器を説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0036】
〔水熱ガス化反応器〕
水熱ガス化反応器は、金属を活性成分とする粒状触媒aを充填してなり、金属塩溶解有機廃水(以下、単に廃水と称する場合がある)に含まれる有機成分を分解する触媒充填塔3を備える。また、金属塩溶解有機廃水をpH5以上9未満に調整し、生成する固形成分を除去する第一pH調整部7と、金属塩溶解有機廃水をpH9以上13.5未満に調整し、生成する固形成分を除去する第二pH調整部8とを備える。さらに、第一pH調整部7及び第二pH調整部8を経由した金属塩溶解有機廃水を触媒充填塔3に供給する、廃水供給部を備える。
ここで、第一pH調整部7が、金属塩溶解有機廃水に水酸化ナトリウムを添加する塩基添加部71と、生成した固形成分を除去する固液分離部72とを備える。一方、第二pH調整部8が、金属塩溶解有機廃水に水酸化ナトリウムを添加する塩基添加部81aと、金属塩溶解有機廃水に炭酸ナトリウムを添加する炭酸塩添加部81bと、生成した固形成分を除去する固液分離部82とを備える。そして、第一pH調整部7及び第二pH調整部8が、金属塩溶解有機廃水を第一pH調整部7、第二pH調整部8の順に流通させるように配置されている。
【0037】
より具体的には、水熱ガス化反応器は、約pH3の廃水を貯留する原水タンク1を備え、原水タンク1に貯留された廃水をpH調整及び固液分離を行う廃水処理方法を前処理工程として行った後、昇圧して供給する廃水供給部としての昇圧ポンプ2を備え、内部に触媒を充填してなる触媒充填塔3に廃水を流通して水熱ガス化反応を行うように設けてある。触媒充填塔3に供給された廃水は、水熱ガス化作用を受けたのち触媒充填塔3から排出され、冷却器4により冷却され、保圧弁5を経由して大気開放されたのち、気液分離器6において生成したガスを分離回収されるとともに、処理済水(処理水)として外部に放出される後処理を受ける。
【0038】
〔触媒充填塔〕
触媒充填塔3は、例えば、第一触媒充填塔31および第二触媒充填塔32を直列に接続して構成される。第一触媒充填塔31および第二触媒充填塔32は、それぞれ、内径7.53mm、長さ305mm(触媒充填可能な有効容積13.58mL)の反応容器からなり、内部に粒状触媒aを疎に(上部に空間をあけて)充填してある。また、第一触媒充填塔31および第二触媒充填塔32は全体を流動砂浴33に収容して、流動砂浴33の外側に設けられた加熱部34により第一触媒充填塔31および第二触媒充填塔32の反応容器の内部を250℃〜350℃に加熱可能に構成されている。また、反応容器の内部の圧力は保圧弁5により15MPa(ゲージ圧)以下の任意の圧力に調整することができる。
第一触媒充填塔31および第二触媒充填塔32は、廃水を受け入れる流体供給部31a、32aを下部に備えるとともに、処理された廃水および生成ガスを排出する流体排出部31b、32bを上部に備える。尚、流体排出部31b、32bにおいては、粒状触媒aを通過させずに廃水および生成ガスを触媒充填塔3上部から排出可能にするスクリーン(図示せず)を設けてある。また、流体供給部31a、32aおよび流体排出部31b、32bの近傍に反応容器の温度を検知するセンサ(図示せず)を設けてあり、昇圧ポンプ2から圧力8.83MPa(ゲージ圧)で供給された廃水は、たとえば、反応温度285℃に保持され、廃水の水熱ガス化処理が行われる。
尚、触媒充填塔3としては、二塔設ける例を示したが、これに限らず、一塔としても良く、さらに多数塔設けてもよい。
【0039】
粒状触媒aとしては金属を活性成分とする触媒を用い、反応容器の触媒充填有効容積の約60%〜98%を充填してある。
【0040】
〔粒状触媒〕
ここで用いられる触媒としては、金属を活性成分とする粒状触媒aであれば任意のものを採用することができるが、好適には、炭素質担体、金属酸化物担体等を担体として、貴金属および卑金属を含むたとえばニッケル等の遷移金属のような金属を担持した触媒が用いられる。さらに好適には、イオン交換樹脂にニッケル化合物の水溶液を作用させ、イオン交換により結合、担持させたニッケル担持高分子有機物を、450℃〜500℃にて焼成し、イオン交換樹脂を炭化させた見掛密度0.5〜10g/cm3のものが用いられる。
【0041】
ここで用いられる担体としては、ニッケル担持高分子有機物は、炭化処理可能な高分子有機物にニッケルを担持させてなるものであれば、任意のものを採用することができるが、好適には、イオン交換樹脂にニッケル化合物の水溶液を作用させ、イオン交換により結合、担持させたものが好適に用いられる。イオン交換樹脂としては、強酸性イオン交換樹脂、弱酸性イオン交換樹脂のいずれも使用することができる。ニッケル化合物としては、水溶性のものであればいずれも用いることができる。ニッケル化合物は、高分子有機物の炭化処理後、炭化処理生成物に対して50%程度のニッケルが含有される量が適用される。
【0042】
〔前処理〕
触媒充填塔3における水熱ガス化反応を行う廃水処理方法として、第一pH調整部7で廃水をpH5以上9未満に調整し、生成する固形成分を除去する第一工程と、第二pH調整部8で廃水をpH9以上13.5未満に調整し、生成する固形成分を除去する第二工程とにより、廃水中の金属成分をあらかじめ除去する。
本実施形態の廃水処理方法では、第二工程は、第一工程にてpHが5以上9未満に調整された廃水をpH9以上13.5未満に調整して、生成する固形成分を除去するように構成されている。
【0043】
第一pH調整部7は、原水タンク1と昇圧ポンプ2との間に、廃水に水酸化ナトリウムを添加する塩基添加部71と、生成した固形成分を除去する固液分離部72とを備える。
また、第一pH調整部7は、受入タンク73を備え、塩基添加部71は、受入タンク73に水酸化ナトリウムを供給可能に設けられている。これにより原水タンク1から受入タンク73に受け入れられた廃水が、塩基添加部71から供給される水酸化ナトリウムによりpH7程度となるように調整することができる。
また、固液分離部72は、その受入タンク73から排出される廃水をろ過するろ過フィルタを備えたろ過膜装置を備える。ろ過膜装置は、たとえば孔径5μmの粗ろ過膜部72aと孔径1μmの密ろ過膜部72bとを備える。これにより、廃水中の金属成分の内、析出したアルミニウムを金属水酸化物として析出させて、精度よくろ別可能に構成してある。また、受入タンク73と固液分離部72との間には、廃水を受入タンク73に安定供給するための送液ポンプ74を設けてある。なお、ろ過膜装置として粗ろ過膜部72aと密ろ過膜部72bとを備えるから、粗ろ過膜部72aが密ろ過膜部72bの目詰まりを抑制しつつ、水酸化アルミニウム等の細かい粒子を密ろ過膜部72bが効率よくろ過することができる。
【0044】
第二pH調整部8は、第一pH調整部7と触媒充填塔3との間に、廃水に水酸化ナトリウムを添加する塩基添加部81aと、廃水に炭酸ナトリウムを添加する炭酸塩添加部81bと、生成した固形成分を除去する固液分離部82とを備える。
また、第二pH調整部8は、第一pH調整部7の密ろ過膜部72bにてろ過された廃水を受け入れる受入タンク83を備え、塩基添加部81aは、受入タンク83に水酸化ナトリウムを供給可能に設けられ、炭酸塩添加部81bは、受入タンク83に炭酸ナトリウムを供給可能に設けられている。受入タンク83では、塩基添加部81aにより受入タンク83内をpH12程度まで調整した後、炭酸塩添加部81bにより炭酸ナトリウムを0.01mol/L程度添加し,受入タンク83内をpH12〜13程度に調整することができる。
また、固液分離部82は、その受入タンク83から排出される廃水をろ過するろ過フィルタを備えたろ過膜装置を備える。ろ過膜装置は、たとえば孔径5μmの粗ろ過膜部82aと孔径1μmの密ろ過膜部82bとを備える。これにより、廃水中の金属成分の内、析出した炭酸カルシウム等の金属炭酸塩や水酸化鉄等の金属水酸化物として析出させて、精度よくろ別可能に構成してある。また、受入タンク83と固液分離部82との間には、廃水を受入タンク83に安定供給するための送液ポンプ84を設けてある。また、ろ過膜装置を通過した廃水を、安定して昇圧ポンプ2にて触媒充填塔3に供給するために一時貯留する中間タンク9を昇圧ポンプ2の上流側に設けてある。
【0045】
上記孔径5μmの粗ろ過膜部72a、82aと孔径1μmの密ろ過膜部72b、82bとしては、たとえば、ポリプロピレン製の精密ろ過膜を用いることができる。
【0046】
このような構成により廃水は、第一pH調整部7、第二pH調整部8の順に流通され、廃水に含まれるアルミニウム、カルシウムを主体とする金属成分が有効に析出除去された後、触媒充填塔3に供給されることとなる。
【0047】
〔後工程〕
触媒充填塔3から排出される水熱ガス化処理済水は冷却器4で常温程度まで冷却されたのち、保圧弁5を経由して大気開放されたのち、気液分離器6において生成したガスを分離回収されるとともに、処理済水として外部に放出される。
【0048】
以下、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
〔固形成分の付着試験〕
上記水熱ガス化反応器において、第一pH調整部7、第二pH調整部8を用いることなく、下記組成の試験廃水を水熱ガス化反応に供し、70時間運転を行ったところ、触媒充填塔3の入口部分及び出口部分に固形物が付着し、廃水流路が1/2程度まで閉塞されていることが分かった。この固形物の組成をEPMAおよびFT−IRで分析したところ、入口部分の固形物は炭酸カルシウムを主成分とするものであり、出口部分の固形物はアルミナを主成分とするものであることが分かった。
【0050】
以下の水溶液を調整し、試験廃水として用いた。
試験廃水:
プロピレングリコール59,000mg/L、エチレングリコール14,000mg/L、酢酸8,300mg/L
Mg 1.0mg/L
Ca 23mg/L
Al 1.1mg/L
pH 2.74
運転条件:
反応温度:285℃
反応容器出口圧:8.83MPa(ゲージ圧)
流量:68mL/h
触媒量:39mL/h(触媒充填塔三塔)
【0051】
〔第一pH調整部による固形物析出試験〕
上記試験廃水に対して、目標pH7になるように水酸化ナトリウムを添加し、10分間静置した後、析出した固形物をNo.5cのろ紙にてろ別したところ、金属含有量が表1のようになった。
【0052】
【表1】
【0053】
この結果から、第一pH調整部7では、pHを7程度に調整することにより、廃水に含まれるアルミニウム成分を効果的に減少させて、触媒充填塔3におけるアルミナ析出を抑制できることが分かった。なお、目標pH7というのは、水酸化ナトリウム添加直後のpHが7になるように調整するもので、実際に固形物をろ過した後の廃水のpHは、固形物の析出により変動している。実際には水酸化アルミニウムは一般的な廃水中の金属イオン濃度においてpH4.5程度にて析出をはじめ、pH9.5程度でアルミン酸イオンを形成し始める(pH13程度で完全にアルミン酸塩として再溶解する。)ことから、目標pH5以上9未満程度として水酸化ナトリウムを添加すると、アルミニウム濃度をきわめて低く低下させられることがわかった。
【0054】
〔第二pH調整部による固形物析出試験〕
第一pH調整部7による固形物析出試験後の廃水(表中第一pH調整部と記載)に対して、水酸化ナトリウムの総添加量が0.38mol/Lとなるように水酸化ナトリウムを添加してpHを約12とし、さらに、炭酸ナトリウムの総添加量が0.01mol/Lとなるように炭酸ナトリウムを添加してpHを約12〜13として、10分間静置した後、析出した固形物をNo.5cのろ紙にてろ別したところ(表中第二pH調整部と記載)、金属含有量が表2のようになった。
【0055】
【表2】
【0056】
この結果から、第二pH調整部8では、pHを12〜13程度に調整することにより、廃水に含まれるカルシウム成分を効果的に減少させて、触媒充填塔3における炭酸カルシウムの析出を抑制できることが分かった。なお、目標pH12〜13というのは、水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを添加直後のpHが12〜13になるように調整するもので、実際に固形物をろ過した後の廃水のpHは、固形物の析出により変動している。実際にはカルシウムイオンは比較的高濃度で約pH8程度まで重炭酸塩として水中に溶解する状態で存在し、pH8程度から析出が開始するとともに、約pH9では5×10-5M程度しか溶解しない。また、一端析出した炭酸カルシウムは、pH13.5程度にて再溶解するため、目標pH9以上13.5未満程度として水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを添加すると、カルシウム濃度をきわめて低く低下させられることがわかった。
なお、水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムとはこの順に添加することが好ましく、この順に添加することによって炭酸ナトリウムの使用量を低減できるとともに、炭酸ナトリウムの不必要な分解反応を抑制できる。
【0057】
〔連続試験〕
水熱ガス化反応器の前処理工程としての廃水処理方法に用いることのできる実際的な第一pH調整部7、第二pH調整部8を作製し、試験廃水による固形物析出試験を行ったところ以下のようになった。
【0058】
上述の図1に示す水熱ガス化反応器に下記条件にて試験廃水を流通させて、触媒充填塔3に流入する廃水の組成を調べたところ表3のようになった。
【0059】
第一pH調整部7、第二pH調整部8のろ過膜部:
粗ろ過膜部 孔径5μmのポリプロピレン製ろ過膜(アドバンテック東洋株式会社製ポリプロピレンワインドカートリッジフィルター TCW−5N−PPS)
密ろ過膜部 孔径1μmのポリプロピレン製ろ過膜(アドバンテック東洋株式会社製ポリプロピレンプリーツカートリッジフィルター TCP−JX−1FE)
【0060】
以下の水溶液を調整し、試験廃水として用いた。
試験廃水:
プロピレングリコール59,000mg/L、エチレングリコール14,000mg/L、酢酸8,300mg/L
Ca 25mg/L
Mg 1.1mg/L
Al 0.9mg/L
pH 3.05
運転条件:
反応温度:285℃
反応容器出口圧:8.83MPa(ゲージ圧)
流量:68mL/h
触媒量:39mL/h(触媒充填塔三塔)
【0061】
【表3】
【0062】
表3より、前処理工程によると、廃水に含まれる金属成分のうち触媒充填塔で析出して不都合の起きやすくなるものを、あらかじめきわめて少なくなるように調整できることがわかり、水熱ガス化反応器の長期安定運転に寄与することが分かった。
また、このようにして得られた廃水を水熱ガス化反応器に供給して連続2049時間運転を行ったが、上記固形成分の付着試験において発生した固形物の付着は観測されず、安定した運転が可能であることが分かった。
【0063】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、第一pH調整部7及び第二pH調整部8が、金属塩溶解有機廃水を第一pH調整部7、第二pH調整部8の順に流通させるように配置したが、触媒充填塔3に供給される前に、金属塩溶解有機廃水中の金属成分を析出させることができる構成であれば、上記配置に限定されるものではない。
例えば、第一pH調整部7及び第二pH調整部8を、金属塩溶解有機廃水が第二pH調整部8、第一pH調整部7の順に流通させるように配置してもよい。即ち、金属塩溶解有機廃水をpH9以上13.5未満に調整し生成する固形成分を除去し、その後、pH5以上9未満に調整し生成する固形成分を除去する構成としてもよい。
【0064】
(2)上記実施形態では、金属塩溶解有機廃水をpH5以上9未満に調整して、生成する固形成分を除去する第一工程と、第一工程にてpHが5以上9未満に調整された金属塩溶解有機廃水をpH9以上13.5未満に調整して、生成する固形成分を除去する第二工程とを行う廃水処理方法において、第一工程においてpH5以上9未満に調整される金属塩溶解有機廃水として、pHが酸性のものを用いて説明したが、これに限らず、pHがアルカリ性のものを用いることもできる。
この場合、第一工程では、pHがアルカリ性の金属塩溶解有機廃水に硫酸等の酸を添加してpHを5以上9未満に調整して生成する固形成分を除去する構成とすることができる。
【0065】
(3)上記実施形態では、第二pH調整部8を、金属塩溶解有機廃水に水酸化ナトリウムを添加する塩基添加部81aと、金属塩溶解有機廃水に炭酸ナトリウムを添加する炭酸塩添加部81bと、生成した固形成分を除去する固液分離部82とを備えるように構成し、第二工程において、水酸化ナトリウムを添加した後に炭酸ナトリウムを添加するように構成したが、第二pH調整部8において、炭酸塩添加部81bを省略して塩基添加部81aと固液分離部82とを備えるように構成してもよい。この場合、第二工程において水酸化ナトリウムのみを添加するように構成してもよいし、その他のアルカリ成分を添加するように構成してもよい。
【0066】
(4)上記実施形態において、第一pH調整部7や第一工程において、金属塩溶解有機廃水をpH5以上9未満に調整する際には、水酸化ナトリウム以外のアルカリを単独で或いは水酸化ナトリウムと混合して用いてもよく、第二pH調整部8や第二工程において、金属塩溶解有機廃水をpH9以上13.5未満に調整する際には、水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウム以外のアルカリを単独或いは水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムと混合して用いてもよい。
【0067】
(5)なお、上述の実施形態では、アルミニウム成分及びカルシウム成分を析出させて除去する形態を例示したが、同様のpH調整部により、主に他の金属成分を除去する形態としてもよい。例えば、第一pH調整部では、共存する金属成分の割合によっては、亜鉛とアルミニウムは同様の条件で析出しやすいことが知られており、亜鉛を析出させる目的で第一pH調整部を作用させることができるし、他にもスズ、鉛等の金属成分について同様に析出除去することができ、廃水の流路の閉塞を防止できる。また、第二pH調整部では、カルシウムの他に、マグネシウム、鉄等を析出させる目的で第二pH調整部を作用させることができるし、同様に析出除去することができ、廃水の流路の閉塞を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の水熱ガス化反応器は、廃水の流路の閉塞を防止できるため、廃水に含まれる有機成分を分解する水熱ガス化反応器として有用に用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
2 :昇圧ポンプ(廃水供給部)
3 :触媒充填塔
7 :第一pH調整部
8 :第二pH調整部
71 :塩基添加部
72 :固液分離部
81a :塩基添加部
81b :炭酸塩添加部
82 :固液分離部
a :粒状触媒
図1