特許第6771318号(P6771318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一安 知子の特許一覧

<>
  • 特許6771318-インフラ管理方法及び装置 図000002
  • 特許6771318-インフラ管理方法及び装置 図000003
  • 特許6771318-インフラ管理方法及び装置 図000004
  • 特許6771318-インフラ管理方法及び装置 図000005
  • 特許6771318-インフラ管理方法及び装置 図000006
  • 特許6771318-インフラ管理方法及び装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771318
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】インフラ管理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20201012BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B61L23/00 Z
   E01D22/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-112930(P2016-112930)
(22)【出願日】2016年6月6日
(65)【公開番号】特開2017-217980(P2017-217980A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】516004824
【氏名又は名称】一安 知子
(74)【代理人】
【識別番号】100114166
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 浩三
(72)【発明者】
【氏名】一安 知子
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−238970(JP,A)
【文献】 特開2004−291935(JP,A)
【文献】 特開2010−025855(JP,A)
【文献】 特開2014−076780(JP,A)
【文献】 特開平08−238960(JP,A)
【文献】 特開平09−109737(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0274759(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0071269(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に構築された交通系社会インフラの構造物を撮像する個別監視手段を、所定の間隔で前記構造物に沿って連続的に複数配置し、前記個別監視手段によって撮影された画像と基準画像とをそれぞれ比較することによって、前記構造物の異常を検出し、その検出結果に応じて前記個別監視手段のそれぞれが備えている報知手段を用いて前記構造物に異常が検出されたことを視認可能に報知するインフラ管理方法であって、
近隣する複数の個別監視手段との間で相互に通信が可能な相互通信手段であって、前記個別監視手段のそれぞれが備えている相互通信手段によって、前記構造物の異常検出結果に応じた前記構造物の異常検出情報を、検出した前記個別監視手段の近隣に存在する複数の個別監視手段へ伝達し、前記構造物に異常が検出されたことを、前記構造物の異常を検出した前記個別監視手段の近隣に存在する複数の前記個別監視手段の前記報知手段を用いて、視認可能に報知し、
通常は送電手段から前記個別監視手段に対して電力を供給し、災害などによって前記送電手段からの電力供給が困難な場合には、前記個別監視手段のそれぞれが備えている補助電源手段を用いて前記個別監視手段に電力を供給することを特徴とするインフラ管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインフラ管理方法において、前記交通系社会インフラの構造物である連続的な鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備を複数の前記個別監視手段によって撮影し、前記鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備における異常を検出した場合、前記鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備の異常を検出した前記個別監視手段の近隣に存在する複数の個別監視手段に前記鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備の異常検出情報を、前記相互通信手段を介して伝達し、前記鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備に異常が検出されたことを、前記報知手段を用いて視認可能に報知することを特徴とするインフラ管理方法。
【請求項3】
請求項2に記載のインフラ管理方法において、前記個別監視手段が異常を検出した場合、前記個別監視手段に近隣の前記個別監視手段が検出した異常をその個別監視手段に備えられた報知手段から報知を受けた場合、または地震などの災害発生などで前記個別監視手段が車輌管理事務所等から異常の有無確認などを受けた場合に、異常検出時画像、現状画像及び基準画像の中の少なくとも2つの画像を比較する誤差検出処理によって、鉄道線路のレール、鉄道架線及びこれらに付随する設備のそれぞれの位置関係などを検出し、異常や変化の度合いが検測車や復旧用作業車の走行可能な範囲内にあるかの判断を行い、その結果を前記個別監視手段にそれぞれ備えられた報知手段を用いて報知することを特徴とするインフラ管理方法。
【請求項4】
請求項3に記載のインフラ管理方法において、前記基準画像または前記基準画像に付随する情報に、前記異常や変化の度合を計測するための寸法情報を予め設けておき、前記異常検出画像、前記現状画像及び前記基準画像との比較による誤差検出処理によって検出された前記鉄道線路のレール、鉄道架線及びこれらに付随する設備のそれぞれの位置関係を、前記寸法情報に基づいて検出することを特徴とするインフラ管理方法。
【請求項5】
連続的に構築された交通系社会インフラの構造物を撮影するために前記構造物に沿って所定の間隔で連続的に複数配置され、それぞれが報知手段を有する個別監視手段群と、
前記個別監視手段群によって撮影された画像と基準画像とをそれぞれ比較することによって、前記構造物の異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段の検出結果に応じて前記個別監視手段に接続された前記報知手段を用いて前記構造物に異常が検出されたことを視認可能に報知する制御手段とを備えたインフラ管理装置であって、
前記個別監視手段は、近隣する複数の個別監視手段との間で相互に通信が可能な相互通信手段をそれぞれが備えており、前記構造物の異常検出結果に応じた前記構造物の異常検出情報を、検出した前記個別監視手段の近隣に存在する複数の個別監視手段へ伝達し、前記構造物に異常が検出されたことを、前記構造物の異常を検出した前記個別監視手段の近隣に存在する複数の前記個別監視手段の前記報知手段を用いて、視認可能に報知し、
さらに、前記個別監視手段は、通常は送電手段から前記個別監視手段に対して電力の供給を受けており、災害などによって前記送電手段からの電力供給が困難な場合には、前記個別監視手段のそれぞれが備えている補助電源手段を用いて電力の供給を受けることを特徴とするインフラ管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のインフラ管理装置において、前記個別監視手段群が、前記交通系社会インフラの構造物である連続的な鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備を撮影し、前記制御手段が、前記鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備における異常を検出した場合、前記鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備の異常を検出した前記個別監視手段の近隣に存在する複数の個別監視手段に前記鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備の異常検出情報を、前記相互通信手段を介して伝達し、前記鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備に異常が検出されたことを、前記報知手段を用いて視認可能に報知することを特徴とするインフラ管理装置。
【請求項7】
請求項6に記載のインフラ管理装置において、前記個別監視手段が異常を検出した場合、前記個別監視手段に近隣の前記個別監視手段が検出した異常をその個別監視手段に備えられた報知手段から報知を受けた場合、または地震などの災害発生などで前記個別監視手段が車輌管理事務所等から異常の有無確認などを受けた場合に、異常検出時画像、現状画像及び基準画像の中の少なくとも2つの画像を比較する誤差検出処理によって、鉄道線路のレール、鉄道架線及びこれらに付随する設備のそれぞれの位置関係などを検出し、異常や変化の度合いが検測車や復旧用作業車の走行可能な範囲内にあるかの判断を行い、その結果を前記個別監視手段にそれぞれ備えられた報知手段を用いて報知することを特徴とするインフラ管理装置。
【請求項8】
請求項7に記載のインフラ管理装置において、前記基準画像または前記基準画像に付随する情報に、前記異常や変化の度合を計測するための寸法情報を予め設けておき、前記異常検出時画像、前記現状画像及び前記基準画像との比較による誤差検出処理によって検出された前記鉄道線路のレール、鉄道架線及びこれらに付随する設備のそれぞれの位置関係を、前記寸法情報に基づいて計測することを特徴とするインフラ管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業・社会生活の基盤となる施設を管理するインフラ管理方法及び装置に係り、特に道路、橋梁、鉄道路線などの社会インフラを管理するインフラ管理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の生活は、学校、病院、道路、港湾、工業用地、公営住宅、橋梁、鉄道路線、バス路線、上水道、下水道、電気、ガス、電話などの産業・社会生活の基盤となるさまざまな社会インフラによって支えられている。
これらの社会インフラの中で道路、橋梁、トンネル、鉄道路線などの交通系の社会インフラは、安全確保のために定期的な保守点検の実施が義務付けられている。このうち、鉄道路線においては、架線設備、鉄道軌道や道床などの状態を専用の軌道検測車などで監視し、保守点検の運用に利用している。従来、鉄道路線を管理するものとして、特許文献1に記載の鉄道架線設備の状態監視システムがあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−031643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の鉄道架線設備の状態監視システムは、鉄道架線設備を撮像するカメラ及び正常時の鉄道架線設備のデータを搭載している先行列車と、正常時の鉄道架線設備のデータを搭載している後行列車と、先行列車のカメラで撮像された画像を取り込み、この画像を処理するデータ処理部と、画像処理後にデータを蓄積するデータ蓄積部と、画像処理されたデータと正常時の鉄道架線設備のデータとを比較し、異常の有無を検知された鉄道架線設備の異常検知個所の詳細な調査を行うか否かを判断し、より詳細な調査が必要であると判定された場合、後行列車へ前記鉄道架線設備の異常検知個所の詳細な調査指令を送信する無線送受信装置を備え、調査指令に基づいて異常検知個所の詳細な調査を後行列車において行い、鉄道架線設備の異常発生個所を確定している。
【0005】
特許文献1に記載の鉄道架線設備の状態監視システムのような従来のインフラ管理方法は、カメラを搭載した列車や検測車などを軌道に沿って走行させることによって、鉄道架線設備の画像データを取り込み、取り込んだ画像データに各種処理を施して、異常の有無を検知するようにしている。
また、従来は、検測車や保線技術者の目視などによって定期的に状態監視を行っているが、その頻度は限られており、検査の信頼性の向上や効率化を図ることが困難であるため、最近では、営業列車に検測装置を搭載し、軌道の状態を高頻度に監視する技術が提案されている。
ところがこれらの技術は、地震などの大規模災害が発生した場合など従来のカメラや検測装置を搭載した営業列車や検測車などが走行することができない場合や、経年劣化による不具合や故障、いたずらなどの突発的な異常や障害物など定期的な状態監視では発見が困難な場合などへの考慮が出来ていなかった。また、これらの事象については発見が遅れると重大な事故を招くおそれがある。
本発明は、上述の点に鑑みなされたものであり、道路、橋梁、トンネル、鉄道路線などの社会インフラにおいて発生した異常状態に関する情報をリアルタイムで提供することのできるインフラ管理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインフラ管理方法の第1の特徴は、連続的に構築された交通系社会インフラの構造物を撮像する個別監視手段を、所定の間隔で前記構造物に沿って連続的に複数配置し、前記個別監視手段によって撮影された画像と基準画像とをそれぞれ比較することによって、前記構造物の異常を検出し、その検出結果に応じて前記個別監視手段にそれぞれ接続された報知手段群を用いて前記構造物に異常が検出されたことを報知することにある。
これは、交通系の社会インフラの構造物である道路、橋梁、トンネル、鉄道路線などは、連続的に構築されているので、その一部で経年劣化による不具合や故障、いたずらなどによる異常、予期せぬ障害物などが発生すると、連続する構造物全体に影響を与えるため、異常の発生を早期に検出することが望まれる。そこで、この発明では、カメラ付スマートフォンなどの簡易なカメラシステムを個別監視手段として、道路、橋梁、トンネル、鉄道路線に沿って連続的に複数個配置し、それぞれの個別監視手段が予め撮影してあった基準画像と、現在撮影中の画像とをリアルタイムで比較処理し、比較処理の結果、異なる個所が存在した場合、それを異常として検出する。異常個所が検出された場合、その検出結果をコンピュータ処理又は人為的処理にて判断し、その判断結果に応じて個別監視手段に接続されている報知手段を用いて異常の発生を報知する。報知手段としては、回転灯などのような視覚にて認識可能なものが比較的遠方から確認することができ、適している。回転灯などはその発色を異ならせることによって、異常の度合を報知することが可能である。
【0007】
本発明に係るインフラ管理方法の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のインフラ管理方法において、前記交通系社会インフラの構造物である連続的な鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備を複数の前記個別監視手段によって撮影し、前記鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備における異常を検出した場合、その検出結果に応じて前記異常の検出された前記個別監視手段を含む前後複数の前記報知手段を用いて報知することにある。
これは、交通系の社会インフラの構造物として、鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備を監視するものである。特に、鉄道路線及び鉄道架線設備は連続性が高いので、鉄道路線に沿って個別監視手段を連続的に設け、設けられた複数の個別監視手段によって鉄道路線及び鉄道架線設備を連続的に撮影し、監視することによって、異常の発生をリアルタイムで検出し、異常発生個所を容易に特定することが可能となる。また、異常の発生を検出した場合、異常を検出した個別監視手段を含んで、その前後複数の報知手段を用いて、視認可能に報知することによって、鉄道車両が異常発生箇所に到達する前に減速し、徐行運転や停止することが可能となる。特に、鉄道架線設備である送電用架線支持物は、約50〜100[m]間隔で設けられているので、この送電用架線支持物毎に個別監視手段を設けることが好ましい。
【0008】
本発明に係るインフラ管理方法の第3の特徴は、前記第2の特徴に記載のインフラ管理方法において、前記個別監視手段が異常を検出した場合、前記個別監視手段に近隣の前記個別監視手段が検出した異常をその個別監視手段に接続された報知手段群から報知を受けた場合、または地震などの災害発生などで前記個別監視手段が車輌管理事務所等から異常の有無確認などを受けた場合に、異常検出時画像、現状画像及び基準画像の中の少なくとも2つの画像を比較する誤差検出処理によって、鉄道線路のレール、鉄道架線及びこれらに付随する設備のそれぞれの位置関係などを検出し、異常や変化の度合いが検測車や復旧用作業車の走行可能な範囲内にあるかの判断を行い、その結果を前記個別監視手段にそれぞれ接続された報知手段群を用いて報知することを特徴とすることにある。
これは、異常検出時画像と基準画像、異常検出後の現状画像と基準画像、異常検出時画像と現状画像の中の2つの画像を比較し、その比較結果に基づいた誤差検出処理によって鉄道線路のレールや鉄道架線及びこれらに付随する設備との位置関係を検出し、異常や変化の度合いが検測車や復旧用作業車の走行可能な範囲内にあるかの判断を行い、その結果を個別監視手段の通信機能を用いて車輌管理事務所等へ通知し、最終的な検測車や復旧用作業車の走行指示判断を可能とするものである。上述の各画像の比較は、全て実行することが望ましいが、異常検出時画像と基準画像の比較結果だけを用いるようにしてもよい。また、異常検出時画像には、異常発生時の直前の画像及び異常発生後の画像の両方を含む概念であるので、直前画像及びその後の画像を含む異常検出時画像だけを比較してもよいし、異常検出直前の画像と現状画像を比較してもよい。
【0009】
本発明に係るインフラ管理方法の第4の特徴は、前記第3の特徴に記載のインフラ管理方法において、前記基準画像または前記基準画像に付随する情報に、前記異常や変化の度合を計測するための寸法情報を予め設けておき、前記異常検出画像、前記現状画像及び前記基準画像との比較による誤差検出処理によって検出された前記鉄道線路のレール、鉄道架線及びこれらに付随する設備のそれぞれの位置関係を、前記寸法情報に基づいて検出することにある。
これは、異常や変化の度合いを寸法による情報として提供することは鉄道レールの管理上非常に有益なため、基準画像または基準画像に付随する情報に、異常や変化の度合(変化量)を計測するための寸法計測用の寸法情報を予め設けておき、この寸法情報に基づいて異常や変化の度合を検出するようにしたものである。なお、前記第2、第3及び第4の特徴は、交通系の社会インフラの構造物として、鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備を監視する場合に言及しているが、これ以外の道路、橋梁、トンネルなどについても同様に異常個所(道路損傷、道路の陥没穴、落下物、亀裂、ひび割れ、段差やずれ、遊間の距離、その他の故障等)についても誤差検出処理を実行することによって、その位置関係等を検出することが可能である。
【0010】
本発明に係るインフラ管理装置の第1の特徴は、連続的に構築された交通系社会インフラの構造物を撮影するために前記構造物に沿って所定の間隔で連続的に複数配置され、それぞれが報知手段を有する個別監視手段群と、前記個別監視手段群によって撮影された画像と基準画像とをそれぞれ比較することによって、前記構造物の異常を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段の検出結果に応じて前記個別監視手段に接続された前記報知手段を用いて前記構造物に異常が検出されたことを報知する制御手段とを備えたことにある。
これは、前記インフラ管理方法の第1の特徴に対応したインフラ管理装置の発明である。
【0011】
本発明に係るインフラ管理装置の第2の特徴は、前記第1の特徴に記載のインフラ管理装置において、前記個別監視手段群が、前記交通系社会インフラの構造物である連続的な鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備を撮影し、前記制御手段が、前記鉄道路線及びこれに付随する鉄道架線設備における異常を検出した場合、その検出結果に応じて前記異常の検出された前記個別監視手段を含む前後複数の前記個別監視手段に接続された前記報知手段を用いて外部に報知することにある。
これは、前記インフラ管理方法の第2の特徴に対応したインフラ管理装置の発明である。
【0012】
本発明に係るインフラ管理装置の第3の特徴は、前記第2の特徴に記載のインフラ管理装置において、前記個別監視手段が異常を検出した場合、前記個別監視手段に近隣の前記個別監視手段が検出した異常をその個別監視手段に接続された報知手段群から報知を受けた場合、または地震などの災害発生などで前記個別監視手段が車輌管理事務所等から異常の有無確認などを受けた場合に、異常検出時画像、現状画像及び基準画像の中の少なくとも2つの画像を比較する誤差検出処理によって、鉄道線路のレール、鉄道架線及びこれらに付随する設備のそれぞれの位置関係などを検出し、異常や変化の度合いが検測車や復旧用作業車の走行可能な範囲内にあるかの判断を行い、その結果を前記個別監視手段にそれぞれ接続された報知手段群を用いて報知することにある。
これは、前記インフラ管理方法の第3の特徴に対応したインフラ管理装置の発明である。
【0013】
本発明に係るインフラ管理装置の第4の特徴は、前記第3の特徴に記載のインフラ管理装置において、前記基準画像または前記基準画像に付随する情報に、前記異常や変化の度合を計測するための寸法情報を予め設けておき、前記異常検出画像、前記現状画像及び前記基準画像との比較による誤差検出処理によって検出された前記鉄道線路のレール、鉄道架線及びこれらに付随する設備のそれぞれの位置関係を、前記寸法情報に基づいて計測することにある。
これは、前記インフラ管理方法の第4の特徴に対応したインフラ管理装置の発明である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインフラ管理方法及び装置によれば、道路、橋梁、トンネル、鉄道路線などの社会インフラにおいて発生した異常状態に関する情報をリアルタイムで提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】鉄道路線の架線設備の異常状態に関する情報をリアルタイムで提供することのできるインフラ管理方法及び装置の一例を示す図である。
図2】個別監視装置によって撮影された画像の一例を示す図である
図3】本発明の鉄道路線の架線設備の異常状態を監視するインフラ管理方法の基準となる動作の一例を示す図である
図4】本発明の鉄道路線の架線設備の異常状態を、寸法計測処理を用いて監視するインフラ管理方法の動作の一例を示す図である。
図5】赤色及び黄色に点灯/点滅する個別監視装置の具体例を示す図である。
図6】個別監視装置の設置個所の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面に従って本発明に係るインフラ管理方法及び装置の好ましい実施の形態について説明する。図1は、鉄道路線の架線設備の異常状態に関する情報をリアルタイムで提供することのできるインフラ管理方法及び装置の一例を示す図である。図1(A)は、A駅からZ駅までの鉄道路線の概略を示す。図1(B)は、図1(A)のB駅−C駅間の一部を拡大して示す。図1(B)には、5個の送電用架線支持物11〜15が存在し、各送電用架線支持物11〜15の上部側に個別監視装置B51〜B55が設置されている。なお、送電用架線支持物11〜15同士の間隔は、それぞれ約50〜100[m]である。この間隔は一例であり、これ以上又は以下の間隔のものも存在する。
【0017】
個別監視装置B51〜B55は、半ドーム形透明保護カバー内にカメラ付スマートフォン機能を内蔵している。このカメラ付スマートフォン機能は、カメラ機能、録画機能、メモリ機能、通信機能、画像処理機能などを備えている。カメラ付スマートフォン機能が判定に用いる画像は近赤外線画像ほかX線画像や可視光画像など検知対象の異常が検出し易い画像である。また、カメラ付スマートフォン機能による判定距離は、約70〜200[m]である。個別監視装置B51〜B55は、2色の回転灯を備えている。異常を検出した場合に、線路の前後約1[km]以内の個別監視装置B51〜B55の回転灯がその異常を示すために、赤色又は黄色に点灯/点滅するように構成されている。赤色の回転灯は、危険を示し、これを見た電車の運転手は走行中の電車を停止させる。また、黄色の回転灯は、この先に危険な状態が存在することなどによる注意を示し、これを見た電車の運転手は、徐行運転を開始する。
【0018】
カメラ付スマートフォン機能は、正常な状態の基準画像と異常前2時間分の撮影した画像を記憶可能な内部メモリを備えており、撮影した画像は、リアルタイム又は所定の時間間隔でインフラ管理センター等に送信される。個別監視装置B51〜B55のカメラ付スマートフォン機能への給電は、外部に備えた自立用ソーラー電池と、その充電池を切り替え可能な補助電源として、通常は、送電用架線の一部から電源が供給可能である。災害などによる送電用架線からの電力供給が困難な場合にも、自立用ソーラー電池と充電池を用いて稼働できるように考慮されている。
【0019】
個別監視装置B51〜B55内のカメラ付スマートフォン機能は、3Gや4G(LTE)、モバイルWiMAX、無線LANなどの通信機能を備えており、これらにより移動体通信網の基地局と相互通信可能である。また、無線LANなどにより予め設定した近隣する複数の個別監視装置間で相互通信可能となっており、故障などで隣接の個別監視装置が通信不可となった場合にも、個別監視装置全体の通信断となって情報が途絶えることのないように補完機能を備えている。
【0020】
移動体通信網2は、携帯電話やPHSなどの携帯電話サービス会社などによって提供される通信サービス網である。移動体通信網2には、個別監視装置B51〜B55内のカメラ付スマートフォン機能が接続される。また、移動体通信網2は、ISP(Internet Service Provider)3を介してネットワーク(インターネット)4に接続される。一方、インフラ管理方法及び装置の中央処理装置6は、個別監視装置B51〜B55の設置される場所から離れた遠隔地のインフラ管理センター内に配置され、ISP5を介してネットワーク(インターネット)4に接続される。車両管理事務所等には、複数のモニタが設置され、中央処理装置6によって個別監視装置B51〜B55から送信されて来た異常画像等をリアルタイムで表示するように構成されている。通信回線7は、固定電話などの公衆電話サービス会社などによって提供される通信サービスである。従って、中央処理装置6は、この通信回線7及び移動体通信網2を経由して、個別監視装置B51〜B55内のカメラ付スマートフォン機能に個別に接続可能となっている。
【0021】
図2は、個別監視装置によって撮影された画像の一例を示す図である。図2の画像は、個別監視装置B51のカメラ付スマートフォン機能によって撮影された送電用架線支持物12,13を含む鉄道架線設備のイメージを示す概略図である。図2では、送電用架線支持物12,13にそれぞれ設置された架線設備として、饋電線20R,20L、饋電分岐線21、トロリ線22R,22L、ちょう架線23R,23L、ハンガ24R,24L、曲線引金具25及び高圧配電線26などが画像の上側に表示されている。また、図2では、下側に上下線に対応したレール27L,27R,28L,28Rがそれぞれ画像の下側に表示されている。図2の画像は、個別監視装置B51のカメラ付スマートフォン機能によって撮影されたものなので、他の個別監視装置B52〜B55などによって撮影された画像は、図2のものとはそれぞれ異なっているが、その図示は省略する。
【0022】
図3は、本発明の鉄道路線の架線設備の異常状態を監視するインフラ管理方法の動作の一例を示す図である。図3は、個別監視装置のカメラ付スマートフォン機能によって撮影された鉄道架線設備の一例を示す図である。図3では、個別監視装置によって撮影された、緩やかな曲線を示すレール27L,27R,28L,28Rと、これに沿って配置された送電用架線支持部群と、これら送電用架線支持部の上部に設置された個別監視装置群と、トロリ線22R,22Lとが表示されている。図3(A)は、異常のない正常な画像であり、これが基準画像となる。
【0023】
図3(B)は、レール28Rに何らかの異常の発生した場合の画像の一例を示す図である。図3(B)の画像では、レール28Rに何らかの異常が発生し、レールの一部が欠落した個所29が撮影されている。この図3(B)の画像(異常検出時画像)と、図3(A)の基準画像(正常時の画像)とを比較する誤差検出処理(所定の画像処理)を施すことによって、異常個所29の存在と異常内容が明らかとなり、誤差検出処理の結果、異常個所29の位置とレールの一部欠落の異常内容が検出される。
【0024】
個別監視装置では、予め、検出した異常内容により、脱線、衝突などが懸念されて走行不能と判定される「重要度大の異常」と、視界不良や画像不良、個別監視装置単体不良などが原因で重要度の判定に確認や詳細な調査が必要となる「重要度大と判断できない異常」のいずれに該当するかを判定し、判定結果に応じて、車両管理事務所等への異常検出画像の送信処理や、回転灯の点灯/点滅処理などを実行する。
【0025】
図3により異常個所29の位置とレールの一部欠落の「重要度大の異常」を検出した個別監視装置B54は、その異常個所29を検出した図3(B)の画像を車両管理事務所等に送信するとともに、個別監視装置B54自体とその前後6個の個別監視装置B51〜B57に異常検出の情報を伝達して回転灯を赤色に点灯/点滅させる。また、その前後16個の個別監視装置B43〜B50,B58〜B65へ異常検出の情報を伝達し、回転灯を黄色に点灯/点滅させる。これにより、黄色に回転灯表示する個別監視装置付近の電車の運転手への徐行運転指示や、赤色に回転灯表示する個別監視装置付近の電車の運転手への運転停止指示が可能で、脱線などの事故発生を未然に防止来ることが出来る。
【0026】
また、個別監視装置B54が別の「重要度大と判断できない異常」と判断される異常を検出した場合は、検出した異常の画像を車両管理事務所等に送信するとともに、個別監視装置B54自体とその前後8個の個別監視装置B46〜B62に異常検出の情報を伝達して回転灯を黄色に点灯/点滅させる。これにより、黄色に回転灯表示する個別監視装置付近の電車の運転手への徐行運転指示が可能で、徐行運転による異常検出現場の確認などを行うことにより線路に異常があった場合の事故発生を未然に防止することが出来る。
【0027】
異常個所29を検出した個別監視装置B54から異常検出の情報と図3(B)の画像を送信された車両管理事務所等では、受信した異常個所29が撮影されている図3(B)の画像に基づいて、「重要度大の異常」と、「重要度大と判断できない異常」のいずれに該当するかを判定し、その判定結果に応じた処理を実行する。
【0028】
「重要度大の異常」と判定した場合には、その異常個所29を検出した個別監視装置B54を含み、その前後6個の個別監視装置B51〜B57の回転灯を引き続き赤色に点灯/点滅し、またそのほかの影響する全ての電車の運転手への運転停止指示などの処理を行うことにより、二次的事故の発生を未然に防止する。また、詳細な調査や復旧などのために検測車や作業車などが異常個所29に必要な場合、異常個所29まで走行可能かどうかを異常個所29までの経路上の個別監視装置から送信されるリアルタイムの画像を確認することにより判定が可能である。
【0029】
「重要度大と判断できない異常」と判定した場合は、その異常個所29を検出した個別監視装置B54を含み、その前後8個の個別監視装置B46〜B62の回転灯を引き続き黄色に点灯/点滅したまま、黄色に回転灯表示する個別監視装置付近の電車の運転手への徐行運転と異常検出現場の確認などを指示する。確認の結果、線路に異常があった場合は影響する全ての電車の運転手への運転停止指示などの処理を行い、二次的事故の発生を未然に防止することが可能である。
また、線路に異常が無かった場合は個別監視装置B54が異常検出した原因を排除し、異常の無い正常運転を指示する。
なお、図3(B)の画像では、個別監視装置B54などが点灯/点滅している状態が撮影されている。
【0030】
図4は、本発明の鉄道路線の架線設備の異常状態を、寸法計測処理を用いて監視するインフラ管理方法の動作の一例を示す図であり、図3の鉄道路線の架線設備の異常の有無やその変化の度合を、寸法計測処理用の情報(寸法情報)を用いて計測する方法の一例を示している。図4では、送電用架線支持物11〜14の垂直方向の柱の横近傍に寸法計測処理用ものさし30〜33を設置する。これによって、図4(A)の基準画像に示すように、画像内に異常時における変化の度合(変化量)の寸法計測処理用の寸法情報が付与されることになる。
【0031】
前述のようにレール28Rに何らかの異常が発生した場合、図4(B)に示すように、画像上においてレール28Rの一部が欠落した個所29が撮影される。まず、この図4(B)の画像(異常検出時画像)と、図4(A)の基準画像(正常時の画像)とを比較する誤差検出処理を施すことによって、異常個所29の存在と異常内容が明らかとなり、誤差検出処理の結果、異常個所29の位置とレール28Rの一部欠落の異常内容が検出される。
【0032】
次に、異常個所29の位置とレール28Rの一部欠落の大きさを、異常個所29の位置に近い計測処理用ものさし31〜32の寸法情報に基づいて寸法計測処理を実行し、レール28Rの一部欠落の位置と一部欠落の寸法を算出する。これにより異常の位置と大きさをより詳細に把握することが可能である。
【0033】
また、異常個所29の位置まで検測車や作業車などが走行可能かどうかを判断するために、図4(B)では送電用架線支持物13、14の位置でのレール幅(1067[mm])とトロリ線の位置(左右レールからの距離5204〜5205[mm])を寸法計測処理している。図4(B)では送電用架線支持物13、14の位置でのレール27Lと27Rの間隔とトロリ線22Lの位置関係、およびレール28Lと28Rの間隔とトロリ線22Rの位置関係を三角表示で示している。この計測値により検測車や作業車などが走行可能かどうかを判断し、例えば可能な場合は数字を緑色表示、不可の場合は赤表示かを表示数字などの表示で車両管理事務所等への異常検出画像の送信処理などを実行する。なお、送電用架線支持物12、13の位置でのレール27Lと27Rの間隔とトロリ線22Lの位置関係、およびレール28Lと28Rの間隔とトロリ線22Rの位置関係を計測することによって、異常個所29の送電用架線支持物13からの距離(4320[mm])と、欠損したレール28Rの長さ(2580[mm])を計測することが可能となる。なお、鉄道路線の架線設備以外の道路、橋梁、トンネルなどについても同様に異常個所(道路損傷、道路の陥没穴、落下物、亀裂、ひび割れ、段差やずれ、遊間の距離、その他の故障等)について、誤差検出処理を実行することによって、その位置関係等を検出することが可能である。
【0034】
図5は、赤色及び黄色に点灯/点滅する個別監視装置の具体例を示す図である。図5は、図1(B)の送電用架線支持物の上部側に設置された個別監視装置B39〜B67を模式的に示したものである。上述のように個別監視装置B54からの画像に異常個所29が検出された場合には、図5に示すように、個別監視装置B54を含み、その前後約6個の個別監視装置B51〜B57の回転灯が赤色に点灯/点滅し、さらに、その前後の約16個の個別監視装置B43〜B50,B58〜B65の回転灯が黄色に点灯/点滅する。これによって、個別監視装置B43〜B50,B58〜B65付近に進入して来た運転手等は、黄色の点灯/点滅によって、個別監視装置B51〜B57付近で異常が発生したことを瞬時に認識することができる。車両を徐行運転又は停止させて、異常の確認を行うことが可能となる。異常の確認は、車両管理事務所等と連絡を取り合ったり、実際に線路等に出て行ったりする。
【0035】
図6は、個別監視装置の設置個所の具体例を示す図である。図6(A)は、ホーム脇の架線柱に個別監視装置41,42が設置され、線路上を撮影している。図6(A)では、線路上に土砂が流出した異常状態が撮影されている。図6(B)は、踏切近傍の架線柱又は踏切警報機などに個別監視装置43が設置され、踏切内及び路線の状態を撮影している。図6(C)は、トンネル内の天井に個別監視装置44が設置され、トンネル付近の状態を撮影している。図6(D)は、架線が存在しない線路において、専用柱などに個別監視装置45が設置され、線路上を撮影している。図6(D)では、山崩れによって線路上に土砂樹木等が流出した異常状態が撮影されている。図6(E)は、歩道橋の下側に個別監視装置46が設置され、線路上を撮影している。図6(F)は、跨線橋の下側に個別監視装置47が設置され、線路上を撮影している。
【0036】
上述の実施の形態では、インフラとして鉄道路線の架線設備を例に説明したが、これ以外の道路、橋梁、トンネル、などの交通系の社会インフラについても同様に適用可能である。例えば、道路に沿って連続的に、又は橋梁やトンネルの出入口やその途中に連続的に複数の個別監視装置を設けることによって対応可能である。
また、上述の実施の形態では、図3(B)の画像(異常検出時画像)と、図3(A)の基準画像(正常時の画像)とを比較する場合について説明したが、異常検出後の現状画像と基準画像とを比較してもよいし、異常検出時の直前の画像とその直後の現状画像とを比較するようにしてもよい。すなわち、異常検出時画像、現状画像及び基準画像の中の少なくとも2つの画像を適宜比較する誤差検出処理を実行してもよい。また、異常検出時画像には、異常発生時の直前の画像及び異常発生後の画像の両方を含むものとして、その直前画像及びその後の画像を含む異常検出時の前後の画像を比較してもよいし、異常検出直前の画像と現状画像を比較してもよい。
【符号の説明】
【0037】
11〜15…送電用架線支持物、2…移動体通信網、20L,20R…饋電線、21…饋電分岐線、22L,22R…トロリ線、23L,23R…架線、24L,24R…ハンガ、25…曲線引金具、26…高圧配電線、27L,28R…レール、29…異常個所、30〜33…計測処理用ものさし、3,5…Internet Service Provider、B39〜B67…個別監視装置、41〜47…個別監視装置、6…中央処理装置、7…通信回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6