特許第6771343号(P6771343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771343
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】熱供給システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20201012BHJP
   F24H 1/18 20060101ALI20201012BHJP
   F24D 3/08 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   F24H1/00 631B
   F24H1/18 302K
   F24H1/18 302N
   F24D3/08 K
【請求項の数】12
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-180168(P2016-180168)
(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公開番号】特開2018-44721(P2018-44721A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】柴田 善隆
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−136081(JP,A)
【文献】 特開2012−063082(JP,A)
【文献】 特開2016−133271(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0059911(US,A1)
【文献】 特開2013−104596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/18−1/20
F24H 4/00−4/06
F24D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を加熱する複数の熱源装置を備え、前記熱媒が保有している熱を利用する複数の熱利用装置に対して前記熱媒を供給する熱供給システムであって、
前記複数の熱利用装置のそれぞれで熱が利用された後の相対的に低温の熱媒を合流させ、その熱媒を前記複数の熱源装置のそれぞれに対して並列に供給する熱媒復路と、前記複数の熱源装置のそれぞれで加熱された後の相対的に高温の前記熱媒を合流させ、その熱媒を前記複数の熱利用装置のそれぞれに対して並列に供給する熱媒往路と、前記熱媒復路及び前記熱媒往路での前記熱媒の流動状態を調節する流動状態調節装置と、前記複数の熱源装置及び前記流動状態調節装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記複数の熱利用装置の内の第1熱利用装置は、湯水を貯えるタンクを有し、前記熱媒が保有する熱を利用して前記タンク内の湯水の加熱を行う貯湯装置であり、
前記複数の熱利用装置の内の第2熱利用装置は、前記熱媒が保有している熱を利用して暖房を行う暖房装置であり、
前記複数の熱源装置の内の第1熱源装置は、熱と電気とを併せて発生させる熱電併給装置であり、
前記複数の熱源装置の内の第2熱源装置は、燃料を燃焼させることで発生した燃焼熱で前記熱媒を加熱するボイラー装置であり、
前記貯湯装置の前記タンクの内部には熱交換部が設けられ、前記熱交換部では前記タンクに貯えられている湯水と前記熱媒との熱交換が行われることで、前記タンク内に貯えられている湯水が昇温され、
前記貯湯装置の前記タンクの上部には、前記タンク内に貯えられている湯水を前記タンク外に流出させる出湯路が接続され、前記貯湯装置の前記タンクの下部には、前記出湯路からの湯水の流出に応じて補充される水を前記タンク内に流入させる給水路が接続され、
前記タンク内に貯えられている湯水の温度を検出する第1温度検出部と、前記第1温度検出部が検出する部位よりも上方での前記タンク内に貯えられている湯水の温度を検出する第2温度検出部とを備え、
前記制御装置は、
前記第1温度検出部で検出される湯水の第1温度が前記熱電併給装置を利用した昇温運転を許可する第1下限温度以下であるとき、前記熱電併給装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記熱電併給装置と前記貯湯装置との間で循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記熱電併給装置を利用した昇温運転を実行し、
前記第2温度検出部で検出される湯水の第2温度が前記ボイラー装置を利用した昇温運転を許可する第2下限温度以下であるとき、前記ボイラー装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記ボイラー装置と前記貯湯装置との間を循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記ボイラー装置を利用した昇温運転を実行し、
前記第1下限温度は前記第2下限温度未満の温度である熱供給システム。
【請求項2】
1日の中に前記貯湯装置の前記タンクの内部に貯えられている湯水の昇温運転を許可する昇温許可時間帯と、昇温運転を許可しない昇温不許可時間帯とが設定されており、
1日の中に前記ボイラー装置の運転を許可するボイラー許可時間帯と、前記ボイラー装置の運転を許可しないボイラー不許可時間帯とが設定されており、
1日の中に前記熱電併給装置の運転を許可する熱電併給許可時間帯と、前記熱電併給装置の運転を許可しない熱電併給不許可時間帯とが設定されており、
前記制御装置は、
現在の時刻が前記昇温許可時間帯及び前記熱電併給許可時間帯にあり、且つ、前記第1温度が前記第1下限温度以下であるとき、前記熱電併給装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記熱電併給装置と前記貯湯装置との間で循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記熱電併給装置を利用した昇温運転を実行し、
現在の時刻が前記昇温許可時間帯及び前記ボイラー許可時間帯にあり、且つ、前記第2温度が前記第2下限温度以下であるとき、前記ボイラー装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記ボイラー装置と前記貯湯装置との間を循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記ボイラー装置を利用した昇温運転を実行する請求項1に記載の熱供給システム。
【請求項3】
前記昇温許可時間帯は、時間的に連続した個別昇温時間帯を1日の中に少なくとも一つ有し、
一つの前記個別昇温時間帯の開始時を含む一部時間帯は、前記熱電併給許可時間帯と時間的に重なり、前記ボイラー許可時間帯とは時間的に重ならないように設定され、
前記一部時間帯の後の時間帯は、前記熱電併給許可時間帯及び前記ボイラー許可時間帯と時間的に重なるように設定されている請求項2に記載の熱供給システム。
【請求項4】
前記昇温許可時間帯は、時間的に連続した個別昇温時間帯を1日の中に少なくとも一つ有し、
一つの前記個別昇温時間帯は、前記熱電併給許可時間帯と時間的に重なり、前記ボイラー許可時間帯とは時間的に重ならないように設定されている請求項2又は3に記載の熱供給システム。
【請求項5】
前記暖房装置が暖房対象とする空気の温度を検出する室温検出部を備え、
1日の中に前記ボイラー装置の運転を許可するボイラー許可時間帯と、前記ボイラー装置の運転を許可しないボイラー不許可時間帯とが設定されており、
1日の中に前記熱電併給装置の運転を許可する熱電併給許可時間帯と、前記熱電併給装置の運転を許可しない熱電併給不許可時間帯とが設定されており、
1日の中に前記暖房装置の運転を許可する暖房許可時間帯と、運転を許可しない暖房不許可時間帯とが設定されており、
前記制御装置は、
現在の時刻が前記暖房許可時間帯及び前記熱電併給許可時間帯にあり、且つ、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が前記熱電併給装置を利用した暖房運転を許可する第3下限温度以下であるとき、前記熱電併給装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記熱電併給装置と前記暖房装置との間で循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記熱電併給装置を利用した暖房運転を実行し、
現在の時刻が前記暖房許可時間帯及び前記ボイラー許可時間帯にあり、且つ、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が前記ボイラー装置を利用した暖房運転を許可する第4下限温度以下であるとき、前記ボイラー装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記ボイラー装置と前記暖房装置との間で循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記ボイラー装置を利用した暖房運転を実行し、
前記第3下限温度は前記第4下限温度より高い温度に設定されている請求項1〜4の何れか一項に記載の熱供給システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記熱電併給装置を利用した暖房運転を実行中に、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が第3上限温度以上になると前記熱電併給装置を利用した暖房運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記ボイラー装置を利用した暖房運転を実行中に、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が第4上限温度以上になると前記ボイラー装置を利用した暖房運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記第3上限温度は前記第3下限温度より高い温度に設定され、前記第4上限温度は前記第4下限温度より高い温度に設定され、前記第3上限温度は前記第4上限温度より高い温度に設定されている請求項5に記載の熱供給システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記熱電併給装置を利用した昇温運転を実行中に、前記第1温度が第1上限温度以上になると前記熱電併給装置を利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記ボイラー装置を利用した昇温運転を実行中に、前記第2温度が第2上限温度以上になると前記ボイラー装置を利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記第1上限温度は前記第1下限温度より高い温度に設定され、前記第2上限温度は前記第2下限温度より高い温度に設定され、前記第1上限温度は前記第2上限温度より高い温度に設定されている請求項1〜6の何れか一項に記載の熱供給システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記熱電併給装置を利用した暖房運転を実行中に、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が第3上限温度以上になると前記熱電併給装置を利用した暖房運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記ボイラー装置を利用した暖房運転を実行中に、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が第4上限温度以上になると前記ボイラー装置を利用した暖房運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記熱電併給装置を利用した昇温運転を実行中に、前記第1温度が第1上限温度以上になると前記熱電併給装置を利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記ボイラー装置を利用した昇温運転を実行中に、前記第2温度が第2上限温度以上になると前記ボイラー装置を利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記第3上限温度は前記第3下限温度より高い温度に設定され、前記第4上限温度は前記第4下限温度より高い温度に設定され、前記第3上限温度は前記第4上限温度より高い温度に設定されており、
前記第1上限温度は前記第1下限温度より高い温度に設定され、前記第2上限温度は前記第2下限温度より高い温度に設定され、前記第1上限温度は前記第2上限温度より高い温度に設定されており、
前記熱電併給装置を利用した昇温運転及び前記ボイラー装置を利用した昇温運転の少なくとも一方を実行するとき、前記熱媒が前記貯湯装置を通って循環するように前記流動状態調節装置を動作させ、及び、前記熱電併給装置を利用した昇温運転及び前記ボイラー装置を利用した昇温運転の両方が前記不許可状態であるとき、前記熱媒が前記貯湯装置を通って循環しないように前記流動状態調節装置を動作させ、
前記熱電併給装置を利用した暖房運転及び前記ボイラー装置を利用した暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、前記熱媒が前記暖房装置を通って循環するように前記流動状態調節装置を動作させ、及び、前記熱電併給装置を利用した暖房運転及び前記ボイラー装置を利用した暖房運転の両方が前記不許可状態であるとき、前記熱媒が前記暖房装置を通って循環しないように前記流動状態調節装置を動作させ、
前記熱電併給装置を利用した昇温運転及び暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、前記熱電併給装置を動作させ、及び、前記熱電併給装置を利用した昇温運転及び暖房運転の両方が前記不許可状態であるとき、前記熱電併給装置を停止させ、
前記ボイラー装置を利用した昇温運転及び暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、前記ボイラー装置を動作させ、及び、前記ボイラー装置を利用した昇温運転及び暖房運転の両方が前記不許可状態であるとき、前記ボイラー装置を停止させる請求項5に記載の熱供給システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記第2温度検出部で検出される湯水の前記第2温度が、前記第2下限温度よりも高く且つ前記第1上限温度よりも低い第2中間温度以下であるとき、前記熱電併給装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記熱電併給装置と前記貯湯装置との間で循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記熱電併給装置を利用した昇温運転を実行する請求項7又は8に記載の熱供給システム。
【請求項10】
前記タンクに対する前記給水路の接続部位と当該接続部位よりも上方にある前記第1温度検出部との間の前記タンク内に存在する量の湯水を、前記熱電併給装置から所定出力を発揮させた状態で昇温運転することにより前記第1下限温度から前記第1上限温度まで昇温するときに、少なくとも目標期間以上の昇温運転が必要になるように、前記給水路の前記接続部位と前記第1温度検出部の設置部位とが設定されている請求項7〜9の何れか一項に記載の熱供給システム。
【請求項11】
前記第1下限温度は、前記給水路を経由して前記タンク内に供給される水の温度よりも高く且つ前記出湯路に接続される給湯端末で必要とされる湯水の目標温度よりも低い温度である請求項1〜10の何れか一項に記載の熱供給システム。
【請求項12】
前記第2下限温度は、前記出湯路に接続される給湯端末で必要とされる湯水の目標温度よりも高い温度である請求項1〜11の何れか一項に記載の熱供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒を加熱する複数の熱源装置を備え、熱媒が保有している熱を利用する複数の熱利用装置に対して熱媒を供給する熱供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の熱源装置で発生した熱を、給湯や暖房などの複数の熱利用装置に利用させる熱供給システムがある。例えば、特許文献1に記載されている熱供給システムは、ヒートポンプ(2)及び外部熱源(3)という複数の熱源装置で発生した熱を回収した温水を、水回路(25)及び温水回路(30A,30B)に流しながら、貯湯タンク(4)及び暖房用機器(5)という複数の熱利用装置に供給するように構成されている。
そして、特許文献1に記載の熱供給システムでは、ヒートポンプ(2)及び外部熱源(3)に対して運転を行うときの優先順位が予め設定されており、負荷状態に応じてその優先順位の順でヒートポンプ(2)及び外部熱源(3)の運転が行われる。
【0003】
また、特許文献2には、熱媒を加熱する複数の熱源装置を備え、熱媒が保有している熱を利用する複数の熱利用装置に対して熱媒を供給する熱供給システムが記載されている。複数の熱利用装置の内の第1熱利用装置は、湯水を貯えるタンクを有し、熱媒が保有する熱を利用してタンク内の湯水の加熱を行う貯湯装置であり、複数の熱利用装置の内の第2熱利用装置は、熱媒が保有している熱を利用して暖房を行う暖房装置である。複数の熱源装置の内の第1熱源装置は、熱と電気とを併せて発生させる熱電併給装置であり、複数の熱源装置の内の第2熱源装置は、燃料を燃焼させることで発生した燃焼熱で熱媒を加熱するボイラー装置である。また、タンクには、貯えられている湯水の温度を検出する第1温度検出部と、その第1温度検出部が検出する部位よりも上方での湯水の温度を検出する第2温度検出部とが設けられている。そして、制御装置は、第1温度検出部で検出される湯水の第1温度が熱電併給装置による昇温運転を許可する第1下限温度以下であるとき、熱電併給装置を運転させ、及び、熱媒が熱媒復路と熱媒往路とを通って熱電併給装置と貯湯装置との間で循環するように流動状態調節装置を動作させ、第2温度検出部で検出される湯水の第2温度がボイラー装置による昇温運転を許可する第2下限温度以下であるとき、ボイラー装置を運転させ、及び、熱媒が熱媒復路と熱媒往路とを通ってボイラー装置と貯湯装置との間を循環するように流動状態調節装置を動作させる。更に、第1下限温度は第2下限温度以上の温度に設定される。
【0004】
特許文献2では、タンク内に貯えられている高温の湯水がタンク上部に接続される出湯路から送出されると、タンク下部に接続されている給水路から水が補充されるので、タンク下部には相対的に低温の湯水が存在し、タンク上部には相対的に高温の湯水が存在する状態が形成される。また、第1温度検出部が検出する第1温度は、第2温度検出部が検出する第2温度よりも、タンクの内部の相対的に下方に貯えられている湯水の温度である。つまり、上述したような、タンク下部には相対的に低温の湯水が存在し、タンク上部には相対的に高温の湯水が存在する状態は、第2温度検出部よりも下方にある第1温度検出部での湯水の温度低下として先に現れる構成になっている。加えて、第1下限温度は第2下限温度以上の温度である。その結果、貯えられている湯水の温度は高温側から低温側へと低下していくことを考慮すると、第2温度が第2下限温度以下となるよりも先に、第1温度が第1下限温度以下となる。そして、エネルギー効率の高い熱電併給装置の方が、ボイラー装置よりも先に湯水の昇温運転を開始することになる。
【0005】
図6及び図7は、特許文献2に記載の貯湯装置を模擬して、その貯湯装置が有するタンクの内部での湯水の温度変化の例を示すグラフである。尚、貯湯装置を含む熱供給システムの構成は本願の図1に示すのと同じであり、タンクに設けている温度センサT1〜T7の位置は本願の図4に示すのと同じである。よって、以下の説明では、図1及び図4で用いているのと同じ参照符号を用いて説明を行う。
第1温度センサ46(温度センサT5)で検出される湯水の第1温度が熱電併給装置CGによる昇温運転を許可する第1下限温度以下であるとき、熱電併給装置CGは運転する。図6は、第1下限温度が50℃の場合の例であり、図7は、第1下限温度が35℃の場合の例である。つまり、図6に示す例では、第1温度センサ46(温度センサT5)で検出される湯水の第1温度が50℃以下であるときに熱電併給装置CGは運転し、図7に示す例では、第1温度が35℃以下であるときに熱電併給装置CGは運転する。
【0006】
図6に示すように、熱電併給装置及びボイラー装置の運転を停止してタンク内の湯水の昇温運転を停止した状態で、時刻10時38分頃に2L/minの流量で1分間の出湯と1分間の出湯休止とを繰り返し始めると、タンク内への給水に伴って湯水の温度が低下し始める。但し、タンク内に給水が行われたとしても、給水路8に近い部位(温度センサT5〜T7の測定部位)では湯水の温度低下が早期に現れるが、出湯路9に近い部位(温度センサT1〜T4の測定部位)では湯水の温度低下は非常に緩やかな速度で発生する。つまり、タンクの下方側ほど、湯水の温度低下が早期に発生することが分かる。そして、時刻10時57分頃になると第1温度検出部(温度センサT5)が検出する第1温度が第1下限温度(50℃)になることで、熱電併給装置による昇温運転が開始され、それによりタンク内の湯水の温度が上昇し始める。その後、図6に示す例では、熱電併給装置による約35分間の昇温運転により、第1温度検出部(温度センサT5)が検出する第1温度が60℃に到達して、その昇温運転が終了される。
【0007】
図7に示すのは、第1下限温度が35℃の場合の例であり、その他の条件は図6の場合と同じである。この場合、熱電併給装置及びボイラー装置の運転を停止してタンク内の湯水の昇温運転を停止した状態で、時刻13時52分頃に2L/minの流量で1分間の出湯と1分間の出湯休止とを繰り返し始めると、タンク内への給水に伴って湯水の温度が低下し始める。そして、時刻14時29分頃になると第1温度検出部(温度センサT5)が検出する第1温度が第1下限温度(35℃)になることで、熱電併給装置による昇温運転が開始され、それによりタンク内の湯水の温度が上昇し始める。その後、図7に示す例では、熱電併給装置による約50分間の昇温運転により、第1温度検出部(温度センサT5)が検出する第1温度が60℃に到達して、その昇温運転が終了される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−104596号公報
【特許文献2】特開2016−133271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の熱供給システムでは、給水路から、例えば第1温度検出部に到達しない程度の少量の水がタンク下部に供給された後、局所的な湯と水の混合や熱伝導によってタンク下部の温度成層が乱されて第1温度が徐々に下がることもある。一般的な熱電併給装置は、耐久性や熱ロスの観点から、一旦始動するとなるべく長時間運転する方が望ましいが、熱電併給装置を始動するときの指標となる第1下限温度が比較的高い温度に設定されていると、少量の水がタンク下部に供給されただけで第1温度が第1下限温度に到達して熱電併給装置が始動し、その少量の水を昇温しただけで熱電併給装置は比較的短時間で運転を停止することもある。つまり、第1下限温度が高いほど、熱電併給装置の昇温運転によりタンク内の湯水温度(第1温度)を所定の目標温度にまで昇温するための所要時間が短くなってしまう。図6及び図7に示した例でも、第1下限温度が50℃に設定されている場合(図6)には、60℃まで昇温するための所要時間は約35分間になり、第1下限温度が35℃に設定されている場合(図7)には、60℃まで昇温するための所要時間は約50分間になっている。
【0010】
また、ボイラー装置を始動するときの指標となる第2下限温度が比較的低い温度に設定されていると、タンク上部の湯水温度が大きく下がってからボイラー装置を始動することになる。そのため、ボイラー装置を始動した時点ではタンク内での高温の湯水の残量が少なくなっている。その結果、使用者がシャワーなどの給湯端末で大量に湯を使っている状況ではボイラー装置による湯水の昇温が間に合わずに湯切れを起こし、使用上の不都合を生じる恐れがある。つまり、ボイラー装置の始動タイミングが遅れるという問題は第2下限温度が比較的低い場合に発生すると考えられる。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱利用装置の状態に応じて複数の熱源装置を効率的に運用できる熱供給システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る熱供給システムの特徴構成は、熱媒を加熱する複数の熱源装置を備え、前記熱媒が保有している熱を利用する複数の熱利用装置に対して前記熱媒を供給する熱供給システムであって、
前記複数の熱利用装置のそれぞれで熱が利用された後の相対的に低温の熱媒を合流させ、その熱媒を前記複数の熱源装置のそれぞれに対して並列に供給する熱媒復路と、前記複数の熱源装置のそれぞれで加熱された後の相対的に高温の前記熱媒を合流させ、その熱媒を前記複数の熱利用装置のそれぞれに対して並列に供給する熱媒往路と、前記熱媒復路及び前記熱媒往路での前記熱媒の流動状態を調節する流動状態調節装置と、前記複数の熱源装置及び前記流動状態調節装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記複数の熱利用装置の内の第1熱利用装置は、湯水を貯えるタンクを有し、前記熱媒が保有する熱を利用して前記タンク内の湯水の加熱を行う貯湯装置であり、
前記複数の熱利用装置の内の第2熱利用装置は、前記熱媒が保有している熱を利用して暖房を行う暖房装置であり、
前記複数の熱源装置の内の第1熱源装置は、熱と電気とを併せて発生させる熱電併給装置であり、
前記複数の熱源装置の内の第2熱源装置は、燃料を燃焼させることで発生した燃焼熱で前記熱媒を加熱するボイラー装置であり、
前記貯湯装置の前記タンクの内部には熱交換部が設けられ、前記熱交換部では前記タンクに貯えられている湯水と前記熱媒との熱交換が行われることで、前記タンク内に貯えられている湯水が昇温され、
前記貯湯装置の前記タンクの上部には、前記タンク内に貯えられている湯水を前記タンク外に流出させる出湯路が接続され、前記貯湯装置の前記タンクの下部には、前記出湯路からの湯水の流出に応じて補充される水を前記タンク内に流入させる給水路が接続され、
前記タンク内に貯えられている湯水の温度を検出する第1温度検出部と、前記第1温度検出部が検出する部位よりも上方での前記タンク内に貯えられている湯水の温度を検出する第2温度検出部とを備え、
前記制御装置は、
前記第1温度検出部で検出される湯水の第1温度が前記熱電併給装置を利用した昇温運転を許可する第1下限温度以下であるとき、前記熱電併給装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記熱電併給装置と前記貯湯装置との間で循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記熱電併給装置を利用した昇温運転を実行し、
前記第2温度検出部で検出される湯水の第2温度が前記ボイラー装置を利用した昇温運転を許可する第2下限温度以下であるとき、前記ボイラー装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記ボイラー装置と前記貯湯装置との間を循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記ボイラー装置を利用した昇温運転を実行し、
前記第1下限温度は前記第2下限温度未満の温度である点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、タンク内に貯えられている高温の湯水がタンク上部に接続される出湯路から送出されると、タンク下部に接続されている給水路から水が補充されるので、タンク下部には相対的に低温の湯水が存在し、タンク上部には相対的に高温の湯水が存在する状態が形成される。また、第1温度検出部が検出する第1温度は、第2温度検出部が検出する第2温度よりも、タンクの内部の相対的に下方に貯えられている湯水の温度である。つまり、上述したような、タンク下部には相対的に低温の湯水が存在し、タンク上部には相対的に高温の湯水が存在する状態は、第2温度検出部よりも下方にある第1温度検出部の温度検出部位での湯水の温度低下として先に現れる構成になっている。その結果、タンクに対して給水が行われた場合に、第1温度が第1下限温度以下になるタイミングの方が、第2温度が第2下限温度以下になるタイミングよりも早期に到来することを期待できる。そして、第1温度が第1下限温度以下になるタイミングの方が、第2温度が第2下限温度以下になるタイミングよりも早期に到来した場合には、エネルギー効率の高い熱電併給装置の方が、ボイラー装置よりも先に湯水の昇温運転を開始するという利点がある。加えて、第2温度が第2下限温度以下となったときには、熱電併給装置に加えて、熱出力の大きなボイラー装置を運転して湯水の昇温運転を行うことができる。
【0014】
更に、第1下限温度が第2下限温度未満の温度であるということは、第1下限温度は比較的低くなるように設定され、且つ、第2下限温度は比較的高くなるように設定されているということである。つまり、熱電併給装置の始動のタイミングを定めている第1下限温度の高低に着目すると、本特徴構成のように第1下限温度が低い場合の方が、熱電併給装置を利用した昇温運転によりタンク内の湯水温度(第1温度)が所定の目標温度に昇温されるまでの所要時間が長くなるという利点がある。
また、ボイラー装置の始動のタイミングを定めている第2下限温度の高低に着目すると、本特徴構成のように第2下限温度が高い場合の方が、タンク上部の温度が大きく下がる前にボイラー装置を始動することになり、使用者がシャワーなどの給湯端末で大量に湯を使っている状況であってもボイラー装置による湯水の昇温が間に合う可能性が高いという利点がある。
【0015】
また更に、熱電併給装置とボイラー装置と貯湯装置とを接続している熱媒復路及び熱媒往路は、貯湯装置で熱が利用された後の相対的に低温の熱媒を熱電併給装置及びボイラー装置のそれぞれに対して並列に供給し、熱電併給装置及びボイラー装置のそれぞれで加熱された後の相対的に高温の熱媒を貯湯装置に供給するように構成されている。つまり、熱電併給装置を運転することで加熱された熱媒は、運転していないボイラー装置を経由せずに貯湯装置での昇温運転に用いられる。その結果、熱電併給装置で発生した熱を有効に活用しながら貯湯装置での昇温運転を行わせることができる。
従って、熱利用装置の状態に応じて複数の熱源装置を効率的に運用できる熱供給システムを提供できる。
【0016】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、1日の中に前記貯湯装置の前記タンクの内部に貯えられている湯水の昇温運転を許可する昇温許可時間帯と、昇温運転を許可しない昇温不許可時間帯とが設定されており、
1日の中に前記ボイラー装置の運転を許可するボイラー許可時間帯と、前記ボイラー装置の運転を許可しないボイラー不許可時間帯とが設定されており、
1日の中に前記熱電併給装置の運転を許可する熱電併給許可時間帯と、前記熱電併給装置の運転を許可しない熱電併給不許可時間帯とが設定されており、
前記制御装置は、
現在の時刻が前記昇温許可時間帯及び前記熱電併給許可時間帯にあり、且つ、前記第1温度が前記第1下限温度以下であるとき、前記熱電併給装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記熱電併給装置と前記貯湯装置との間で循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記熱電併給装置を利用した昇温運転を実行し、
現在の時刻が前記昇温許可時間帯及び前記ボイラー許可時間帯にあり、且つ、前記第2温度が前記第2下限温度以下であるとき、前記ボイラー装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記ボイラー装置と前記貯湯装置との間を循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記ボイラー装置を利用した昇温運転を実行する点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、現在の時刻が昇温許可時間帯にあるときにおいて、現在の時刻が熱電併給許可時間帯にあり且つ第1温度が第1下限温度以下となった場合には、熱電併給装置で発生した熱を貯湯装置の昇温運転に活用でき、現在の時刻がボイラー許可時間帯にあり且つ第2温度が第2下限温度以下となった場合には、ボイラー装置で発生した熱を貯湯装置の昇温運転に活用できる。その結果、貯湯装置の昇温運転を、熱電併給装置で発生した熱及びボイラー装置で発生した熱の両方を有効に活用しながら実施できる。
【0018】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、前記昇温許可時間帯は、時間的に連続した個別昇温時間帯を1日の中に少なくとも一つ有し、
一つの前記個別昇温時間帯の開始時を含む一部時間帯は、前記熱電併給許可時間帯と時間的に重なり、前記ボイラー許可時間帯とは時間的に重ならないように設定され、
前記一部時間帯の後の時間帯は、前記熱電併給許可時間帯及び前記ボイラー許可時間帯と時間的に重なるように設定されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、一つの個別昇温時間帯の開始時の一部時間帯では、熱電併給装置で発生した熱のみが貯湯装置の昇温運転に活用され得る。加えて、その一部時間帯の経過後では、熱電併給装置で発生した熱及びボイラー装置で発生した熱の両方が貯湯装置の昇温運転に活用され得る。その結果、熱電併給装置が発生する熱を優先して貯湯装置の昇温運転に活用しつつ、ボイラー装置で発生した熱も併せて貯湯装置の昇温運転に活用できる。
【0020】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、前記昇温許可時間帯は、時間的に連続した個別昇温時間帯を1日の中に少なくとも一つ有し、
一つの前記個別昇温時間帯は、前記熱電併給許可時間帯と時間的に重なり、前記ボイラー許可時間帯とは時間的に重ならないように設定されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、一つの個別昇温時間帯では、熱電併給装置で発生した熱のみで貯湯装置の昇温運転を行うことができる。
【0022】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、前記暖房装置が暖房対象とする空気の温度を検出する室温検出部を備え、
1日の中に前記ボイラー装置の運転を許可するボイラー許可時間帯と、前記ボイラー装置の運転を許可しないボイラー不許可時間帯とが設定されており、
1日の中に前記熱電併給装置の運転を許可する熱電併給許可時間帯と、前記熱電併給装置の運転を許可しない熱電併給不許可時間帯とが設定されており、
1日の中に前記暖房装置の運転を許可する暖房許可時間帯と、運転を許可しない暖房不許可時間帯とが設定されており、
前記制御装置は、
現在の時刻が前記暖房許可時間帯及び前記熱電併給許可時間帯にあり、且つ、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が前記熱電併給装置を利用した暖房運転を許可する第3下限温度以下であるとき、前記熱電併給装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記熱電併給装置と前記暖房装置との間で循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記熱電併給装置を利用した暖房運転を実行し、
現在の時刻が前記暖房許可時間帯及び前記ボイラー許可時間帯にあり、且つ、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が前記ボイラー装置を利用した暖房運転を許可する第4下限温度以下であるとき、前記ボイラー装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記ボイラー装置と前記暖房装置との間で循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記ボイラー装置を利用した暖房運転を実行し、
前記第3下限温度は前記第4下限温度より高い温度に設定されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、現在の時刻が暖房許可時間帯にあるときにおいて、現在の時刻が熱電併給許可時間帯にあり且つ暖房対象とする空気の温度が熱電併給装置を利用した暖房運転を許可する第3下限温度以下となった場合には、熱電併給装置で発生した熱を暖房装置による暖房運転に活用でき、現在の時刻がボイラー許可時間帯にあり且つ暖房対象とする空気の温度がボイラー装置を利用した暖房運転を許可する第4下限温度以下となった場合には、ボイラー装置で発生した熱を暖房装置による暖房運転に活用できる。その結果、暖房装置による暖房運転を、熱電併給装置で発生した熱及びボイラー装置で発生した熱の両方を有効に活用しながら実施できる。
加えて、第3下限温度は第4下限温度より高い温度に設定されているので、室温検出部で検出される空気の温度が第4下限温度になるよりも先に、室温検出部で検出される空気の温度が第3下限温度になる。つまり、現在の時刻が暖房許可時間帯及び熱電併給許可時間帯及びボイラー許可時間帯にあるときであっても、即ち、熱電併給装置が空気温度の値によっては運転され得るとき且つボイラー装置が空気温度の値によっては運転され得るときであっても、空気温度が第4下限温度以下となるよりも先に、空気温度が第3下限温度以下となるので、エネルギー効率の高い熱電併給装置の方が先に暖房運転のために利用される。
【0024】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、前記制御装置は、前記熱電併給装置を利用した暖房運転を実行中に、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が第3上限温度以上になると前記熱電併給装置を利用した暖房運転を許可しない不許可状態にさせ、前記ボイラー装置を利用した暖房運転を実行中に、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が第4上限温度以上になると前記ボイラー装置を利用した暖房運転を許可しない不許可状態にさせ、前記第3上限温度は前記第3下限温度より高い温度に設定され、前記第4上限温度は前記第4下限温度より高い温度に設定され、前記第3上限温度は前記第4上限温度より高い温度に設定されている点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、第3上限温度は第4上限温度より高い温度に設定されているので、室温検出部で検出される空気の温度が第3上限温度になるよりも先に、室温検出部で検出される空気の温度が第4上限温度になる。つまり、熱電併給装置及びボイラー装置の両方を利用して暖房運転を実行していたとしても、ボイラー装置を利用した暖房運転の方が先に不許可状態になって、停止される。その結果、エネルギー効率の高い熱電併給装置が暖房運転に利用される期間が長くなる。
【0026】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、前記制御装置は、前記熱電併給装置を利用した昇温運転を実行中に、前記第1温度が第1上限温度以上になると前記熱電併給装置を利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせ、前記ボイラー装置を利用した昇温運転を実行中に、前記第2温度が第2上限温度以上になると前記ボイラー装置を利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせ、前記第1上限温度は前記第1下限温度より高い温度に設定され、前記第2上限温度は前記第2下限温度より高い温度に設定され、前記第1上限温度は前記第2上限温度より高い温度に設定されている点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、第1上限温度は第2上限温度より高い温度に設定されているので、上記第1温度が第1上限温度になるよりも先に、上記第2温度が第2上限温度になることを期待できる。つまり、熱電併給装置及びボイラー装置の両方を利用して昇温運転させていたとしても、ボイラー装置を利用した昇温運転の方が先に不許可状態になって、停止される。その結果、エネルギー効率の高い熱電併給装置が湯水の昇温運転に活用される期間が長くなる。
【0028】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、前記制御装置は、
前記熱電併給装置を利用した暖房運転を実行中に、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が第3上限温度以上になると前記熱電併給装置を利用した暖房運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記ボイラー装置を利用した暖房運転を実行中に、前記室温検出部で検出される前記空気の温度が第4上限温度以上になると前記ボイラー装置を利用した暖房運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記熱電併給装置を利用した昇温運転を実行中に、前記第1温度が第1上限温度以上になると前記熱電併給装置を利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記ボイラー装置を利用した昇温運転を実行中に、前記第2温度が第2上限温度以上になると前記ボイラー装置を利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせ、
前記第3上限温度は前記第3下限温度より高い温度に設定され、前記第4上限温度は前記第4下限温度より高い温度に設定され、前記第3上限温度は前記第4上限温度より高い温度に設定されており、
前記第1上限温度は前記第1下限温度より高い温度に設定され、前記第2上限温度は前記第2下限温度より高い温度に設定され、前記第1上限温度は前記第2上限温度より高い温度に設定されており、
前記熱電併給装置を利用した昇温運転及び前記ボイラー装置を利用した昇温運転の少なくとも一方を実行するとき、前記熱媒が前記貯湯装置を通って循環するように前記流動状態調節装置を動作させ、及び、前記熱電併給装置を利用した昇温運転及び前記ボイラー装置を利用した昇温運転の両方が前記不許可状態であるとき、前記熱媒が前記貯湯装置を通って循環しないように前記流動状態調節装置を動作させ、
前記熱電併給装置を利用した暖房運転及び前記ボイラー装置を利用した暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、前記熱媒が前記暖房装置を通って循環するように前記流動状態調節装置を動作させ、及び、前記熱電併給装置を利用した暖房運転及び前記ボイラー装置を利用した暖房運転の両方が前記不許可状態であるとき、前記熱媒が前記暖房装置を通って循環しないように前記流動状態調節装置を動作させ、
前記熱電併給装置を利用した昇温運転及び暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、前記熱電併給装置を動作させ、及び、前記熱電併給装置を利用した昇温運転及び暖房運転の両方が前記不許可状態であるとき、前記熱電併給装置を停止させ、
前記ボイラー装置を利用した昇温運転及び暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、前記ボイラー装置を動作させ、及び、前記ボイラー装置を利用した昇温運転及び暖房運転の両方が前記不許可状態であるとき、前記ボイラー装置を停止させる点にある。
【0029】
上記特徴構成によれば、第3上限温度は第4上限温度より高い温度に設定されているので、室温検出部で検出される空気の温度が第3上限温度になるよりも先に、室温検出部で検出される空気の温度が第4上限温度になる。つまり、熱電併給装置及びボイラー装置の両方を利用して暖房運転を実行していたとしても、ボイラー装置を利用した暖房運転の方が先に不許可状態になる。その結果、エネルギー効率の高い熱電併給装置が暖房運転に利用される期間が長くなる。
また、第1上限温度は第2上限温度より高い温度に設定されているので、上記第1温度が第1上限温度になるよりも先に、上記第2温度が第2上限温度になることを期待できる。つまり、熱電併給装置及びボイラー装置の両方を利用して昇温運転させていたとしても、ボイラー装置を利用した昇温運転の方が先に不許可状態になる。その結果、エネルギー効率の高い熱電併給装置が湯水の昇温運転に活用される期間が長くなる。
【0030】
更に、熱電併給装置を利用した昇温運転及び暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、熱電併給装置を動作させ、及び、熱電併給装置を利用した昇温運転及び暖房運転の両方が不許可状態であるとき、熱電併給装置を停止させる。つまり、熱電併給装置を利用した昇温運転及び暖房運転の何れか一方が不許可状態になったからといって、熱電併給装置の運転を停止させることはなく、熱電併給装置を利用した昇温運転及び暖房運転の両方が不許可状態になってから熱電併給装置を停止させる。これにより、熱電併給装置を利用した昇温運転及び暖房運転を確実に実行できる。
また、ボイラー装置を利用した昇温運転及び暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、ボイラー装置を動作させ、及び、ボイラー装置を利用した昇温運転及び暖房運転の両方が不許可状態であるとき、ボイラー装置を停止させる。つまり、ボイラー装置を利用した昇温運転及び暖房運転の何れか一方が不許可状態になったからといって、ボイラー装置の運転を停止させることはなく、ボイラー装置を利用した昇温運転及び暖房運転の両方が不許可状態になってからボイラー装置を停止させる。これにより、ボイラー装置を利用した昇温運転及び暖房運転を確実に実行できる。
【0031】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、前記制御装置は、前記第2温度検出部で検出される湯水の前記第2温度が、前記第2下限温度よりも高く且つ前記第1上限温度よりも低い第2中間温度以下であるとき、前記熱電併給装置を運転させ、及び、前記熱媒が前記熱媒復路と前記熱媒往路とを通って前記熱電併給装置と前記貯湯装置との間で循環するように前記流動状態調節装置を動作させることで、前記熱電併給装置を利用した昇温運転を実行する点にある。
【0032】
上記特徴構成によれば、タンク下部に接続されている給水路から水が補充されることで湯水の温度がタンクの下方側から順に低下する場合、及び、タンク全体で発生する放熱によって湯水の温度がタンク全体で低下する場合の何れであっても、第2温度が第2下限温度以下になるよりも先に、第2温度が第2中間温度以下になる。つまり、上記第1温度が第1下限温度以下になっていなくても、第2温度が第2中間温度以下になるのに応じて熱電併給装置を利用した昇温運転が行われる。特に、第2温度が第2下限温度以下になるのに応じてボイラー装置を利用した昇温運転を開始するよりも先に、第2温度が第2中間温度以下になるのに応じて熱電併給装置を利用した昇温運転を開始する。その結果、タンク全体で発生する放熱によって湯水の温度がタンク全体で低下するような状況であっても、エネルギー効率の高い熱電併給装置を優先的に利用してタンク内の湯水の昇温運転を行うことができる。
【0033】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、前記タンクに対する前記給水路の接続部位と当該接続部位よりも上方にある前記第1温度検出部との間の前記タンク内に存在する量の湯水を、前記熱電併給装置から所定出力を発揮させた状態で昇温運転することにより前記第1下限温度から前記第1上限温度まで昇温するときに、少なくとも目標期間以上の昇温運転が必要になるように、前記給水路の接続部位と前記第1温度検出部の設置部位とが設定されている点にある。
【0034】
本特徴構成の熱供給システムにおいて、熱電併給装置を利用した昇温運転を長時間行わせたいのであれば、給水路の接続部位とその接続部位よりも上方にある第1温度検出部との間のタンク内に存在する量の湯水を多くする、即ち、給水路の接続部位と第1温度検出部の設置部位とがタンクの上下方向で離れるように設定すればよい。
本特徴構成では、給水路の接続部位と第1温度検出部との間のタンク内に存在する量の湯水を第1下限温度から第1上限温度まで昇温するために要する期間が、少なくとも目標期間以上にされる。その結果、熱電併給装置を一旦始動させた後、長時間運転させることができる。
【0035】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、前記第1下限温度は、前記給水路を経由して前記タンク内に供給される水の温度よりも高く且つ前記出湯路に接続される給湯端末で必要とされる湯水の目標温度よりも低い温度である点にある。
【0036】
上記特徴構成によれば、給水路からタンク内に供給される水の温度は第1下限温度よりも低いので、給水路からタンク内に水が供給されれば、第1温度が低下して第1下限温度になる。そして、第1下限温度をなるべく低く設定した方が、タンク下部から第1温度検出部まで低温の水が到達したことを確実に検知した後に熱電併給装置が始動するので、始動後、比較的長い時間、熱電併給装置を連続して運転させることができる。
ただし、第1下限温度を低く設定しすぎると、夏期は給水温度が高くなることや、タンクの上部の湯との熱伝導や混合などの影響を受けて、第1温度が第1下限温度まで下がらないおそれがある。ところが本特徴構成のように、第1下限温度をタンク内に供給される水の温度よりも高く設定しておくことで、そのようなおそれを回避することができる。
【0037】
本発明に係る熱供給システムの別の特徴構成は、前記第2下限温度は、前記出湯路に接続される給湯端末で必要とされる湯水の目標温度よりも高い温度である点にある。
【0038】
上記特徴構成によれば、タンク内部の上方に貯えられている湯水の温度が低下し始めたことを早期に検知してボイラー装置による昇温運転を開始することができ、シャワーなどで多量に湯を使っている状況であっても、タンク内から高温の湯水が失われるという湯切れのリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】熱供給システムの構成を示す図である。
図2】熱供給システムの機能ブロック図である。
図3】熱供給システムの運転形態を説明する図である。
図4】湯水の温度変化を説明するために用いるタンクの構造例を示す図である。
図5】タンクの内部での湯水の温度変化の例を示すグラフである。
図6】タンクの内部での湯水の温度変化の例を示すグラフである。
図7】タンクの内部での湯水の温度変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本実施形態の熱供給システムの構成について説明する。
図1は、熱供給システムの構成を示す図である。図2は、熱供給システムの制御ブロック図である。図示するように、熱供給システムは、複数の熱源装置(熱電併給装置CG及びボイラー装置1)と、熱媒往路としての第2熱媒供給路3と、熱媒復路としての第2熱媒帰還路2と、流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)と、制御装置Cとを備える。
【0041】
熱電併給装置CGは、熱電併給部50と排熱回収部20とを有する。
熱電併給部50は、熱と電気とを併せて発生させる装置であり、エネルギー効率が高くなるという利点がある。図1に示す熱電併給部50は、内燃機関52とその内燃機関52によって駆動される発電機51とを有する。従って、熱電併給部50では、エンジンから排出される熱と、発電機51から出力される電気とが発生される。尚、熱電併給部50は、熱と電気とを併せて発生させることのできる装置であれば、どのような構成のものでも構わない。例えば、熱と電気とを発生させることができる燃料電池を有する装置などを、熱電併給部50として利用できる。熱電併給装置CGの運転の制御は、後述する制御装置Cが行う。
【0042】
ボイラー装置1は、燃料を燃焼することで発生する燃焼熱を利用して、熱媒を加熱する装置であり、一般的には熱出力が大きいという利点がある。ボイラー装置1の運転の制御は、後述する制御装置Cが行う。
【0043】
排熱回収部20は、熱交換器28において、第1熱媒流路23を流れる第1熱媒と第2熱媒流路27を流れる第2熱媒との間の熱交換を行わせる。排熱回収部20の役割は、熱電併給部50で発生した熱(即ち、第1熱媒が有する熱)を回収して、その熱を第2熱媒に渡すことである。
【0044】
排熱回収部20は、第1熱媒が流入する第1熱媒側入口21と、第1熱媒が流出する第1熱媒側出口22と、第1熱媒が第1熱媒側入口21から第1熱媒側出口22へと流れる第1熱媒流路23と、第2熱媒が流入する第2熱媒側入口25と、第2熱媒が流出する第2熱媒側出口26と、第2熱媒が第2熱媒側入口25から第2熱媒側出口26へと流れる第2熱媒流路27と、第1熱媒流路23を流れる第1熱媒と第2熱媒流路27を流れる第2熱媒との熱交換を行う熱交換器28と、第1熱媒の体積変化を吸収する膨張タンク29と、迂回流路24と、混合器34とを備える。好ましくは、排熱回収部20は、外装容器を備え、その外装容器の表面に第1熱媒側入口21及び第1熱媒側出口22及び第2熱媒側入口25及び第2熱媒側出口26を有し、その外装容器の内部に第1熱媒流路23及び第2熱媒流路27及び熱交換器28及び膨張タンク29及び迂回流路24及び混合器34を有する。膨張タンク29は、開放口30によって大気開放されている。
【0045】
排熱回収部20の第1熱媒側出口22には、排熱回収部20から熱電併給部50に対して第1熱媒を供給する第1熱媒供給路12が接続される。排熱回収部20の第1熱媒側入口21には、熱電併給部50から排熱回収部20に向かって第1熱媒が帰還する第1熱媒帰還路11が接続される。
第1熱媒供給路12を介して熱電併給部50に供給された第1熱媒は、熱電併給部50から排出される熱によって加熱され、その加熱された第1熱媒が第1熱媒帰還路11を介して排熱回収部20へと帰還する。
【0046】
第1熱媒側入口21から排熱回収部20の内部に流入した第1熱媒は、第1熱媒流路23を通って排熱回収部20の内部を流れ、第1熱媒側出口22に至る。第1熱媒側入口21から第1熱媒側出口22に至る間の第1熱媒流路23の途中には、熱交換器28と混合器34と膨張タンク29と第1ポンプ32とが設けられる。
第2熱媒側入口25から排熱回収部20の内部に流入した第2熱媒は、第2熱媒流路27を通って排熱回収部20の内部を流れ、第2熱媒側出口26に至る。第2熱媒側入口25から第2熱媒側出口26に至る間の第2熱媒流路27の途中には、熱交換器28と第2ポンプ33とが設けられている。
第1ポンプ32及び第2ポンプ33の動作の制御は、後述する制御装置Cが行う。
【0047】
本実施形態の排熱回収部20は、第1熱媒流路23の途中で熱交換器28を迂回するように第1熱媒を流す迂回流路24と、迂回流路24を流れる第1熱媒の流量と熱交換器28を流れる第1熱媒の流量との比率を調節する混合器34を備える。具体的には、迂回流路24は、第1熱媒流路23の途中の分岐部31から分岐して、第1熱媒流路23を流れる第1熱媒を、熱交換器28を迂回させて流す。
【0048】
排熱回収部20の第2熱媒側出口26には、排熱回収部20から貯湯装置16及び暖房装置15に対して相対的に高温の第2熱媒を供給する第2熱媒供給路3が接続される。排熱回収部20の第2熱媒側入口25には、貯湯装置16及び暖房装置15から排熱回収部20に向かって相対的に低温の第2熱媒が帰還する第2熱媒帰還路2が接続される。
第2熱媒供給路3及び第2熱媒帰還路2には、ボイラー装置1も接続されている。具体的には、排熱回収部20及びボイラー装置1には、第2熱媒帰還路2の途中の分岐部4で分岐した第2熱媒がそれぞれ供給される。排熱回収部20及びボイラー装置1からは、第2熱媒供給路3の途中の合流部5で第2熱媒が合流する。そして、第2熱媒が保有している熱を利用する貯湯装置16及び暖房装置15に対して、第2熱媒供給路3を介して第2熱媒が供給され、貯湯装置16及び暖房装置15によって熱が利用された後の第2熱媒が、第2熱媒帰還路2を介して帰還する。第2熱媒供給路3の途中には、循環ポンプ44が設けられている。循環ポンプ44の動作の制御は、後述する制御装置Cが行う。
【0049】
このように、排熱回収部20とボイラー装置1とは、第2熱媒供給路3及び第2熱媒帰還路2に対して並列に設けられている。つまり、熱電併給部50で発生した熱は排熱回収部20を介して第2熱媒に渡され、その熱は、ボイラー装置1を経由せずに貯湯装置16及び暖房装置15に供給される。同様に、ボイラー装置1で発生した熱は第2熱媒に渡され、その熱は、排熱回収部20を経由せずに貯湯装置16及び暖房装置15に供給される。そして、排熱回収部20及びボイラー装置1には、貯湯装置16及び暖房装置15から供給される相対的に低温の第2熱媒が流入して、排熱回収部20及びボイラー装置1ではその低温の第2熱媒を加熱するので、第2熱媒は排熱回収部20及びボイラー装置1から多くの熱量を回収することができる。
【0050】
本実施形態の混合器34は、迂回流路24と第1熱媒流路23との合流部位に設けられ、迂回流路24を流れる第1熱媒の流量と熱交換器28を流れる第1熱媒の流量との比率を調節して両者を混合させるように構成されている。本実施形態では、混合器34として、感温式の三方弁を用いている。つまり、この混合器34は、合流後の第1熱媒の温度を感知して流路の開閉状態を調節することで、合流後の第1熱媒の温度が所定温度に近付くように、迂回流路24を流れる第1熱媒の流量と熱交換器28を流れる第1熱媒の流量との比率を調節するように自動的に動作する。
【0051】
例えば、熱電併給部50の運転開始時は、熱電併給部50から第1熱媒側入口21へと供給される第1熱媒の温度も低いため、混合器34によって混合された後の第1熱媒の温度も低い状態にある。このとき、混合器34では、高温側(迂回流路24側)に殆どの第1熱媒を流す。熱電併給部50から第1熱媒側入口21へと供給される第1熱媒の温度が上昇して、混合器34によって混合された後の第1熱媒の温度が所定温度に近づいてくると、混合器34では、徐々に低温側(熱交換器28側)を流れる第1熱媒の流量を増加させると共に、高温側(迂回流路24側)を流れる第1熱媒の流量を減少させる。その後、混合器34によって混合された後の第1熱媒の温度が所定温度を超えると、混合器34はその温度を下げようと低温側(熱交換器28側)を増やす。
【0052】
このように、混合器34では、高温側(迂回流路24側)及び低温側(熱交換器28側)の何れか一方のみの第1熱媒の流量を変化させるのではなく、両方の流量を変化させることで高温側(迂回流路24側)を流れる第1熱媒の流量及び低温側(熱交換器28側)を流れる第1熱媒の流量の比率を変化させて、合流後の第1熱媒の温度が所定温度に近付くように自動的に動作している。その結果、排熱回収部20から流出して熱電併給部50へと供給される第1熱媒の温度が上記所定温度に近付く。そして、熱電併給部50の内燃機関52には、上記所定温度に近い適正な温度範囲にある第1熱媒(冷却水)が継続的に供給される。
【0053】
加えて、混合器34として、上記所定温度を手動により設定変更可能な感温式の三方弁を用いることもできる。このように、上記混合器34を、上記所定温度が可変に構成された感温式の三方弁を用いて構成した場合、混合器34から流出する第1熱媒の温度、即ち、排熱回収部20の第1熱媒側出口22から流出する第1熱媒の温度を変更させることができる。つまり、排熱回収部20から流出して熱電併給部50へと供給される第1熱媒の温度を変更させることができる。従って、排熱回収部20と組み合わせて用いられる熱源装置が変更されることでその熱源装置が要求する第1熱媒の温度(即ち、冷却水の温度)が変更されても、上記所定温度を変更することで、熱源装置が要求する温度に近い第1熱媒を排熱回収部20から熱源装置へと供給することができる。
【0054】
本実施形態では、貯湯装置16は、湯水を貯えるタンク17と熱交換部18とを有する。タンク17の上部には、タンク17内に貯えられている湯水をタンク17外に流出させる出湯路9が接続される。タンク17の下部には、出湯路9からの湯水の流出に応じて補充される水をタンク17内に流入させる給水路8が接続される。そして、タンク17の内部の湯水には給水路8から水圧が常時加わっている。出湯路9の端部には、カランやシャワーなどの給湯端末10が接続されている。給湯端末10が開栓されると、タンク17内部に加わっている水圧によって、タンク17の内部の湯水が出湯路9を通って給湯端末10へと送出される。
【0055】
熱交換部18には第2熱媒が流れる。そして、熱交換部18では、タンク17に貯えられている湯水と、第2熱媒との間での熱交換が行われる。つまり、熱交換部18では、第2熱媒が保有する熱を利用してタンク17内の湯水の加熱・昇温が行われる。
【0056】
以上のように、タンク17は、上部に接続される出湯路9から湯水が抜き出されると同時に下部に接続される給水路8から水が補充されるような構成となっているため、給水路8の接続部位の周囲には相対的に低温の湯水が存在する。そして、それよりも上方には、相対的に高温の湯水が貯えられる。
【0057】
タンク17には、貯えている湯水の温度を検出する温度センサが設けられる。本実施形態では、複数の温度センサをタンク17に設けており、それらの温度センサは、タンク17内に貯えられている湯水の温度を検出する第1温度検出部としての第1温度センサ46と、第1温度センサ46が測定する部位よりも上方でのタンク17内に貯えられている湯水の温度を検出する第2温度検出部としての第2温度センサ45とである。従って、第1温度センサ46で測定された湯水の第1温度は、第2温度センサ45で測定された湯水の第2温度よりも、貯湯装置16のタンク17の内部の相対的に下方に貯えられている湯水の温度になる。第1温度センサ46及び第2温度センサ45の測定結果は、後述する制御装置Cに伝達される。これらの温度センサ45,46は、例えば、熱電対やサーミスタなどを用いて実現できる。
【0058】
貯湯装置16に関して、1日の中に貯湯装置16のタンク17の内部に貯えられている湯水の昇温運転を許可する昇温許可時間帯と、昇温運転を許可しない昇温不許可時間帯とが設定されており、例えば、その情報が記憶装置47に記憶されている。これら昇温許可時間帯及び昇温不許可時間帯は、この熱供給システムの使用者などが入力装置48を利用して入力した情報、又は、予め貯湯装置16に関して定められた情報である。
【0059】
暖房装置15は、第2熱媒が保有している熱を利用して暖房を行う装置である。具体的には、暖房装置15は、第2熱媒と室内の空気との熱交換を行うことで、即ち、第2熱媒の放熱を行わせることで室内の暖房を行う。室内には、暖房装置15が暖房対象とする室内の空気の温度を検出する室温検出部としての室温センサ49が設けられている。室温センサ49の測定結果は、後述する制御装置Cに伝達される。室温センサ49は、例えば、熱電対やサーミスタなどを用いて実現できる。
【0060】
暖房装置15に関して、1日の中に暖房装置15の運転を許可する暖房許可時間帯と、運転を許可しない暖房不許可時間帯とが設定されており、例えば、その情報が記憶装置47に記憶されている。これら暖房許可時間帯及び暖房不許可時間帯は、この熱供給システムの使用者などが入力装置48を利用して入力した情報、又は、予め暖房装置15に関して定められた情報である。
【0061】
第2熱媒供給路3は分岐部13で分岐し、第2熱媒が貯湯装置16及び暖房装置15に対して並列に供給される。つまり、貯湯装置16及び暖房装置15には同じ温度の第2熱媒が供給される。分岐部13と貯湯装置16との間の第2熱媒供給路3には、その流路を開閉する開閉弁6が設けられる。分岐部13と暖房装置15との間の第2熱媒供給路3には、その流路を開閉する開閉弁7が設けられる。
また、貯湯装置16で熱が利用された後の第2熱媒が流れる第2熱媒帰還路2と、暖房装置15で熱が利用された後の第2熱媒が流れる第2熱媒帰還路2とは合流部14で合流する。開閉弁6及び開閉弁7の動作の制御は、後述する制御装置Cが行う。
【0062】
以上のように、第2熱媒供給路3及び第2熱媒帰還路2での第2熱媒の流動状態は、循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7によって調節される。循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7は、第2熱媒供給路3及び第2熱媒帰還路2での第2熱媒の流動状態を調節する流動状態調節装置として機能する。
【0063】
図2は、熱供給システムの制御ブロック図である。上述したように、熱供給システムの運転の制御を行う制御装置Cは、熱電併給装置CG、ボイラー装置1、第1ポンプ32、第2ポンプ33、循環ポンプ44、開閉弁6、開閉弁7などの動作の制御を行う。また、制御装置Cには、第1温度センサ46の測定結果、第2温度センサ45の測定結果、室温センサ49の測定結果などが伝達される。制御装置Cには、入力装置48で入力された情報も伝達される。それら制御装置Cに伝達された情報など、制御装置Cが取り扱う情報は、記憶装置47に記憶させることができる。
【0064】
次に、熱電併給部50及び排熱回収部20を動作させるタイミング、並びに、ボイラー装置1を動作させるタイミングについて説明する。図3は、熱供給システムの運転形態を説明する図である。
【0065】
暖房装置15に関して、1日の中に暖房装置15の運転を許可する暖房許可時間帯と、運転を許可しない暖房不許可時間帯とが設定されており、例えば、その情報が記憶装置47に記憶されている。これら暖房許可時間帯及び暖房不許可時間帯は、この熱供給システムの使用者などが入力装置48を利用して入力した情報、又は、予め暖房装置15で定められた情報である。
図3に示した例では、時刻6時〜時刻8時の間の2時間、及び、時刻16時〜時刻22時の間の6時間が暖房許可時間帯であり、その他の時間帯は暖房不許可時間帯である。
【0066】
貯湯装置16に関して、1日の中に貯湯装置16のタンク17の内部に貯えられている湯水の昇温運転を許可する昇温許可時間帯と、昇温運転を許可しない昇温不許可時間帯とが設定されており、例えば、その情報が記憶装置47に記憶されている。これら昇温許可時間帯及び昇温不許可時間帯は、この熱供給システムの使用者などが入力装置48を利用して入力した情報、又は、予め貯湯装置16で定められた情報である。
図3に示した例では、時刻3時〜時刻6時の間の3時間、及び、時刻13時〜時刻21時の間の8時間が昇温許可時間帯であり、その他の時間帯は昇温不許可時間帯である。
【0067】
ボイラー装置1に関して、1日の中にボイラー装置1の運転を許可するボイラー許可時間帯と、ボイラー装置1の運転を許可しないボイラー不許可時間帯とが設定されており、例えば、その情報が記憶装置47に記憶されている。これらボイラー許可時間帯及びボイラー不許可時間帯は、この熱供給システムの使用者などが入力装置48を利用して入力した情報、又は、予めボイラー装置1で定められた情報である。
図3に示した例では、時刻6時〜時刻8時の間の2時間、及び、時刻16時〜時刻22時の間の6時間がボイラー許可時間帯であり、その他の時間帯はボイラー不許可時間帯である。
【0068】
熱電併給装置CGに関して、1日の中に熱電併給装置CGの運転を許可する熱電併給許可時間帯と、熱電併給装置CGの運転を許可しない熱電併給不許可時間帯とが設定されており、例えば、その情報が記憶装置47に記憶されている。これら熱電併給許可時間帯及び熱電併給不許可時間帯は、この熱供給システムの使用者などが入力装置48を利用して入力した情報、又は、予め熱電併給装置CGで定められた情報である。
図3に示した例では、時刻3時〜時刻8時の間の5時間、及び、時刻13時〜時刻22時の間の9時間が熱電併給許可時間帯であり、その他の時間帯は熱電併給不許可時間帯である。
【0069】
昇温許可時間帯は、時間的に連続した個別昇温時間帯を1日の中に少なくとも一つ有する。図3に示した例では、1日の中に2つの個別昇温時間帯を設定しており、一つの個別昇温時間帯は時刻3時〜時刻6時の間の3時間であり、もう一つの個別昇温時間帯は時刻13時〜時刻21時の間の8時間である。
そして、時刻3時〜時刻6時の間の個別昇温時間帯は、熱電併給許可時間帯と時間的に重なり、ボイラー許可時間帯とは時間的に重ならないように設定されている。その結果、時刻3時〜時刻6時の間の個別昇温時間帯では、熱電併給装置CGで発生した熱のみで貯湯装置16の昇温運転を行うことができる。つまり、熱電併給装置CGの稼働時間を長くすることができる。
【0070】
また、時刻13時〜時刻21時の間の個別昇温時間帯は、その開始時を含む一部時間帯(時刻13時〜時刻16時)が熱電併給許可時間帯と時間的に重なり、ボイラー許可時間帯とは時間的に重ならないように設定されている。そして、その一部時間帯の後の時間帯(時刻16時〜時刻21時)は、熱電併給許可時間帯及びボイラー許可時間帯と時間的に重なるように設定されている。その結果、開始時を含む一部時間帯(時刻13時〜時刻16時)では、先に熱電併給装置CGで発生した熱のみが貯湯装置16の昇温運転に活用され得る。加えて、その一部時間帯の後の時間帯(時刻16時〜時刻21時)では、熱電併給装置CGで発生した熱及びボイラー装置1で発生した熱の両方が貯湯装置16の昇温運転に活用され得る。その結果、熱電併給装置CGが発生する熱を時間的に優先して貯湯装置16の昇温運転に活用しつつ、ボイラー装置1で発生した熱も併せて貯湯装置16の昇温運転に活用できる。
【0071】
〔貯湯装置16〕
本実施形態の熱供給システムでは、貯湯装置16に貯えられている湯水の昇温を、熱電併給装置CGで発生した熱によって行うことができる。その場合、制御装置Cは、第1温度センサ46で測定される湯水の第1温度が熱電併給装置CGを利用した昇温運転を許可する第1下限温度以下であるとき、熱電併給装置CGを運転させ、及び、熱媒が第2熱媒供給路3と第2熱媒帰還路2とを通って熱電併給装置CGと貯湯装置16との間で循環するように流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)を動作させることで、熱電併給装置CGを利用した昇温運転を実行する。特に、本実施形態では、制御装置Cは、現在の時刻が昇温許可時間帯及び熱電併給許可時間帯にあり、且つ、昇温対象とする貯湯装置16のタンク17の内部の湯水の第1温度(第1温度センサ46で測定された湯水の温度)が熱電併給装置CGを利用した昇温運転を許可する第1下限温度以下であるとき、熱電併給装置CGを運転させ、及び、熱媒が第2熱媒供給路3と第2熱媒帰還路2とを通って熱電併給装置CGと貯湯装置16との間で循環するように流動状態調節装置を動作させることで、熱電併給装置CGを利用した昇温運転を実行させる。つまり、制御装置Cは、熱電併給装置CGに含まれる内燃機関52及び発電機51を運転させ、排熱回収部20に含まれる第1ポンプ32及び第2ポンプ33を運転させ、循環ポンプ44を運転させ、開閉弁6を開く。これにより、熱電併給部50で発生した熱が第1熱媒に渡され、更に、第1熱媒が保有する熱が第2熱媒に渡される。加えて、第2熱媒が第2熱媒供給路3を通って貯湯装置16の熱交換部18に供給されて、タンク17の内部の湯水の昇温が行われる。
【0072】
第1下限温度は、給水路8を経由してタンク17内に供給される水の温度よりも高く且つ出湯路9に接続される給湯端末10で必要とされる湯水の目標温度よりも低い温度であることが好ましい。そのように設定されると、給水路8からタンク17内に供給される水の温度は第1下限温度よりも低いので、給水路8からタンク17内に水が供給されれば、第1温度が低下して第1下限温度になる。そして、第1温度が低下して第1下限温度になれば、熱電併給装置CGを利用した昇温運転により、給湯端末10で必要とされる温度よりも低温の湯水に対して加熱を行うことができる。このように、第1下限温度をなるべく低く設定した方が、タンク17下部から第1温度センサ46まで低温の水が到達したことを確実に検知した後に熱電併給装置CGが始動するので、始動後、比較的長い時間、熱電併給装置CGを連続して運転させることができる。ただし、第1下限温度を低く設定しすぎると、夏期は給水温度が高くなることや、タンク17の上部の湯との熱伝導や混合などの影響を受けて、第1温度が第1下限温度まで下がらないおそれがある。ところが本実施形態のように、第1下限温度をタンク17内に供給される水の温度よりも高く設定しておくことで、そのようなおそれを回避することができる。
【0073】
尚、制御装置Cは、現在の時刻が昇温許可時間帯及び熱電併給許可時間帯にあったとしても、第1温度センサ46で測定される湯水の第1温度が上記第1下限温度よりも高ければ、即ち、貯湯装置16のタンク17に未だ十分に高温の湯水が貯えられていれば、熱電併給装置CGを使用した昇温運転は開始しない。また、第1温度センサ46で測定される湯水の第1温度が上記第1下限温度以下であっても、即ち、貯湯装置16のタンク17に貯えられている湯水の温度が低いとしても、現在の時刻が昇温許可時間帯及び熱電併給許可時間帯の重なり合う時間帯になければ(昇温不許可時間帯又は熱電併給不許可時間帯にあれば)、熱電併給装置CGを利用した昇温運転は行わない。
【0074】
本実施形態の熱供給システムでは、貯湯装置16に貯えられている湯水の昇温を、ボイラー装置1で発生した熱によって行うこともできる。その場合、制御装置Cは、第2温度センサ45で測定される湯水の第2温度がボイラー装置1を利用した昇温運転を許可する第2下限温度以下であるとき、ボイラー装置1を運転させ、及び、熱媒が第2熱媒供給路3と第2熱媒帰還路2とを通ってボイラー装置1と貯湯装置16との間を循環するように流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)を動作させることで、ボイラー装置1を利用した昇温運転を実行する。特に、本実施形態では、制御装置Cは、現在の時刻が昇温許可時間帯及びボイラー許可時間帯にあり、且つ、昇温対象とする貯湯装置16のタンク17の内部の湯水の第2温度(第2温度センサ45で測定された湯水の温度)がボイラー装置1を利用した昇温運転を許可する第2下限温度以下であるとき、ボイラー装置1を運転させ、及び、熱媒が第2熱媒供給路3と第2熱媒帰還路2とを通ってボイラー装置1と貯湯装置16との間を循環するように流動状態調節装置を動作させることで、ボイラー装置1を利用した昇温運転を実行させる。つまり、制御装置Cは、ボイラー装置1を運転させ、循環ポンプ44を運転させ、開閉弁6を開く。これにより、ボイラー装置1で発生した熱が第2熱媒に渡される。加えて、第2熱媒が第2熱媒供給路3を通って貯湯装置16の熱交換部18に供給されて、タンク17の内部の湯水の昇温が行われる。
【0075】
第2下限温度は、出湯路9に接続される給湯端末10で必要とされる湯水の目標温度よりも高い温度であることが好ましい。そのように設定されると、タンク17内部の上方に貯えられている湯水の温度が低下し始めたことを早期に検知してボイラー装置1による昇温運転を開始することができ、シャワーなどで多量に湯を使っている状況であっても、タンク17内から高温の湯水が失われるという湯切れのリスクを低減できる。
【0076】
制御装置Cは、現在の時刻が昇温許可時間帯及びボイラー許可時間帯にあったとしても、第2温度センサ45で測定される湯水の第2温度が上記第2下限温度よりも高ければ、ボイラー装置1を利用した昇温運転は開始しない。また、第2温度センサ45で測定される湯水の第2温度が上記第2下限温度以下であっても、即ち、貯湯装置16のタンク17に貯えられている湯水の温度が低いとしても、現在の時刻が昇温許可時間帯及びボイラー許可時間帯の重なり合う時間帯になければ(昇温不許可時間帯又はボイラー不許可時間帯にあれば)、ボイラー装置1を利用した昇温運転は行わない。
【0077】
上述した第1温度センサ46が測定する第1温度は、第2温度センサ45が測定する第2温度よりも、タンク17の内部の相対的に下方に貯えられている湯水の温度である。つまり、上述したような、タンク17下部には相対的に低温の湯水が存在し、タンク17上部には相対的に高温の湯水が存在する状態は、第2温度センサ45よりも下方にある第1温度センサ46の温度検出部位での湯水の温度低下として先に現れる構成になっている。
加えて、第1下限温度は第2下限温度未満の温度である。例えば第1下限温度は35℃であり、第2下限温度は50℃である。その結果、タンク17に対して給水が行われた場合に、第1温度が第1下限温度(35℃)以下になるタイミングの方が、第2温度が第2下限温度(50℃)以下になるタイミングよりも早期に到来することを期待できる。そして、第1温度が第1下限温度(35℃)以下になるタイミングの方が、第2温度が第2下限温度(50℃)以下になるタイミングよりも早期に到来した場合には、エネルギー効率の高い熱電併給装置CGの方が、ボイラー装置1よりも先に湯水の昇温運転を開始するという利点がある。加えて、第2温度が第2下限温度(50℃)以下となったときには、熱電併給装置CGに加えて、熱出力の大きなボイラー装置1を運転して湯水の昇温運転を行うことができる。
【0078】
第1下限温度が第2下限温度未満の温度であるということは、第1下限温度は比較的低くなるように設定され、且つ、第2下限温度は比較的高くなるように設定されているということである。つまり、熱電併給装置CGの始動のタイミングを定めている第1下限温度の高低に着目すると、本実施形態のように第1下限温度が低い場合の方が、熱電併給装置CGを利用した昇温運転によりタンク17内の湯水温度(第1温度)が高温になるまでの所要時間が長くなるという利点がある。また、ボイラー装置1の始動のタイミングを定めている第2下限温度の高低に着目すると、本実施形態のように第2下限温度が高い場合の方が、タンク17上部の温度が大きく下がる前にボイラー装置1を始動することになり、使用者がシャワーなどの給湯端末10で大量に湯を使っている状況であってもボイラー装置1による加熱が間に合う可能性が高いという利点がある。
【0079】
更に、本実施形態の熱供給システムにおいて、熱電併給装置CGを利用した昇温運転を長時間行わせたいのであれば、給水路8の接続部位とその接続部位よりも上方にある第1温度センサ46との間のタンク17内に存在する量の湯水を多くする、即ち、給水路8の接続部位と第1温度センサ46の設置部位とがタンク17の上下方向で離れるように設定すればよい。具体的には、タンク17に対する給水路8の接続部位とその接続部位よりも上方にある第1温度センサ46との間のタンク17内に存在する量の湯水を、熱電併給装置CGから所定出力を発揮させた状態で昇温運転することにより第1下限温度から第1上限温度まで昇温するときに、少なくとも目標期間以上の昇温運転が必要になるように、給水路8の接続部位と第1温度センサ46の設置部位とが設定されることが好ましい。そのように設定すると、給水路8の接続部位と第1温度センサ46との間のタンク17内に存在する量の湯水を第1下限温度から第1上限温度まで昇温するために要する期間が、少なくとも目標期間以上にされる。その結果、熱電併給装置CGを一旦始動させた後、長時間運転させることができる。
【0080】
制御装置Cは、現在の時刻が昇温許可時間帯及び熱電併給許可時間帯にあったとしても、熱電併給装置CGを利用した昇温運転を実行中に、貯湯装置16のタンク17の内部の湯水の第1温度が第1上限温度以上(例えば、60℃以上)になると熱電併給装置CGを利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせる。
ここで、熱電併給装置CGを利用した昇温運転が不許可状態になることで熱電併給装置CGを利用した昇温運転を停止させる手法としては幾つかの手法がある。
例えば、制御装置Cは、熱電併給装置CGを利用した昇温運転を停止させるとき、熱電併給装置CGの運転を継続した状態で、熱媒が熱電併給装置CGと貯湯装置16との間で循環しないように、例えば開閉弁6を閉弁するなどの流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)の動作制御を行ってもよい。この場合、熱電併給装置CGを運転することで熱媒が加熱されても、その熱媒は貯湯装置16には循環しない。
或いは、制御装置Cは、熱電併給装置CGの運転自体を停止させることで、熱電併給装置CGを利用した昇温運転を停止させてもよい。この場合、熱電併給装置CGの運転自体を停止させた後、熱媒が熱電併給装置CGと貯湯装置16との間で循環し続けるように流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)の動作制御を行っても構わない。
【0081】
また、制御装置Cは、現在の時刻が昇温許可時間帯及びボイラー許可時間帯にあったとしても、ボイラー装置1を利用した昇温運転を実行中に、貯湯装置16のタンク17の内部の湯水の第2温度が第2上限温度以上(例えば、55℃以上)になるとボイラー装置1を利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせる。
ここで、ボイラー装置1を利用した昇温運転が不許可状態になることでボイラー装置1を利用した昇温運転を停止させる手法としては幾つかの手法がある。
例えば、制御装置Cは、ボイラー装置1を利用した昇温運転を停止させるとき、ボイラー装置1の運転を継続した状態で、熱媒がボイラー装置1と貯湯装置16との間で循環しないように、例えば開閉弁6を閉弁するなどの流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)の動作制御を行ってもよい。この場合、ボイラー装置1を運転することで熱媒が加熱されても、その熱媒は貯湯装置16には循環しない。
或いは、制御装置Cは、ボイラー装置1の運転自体を停止させることで、ボイラー装置1を利用した昇温運転を停止させてもよい。この場合、ボイラー装置1の運転自体を停止させた後、熱媒がボイラー装置1と貯湯装置16との間で循環し続けるように流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)の動作制御を行っても構わない。
【0082】
本実施形態では、上述のように、第1上限温度(60℃)は第1下限温度(35℃)より高い温度に設定され、第2上限温度(55℃)は第2下限温度(50℃)より高い温度に設定され、第1上限温度(60℃)は第2上限温度(55℃)より高い温度に設定されている。このように、第1上限温度は第2上限温度より高い温度に設定されているので、上記第1温度が第1上限温度になるよりも先に、上記第2温度が第2上限温度になることを期待できる。つまり、熱電併給装置CG及びボイラー装置1の両方を利用して昇温運転させていたとしても、ボイラー装置1の方が先に停止することを期待できる。その結果、エネルギー効率の高い熱電併給装置CGが湯水の昇温運転に活用される期間の方が長くなる。
【0083】
次に、昇温運転を行った場合のタンク17の内部での湯水の温度変化について説明する。
図4は湯水の温度変化を説明するために用いるタンク17の構造例を示す図であり、図5はタンク17の内部での湯水の温度変化の例を示すグラフである。
図4に示すように、用いたタンク17の容積は148L(リットル)である。タンク17の頂部には出湯路9が接続されている。タンク17の側部には、タンク17の頂部からの容積が133Lの位置に給水路8が接続される。タンク17の側部には、温度センサT1,T2,T3,T4,T5,T6,T7が設けられる。温度センサT1は、タンク17の頂部からの容積が33Lの位置に設けられる。温度センサT2は、タンク17の頂部からの容積が61Lの位置に設けられる。温度センサT3は、タンク17の頂部からの容積が77Lの位置に設けられる。温度センサT4は、タンク17の頂部からの容積が93Lの位置に設けられる。温度センサT5は、タンク17の頂部からの容積が109Lの位置に設けられる。温度センサT6は、タンク17の頂部からの容積が125Lの位置に設けられる。温度センサT7は、タンク17の頂部からの容積が137Lの位置に設けられる。また、タンク17には、湯水と第2熱媒との熱交換を行う熱交換部18が設けられる。熱交換部18には第2熱媒供給路3を介して第2熱媒が流入し、熱交換部18からは第2熱媒帰還路2を介して第2熱媒が流出する。第2熱媒供給路3は、タンク17の頂部からの容積が83Lの位置に接続される。第2熱媒帰還路2は、タンク17の頂部からの容積が131Lの位置に接続される。
以上のような構造のタンク17を用いて、タンク17の内部での湯水の温度変化を測定した。尚、温度センサT5が本実施形態の第1温度センサ46に対応し、温度センサT2が本実施形態の第2温度センサ45に対応する。
【0084】
図5には、温度センサT1,T2,T3,T4,T5,T6,T7のそれぞれで測定された湯水の温度(℃)の時間的変化、出湯路9からの湯水の流出量(L/min)の時間的変化、熱電併給装置CG及びボイラー装置1が運転しているか又は停止しているかの変化を示す。図5に示す例でも、第1下限温度は35℃であり、第1上限温度は60℃であり、第2下限温度は50℃であり、第2上限温度は55℃である。熱電併給装置CGが運転しているとき、排熱回収部20は、熱電併給部50で発生する熱を第1熱媒を用いて回収し、その回収した熱を第2熱媒に渡すので、図5中で熱電併給装置CGが運転しており且つ熱交換部18での第2熱媒の流量がゼロより多い間は、熱電併給部50で発生した熱がタンク17の内部の湯水に渡される。
【0085】
図5について具体的に説明すると、熱電併給装置CG及びボイラー装置1の運転を停止してタンク17内の湯水の昇温運転を停止した状態で、時刻10時24分頃に2L/minの流量で出湯路9から連続して出湯し始めると、給水路8からタンク17内への水の流入に伴ってタンク17内の湯水の温度が低下し始める。このとき、給水路8に近い部位(温度センサT5〜T7の測定部位)では湯水の温度低下が早期に現れるが、出湯路9に近い部位(温度センサT1〜T4の測定部位)では湯水の温度低下は非常に緩やかな速度で発生する。つまり、タンク17の下方側ほど、湯水の温度低下が早期に発生することが分かる。
【0086】
時刻10時47分頃になると温度センサT5(第1温度センサ46)が検出する第1温度が第1下限温度(35℃)になることで、熱電併給装置CGを利用した昇温運転が開始され、それによりタンク17内の湯水の温度が上昇し始める。その後、タンク17内に貯えられている低温の湯水が上方に移動することで、時刻11時01分頃になると温度センサT2(第2温度センサ45)が検出する第2温度が第2下限温度(50℃)になることで、ボイラー装置1を利用した昇温運転が開始される。
【0087】
時刻11時17分頃になると温度センサT2(第2温度センサ45)が検出する第2温度が第2上限温度(55℃)になることで、ボイラー装置1を利用した昇温運転が停止される。次に、時刻11時55分頃になると温度センサT5(第1温度センサ46)が検出する第1温度が第1上限温度(60℃)になることで、熱電併給装置CGを利用した昇温運転が停止される。
以上のように、第2温度が第2下限温度以下となるよりも先に、第1温度が第1下限温度以下となるため、エネルギー効率の高い熱電併給装置CGの方が、ボイラー装置1よりも先に湯水の昇温運転を開始する。また、熱電併給装置CG及びボイラー装置1の両方を利用して昇温運転させていたとしても、第1温度が第1上限温度になるよりも先に、第2温度が第2上限温度になるため、ボイラー装置1の方が先に停止する。その結果、エネルギー効率の高い熱電併給装置CGが湯水の昇温運転に活用される期間が長くなるという利点がある。
【0088】
〔暖房装置15〕
本実施形態の熱供給システムでは、暖房装置15による空気の昇温を、熱電併給装置CGで発生した熱によって行うことができる。その場合、制御装置Cは、現在の時刻が暖房許可時間帯及び熱電併給許可時間帯にあり、且つ、暖房対象とする空気の温度(室温センサ49で測定された空気の温度)が暖房装置15による暖房運転を許可する温度条件を満たしているとき、即ち、空気温度が熱電併給装置CGを利用した暖房運転を許可する第3下限温度(例えば、22℃など)以下であるとき、熱電併給装置CGを運転させ、及び、熱媒が第2熱媒供給路3と第2熱媒帰還路2とを通って熱電併給装置CGと暖房装置15との間で循環するように流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)を動作させることで、熱電併給装置CGを利用した暖房運転を実行する。つまり、制御装置Cは、熱電併給部50に含まれる内燃機関52及び発電機51を運転させ、排熱回収部20に含まれる第1ポンプ32及び第2ポンプ33を運転させ、循環ポンプ44を運転させ、開閉弁7を開く。これにより、熱電併給部50で発生した熱が第1熱媒に渡され、更に、第1熱媒が保有する熱が第2熱媒に渡される。加えて、第2熱媒が第2熱媒供給路3を通って暖房装置15に供給されて、暖房装置15で第2熱媒の放熱(暖房)が行われる。
【0089】
尚、制御装置Cは、現在の時刻が暖房許可時間帯及び熱電併給許可時間帯にあったとしても、熱電併給装置CGを利用した暖房運転を実行中に、室温センサ49で測定される空気の温度が熱電併給装置CGを利用した暖房運転を不許可とする温度条件を満たしているとき、即ち、空気温度が熱電併給装置CGを利用した暖房運転を不許可とする第3上限温度(例えば、24℃など)以上になると、熱電併給装置CGを利用した暖房運転を許可しない不許可状態に移行させる。
ここで、熱電併給装置CGを利用した暖房運転が不許可状態になることで熱電併給装置CGを利用した暖房運転を停止させる手法としては幾つかの手法がある。
例えば、制御装置Cは、熱電併給装置CGを利用した暖房運転を停止させるとき、熱電併給装置CGの運転を継続した状態で、熱媒が熱電併給装置CGと暖房装置15との間で循環しないように、例えば開閉弁7を閉弁するなどの流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)の動作制御を行ってもよい。この場合、熱電併給装置CGを運転することで熱媒が加熱されても、その熱媒は暖房装置15には循環しない。
或いは、制御装置Cは、熱電併給装置CGの運転自体を停止させることで、熱電併給装置CGを利用した暖房運転を停止させてもよい。この場合、熱電併給装置CGの運転自体を停止させた後、熱媒が熱電併給装置CGと暖房装置15との間で循環し続けるように流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)の動作制御を行っても構わない。
また、室温センサ49で測定される空気の温度が上記温度条件を満たしていても、即ち、室温が低いとしても、現在の時刻が暖房許可時間帯及び熱電併給許可時間帯の重なり合う時間帯になければ(暖房不許可時間帯又は熱電併給不許可時間帯にあれば)、暖房装置15の運転は行わない。
【0090】
本実施形態の熱供給システムでは、暖房装置15による空気の昇温を、ボイラー装置1で発生した熱によって行うこともできる。その場合、制御装置Cは、現在の時刻が暖房許可時間帯及びボイラー許可時間帯にあり、且つ、暖房対象とする空気の温度(室温センサ49で測定された空気の温度)が暖房装置15による暖房運転を許可する温度条件を満たしているとき、即ち、空気温度がボイラー装置1を利用した暖房運転を許可する第4下限温度(例えば、20℃など)以下であるとき、ボイラー装置1を運転させ、及び、熱媒が第2熱媒供給路3と第2熱媒帰還路2とを通ってボイラー装置1と暖房装置15との間で循環するように流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)を動作させることで、ボイラー装置1を利用した暖房運転を実行する。つまり、制御装置Cは、ボイラー装置1を運転させ、循環ポンプ44を運転させ、開閉弁7を開く。これにより、ボイラー装置1で発生した熱が第2熱媒に渡される。加えて、第2熱媒が第2熱媒供給路3を通って暖房装置15に供給されて、暖房装置15で第2熱媒の放熱(暖房)が行われる。
【0091】
上述のように、本実施形態では、第3下限温度(22℃)は第4下限温度(20℃)より高い温度に設定されている。つまり、現在の時刻が暖房許可時間帯及び熱電併給許可時間帯及びボイラー許可時間帯にあるときであっても、即ち、熱電併給装置CGが空気温度の値によっては運転され得るとき且つボイラー装置1が空気温度の値によっては運転され得るときであっても、空気温度が第4下限温度以下となるよりも先に、空気温度が第3下限温度以下となるので、熱電併給装置CGの方が先に暖房運転のために利用される。
【0092】
尚、制御装置Cは、現在の時刻が暖房許可時間帯及びボイラー許可時間帯にあったとしても、室温センサ49で測定される空気の温度が上記温度条件を満たしていないとき(即ち、空気温度が第4下限温度よりも高いとき)、ボイラー装置1を利用した暖房運転は開始しない。
また、室温センサ49で測定される空気の温度が上記温度条件を満たしていても、即ち、室温が低いとしても、現在の時刻が暖房許可時間帯及びボイラー許可時間帯の重なり合う時間帯になければ(暖房不許可時間帯又はボイラー不許可時間帯にあれば)、ボイラー装置1を利用した暖房運転は行わない。
【0093】
更に、制御装置Cは、現在の時刻が暖房許可時間帯及びボイラー許可時間帯にあったとしても、ボイラー装置1を利用した暖房運転を実行中に、室温センサ49で測定される空気の温度がボイラー装置1を利用した暖房運転を不許可とする温度条件を満たしているとき、即ち、空気温度がボイラー装置1を利用した暖房運転を不許可とする第4上限温度(例えば、21℃など)以上になると、ボイラー装置1を利用した暖房運転を許可しない不許可状態に移行させる。
ここで、ボイラー装置1を利用した暖房運転が不許可状態になることでボイラー装置1を利用した暖房運転を停止させる手法としては幾つかの手法がある。
例えば、制御装置Cは、ボイラー装置1を利用した暖房運転を停止させるとき、ボイラー装置1の運転を継続した状態で、熱媒がボイラー装置1と暖房装置15との間で循環しないように、例えば開閉弁7を閉弁するなどの流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)の動作制御を行ってもよい。この場合、ボイラー装置1を運転することで熱媒が加熱されても、その熱媒は暖房装置15には循環しない。
或いは、制御装置Cは、ボイラー装置1の運転自体を停止させることで、ボイラー装置1を利用した暖房運転を停止させてもよい。この場合、ボイラー装置1の運転自体を停止させた後、熱媒がボイラー装置1と暖房装置15との間で循環し続けるように流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)の動作制御を行っても構わない。
【0094】
また、本実施形態では、第3上限温度(例えば24℃)は第3下限温度(例えば22℃)より高い温度に設定され、第4上限温度(例えば21℃)は第4下限温度(例えば20℃)より高い温度に設定される。そして、第3上限温度は第4上限温度より高い温度に設定される。その結果、室温センサ49で検出される空気の温度が第3上限温度になるよりも先に、室温センサ49で検出される空気の温度が第4上限温度になる。つまり、熱電併給装置CG及びボイラー装置1の両方を利用して暖房運転を実行していたとしても、ボイラー装置1の方が先に停止する。従って、エネルギー効率の高い熱電併給装置CGが暖房運転に利用される期間が長くなる。
【0095】
以上のように、暖房許可時間帯は、時間的に連続した個別暖房時間帯を1日の中に少なくとも一つ有する。図3に示した例では、1日の中に2つの個別暖房時間帯を設定しており、一つの個別暖房時間帯は時刻6時〜時刻8時の間の2時間であり、もう一つの個別暖房時間帯は時刻16時〜時刻22時の間の6時間である。
そして、時刻6時〜時刻8時の間の個別暖房時間帯、及び、時刻16時〜時刻22時の間の個別暖房時間帯の両方共、熱電併給許可時間帯及びボイラー許可時間帯と時間的に重なるように設定されている。その結果、熱電併給装置CGで発生した熱及びボイラー装置1で発生した熱の両方が暖房装置15の暖房運転に活用され得る。
【0096】
尚、第2熱媒供給路3及び第2熱媒帰還路2は、ボイラー装置1及び熱電併給装置CGと暖房装置15及び貯湯装置16とで共用しているので、同じ時間帯にボイラー装置1による暖房装置15の暖房運転と熱電併給装置CGによる貯湯装置16の昇温運転とが行われると、ボイラー装置1による貯湯装置16の昇温運転や、熱電併給装置CGによる暖房装置15の暖房運転が意図せずに行われてしまう。
ところが、本実施形態では、図3に示したように、ボイラー装置1による暖房装置15の暖房運転が行われ得る時刻6時〜時刻8時の間の時間帯は、熱電併給装置CGによる貯湯装置16の昇温運転が行われ得る時刻3時〜時刻6時の間の時間帯とは時間的に重畳しないように設定されている。その結果、意図せずに、暖房装置15の暖房運転と熱電併給装置CGによる貯湯装置16の昇温運転とが行われると、ボイラー装置1による貯湯装置16の昇温運転や、熱電併給装置CGによる暖房装置15の暖房運転が行われることを回避できている。
【0097】
但し、図3に示した時刻16時〜時刻21時の間の時間帯は、熱電併給装置CGを利用した貯湯運転及び暖房運転並びにボイラー装置1を利用した貯湯運転及び暖房運転の全てが許可され得るので、上述したような意図しない貯湯運転や暖房運転が行われる可能性もある。このような場合、制御装置Cは、以下のような制御を行いながら、意図しない貯湯運転や暖房運転が行われることも許容している。
【0098】
具体的には、上述したのと同様に、制御装置Cは、熱電併給装置CGを利用した暖房運転を実行中に、室温センサ(室温検出部)49で検出される空気の温度が第3上限温度以上になると熱電併給装置CGを利用した暖房運転を許可しない不許可状態にさせ、及び、ボイラー装置1を利用した暖房運転を実行中に、室温センサ49で検出される空気の温度が第4上限温度以上になるとボイラー装置1を利用した暖房運転を許可しない不許可状態にさせ、及び、熱電併給装置CGを利用した昇温運転を実行中に、第1温度が第1上限温度以上になると熱電併給装置CGを利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせ、及び、ボイラー装置1を利用した昇温運転を実行中に、第2温度が第2上限温度以上になるとボイラー装置1を利用した昇温運転を許可しない不許可状態にさせる。ここで、第3上限温度は第3下限温度より高い温度に設定され、第4上限温度は第4下限温度より高い温度に設定され、第3上限温度は第4上限温度より高い温度に設定されており、第1上限温度は第1下限温度より高い温度に設定され、第2上限温度は第2下限温度より高い温度に設定され、第1上限温度は第2上限温度より高い温度に設定されている。
【0099】
加えて、制御装置Cは、熱電併給装置CGを利用した昇温運転及びボイラー装置1を利用した昇温運転の少なくとも一方を実行するとき、熱媒が貯湯装置16を通って循環するように流動状態調節装置を動作させ、及び、熱電併給装置CGを利用した昇温運転及びボイラー装置1を利用した昇温運転の両方が不許可状態であるとき、熱媒が貯湯装置16を通って循環しないように流動状態調節装置を動作させ、並びに、熱電併給装置CGを利用した暖房運転及びボイラー装置1を利用した暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、熱媒が暖房装置15を通って循環するように流動状態調節装置を動作させ、及び、熱電併給装置CGを利用した暖房運転及びボイラー装置1を利用した暖房運転の両方が不許可状態であるとき、熱媒が暖房装置15を通って循環しないように流動状態調節装置を動作させる。
【0100】
このように、熱電併給装置CGを利用した昇温運転が不許可状態になった又はボイラー装置1を利用した昇温運転が不許可状態になったからといって、熱媒が貯湯装置16を通って循環しないように流動状態調節装置を動作させるのではなく、熱電併給装置CGを利用した昇温運転及びボイラー装置1を利用した昇温運転の両方が不許可状態になったときに、熱媒が貯湯装置16を通って循環しないように流動状態調節装置を動作させる。また、熱電併給装置CGを利用した暖房運転が不許可状態になった又はボイラー装置1を利用した暖房運転が不許可状態になったからといって、熱媒が暖房装置15を通って循環しないように流動状態調節装置を動作させるのではなく、熱電併給装置CGを利用した暖房運転及びボイラー装置1を利用した暖房運転の両方が不許可状態になったときに、熱媒が暖房装置15を通って循環しないように流動状態調節装置を動作させる。
【0101】
また、制御装置Cは、熱電併給装置CGを利用した昇温運転及び暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、熱電併給装置CGを動作させ、及び、熱電併給装置CGを利用した昇温運転及び暖房運転の両方が不許可状態であるとき、熱電併給装置CGを停止させ、並びに、ボイラー装置1を利用した昇温運転及び暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、ボイラー装置1を動作させ、及び、ボイラー装置1を利用した昇温運転及び暖房運転の両方が不許可状態であるとき、ボイラー装置1を停止させる。このように、熱電併給装置CGを利用した昇温運転及び暖房運転の何れか一方が不許可状態になったからといって、熱電併給装置CGの運転を停止させることはなく、熱電併給装置CGを利用した昇温運転及び暖房運転の両方が不許可状態になってから熱電併給装置CGを停止させる。これにより、熱電併給装置CGを利用した昇温運転及び暖房運転を確実に実行できる。
更に、ボイラー装置1を利用した昇温運転及び暖房運転の少なくとも一方を実行するとき、ボイラー装置1を動作させ、及び、ボイラー装置1を利用した昇温運転及び暖房運転の両方が不許可状態であるとき、ボイラー装置1を停止させる。つまり、ボイラー装置1を利用した昇温運転及び暖房運転の何れか一方が不許可状態になったからといって、ボイラー装置1の運転を停止させることはなく、ボイラー装置1を利用した昇温運転及び暖房運転の両方が不許可状態になってからボイラー装置1を停止させる。これにより、ボイラー装置1を利用した昇温運転及び暖房運転を確実に実行できる。
【0102】
<第2実施形態>
第2実施形態の熱供給システムは、熱電併給装置CGによりタンク17内の湯水に対する昇温運転を行うタイミングが上記実施形態と異なっている。以下に第2実施形態の熱供給システムについて説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0103】
本実施形態では、制御装置Cは、第2温度センサ45で検出される湯水の第2温度が、上記第2下限温度よりも高く且つ上記第1上限温度よりも低い第2中間温度以下であるとき熱電併給装置CGを運転させ、及び、第2熱媒供給路3と第2熱媒帰還路2とを通って熱電併給装置CGと貯湯装置16との間で循環するように流動状態調節装置(循環ポンプ44及び第2ポンプ33及び開閉弁6及び開閉弁7)を動作させることで、熱電併給装置CGを利用した昇温運転を実行する。つまり、制御装置Cは、第1実施形態で説明したのと同様に第1温度センサ46で検出される湯水の第1温度が上記第1下限温度以下であるときに加えて、第2温度センサ45で検出される湯水の第2温度が第2中間温度以下であるときにも熱電併給装置CGを利用した昇温運転を行わせる。加えて、制御装置Cは、熱電併給装置CGを利用した昇温運転を実行中に、第1温度が熱電併給装置CGを利用した昇温運転を不許可とする第1上限温度以上になると、熱電併給装置CGを利用した昇温運転を不許可状態に移行させる。例えば、第2下限温度は50℃であり、第2中間温度は53℃であり、第1上限温度は60℃である。
【0104】
補足説明すると、例えば給湯端末10での湯水の使用量が非常に少ない場合、タンク17が昇温運転されないまま長時間経過し、その間にタンク17の表面からの放熱によって湯水の温度が全体的に低下する可能性がある。この場合、給水路8から低温の水がタンク17内に流入するのではないため、第1温度センサ46で測定される第1温度はそれほど低下しない。その結果、第1温度は第1下限温度以下にはならないが、第2温度センサ45で測定される第2温度は第2下限温度以下になった場合には、熱電併給装置CGによる昇温運転は行われないが、ボイラー装置1を利用した昇温運転が行われる。
このような場合であっても、熱電併給装置CGを利用した昇温運転がボイラー装置1を利用した昇温運転よりも先に開始されるように、制御装置Cは、第2温度センサ45で検出される湯水の第2温度が第2中間温度以下であるときにも熱電併給装置CGを利用した昇温運転を行わせる。
【0105】
このように、タンク17下部に接続されている給水路8から水が補充されることで湯水の温度がタンク17の下方側から順に低下する場合、及び、タンク17全体で発生する放熱によって湯水の温度がタンク17全体で低下する場合の何れであっても、第2温度センサ46で測定される第2温度が第2下限温度以下になるよりも先に、第2温度が第2中間温度以下になる。つまり、第1温度が第1下限温度以下になっていなくても、第2温度が第2中間温度以下になるのに応じて熱電併給装置CGを利用した昇温運転が行われる。特に、第2温度が第2下限温度以下になるのに応じてボイラー装置1が昇温運転を開始するよりも先に、第2温度が第2中間温度以下になるのに応じて熱電併給装置CGが昇温運転を開始する。その結果、タンク17全体で発生する放熱によって湯水の温度がタンク17全体で低下するような状況であっても、エネルギー効率の高い熱電併給装置CGを優先的に利用してタンク17内の湯水の昇温運転を行うことができる。
【0106】
更に、第2温度センサ45で検出される湯水の第2温度が第2中間温度以下であるときに熱電併給装置CGを利用した昇温運転を開始させても、熱電併給装置CGを利用した昇温運転によりタンク17内の湯水温度(第1温度)が高温になるまでの所要時間はそれほど短くなることは無いと考えられる。つまり、タンク17全体で発生する放熱によって第2温度センサ45で検出される湯水の第2温度が第2中間温度以下になったということは、例えば、タンク17の最下部と最上部との間に存在する多量の湯水の温度が低下しているということ(即ち、タンク17に比較的大きな熱容量の空きができたということ)であり、その多量の湯水を熱電併給装置CGを利用した昇温運転により加熱するためには比較的長い時間が必要になるからである。
【0107】
<別実施形態>
上記実施形態では、熱供給システムについて具体例を挙げて説明したが、それらの構成は適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、第1下限温度、第1上限温度、第2下限温度、第2下限温度などについて具体的な数値を挙げて説明を行ったが、上述した数値は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。
上記実施形態において、第1温度センサ(第1温度検出部)46、第2温度センサ(第2温度検出部)45、室温センサ(室温検出部)49などをサーモスタットで実現してもよい。例えば、サーモスタットである第1温度検出部が、タンク17に貯えられている湯水の温度が第1下限温度以下であることを検出して機械的にオン状態に切り替わり、第1下限温度より高い温度であることを検出して機械的にオフ状態に切り替わるように設定しておく。そうすると、制御装置Cは、サーモスタットである第1温度検出部が湯水の温度が第1下限温度以下になったことを検出したことを知ることができる。また、サーモスタットがオン状態とオフ状態とで切り替わる閾値温度(例えば、上述した第1下限温度など)を手動式のダイヤル等で変更可能な構成を採用してもよい。
上記実施形態において、混合器34を、例えば温度センサ(図示せず)によって検出された温度に応じて弁の開閉調節が制御される電子制御の三方混合弁を用いて構成してもよく、或いは、そのような電子制御の二方弁を複数個用いて構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、熱利用装置の状態に応じて複数の熱源装置を効率的に運用できる熱供給システムに利用できる。
【符号の説明】
【0109】
1 ボイラー装置(熱源装置)
2 第2熱媒帰還路(熱媒復路)
3 第2熱媒供給路(熱媒往路)
6 開閉弁(流動状態調節装置)
7 開閉弁(流動状態調節装置)
10 給湯端末
11 第1熱媒帰還路
12 第1熱媒供給路
15 暖房装置(熱利用装置)
16 貯湯装置(熱利用装置)
17 タンク
32 第1ポンプ
33 第2ポンプ(流動状態調節装置)
44 循環ポンプ(流動状態調節装置)
45 第2温度センサ(第2温度検出部)
46 第1温度センサ(第1温度検出部)
49 室温センサ
C 制御装置
CG 熱電併給装置(熱源装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7